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【発明の名称】 移動体の駆動システムおよび車両用駆動システム
【発明者】 【氏名】田端 淳

【氏名】永野 周二

【要約】 【課題】モータ走行モードからエンジン走行モードへ移行する際に、エンジンの始動遅れに起因してもたつき感などが発生することを防止する。

【解決手段】エンジンを駆動力源として走行するためにステップS4でエンジンが始動させられる際に、そのエンジンの始動が遅い場合には、ステップS5の判断がNOになってステップS7以下が実行され、クラッチC1を係合させてエンジンを駆動力伝達系に接続するとともに、エンジン始動用の電動モータ(MO)をエンジン始動時よりも大きなトルクで作動させて、エンジンを回転させながら、エンジンの始動遅れに伴う駆動力不足を補うように所定の駆動力を発生させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 移動体を移動させるための移動用駆動力源として、第1駆動力源と、該第1駆動力源よりも定格出力が小さい第2駆動力源と、を有する移動体の駆動システムにおいて、前記第1駆動力源の作動開始が遅い場合或いは作動させることができない場合に、前記第2駆動力源を代わりに使用し、必要に応じて該第2駆動力源の定格出力を越えて作動させる補助駆動制御手段を設けたことを特徴とする移動体の駆動システム。
【請求項2】 移動体を移動させるための移動用駆動力源として、始動に要する時間が異なる複数の駆動力源を有する移動体の駆動システムにおいて、前記複数の移動用駆動力源のうち少なくとも1つの第1駆動力源が始動される場合で、該第1駆動力源の始動時間が所定時間を越える場合には、該複数の移動用駆動力源のうち該第1駆動力源よりも始動時間が短い第2駆動力源を始動させるとともに、必要に応じて該第2駆動力源の定格出力を越えて作動させる補助駆動制御手段を設けたことを特徴とする移動体の駆動システム。
【請求項3】 前記第1駆動力源は燃料の燃焼で作動するエンジンで、前記第2駆動力源は電気エネルギーで作動する電動モータであり、前記エンジンを前記移動用駆動力源として使用するために始動するエンジン始動手段を備えているとともに、前記補助駆動制御手段は、前記エンジン始動手段によって前記エンジンが始動させられる際に、該エンジンの始動が遅い場合或いは該エンジンの始動ができない場合には、前記電動モータを代わりに使用し、必要に応じて該電動モータの定格出力を越えて作動させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の移動体の駆動システム。
【請求項4】 前記電動モータは、燃料電池から電気エネルギーが供給されるもので、前記補助駆動制御手段は、必要に応じて前記燃料電池の発電量をその定格発電量を越えて増大させることにより、前記電動モータをその定格出力を越えて作動させるものであることを特徴とする請求項3に記載の移動体の駆動システム。
【請求項5】 前記電動モータは、通常は燃料電池および二次電池の何れか一方から択一的に電気エネルギーが供給されるもので、前記補助駆動制御手段は、必要に応じて前記燃料電池および二次電池を直列接続して前記電動モータに電気エネルギーを供給することにより、該電動モータをその定格出力を越えて作動させるものであることを特徴とする請求項3に記載の移動体の駆動システム。
【請求項6】 移動体を移動させるための移動用駆動力源として、第1駆動力源と、該第1駆動力源よりも定格出力が小さい第2駆動力源と、を有する移動体の駆動システムにおいて、前記第1駆動力源の作動開始が遅い場合或いは作動させることができない場合に、前記第2駆動力源を代わりに使用して駆動力を発生させる補助駆動制御手段を有し、且つ、前記第2駆動力源は、燃料電池から供給される電気エネルギーで作動する電動モータで、前記補助駆動制御手段は、必要に応じて該燃料電池の発電量をその定格発電量を越えて増大させて該電動モータを作動させるものであることを特徴とする移動体の駆動システム。
【請求項7】 移動体を移動させるための移動用駆動力源として、始動に要する時間が異なる複数の駆動力源を有する移動体の駆動システムにおいて、前記複数の移動用駆動力源のうち少なくとも1つの第1駆動力源が始動される場合で、該第1駆動力源の始動時間が所定時間を越える場合には、該複数の移動用駆動力源のうち該第1駆動力源よりも始動時間が短い第2駆動力源を始動させて駆動力を発生させる補助駆動制御手段を有し、且つ、前記第2駆動力源は、燃料電池から供給される電気エネルギーで作動する電動モータで、前記補助駆動制御手段は、必要に応じて該燃料電池の発電量をその定格発電量を越えて増大させて該電動モータを作動させるものであることを特徴とする移動体の駆動システム。
【請求項8】 移動体を移動させるための移動用駆動力源として、第1駆動力源と、該第1駆動力源よりも定格出力が小さい第2駆動力源と、を有する移動体の駆動システムにおいて、前記第1駆動力源の作動開始が遅い場合或いは作動させることができない場合に、通常は移動用駆動力源として使用しない第3駆動力源を移動用駆動力源として使用する補助駆動制御手段を設けたことを特徴とする移動体の駆動システム。
【請求項9】 移動体を移動させるための移動用駆動力源として、始動に要する時間が異なる複数の駆動力源を有する移動体の駆動システムにおいて、前記複数の移動用駆動力源のうち少なくとも1つの第1駆動力源が始動される場合で、該第1駆動力源の始動時間が所定時間を越える場合には、通常は移動用駆動力源として使用しない駆動力源であって該第1駆動力源よりも始動時間が短い第3駆動力源を移動用駆動力源として使用する補助駆動制御手段を設けたことを特徴とする移動体の駆動システム。
【請求項10】 前記補助駆動制御手段は、必要に応じて前記第3駆動力源をその定格出力を越えて作動させるものであることを特徴とする請求項8または9に記載の移動体の駆動システム。
【請求項11】 前記第1駆動力源は燃料の燃焼で作動するエンジンであり、該エンジンを前記移動用駆動力源として使用するために始動するエンジン始動手段を備えているとともに、前記補助駆動制御手段は、前記エンジン始動手段によって前記エンジンが始動させられる際に、該エンジンの始動が遅い場合或いは該エンジンの始動ができない場合には、通常は走行用駆動力源として使用しない電動モータを前記第3駆動力源として使用するものであることを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載の移動体の駆動システム。
【請求項12】 前記第3駆動力源はエンジン始動用の電動モータであることを特徴とする請求項11に記載の移動体の駆動システム。
【請求項13】 前記第3駆動力源は補機駆動用の電動モータであることを特徴とする請求項11に記載の移動体の駆動システム。
【請求項14】 車両を走行させるための走行用駆動力源として、燃料の燃焼で作動するエンジンと電気エネルギーで作動する電動モータとを備えているハイブリッド型の車両用駆動システムにおいて、予め定められた所定の低速走行時であってブレーキONの時には前記電動モータのみを駆動力源として走行する低速モータ走行手段と、前記所定の低速走行時であってブレーキOFFの時には前記エンジンを駆動力源として走行する低速エンジン走行手段と、前記所定の低速走行よりも高速の走行時には前記エンジンを駆動力源として走行する高速エンジン走行手段と、を有することを特徴とする車両用駆動システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両等の移動体の駆動システムに係り、特に、スムーズな発進性能が得られる駆動システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】移動体を移動させるための移動用駆動力源として、第1駆動力源と、その第1駆動力源よりも定格出力が小さい第2駆動力源と、を有する移動体の駆動システムが知られている。燃料の燃焼で作動するエンジンと電気エネルギーで作動する電動モータとを車両走行用の駆動力源として備えているハイブリッド型の車両用駆動システムはその一例で、一般にエンジンの方が電動モータよりも定格出力が大きい。特開平10−136508号公報に記載されている装置はその一例で、シンプルプラネタリ型の遊星歯車装置から成る副変速機が設けられ、2つのクラッチの係合状態によって電動モータのみを駆動力源とするモータ走行モード、エンジンのみを駆動力源とするエンジン走行モードなど種々の走行モードが成立させられるようになっている。そして、このような車両用駆動システムにおいては、一般に車両停止時にはエンジンも停止させられ、モータ走行モードで発進してからエンジンを始動してエンジン走行モードに切り換えるようになっているのが普通である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようにモータ走行モードで発進してからエンジンを始動してエンジン走行モードに移行する場合、エンジンの始動が遅かったり始動できなかったりすると、駆動力が不足してもたつき感を生じる可能性がある。大きな出力が得られる大容量の電動モータを走行用駆動力源として搭載しておけば、エンジンの始動不可時等にその電動モータを通常よりも高出力まで作動させることにより、駆動力不足を軽減或いは解消できるが、通常の走行時には必要ない過剰品質になってコスト高になるとともに、大型で大きな設置スペースが必要になる。
