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【発明の名称】 クレーン用吊り治具
【発明者】 【氏名】上田 良司
【氏名】米澤 俊裕
【氏名】竹迫 涼一
【課題】吊り治具を軽量化し、もってPCパネルのような重い大型資材の搬入、搬出にもクレーンを使用して吊ったまま水平に進退させることができ、かつ吊った状態で左右位置の調整も可能にする。

【解決手段】前後方向に長い左右一対の縦ビーム11にそれぞれ上部トロリー16を設置し、左右の上部トロリー16を幅方向に長い横ビーム29で接続し、横ビーム29に左右一対の下部トロリー30を設置し、左右の下部トロリー30を間隔調節自在に連結し、左右の下部トロリー30にそれぞれ巻き上げ機34を吊下げ、左右の縦ビーム11の各両端に縦ビームを水平に支持することができる脚14を固定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前後方向に長い左右一対の縦ビームにそれぞれ上部トロリーを設置し、この左右の上部トロリーを幅方向に長い横ビームで接続し、この横ビームに左右一対の下部トロリーを設置し、この左右の下部トロリーを連結バーで間隔調節自在に連結し、この左右の下部トロリーにそれぞれ巻き上げ機を吊下げ、上記左右の縦ビームの各両端に該縦ビームを水平に支持することができる脚を固定し、この縦ビームをクレーンフックから水平に吊下げるようにしたことを特徴とするクレーン用吊り治具。
【請求項2】 前端の脚が後端の脚よりも長くできるように伸縮自在に、かつ前端の脚の短縮時の長さが後端の脚と等しくなるように形成された請求項1記載のクレーン用吊り治具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、クレーンフックと吊り荷との間に介在させて上記吊り荷を水平に移動させるための吊り治具に関するものであり、高層建物の建築現場でPCパネルその他の大型建築資材を搬入、搬出するために使用することができる。
【0002】
【従来の技術】建設中の高層建物の任意の階で建築資材等を屋外のクレーンで吊ったまま搬入、搬出するために使用されるクレーン用吊り治具として、クレーンフックからワイヤーを介して長尺の吊込みビームをほぼ水平に吊下げ、このビームの一端に玉掛けワイヤーを介して建築資材を吊下げ、上記ビームの反対側にバランスウエイトを移動自在に取付け、クレーンフックで上記ビームを吊下げた際、ビームの傾斜をビーム上のセンサーで検出し、ビームが水平になるように上記バランスウエイトを移動させ、この状態でビームの一端を建築資材と共に任意の階のベランダから屋内に挿入し、建築資材を下ろしながら再びバランスウエイトを移動して上記ビームを水平に保つようにしたものが知られている。
【0003】しかしながら、上記の吊り治具は、吊込みビームの傾斜をセンサーで検出し、バランスウエイトを自動的に移動させて一端の建築資材とバランスさせるものであるから、吊込みビーム上に積み荷の重量に対応するバランスウエイトおよびその移動装置を設置する必要があり、吊り治具としての重さが大きくなり、これに応じてクレーンも大型にする必要があり、特にPCパネルのように重さ数トンに達する建築資材を扱う場合は、クレーンの能力が不足する結果になり、その場合はクレーンで直接PCパネルを吊るため、建物躯体への取付け作業が甚だ危険になっていた。また、PCパネル用の吊り治具に見合う大型のクレーンがあったとしても、従来の吊り治具は、吊込みビームに沿って資材を前後にのみ進退させるものであるから、PCパネルの取付けのために左右位置を調整する際は、クレーン操作を必要とし、その取付け作業が極めて困難になり、かつ危険であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、バランスウエイトを不要にして吊り治具を軽量化し、もってPCパネルのような重い大型資材の搬入、搬出にもクレーンを使用して吊ったまま該大型資材を水平に進退させることができ、かつ吊った状態で左右位置の調整も可能にするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明のクレーン用吊り治具は、請求項1に記載のごとく、前後方向に長い左右一対の縦ビームにそれぞれ上部トロリーを設置し、この左右の上部トロリーを幅方向に長い横ビームで接続し、この横ビームに左右一対の下部トロリーを設置し、この左右の下部トロリーを連結バーで間隔調節自在に連結し、この左右の下部トロリーにそれぞれ巻き上げ機を吊下げ、上記左右の縦ビームの各両端に該縦ビームを水平に支持することができる脚を固定し、この縦ビームをクレーンフックから水平に吊下げるようにしたことを特徴とする。
