| 【発明の名称】 |
高純度リン酸 |
| 【発明者】 |
【氏名】山崎 康夫
【氏名】田部井 清吉
【氏名】根岸 克幸
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、各種金属元素がその液中の状態が溶解、不溶解に拘わらず、実質的に検出できる限界と同程度の高純度リン酸を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の高純度リン酸は、H3PO4の濃度を85重量%に換算したときの含有不純物は、Feとして25ppb以下、Mnとして3ppb以下、Naとして40ppb以下であることを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 H3PO4の濃度を85重量%に換算したときの含有不純物は、Feとして25ppb以下、Mnとして3ppb以下、Naとして40ppb以下であることを特徴とする高純度リン酸。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、高純度リン酸に関する。更に言えば、本発明の高純度リン酸は、Fe、Mn及びNa元素の混入が少ないために半導体製造工程において窒化珪素膜を除去するために使用した際に、微細素子の電気特性を劣化させる不純物を実質的に含まない好適な電子材料となる。また、本発明の高純度リン酸は、不純物の含有量が少ないという特徴から、金属アルミニウムのエッチング液、セラミック用アルミナエッチング液、光ファイバー用のリン酸ガラスの原料としても好適に使用できる。 【0002】 【従来の技術】従来のリン酸を晶析法で精製する技術は、古くは例えば特公昭44−14692号公報にみられる。これによれば、リン酸を所望純度に精製するために晶析操作、母液からの分離操作及び融解操作からなる一連の晶析精製操作を3回繰り返す方法が開示されている。 【0003】追村ら[東洋曹達報告:10、2、21(1966)]は、リン酸を晶析操作で精製する基礎物性データである飽和溶解度、過飽和度と成長速度の相関、リン酸半水結晶の吸湿性、リン酸中の結晶沈降速度について明らかにしたが、析出したリン酸半水結晶粒子の純度については、定量的には論じていない。 【0004】また、例えば青山らのProceedings of a Conference of Industrial Crystallization (1976)の第413〜420頁には、流動層型晶析装置での応用例が示されている。この流動層型晶析装置では、均一粗大粒子が生成するため、母液からの分離操作が容易になる上に、流動層部分に設けられた外部熱交換器により溶液を冷却し、効率よく晶析熱を除去することにより生産速度を高くすることができる特徴をもっている。 【0005】このようにリン酸を晶析操作で精製することは公知であるが、これらの操作によって得られたリン酸の純度については明確に記されていないうえに、リン酸を晶析操作で精製する方法は明らかにされているものの、その方法による効果が明示されていない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような従来技術に鑑みて鋭意研究を行った結果完成されたものであり、各種金属元素が、その液中の状態が溶解、不溶解に拘わらず、実質的に検出できる限界と同程度の高純度リン酸を提供することを目的とするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】すなわち、本発明はH3PO4の濃度を85重量%に換算したときの含有不純物は、Feとして25ppb以下、Mnとして3ppb以下、Naとして40ppb以下であることを特徴とする高純度リン酸に係る。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明においてリン酸とは、下記の一般式H3PO4で表される成分とH2Oの任意の比率の混合液体であり、その濃度はJIS K−1449に示される水酸化ナトリウムによる滴定法で測定するものをいう。 【0009】一般に、リン酸は、他の鉱酸と比べて蒸気分圧が低く蒸留法を適用して精製することは容易でなく、また、工業的に精製することは実質的に非常に困難な化合物であるけれども、本発明に係る高純度リン酸は、前記したようにFe、Mn及びNaすなわち鉄、マンガン及びナトリウムの成分含有量が少ないことを特徴とするリン酸である。 【0010】本発明に係るリン酸は、不純物量がppbのレベルを扱うものであるところから、測定精度が実際上問題となるので次のように定義する。すなわち、リン酸中の不純物成分における各元素すなわちFe、Mn及びNa等の含有量の値は、希釈率5倍(Naにおいては100倍)に希釈した試料を炭素製加熱炉に10μl注入し、800℃に加熱してリン酸を除去し、表1に示す元素に応じた原子化温度において原子状となった元素を元素によって定めた測定波長の光の吸光度を希薄塩酸中の標準試料と比較する、いわゆるフレームレス原子吸光光度分析法で測定評価するものをいう。また、リン酸の純度は、単位リン酸質量当たりの元素の質量の比率として表す。フレームレス原子吸光光度分析によるFe、Mn及びNaの検出下限を表1に示す。 【0011】 【表1】
【0012】なお、前記の検出下限は次式で算出した。 【数1】
