| 【発明の名称】 |
電気自動車用電源装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】町 達哉
【氏名】山下 剛
|
| 【要約】 |
【課題】簡素な構成で低圧バッテリの急速充電が可能な二電源型電気自動車用電源装置を提供する。
【解決手段】補機(制御装置を含む)給電用の低圧バッテリ2の充電不足時に、走行用モータ給電用の高圧バッテリ1からDC−DCコンバータ3を通じてこの低圧バッテリ2を充電する。DC−DCコンバータ3のインバータ回路4を、単に所定周波数の単相交流電圧(波形は正弦波でも矩形波でもよい)を作成するだけではではなく、インバータ回路4の半導体スイッチング素子の出力電流が所定の許容最大電流値から半導体スイッチング素子の温度に連動する温度影響相殺電流値を差し引いた値となるようにデューティ比を調整するPWM制御を行う。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】電気自動車の走行用モータに高圧で給電する高圧バッテリ、前記電気自動車の補機又は制御機器に低圧で給電する低圧バッテリ、及び、前記両バッテリ間で電圧変換された直流電力を送電するDC−DCコンバータを備え、前記DC−DCコンバータは、前記高圧バッテリから給電された直流電力を交流電力に変換するインバータ回路、前記インバータ回路から出力される前記交流電力を降圧するトランス、降圧された前記交流電力を整流して前記低圧バッテリを充電する整流回路、及び、前記インバータ回路を駆動制御して前記低圧バッテリを充電するとともに前記補機又は制御機器に給電する送電制御部を備える電気自動車用電源装置において、前記半導体スイッチング素子の温度に関連する状態量を検出する温度検出部、及び、前記半導体スイッチング素子の通電電流に関連する電流を検出する電流検出部、及び、前記状態量をそれと所定の関数関係を有する温度影響相殺電流値に変換する温度−電流変換部を備え、前記送電制御部は、前記低圧バッテリの充電時に出力電流が所定の許容最大電流値から前記温度影響相殺電流を差し引いた値となるようにデューティ比が設定されたPWM制御により前記インバータ回路の前記半導体スイッチング素子を制御することを特徴とする電気自動車用電源装置 |
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車用電源装置に関する。 【0002】 【従来の技術】電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)では走行用モータへは高圧バッテリから給電し、種々の補機へは低圧バッテリから給電する二電源方式が種々の点で有益であるため実用となっている。この二電源方式の電気自動車では、降圧型DC−DCコンバータを通じて主バッテリから充電するのが種々の点で合理的な選択である。 【0003】この降圧型DC−DCコンバータは、入力直流電圧から単相交流電圧を形成するインバータ回路、この単相交流電圧の変圧を行うトランス、このトランスの出力電圧を整流する整流回路、整流された電圧を平滑する平滑回路、インバータ回路の半導体スイッチング素子を駆動制御して低圧バッテリの充電や補機などへの給電を行う送電制御部を有する。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】この種の電気自動車用電源装置では、半導体スイッチング素子を水冷機構にて冷却するのが一般的であるが、この場合、水冷機構の通水遮断事故が生じると、半導体スイッチング素子の温度が急激に上昇する。このため、従来では、半導体スイッチング素子への給電を遮断して素子を保護しているが、この給電遮断により補機や制御装置などへの給電が低圧バッテリからのみとなってそれが充電不足となり、主バッテリは十分に残存容量をもつにもかかわらず制御系の電源電圧不足により走行不能となってしまう。 【0005】本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、もちろん、許容最大電流値が大きい大電力用の半導体スイッチング素子を採用したり、半導体スイッチング素子の冷却機構を強化したりすることは可能であるが、これは構造の複雑化とコストアップを招くという問題を派生する。本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、簡素な構成で半導体スイッチング素子の温度上昇を抑止しつつ低圧バッテリの充電不足を抑止することが可能な電気自動車用電源装置を提供することをその目的としている。