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【発明の名称】 直流電動車両の走行制御装置
【発明者】 【氏名】津曲 治

【要約】 【課題】車両の負荷状態及び路面状態の影響を受けずにスムーズに坂道発進ができ、かつ構成が簡単でコンパクトにできる直流電動車両の走行制御装置を提供する。

【解決手段】バッテリ13からの電力により作動する走行駆動用の直流モータ5の界磁電流の方向を切り換えてプラギング制御及び力行制御を行い、プラギング制御及び力行制御時の直流モータ5の電機子5a及び界磁コイル5bの電流値をチョッパ素子9により制御する直流電動車両の走行制御装置において、プラギング制御を行った時間を計測し、計測した時間の長さに基づいてこの後の力行制御開始時の電機子5aの最大電流値を設定する制御部1を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 バッテリ(13)からの電力により作動する走行駆動用の直流モータ(5) の界磁電流の方向を切り換えてプラギング制御及び力行制御を行い、プラギング制御及び力行制御時の直流モータ(5) の電機子(5a)及び界磁コイル(5b)の電流値をチョッパ素子(9) により制御する直流電動車両の走行制御装置において、プラギング制御を行った時間を計測し、計測した時間の長さに基づいてこの後の力行制御開始時の電機子(5a)の最大電流値を設定する制御部(1) を備えたことを特徴とする直流電動車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バッテリフォークリフト等の直流電動車両の走行制御装置に関し、特に坂道発進性能の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】バッテリフォークリフト等の直流電動車両では、直流モータの電機子の回転方向に対する界磁コイルの電流方向を制御することにより、通常の力行制御と、制動時の回生制御及びプラギング制御とを行っているものがある。この場合、坂道発進時にもプラギング制御を行って車両のずり下がり距離を短くし、かつスムーズに発進できるようにし、プラギング制御が終了した後、予め設定している電流値で力行制御に移行している。
【0003】ところが、プラギング制御時の直流モータの最大駆動トルク(モータ電流値に略比例する)が同じでも、車両の負荷の大きさ(バッテリフォークリフトの場合は荷の重さ)及び坂道の勾配に応じてずり下がり距離が異なる。このため、通常、最大負荷(荷重)で、かつ最大登坂勾配でもずり下がり距離が短くて発進に支障のない様に、プラギング制御時の直流モータの最大電流値を設定していることが多く、よって実際の負荷及び登坂勾配に対して余裕をもち過ぎて無駄な電力の消費となり、また省エネルギの実現が困難となっている。したがって、従来から、坂道発進時の性能を向上するための技術が提案されており、例えば実開昭57−82801号公報には荷重検知器で検知した積載荷重と登坂勾配検知器で検知した路面勾配とに基づいて走行モータに供給する最大電流及び電流立ち上がり時間を算出する電気車走行制御装置が開示されている。これにより、実際の荷重及び路面状態に応じて最大電流及び電流立ち上がり時間を適切に設定するので、過大な電力を消費すること無く省エネルギの実施が可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術においては、以下のような問題がある。プラギング制御から力行制御に移行する際の力行制御の最大モータ電流値を、最大積載荷重時及び最大登坂勾配時にずり下がらないような電流値に設定しておくと、空荷時に必要以上の大きなトルクで駆動することになり、タイヤの空転が発生したり力行制御に移行時のショックが大きくなったりする。したがって、タイヤの摩耗が早くてタイヤ寿命が短くなったり、スムーズな坂道発進ができず車両の乗り心地を悪化させるという問題がある。
【0005】また、実開昭57−82801号公報に開示された先行技術においては、車両の荷重及び路面勾配の両者に対応して力行開始トルクを設定するために、荷重検知器(荷重センサ等)及び登坂勾配検知器(傾きセンサ等)の両方が必要となるので、製造コストが高いという問題がある。
