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【発明の名称】 前後輪駆動車両
【発明者】 【氏名】関谷 重信

【氏名】栗林 隆司

【要約】 【課題】前輪をエンジンで駆動し、発進時に前輪がスリップすると後輪を界磁制御モータで駆動して発進をアシストする前後輪駆動車両において、特別のモータ回転数センサを必要とせずに前記界磁制御モータを制御する。

【解決手段】後輪WRL,WRRの回転数を検出する後輪回転数センサS2 の出力が該後輪WRL,WRRを駆動する発進アシスト用のモータML ,MR の回転数に比例することに鑑み、後輪速度が閾値未満のときにはモータML ,MR の界磁電流igを強めてモータトルクの増加を図り、後輪速度が閾値以上であるときには、モータML ,MR の回転数を更に高速側に延ばすべく界磁電流igを弱める。アンチロックブレーキシステム用やトラクションコントロールシステム用として車両に予め備えられた後輪回転数センサS2 を利用することにより、部品点数およびコストの削減に寄与することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前輪(WFL,WFR)および後輪(WRL,WRR)の一方の車輪を駆動するエンジン(E)と、前輪(WFL,WFR)および後輪(WRL,WRR)の他方の車輪を駆動するモータ(ML ,MR )とを備え、車両(V)の発進時にモータ(ML ,MR )で他方の車輪を駆動して発進のアシストを行い、車速が所定値に達したならば前記発進のアシストを停止する前後輪駆動車両において、前記モータ(ML ,MR )を界磁制御モータで構成するとともに、前記他方の車輪の回転速度を検出する速度センサ(S2 )の出力に基づいてモータ(ML ,MR )の界磁電流を制御する制御手段(U)を設けたことを特徴とする前後輪駆動車両。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、前後輪の一方をエンジンで駆動し、他方を発進アシスト用のモータで駆動する前後輪駆動車両に関する。
【0002】
【従来の技術】かかる前後輪駆動車両は、例えば特開平8−175209号公報により公知である。また界磁電流を変化させることが可能な界磁制御モータを用い、モータ回転数が低いときに界磁電流を強めにし、モータ回転数が高いときに界磁電流を弱めにすることにより、変速機を設けることなく1台のモータで低回転高トルク特性および高回転低トルク特性を両立させる技術も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前後輪駆動車両の発進アシスト用のモータとして前記界磁制御モータを使用すると、モータ回転数の変化に応じて低回転高トルク特性および高回転低トルク特性を切り換えて発進アシスト性能を高めることができる。しかしながら、そのためには界磁制御モータの回転数を検出するモータ回転数センサが必要になってコストアップの要因になる問題がある。
【0004】本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、特別のモータ回転数センサを必要とせずに、前後輪駆動車両の発進アシスト用のモータとして前記界磁制御モータを使用できるようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、前輪および後輪の一方の車輪を駆動するエンジンと、前輪および後輪の他方の車輪を駆動するモータとを備え、車両の発進時にモータで他方の車輪を駆動して発進のアシストを行い、車速が所定値に達したならば前記発進のアシストを停止する前後輪駆動車両において、前記モータを界磁制御モータで構成するとともに、前記他方の車輪の回転速度を検出する速度センサの出力に基づいてモータの界磁電流を制御する制御手段を設けたことを特徴とする前後輪駆動車両が提案される。
