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【発明の名称】 擬ベーマイト粉の製造方法
【発明者】 【氏名】塚田 高行

【氏名】大橋 勇司

【氏名】瀬川 秀夫

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミニウムのエッチング槽から取り出されたアルカリエッチング液のアルミニウム濃度を調整してエッチング槽へ循環する工程において、エッチング槽から取り出されたアルカリエッチング液の一部を系外に取り出し、新たなアルカリエッチング液を補給し、この系外に取り出されたアルカリエッチング液と硫酸アルミニウム溶液を中和して擬ベーマイトを生成することを特徴とする擬ベーマイトの製造方法。
【請求項2】 生成した擬ベーマイトの窒素吸着法による20Åから600Åの範囲の細孔容積が0.75〜1.8cc/gであることを特徴とする請求項1記載の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項3】 アルカリエッチング液と硫酸アルミニウム溶液の中和反応が、温度50〜80℃かつpH8.0〜9.5の範囲で行われ、30分以下で反応を終了させることを特徴とする請求項1記載の擬ベーマイトの製造方法。
【請求項4】 請求項1〜3に記載の擬ベーマイトを混練し、焼成することを特徴とする触媒用担体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、触媒用担体の製造などに用いられる擬ベーマイト粉の製造方法に関し、同時に、アルミニウムのエッチング工程で副生するエッチング液に含まれるアルミニウム源の有効利用に関する。
【0002】
【従来の技術】石油精製では水素化精製用触媒として、アルミナ担体上に水添能のある活性金属成分を担持させた触媒が多く用いられている。アルミナ水和物である擬ベーマイトの微粉体を混練、成形した後、焼成することで作成できる触媒担体を用いることで、高い活性の水素化精製用触媒が得られる。
【0003】触媒担体は、活性金属を均一に分散させるために大きな表面積を有することが必要であり、メソポアと呼ばれる直径が数十から数百Åの範囲にある細孔の容積が大きいことが望ましい。一方、触媒担体は、触媒細孔内部の表面にある活性点へ反応物が到達し、また、生成物が離脱するための通路も備えていなければならない。そのためには、反応物及び生成物の拡散を妨げることのない大きさの細孔を有することが要求される。
【0004】このためには、処理対象の石油留分に応じた細孔分布を有することが触媒担体に要求される。特に、常圧残さ油あるいは減圧軽油を処理する場合は、反応の際に大きな分子量の油が分解し、細孔を閉塞し、著しく触媒活性を低下させることが知られている。したがって、細孔径分布がシャープで、処理対象の分子量にあった特定の細孔径における細孔容量が大きいことが望まれる。従来、この種の触媒においては、原料油種、反応条件、触媒粒子径等を考慮して、ある特定の細孔分布を選定することにより、触媒の不活性化の速度を低下し得ることが知られている。
【0005】一般に、細孔径分布がシャープで原料油の分子量にあった特定の細孔容量が大きいアルミナ担体は、擬ベーマイト粉に酸やアルカリ等の解膠剤を添加し、混練することによって解膠し、その後押し出してペレット状に成形し、乾燥、焼成によって製造される方法が採用されている。担体の細孔径を調節する方法としては、擬ベーマイト粉の混練成形物の焼成温度、雰囲気を変える方法が知られているが、細孔径分布は原料の擬ベーマイト粉末及び混練成形物の細孔径分布によって決まってしまうため、焼成条件により特定の細孔径範囲の細孔容積を大きくするような制御はできない。
【0006】焼成以外の工程で細孔径分布を調整する工程としては擬ベーマイト粉末の混練工程がある。混練により目的の細孔径と特定の範囲の細孔容積を大きくするようなシャープな細孔径分布を得るためには、1次粒子、2次粒子の大きさと粉の解膠性が重要な因子である。擬ベーマイト粉によっては、解膠性が悪く、酸やアルカリでは解膠できず、細孔径分布がブロードな担体となってしまうことがある。このため、このような用途には解膠性の良い擬ベーマイト粉が必要とされる。
【0007】一般に、アルミナ担体の原料となる擬ベーマイト粉は、(1)ギブサイト(アルミニウム水酸化物)からアルミン酸やアルミニウム塩を形成し、これらを反応させること、または、(2)アルミニウムアルコキシドの加水分解などで合成される。鋭い細孔径分布を有する触媒担体を調製できる擬ベーマイト粉を合成する方法は、たとえば特公平6-8174において、ヒドロキシカルボン酸の存在下で2段階に分けて水酸化アルミニウムの沈殿を生成する方法が開示されている。しかしながら、解膠性が良好な粉末から調製した細孔径分布のシャープな担体は、水安定性が低いため、触媒金属溶液を含浸させる工程で強度低下が生じるため、触媒製造が難しい。