ここで、試料注入量は10μl、試料密度は1g/cm3とした。 【0013】本発明に係る高純度リン酸は前記の測定法で求めた不純物量、特に、Fe、Mn及びNaがそれぞれ25ppb以下、3ppb以下及び40ppb以下にあるものである。 【0014】リン酸は各種金属に対する腐食性が強いため、金属等の表面エッチング液として有用であるが、本発明に係るものは特に上記各元素の不純物量が少ない高純度リン酸であるため、半導体の分野その他精密工業に用いられる金属、ガラスなどのエッチング液として最適なものである。 【0015】次に、本発明に係る高純度リン酸は、(イ)の晶析工程と(ロ)のリン酸結晶の発汗操作による精製工程から本質的になるプロセスにより工業的に製造することができる。 【0016】本発明において適用できる原料リン酸は、特に限定はなく、乾式法または湿式法で得られる工業用リン酸であり、その濃度は70重量%以上にあるものである。濃度が70重量%未満では飽和温度が低く、晶析に際し適切な過飽和度を得るのに多くのエネルギーを必要とし、工業的に好ましくない。また、上限は飽和濃度(91.6重量%)までであり、それ以上はリン酸半水結晶以外の結晶が析出する恐れがあり、更に粘度が高くなって晶析、分離が困難となり好ましくない。なお、本発明の目的上可及的に精製され且つ浮遊微粒子を除いたリン酸を原料とすることが好ましい。 【0017】(イ)晶析工程この工程は、原料リン酸よりリン酸半水結晶を析出させる晶析工程である。原料リン酸の温度は15〜30℃、好ましくは18〜27℃にあり、且つ温度制御が効率的にできるように循環系を構成されたものがよい。 【0018】リン酸の晶析は前記したように冷媒を流通した晶析管を原料リン酸液に浸漬せしめ、その管表面に半水結晶を析出させるものである。 【0019】晶析管としては多くの場合、例えば硬質ガラス製の二重円筒形の中空構造をもったもので、その内部に冷媒を流通させることにより管表面の温度を所定の過冷却温度に調整できるようにした比較的簡単なものでよい。 【0020】従って、晶析管表面の形状は特に円筒形でなければならないということはなく、冷媒が流通でき且つ晶析管表面の温度が所定温度に対して±1℃、望ましくは±0.05℃に保てるならば平面、その他の形状を採ることができる。 【0021】また、冷媒は、水及びエチレングリコールの混合溶液であるが、操作する温度の範囲において固体が析出せず流動性があれば、他の冷媒も同様に用いられる。係る晶析管を原料リン酸中に浸漬させることにより管表面が過冷却状態にあるところから、その表面に半水結晶が析出する。 【0022】本発明において、この過冷却温度は−2〜−8℃の範囲がよく、これはそのような状態の冷媒を流通させることにより保持される。ここに、過冷却温度とは、リン酸の温度からそのリン酸の濃度に対して次式で示す飽和温度を差し引いた値である。 【数2】
ただし、リン酸濃度は(重量%)で表したものである。 【0023】従って、過冷却温度は、晶析操作においては負の値、次の精製工程に係る発汗操作においては、正の値をとる。係る温度に設定した理由は、本発明者らの数多くの実験により、高純度リン酸の収率と不純物除去の効率との相対的関係から求められたものである。この晶析工程により、析出したリン酸半水結晶は母液の原料リン酸に比較するとかなりの不純物が除去されたものであり、晶析条件の如何によっては、精製効果が著しいものである。 【0024】(ロ)精製工程この工程は、前工程で析出した半水結晶を、晶析管をリン酸液より取り出すことにより母液と分離せしめた後、該結晶を発汗させて結晶内外の含有不純物を除去することにより、更にリン酸を精製する工程である。ここに、発汗とは、母液より分離した結晶表面に付着した母液の過冷却温度を所定の範囲に保持して結晶の表面の一部を融解し、滴下させる操作をいい、この操作により付着母液の不純物及び結晶内部に取り込まれた不純物が滴下液として除去される。従って、このときの過冷却温度はリン酸半水結晶の歩留まりと不純物の除去効果との相対的関係から設定され、多くの場合0〜10℃の範囲にある。 【0025】また、発汗操作における融解量は、析出したリン酸半水結晶の質量に対して滴下したリン酸液量の比率で表したとき、10重量%以上40重量%以下の範囲であり、好ましくは20重量%以上35重量%以下の範囲で操作を行う。これは、本発明者らの研究によれば、融解量が10重量%未満では、発汗効果が不充分で高純度リン酸が得られ難く、40重量%を超えて発汗操作を継続しても、発汗操作の効果が飽和してしまうためである。 【0026】リン酸結晶の発汗により充分目的とする高純度リン酸を得ることができるが、必要に応じこの発汗の前後のいずれかにおいて超純水ないし製品の高純度リン酸で晶析管表面に析出したリン酸半水結晶を置換洗浄して不純物を除去する精製工程を付加することもできる。このように置換洗浄とは、析出したリン酸半水結晶の表面に、超純水ないし高純度リン酸の任意の比率の混合物を接触させ、リン酸半水結晶に付着した原料リン酸を除去する操作であり、係る操作でより効果的にリン酸半水結晶に含まれた不純物を可及的に除去することができる。なお、この操作は多くの場合、発汗操作の後で行う方が合理的である。かくして、本発明によれば、高純度のリン酸結晶を得、次いで必要に応じこれを超純水に溶解すれば高純度リン酸液として工業的に有利に製造することができる。 