【0004】本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、電動モータ等の第2駆動力源として定格出力が小さい小型で安価なものを採用しつつ、定格出力が大きいエンジン等の第1駆動力源の作動開始遅れや作動不可に伴う駆動力不足を改善することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、第1発明は、移動体を移動させるための移動用駆動力源として、第1駆動力源と、その第1駆動力源よりも定格出力が小さい第2駆動力源と、を有する移動体の駆動システムにおいて、前記第1駆動力源の作動開始が遅い場合或いは作動させることができない場合に、前記第2駆動力源を代わりに使用し、必要に応じてその第2駆動力源の定格出力を越えて作動させる補助駆動制御手段を設けたことを特徴とする。
【0006】なお、「定格出力」とは、連続して使用できる最大出力で、例えば電動モータの場合は、「モータを定格回転数で連続運転した時、温度上昇が限度を超えない範囲で一定値に達した時のモータ出力」で、定格回転数は「定格出力で運転するモータの回転速度。最大トルクで加減速を行っても支障のない回転数」である。したがって、短時間であれば駆動力源の耐久性を損なうことなく、その定格出力を越えて作動させることができる。
【0007】また、駆動力源が、例えば燃料電池から供給される電気エネルギーで作動する電動モータの場合、その駆動力源の定格出力は、燃料電池の定格発電量および電動モータの定格出力のうち低い方によって定まる。すなわち、電動モータの定格出力に余裕があり、燃料電池の発電量が定格発電量に達しても電動モータが定格出力に達しない場合は、燃料電池の定格発電量で駆動力源の定格出力は規定され、その定格発電量で作動させられる時の電動モータの出力が駆動力源の定格出力になる。一方、燃料電池の定格発電量に余裕があり、電動モータの出力が定格出力に達しても燃料電池が定格発電量に達しない場合は、電動モータの定格出力がそのまま駆動力源の定格出力になる。
【0008】第2発明は、移動体を移動させるための移動用駆動力源として、始動に要する時間が異なる複数の駆動力源を有する移動体の駆動システムにおいて、前記複数の移動用駆動力源のうち少なくとも1つの第1駆動力源が始動される場合で、その第1駆動力源の始動時間が所定時間を越える場合には、その複数の移動用駆動力源のうちその第1駆動力源よりも始動時間が短い第2駆動力源を始動させるとともに、必要に応じてその第2駆動力源の定格出力を越えて作動させる補助駆動制御手段を設けたことを特徴とする。
【0009】第3発明は、第1発明または第2発明の移動体の駆動システムにおいて、(a)前記第1駆動力源は燃料の燃焼で作動するエンジンで、前記第2駆動力源は電気エネルギーで作動する電動モータであり、(b) 前記エンジンを前記移動用駆動力源として使用するために始動するエンジン始動手段を備えているとともに、(c)前記補助駆動制御手段は、前記エンジン始動手段によって前記エンジンが始動させられる際に、そのエンジンの始動が遅い場合或いはそのエンジンの始動ができない場合には、前記電動モータを代わりに使用し、必要に応じてその電動モータの定格出力を越えて作動させるものであることを特徴とする。
【0010】第4発明は、第3発明の移動体の駆動システムにおいて、(a) 前記電動モータは、燃料電池から電気エネルギーが供給されるもので、(b) 前記補助駆動制御手段は、必要に応じて前記燃料電池の発電量をその定格発電量を越えて増大させることにより、前記電動モータをその定格出力を越えて作動させるものであることを特徴とする。
【0011】なお、「定格発電量」とは、連続して使用できる最大発電量で、短時間であれば燃料電池の耐久性を損なうことなくその定格発電量を越えて発電させることができる。
【0012】第5発明は、第3発明の移動体の駆動システムにおいて、(a) 前記電動モータは、通常は燃料電池および二次電池の何れか一方から択一的に電気エネルギーが供給されるもので、(b) 前記補助駆動制御手段は、必要に応じて前記燃料電池および二次電池を直列接続して前記電動モータに電気エネルギーを供給することにより、その電動モータをその定格出力を越えて作動させるものであることを特徴とする。
【0013】第6発明は、移動体を移動させるための移動用駆動力源として、第1駆動力源と、その第1駆動力源よりも定格出力が小さい第2駆動力源と、を有する移動体の駆動システムにおいて、(a) 前記第1駆動力源の作動開始が遅い場合或いは作動させることができない場合に、前記第2駆動力源を代わりに使用して駆動力を発生させる補助駆動制御手段を有し、且つ、(b) 前記第2駆動力源は、燃料電池から供給される電気エネルギーで作動する電動モータで、前記補助駆動制御手段は、必要に応じてその燃料電池の発電量をその定格発電量を越えて増大させてその電動モータを作動させるものであることを特徴とする。
【0014】第7発明は、移動体を移動させるための移動用駆動力源として、始動に要する時間が異なる複数の駆動力源を有する移動体の駆動システムにおいて、(a) 前記複数の移動用駆動力源のうち少なくとも1つの第1駆動力源が始動される場合で、その第1駆動力源の始動時間が所定時間を越える場合には、その複数の移動用駆動力源のうちその第1駆動力源よりも始動時間が短い第2駆動力源を始動させて駆動力を発生させる補助駆動制御手段を有し、且つ、(b) 前記第2駆動力源は、燃料電池から供給される電気エネルギーで作動する電動モータで、前記補助駆動制御手段は、必要に応じてその燃料電池の発電量をその定格発電量を越えて増大させてその電動モータを作動させるものであることを特徴とする。
【0015】第8発明は、移動体を移動させるための移動用駆動力源として、第1駆動力源と、その第1駆動力源よりも定格出力が小さい第2駆動力源と、を有する移動体の駆動システムにおいて、前記第1駆動力源の作動開始が遅い場合或いは作動させることができない場合に、通常は移動用駆動力源として使用しない第3駆動力源を移動用駆動力源として使用する補助駆動制御手段を設けたことを特徴とする。
【0016】第9発明は、移動体を移動させるための移動用駆動力源として、始動に要する時間が異なる複数の駆動力源を有する移動体の駆動システムにおいて、前記複数の移動用駆動力源のうち少なくとも1つの第1駆動力源が始動される場合で、その第1駆動力源の始動時間が所定時間を越える場合には、通常は移動用駆動力源として使用しない駆動力源であってその第1駆動力源よりも始動時間が短い第3駆動力源を移動用駆動力源として使用する補助駆動制御手段を設けたことを特徴とする。
【0017】第10発明は、第8発明または第9発明の移動体の駆動システムにおいて、前記補助駆動制御手段は、必要に応じて前記第3駆動力源をその定格出力を越えて作動させるものであることを特徴とする。
【0018】第11発明は、第8発明〜第10発明の何れかの移動体の駆動システムにおいて、(a) 前記第1駆動力源は燃料の燃焼で作動するエンジンであり、(b) そのエンジンを前記移動用駆動力源として使用するために始動するエンジン始動手段を備えているとともに、(c) 前記補助駆動制御手段は、前記エンジン始動手段によって前記エンジンが始動させられる際に、そのエンジンの始動が遅い場合或いはそのエンジンの始動ができない場合には、通常は走行用駆動力源として使用しない電動モータを前記第3駆動力源として使用するものであることを特徴とする。
【0019】第12発明は、第11発明の移動体の駆動システムにおいて、前記第3駆動力源はエンジン始動用の電動モータであることを特徴とする。
【0020】第13発明は、第11発明の移動体の駆動システムにおいて、前記第3駆動力源は補機駆動用の電動モータであることを特徴とする。
【0021】第14発明は、車両を走行させるための走行用駆動力源として、燃料の燃焼で作動するエンジンと電気エネルギーで作動する電動モータとを備えているハイブリッド型の車両用駆動システムにおいて、(a) 予め定められた所定の低速走行時であってブレーキONの時には前記電動モータのみを駆動力源として走行する低速モータ走行手段と、(b) 前記所定の低速走行時であってブレーキOFFの時には前記エンジンを駆動力源として走行する低速エンジン走行手段と、(c) 前記所定の低速走行よりも高速の走行時には前記エンジンを駆動力源として走行する高速エンジン走行手段と、を有することを特徴とする。
【0022】なお、「ブレーキON」は、制動力を発生させるために運転者によってブレーキ操作が為されている状態を意味し、「ブレーキOFF」はブレーキ操作が為されていない状態を意味する。
【0023】
【発明の効果】第1発明の移動体の駆動システムにおいては、定格出力が大きい第1駆動力源の作動開始が遅い場合或いは作動させることができない場合に、補助駆動制御手段によって第2駆動力源を代わりに使用し、必要に応じて定格出力を越えて作動させるため、その第2駆動力源として定格出力が小さい安価でコンパクトな電動モータ等を採用しつつ、第1駆動力源の作動開始遅れや作動不可に伴う駆動力不足が改善される。
【0024】また、移動用駆動力源である第2駆動力源を用いて駆動力不足を補うため、例えば第2駆動力源を用いた移動モードから第1駆動力源を用いた移動モード、或いは第1駆動力源および第2駆動力源の両方を用いた移動モードへ移行する際の第1駆動力源の作動開始遅れや作動不可の場合、第2駆動力源をそのまま用いて高出力まで引っ張って移動体を移動させることになるため、第3駆動力源を用いる第8発明や第9発明に比較して、駆動力を滑らかに増大させることができるとともに制御が容易である。
【0025】第2発明の移動体の移動システムは、第1駆動力源の始動時間が所定時間を越える場合には、補助駆動制御手段により複数の移動用駆動力源のうち第1駆動力源よりも始動時間が短い第2駆動力源を始動させるとともに、必要に応じてその第2駆動力源の定格出力を越えて作動させるため、第1発明と同様に第2駆動力源として定格出力が小さい安価でコンパクトな電動モータ等を採用しつつ、第1駆動力源の作動開始遅れや作動不可に伴う駆動力不足が改善される。また、移動用駆動力源である第2駆動力源を用いて駆動力不足を補うため、第3駆動力源を用いる第8発明や第9発明に比較して、駆動力を滑らかに増大させることができるとともに制御が容易であることも第1発明と同様である。
