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【発明の名称】 燃料電池車両の駆動うなり低減装置
【発明者】 【氏名】井戸口 隆一

【要約】 【課題】燃料電池車両の駆動モータのうなり音を低減する。

【解決手段】コンプレッサ運転制御手段2,4が、負荷状態監視手段2の監視する駆動モータ1の負荷状態を出力優先状態、緩加速巡航状態及び低速間欠走行状態に分類し、これらの各負荷状態に応じてコンプレッサ5の運転を出力優先モードM1、駆動モータ1のうなりを低減する逆位相のうなりを発する速度で連続的に運転するうなり低減連続運転モードM2、駆動モータの間欠運転に起動/停止を同期させ、かつ駆動モータの運転時には駆動モータのうなりを低減させる逆位相のうなりを発する速度で間欠運転するうなり低減間欠運転モードM3それぞれで運転する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料電池を電源とする駆動モータと、前記燃料電池に対して酸素源としての空気を供給するためのコンプレッサと、前記駆動モータのうなりを低減する逆位相のうなりを発する速度で前記コンプレッサを運転するコンプレッサ運転制御手段とを備えて成る燃料電池車両の駆動うなり低減装置。
【請求項2】 前記駆動モータの負荷状態を監視する負荷状態監視手段を備え、前記コンプレッサ運転制御手段は、前記負荷状態監視手段の監視する前記駆動モータの負荷状態を出力優先状態、緩加速巡航状態及び低速間欠走行状態に分類し、各負荷状態に応じて前記コンプレッサの運転を出力優先モード、前記駆動モータのうなりを低減する逆位相のうなりを発する速度で連続的に運転するうなり低減連続運転モード、前記駆動モータの間欠運転に起動/停止を同期させ、かつ駆動モータの運転時には前記駆動モータのうなりを低減させる逆位相のうなりを発する速度で間欠運転するうなり低減間欠運転モードそれぞれで運転することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の駆動うなり低減装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池車両の駆動うなり低減装置に関する。
【0002】
【従来の技術】燃料電池車両では一般に、燃料電池を電源とする駆動モータの出力を駆動源としているが、低速、高負荷条件での走行時に駆動モータに固有の低周波のうなりが出て乗員にとって耳障りなものとなる。そのため、駆動モータのうなりによる騒音を低減させることが必要になっている。
【0003】一般的な自動車の車室内のこもり音を小さくするための装置として、特開平7−199964号公報に記載されているような、適応フィルタを用いたアクティブノイズキャンセラー(ANC)が知られている。このANCは、車室内の制御点での信号が最小となるように適応フィルタを用いて車室内騒音に対して振幅が等しく、位相が逆になる音を2次音源から出力することにより車室内の騒音を打ち消そうとするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、このような従来の自動車の車室内騒音低減装置では、車室内の制御点のみ制御可能であり、しかも、それを実現するために、マイクのような制御点の騒音検出手段、DSP(Digital Signal Processor)、数値演算プロセッサ、そして2次音源からの音を出力するためのスピーカなどの特殊装置を必要とするために、装置が高価なものになってしまう問題点があった。
【0005】一方、燃料電池車両では、走行状況に応じて燃料電池を電源とする駆動モータを高負荷、低負荷、間欠運転というように運転モードを切替える制御を行なうが、これと共に、燃料電池の発電反応に必要な酸素源としての空気を燃料電池に供給する必要があり、この空気の供給量は燃料電池の運転モードに応じてコンプレッサの運転モードを独自に切替えることによって制御するようにしている。
【0006】そこで、駆動モータのうなり騒音を低減するために、これとは独立に制御することのできるコンプレッサを駆動モータのうなりと逆位相のうなりを発生する速度(回転数)で駆動すれば、駆動モータのうなりをコンプレッサの発するうなり音によって打ち消すことが可能となる。
