| 【発明の名称】 |
移動体用燃料電池システム |
| 【発明者】 |
【氏名】岩崎 靖和
|
| 【要約】 |
【課題】燃料電池システムの停止後に熱媒体の温度が外気温近くに低下するまでは燃料電池の保温に逆利用して、再起動時に必要な暖機運転時間を短くする。
【解決手段】通常運転中には熱媒体タンク12内の熱媒体13を冷却装置によって燃料電池1内の冷却系統10に通して燃料電池を冷却する。そして、システム停止時には、温度監視手段22,23によって熱媒体の温度を監視する。そこで、熱媒体の温度が高い場合には熱媒体貯溜手段14,21によって熱媒体タンク内の熱媒体を燃料電池内に供給してそこに貯溜させておいて、熱媒体の残留熱によって燃料電池を保温し、再起動の際に必要な暖機運転が短くなるようにする。しかしながら、熱媒体の温度がその凍結温度近くまで低下すれば、熱媒体回収手段14,21によって燃料電池1内の熱媒体を熱媒体タンク12に回収し、熱媒体の凍結により燃料電池を破損するのを防止する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料ガスと酸素とを反応させて発電する燃料電池と、液体の熱媒体を溜めておく熱媒体タンクと、前記熱媒体タンク内の熱媒体を前記燃料電池内の冷却系統に通して前記燃料電池を冷却する冷却装置と、当該システムの停止時に、前記熱媒体タンク内の前記熱媒体を前記燃料電池内に供給してそこに貯溜させておく熱媒体貯溜手段と、当該システムの停止時に、前記燃料電池内に貯溜されている前記熱媒体がその凍結温度近くまで低下したことを検知する温度監視手段と、前記温度監視手段の検知信号により、前記燃料電池内に貯溜されている前記熱媒体を前記熱媒体タンクに回収する熱媒体回収手段とを備えて成る移動体用燃料電池システム。 【請求項2】 燃料ガスと酸素とを反応させて発電する燃料電池と、液体の熱媒体を溜めておく熱媒体タンクと、前記熱媒体タンク内の熱媒体を前記燃料電池内の冷却系統に通して前記燃料電池を冷却する冷却装置と、熱媒体貯溜指令信号を受けて、前記熱媒体タンク内の熱媒体を前記燃料電池内に供給してそこに貯溜させておく熱媒体貯溜手段と、当該システムの停止後に前記燃料電池の温度と前記熱媒体の温度とを監視し続け、前記燃料電池の温度の方が前記熱媒体の温度よりも低くなったときに前記熱媒体貯溜指令信号を出力し、前記熱媒体がその凍結温度近くまで低下したときに回収指令信号を出力する温度監視手段と、前記温度監視手段の出力する回収指令信号を受けて、前記燃料電池内に貯溜されている前記熱媒体を前記熱媒体タンクに回収する熱媒体回収手段とを備えて成る移動体用燃料電池システム。 【請求項3】 前記熱媒体貯溜手段は、前記燃料電池内外と共に、前記燃料ガスの通路又は酸素の通路にも前記熱媒体を貯溜させておくことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体用燃料電池システム。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、移動体用燃料電池システムに関する。 【0002】 【従来の技術】自動車のような移動体に使用される移動体用燃料電池システムは、頻繁にシステムの起動、停止が繰り返されるが、この点が定置型燃料電池発電システムと大きく異なる点である。 【0003】そして移動体用燃料電池システムでは、システムが停止すると、燃料電池の運転温度が常温よりも高いので、燃料電池の温度が徐々に下がる。しかし、システムの再起動の際には、電池反応を効率よく進行させるために燃料電池を所定の運転温度まで昇温させる必要がある。 【0004】通常、移動体用燃料電池システムでは、システムが停止して燃料電池が常温程度に冷えてしまった場合、定格以下の低電流にて燃料電池の運転を行ない、燃料電池内部からの発熱により所定の運転温度まで暖機することが可能であるが、常温以下、特に氷点温度以下に冷えてしまった場合、燃料電池の外部から熱を供給して燃料電池を暖機する必要がある。ところが、所定の温度にまで昇温するのに必要な時間、すなわち燃料電池が定格運転可能な状態にまで暖機するのに必要な時間は、燃料電池が冷えやすいほど長くなる。