【0026】第3発明〜第5発明は、第1駆動力源としてエンジンを使用し、第2駆動力源として電動モータを使用する場合であり、エンジン始動手段によってエンジンが始動させられる際に、そのエンジンの始動が遅い場合或いはエンジンの始動ができない場合には、補助駆動制御手段によって第2駆動力源である電動モータを用いて駆動力が発生させられるとともに、その電動モータは必要に応じて定格出力を越えて作動させられるため、電動モータとして定格出力が小さい安価でコンパクトなものを採用しつつ、エンジンの始動遅れや始動不可に伴う駆動力不足が改善される。
【0027】これにより、例えばエンジンおよび電動モータが走行用駆動力源として用いられるハイブリッド型の車両用駆動システムの場合、モータ走行モードからエンジン走行モード(或いはエンジン+モータ走行モード)への移行時に、エンジンの始動遅れに起因してもたつき感が生じたり、エンジンの始動不可によって走行不能になったりすることが防止される。また、移動用駆動力源である電動モータを用いて駆動力不足を補うため、例えばモータ走行モードからエンジン走行モード或いはエンジン+モータ走行モードへの移行時のエンジン始動遅れの場合、モータ走行モードで使用していた電動モータをそのまま用いて高出力まで引っ張って走行することになるため、エンジン始動用の電動モータや補機駆動用の電動モータを用いる第12発明や第13発明に比較して、駆動力を滑らかに増大させることができるとともに制御が容易である。
【0028】第4発明では、上記電動モータの電気エネルギー供給源として燃料電池が用いられ、その燃料電池の発電量を定格発電量を越えて増大させることにより、電動モータを定格出力を越えて作動させるため、燃料電池および電動モータとして何れも定格発電量、定格出力が小さい安価でコンパクトなものを採用することが可能で、駆動システムが一層安価でコンパクトに構成される。また、第5発明のように二次電池と併用する場合に比べて制御が容易である。
【0029】第5発明は、上記電動モータの電気エネルギー供給源として燃料電池および二次電池が用いられ、通常は何れか一方から択一的に電気エネルギーが供給される場合で、前記補助駆動制御手段は、必要に応じてそれ等の燃料電池および二次電池を直列接続して電動モータに電気エネルギーを供給することにより、電動モータを定格出力を越えて作動させるため、第4発明と同様に燃料電池として定格発電量が小さい安価でコンパクトなものを採用することが可能で、駆動システムが一層安価でコンパクトに構成される。
【0030】第6発明は、実質的に第1発明の一実施態様で、第1発明と同様の作用効果が得られる。また、第7発明は、実質的に第2発明の一実施態様で、第2発明と同様の作用効果が得られる。加えて、これ等の第6発明、第7発明では、第2駆動力源が燃料電池から供給される電気エネルギーで作動する電動モータで、補助駆動制御手段は、必要に応じてその燃料電池の発電量をその定格発電量を越えて増大させて電動モータを作動させるものであるため、燃料電池として定格発電量が小さい安価でコンパクトなものを採用することが可能である。なお、燃料電池の発電量が定格発電量を越えることにより、その燃料電池および電動モータから構成される第2駆動力源は、その定格出力(定格発電量で規定される出力)を越えて作動させられることになるが、電動モータ自体は必ずしも電動モータの定格出力を超えて作動させられるわけではない。
【0031】第8発明の移動体の駆動システムにおいては、定格出力が大きい第1駆動力源の作動開始が遅い場合或いは作動させることができない場合に、補助駆動制御手段によって通常は移動用駆動力源として使用しない第3駆動力源を移動用駆動力源として使用するため、第2駆動力源として定格出力が小さい安価でコンパクトな電動モータ等を採用しつつ、第1駆動力源の作動開始遅れや作動不可に伴う駆動力不足が改善される。
【0032】第9発明の移動体の移動システムは、第1駆動力源の始動時間が所定時間を越える場合には、補助駆動制御手段によって通常は移動用駆動力源として使用しない駆動力源であって第1駆動力源よりも始動時間が短い第3駆動力源を移動用駆動力源として使用するため、第1駆動力源以外の移動用駆動力源として定格出力が小さい安価でコンパクトな電動モータ等を採用しつつ、第1駆動力源の作動開始遅れや作動不可に伴う駆動力不足が改善される。
【0033】第10発明では、必要に応じて上記第3駆動力源をその定格出力を越えて作動させるため、第2駆動力源等の第1駆動力源以外の移動用駆動力源として定格出力が小さい安価でコンパクトな電動モータ等を採用しつつ、第1駆動力源の作動開始遅れや作動不可に伴う駆動力不足を一層効果的に改善できる。
【0034】第11発明〜第13発明は、第1駆動力源としてエンジンを使用する場合であり、エンジン始動手段によってエンジンが始動させられる際に、そのエンジンの始動が遅い場合或いはエンジンの始動ができない場合には、補助駆動制御手段によって第3駆動力源の電動モータを用いて駆動力が発生させられるため、第8発明の第2駆動力源など第1駆動力源以外の移動用駆動力源としてとして定格出力が小さい安価でコンパクトな電動モータ等を採用しつつ、エンジンの始動遅れや始動不可に伴う駆動力不足が改善される。
【0035】これにより、例えばエンジンおよび電動モータが走行用駆動力源として用いられるハイブリッド型の車両用駆動システムの場合、モータ走行モードからエンジン走行モード(或いはエンジン+モータ走行モード)への移行時に、エンジンの始動遅れに起因してもたつき感が生じたり、エンジンの始動不可によって走行不能になったりすることが防止される。
【0036】第14発明では、所定の低速走行時であってもブレーキOFFの時には、低速エンジン走行手段によりエンジンを駆動力源として走行するとともに、その所定の低速走行よりも高速の走行時には高速エンジン走行手段によって同じくエンジンを駆動力源として走行するため、アクセルを踏み込んで発進する通常の発進時には発進当初からエンジンを作動させて走行することになり、発進加速の途中でエンジンを始動してモータ走行からエンジン走行に切り換える場合に比較して、その切換えに伴うもたつき感が解消し、スムーズな発進性能が得られる。一方、所定の低速走行時であってブレーキONの場合、すなわちブレーキ力を調整するだけで前進したり後進したりするクリープ走行時には、低速モータ走行手段により電動モータのみを駆動力源として走行するため、エンジンおよび電動モータを走行用駆動力源として備えているハイブリッド型の車両用駆動システムの特徴の一つである燃費や排ガスの低減効果を十分に享受できる。
【0037】
【発明の実施の形態】ここで、第1発明〜第13発明は、車両を走行させるための走行用駆動力源(移動用駆動力源)として、燃料の燃焼で作動するエンジン(第1駆動力源)と電気エネルギーで作動する電動モータ(第2駆動力源)とを備えているハイブリッド型の車両用駆動システムに好適に適用される。
【0038】上記ハイブリッド型の車両用駆動システムとしては、電動モータのみで走行するモータ走行モードで発進した後に、エンジンを始動してエンジン走行モード或いはエンジン+モータ走行モードへ切り換える場合に好適に適用されるが、エンジン走行モードで発進するとともに必要に応じて電動モータを作動させてアシストする場合など、種々の車両用駆動システムに適用され得る。
【0039】第2駆動力源として使用される電動モータ(第14発明の走行用駆動力源として使用される電動モータを含む)としては、数十V程度の比較的低電圧で作動する安価でコンパクトなものを用いることが望ましいが、数百V等の高電圧で作動する電動モータを用いることも可能である。電動モータとしては、駆動力源としてトルクを発生するだけでなく、車両の運動エネルギーで回転駆動されることにより発電することが可能なモータジェネレータが好適に用いられる。エンジンとしては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどが好適に用いられる。
【0040】第1発明、第2発明、第8発明、第9発明の移動用駆動力源としては、エンジンや電動モータ以外の種々の駆動力源を採用することが可能である。
【0041】第3発明〜第5発明、第11発明〜第13発明では、エンジンが性能的に始動が遅く、エンジンの始動時には常に補助駆動制御手段によって駆動力が発生させられるように構成することもできるが、例えばエンジンの始動が予め定められた所定時間よりも遅いか否かを判断する始動遅れ判断手段を設け、その始動遅れ判断手段によって始動が遅い旨の判断が為された場合にのみ補助駆動制御手段によって駆動力を発生させるようにしても良い。
【0042】第3発明、第11発明のエンジン始動手段は、例えば第12発明のようにエンジン始動用の電動モータを備えて構成されるが、移動用駆動力源として備えられている電動モータや補機駆動用の電動モータなどを用いてエンジンをクランキングして始動するものでも良い。
【0043】第2駆動力源としての電動モータには、第4発明〜第7発明では燃料電池から電気エネルギーが供給されるようになっているが、バッテリ等の二次電池のみから電気エネルギーが供給されるものでも良く、電気エネルギーの供給量を増大させるなどして電動モータの定格出力を越えて作動させることができる。
【0044】燃料電池は、外部から供給される燃料の酸化によって生じる化学的エネルギーを熱にせず、直接電気エネルギーに変化させるもので、水素−酸素燃料電池が広く知られているが、天然ガスやアルコールなどの他の燃料を用いる燃料電池を採用することもできる。
【0045】第5発明は、燃料電池および二次電池を直列接続して電動モータを高出力で作動させるが、その場合に、燃料電池を第4発明のように定格発電量を越えて発電させることもできる。定格発電量を越えて発電させる場合は、第4発明の一実施態様と見做すこともできる。