【0006】上記構成によれば、モータの回転速度と該モータで駆動される車輪の回転速度とは一定の関係を持つため、モータの回転速度を検出する特別の速度センサを設けることなく、前記車輪の回転速度を検出する速度センサの出力に基づいてモータの界磁電流を制御し、モータの低回転高トルク特性および高回転低トルク特性を任意に切り換えて車両の発進アシスト性能を高めることができる。特に、アンチロックブレーキシステム用やトラクションコントロールシステム用として車両に予め備えられた速度センサを利用すれば、部品点数およびコストの削減に寄与することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0008】図1〜図10は本発明の第1実施例を示すもので、図1は前後輪駆動車両の全体構造を示す図、図2は後輪駆動装置の拡大断面図、図3は後輪駆動装置のスケルトン図、図4はドグクラッチの構造を示す、図2の要部拡大図、図5および図6は図4に対応する作用説明図、図7はモータの駆動系の電気回路図、図8はモータ回転数とモータトルクとの関係を示すグラフ、図9は作用を説明するフローチャート、図10は後輪速度からモータの界磁電流を検索するマップである。
【0009】先ず、図1に基づいて本実施例の前後輪駆動車両Vの全体構造を説明する。
【0010】車両Vは車体前部に横置きに搭載されたエンジンEを備えており、このエンジンEの駆動力はトランスミッション1、ディファレンシャル2および左右のドライブシャフト3L ,3R を介して左右の前輪WFL,WFRに伝達される。エンジンEにより駆動されるジェネレータGは、車両Vのヘッドライト、ブレーキランプ、スタータモータ、空調装置、オーディオ機器等の各種電装品に給電するための12ボルトの第1バッテリB1 に接続される。
【0011】一対の直流モータML ,MR を駆動源とする後輪駆動装置Dが車体後部に設けられており、これらモータML ,MR の駆動力は後輪駆動装置Dおよび左右のドライブシャフト4L ,4R を介して左右の後輪WRL,WRRに伝達される。1個が12ボルトの第2バッテリB2 ,B2 が2個直列に接続されており、これら第2バッテリB2 ,B2 に前記ジェネレータGがDC−DCコンバータCを介して接続される。マイクロコンピュータよりなる電子制御ユニットUにより、モータML ,MR の作動が制御される。
【0012】上記モータML ,MR の駆動を制御すべく、電子制御ユニットUには、左右の前輪WFL,WFRの回転速度を検出する前輪速度センサS1 ,S1 と、左右の後輪の回転速度を検出する後輪速度センサS2 ,S2 と、ステアリングホイール6の操舵角を検出する操舵角センサS3 と、ブレーキペダル7の操作を検出するブレーキ操作センサS4 と、セレクトレバー8が前進ポジションにあるか後進ポジションにあるかを検出するシフトポジションセンサS5 と、モータML ,MR のアーマチュア電流を検出する電流センサS6 ,S6 とからの信号が入力される。
【0013】次に、図2および図3を参照して後輪駆動装置DおよびモータML ,MR の構造を説明する。
【0014】後輪駆動装置Dのケーシング21は、相互に結合された左ケース本体22L および右ケース本体22R と、左ケース本体22L の左側面に結合された左ケースカバー23L と、右ケース本体22R の右側面に結合された右ケースカバー23R とから構成される。左ケースカバー23L の左側面には左側のモータML のモータハウジング24L が固定されるとともに、右ケースカバー23R の右側面には右側のモータMR のモータハウジング24R が固定される。各モータML ,MR は、左右のケースカバー23L ,23R およびモータハウジング24L ,24R に回転自在に支持されたモータ軸25,25と、モータハウジング24L ,24R の内周面に固定されたステータ26,26と、モータ軸25,25に固定されたロータ27,27と、モータ軸25,25に固定されたコミュテータ28,28と、コミュテータ28,28に接触するブラシ29,29とを備える。