【0008】他方、アルミニウムの表面処理時には、アルミニウム分を含んだエッチング廃液や、陽極酸化処理電解液の廃液が大量に発生する。これらの廃液のアルミニウム分は、硫酸アルミニウムやギブサイトとして回収利用されいるが、その用途は凝集剤やセメント原料などの付加価値の低い用途に限定されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従来、付加価値の低い用途に利用されていたアルミニウムの表面処理時に発生する廃液を用いて触媒担体に利用可能な擬ベーマイト粉を製造する方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、アルミニウムの表面処理時に発生するアルミニウム分を含んだ廃液が擬ベーマイト粉の原料となりうることに着目し、鋭意検討の結果、本発明を完成した。
【0011】本発明による擬ベーマイトの製造方法は、アルミニウムのエッチング槽から取り出されたアルカリエッチング液のアルミニウム濃度を調整してエッチング槽へ循環する工程において、エッチング槽から取り出されたアルカリエッチング液の一部を系外に取り出し、新たなアルカリエッチング液を補給し、この系外に取り出されたアルカリエッチング液と硫酸アルミニウム溶液を中和して擬ベーマイトを生成するものである。
【0012】生成した擬ベーマイトの窒素吸着法による20Åから600Åの範囲の細孔容積が0.75〜1.8cc/gであることが好ましく、アルカリエッチング液と硫酸アルミニウム溶液の中和反応が、温度50〜80℃かつpH8.0〜9.5の範囲で行われ、30分以下で反応を終了させることが好ましい。また、本発明による触媒用担体の製造方法は、上述の擬ベーマイトを混練し、焼成するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】[アルカリエッチング液] 金属アルミニウムの表面処理などの目的のためにその表面をエッチングするアルカリ性のエッチング液である。エッチング液としては、一般に入手の容易さなどから、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)水溶液が用いられる。エッチングされる金属アルミニウムは、アルミニウムを主成分とする、例えば、アルミニウムを80%以上、特には90%以上含むような合金でもよい。
【0014】典型的なエッチングは、エッチング液が満たされたエッチング槽に表面処理対象となる金属アルミニウムを浸けて取り出すことが連続的に行われている。エッチング液は、エッチング槽から取り出され循環しているが、その一部分を系外に取り出し、取り出したエッチング液に相当する新鮮なエッチング液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)を系内に追加する。エッチング液の取り出し量を調整することにより、エッチング液のアルミニウム濃度を一定に維持し、一定の条件でエッチングを行うことが可能となる。この取り出したエッチング液を用いて本発明の擬ベーマイトを製造する。
【0015】[硫酸アルミニウム溶液] 硫酸アルミニウム溶液として、金属アルミニウムの表面処理から副生する硫酸アルミニウム溶液を用いることもできる。硫酸アルミニウム溶液に含有されるアルミニウムに対してモル比で0.006以下のアルミニウム以外の金属分を含有していてもよい。
【0016】[擬ベーマイトの合成] 擬ベーマイトの合成は、アルカリエッチング液と硫酸アルミニウム溶液を中和することで行われる。アルカリエッチング液は、エッチング槽から抜き出されたそのまま、または濃度などを調整して擬ベーマイト粉の合成に用いる。アルミニウム濃度は0.3〜6mol/L、特には0.5〜1.5mol/Lが、また、アルカリ/アルミニウムのモル比は、1〜3、特には1.5〜2.8が、触媒担体用の擬ベーマイト粉の合成に適している。エッチング液の濃度が低い場合には、アルミニウム金属くずなどの金属アルミニウムをさらに溶解させてアルミニウム濃度を上げることもできる。また、硫酸アルミニウム溶液アルミニウム濃度は0.5〜2mol/Lが好ましい。