【0046】第8発明〜第13発明では第3駆動力源を用いて駆動力を発生させるが、第3駆動力源単独で駆動力を発生させるのではなく、第8発明の第2駆動力源など第1駆動力源以外の移動用駆動力源と併用することが望ましい。その場合に、第2駆動力源等の移動用駆動力源は、必ずしも定格出力を越えて作動させる必要はないが、第1発明〜第7発明のように定格出力を越えて作動させることも可能である。その場合は、第1発明〜第7発明の一実施態様と見做すこともできる。
【0047】第12発明では、例えば(a) 前記エンジン始動手段は、前記エンジンが駆動力伝達系から切り離された状態で、前記エンジン始動用の電動モータによりそのエンジンをクランキングして始動するように構成され、(b) 前記補助駆動制御手段は、前記エンジンを駆動力伝達系に接続するとともに前記エンジン始動用の電動モータを前記クランキング時よりも大きなトルクで作動させて、そのエンジンを回転させながら駆動力を発生させるように構成される。
【0048】第12発明では第3駆動力源としてエンジン始動用の電動モータが用いられ、第13発明では補機駆動用の電動モータが用いられるが、他の発明の実施に際してはそれ等のエンジン始動用の電動モータ、補機駆動用の電動モータは必ずしも必須のものではない。
【0049】第14発明の低速エンジン走行手段および高速エンジン走行手段は、少なくともエンジンを駆動力源として使用するものであれば良く、必要に応じてエンジンおよび電動モータの両方を駆動力源として使用することも可能である。
【0050】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用されたハイブリッド型の車両用駆動システムであるハイブリッド駆動装置10の骨子図である。このハイブリッド駆動装置10はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用のもので、燃料の燃焼によって作動するガソリンエンジン12と、電気エネルギーで作動する電動モータおよび発電機としての機能を有するモータジェネレータ14と、遊星歯車式の副変速機16と、ベルト式の無段変速機18と、差動装置20とを備えており、出力軸22R、22Lから図示しない左右の前輪(駆動輪)に駆動力が伝達される。エンジン12、モータジェネレータ14、副変速機16、および無段変速機18の入力軸38は、同一の軸線上にその順番で配設されている。エンジン12およびモータジェネレータ14は、移動体である車両を移動させるための移動用駆動力源、走行用駆動力源に相当するもので、エンジン12は第1駆動力源であり、モータジェネレータ14はエンジン12よりも定格出力が小さく且つ始動時間が短い第2駆動力源である。また、無段変速機18は主変速機で、本実施例では出力軸22R、22Lまでの間で3〜11程度の変速比が得られるようになっている。
【0051】エンジン12は、エンジン始動用の電動モータ(MO)60によって回転駆動(クランキング)されることにより始動させられるようになっている。この電動モータ60は直流モータで、12V〜36V程度等の低電圧で作動させられるものであり、蓄電装置としてのバッテリ26から電気エネルギーが供給されるようになっている。エンジン12のクランクシャフト12sは、ベルト等の伝動装置を介して上記電動モータ60に機械的に連結されている。クランクシャフト12sにはまた、ベルト等の伝動装置および電磁クラッチ62を介して補機64が接続され、補機64としてのエアコンのコンプレッサ等を回転駆動するようになっている。クランクシャフト12sには更に、ベルト等の伝動装置を介してモータジェネレータ24が接続されている。このモータジェネレータ24は補機駆動用の電動モータで、バッテリ26から電気エネルギーが供給されるようになっている。
【0052】バッテリ26は、前記モータジェネレータ14にも電気エネルギーを供給して作動させるもので、本実施例では36V程度の比較的低電圧のものが用いられており、モータジェネレータ14の回生制動によって車両走行中に逐次充電される。バッテリ26の蓄電量SOCが所定値以下まで低下した時、すなわちモータジェネレータ14を電動モータとして作動させることができない場合は、電動モータ60によりエンジン12を始動するとともに、そのエンジン12でモータジェネレータ24を回転駆動して発電させることにより、バッテリ26を充電する。これにより、故障時以外は常時モータジェネレータ14を用いて走行することが可能である。バッテリ26には、電動モータ60によってエンジン12を始動できる程度の蓄電量SOCが常に確保されるようになっている。なお、電動モータ60に電気エネルギーを供給するため、バッテリ26とは別に12V等のバッテリを設けるようにしても良い。
【0053】副変速機16は、互いに近接して並列に配設されたダブルプラネタリ型の第1遊星歯車装置30およびシンプルプラネタリ型の第2遊星歯車装置32を備えている。これらの遊星歯車装置30、32は、共通のリングギヤRおよびキャリアCを有するとともに、第1遊星歯車装置30のキャリアのリングギヤ側のピニオンギヤと第2遊星歯車装置32のキャリアのピニオンギヤとが一体化されているラビニヨ型である。そして、第1遊星歯車装置30のサンギヤS1には、前記モータジェネレータ14が連結され、第2遊星歯車装置32のサンギヤS2には、第1クラッチC1およびダンパ装置34を介してエンジン12が連結されるようになっている。また、それ等のサンギヤS1およびS2は第2クラッチC2によって連結されるとともに、キャリアCは反力ブレーキBによってハウジング44に連結されて回転が阻止されるようになっており、リングギヤRは出力部材36を介して無段変速機18の入力軸38に連結されている。クラッチC1、C2、反力ブレーキBは、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる摩擦係合式のものである。
【0054】上記サンギヤS1は、第1遊星歯車装置30に隣接して配設されるモータジェネレータ14の中心を貫通して配設された円筒状の連結部材40を介して、そのモータジェネレータ14よりもエンジン12側に設けられた第2クラッチC2に接続されており、モータジェネレータ14のロータは連結部材40の中間位置に相対回転不能に固定されている。サンギヤS2は、上記連結部材40を挿通して相対回転可能に配設された連結部材42を介して、モータジェネレータ14よりもエンジン12側に設けられた第1クラッチC1に接続されているとともに、その第1クラッチC1を経由することなく第2クラッチC2に接続されている。また、前記反力ブレーキBは、副変速機16とモータジェネレータ14との間から外周側へ延び出すキャリアCをハウジング44に固定するように配設されている。
【0055】このように両遊星歯車装置30、32は、サンギヤS1、S2、および共通のリングギヤR、キャリアCの計4つの回転要素にて構成されているため、クラッチやブレーキの係合装置が少なくて済むなど、装置が全体として簡単且つコンパクトに構成される。特に、第1遊星歯車装置30のキャリアのリングギヤ側のピニオンギヤと第2遊星歯車装置32のキャリアのピニオンギヤとが一体化されているラビニヨ型であるため、部品点数が少なくなって一層簡単且つコンパクトに構成される。
【0056】また、サンギヤS1は、モータジェネレータ14の中心を貫通して配設された円筒状の連結部材40を介して第2クラッチC2に接続されているとともに、モータジェネレータ14のロータはその連結部材40の中間位置に相対回転不能に固定されている一方、サンギヤS2は、連結部材40を挿通して相対回転可能に配設された連結部材42を介して第1クラッチC1に接続されているとともに、その連結部材42は第1クラッチC1を経由することなく第2クラッチC2に接続されており、反力ブレーキBは、副変速機16とモータジェネレータ14との間から外周側へ延び出すキャリアCをハウジング44に固定するようになっており、リングギヤRはそのまま出力部材36を介して無段変速機18の入力軸38に接続されるため、エンジン12やモータジェネレータ14、反力ブレーキB、出力部材36を連結するための取り回し(連結構造など)が簡単である。
【0057】図2は、上記副変速機16の各回転要素S1、S2、R、Cの回転数の相互関係を直線で表す共線図で、縦軸が回転数であり、各回転要素S1、S2、R、Cの位置および間隔は、連結状態や遊星歯車装置30、32のギヤ比ρ1、ρ2によって一義的に定まる。この共線図上において、入力回転要素であるサンギヤS1、S2は互いに反対側の両端に位置しているとともに、出力用回転要素であるリングギヤRは反力用回転要素であるキャリアCとサンギヤS1との間に位置している。なお、図2における各回転要素S1、S2、R、Cの間隔は、ギヤ比ρ1、ρ2に基づいて必ずしも正確に表したものではない。
【0058】図3は、クラッチC1、C2、および反力ブレーキBの係合状態と副変速機16の変速モード(一例)との関係を示す図で、エンジン12を駆動力源として使用する場合、モータジェネレータ14を駆動力源として使用する場合、或いはシフトレバーの操作ポジション(図6参照)などにより場合分けして示したものである。図6の「D」ポジションは、予め定められた変速条件に従って無段変速機18の変速比をアクセル操作量や車速などの運転状態に応じて連続的に変化させながら前進走行する自動変速位置で、「M」ポジションは、「+」位置または「−」位置へシフトレバーが操作されることにより有段変速機のように無段変速機18の変速比を段階的に変化させる有段手動変速位置で、「B」ポジションは、シフトレバーの前後方向位置に応じて無段変速機18の変速比を連続的に変化させる無段手動変速位置である。また、「R」は車両を後進させるリバース位置で、「N」はニュートラル位置で、「P」はパーキングロック機構などで車両の走行を阻止するパーキング位置である。