【0015】左ケース本体22L および左ケースカバー23L 間と、右ケース本体22R および右ケースカバー23R 間とには、それぞれ入力軸30,30、第1減速軸31,31、第2減速軸32,32および第3減速軸33,33が平行に支持される。モータ軸25,25は筒状に形成された入力軸30,30の内周面にスプライン結合される。入力軸30,30に設けた第1減速ギヤ34,34が第1減速軸31,31に設けた第2減速ギヤ35,35に噛み合い、第1減速31,31軸に設けた第3減速ギヤ36,36が第2減速軸32,32に設けた第4減速ギヤ37,37に噛み合い、更に第2減速軸32,32に設けた第5減速ギヤ38,38が第3減速軸33,33に設けた第6減速ギヤ39,39に噛み合っている。従って、モータ軸25,25の回転は、第1〜第6減速ギヤ34〜39,34〜39,を介して第3減速軸33,33に伝達されることになる。
【0016】筒状に形成された左右の第3減速軸33,33の内部に左右の出力軸40L ,40R が相対回転可能に嵌合しており、それら出力軸40L ,40R の外端は第3減速軸33,33の外部に突出して左右のケースカバー23L ,23R にそれぞれ支持される。そして左右の出力軸40L ,40R の外端は、それぞれ等速ジョイント41L ,41R および前記ドライブシャフト4L ,4R を介して左右の後輪WRL,WRRに接続される。
【0017】左右の第3減速軸33,33と左右の出力軸40L ,40R とが、それぞれ遊星歯車機構P,Pによって接続される。左右の遊星歯車機構P,Pは実質的に同一構造である。
【0018】遊星歯車機構P,Pは、出力軸40L ,40R の内端に一体に設けられたプラネタリキャリヤ42,42と、プラネタリキャリヤ42,42に回転自在に支持された複数のプラネタリギヤ43…と、左右のケース本体22L ,22R に回転自在に支持されてプラネタリギヤ43…に噛合するリングギヤ44と、第3減速軸33,33に設けられてプラネタリギヤ43…に噛合するサンギヤ45,45とから構成される。尚、左右の遊星歯車機構P,Pのリングギヤ44は一体に形成されて共有される。
【0019】図4に示すように、左右の遊星歯車機構P,Pに共有されるリングギヤ44はドグクラッチ46によってケーシング21に結合可能である。ドグクラッチ46は、左ケース本体22L に固定した固定ドグ47と、リングギヤ43の外周に軸方向摺動自在にスプライン係合して前記固定ドグ47のドグ歯471 に係合可能なドグ歯481 を備えた可動ドグ48と、可動ドグ48の外周に軸方向摺動自在に嵌合するシフトスリーブ49と、シフトスリーブ49に係合するシフトフォーク50と、ケーシング21に摺動自在に支持されてシフトフォーク50を支持するシフトロッド51と、励磁によってシフトロッド51を図中左方向に駆動するシフトソレノイド52と、シフトソレノイド52の非励磁時にシフトロッド51を図中右方向に駆動する戻しばね53とから構成される。
【0020】可動ドグ48には2個のロックボール54,55を収納する2個の透孔482,483 が形成されており、可動ドグ48に対向するリングギヤ44の外周面には1個の凹部441 が形成されるとともに、可動ドグ48に対向するシフトスリーブ49の内周面には2個の凹部491 ,492 が形成される。
【0021】而して、図4に示すように、シフトソレノイド52が非励磁時状態にあってシフトロッド51が図中右方向に移動しているとき、可動ドグ48の2個の透孔482 ,483 およびシフトスリーブ49の2個の凹部491 ,492 は整列しており、そこに遠心力で半径方向外側に付勢された2個のロックボール54,55が嵌合している。この状態では、ロックボール54,55はリングギヤ44の凹部441 と係合することがなく、従ってリングギヤ44は自由に回転することができる。
【0022】図5に示すように、シフトソレノイド52が励磁されてシフトロッド51が図中左方向に移動すると、シフトロッド51がシフトフォーク50、シフトスリーブ49およびロックボール54,55を介して可動ドグ48を左動させ、可動ドグ48のドグ歯481 が固定ドグ47のドグ歯471 に係合する。図6に示すように、シフトソレノイド52によってシフトロッド51が更に左動すると、シフトスリーブ49の2個の凹部491 ,492 間に形成された凸部493 上に一方のロックボール54が乗り上げ、可動ドグ48の透孔482 から押し出されたロックボール54の一部がリングギヤ44の凹部441 に係合する。その結果、リングギヤ44は、ロックボール54、可動ドグ48および固定ドグ47を介して左ケース本体22L に回転不能に結合される。