【0017】触媒担体に適した擬ベーマイト粉を得るためには、アルカリエッチング液と硫酸アルミニウム溶液の混合を50〜80℃で行い、混合の割合を混合液のpHが8.0〜9.5となるように調整し、擬ベーマイト沈殿の生成は、反応開始から30分以下、特には7分〜25分で終了することが好ましい。反応温度が50℃以下では、強固な凝集粒子を形成してしまい、熟成乾燥工程を経て得られた擬ベーマイト粉の細孔容積が小さい。pHが8.0より低いと得られる擬ベーマイトの細孔容積が小さく、pHが9.5を越えると比表面積の小さなバイヤライト相が生成するため好ましくない。
【0018】得られた擬ベーマイト粉は、熟成後、濾別・水洗され、触媒担体の原料となる。熟成は、擬ベーマイト粉を合成した溶液をそのまま所定時間攪拌または放置することで行われる。熟成時間は20分〜2時間が好ましく、これを越えると、擬ベーマイト粉の細孔容量が小さくなる。濾別・水洗は、擬ベーマイト粉と液体を分離した後、擬ベーマイト粒子表面に吸着している副生成物である硫酸ナトリウムまたは塩化ナトリウムを水で洗浄し、スプレードライまたはその他の乾燥装置を用いて乾燥する。乾燥温度は、高すぎると擬ベーマイトからガンマーアルミナへ相転移するため、80℃〜200℃が好ましい。
【0019】[擬ベーマイトの特性] 擬ベーマイトは、結晶内に余分の水分子を持つアルミナ水和物であり、Al・xHOで表され、xは1以上2未満である。ベーマイトのX線回折インデックスは、ASTMカードNo.5−0190に記載されているが、典型的には擬ベーマイトの(020)面間隔は6.2〜6.5Åであり、回折ピークの幅から求めた結晶子径は20〜50Åである。
【0020】本発明により製造された擬ベーマイトは、典型的には、窒素吸着法による全細孔容積が0.75-1.8cc/gの範囲にあり、20から60Aの範囲の細孔容積が0.3 cc/g以下、20から100Åの範囲の細孔容積が0.5cc/g以下、100から600Åの範囲の細孔容積が0.4cc/g以上である。細孔容積が0.75〜1.8cc/g、特に0.75〜1.6cc/gであることが好ましい。細孔容積がこの範囲未満では触媒の初期活性が得られ難く、逆に、この範囲を超えると触媒担体の機械的強度が低下する。窒素吸着法による比表面積を100〜500m2/gとすることでより高い触媒活性を得ることができる。
【0021】[触媒用担体の作成] 触媒用担体は、作成した擬ベーマイト粉を混練し、焼成することで作成する。この粉を混練することにより、容積平均細孔径が60〜120Åの範囲で容積平均細孔径を制御でき、特定の範囲の細孔容積を大きくするようなシャープな細孔径分布を容易に得ることのでき、かつ、触媒金属塩溶液含浸時における強度低下が少ない担体が得られる。混練時には、120Å以上の細孔が形成する細孔容積は少なくなり、60〜120Åの範囲の細孔が形成する細孔容積が増えてくる。平均細孔の調整は、混練時に添加する解膠剤の種類や濃度あるいは混練時間によって任意に制御することができる。
【0022】混練は、一般に触媒調製に用いられている混練機により行うことができる。上述の擬ベーマイトの水分を調整し、攪拌羽根で混合するような方法が好適に用いられる。通常、乾燥した擬ベーマイトを用いる場合は、混練の際に水を加えるが、加える液体としては、アルコールやケトンでもよい。混練の時間やその温度は、適宜選択できる。また、硝酸などの酸やアンモニアなどの塩基、有機化合物、バインダー、セラミックス繊維、界面活性剤、水素化活性成分、ゼオライト等を加えて混練してもよい。
【0023】焼成は、常温〜150℃で、特には100〜130℃で乾燥した後、350〜800℃で0.5時間以上、特には450〜600℃で0.5〜5時間焼成することが好ましい。通常、乾燥工程前に、スクリュー式押出機などの装置を用いて、容易にペレット状、ハニカム状などの形状に成形する。典型的には、0.5〜5mm径の球状、円柱状、円筒状などの形状が用いられる。γ−アルミナ以外の担体成分として、担体重量に対して20重量%以下、特には10重量%以下の他の成分を含ませることもできる。
【0024】[水素化精製用触媒] 上述の触媒用担体に水素化活性金属成分を担持して、水素化精製用触媒を作成する。担持する水素化活性金属成分としては、周期律表第6族、第9族および第10族金属元素から選ばれる少なくとも一種の金属元素を用いることができる。周期律表第6族金属元素の少なくとも一種、特にはモリブデンまたはタングステンと、第9族または10族金属元素の少なくとも一種、特にはニッケルまたはコバルトのいずれかあるいはこの両元素を用いることが好ましい。これらの元素は、金属、酸化物状態、あるいは硫化物状態で担体に含有させることが好ましい。水素化活性金属成分以外に、りんの酸化物または硫化物などを担持することもできる。