【0059】図3において、エンジン12を駆動力源として前進走行する「D」、「M」、「B」ポジションでは、クラッチC1、C2を共に係合させるとともに反力ブレーキBを解放することにより、変速比が1の高速前進モード「2nd」が成立させられる。この高速前進モード「2nd」は高速段に相当する。その場合に、第1クラッチC1をスリップ係合させれば、エンジン発進が可能なエンジン低速前進モード「2nd(低速)」が成立させられ、バッテリ26の蓄電量SOCの低下や故障などでモータジェネレータ14を使用できない場合でも、エンジン12で前進方向のクリープトルクを発生させたり車両を前方へ発進させたりすることができる。「R」ポジションでは、第1クラッチC1および反力ブレーキBを係合させるとともに第2クラッチC2を解放することにより、変速比が−1/ρ2(ρ2は、第2遊星歯車装置32のギヤ比(=サンギヤS2の歯数/リングギヤRの歯数))の高速後進モード「高速」が成立させられる。その場合に第1クラッチC1をスリップ係合させれば、前進時と同様にエンジン発進が可能なエンジン低速後進モード「低速(エンジン)」が成立させられ、バッテリ26の蓄電量SOCの低下や故障などでモータジェネレータ14を使用できない場合でも、エンジン12で後進方向のクリープトルクを発生させたり車両を後方へ発進させたりすることができる。また、「N」ポジションでは、クラッチC1、C2を共に解放するとともに反力ブレーキBを係合させることにより、エンジン12からの動力伝達を遮断する。
【0060】モータジェネレータ14を駆動力源とする「D」、「M」、「B」ポジションでは、クラッチC1、C2を共に解放するとともに反力ブレーキBを係合させることにより低速前進モード「1st」が成立させられ、車両停止時には前進方向のクリープトルクを発生させるとともにアクセル操作に従って発進する。この時の変速比は1/ρ1(ρ1は第1遊星歯車装置30のギヤ比(=サンギヤS1の歯数/リングギヤRの歯数))で比較的大きく、大きなトルク増幅が得られるため、無段変速機18の大きな変速比と相まって、36V程度の電圧によって作動させられるモータジェネレータ14においても、実用上満足できるクリープトルクや発進性能が得られる。この低速前進モード「1st」は低速段である。
【0061】そして、上記低速前進モード「1st」からエンジン12による高速前進モード「2nd」への移行は、例えば、第2クラッチC2を係合させながら反力ブレーキBを解放して副変速機16を一体回転させるとともに、エンジン12の回転数がサンギヤS2と同期した後に第1クラッチC1を係合させ、その後にモータジェネレータ14への電力供給を停止して無負荷状態にする。
【0062】また、クラッチC1、C2を共に係合させるとともに反力ブレーキBを解放することにより、エンジン12およびモータジェネレータ14の両方を駆動力源として走行する変速比が1のアシストモード「2nd(アシスト)」が成立させられ、第1クラッチC1および反力ブレーキBを解放するとともに第2クラッチC2を係合させれば、モータジェネレータ14を回生制御して効率良く充電しながら制動力を発生させる変速比が1の回生制動モード「2nd(回生)」が成立させられる。なお、アシストモード「2nd(アシスト)」は、エンジン12による高速前進モード「2nd」の実行時にモータジェネレータ14を作動させれば良いし、回生制動モード「2nd(回生)」は、エンジン12による高速前進モード「2nd」の実行時に第1クラッチC1を解放してエンジン12を切り離すとともにモータジェネレータ14を回生制御すれば良い。また、アシストモード「2nd(アシスト)」は、第1クラッチC1をスリップ係合させるエンジン低速前進モード「2nd(低速)」でモータジェネレータ14を作動させて行うこともできる。
【0063】また、モータジェネレータ14を駆動力源とする「R」ポジションでは、クラッチC1、C2を共に解放するとともに反力ブレーキBを係合させることにより低速後進モード「低速(モータ)」が成立させられ、モータジェネレータ14に逆回転のトルクを発生させることにより、車両停止時には後進方向のクリープトルクを発生させるとともにアクセル操作に従って後方へ発進する。この時の変速比は−1/ρ1で比較的大きく、大きなトルク増幅が得られるため、無段変速機18の大きな変速比と相まって、36V程度の電圧によって作動させられるモータジェネレータ14においても、実用上満足できるクリープトルクや発進性能が得られる。この低速後進モード「低速(モータ)」も低速段である。そして、この低速後進モード「低速(モータ)」からエンジン12による高速後進モード「高速」への移行は、エンジン12を作動させて第1クラッチC1を係合させた後にモータジェネレータ14への電力供給を停止して無負荷状態にすれば良い。
【0064】上記エンジン12およびモータジェネレータ14の使い分けは、例えば車速およびアウトプットトルク(アクセル操作量)をパラメータとして、図4の(a) のマップM1、または(b) のマップM2に示すように定められる。ここで、(a) のマップM1では、高車速、高トルク(アクセル操作量大)の領域ではエンジン12を使用し、低車速、低トルク(アクセル操作量小)の領域ではモータジェネレータ14を使用するが、低電圧のモータジェネレータ14を使用する本実施例では、モータジェネレータ14の使用範囲は比較的狭く、車両停止時のクリープトルクおよび僅かな走行領域に限定されている。マップM1、M2は、バッテリ26の蓄電量SOCなど車両の走行条件等に応じて選択され、例えばバッテリ26の蓄電量SOCが不足している場合はマップM2が選択される。図4は前進走行用のものであるが、後進走行についても同様に定められる。なお、エンジン12を駆動力源とする上記「2nd」、「2nd(低速)」の領域でモータジェネレータ14をアシスト的に使用することも可能である。また、各領域の境界線は、無段変速機18の変速比などに応じて変化する。
【0065】図5は、本実施例のハイブリッド駆動装置10の作動を制御する制御系統を示す図で、ECU(Electronic Control Unit)50には図5の左側に示すスイッチやセンサ等から各種の信号が入力されるとともに、ROM等に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行って右側に示す各種の装置等に制御信号などを出力することにより、例えば車速Vやアクセル開度(アクセルペダルの操作量)θ、シフトポジション(シフトレバーの操作位置)、バッテリ蓄電量SOC、フットブレーキの操作量などの運転状態に応じて副変速機16の変速モードを切り換えたり、エンジン12およびモータジェネレータ14の作動を制御したりする。
【0066】図5の減速度/トルク設定スイッチ52は、例えば図7に示すようなスライドスイッチによって構成され、シフトレバーの近傍などに配設される。これは、副変速機16が回生制動モード「2nd(回生)」の時のモータジェネレータ14の回生制動トルクを手動で調整するもので、手前に引く程制動トルクは増大する。すなわち、この減速度/トルク設定スイッチ52の操作位置に従って、図4の回生制動モード「2nd(回生)」のラインは上下に移動させられるのである。また、図8の設定減速度インジケータ54には、減速度/トルク設定スイッチ52の操作位置に応じて、回生制動トルクが大きくなる程長さが長くなる後向きの矢印で設定状態が表示される。この設定減速度インジケータ54は、インストルメントパネルに設けられる。
【0067】また、図5のコントローラ(MO)66はエンジン始動用の電動モータ60の出力(トルク)制御を行うもので、コントローラ(MG14)68、コントローラ(MG24)70はモータジェネレータ14、24の出力(トルク)制御および回生制御等を行うインバータで、電動オイルポンプ72は前記クラッチC1、C2やブレーキB、或いはABSアクチュエータ74等に油圧を供給するためのものである。システムインジケータ76は、シフトレバーが前記「M」ポジションまたは「B」ポジションへ操作された場合にアクティブになり、無段変速機全体の変速比を図9に示すように数値表示する。何等かの理由により「M」ポジション、「B」ポジションで変速比が点灯しない場合はフェール判定が為される。フェール時には、変速比を点滅させるようにしても良い。
【0068】図10は、車両を停止状態に維持するヒルホールド油圧の特性図である。ヒルホールド油圧は、車輪に設けられたホイールシリンダの油圧で、図5のABSアクチュエータ74によって制御されるものであり、フットブレーキのペダルストロークに応じて制御されるようになっている。本実施例では、図5のフットブレーキアッパスイッチ78およびフットブレーキロアスイッチ80によってペダルストロークを2段階で検出するようになっており、フットブレーキアッパスイッチ78がONでフットブレーキロアスイッチ80がOFFの踏込み量(ペダルストローク)が小さいBS1〜BS2の領域では50%の油圧でヒルホールドを実施し、フットブレーキロアスイッチ80がONになる踏込み量が大きいBS2以上の領域では100%の油圧でヒルホールドを実施する。なお、フットブレーキのペダルストロークを連続的に検出して、一点鎖線で示すようにヒルホールド油圧を連続的に変化させるようにしても良い。
