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【発明の名称】 セリウムの回収方法
【発明者】 【氏名】古市 弘

【氏名】清原 力

【氏名】神岡 一郎

【要約】 【課題】クロムエッチングに使用された硝酸アンモニウムセリウム(IV)を含むクロムエッチング廃液から溶解したクロムを除去し、セリウムを経済的に回収する方法を提供する。

【解決手段】酸濃度が高いクロム薄膜のエッチング廃液に抽剤を供給することによりセリウムを選択的に油相側に抽出させセリウムを回収する。この抽剤にアルカリ水溶液を供給してセリウムを水相側に回収しセリウムの沈殿物を得、更に酸化剤を供給して3価セリウムを4価セリウムにすると同時にクロムを溶解除去するセリウムの回収方法及びこれらの方法を用いて回収したセリウムを用いたエッチング液。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 セリウム及びクロムを含有する溶液を有機溶媒からなる抽剤と混合し、溶液中の4価セリウムを油相側に選択抽出し、セリウムを含む油相を分離、回収することを特徴とするセリウムの回収方法。
【請求項2】 セリウム及びクロムを含有する溶液を予め酸化処理しておくことを特徴とする請求項1記載のセリウムの回収方法。
【請求項3】 回収したセリウムを含む油相をアルカリ水溶液と混合し、セリウムをアルカリ水溶液からなる水相中に沈殿、回収することを特徴とする請求項1または2記載のセリウムの回収方法。
【請求項4】 セリウムの沈殿物を含む水相に酸化剤を供給することにより沈殿物中のクロムを溶解させることを特徴とする請求項3記載のセリウムの回収方法。
【請求項5】 酸化剤が過酸化水素であることを特徴とする請求項4記載のセリウムの回収方法。
【請求項6】 酸化剤との混合処理を終えたセリウム沈殿物から過酸化水素を除去することを特徴とする請求項4記載のセリウムの回収方法。
【請求項7】 請求項1〜6において最終的に回収されたクロムを実質的に含まないセリウムを更に硝酸アンモニウムセリウム(IV)として回収することを特徴とするセリウムの回収方法。
【請求項8】 請求項7において回収した硝酸アンモニウムセリウム(IV)をクロムエッチング液として使用可能な状態にして回収することを特徴とするセリウムの回収方法。
【請求項9】 請求項7〜8の方法で回収されたセリウムを使用したクロムエッチング液。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はクロムエッチング等に使用されたクロムエッチング溶液からのセリウムの回収方法に関し、より詳細には硝酸アンモニウムセリウム(IV)と酸とにより構成されるクロムエッチング液の溶液で、セリウムとクロムを含む溶液からのセリウムの回収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体や液晶ディスプレイ製造時には金属薄膜のエッチングが必要となる。中でもクロムエッチングにはセリウムの化合物が用いられる為、使用された後の廃液には4価のセリウムと6価のクロムが溶解している。共に強酸化性の物質で有害であるため廃液中からこれらの物質を除去する必要がある。その処理には従来より、特開昭52-68860号公報のようにクロム,セリウムを含有する硝酸アンモニウムセリウム(IV)廃液に亜硫酸水素ナトリウムを加え、クロムを還元し、次いで水酸化カルシウムを加え、該廃液中のクロムをセリウム水酸化物と共沈させて除去する方法が広く行われたきた。また特開平9-85264 号公報のように4価セリウム及び6価クロムを還元した後、吸着剤に吸着させ除去する方法も考案されている。しかし、いずれにせよ、これらの方法では高価なセリウムを大量に廃棄してしまうことになる。