【0027】本発明の高純度リン酸を製造するための方法によれば、原料リン酸を所定温度における過冷却状態で半水結晶として晶析することにより一次精製されたリン酸半水結晶を得、次いで、この結晶を発汗操作させることにより結晶内部に取り込まれた不純物が結晶表面にマイグレーションして濃縮され、この不純物と結晶表面に付着した母液の不純物とが液滴の中にあって滴下除去することにより第二次の精製がなされる。 【0028】また、より効果的な精製は、前記二次精製の前後において、好ましくはその後で、水ないし高純度リン酸で置換洗浄する第三次の精製を所望により施すことにより達成され、高純度リン酸を得ることができる。 【0029】 【実施例】実施例で用いる原料リン酸は次のように調製した。すなわち、公知のリン酸の製造法である乾式法で製造したリン酸(H3PO4として89重量%)をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でできた孔径0.8μmのメンブランフィルター[東洋濾紙(株)社製:T080A047A]で濾過することによって、0.8μm以上の粒子の個数を減少させ、とりわけ2μm以上の浮遊微粒子を取り除いた。このリン酸中の金属元素の量をフレームレス原子吸光光度分析によって測定したところ、Feは180ppb、Mnは50ppb、Naは250ppbであった。なお、85重量%の原料リン酸は、この89重量%の原料リン酸を超純水で希釈して調製した。 【0030】実施例1〜3所定の濃度に調製した原料リン酸を硬質ガラス製容器に2.5kg入れ、所定の過冷却温度となるように温度を設定し撹拌用ポンプで原料リン酸を循環し原料リン酸の温度及び濃度の分布を少なくした。他方、外径2.5cm、長さ10cmの二重円筒形晶析管を用い、次のような操作と条件で実施した。すなわち、原料リン酸中に晶析管を浸漬し、浸漬管内部に所定過冷却温度の冷媒(水とエチレングリコールの混合液)を流通し、晶析管の伝熱面表面にリン酸半水結晶を晶析した。このときの条件を表2に示す。晶析操作の後に析出結晶の質量を測定した結果を併せて表2に示す。 【0031】 【表2】
【0032】なお、晶析管表面へリン酸半水結晶が晶析する速度は、冷媒の過冷却温度によって異なるが、およそ12〜16kg・cm-2・hr-1の範囲であった。 【0033】所定の結晶成長時間が経過した後、晶析管を取り出し、原料リン酸を滴下させ分離した。このリン酸半水結晶に含まれるFe、Mn及びNa等の不純物成分をフレームレス原子吸光光度分析によって測定して晶析工程におけるリン酸の精製の程度を調べたところ、表3の結果が得られた。 【0034】 【表3】
【0035】次いで、晶析工程で得たリン酸半水結晶が付着した晶析管を引き上げた後、発汗操作時の冷媒温度を表4に記載の温度になるようにすると共にこの温度ないしは少なくとも±2℃の範囲で一定の温度に保った気相中に保持したところ、リン酸半水結晶の表面の一部が融解して結晶に付着した母液と共に滴下した。晶析管の表面に析出し付着したリン酸半水結晶の質量に対して滴下した前記混合液量が30重量%となった後に晶析管の表面に残ったリン酸半水結晶を採取し、リン酸半水結晶に含まれるFe、Mn及びNaの成分含有量をフレームレス原子吸光個分析によって測定した。その結果を表4に示す。 【0036】 【表4】
注:ndは検出できない量を意味する。()内の数値は発汗前の値(表3に記載)を示す。 【0037】実施例4、5実施例1〜2で得られた発汗後のそれぞれの精製リン酸半水結晶に対して、晶析管表面の過冷却温度を5℃とした。この晶析管表面に析出したリン酸半水結晶に超純水及び本発明に係る高純度リン酸を噴霧による置換洗浄した。この洗浄操作後、表面に残ったリン酸半水結晶を採取し、リン酸半水結晶に含まれるFe、Mn及びNaの成分含有量を上述と同様に測定したところ、表5の結果が得られた。 【0038】 【表5】
注:()内は洗浄前発汗後の不純物量を示す。従って、実施例4は実施例1、実施例5は実施例2に係る発汗後のリン酸半水結晶を用いたものである。 【0039】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の高純度リン酸は、Fe、Mn及びNa元素成分の混入が少ないために半導体製造工程において窒化珪素膜を除去するために使用した際に、微細素子の電気特性を劣化させる不純物を実質的に含まない好適な電子材料となる。また、更に言えば、この高純度リン酸は、不純物の含有量が少ないという特徴から、金属アルミニウムのエッチング液、セラミック用アルミナエッチング液、光ファイバー用のリン酸ガラスの原料としても好適な材料にもなる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000230593 【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成1年12月21日(1989.12.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100057874 【弁理士】 【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−26111(P2000−26111A) |
| 【公開日】 |
平成12年1月25日(2000.1.25) |
| 【出願番号】 |
特願平11−181312 |
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