【0069】一方、エンジン12を駆動力源として使用するために始動する際には、前記ECU50により図11のフローチャートに従って信号処理が行われる。ステップS1では、本制御に必要な各種の信号を読み込む等の入力信号処理を行い、ステップS2では、シフトポジションスイッチ82(図5参照)から供給される信号に基づいてシフトレバーの操作位置が走行ポジション、すなわち「D」、「M」、「B」、または「R」であるか否かを判断する。走行ポジションであれば、ステップS3においてエンジン12を走行用の駆動力源として使用するためのエンジン始動条件が成立しているか否か、すなわちモータ走行モードからエンジン走行モード或いはエンジン+モータ走行モードへ移行するか否か、または単純にエンジン12を始動して走行するか否かなどを判断する。具体的には、前記図4の(a) のマップM1において、車速Vおよびアクセル操作量θ等がモータジェネレータ14による低速前進モード「1st」からエンジン12によるエンジン低速前進モード「2nd(低速)」または高速前進モード「2nd」へ移行する条件を満たしているか否か、或いはバッテリ26の蓄電量不足などで図4の(b) のマップM2に切り換えられるなどしてエンジン12によるエンジン低速前進モード「2nd(低速)」または高速前進モード「2nd」を新たに実行する条件を満たしているか否か等である。
【0070】そして、エンジン始動条件が成立している場合には、ステップS4においてエンジン始動用電動モータ60によりエンジン12をクランキングするとともに点火時期制御や燃料噴射制御などを行う。このエンジン始動処理の実行時には、第1クラッチC1は解放され、エンジン12が駆動力伝達系から切り離されている。ECU50による信号処理のうちステップS4を実行する部分はエンジン始動手段として機能している。次のステップS5では、予め定められた所定の時間内に実際にエンジン12が始動したか否かを判断し、エンジン12が始動すればステップS6においてエンジン12を駆動力源とする通常の走行制御を行うが、故障など何等かの理由で所定の時間内にエンジン12が始動しない場合にはステップS5に続いてステップS7以下を実行し、エンジン始動用の電動モータ60を用いて駆動力を発生させる。ECU50による信号処理のうちステップS5を実行する部分は始動遅れ判断手段として機能している。
【0071】ステップS7では、電磁クラッチ62を解放して補機64を切り離すことにより、駆動力を発生させる電動モータ60の負担を軽減する。ステップS8では第1クラッチC1を係合させてエンジン12を副変速機16に接続し、エンジン12の回転が副変速機16、ベルト式無段変速機18等の駆動力伝達系を経て出力軸22R、22Lから駆動輪まで伝達されるようにする。第1クラッチC1の他にも前進走行時には第2クラッチC2が係合させられ、後進走行時には反力ブレーキBが係合させられる。そして、ステップS9のMO特殊制御では、電動モータ60をステップS4のエンジン始動時よりも大きなトルクで作動させて、エンジン12を回転させながら駆動力を発生させる。具体的には、電動モータ60の出力を、定格出力を越えて最大限まで引き上げてエンジン12の始動遅れに伴う駆動力不足を補い、車両を走行可能としたり、所定の駆動力を発生させたりするのである。電動モータ60は直流モータであるため、容易にこのような制御が可能である。ECU50による信号処理のうちステップS8およびS9を実行する部分は補助駆動制御手段として機能しており、エンジン始動用の電動モータ60は通常は走行用駆動力源として使用しない第3駆動力源に相当する。また、電動モータ60の始動時間はエンジン12よりも十分に短く、速やかに駆動力を発生させることができる。すなわち、本実施例は第8発明〜第12発明の実施例に相当する。
【0072】なお、上記電動モータ60の特殊制御時にはモータジェネレータ14も作動させられ、両方の出力を加えた駆動力が発生させられる。すなわち、エンジン+モータ走行モードへ移行する場合は勿論、エンジン走行モードへ移行する場合にも、モータジェネレータ14は所定の出力で作動させられ、電動モータ60と共にエンジン12の代わりに所定の駆動力を発生させるのである。
【0073】ステップS10では、MO特殊制御を中止するか否かを判断し、中止する場合には直ちにステップS12を実行してMO特殊制御を中止する。中止条件としては、例えば図5のイグニッションスイッチ(ハイブリッド車両の駆動システムのON、OFFを切り換えるスイッチ)84がOFF操作された時、シフトレバーが「N」ポジションや「P」ポジションへ切換え操作された時、MO特殊制御が所定時間以上経過した時、燃料噴射等のエンジン始動処理を継続して行っている場合にエンジン12が始動した時などである。また、ステップS11では、バッテリ26の蓄電量SOCが下限値SOCL1以下になったか否かを判断し、SOC≦SOCL1になった場合もステップS12でMO特殊制御を中止する。下限値SOCL1は、例えばバッテリ26の蓄電量SOCがMO特殊制御に耐え得る程残っているか否か等を基準にして定められる。
【0074】このように、本実施例のハイブリッド駆動装置10は、エンジン12を駆動力源として走行するためにステップS4でエンジン12が始動させられる際に、そのエンジン12の始動が遅い場合には、ステップS5の判断がNOになってステップS7以下が実行され、モータジェネレータ14の他にエンジン始動用の電動モータ60を用いて駆動力が発生させられるため、第2駆動力源であるモータジェネレータ14として定格出力が小さい安価でコンパクトなものを採用しつつ、エンジン12の始動遅れや始動不可に伴う駆動力不足が改善される。これにより、モータ走行モードからエンジン走行モードへの移行時、或いはエンジン12を駆動力源として発進する際に、エンジン12の始動遅れに起因してもたつき感が生じたりエンジン12の始動不可によって走行不能になったりすることが防止される。
【0075】なお、上記実施例では第3駆動力源としてエンジン始動用の電動モータ60を用いて駆動力不足を補うようになっていたが、補機駆動用のモータジェネレータ24を用いて駆動力不足を補うこともできる。すなわち、ステップS9において、電動モータ60を用いる代わりにモータジェネレータ24を力行制御して、エンジン12を回転させながら所定の駆動力を発生させるのである。モータジェネレータ24は交流モータで、インバータにより制御されるが、予め大電流を流せるように設計することにより、一時的であれば定格出力を越える大きなトルクを発生させることができる。この場合は、第13発明の実施例に相当する。
【0076】上記モータジェネレータ24を用いてエンジン12を始動させることも可能で、その場合は電動モータ60を省略できる。
【0077】また、図12は、車両走行用の第2駆動力源として用いられるモータジェネレータ14を特殊制御して、エンジン12の始動遅れに伴う駆動力不足を補う場合で、ステップSS1〜SS6は図11のステップS1〜S6と実質的に同じであり、ステップSS7ではエンジン12の始動遅れに伴う駆動力不足を補うように、バッテリ26からの電気エネルギー供給量を増大させるなどしてモータジェネレータ14を、その定格出力を越える大トルクで作動させて走行する。モータジェネレータ14は交流モータで、インバータにより制御されるが、予め大電流を流せるように設計することにより、一時的であれば定格出力を越える大きなトルクを発生させることができる。
【0078】ステップSS8では、ステップSS7のMG特殊制御を中止するか否かを判断し、中止する場合には直ちにステップSS11を実行してMG特殊制御を中止する。中止条件としては、例えばイグニッションスイッチ84がOFF操作された時、シフトレバーが「N」ポジションや「P」ポジションへ切換え操作された時、ステップSS4のエンジン始動処理を継続して行っている場合にエンジン12が始動した時などである。また、ステップSS9でバッテリ26の蓄電量SOCが下限値SOCL2以下になったか否かを判断するとともに、ステップSS10でMG特殊制御の継続時間TSが所定時間T1以上になったか否かを判断し、SOC≦SOCL2或いはTS≧T1になった場合もステップSS11でMG特殊制御を中止する。下限値SOCL2は、例えばバッテリ26の蓄電量SOCがMG特殊制御に耐え得る程残っているか否か等を基準にして定められ、一定時間T1は、連続高出力によるモータジェネレータ14の熱的限界等を基準にして定められる。
【0079】この場合も前記実施例と同様の効果が得られる。特に、モータ走行モードからエンジン走行モード或いはエンジン+モータ走行モードへの移行時のエンジン始動遅れの場合、モータ走行モードで使用していたモータジェネレータ14をそのまま用いて高トルクまで引っ張って走行することになるため、前記実施例のように別の電動モータ60やモータジェネレータ24を用いて駆動力を発生させる場合に比較して、駆動力を滑らかに増大させることができるとともに制御が容易である。
【0080】この実施例は、第1発明〜第3発明の実施例で、ECU50による信号処理のうちステップSS4を実行する部分がエンジン始動手段として機能しており、ステップSS5を実行する部分が始動遅れ判断手段として機能しており、ステップSS7を実行する部分が補助駆動制御手段として機能している。
【0081】図13および図14は第14発明の一実施例で、前記ハイブリッド駆動装置10に適用され、ECU50による信号処理によって実行される。ステップQ1では、本制御に必要な各種の信号を読み込む等の入力信号処理を行い、ステップQ2では、シフトポジションスイッチ82から供給される信号に基づいてシフトレバーの操作位置が走行ポジション、すなわち「D」、「M」、「B」、または「R」であるか否かを判断する。走行ポジションであれば、ステップQ3においてバッテリ26の蓄電量SOCが下限値SOCL3以下か否かを判断し、SOC≦SOCL3の場合はステップQ4で前記図4の(b) に示すマップM2に従ってエンジン12のみを駆動力源として走行するが、SOC>SOCL3であればステップQ5以下を実行する。下限値SOCL3は、例えばバッテリ26の蓄電量SOCがモータジェネレータ14を力行制御して走行できる程残っているか否か等を基準として定められる。