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明によれば、補機(制御装置を含む)給電用の低圧バッテリの充電不足時に、走行用モータ給電用の高圧バッテリからDC−DCコンバータを通じてこの低圧バッテリを充電する。このDC−DCコンバータは主バッテリからの直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路を内蔵しており、形成された交流電圧は清流回路で整流されて低圧バッテリに給電される。 【0007】本発明では特に、DC−DCコンバータの上記インバータ回路を、単に所定周波数の単相交流電圧(波形は正弦波でも矩形波でもよい)を作成するだけではではなく、インバータ回路の半導体スイッチング素子の出力電流が所定の許容最大電流値から半導体スイッチング素子の温度に連動する温度影響相殺電流値を差し引いた値となるようにデューティ比を調整するPWM制御を行う。 【0008】このようにすれば、DC−DCコンバータのインバータ回路を素子の温度保護用のPWM制御に用いるので、回路構成や制御の複雑化を抑止しつつ、半導体スイッチング素子の保護と低圧バッテリの充電不足を実現することができる。更に説明する。原理的には、半導体スイッチング素子の温度は、そこを流れる電流及び電気抵抗から得られる発熱量と放熱抵抗と熱容量とを用いて演算できるはずであり、通電電流を上記演算結果で得た許容最高温度に対応する値に設定すれば素子を保護しつつすばやく低圧バッテリ2に充電できるはずである。けれども、上記電流に基づく素子温度推定を精密に行うには莫大な演算が必要となり現実的ではない。 【0009】そこで、本発明では、センサで検出した半導体スイッチング素子の温度をそれに相当する電流である温度影響相殺電流に換算し、あらかじめ記憶する所定の許容最大電流値からこの温度影響相殺電流を差し引いた値で低圧バッテリの充電を行う。なお、上記換算はあらかじめ記憶するマップまたは計算式にしたがって行われるが、温度影響相殺電流は検出温度に対して正の相関を有する。 【0010】このようにすれば、検出温度が高い場合にはインバータ回路のデューティ比を低下させ、検出温度が低い場合にはインバータ回路のデューティ比を増大させることにより、検出温度が低い場合には低圧バッテリ充電電流を増大し、検出温度が高い場合には低圧バッテリ充電電流を減少して半導体スイッチング素子の温度を低下させることができ、低圧バッテリ充電性能の低下を抑止しつつ半導体スイッチング素子の熱保護制御を、DC−DCコンバータにもともと内蔵される直交変換用のインバータ回路のデューティ比制御のみで実現することができる。 【0011】 【発明を実施するための態様】本発明の好適な態様を以下の実施例に基づいて説明する。 【0012】 【実施例】ハイブリッド電気自動車の電源系に適用した本発明の電気自動車用電源装置の一実施例を図1に示すブロック図を参照して以下に説明する。 (回路構成)この電気自動車用電源装置は、電気自動車の走行エネルギー蓄電用の主バッテリ(高圧バッテリ)1、補機及び制御装置給電用の補機バッテリ(低圧バッテリ)2、及び、DC−DCコンバータ3を有し、DC−DCコンバータ3は高圧バッテリ1から入力する高圧直流電力を電圧変換して低圧バッテリ2を充電する。 【0013】DC−DCコンバータ3において、Cは平滑コンデンサ、4は4個のMOSトランジスタ4aをブリッジ接続してなるインバータ回路、5aは一つのMOSトランジスタ4aに近接配置されたサーミスタからなる温度センサ、5bは低圧バッテリ2と直列接続された電流検出用の低抵抗(電流センサ)、6は降圧トランス、7はスナバ回路、8は全波整流用の2個のダイオード(整流素子)、9はチョークコイル10及び平滑コンデンサ11からなる平滑回路、12は集積化された制御回路である。 【0014】主バッテリ1の高位端は入力端子14を通じてブスバー13に接続され、主バッテリ1の低位端は入力端子16を通じてブスバー15に接続されている。平滑コンデンサCはブスバー13、15間に接続され、ブスバー13はインバータ回路4の高位直流入力端をなす上アーム側の一対のMOSトランジスタ4aのドレイン電極端子に接続され、ブスバー15はインバータ回路4の低位直流入力端をなす下アーム側の一対のMOSトランジスタ4aのソース電極端子に接続されている。なお、インバータ回路4の各MOSトランジスタ4aのゲート電極は入力電圧を増幅するバッファ回路20を通じて制御回路12からの制御電圧を受け取る。 【0015】インバータ回路4の一対の交流出力端子は降圧トランス6の一次コイルの両端に接続されている。降圧トランス6は、同一方向に巻装され、互いに直列接続された2つの二次コイル61,62を有し、二次コイル61の一端は外部に延設されてブスバー(半波整流ライン)17をなし、二次コイル62の一端は外部に延設されてブスバー(半波整流ライン)18をなす。