【0006】本発明は、上記の問題点に着目してなされたものであり、車両の負荷状態及び路面状態の影響を受けずにスムーズに坂道発進ができ、かつ構成が簡単でコンパクトにできる直流電動車両の走行制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】上記の目的を達成するために、第1発明は、バッテリからの電力により作動する走行駆動用の直流モータの界磁電流の方向を切り換えてプラギング制御及び力行制御を行い、プラギング制御及び力行制御時の直流モータの電機子及び界磁コイルの電流値をチョッパ素子により制御する直流電動車両の走行制御装置において、プラギング制御を行った時間を計測し、計測した時間の長さに基づいてこの後の力行制御開始時の電機子の最大電流値を設定する制御部を備えた構成としている。
【0008】第1発明によると、プラギング制御を行った時間(プラギング時間Tp )が車両の負荷及び路面の勾配の大きさに略対応していることに着目しており、このプラギング時間Tp の長さに基づいて力行開始電流値を設定しているので、車両の負荷及び路面の勾配に左右されずに常に坂道発進時にスリップがなく、また力行制御へ移行時のショックが無い。したがって、坂道発進がスムーズとなり、またタイヤの摩耗を軽減できる。さらに、従来技術のように荷重センサ及び傾きセンサを設けなくても車両の負荷及び路面の勾配の両方に対応した力行開始電流値を設定できるので、構成が簡単でコンパクトにでき、製造コストを安くできる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、実施形態を図を参照して詳細に説明する。なお、ここではバッテリフォークリフトの走行制御装置を例にとって説明する。
【0010】図1は、バッテリフォークリフトの走行制御回路例である。バッテリ13の正端子は回生コンタクタ接点3及び電流検出器4を介して走行駆動用の直流モータ5の電機子5aの一端側に接続されており、電機子5aの他端側は前進コンタクタ6と後進コンタクタ7との並列回路、及びチョッパ素子9(大電流トランジスタ、FET等)を経由してバッテリ13の負端子に接続されている。チョッパ素子9には、バイパスコンタクタ8が並列に接続されている。前進コンタクタ6の出力接点コモン端子6c及び後進コンタクタ7の出力接点コモン端子7cは、それぞれ直流モータ5の界磁コイル5bの両端に接続されている。前進コンタクタ6の出力a接点(いわゆるノーマリオフ)端子6a及びb接点(いわゆるノーマリオン)端子6bのいずれか一側端子(ここではa接点端子)が電機子5aの他端側に、また他側端子(ここではb接点端子)がチョッパ素子9に接続されている。また前進コンタクタ6と同様に、後進コンタクタ7の一側端子(ここではa接点端子7a)が電機子5aの他端側に、また他側端子(ここではb接点端子7b)がチョッパ素子9に接続されている。さらに、回生コンタクタ接点3、電流検出器4及び電機子5aの直列回路には、界磁コイル5bを予備励磁するための抵抗とトランジスタ等からなる予備励磁回路2とプラギングダイオード10との並列回路が並列に接続されている。さらに、これらの並列回路、及び前進コンタクタ6と後進コンタクタ7との並列回路の直列回路にはフライホイールダイオード11が並列に、そして電流検出器4からチョッパ素子9までの直列回路には回生ダイオード12が並列にそれぞれ接続されている。
【0011】電流検出器4の電流信号は制御部1に入力され、また制御部1からの各制御信号は予備励磁回路2、チョッパ素子9、回生コンタクタ接点3の励磁コイル3R、前進コンタクタ6の励磁コイル6R及び後進コンタクタ7の励磁コイル7Rにそれぞれ出力される。
【0012】制御部1は、マイクロコンピュータや数値演算処理プロセッサ等の演算処理装置(以後、CPU1aと言う)、メモリ1b及び入出力インターフェース回路(図示せず)を備えている。制御部1は、電流検出器4の検出電流値に基づいて後述する所定の処理を行い、この処理結果により走行制御時、予備励磁回路2、チョッパ素子9、回生コンタクタ接点3の励磁コイル3R、前進コンタクタ6の励磁コイル6R及び後進コンタクタ7の励磁コイル7Rにそれぞれ所定の制御信号を出力し、直流モータ5の電流を制御し、通常走行時の力行動作、プラギング動作及び回生動作を制御している。
【0013】図2は、プラギング制御から力行制御に移行する際の電流波形である。同図に示すように、プラギング制御時にはモータ電流が所定時間以内に最大プラギングトルクに対応する最大電流Ipまで立ち上がる。ここでは、プラギング制御時の最大電流Ipをこの後に継続する力行制御時の最大電流よりも大きく設定した例で示している。そして、プラギングトルクにより車両の下降速度が徐々に低下した後、略停止状態になるとプラギング電流が小さくなり、プラギング制御が終了する。プラギング制御の終了と判断したら、制御部1は所定の力行開始電流値Irを設定して力行制御に移行する。