【0082】ステップQ5では、フットブレーキが略完全に踏み込まれているか否かを、フットブレーキロアスイッチ80がONか否かによって判断し、ONの場合はステップQ6で車速Vが予め定められた一定の低車速VL1以下か否かを判断する。ステップQ6は、車両が略停止状態であるか否かを判断するためのもので、低車速VL1はセンサの検出誤差などを考慮して略0の値に設定されており、V≦VL1であればステップQ7でエンジン12およびモータジェネレータ14の出力を共に0にして燃料や電力を節約する。また、ステップQ8では、図10に示すようにヒルホールド油圧を100%とし、高い油圧でホイールブレーキを作動させて車両を停止状態に保持する。
【0083】上記ステップQ5の判断がNOの場合、すなわちブレーキロアスイッチ80がOFFの場合は、図14のステップQ9以下を実行し、ステップQ6の判断がNOの場合、すなわち車速Vが低車速VL1より大きい場合は、図14のステップQ11以下を実行する。ステップQ9では、フットブレーキが少し踏み込まれている(BS1〜BS2)か否かを、フットブレーキアッパスイッチ78がONか否かによって判断し、ONの場合はステップQ14で車速Vが予め定められた一定の低車速VL2以下か否かを判断する。低車速VL2は、例えば図4(a) のマップM1における低速前進モード「1st」の最大車速と略同じ車速で、V≦VL2であればステップQ15でモータジェネレータ14を力行制御するとともに、ステップQ16でヒルホールド力を50%に低減する。モータジェネレータ14のトルクは、ヒルホールド力(50%)およびフットブレーキの制動力に拘らず略水平な平坦路であれば車両が少しずつ前進するクリープトルクを発生させる大きさに設定されている。後進走行時も同様に設定される。したがって、フットブレーキの踏込み量(ペダルストローク)が比較的小さく(BS1〜BS2の範囲内)、且つ車速Vが低車速VL2以下の場合には、アクセルOFFでもモータジェネレータ14によって車両が前後進させられ、トルクコンバータを備えている一般のオートマチック車両と同様にブレーキ操作の強弱だけでクリープ走行できる。
【0084】一方、ステップQ9の判断がNOの場合、すなわちフットブレーキが踏込み操作されていない場合や、ステップQ14の判断がNOの場合、すなわちフットブレーキがONでも車速Vが低車速VL2より大きい場合には、ステップQ10以下を実行する。ステップQ10では、エンジン12のみを駆動力源として走行する図4(b) のマップM2を設定し、ステップQ11では、電動モータ60などでエンジン12を始動してマップM2に従って変速モードを切り換えながら走行する。ステップQ12では、車速Vおよびアクセル操作量θなどの運転状態、或いはシフトレバー操作などに従って無段変速機18の変速制御を行い、ステップQ13ではヒルホールドを完全に解除する。
【0085】本実施例では、フットブレーキが踏込み操作されていない場合(ステップQ9がNO)には、マップM2に従ってエンジン12のみを駆動力源として走行するため、アクセルを踏み込んで発進する通常の発進時には発進当初からエンジン12を作動させて走行することになり、発進加速の途中でエンジン12を始動してモータ走行からエンジン走行に切り換える場合に比較して、その切換えに伴うもたつき感が解消し、スムーズな発進性能が得られる。一方、フットブレーキの踏込み量(ペダルストローク)が比較的小さく(BS1〜BS2の範囲内)、且つ車速Vが低車速VL2以下の場合(ステップQ14がYES)、言い換えればブレーキ操作の強弱だけでクリープ走行する場合には、モータジェネレータ14のみを駆動力源として走行するため、ハイブリッド駆動装置10の特徴の一つである燃費や排ガスの低減効果を十分に享受できる。
【0086】この場合には、ECU50による信号処理のうちステップQ15を実行する部分が低速モータ走行手段として機能しており、ステップQ11を実行する部分が低速エンジン走行手段および高速エンジン走行手段として機能している。
【0087】図15は、本発明が適用されたハイブリッド型の車両用駆動システムであるハイブリッド駆動装置100の概略構成図で、図16は骨子図である。このハイブリッド駆動装置100はFR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両用のもので、燃料の燃焼によって作動するガソリンエンジン102と、電気エネルギーで作動する電動モータおよび発電機としての機能を有するモータジェネレータ104とを、移動体である車両の移動用駆動力源(走行用駆動力源)として備えており、トルコンバータ106から歯車変速機部108を経て図示しない差動装置、車軸などを介して左右の後輪(駆動輪)に駆動力が伝達される。エンジン102は第1駆動力源で、モータジェネレータ104はエンジン102よりも定格出力が小さく且つ始動時間が短い第2駆動力源であり、エンジン102のクランクシャフト102sは油圧式摩擦係合装置である入力クラッチ110を介してモータジェネレータ104のモータ軸104sに連結されるようになっている。
【0088】エンジン102は、エンジン始動用のモータジェネレータ112によりタイミングベルト、チェーン等の駆動装置114を介して回転駆動(クランキング)されることによって始動させられるようになっている。このモータジェネレータ112は、例えば36V程度等の低電圧で作動させられるもので、電源切換スイッチ116を介して二次電池118および水素−酸素型の燃料電池120に択一的に接続され、それ等から供給される電気エネルギーで作動させられるとともに、エンジン102によってモータジェネレータ112が回転駆動されることによって発生する電気エネルギーで二次電池118が充電される。前記モータジェネレータ104も、同じく36V程度等の低電圧で作動させられるもので、電源切換スイッチ122を介して二次電池118および燃料電池120に択一的に接続され、それ等から供給される電気エネルギーで作動させられるとともに、車両走行中の減速時等にモータジェネレータ104が回生制動させられることによって発生する電気エネルギーで二次電池118が充電される。電源切換スイッチ122はまた、エンジン102の始動が遅い場合や始動不可の時など、必要に応じて二次電池118と燃料電池120とを直列に接続して、モータジェネレータ104に高電圧の電気エネルギーを供給できるようになっている。なお、燃料電池120によって二次電池118を充電することもできる。
【0089】上記モータジェネレータ104、112は、何れも図示しないインバータを備えているとともに、燃料電池120は冷却系を備えている。また、各種の車載コンピュータ等のために12Vの二次電池を備えており、燃料電池120や二次電池118によりDC−DCコンバータを介して充電を行うようになっている。
【0090】前記トルクコンバータ106は、モータ軸104sに連結されたポンプ翼車124と、歯車変速機部108の入力軸126に連結されたタービン翼車128と、それ等ポンプ翼車124、タービン翼車128の間を直結するロックアップクラッチ130と、一方向クラッチによって一方向の回転が阻止されているステータ132とを備えている。
【0091】歯車変速機部108は、ハイおよびローの2段の切換えを行う第1変速機134と、後進1段および前進4段の変速段の切換えが可能な第2変速機136とを備えている。第1変速機134は、1組のシンプルプラネタリ型の遊星歯車装置138、ブレーキB0、クラッチC0、および一方向クラッチF0を備えて構成されている。また、第2変速機136は、3組のシンプルプラネタリ型の遊星歯車装置140、142、144、ブレーキB1〜B4、クラッチC1、C2、および一方向クラッチF1、F2を備えて構成されている。ブレーキB0〜B4およびクラッチC0〜C2は、何れも油圧アクチュエータによって係合、解放される多板式の摩擦係合装置で、図15に示す油圧制御部146の油圧回路や油圧がソレノイドバルブ等によって切換、調圧制御されることにより係合、解放状態が切り換えられ、その作動状態に応じて図17に示す変速段等が成立させられる。油圧制御部146には、電動オイルポンプ148や前記ポンプ翼車124と一体的に回転駆動される図示しない機械式のオイルポンプ等から作動油が供給されるようになっている。なお、モータジェネレータ104やトルクコンバータ106、歯車変速機部108は中心線に対して略対称的に構成されているため、図16では中心線の下半分が省略されている。
【0092】図18は、油圧制御部146の一部を示す図で、電動オイルポンプ148によって汲み上げられた作動油は、プライマリレギュレータバルブ150によりアクセル開度等に応じたライン圧PL に調圧され、クラッチC1およびC2は、シフト操作部材としてのシフトレバー152に機械的に連結されて連通状態が切り換えられるマニュアルバルブ154を経由して作動油が供給されるようになっている。また、前記入力クラッチ110も、入力クラッチコントロールソレノイド156によって、その係合、解放状態が切り換えられるようになっている。
【0093】図17の「P」は、シフトレバー152が図19の「P」ポジションへ操作された場合に成立させられるパーキングで、動力伝達が遮断されるとともに図示しないメカニカルパーキングロック機構により出力軸158(図16参照)の回転が機械的に阻止される。「R」は、シフトレバー152が「R」ポジションへ操作された場合に成立させられる後進変速段である。「N」は、シフトレバー152が「N」ポジションへ操作された場合に成立させられるニュートラルで、動力伝達が遮断される。「1st」〜「5th」は、シフトレバー152が「D」ポジションへ操作された場合に成立させられる前進変速段で、「1st」から「5th」へ向かうに従って変速比(=入力軸126の回転数/出力軸158の回転数)が小さくなり、例えば図20の(a) に点線で示すようにアクセル開度θおよび車速Vをパラメータとして予め定められた変速段切換マップ(変速マップ)に従って複数の電磁切換弁(図22のATソレノイド162)により切り換えられる。図19は、シフトレバー152のシフトパターンの一例で、「4」ポジションでは「1st」〜「4th」で切り換えられ、「3」ポジションでは「1st」〜「3rd」で切り換えられ、「2」ポジションでは「1st」および「2nd」で切り換えられ、「L」ポジションでは「1st」に固定される。図20の(b) の点線は、「2」ポジションの場合の変速段切換マップである。