【0023】上記構造の後輪駆動装置Dにより、車両Vの発進時には発進アシスト制御が行われ、車両Vの発進後には旋回制御および作動制限制御が行われる。
【0024】(1)発進アシスト制御ブレーキペダル7が操作されていないことをブレーキ操作センサS4 が検出しており、シフトポジションセンサS5 で検出したシフトポジションが前進走行ポジションであり、かつ後輪速度センサS2 ,S2 で検出した後輪速度Vr(即ち、車速)が15km/h未満である車両Vの前進発進時に、前輪速度センサS1,S1 で検出した前輪速度Vfと後輪速度センサS2 ,S2 で検出した後輪速度Vrとを比較し、前輪速度Vfおよび後輪速度Vrの偏差ΔV(=Vf−Vr)が閾値ΔV以上になると、つまりエンジンEにより駆動される前輪WFL,WFRのスリップ量が所定値以上になると、図6に示すように、シフトソレノイド52を励磁してドグクラッチ46を係合させることにより遊星歯車機構P,Pのリングギヤ44をケーシング21に固定した状態で、左右のモータML ,MR を同速度で正転駆動する。
【0025】すると左右のモータML ,MR の回転が遊星歯車機構P,Pのサンギヤ45,45に伝達されるが、ドグクラッチ46によってリングギヤ44がケーシング21に固定されているため、サンギヤ45,45およびリングギヤ44に噛み合うプラネタリギヤ43…が自転しながら公転し、これらプラネタリギヤ43…を支持する左右のプラネタリキャリヤ42,42が回転する。その結果、プラネタリキャリヤ42,42に出力軸40L ,40R 、等速ジョイント41L ,41R およびドライブシャフト4L ,4R を介して接続された左右の後輪WRL,WRRが同速度で前進回転し、車両Vの前進発進がアシストされる。
【0026】尚、シフトポジションセンサS5 で検出したシフトポジションが後進走行ポジションである車両Vの後進発進時には、ドグクラッチ46を係合させた状態で左右のモータML ,MR を同速度で逆転駆動することにより、左右の後輪WRL,WRRを同速度で後進回転させて車両Vの後進発進がアシストすることができる。
【0027】(2)旋回制御車両Vの発進が完了して車速が15km/h以上になると、ドグクラッチ46が図4に示す非係合状態に保持されて遊星歯車機構P,Pのリングギヤ44は自由に回転できる状態になる。この状態で例えば車両Vが右旋回する場合に、左側のモータML を正転駆動するとともに右側のモータMR を逆転駆動する。すると左側のサンギヤ45が正転して左側のプラネタリキャリヤ42がリングギヤ44に対して正転し、同時に右側のサンギヤ45が逆転して右側のプラネタリキャリヤ42がリングギヤ44に対して逆転する。このとき、左右のプラネタリキャリヤ42,42から共通のリングギヤ44に作用する相互に逆方向のトルクは相殺されるため、左後輪WRLが増速されて右後輪WRRが減速される。その結果、左後輪WRLおよび右後輪WRRにそれぞれ駆動力および制動力が作用し、右向きのヨーモーメントが発生して車両Vの右旋回がアシストされる。
【0028】尚、車両Vの左旋回時には、右側のモータMR を正転駆動するとともに左側のモータML を逆転駆動することにより、右後輪WRRおよび左後輪WRLにそれぞれ駆動力および制動力が作用し、左向きのヨーモーメントが発生して車両Vの左旋回がアシストされる。また左右のモータML ,MR の駆動量は、操舵角センサS3 で検出した操舵角と、後輪速度センサS2 ,S2 で検出した車速とに基づいて推定した車両Vの旋回半径に応じて決定することができる。
【0029】(3)差動制限制御直進走行時や高速旋回時には、左右のモータML ,MR をジェネレータとして機能させて回生制動力を発生させることにより、後輪駆動装置Dに差動制限機能を発揮させる。即ち、左後輪WRLの回転がプラネタリキャリヤ42、プラネタリギヤ43…およびサンギヤ45を経て左側のモータML に伝達されて制動されるとともに、右後輪WRRの回転がプラネタリキャリヤ42、プラネタリギヤ43…およびサンギヤ45を経て右側のモータMR に伝達されて制動されるが、このとき左右のプラネタリギヤ43…がケーシング21から切り離された共通のリングギヤ44に噛み合っているため、左右の後輪WRL,WRRの差回転が左右のモータML ,MR の制動力によって規制される。これにより差動制限機能が発揮され、外乱等によって車両Vにヨーモーメントが作用したときに、このヨーモーメントに対抗するヨーモーメントを発生させて直進安定性や高速旋回安定性を高めることができる。