【0007】本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたもので、駆動モータの発するうなりをコンプレッサの発する音によって打ち消すことにより、車室内の騒音を低減することができ、かつ構造的に単純で、コスト的に低廉に構成できる燃料電池車両の駆動うなり低減装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明の燃料電池車両の駆動うなり低減装置は、燃料電池を電源とする駆動モータと、前記燃料電池に対して酸素源としての空気を供給するためのコンプレッサと、前記駆動モータのうなりを低減する逆位相のうなりを発する速度で前記コンプレッサを運転するコンプレッサ運転制御手段とを備えたものである。
【0009】請求項1の発明の燃料電池車両の駆動うなり低減装置では、駆動モータが発するうなりに対して、コンプレッサ運転制御手段が駆動モータのうなりを低減する逆位相のうなりを発する速度でコンプレッサを運転することによって駆動モータのうなりをコンプレッサの出す音で打ち消し、うなりを低減する。
【0010】請求項2の発明の燃料電池車両の駆動うなり低減装置は、請求項1において、さらに、前記駆動モータの負荷状態を監視する負荷状態監視手段を備え、前記コンプレッサ運転制御手段が、前記負荷状態監視手段の監視する前記駆動モータの負荷状態を出力優先状態、緩加速巡航状態及び低速間欠走行状態に分類し、各負荷状態に応じて前記コンプレッサの運転を出力優先モード、前記駆動モータのうなりを低減する逆位相のうなりを発する速度で連続的に運転するうなり低減連続運転モード、前記駆動モータの間欠運転に起動/停止を同期させ、かつ駆動モータの運転時には前記駆動モータのうなりを低減させる逆位相のうなりを発する速度で間欠運転するうなり低減間欠運転モードそれぞれで運転するようにしたものである。
【0011】請求項2の発明の燃料電池車両の駆動うなり低減装置では、コンプレッサ運転制御手段が、負荷状態監視手段の監視する駆動モータの負荷状態を(1)出力優先状態、(2)緩加速巡航状態及び(3)低速間欠走行状態に分類し、これらの(1),(2),(3)の各負荷状態に応じてコンプレッサの運転を出力優先モード(M1)、駆動モータのうなりを低減する逆位相のうなりを発する速度で連続的に運転するうなり低減連続運転モード(M2)、前記駆動モータの間欠運転に起動/停止を同期させ、かつ駆動モータの運転時には前記駆動モータのうなりを低減させる逆位相のうなりを発する速度で間欠運転するうなり低減間欠運転モード(M3)それぞれで運転する。
【0012】これにより、特に駆動モータに大出力が必要な出力優先運転状態(1)では、燃料電池から駆動モータに供給する電源系統に設けられているDC−AC変換回路中のスイッチング素子であるIGBT素子からの高周波ノイズの音圧レベルが高くなり、うなりの音圧レベルは相対的に低下すること、また、出力要求に答えることが最重要であることからコンプレッサも大量の空気を供給させる必要があり、可能な限り大出力にする必要があるので、出力優先モード(M1)によってコンプレッサを運転する。
【0013】車両の緩加速、巡航運転状態(2)では駆動モータの負荷が小さく、相対的にうなりの影響が大きくなるが、電力消費が抑えられるのでコンプレッサの稼動可能範囲は広くなり、その駆動周波数を制御許容範囲も広くなる。そこで、うなり低減連続運転モード(M2)でコンプレッサを運転することにより、駆動モータのうなりを低減する逆位相のうなりを出させて駆動モータのうなり音を打ち消し、騒音を低減する。
【0014】さらに、渋滞道路を走行しているような運転状況、つまり、低速間欠走行状態(3)では、駆動モータのうなり音が最も顕著になるが、電力消費が小さいのでコンプレッサの駆動頻度が下がる。そこで、駆動モータの動作に合わせ、うなり音が出る回転速度領域を通過する時にコンプレッサをそれとは逆位相のうなりを発する速度で運転するといううなり低減間欠運転モード(M3)にしてコンプレッサを運転する。これにより、駆動モータのうなり音を打ち消し、騒音を低減する。
【0015】
【発明の効果】以上のように請求項1の発明によれば、駆動モータが発するうなりに対して、コンプレッサ運転制御手段が駆動モータのうなりを低減する逆位相のうなりを発する速度でコンプレッサを運転することによって駆動モータのうなりをコンプレッサの出す音で打ち消し、うなりを低減することができる。