【0094】図20および図21の実線は、エンジン102およびモータジェネレータ(MG)104の使用領域(各走行領域)を示す駆動力源切換マップの一例で、シフトレバー152の操作ポジション毎にアクセル開度θおよび車速Vをパラメータとして予め定められている。本実施例では、モータジェネレータ104のみで走行するモータ走行モード、およびエンジン102のみで走行するエンジン走行モードの2つの走行モードを備えており、モータ走行領域ではモータ走行モードで走行し、エンジン走行領域ではエンジン走行モードで走行する。図20の(a) の「D」ポジションと(b) の「2」ポジションとを比較すると、2nd変速段までで変速が行われる「2」ポジションでは、モータジェネレータ104の使用領域(モータ走行領域)が「D」ポジションにおける2nd変速段よりも少し高車速側まで拡大されている。また、図21(a) の「L」ポジションでは、モータ走行領域が「2」ポジションにおける1st変速段よりも少し高車速側まで拡大されている。なお、「4」ポジションおよび「3」ポジションの駆動力源切換マップは、図20(a) の「D」ポジションの場合と同じである。
【0095】前記図19のスポーツモードスイッチ160は、運転席の横に配設されているシフトレバー152の近傍に設けられており、このスポーツモードスイッチ160がON(押込み)操作されると、例えば図20の(a) に二点鎖線で示すようにモータ走行領域が小さくされる。モータ走行領域を小さくすると同時に、変速段切換マップの変速線を高車速側へずらすようにしても良い。
【0096】図22は、本実施例のハイブリッド駆動装置100の作動を制御する制御系統を示す図で、ECU(Electronic Control Unit)164には図22の左側に示すスイッチやセンサ等から各種の信号が入力されるとともに、ROM等に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行って右側に示す各種の装置等に制御信号などを出力することにより、例えば車速Vやアクセル開度(アクセルペダルの操作量)θ、シフトポジション(シフトレバー152の操作ポジション)などの運転状態に応じて歯車変速機部108の変速段を切り換えたり、エンジン102およびモータジェネレータ104の作動を制御したりする。図22のコントローラ(MG104)166、コントローラ(MG112)168はモータジェネレータ104、112の出力(トルク)制御および回生制御等を行うインバータなどである。
【0097】そして、エンジン102を駆動力源として使用するために始動する際には、ECU164により図23のフローチャートに従って信号処理が行われる。ステップR1では、本制御に必要な各種の信号を読み込む等の入力信号処理を行い、ステップR2では、エンジン102を走行用駆動力源として使用するためのエンジン始動条件が成立しているか否かを、例えばシフトポジションセンサ170によって検出されるシフトレバー152の操作ポジションや、車速センサ172によって検出される車速V、アクセル開度センサ174によって検出されるアクセル開度(アクセルペダルの操作量)θなどに基づいて、図20、図21に実線で示す駆動力源切換マップのエンジン走行領域に入ったか否か、等によって判断する。
【0098】上記ステップR2の判断がYES(肯定)であれば、ステップR3においてエンジン始動用のモータジェネレータ112によりエンジン102をクランキングするとともに点火時期制御や燃料噴射制御などを行う。このエンジン始動処理の実行時には、入力クラッチ110は解放され、エンジン102が駆動力伝達系から切り離されている。ECU164による信号処理のうちステップR3を実行する部分はエンジン始動手段として機能している。次のステップR4では、予め定められた所定の時間内に実際にエンジン102が始動したか否かを判断し、エンジン102が始動すれば、ステップR5において歯車変速機部108の変速段の切換制御を例えば図20に点線で示す通常の変速マップに従って行うが、故障など何等かの理由で所定の時間内にエンジン102が始動しない場合にはステップR4に続いてステップR6以下を実行し、エンジン102の代わりにモータジェネレータ104を用いて所定の駆動力を発生させる。ECU164による信号処理のうちステップR4を実行する部分は始動遅れ判断手段として機能している。
【0099】ステップR6では、燃料電池燃料残量センサ176によって検出される燃料電池(FC)120の燃料の残量が予め定められた所定値以下になり、モータジェネレータ104を走行用駆動力源として使用するために燃料電池120から電気エネルギーを供給することができないか否かを判断する。燃料電池燃料の残量が所定値より多い場合は、ステップR7で前記電源切換スイッチ122により燃料電池120および二次電池118を直列接続してモータジェネレータ104に電気エネルギーを供給する。また、ステップR8では、燃料電池120の発電のパーマメント処理を行い、時間限定で発電量を定格発電量を越えて多くする。すなわち、熱的な問題や耐久上の問題で、長期には無理で通常は使っていない量まで一時的に増加させるのである。このように燃料電池120および二次電池118を併用するとともに、燃料電池120の発電量を定格発電量を越えて増大させることにより、モータジェネレータ104の出力が定格出力を越えて引き上げられる。これにより、エンジン102の始動遅れに伴う駆動力不足が緩和される。ECU164による信号処理のうちステップR7およびR8を実行する部分は、電源切換スイッチ122と共に補助駆動制御手段を構成している。すなわち、本実施例は第4発明〜第7発明の実施例に相当する。なお、第4発明の実施に際してはステップR7は必ずしも必要でなく、第5発明の実施に際してはステップR8は必ずしも必要でなく、第6発明、第7発明の実施に際してはモータジェネレータ104がその定格出力を越えることは必ずしも必要でない。
【0100】次のステップR10では、図20に点線で示す通常の変速マップよりも高車速側で変速が行われるようにして、定格出力がエンジン102よりも小さいモータジェネレータ104でも大きな駆動力が得られるようにする。
【0101】一方、燃料電池燃料の残量が所定値以下でステップR6の判断がNOの場合は、ステップR9を実行し、二次電池118を単独で使用してモータジェネレータ104を作動させるとともに、ステップR10で変速マップを変更する。ステップR9では、ステップR7およびR8の実行時に比較してモータジェネレータ104の出力が低いため、この場合のステップR10では、ステップR7およびR8に続いて実行される場合に比較して変速マップの変更量を大きくすることが望ましい。
【0102】このように、本実施例のハイブリッド駆動装置100は、エンジン102を駆動力源として走行するためにステップR3でエンジン102が始動させられる際に、そのエンジン102の始動が遅い場合には、ステップR4の判断がNOになってステップR6以下が実行され、燃料電池燃料の残量が十分あればその燃料電池120および二次電池118を直列接続してモータジェネレータ104に電気エネルギーを供給するとともに、燃料電池120の発電量を定格発電量を越えて増大させることにより、モータジェネレータ104を定格出力を越えて作動させるため、第2駆動力源であるモータジェネレータ104として定格出力が小さい安価でコンパクトなものを採用しつつ、エンジン102の始動遅れや始動不可に伴う駆動力不足が改善される。これにより、モータ走行モードからエンジン走行モードへの移行時、或いはエンジン102を駆動力源として発進する際に、エンジン102の始動遅れに起因してもたつき感が生じたりエンジン102の始動不可によって走行不能になったりすることが防止される。
【0103】また、モータ走行モードからエンジン走行モードへの移行時のエンジン始動遅れの場合、モータ走行モードで使用していたモータジェネレータ104をそのまま用いて高トルクまで引っ張って走行することになるため、前記実施例のように別の電動モータ60やモータジェネレータ24を用いて駆動力を発生させる場合に比較して、駆動力を滑らかに増大させることができるとともに制御が容易である。
【0104】また、本実施例では、モータジェネレータ104の電気エネルギー供給源として燃料電池120および二次電池118が用いられ、通常は何れか一方から択一的に電気エネルギーが供給されるのに対し、エンジン102の始動が遅い場合には、それ等の燃料電池120および二次電池118を直列接続してモータジェネレータ104に電気エネルギーを供給するとともに、燃料電池120の発電量を定格発電量を越えて増大させることにより、モータジェネレータ104を定格出力を越えて作動させるため、燃料電池120として定格発電量が小さい安価でコンパクトなものを採用することが可能で、ハイブリッド駆動装置100が一層安価でコンパクトに構成される。
【0105】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年8月5日(1999.8.5)
【代理人】 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸 (外2名)
【公開番号】 特開2000−350310(P2000−350310A)
【公開日】 平成12年12月15日(2000.12.15)
【出願番号】 特願平11−221934