この暖機に要する時間が長いということは、燃料電池の暖機に必要なエネルギを大きくし、移動体用燃料電池システムのエネルギ効率を低下させるとともに、暖機中は定格運転ができないために利便性や使い勝手を悪くする。 【0005】一方、移動体用燃料電池システムでは、燃料電池が電池反応で高温になりすぎないように冷却システムによって冷媒である冷却材を燃料電池内外の冷却系統に循環させて冷却する。このような冷却システムで、冷媒に純水を用いている場合、燃料電池システムを停止させると、外気温が氷点以下まで下がると冷媒が凍結してしまい、冷却系統中に冷媒が残留していれば凍結によって破損を引き起こす恐れがある。 【0006】特開平6−223855号公報には、冷却材の凍結による破損を防止するため、冷却材を燃料電池内外の冷却系統から抜き取る技術が開示されている。しかしながら、これには、冷媒の比熱がシステム材料の比熱よりも大きいこと、つまり、冷めにくいことを逆に利用して、システム停止後に冷媒の温度が外気温近くに低下するまでは燃料電池を保温する技術は開示していない。したがってこの技術を採用しても、システム停止後の再起動時に、暖機運転時間を短くすることはできない。 【0007】他方、燃料電池の冷媒を利用してバッテリを保温する技術が、特開平10−3951に開示されている。しかしながら、これにも、冷媒の比熱がシステム材料の比熱よりも大きいことを逆に利用して、システム停止後に冷媒の温度が外気温近くに低下するまでは燃料電池を保温する技術は開示していない。したがって、この技術を採用しても、システム停止後の再起動時に、暖機運転時間を短くすることはできない。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような従来の技術的課題を解決するためになされたもので、冷媒の比熱がシステム材料の比熱よりも大きいこと、つまり、冷めにくいことを逆に利用して、システム停止後に冷媒の温度が外気温近くに低下するまでは燃料電池を保温することによって、システム停止後の再起動時に必要となる暖機運転時間を短くすることができ、また、システム停止後、冷却系統に残留している冷媒の凍結による破損も確実に防止できる移動体用燃料電池システムを提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明の移動体用燃料電池システムは、燃料ガスと酸素とを反応させて発電する燃料電池と、液体の熱媒体を溜めておく熱媒体タンクと、前記熱媒体タンク内の熱媒体を前記燃料電池内の冷却系統に通して前記燃料電池を冷却する冷却装置と、当該システムの停止時に、前記熱媒体タンク内の前記熱媒体を前記燃料電池内に供給してそこに貯溜させておく熱媒体貯溜手段と、当該システムの停止時に、前記燃料電池内に貯溜されている前記熱媒体がその凍結温度近くまで低下したことを検知する温度監視手段と、前記温度監視手段の検知信号により、前記燃料電池内に貯溜されている前記熱媒体を前記熱媒体タンクに回収する熱媒体回収手段とを備えたものである。 【0010】請求項1の発明の移動体用燃料電池システムでは、通常運転中には熱媒体タンク内の熱媒体を冷却装置によって燃料電池内の冷却系統に通して燃料電池を冷却する。そして、システム停止時には、温度監視手段によって熱媒体の温度を監視する。そこで、熱媒体の温度が高い場合には熱媒体貯溜手段によって熱媒体タンク内の熱媒体を燃料電池内に供給してそこに貯溜させておいて、熱媒体の残留熱によって燃料電池を保温し、再起動の際に必要な暖機運転が短くなるようにする。しかしながら、熱媒体の温度がその凍結温度近くまで低下してくれば、熱媒体回収手段によって燃料電池内に貯溜されている熱媒体を熱媒体タンクに回収し、燃料電池中に残留している熱媒体の凍結により燃料電池を破損するのを防止する。 