【0016】請求項2の発明によれば、駆動モータに大出力が必要な走行条件下でも、低速走行条件下でも、さらには渋滞道路のような低速、間欠走行条件下でも乗員に聞こえる駆動モータのうなり音を効果的に低減することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の1つの実施の形態のシステム構成を示している。駆動モータ1は燃料電池(図示せず)から発電電力を受けて回転し、車両を走行させる。駆動モータ制御装置2は、電池状態SOC、電池変化状態、車速、回転数指令を入力して、駆動モータ1の回転速度制御を行なう。駆動モータ制御装置2はまた、駆動モータ−コンプレッサ回転数マップ3を内蔵していて、駆動モータ1の回転数に対応して、うなり低減が可能なコンプレッサ回転数を読み出してコンプレッサ制御装置4に回転数指令として出力する。
【0018】コンプレッサ5はそれを駆動するコンプレッサモータ6を備え、コンプレッサ制御装置4によって回転速度が制御される。このコンプレッサ5は燃料電池の燃料原料である酸素源としての空気を改質器(図示せず)に供給し、また燃料電池(図示せず)の空気極に供給するためのものである。
【0019】次に、上記の構成の燃料電池車両のうなり低減装置の動作を説明する。いま、燃料電池車両の駆動モータ1は、図2のモータ回転数−うなり周波数のグラフに示すように、回転数bf1〜bfnでうなりを発生するものとする(これらのうなりを発生させる回転数は車両の車種、重量その他の諸元によって大きく異なるものであり、適用する車両ごとに実験的に決定される)。例えば、登坂、急加速のような走行状態は高負荷時使用域(I)に属し、この領域(I)では回転数bf4〜bfnでうなりが発生する。また、緩加速、巡航時使用域(II)では、回転数bf2,bf3でうなりが発生する。さらに、渋滞道路を走行するような状態は渋滞時使用域(III)に属し、この領域では回転数bf1,bf2でうなりが発生する。
【0020】この発明では、これらのうなりを発生させる回転数bf1〜bfnのうち、高負荷時使用域(I)の回転数bf4〜bfnでのうなりについては低減制御の対象とはせず、特に緩加速、巡航時使用域(II)で発生するうなりと渋滞時使用域(III)で発生するうなりとを低減させることを目的とする。
【0021】その理由は、高負荷時使用域(I)は、駆動モータ1に大出力が必要な出力優先運転状態であり、燃料電池から駆動モータ1に供給する電源系統に設けられているDC−AC変換回路中のスイッチング素子であるIGBT素子からの高周波ノイズの音圧レベルが高くなり、うなりの音圧レベルは相対的に低下すること、また、出力要求に答えることが最重要であることからコンプレッサ5も大量の空気を供給させる必要があり、出力優先モード(M1)によってコンプレッサ5を可能な限り大出力で運転する必要がある。したがって、この領域(I)ではうなり低減制御は行なわない。
【0022】車両の緩加速、巡航時使用域(II)は、駆動モータ1の負荷が小さく、相対的にうなりの影響が大きくなるが、電力消費が抑えられるのでコンプレッサ5の稼動可能範囲は広くなる。そこで、うなり低減連続運転モード(M2)でコンプレッサ5を運転する。
【0023】渋滞時使用域(III)では、駆動モータ1のうなり音が最も顕著になるが、電力消費が小さいのでコンプレッサ5の駆動頻度が下がる。そこで、駆動モータ1の動作に合わせ、うなり音が出る回転数領域を通過する時にコンプレッサ5をそれとは逆位相のうなりを発する速度で間欠運転するといううなり低減間欠運転モード(M3)にしてコンプレッサを運転する。
【0024】このような駆動モータ1の回転数の領域に応じてコンプレッサ5のモータ6の回転数制御を行なうために、駆動モータ制御装置2のマップ3には、駆動モータ回転数指令に応じて、その回転によって発生するうなりで駆動モータのうなりを打ち消すことができるような回転数の組合わせが登録されている。駆動モータ制御装置2はこのマップ3を参照してコンプレッサ5の回転数を決定し、回転数指令としてコンプレッサ制御装置4に出力する。
【0025】コンプレッサ制御装置4は駆動モータ制御装置2からの回転数指令を受けて、これに一致する回転数でコンプレッサモータ6の回転数制御を行なう。これにより、駆動モータ1の回転で発生するうなりがコンプレッサ5の回転によって発生する逆位相のうなりによって打ち消されて低減され、車室内の騒音を低減することができるようになる。