ブスバー17は、一対のダイオード8の一方のアノード電極端子に接続され、ブスバー18は、一対のダイオード8の他方のアノード電極端子に接続されている。 【0016】降圧トランス6の両二次コイル61,62の直列接続点(中点)をなす中間端子6aは、ブスバー(接地ライン)19、接地端子(低位直流出力端)21を通じて補機バッテリ6の低位端に接続されている。両ダイオード8のカソード電極端子は、全波整流ライン24を通じてチョークコイル10の一端(高位直流出力端)に接続され、チョークコイル10の他端25は、ブスバー26、出力端子27を通じて補機バッテリ2の高位端に接続されている。 【0017】スナバ回路7は、それぞれ抵抗素子とコンデンサとを直列接続してなる等価回路で等価されるCRハイパスフィルタであって、一対のダイオード8の両アノード電極端子間に接続されている。 (基本動作説明)制御回路12は、図示しないその入力端子への低圧バッテリ充電指令の入力により補機バッテリ2の電圧が所定値に達するまでインバータ回路4の各MOSトランジスタ4aを所定のクロック周波数で断続して降圧トランス6の一次コイルに矩形波交流電圧を印加させる。 【0018】降圧トランス6の二次コイル61,62に生じた二次電圧は単相全波整流回路をなす一対のダイオード8,8で整流され、これにより全波整流ライン24と接地用ブスバー(接地ライン)19との間に生じた全波整流電圧は、平滑回路9で平滑されて補機バッテリ2に印加される。平滑コンデンサCはインバータ回路4の断続動作による主バッテリ1の放電電流の変動を低減し、スナバ回路7はCRハイパスフィルタとして高周波サージ電圧を吸収する。 (制御回路12の動作説明)マイコン構成の制御回路12の制御動作を図2に示すフローチャートを参照して以下に説明する。 【0019】まず、図示しないイグニッションスイッチのオンとともに初期化動作を行った後、低圧バッテリ2の端子電圧Vを読み込み(S1)、インバータ回路4をデューティ比D、一定のクロック周波数で駆動し、低圧バッテリ2を充電する(S2)。なお、デューティ比Dは所定の初期値とされる。このインバータ回路4は単相矩形波交流電圧を形成するための回路であるので、各MOSトランジスタ4aの最大デューティ比は0.5であり、この実施例では上記初期値は0.5とされる。 【0020】次に、温度センサ5aから温度Tを読み込み(S3)、読み込んだ検出温度Tから温度影響相殺電流Ieqを演算する(S4)。この演算は、あらかじめ記憶するマップに基づいて行うことができ、またはそれと等価なあらかじめ記憶する計算式で行ってもよい。次に、あらかじめ記憶するMOSトランジスタ4aの所定の許容最大電流値Imaxから温度影響相殺電流Ieqを差し引いて許容電流指令値i’を算出する(S5)。 【0021】次に、電流センサ5bより出力電流iを読み込む(S6)。なお、この出力電流iは説明を省略したプログラムにより決定された出力電流指令値に等しい電流を出力するように、インバータ回路4をPWMデューティ比制御してなされる。次に、出力電流iと許容電流指令値i’とを比較し(S7)、出力電流iが許容電流指令値i’より大きければインバータ回路4のデューティ比Dを所定値ΔDだけ減らし(S8)、出力電流iが電流指令値i’より小さければインバータ回路4のデューティ比Dを所定値ΔDだけ増やし(S9)、両者が一致すればデューティ比を変更せず、S1にリターンする。 【0022】結局、この実施例では、従来のDC−DCコンバータ内の交流電圧を発生するインバータ回路、特に出力交流電圧の平均値をPWM制御するインバータ回路に用いられるので、新たにインバータ回路4の半導体スイッチング素子を熱保護するために専用のPWM制御回路を新設する必要がなく、その結果、回路構成を複雑化することなく、装置が正常動作する場合には定格出力一杯まで出力でき、素子冷却系の変調などが生じたらその障害の程度に応じて必要量だけ出力電流を制限して素子保護をすることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000004260 【氏名又は名称】株式会社デンソー
|
| 【出願日】 |
平成11年5月31日(1999.5.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081776 【弁理士】 【氏名又は名称】大川 宏
|
| 【公開番号】 |
特開2000−341801(P2000−341801A) |
| 【公開日】 |
平成12年12月8日(2000.12.8) |
| 【出願番号】 |
特願平11−151400 |
|