【0011】請求項2の発明の移動体用燃料電池システムは、燃料ガスと酸素とを反応させて発電する燃料電池と、液体の熱媒体を溜めておく熱媒体タンクと、前記熱媒体タンク内の熱媒体を前記燃料電池内の冷却系統に通して前記燃料電池を冷却する冷却装置と、熱媒体貯溜指令信号を受けて、前記熱媒体タンク内の熱媒体を前記燃料電池内に供給してそこに貯溜させておく熱媒体貯溜手段と、当該システムの停止後に前記燃料電池の温度と前記熱媒体の温度とを監視し続け、前記燃料電池の温度の方が前記熱媒体の温度よりも低くなったときに前記熱媒体貯溜指令信号を出力し、前記熱媒体がその凍結温度近くまで低下したときに回収指令信号を出力する温度監視手段と、前記温度監視手段の出力する回収指令信号を受けて、前記燃料電池内に貯溜されている前記熱媒体を前記熱媒体回収タンクに回収する熱媒体回収手段とを備えたものである。 【0012】請求項2の発明の移動体用燃料電池システムでは、通常運転中には熱媒体タンク内の熱媒体を冷却装置によって燃料電池内の冷却系統に通して燃料電池を冷却する。 【0013】そして、システム停止後は、温度監視手段によって燃料電池の温度と熱媒体の温度とを監視し続け、燃料電池の温度の方が熱媒体の温度よりも高い間は熱媒体を燃料電池内に貯溜させず、燃料電池の温度の方が熱媒体の温度よりも低くなったときに熱媒体貯溜指令信号を出力し、熱媒体貯溜手段によって熱媒体タンク内の熱媒体を燃料電池内に供給してそこに貯溜させ、熱媒体の残留熱によって燃料電池を保温し、再起動の際に必要な暖機運転が短くなるようにする。 【0014】そしてその後も温度監視手段は燃料電池の温度と熱媒体の温度とを監視し続け、熱媒体の温度がその凍結温度近くまで低下してくれば熱媒体回収指令信号を出力し、熱媒体回収手段によって燃料電池内に貯溜されている熱媒体を熱媒体タンクに回収させ、燃料電池中に残留している熱媒体の凍結により燃料電池を破損するのを防止する。 【0015】請求項3の発明の移動体用燃料電池システムは、請求項1又は2において、前記熱媒体貯溜手段が、前記燃料電池内と共に、前記燃料ガスの通路又は酸素の通路にも前記熱媒体を貯溜させておくものであり、燃料電池のみならず、燃料ガスの通路又は酸素の通路をも保温しておくことができ、システム停止後の再起動時に必要な暖機運転時間をさらに短くできる。 【0016】 【発明の効果】請求項1の発明によれば、通常運転中には熱媒体タンク内の熱媒体を冷却装置によって燃料電池内の冷却系統に通して燃料電池を冷却し、システム停止時には、温度監視手段によって熱媒体の温度を監視し、そこで、熱媒体の温度が高い場合には熱媒体貯溜手段によって熱媒体タンク内の熱媒体を燃料電池内に供給してそこに貯溜させておいて、熱媒体の残留熱によって燃料電池を保温し、再起動の際に必要な暖機運転が短くなるようにするが、熱媒体の温度がその凍結温度近くまで低下してくれば、熱媒体回収手段によって燃料電池内に貯溜されている熱媒体を熱媒体タンクに回収するので、燃料電池中に残留している熱媒体の凍結により燃料電池を破損するのを防止することができる。 【0017】請求項2の発明によれば、通常運転中には熱媒体タンク内の熱媒体を冷却装置によって燃料電池内の冷却系統に通して燃料電池を冷却し、システム停止後は、温度監視手段によって燃料電池の温度と熱媒体の温度とを監視し続け、燃料電池の温度の方が熱媒体の温度よりも高い間は熱媒体を燃料電池内に貯溜させず、燃料電池の温度の方が熱媒体の温度よりも低くなったときに熱媒体貯溜指令信号を出力し、熱媒体貯溜手段によって熱媒体タンク内の熱媒体を燃料電池内に供給してそこに貯溜させ、熱媒体の残留熱によって燃料電池を保温し、再起動の際に必要な暖機運転が短くなるようにし、その後も温度監視手段は燃料電池の温度と熱媒体の温度とを監視し続け、熱媒体の温度がその凍結温度近くまで低下してくれば熱媒体回収指令信号を出力し、熱媒体回収手段によって燃料電池内に貯溜されている熱媒体を熱媒体タンクに回収させるので、燃料電池中に残留している熱媒体の凍結により燃料電池を破損するのを防止することができる。 【0018】請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて、熱媒体貯溜手段が燃料電池内と共に燃料ガスの通路又は酸素の通路にも熱媒体を貯溜させておくので、燃料電池のみならず、燃料ガスの通路又は酸素の通路をも保温しておくことができ、システム停止後の再起動時に必要な暖機運転時間をさらに短くできる。