【0006】この発明において、上記左右の上部トロリーは、遠隔操作で縦ビーム上を互いに等しい速度で進退するものであり、縦ビーム上に設置されたモータで駆動される。なお、モーターの電源は、吊り治具自体に設置したバッテリまたは屋内の電源のいずれでもよい。そして、上記の縦ビームは、資材の搬入時、縦ビームの前端が建物側に向けられるが、上部トロリーの走行区間は、縦ビームの前半部、詳しくは吊り治具の重心位置を起点としてその前方部分に限定することが好ましく、この限定にはストッパやリミットスイッチ等を利用できる。
【0007】一方、横ビーム上の左右の下部トロリーは、連結バーで接続されて互いに等しい速度で左右に移動するものである。この下部トロリーの駆動は、モーター駆動も可能であるが、手動で十分である。そして、その移動範囲は、左右の下部トロリーの中間点が左右の縦ビームの内側に位置するようにストッパやリミットスイッチで限定される。また、下部トロリーに吊下げられる巻上げ機は、チェーンブロックおよびホイスト等の簡易巻上げ機であり、ホイストはチェーンホイスト、電気ホイスト、空気ホイスト等のいずれでもよい。
【0008】この発明では、左右の縦ビームがそれぞれ前後2箇所に固定した合計4本の等しい長さのワイヤーでクレーンフックから吊下げられるが、縦ビームを水平に向けたときにクレーンフックの直下に吊り治具の重心および横ビームが位置するように上記ワイヤーの取付け位置および長さが設定されると、吊り治具をクレーンフックで吊下げた際、吊り荷の有無に関係なく、縦ビームおよび横ビームがそれぞれ水平になる。
【0009】そして、上記の縦ビームを4本のワイヤーでクレーンフックに吊下げた後、クレーンを操作して吊り治具を所望の建築資材上に移動させ、巻上げ機で建築資材を吊上げることができる。また、縦ビームを前後両端の脚で地面または床面に水平に支持し、吊り治具の重心に位置する巻上げ機のフックにワイヤを介して建築資材等を接続し、しかるのち吊り治具の上方にクレーンフックを移動し、このクレーンフックに上記4本のワイヤーで縦ビームを建築資材と共に吊下げることもできる。
【0010】上記のクレーンフックに上記の吊り治具を介して建築資材、例えばPCパネルが吊下げられると、クレーン操作により、上記のPCパネルが所望の建築物の外側から任意の階の足場前またはベランダ前に運ばれ、建築物の外壁に直角に向けた縦ビームの前端が足場や床の上方空間に挿入され、前端の脚が床面に着くまでクレーンフックが下ろされる。次いで、上部トロリーが遠隔操作で駆動されて縦ビームの前端側に移動し、更に下部トロリーが左右に動かされ、また巻上げ機でPCパネルの高さが調整され、このPCパネルが建物躯体の外面に作業員の手作業で固定され、このPCパネルからワイヤが外される。しかるのち、クレーン操作により、上記の吊り治具が若干引上げられ、前脚が床から離れた後、建物の外に搬出され、元に戻される。
【0011】なお、PCパネルを縦ビームの中心側から前端の建物側に移動し、建物躯体に固定するまでの間、縦ビームの前端の脚が床面に接しているため、PCパネルが移動したり、巻上げ機から外されたりしても、縦ビームが傾斜することはない。したがって、従来装置のようにバランスウエイトを取付け、これを移動させてバランスをとる必要がない。また、左右の縦ビームの各前端がそれぞれ脚で床上に支持されるため、横ビームに沿って下部トロリーを移動させても、左右の下部トロリーの中間点が左右の脚間範囲から外れない限り、左右の脚の一方が床から浮いて横ビームが傾くことはなく、安全にPCパネルを取付けることができる。
【0012】また、PCパネル以外の資材を建物内に搬入する場合は、クレーンで吊上げた吊り治具の前端を建物内に深く挿入し、次いで吊り治具を降下させて前脚を床に接触させ、しかるのち上部トロリーを前進させて上記大型資材を床に下ろす。この場合、吊り治具は床に触れない高さに吊下げられるので、縦ビームが天井に触れない範囲で前脚の高いことが有利である。したがって、請求項2に記載のごとく、前端の脚を後端の脚よりも長くできるように伸縮自在に、かつ前端の脚の長さが後端の脚と等しくなるように形成することが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】図1は、この発明のクレーン用吊り治具の一例を示し、図の左下を吊り治具の前方とする。10は前後方向に長い長方形のフレームであり、前後方向に長い左右一対の縦ビーム11の前後両端を端部ビーム12で接続し、中間部を複数本の横ステー13で接続して形成される。そして、左右の縦ビーム11の前後両端には、それぞれ等しい長さの脚14が下向きに突設され、上記フレーム10を水平面に対して所定の高さに支持するようになっている。ただし、前端の脚14は、縦ビーム11の前端よりも若干後方から垂直に突設され、この前脚14の下端と縦ビーム11の前端とが斜めの補強材15で連結される。なお、前脚14は、伸縮自在に形成し、その伸長時の長さを後脚よりも長くし、短縮時の長さを後脚と等しくすることができる。