【0003】またセリウムの精製方法として特開昭62-191422 号公報のように3価のセリウムを酸化剤で4価にし、セリウム4価と他の物質との性質の違いにより分離精製する方法が提案されているが、この方法ではクロムエッチング廃液のように不純物としてクロムが混入しているものに対してはセリウムとクロムが共沈してしまう為、セリウムからクロムを分離除去することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、上記の様に、セリウムとクロムを含有する廃液の処理時に、高価なセリウムを大量に廃棄しなくてはならないような現状の廃液処理方法の改良方法であって、高価なセリウムを回収でき、廃棄物を減らし環境に対して負荷の小さい、セリウム及びクロム含有廃液の処理方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、少なくともセリウム、クロム及び酸を含有する溶液と抽剤とを混合することにより、含まれる4価セリウムを水相側から油相側に選択的に抽出し、次いで油水分離を行いクロムを分離除去するセリウムの回収方法を見いだした。この方法は特に酸濃度が高いとき有効であり、4価セリウムの色はオレンジ色をしており、油相側に抽出されると油相の色がオレンジ色に変わり抽出されていることが容易に観察できる。
【0006】この4価セリウムの抽出において、一般的にはセリウムよりも6価クロムの方が油相へ抽出しやすい。しかし、クロム膜をテーパー角をつけてエッチングするような場合、特開昭64−86524号公報のように硝酸を2mol/l以上含むエッチング液が使用される。このように酸が大量に入っているクロムエッチング後の廃液と抽剤として酢酸エチルを1対1の割合で攪拌し、静置したところ、セリウムが油相側に抽出されることが分かった。しかし、この油相側にはクロムも混入しており、3価セリウムは少なかった。そこで、3価セリウムを先に酸化して4価にした後に抽出する方法を行った。その結果抽出できるセリウムの割合が格段に上昇した。また抽出後の水相にはセリウムは残留していたが、この液を再抽出しても残った6価クロムの割合が上昇している為、セリウムの選択性は悪化する。即ち本発明の要旨は、セリウム及びクロムを含有する溶液を有機溶媒からなる抽剤と混合し、溶液中の4価セリウムを油相側に選択的に抽出し、セリウムを含む油相を分離、回収することを特徴とするセリウムの回収方法に存する。
【0007】なお、上記で回収されたセリウムを硝酸アンモニウムセリウムとして回収すること、及び、上記方法で回収されたセリウムを使用したクロムエッチング液も、本発明の要旨に含まれる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で用いられるセリウム、クロムを含有する溶液とは、少なくともセリウム、クロムを含有する水溶液であり、通常、この水溶液のpHは1以下であることが望ましい。特に、本発明においては、半導体や液晶ディスプレイ製造時の金属、薄膜のエッチング、主としてクロムのエッチングに使用された、硝酸アンモニウムセリウム(IV)を含むクロムエッチング廃液であって、前述の特開昭64−86524号公報のように硝酸を2mol/l以上含むような酸濃度の高い溶液が好適に用いられる。上記のような溶液と、抽剤とを混合することにより、4価セリウムを油相側に選択的に移動させ、水相を除去して、油相を分離回収する。
【0009】ここで抽出に使用される抽剤としては有機溶媒からなり、クロムに対して4価のセリウムの抽出能の高いものを選定する必要があり、例えば、脂肪族エステル系のものが好ましく、特に酢酸エチルが良好である。このとき抽出に先立って、溶液中に含まれる3価セリウムを電解酸化等により4価セリウムに酸化しておくと、抽出できるセリウムの割合が上昇するので好ましい。
【0010】上記のようにして分離回収した油相にアルカリ溶液を供給すると、セリウムが水相中に沈殿物として回収できる。この時アルカリを供給しpHを上げるが、沈殿生成により水酸化物イオンが消費される為、水相側のpHが低下する。後の工程を考慮すると、このpHはアルカリ側に保持しておくことが好ましい。よって、このアルカリ供給時には電気化学的な方法を用いて液性を測定しながら行うとよい。この時測定する液性としてはpHが考えられるがこれに限定されるわけではない。なお、ここで用いるアルカリについては、後述する。
【0011】ここで回収したセリウム沈殿物中にも微量のクロムが含まれている。クロムの除去方法の一つとしてセリウムを析出物とし、クロムを6価クロムとして液中に溶解し、固液分離をして、セリウムを回収する方法が挙げられる。即ち、回収した沈殿物中のセリウム沈殿物から油相を分離し、セリウム沈殿物と水相側の液とする。この液のアルカリ性を保持してセリウム及びクロムに対する酸化剤を共存させると、セリウム及びクロムは酸化される。この時使用する酸化剤は過酸化水素が好適である。以下、酸化剤として過酸化水素を用いた場合を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。ここで、得られる4価の水酸化セリウムは過酸化水素と赤色の錯体を生成し沈殿するが、6価クロムは液中に溶解する。この時のpHはアルカリであれば良いが、クロムの溶解を効率的に行わせるには速度の問題から好ましくは10以上、更に好ましくは12以上が良い。このような方法を用いると回収したセリウムをエッチング液として必要な4価に酸化できるとともにクロムの除去を同時に行うことができる。この沈殿物を固液分離すれば、セリウムを回収することができる。