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1は本発明の第1の実施の形態の燃料電池システムの構成を示している。この実施の形態の燃料電池システムは、燃料電池スタック1に対して、その内部に燃料ガスである水素リッチな改質ガスを供給するための燃料ガス管2と酸素源である空気を供給するための空気管3とが接続されている。燃料電池スタック1にはまた、その発電反応の後の燃料排ガスを排出するための燃料排ガス管5と排空気を排出するための排空気管6とが接続されている。 【0020】燃料電池スタック1は、燃料ガス管2からの改質ガスと空気管3からの空気によって発電反応を行なう。そして、燃料電池スタック1での発電反応後の燃料排ガスは燃料排ガス管5を通して燃焼器(図示せず)に排出されて完全燃焼させられ、その廃熱が改質器(図示せず)でのメタノールのような燃料原料の加熱に利用される。燃料電池スタック1からの排空気は排空気管6を通して排出され、同様に改質器の改質反応に利用されると共に、その他の機器の加熱に利用される。 【0021】このシステムでは燃料電池スタック1の冷却材13に純水が使用される。そして、燃料電池スタック1の冷却のために、燃料電池スタック1の内部及び周囲には冷却材通路10が形成され、その冷却材通路10は冷却材主配管11によって冷却材タンク12に接続されている。この冷却材主配管11の冷却材タンク12から燃料電池スタック1に至る往路上には、冷却材13を循環させるためのポンプ14とバルブAが設けられている。冷却材主配管11の燃料電池スタック1から冷却材タンク12に至る復路上には、冷却材13の熱を除去するために熱交換器15が設けられている。 【0022】冷却材主配管11のポンプ14の吐出側に、冷却材分岐管21の一端が分岐接続されている。この冷却材分岐管21の他端は排空気管6に接続されている。そして、この冷却材分岐管21のポンプ14側の接続端近くの位置にバルブBが設けられている。また排空気管6における、冷却材分岐管21の接続点よりも外側の位置にバルブCが設けられている。 【0023】次に、上記構成の燃料電池システムにおける冷却材13の循環作用、及び保温作用について説明する。 【0024】<システム運転時>燃料電池システムの運転時には、バルブAとバルブCとを開にし、バルブBを閉にしておく。これにより、ポンプ14を運転することによって、冷却材タンク12内の冷却材13はポンプ14−バルブA−冷却材主配管11の往路−燃料電池スタック1内の冷却材通路10−冷却材主配管11の復路−熱交換器15−冷却材タンク12の循環経路によって燃料電池スタック1内外を循環して、発電反応で高温になる燃料電池スタック1を冷却する。 【0025】<システム停止時>燃料電池システムの停止時には、図2に示すシーケンスによって冷却材13である純水を保温材として逆利用して、再起動時に必要な暖機運転時間を短くする。 【0026】それにはまず、冷却材タンク12内の純水の温度Tdwを温度センサ22から読込み、燃料電池スタック1に注入する保温材として意味のある温度Ts1よりも暖まっているかどうか判断する(ステップS1,S2)。そして、燃料電池システムが停止されるまでに運転された負荷の状況や運転時間により、冷却材があまり暖まっていない場合もあり、その場合には、保温材として逆利用することができないので、シーケンスを終了する(ステップS3)。 【0027】ここで、保温材として意味のある保温有効温度Ts1としては、例えば燃料電池スタック1の運転温度が80℃であれば、70℃程度に設定するなど、比較的運転温度に近い温度に設定する。常温近傍の温度に設定すると、冷却用純水の注入により却って燃料電池スタック1を冷やしてしまうことになるからである。 【0028】純水温度Tdwが保温有効温度Ts1よりも暖まっている場合、純水13を保温材として利用するために、バルブAとバルブCを閉じ、バルブBを開け(ステップS4)、続いて、ポンプ14を起動して純水13をポンプ14−バルブB−冷却材分岐管21−排空気管6を経て燃料電池スタック1内の空気極まで満たすようにする(ステップS5,S6)。これによって燃料電池スタック1内は高温の純水13によって保温されることになる。 