【0030】図7に示すように、上述した左右のモータML ,MR の駆動は第2バッテリB2 ,B2 に蓄電した電力により行われる。12ボルトの第1バッテリG1 を充電すべくジェネレータGは発電電圧を12ボルトに制御するICレギュレータを備えており、12ボルトのバッテリを2個直列に接続した第2バッテリB2 ,B2の充電は、ジェネレータGの12ボルトの発電電圧をDC−DCコンバータCで24ボルトに昇圧することにより行われる。
【0031】上記モータML ,MR は界磁切換モータであって、その界磁を構成するステータ26,26に流れる界磁電流imを、電子制御ユニットUからの指令で増減してロータ27,27を横切る磁束を強めたり弱めたりし、モータML ,MR の回転数−トルク特性を任意に制御することができる。即ち、図8に示すように、モータ回転数Nmが低い領域では界磁電流imを強めてモータトルクTmを増加させ、モータ回転数Nmが高い領域では界磁電流imを弱めてモータ回転数Nmを増加させることができる。このモータML ,MR の界磁切換制御は、後輪回転数センサS2 ,S2 で検出した後輪回転数と、電流センサS6 ,S6 で検出したモータML ,MR のアーマチュア電流とに基づいて、上述した発進アシスト制御時に実行される。
【0032】モータML ,MR の界磁切換制御はモータ回転数に応じて行われるものであるが、車両Vの発進アシスト時には左右のモータML ,MR によって左右の後輪WRL,WRRが駆動され、そのときのモータ回転数は後輪速度センサS2 ,S2 で検出した後輪回転数と比例関係にあることから、本実施例ではモータ回転数センサを設けることなく、後輪速度センサS2 ,S2 の出力をモータ回転数に代わる信号として利用している。後輪速度センサS2 ,S2 はアンチロックブレーキシステム用やトラクションコントロールシステム用として車両Vに予め装着されているため、それを利用することによりコストの削減を図ることができる。
【0033】以下、この界磁切換制御の内容を、図9のフローチャートおよび図10のマップに基づいて更に説明する。
【0034】先ず、ステップS1で後輪速度センサS2 ,S2 で検出した後輪速度Vrを第1閾値V1 と比較し、後輪速度Vrが第1閾値V1 未満であるモータML ,MRの低速回転時には、ステップS5でモータML ,MR の界磁電流igを強めてモータトルクTgの増加が図られる。前記ステップS1で後輪速度Vrが第1閾値V1 以上であり、かつステップS2で後輪速度Vrが第1閾値V1 より大きい第2閾値V2 以上であるモータML ,MR の高速回転時には、ステップS6でモータML ,MR の回転数を更に高速側に延ばすべく界磁電流igが弱められる。
【0035】前記ステップS1,S2で後輪速度Vrが第1閾値V1 以上、第2閾値V2 未満であり、かつステップS3で前回の界磁電流igが弱められていなければ、ステップS4で電流センサS6 ,S6 で検出したモータML ,MR のアーマチュア電流Iを閾値I1 と比較し、アーマチュア電流Iが閾値I1 以上であれば、ステップS5でモータML ,MR の界磁電流igが強めたままの状態に保持される。逆に前記ステップS4でアーマチュア電流Iが閾値I1 未満になれば、ステップS6でモータML ,MR の界磁電流igが弱められる。そして前記ステップS3で前回の界磁電流igが既に弱められていれば、ステップS6でモータML ,MR の界磁電流igが弱めたままの状態に保持される。
【0036】つまり、後輪速度Vrが第1閾値V1 以上になったときは、即座にモータML,MR の界磁電流igを弱めることなく、アーマチュア電流Iが閾値I1 未満になったことを条件として界磁電流igが弱められる。後輪速度Vrが第2閾値V1 以上になったときは、アーマチュア電流Iに関わらず、無条件でモータML ,MR の界磁電流igが弱められる。