【0026】上記のうなり低減制御を図3〜図5の説明図、図6及び図7のフローチャートに基づいて、さらに詳しく説明する。
【0027】<出力優先モードM1>駆動モータ制御装置2は、車両走行条件、電池状態(SOC)、駆動モータ回転数、負荷条件を入力し(ステップS1)、電池状態(SOC)の変化量が大きい場合には出力優先モードM1に移行し、駆動モータ1を要求される回転数で回転させ、また、コンプレッサ5を駆動モータ回転数指令に対応した高回転数で回転するように制御する(ステップS5,S10,S15)。このような運転状態では、図3に示したように、燃料電池から駆動モータ1に供給する電源系統に設けられているDC−AC変換回路中のスイッチング素子として用いられているIGBT素子からの高周波ノイズ10の音圧レベルが高くなり、うなりの音圧レベル11は相対的に低下すること、また、出力要求に答えることが最重要であることからコンプレッサ5も大量の空気を供給させる必要があり、コンプレッサ5を可能な限り大出力で運転する必要があるためである。
【0028】<うなり低減連続運転モードM2>ステップS5の判定で、電池状態の変化量が小さい場合には、急加速、高負荷ではない見なし、続いて、緩加速、巡航走行状態であるかどうかを、電池状態(SOC)が中〜小で、かつ電池状態の変化量が小であれば、うなり低減連続運転モードM2に入る(ステップS20)。
【0029】このモードM2では緩加速、巡航状態であるとみなし(ステップS25)、コンプレッサ5を連続運転する(ステップS30)。そして、この連続運転時の回転数制御は、次のようにして行なう。
【0030】図4に示したように、駆動モータ1の回転数に対応するうなり11の周波数を算出し(ステップS35)、このうなり周波数のてい倍かつ逆位相の周波数を演算し(ステップS40)、算出した周波数のうなり12を発生させるコンプレッサ5の回転数をマップ3から算出して、コンプレッサ制御装置4に回転数指令として与えてコンプレッサモータ6の回転制御を行なう(ステップS45)。これにより、コンプレッサ5は駆動モータ1の発するうなり音と同等の低周波数、かつ逆位相のうなりを発生して駆動モータ1のうなり音を打ち消して低減する(ステップS50)。
【0031】<うなり低減間欠運転モードM3>ステップS20の判定で、電池状態が大で、かつ電池状態の変化量が小さい場合には、渋滞走行状態であるとみなしてうなり低減間欠運転モードM3に入る(ステップS55,S60,S65)。
【0032】渋滞走行時には車速が低いためにうなりが最も顕著に出る。また、駆動モータ1が始動、停止を繰り返すので、最低回転数でのうなり領域(III)を頻繁に通過する。一方、駆動負荷からは電力をあまり消費しない運転領域であるので、電池状態(SOC)は大きく、コンプレッサ5を連続運転にするとその回転数を極端に低くしなければならない。
【0033】そこで図5に示したように、このような走行状態では、コンプレッサ5を間欠運転で駆動し、駆動モータ1の運転期間に合わせてコンプレッサ5も運転し、その際のコンプレッサ5の回転数を駆動モータ1が発生するうなり11の周波数に対しててい倍、かつ逆位相の周波数のうなり12を発生させる回転数指令をマップ3から読み出してコンプレッサ制御装置4に与え、コンプレッサ4をうなり低減優先でコンプレッサ5を間欠運転する(ステップS70〜S90)。
【0034】これにより、本発明の実施の形態では、大出力が必要な場合にはそれに即応することができ、しかも、駆動モータ1のうなり音が耳障りになるような運転状態ではコンプレッサ5の回転数制御によって駆動モータ1のうなり音を効果的に低減して、車室空間を静粛にできる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年5月6日(1999.5.6)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外8名)
【公開番号】 特開2000−324618(P2000−324618A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−126064