【0029】この後、燃料電池スタック1の温度センサ23によって燃料電池スタック1内の純水13の温度Tstを監視し続け、この温度Tstが保温材として意味をなさなくなる温度としてあらかじめ設定した回収基準温度Ts2まで低下すれば、ポンプ14を所定時間の間逆回転させて燃料電池スタック1内の空気極まで注入されていた純水13を冷却材タンク12に回収する(ステップS7〜S10)。 【0030】ポンプ14の所定時間の回収運転が経過すれば、バルブBを閉じ、バルブAとバルブCを開き、ポンプ14の逆回転運転をさらに所定時間だけ継続して、冷却材主配管11と燃料電池スタック1内の冷却材通路10内の冷却材も回収する(ステップS11〜S13)。 【0031】ここで、純水の回収基準温度Ts2としては、冷却材の凍結温度よりも若干高めに設定する。この実施の形態では冷却材に純水を用いているので、回収基準温度Ts2は水の氷点よりも少し高めに設定している。 【0032】<システムの再起動時>燃料電池システムの再起動時には、図3のシーケンスの手順を踏む。まず燃料電池スタック1内の温度センサ23の検出温度Tstを取り込み(ステップS21)、回収基準温度Ts2と比較する(ステップS22)。 【0033】燃料電池スタック温度Tstが回収基準温度Ts2よりも高い場合には、純水13を保温材として燃料電池スタック1の空気極通路に注入したままの状態であるため、燃料電池スタック1の空気極通路内の純水を回収してから燃料電池システムを起動する(ステップS23,S24,S25)。なお、バルブ操作などの回収手順は、図2のシーケンスにおけるステップS9〜S11と同じである。 【0034】ステップS22で燃料電池スタック1内の温度Tstが回収基準温度Ts2よりも低い場合には、すでに図2に示したシーケンスの手順によって燃料電池スタック1の空気極通路の冷却材も冷却材主配管21内の冷却材も回収されている状態であるので、直ちに改質ガスと空気を燃料電池スタック1内に導入して発電を開始して暖機運転に入る(ステップS22,S25)。 【0035】このようにして、第1の実施の形態の燃料電池システムでは、システム停止後、冷却材がまだ比較的高温状態にある間はその熱を逆利用して燃料電池スタック1を保温しておくことにより、次の再起動時に必要となる暖機運転時間を短くすることができ、また、冷却材の温度が氷点近くまで低下してくれば、配管中に残留している冷却材を冷却材タンク12に全部回収して凍結による破損を防止することができる。 【0036】次に、本発明の第2の実施の形態の燃料電池システムを、図1、図4及び図5に基づいて説明する。第2の実施の形態の燃料電池システムの構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様であるが、冷却材を利用した燃料電池スタックの保温仕方が異なっている。以下、第2の実施の形態燃料電池システムを、第1の実施の形態と同一の要素には同一の符号を用いて説明する。 【0037】図4には燃料電池システムの停止後の冷却材と燃料電池スタック1との温度変化を示している。冷却材13は比熱が大きいために高温状態になりにくい一方で、冷めにくい。他方、燃料電池スタック1のような機器類は高温になりやすいが、外気温が低下すると急激に冷えてしまう。したがって、冷却材13の温度変化曲線Tdwと燃料電池スタック1の温度変化曲線Tstとは、ある点Tcrにおいて交差する。この交点Tcrの意味するところは、この点Tcrよりも以前に冷却材13を注入するのは、その注入によって燃料電池スタック1を冷やしてしまうのでエネルギ的に損失となり、逆に、この点Tcr以降であれば、エネルギ的に利得となるので冷却材13を保温材として利用する意味がある。 【0038】そこで、この冷却曲線Tdw,Tstの交点Tcrを基準にして、保温のために冷却材13を注入するかどうか判断すれば、システムに蓄積されているエネルギを有効に利用することができ、システム停止後の再起動時に必要な暖機運転時間をそれぞれの状況に応じて最短にすることができる。 【0039】この原理に基づいてエネルギの有効利用を図る燃料電池システムの冷却材注入シーケンスが図5に示してある。