【0012】本発明において使用するアルカリはpHを上げる目的だけであるから、アルカリであれば、いずれでも良く、供給する形態も、固体でも、水溶液でも構わない。アルカリとして考えられるのは、水酸化リチウム,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化カルシウム、アンモニア又はそれらの水溶液であるが、これだけに限定されるものではない。
【0013】この処理においてpHがセリウム及びクロムの酸化と密接な関係がある為、pHコントロールが重要になる。pHが低い状態で過酸化水素を共存させても、クロムは溶解してこないのである。よってアルカリを供給する時には、電気化学的手法や分光学的手法を使用して液性を測定しながら行うのが良い。電気化学的手法としてはpHや酸化還元電位、分光学的手法としてはクロム6価の吸収を測定する方法がある。しかし測定方法としてはこれらに限定されるものではない。
【0014】上記で述べた方法で回収できるセリウム沈殿物は前述のように赤色の水酸化セリウムの過酸化水素付加錯体である。よってこのまま固液分離し、硝酸等の酸に溶解すると4価セリウムは沈殿物自体に含まれる過酸化水素により還元されてしまい、3価セリウムの溶液になってしまう。この溶液をエッチング液として使用するには再度セリウムを酸化する必要が生じる。これを回避するためには、水酸化セリウムの過酸化水素付加錯体から過酸化水素を除去する必要がある。
【0015】過酸化水素を除去する方法の一つとして、セリウムの過酸化水素錯体から過酸化水素を自己分解して除去する方法がある。過酸化水素は自己分解することにより酸素と水になり、除去することが可能であるし、分解物はセリウムの回収に対し、なんら問題を起こさないからである。過酸化水素が除去されると、セリウム沈殿物は赤色から水酸化セリウムの黄色に変化し、過酸化水素の除去が確認できる。なお過酸化水素の除去は、セリウム沈殿物の固液分離をする前でも後でも構わない。
【0016】過酸化水素の自己分解速度は常温ではかなり遅い。そこで過酸化水素の自己分解を促進させることにより、早く水酸化セリウムを回収することができる。自己分解を促進させる方法として加熱,赤外線照射,紫外光照射が有効であるが、自己分解を促進させる方法としてこれだけに限定されるものではない。なお、上記のようにして回収したセリウム沈殿物中にもクロムが微量残っており、更にこの残留クロムを除去する方法を以下に述べる。
【0017】まず必要な情報として回収セリウムが必要な純度に達しているかどうかということである。これを調べるには、回収物中のクロム濃度を定量するか、先にクロム除去の為に行った操作の濾液中に溶解しているクロムの濃度を測定することにより沈殿物中に含まれるクロム濃度を推定する。沈殿物中のクロム濃度の測定にも溶液中のクロム濃度の測定にも多くの方法があるが、分光学的手法もしくは電気化学的手法を用いて測定するのが良い。分光学的手法としてはICP発光や、蛍光X線測定、吸光度の測定等があり、電気化学的手法としては酸化還元電位等の測定がある。
【0018】先に回収したセリウム沈殿物にアルカリ溶液及び酸化剤を供給して攪拌するとクロムが溶解してくる。この時、先の時点でクロムが既に酸化されている場合は酸化剤を加えなくてもクロムは溶解してくる。しかし、クロムを除去する効率を考えた場合、酸化剤を加えた方が有効である。これは先にも説明したが、アルカリの状態で過酸化水素を共存させると、セリウムもクロムも酸化され、この時4価の水酸化セリウムは過酸化水素と赤色の錯体を生成し沈殿しているが、酸化され生成した6価クロムは液中に溶解するからである。この時のpHはアルカリであれば良いが、クロムの溶解を実際に行わせるには速度の問題から好ましくは10以上、更に好ましくは12以上が良い。