【0014】上記左右の縦ビーム11には、それぞれ上部トロリー16が走行自在に設置され、この上部トロリー16を介して上記左右の縦ビーム11の下方に幅方向に長い横ビーム29が垂下状に設置される。すなわち、図2ないし図4に示すように、縦ビーム11を挟むように左右一対のトロリーフレーム17が対向状に配置され、この一対のトロリーフレーム17に取付けた前後2個、合計4個の車輪18がI形鋼からなる上記縦ビーム11の下側フランジ上に転動可能に乗せられ、上記一対のトロリーフレーム17の下端を接続する連結ピン19(図3、4参照)が接続金具20を介して上記横ビーム29の上面に接続される。なお、上記左右の上部トロリー16は、縦ビーム11の内側に位置する前後一対の連結ビーム27(図2、4参照)によって接続され、左右の縦ビーム11にまたがる台車を構成する。
【0015】図1、2において、上記左右の縦ビーム11の長さ方向中央よりも若干後よりの部分に幅方向の駆動軸22が支架され、この駆動軸22の中央部に、前記フレーム10の後方寄りに固定されている減速機付きモーター23が接続され、上記駆動軸22の両端に駆動用のスプロケット24が固定される。一方、上記左右の縦ビーム11の前端近くの内側対向面に従動側のスプロケット25が取付けられ、このスプロケット25と上記駆動用のスプロケット24にまたがって伝動用チェーン26が巻掛けられ、その両端が上部トロリー16の内側トロリーフレーム17に連結される。
【0016】前記横ビーム29の左右両側に下部トロリー30が移動自在に設置される。すなわち、図2ないし図4に示すように、横ビーム29を挟むように前後一対のトロリーフレーム31が対向状に配置され、この前後に対向する一対のトロリーフレーム31に取付けた左右2個、合計4個の車輪32(図3、4参照)がI形鋼からなる上記横ビーム29の下側フランジ上に乗せられ、上記一対のトロリーフレーム31の下端を接続する連結ピン33にチェーンブロック34の上部フックが掛けられ、その吊り荷用フック35がチェーンを介して下方に垂下される。
【0017】そして、上記左右の下部トロリー30が背面側の連結バー36で間隔調節自在に連結される。この連結バー36は、図4に示すように、一端側に多数のボルト孔36aを横一列に穿孔し、その孔36aを選択してボルトでトロリーフレーム31に接続することにより、左右の下部トロリー30の間隔を設定するものである。また、上記左右の下部トロリー30のうち右側の下部トロリー30の前面にその車輪32を手動で回転させるための駆動スプロケット37が設けられ、このスプロケット37に無端のハンドチェーン38が掛けられ、このハンドチェーン38を作業員の手で下に引いて左右に回すことにより、横ビーム29上を左右の下部トロリー30が同時に左右に移動する。
【0018】図1において、前記フレーム10の左右の前脚14間に前記減速機付きモーター23の運転制御用制御盤41が設置され、この制御盤41に電源接続用の差込み接続器42および遠隔操作用のペンダント43がそれぞれ接続される。なお、上記の差込み接続器42を廃し、代わりにバッテリを充電器と共に設置してもよく、この場合は、バッテリ等をフレーム10の後端側に設置して前部とのバランスをとるのが好ましい。
【0019】また、左右の縦ビーム11には、それぞれ前後2箇所、合計4箇所に突設された吊り環44(図2、3参照)を介して長さが等しい4本のワイヤー45(図1参照)が接続され、この4本のワイヤー45を介して吊り治具がクレーンフック46に掛けられ、このとき吊り治具のフレーム10が水平になり、フレーム10と前後の脚14とからなる固定部分の重心および横ビーム29がクレーンフック46の直下に位置するように上記吊り環44の位置が設定される。そして、上記重心位置の左右の縦ビーム11にまたがって横バー47(図2〜4参照)が固定され、この横バー47が重心に位置することを示している。
【0020】図3において、48は縦ビーム11に固定されたストッパであり、上部トロリー16のトロリーフレーム17の後端に接し、横ビーム29が上記の重心位置を示す横バー47よりも後に移動するのを防ぐと共に、後退時の上記トロリーフレーム17がストッパ48に接する直前にリミットスイッチ(図示されていない)が作動して減速機付きモーター23を停止させるようになっている。一方、横ビーム29(図4参照)には、連結バー36で連結された左右の下部トロリー30の中間点の移動範囲を左右の縦ビーム11の内側範囲内に制限するストッパ(図示されていない)が設けられる。そして、図3に示すように、横ビーム29の上面に固定されたブラケット49とその下方の連結バー36とを着脱自在に連結するロックピン50が設けられ、下部トロリー30の自由移動を抑止する。