システムの停止後、冷却材タンク12内の純水の温度Tdwと燃料電池スタック1の温度Tstとを監視し続ける(ステップS31,S32)。 【0040】そして、燃料電池スタック1の温度Tstと冷却材13の温度Tdwとが共に冷えてきて、上述した交点Tcrに達すれば、それ以降、凍結温度に低下するまでは冷却材13を燃料電池スタック1の保温材として利用するのがエネルギ的に利得となるので、バルブAとバルブCを閉じ、バルブBを開け(ステップS33)、続いて、ポンプ14を起動して純水13をポンプ14−バルブB−冷却材分岐管21−排空気管6を経て燃料電池スタック1内の空気極まで満たすようにする(ステップS34,S35)。これによって燃料電池スタック1内は冷却材13によって保温されることになる。 【0041】この後、燃料電池スタック1の温度センサ23によって燃料電池スタック1の温度Tstを監視し続け、冷却材13の回収基準温度Ts2まで低下すれば、ポンプ14を所定時間の間逆回転させて燃料電池スタック1内の空気極通路まで注入されていた冷却材13を冷却材タンク12に回収する(ステップS36〜S39)。 【0042】ポンプ14の所定時間の回収運転が経過すれば、バルブBを閉じ、バルブAとバルブCを開き、ポンプ14の逆回転運転をさらに所定時間だけ継続して、冷却材主配管11と燃料電池スタック1内の冷却材通路10内の冷却材も回収する(ステップS40〜S42)。 【0043】ここでも、純水の回収基準温度Ts2としては、冷却材の凍結温度よりも若干高めに設定する。この実施の形態では冷却材に純水を用いているので、回収基準温度Ts2は水の氷点よりも少し高めに設定している。 【0044】なお、システムの再起動シーケンスは、第1の実施の形態と同様、図3のシーケンスにしたがって行なう。 【0045】これにより、第2の実施の形態の燃料電池システムでは、システム停止直後で燃料電池スタック1が冷却材13よりも高温の状態にある間は冷却材13による保温作用を行なわないことによって燃料電池スタック1の温度低下を遅らせ、システム停止後、冷却材の温度が燃料電池スタックの温度よりも高い状態になればその熱を逆利用して燃料電池スタック1を保温しておくことにより、次の再起動時に必要となる暖機運転時間を短くすることができる。また、冷却材13の温度が氷点近くまで低下してくれば、配管中に残留している冷却材を冷却材タンク12に全部回収して凍結による破損を防止することができる。 【0046】なお、上記の両方の実施の形態では、システム停止時の保温のために冷却用純水を空気極通路側だけに注入するようにしたが、これに限らず、水素極通路側にも注入する構成にしてもよい。また、燃料電池スタック1の周囲をジャケットで水密的に取り囲み、そこに冷却材を注入する構成にしてもよい。さらに不凍液を用いた冷却水のように不純物の混入されている冷却材によって冷却する燃料電池システムの場合には、燃料電池スタック1の周囲にジャケットを設けてそこにだけ冷却材を注入する構成にすれば、冷却材中の不純物質によって燃料電池スタック内部を汚損する恐れがない。 【0047】またさらに、上記の両方の実施の形態では、燃料電池スタック1だけを保温する構成であったが、燃料電池スタック1と共にその他の機器、例えば加湿器、配管、バルブ、コンデンサなども保温する構成にすることもできる。 【0048】また、冷却材が全部回収されるようにポンプを一定時間逆回転させるようにしたが、冷却材タンク12の液位を監視して全部回収を判断するようにしてもよい。さらに、冷却材の供給にはポンプに変えて、ガス圧による圧送を利用することもできる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年5月6日(1999.5.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083806 【弁理士】 【氏名又は名称】三好 秀和 (外8名)
|
| 【公開番号】 |
特開2000−324617(P2000−324617A) |
| 【公開日】 |
平成12年11月24日(2000.11.24) |
| 【出願番号】 |
特願平11−126060 |
|