【0025】これらの金属成分の担持は、通常用いられる含浸法、例えば、pore-filling法、加熱含浸法、真空含浸法等、浸漬法、混練法等の公知の手法を用いるとよい。典型的には、担体に水素化活性金属成分を含有する水溶液を含浸させ、乾燥した後、焼成することにより担持できる。なお、この場合、第6族金属元素は、パラモリブデン酸アンモニウム、パラモリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸、タングステン酸アンモニウム、タングステン酸、無水タングステン酸、リンタングステン酸などの化合物を水溶液として用いるとよい。また、第9族または10族金属元素は、ニッケルあるいはコバルトの硝酸塩、硫酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩などの水溶液が用いられる。
【0026】これらの担持量は、脱硫および脱窒素などの水素化精製活性の観点から、触媒重量に対し、第6族金属元素は、その合計量として金属換算で1〜15重量%、特には5〜10重量%、第9族または10族金属元素は、その合計量として金属換算で0.5〜5重量%、特には1〜3重量%とすることが好ましい。なお、金属成分の担持は、擬ベーマイトを混練する過程で金属成分を添加して混練することにより行うこともできる。
【0027】
【発明の効果】本発明は、アルミニウムのエッチング槽から取り出されたアルカリエッチング液のアルミニウム濃度を調整してエッチング槽へ循環する工程において、エッチング槽から取り出されたアルカリエッチング液の一部を系外に取り出し、新たなアルカリエッチング液を補給し、この系外に取り出されたアルカリエッチング液と硫酸アルミニウム溶液を中和して擬ベーマイトを生成するものである。したがって、利用価値の高い擬ベーマイト粉を不要となったアルカリエッチング液から製造することが可能となり、かつ、触媒担体の原料として適した擬ベーマイト粉を製造することができる。
【0028】
【実施例】アルカリエッチング液に相当するアルミン酸ナトリウム水溶液を金属アルミニウムの溶解により作成した。このアルミニウム濃度は1.0mol/Lであり、ナトリウム/アルミニウムのモル比は2.5である。
【0029】150Lの中和沈殿槽に所定温度の水75Lを用意し、攪拌しながら前記所定温度に加熱したアルミン酸ナトリウム水溶液を1.8L/分で送液し、同時に前記所定温度に加熱したアルミニウム濃度1.0mol/Lの硫酸アルミニウム水溶液を送液した。硫酸アルミニウム水溶液の送液量は、pHが9.0になるように調整し、この混合を15分間継続し、約120Lの混合液を得た。この混合液を前記所定温度に保持し、1時間攪拌した。得られたスラリーを濾過・洗浄して固形分をえ、スプレードライヤーで乾燥して擬ベーマイト粉を得た。
【0030】反応温度に相当する前記所定温度を57、60、70℃とし、また、アルミン酸ナトリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液の送液速度を変え、両液を混合する時間(混合を継続している時間を沈殿生成時間ともいう)を5〜35分に変えて得られた擬ベーマイト粉の細孔容積を表1、表2、表3に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】これらのベーマイト粉に3.25重量%硝酸を加えて混練を開始し、水を加えながら1時間混練した。これを押し出し成形機を用い、直径0.8mm、長さ3〜5mmの柱状物とした。130℃で乾燥した後、ロータリーキルンにより600℃で1時間焼成し、アルミナ担体を得た。
【0035】得られたアルミナ担体の性状を表1、表2、表3に併せて示す。反応温度T(℃)、沈殿生成時間t(分)において、担体の60−90Åの細孔容積が0.3cc/gを越える場合を○で、越えない場合を×として図1に示す。この図から48<t+0.6T<60の範囲内で60−90Åの範囲の細孔容積が0.3cc/gを越えることがわかる。混合時間が7〜25分で作成された擬ベーマイトから得られた担体は、60-90Åの範囲の細孔容積が大きく減圧軽油の脱硫・脱窒素触媒に好適な細孔構造を有している。また、水安定性が高く含浸時における強度低下が少ない。この水安定性は、担体30個を水に浸漬し、割れなかった個数で示している。
【出願人】 【識別番号】000231109
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエナジー
【出願日】 平成10年7月28日(1998.7.28)
【代理人】 【識別番号】100096367
【弁理士】
【氏名又は名称】藤吉 一夫
【公開番号】 特開2000−44232(P2000−44232A)
【公開日】 平成12年2月15日(2000.2.15)
【出願番号】 特願平10−212138