【0021】上記の構造において、図1に示すように、縦ビーム11に対し横ビーム29が進退ストロークの後端に位置する状態でこの横ビーム29がクレーンフック46の直下に位置するようにフレーム10を静止させ、左右のチェーンブロック34のフック35を下方に位置する建築資材、例えばPCパネル51の左右の吊り環に掛け、チェーンブロック34のハンドチェーン(図示されていない)を操作して上記PCパネル51を吊り上げる。なお、横ビーム29の左右の下部トロリー30の間隔は、あらかじめPCパネル51の吊り環間隔と等しく設定される。
【0022】次いで、クレーン操作により、上記の水平なフレーム10、前後の脚14、上部トロリー16、横ビーム29、下部トロリー30およびチェーンブロック34等からなる吊り治具を、PCパネル51と共に建設中の建物の所要の階に運び、フレーム10の前端を建物側に向け、その前端を足場または床52の上方空間に挿入し、前脚14の下端が床52に接するまで、クレーンフック46を下降させる。次いで、前記差込み接続器42を建物内の電源コンセントに接続し、ペンダント43を操作することにより、上部トロリー16によってPCパネル51が建物側に引き寄せられ、次いでチェーンブロック34の操作により、PCパネル51の高さが調整され、また前記ロックピン50(図3参照)を抜き、下部トロリー30のハンドチェーン38を操作することにより、下部トロリー30の左右位置が調整される。しかるのち、上記のPCパネル51が所定の位置に固定され、このPCパネル51からチェーンブロック34のフック35が外され、上部トロリー16がペンダンド43の操作で重心位置に戻され、続いて吊り治具がチェーン操作により元に戻される。
【0023】なお、建築資材51がPCパネルとは異なって建物内で使用される場合は、上記建築資材51が床52に接しない程度にあらかじめ高く吊られてクレーンで運ばれ、上記のフレーム10が図示の位置よりも深く建物内に挿入される。そして、ペンダント43の操作で上部トロリー16が駆動され、建築資材51が搬入され、チェーンブロック34の操作で床上に下ろされる。以下、前記同様にして元に戻される。この場合は、前脚14を伸長可能な構造に作っておくことにより、上記建築資材51の搬入が一層容易になる。
【0024】
【発明の効果】この発明によれば、上記のとおり、縦ビームの前脚を建物の足場や床に着地させた状態で横ビームを前進させて資材を搬入することができる。したがって、吊込みビームの一端から建築資材を吊り下げ、反対側のバランスウエイトを移動しながら建築資材を下ろすようにした従来の吊り治具に比べ、そのバランスウエイトが不要になり、吊り治具全体を軽量化することができ、そのため吊り治具を移動するためのクレーンの負担が軽減され、PCパネルのような重い建築資材の取付け作業も容易に、かつ安全になる。
【0025】また、上記の横ビームに間隔調整自在に取付けた左右の下部トロリーに巻上げ機を取付けたので、建築資材の幅に応じて左右の巻上げ機の間隔を調整し、吊り荷用のチェーンを垂直に保つことができ、かつ建築資材を巻上げ機で吊ったまま、その左右位置および高さを調整することができ、そのため上記PCパネルの取付けが一層容易になる。なお、前脚を足場やベランダに着地させる際のクレーン操作に伴って生じる縦ビーム11の過度な傾斜を知るため、縦ビーム11の前部、例えば制御盤41等に振り子式の傾斜検出器等を設けることができる。
【0026】また、この発明のクレーン用吊り治具は、PCパネル以外の建築資材の搬入にも使用可能であるが、特に請求項2に記載の発明によれば、前脚が伸縮自在であるため、前脚の短縮時には広い地上または床上に縦ビームを水平に支持することができ、また前脚の伸長時には、前脚のみが接地したときの縦ビーム高さを平常よりも高く設定することができ、そのためPCパネル以外の資材を建物内に搬入する場合、その搬入作業が一層容易になる。
【出願人】 【識別番号】000153144
【氏名又は名称】株式会社日本技術センター
【出願日】 平成10年11月16日(1998.11.16)
【代理人】 【識別番号】100081662
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 了司
【公開番号】 特開2000−143139(P2000−143139A)
【公開日】 平成12年5月23日(2000.5.23)
【出願番号】 特願平10−342379