【0019】なお、ここで用いるアルカリ、酸化剤の種類、供給方法等の種々の条件は、前述の場合と同じである。本発明においてはセリウム沈殿物中のセリウム濃度が所望の量になるまで上記の操作を繰り返すことにより、より精密な分離ができる。上記のようにして回収されたセリウム水酸化物は硝酸アンモニウムセリウム(IV)にして回収することが可能である。即ち、回収した水酸化セリウムを硝酸に溶解し、濾過後硝酸アンモニウムを投入し、濃縮・複塩化し析出物を硝酸アンモニウムセリウム(IV)として回収する。しかし水酸化セリウムから硝酸アンモニウムセリウム(IV)として回収する方法としてこの方法に限定されるものではない。
【0020】回収した硝酸アンモニウムセリウム(IV)は再度エッチング液として使用可能な状態にすることができる。回収した硝酸アンモニウムセリウム(IV)を純水溶解し過塩素酸を供給後濃度調整して例えば硝酸セリウムアンモニウム13wt%、過塩素酸5wt%の溶液としてエッチング液として使用可能な状態とすることができる。エッチング速度を測定すれば、試薬から調整したものとの比較ができる。なお、本発明で、回収したセリウムを使用したクロムエッチング液の組成やその調整方法はこの方法に限定されるものではない。
【0021】
【実施例】以下、本発明につき実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1硝酸アンモニウムセリウム(IV)13wt%、硝酸38wt%の組成のクロムのエッチング液によりクロム薄膜をエッチングした廃液で6価クロム濃度0.017mol/l、4価セリウム濃度0.164mol/l、3価セリウム濃度0.102mol/lの溶液100mlを電解酸化し、4価セリウム濃度0.25mol/l にした。その後酢酸エチル100mlを供給し、攪拌した。そしてセリウムを油相側に抽出した。更に油水分離し、油相側に1規定水酸化ナトリウム水溶液100mlを加え攪拌した。油水分離して沈殿物を含む水相を得た。その水相に35wt%過酸化水素水10mlを加え常温で1時間攪拌した。更に80℃に昇温して2時間攪拌後固液分離して水酸化セリウムを回収した。この水酸化セリウムを純水洗浄後、再度1規定水酸化ナトリウム水溶液100mlと35wt%過酸化水素水10mlを加え常温で1時間攪拌した。更に80℃に昇温して2時間攪拌後、固液分離して水酸化セリウムを回収した。それを硝酸に溶解し、濾過後硝酸アンモニウムを投入し、濃縮・複塩化し析出物を硝酸アンモニウムセリウム(IV)として回収した。この時セリウムとしての回収率は81wt%、混入クロム濃度は150wtppm であった。この硝酸アンモニウムセリウム(IV)を純水溶解し過塩素酸を供給後濃度調製して硝酸アンモニウムセリウム(IV)13wt%、硝酸38wt%の溶液を50ml作った。クロム膜はガラス基板上にクロムを1500Åスパッタリングした基板を作り、回収したセリウムから調製した前述のエッチング液に付け、ゆっくり攪拌しながらクロムをエッチングさせた。エッチングの終了はガラス基板の透過光を測定して求めた。この時のエッチング速度は15Å/sであり、別途試薬から調製したエッチング液の場合とほぼ同じであった。
【0022】比較例1硝酸アンモニウムセリウム(IV)13wt%、過塩素酸5wt%の組成のクロムのエッチング液の廃液100mlに、水酸化ナトリウムを供給してpH6.2まで上昇させ、その時の沈殿物を得た。その結果、クロム及びセリウムの殆どが共沈してしまい、クロムとセリウムの分離ができなかった。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、クロムエッチング液の使用済み廃液からセリウム及びクロムを回収することが可能になり、今まで廃棄していたセリウム水酸化物及びクロム水酸化物の廃棄物を減少させることが可能であり、環境対策としての効果が大きいとともに、高価なセリウムを回収することによりクロムエッチングのコストダウンに寄与する。
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【出願日】 平成10年6月18日(1998.6.18)
【代理人】 【識別番号】100103997
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 曉司
【公開番号】 特開2000−7332(P2000−7332A)
【公開日】 平成12年1月11日(2000.1.11)
【出願番号】 特願平10−170910