【0014】本発明者は、このときのプラギング制御を行っている時間(以後、プラギング時間と言う)Tp が車両の荷重(負荷)及び路面の勾配の大きさに略対応することに着目している。例えば、図2では同一勾配のとき、空荷時(波形G1)のプラギング時間Tp1は、積載時(波形G2)のプラギング時間Tp2より短くなっている。このことから、力行開始電流値Irを空荷時にはIr1に、積載時にはIr2(>Ir1)に設定する如く、プラギング時間Tp に基づいて設定することを提案している。すなわち、図3に示すような、プラギング時間Tp と力行開始電流値Irとの関係を有するテーブルをメモリ1b 内に予め記憶しておき、プラギング制御中にプラギング時間Tpを計測してこのプラギング時間Tp に応じて力行開始電流値Irを設定している。なお、図3に示す関係は線形(直線)に限るものではなく、プラギング時間Tp と力行開始電流値Irとが1対1に対応し、かつ正の関係(図示のように右上がりの関係)であればよい。また、この関係を記憶する方法もテーブルに限定されず、例えば所定の関係式を記憶するようにしてもよい。
【0015】次に、本発明に係る直流電動車両の走行制御装置の制御処理方法を、図4に示す制御処理フローチャート例に基づいて説明する。なお、同図では処理ステップ番号にSを付して表す。S1において、坂道発進で、例えば前進させる場合に、オペレータが前後進切り換えレバー(図示せず)を前進に切り換え、ブレーキペダル(図示せず)をオフすると共にアクセルペダル(図示せず)を所定量踏み込むと、電流制御の遅れにより制御の当所は直流モータ5の駆動トルクが小さいので、車両及び荷の重量により車両は坂道に沿って下降(後進)する。このとき、制御部1(CPU1a)は、直流モータ5に対してまずプラギング制御を行う。
【0016】すなわち、制御部1は、回生コンタクタ接点3をオンすると共に、前進コンタクタ6及び後進コンタクタ7を前進方向に切り換える。次に、チョッパ素子9を所定の通流率でチョッパ動作させると、直流モータ5の回転方向(この場合、後進方向)は界磁電流の方向に対して逆向きになるので、直流モータ5は発電機として動作する。これにより、図1に実線の矢印で示すように直流モータ5、プラギングダイオード10及び回生コンタクタ接点3の経路で発電電流(プラギング電流)が流れるので、直流モータ5にプラギング制動トルクが発生する。このとき、制御部1はチョッパ素子9をチョッパ動作させて、バッテリ13、電機子5a、前進コンタクタ6、界磁コイル5b、後進コンタクタ7及びチョッパ素子9の経路で流れる界磁電流を制御することにより、直流モータ5のプラギングトルクを所定の最大プラギングトルクに制御する。これにより、図2に示すように、モータ電流は所定時間以内に最大電流Ipまで立ち上がる。
【0017】次に、S2で、プラギング時間Tp を計測する。このプラギング時間Tp は、プラギング制御時のモータ電流値が最大電流Ipの所定の割合になった時点t0から計測され、プラギング制御が終了した時点tr1、tr2までの継続時間である。プラギング制御の終了時点は、例えばプラギングによるモータ発電が停止したか、すなわち図1に示すモータ端子電圧V1が所定の電圧以下になったか否かにより判定される。
【0018】この後、S3において、プラギング制御が終了した時点で計測した上記プラギング時間Tp に応じた力行開始電流値Irを求めて設定する。そして、S4でこの設定した力行開始電流値Irに基づいて力行制御を行う。
【0019】以上説明したように、本発明によると、プラギング時間Tpに応じて設定した力行開始電流値Irに基づいて力行制御を行うようにしたので、車両の荷重(負荷)及び路面勾配の両方の大きさに適合した力行開始電流値Irが自動的に設定される。したがって、力行制御に移行する際に、常にスリップを起こすことなく、またショックもなくスムーズに坂道発進するので、乗り心地が良く、タイヤの摩耗を非常に軽減させることができる。また、従来技術のように荷重センサ及び傾きセンサを共に設ける必要がないので、構成が簡単でコンパクトになり、製造コストも安くできる。
【出願人】 【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
【出願日】 平成11年5月12日(1999.5.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−324622(P2000−324622A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−132049