【0037】界磁切換制御においてアーマチュア電流Iを考慮する理由は以下のとおりである。モータ回転数を直接検出せずに後輪速度Vrから間接的に検出しているため、後輪駆動装置Dの動力伝達経路のガタやねじれの影響で若干の検出誤差が発生することが避けられない。そこで、後輪速度Vrが第1閾値V1 以上になる条件に加えて、アーマチュア電流Iが閾値I1 未満になったときに界磁電流igを強めから弱めに切り換えることにより、上記したモータ回転数の検出誤差を吸収することができる。尚、車両Vの発進時には、モータ回転数が低速から高速に切り換わる頻度の方が高速から低速に切り換わる頻度よりも圧倒的に高いため、低速から高速に切り換わる場合だけにアーマチュア電流Iを考慮した上記ヒステリシス制御を行うが、頻度の低い高速から低速に切り換わる場合には、アーマチュア電流Iを考慮せずに後輪速度Vrが第1閾値V1 未満になったときに界磁電流igを弱めから強めに切り換えるようにしている。
【0038】上記第1実施例では、車両Vの発進時に前輪WFL,WFRがスリップした場合にのみモータML ,MR を駆動して発進アシストを行っているが、以下に説明する第2実施例の如く、前輪WFL,WFRのスリップの有無に関わらずアクセルペダルの踏み込み量に応じてモータML ,MR の駆動を制御することができる。
【0039】具体的には、ブレーキペダル7が操作されていないことをブレーキ操作センサS4 が検出しており、シフトポジションセンサS5 で検出したシフトポジションが前進走行ポジションであり、かつ後輪速度センサS2 ,S2 で検出した後輪速度Vr(即ち、車速)が15km/h未満である車両Vの前進発進時に、アクセル開度センサで検出したアクセル開度が所定値以上であってドライバーが加速を要求している場合に、そのアクセル開度に応じてモータML ,MR を正転駆動して発進アシストを行い、アクセル開度が所定値未満の場合にはモータML ,MRを駆動しない。そして発進後に後輪速度Vr(即ち、車速)が15km/h以上になると、モータML ,MR の駆動を停止して発進アシストを終了する。
【0040】このように、エンジンEに低回転高出力特性が要求される車両Vの発進時にモータML ,MR を駆動して発進アシストを行うことにより、エンジンEの燃費消費量の低減、エミッションの低減、車両Vの加速性能の向上を図ることができる。またアクセル開度が所定値未満であってドライバーが加速を要求していない場合にはモータML ,MR を駆動しないので、電力の無駄な消費を抑えることができる。
【0041】以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0042】例えば、実施例では前輪WFL,WFRをエンジンEで駆動し、後輪WRL,WRRをモータML ,MR で駆動しているが、逆に後輪WRL,WRRをエンジンEで駆動し、前輪WFL,WFRをモータML ,MR で駆動することも可能である。
【0043】
【発明の効果】以上のように請求項1に記載された発明によれば、モータの回転速度と該モータで駆動される車輪の回転速度とは一定の関係を持つため、モータの回転速度を検出する特別の速度センサを設けることなく、前記車輪の回転速度を検出する速度センサの出力に基づいてモータの界磁電流を制御し、モータの低回転高トルク特性および高回転低トルク特性を任意に切り換えて車両の発進アシスト性能を高めることができる。特に、アンチロックブレーキシステム用やトラクションコントロールシステム用として車両に予め備えられた速度センサを利用すれば、部品点数およびコストの削減に寄与することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年5月12日(1999.5.12)
【代理人】 【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
【公開番号】 特開2000−324612(P2000−324612A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−131887