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【発明の名称】 ハイブリッド車の多重通信システム
【発明者】 【氏名】田中 寿

【要約】 【課題】ハイブリッド車の内部或いは外部で発生するノイズによる多重通信における情報伝達の誤りを防止する。

【解決手段】多重通信バス200に、第1の信号ライン200aと第2の信号ライン200bとの2系統の信号ラインを備え、各ECUの通信コントローラ105で、送信部の出力を、第1の信号ライン200a上の信号レベルと第2の信号ライン200b上の信号レベルとが基準信号レベルに対して互いに反転関係となるよう制御し、また、2系統の信号ラインから受信した2つの信号の差分を取ることにより、データの誤認識を防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンとモータとを併用するハイブリッド車に搭載される複数の制御装置を、2系統の信号ラインを有する多重通信バスを介して互いに接続し、上記複数の制御装置の各々に、所定の基準信号レベルに対するデータの論理値を上記2系統の信号ラインで互いに反転して送信する一方、上記2系統の信号ラインから受信した2つの信号を差分して受信データを認識する通信制御部を備えたことを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ノイズの影響による伝送情報の誤りを防止するハイブリッド車の多重通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車等の車両の制御システムでは、エンジン制御、変速機制御、ブレーキ制御等を専用の制御装置で行うものが多く、各制御装置間でシリアル通信により必要な制御データを交換するようにしている。この制御データのシリアル通信に関する技術は、例えば、特開平7−19104号公報に開示されており、この先行技術では、高速にアクセスの必要なデータ類をパラレルで取り込み、高速性を必要としないデータをシリアルで取り込むようにしている。
【0003】また、最近では、制御項目や制御情報量の増大による通信用ハーネス線及びコネクタの増加、及び、それに伴うコスト増大に対処するため、複数の制御装置を多重通信バスを介して接続し、車載ネットワークを構成する技術が採用されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、車両のようなノイズの多い環境下でのデータ通信、特にエンジンとモータとを併用するハイブリッド車におけるデータ通信では、エンジンに加え、モータやモータを駆動するためのインバータ等の電気的ノイズの発生源が多いため、通信バス上にノイズの混入する可能性が高く、受信データを誤認識する虞がある。
【0005】さらには、ハイブリッド車のような極めてノイズの多い環境下では、制御応答性を向上するため通信速度を上げようとすると必然的にラジオノイズが発生し易くなり、このラジオノイズがオーディオのアンテナ等に悪影響を与えて車内の快適性を損なう可能性がある。
【0006】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ハイブリッド車の内部或いは外部で発生するノイズによる多重通信における情報伝達の誤りを防止することのできるハイブリッド車の多重通信システムを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、エンジンとモータとを併用するハイブリッド車に搭載される複数の制御装置を、2系統の信号ラインを有する多重通信バスを介して互いに接続し、上記複数の制御装置の各々に、所定の基準信号レベルに対するデータの論理値を上記2系統の信号ラインで互いに反転して送信する一方、上記2系統の信号ラインから受信した2つの信号を差分して受信データを認識する通信制御部を備えたことを特徴とする。
【0008】すなわち、本発明では、ハイブリッド車の複数の制御装置を接続する多重通信バスに2系統の信号ラインを備えるようにし、各制御装置の通信制御部では、所定の基準信号レベルに対するデータの論理値を2系統の信号ラインで互いに反転して送信する一方、2系統の信号ラインから受信した2つの信号を差分することで受信データを認識する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図4は本発明の実施の一形態に係わり、図1はハイブリッド制御システムの構成を示す説明図、図2は通信コントローラと多重通信バスとの接続を示す説明図、図3は多重通信バスのロジック状態を示す波形図、図4は多重通信バス上の信号にノイズが乗った状態を示す波形図である。
【0010】図1に示すように、本形態におけるハイブリッド車は、エンジン1、2つのモータA,B、プラネタリギヤユニット2、無段変速機3を有する車両であり、図においては、先の特願平10−4080号で本出願人が提案したハイブリッド車と同様の駆動系についての構成を示す。すなわち、エンジン1の出力軸1aに、モータAとシングルピニオン式のプラネタリギヤユニット2のサンギヤとが連結され、リングギヤにモータBが連結されている。そして、プラネタリギヤユニット2のキャリアが無段変速機3の入力軸3aに連結され、図示しない減速歯車列やデファレンシャル機構を介して駆動輪に駆動力が伝達される。尚、プラネタリギヤユニット2には、サンギヤとキャリアとを締結・解放するためのロックアップクラッチが併設されている。
【0011】以上のハイブリッド車には、複数の電子制御装置(ECU)が搭載されており、本形態では、システム全体を統括する中央のECU10を筆頭として、エンジン1を駆動制御するエンジン制御用ECU20、モータAを駆動制御するインバータを内蔵するモータA制御用ECU30、モータBを駆動制御するインバータを内蔵するモータB制御用ECU40、無段変速機3の制御を行う変速制御用ECU50、その他、図示しない各ECU、例えば、モータA,Bの電源となる高圧バッテリや制御用及び補機類の電源となる低圧バッテリの電力管理を行うバッテリマネージメント用ECU、ブレーキ制御を行うブレーキ制御用ECU等が搭載されている。
【0012】各ECU10,20,30,40,50,…は、マイクロコンピュータとマイクロコンピュータによって制御される機能回路とから構成され、図中、中央のECU10で代表するように、CPU101、ROM102、RAM103、図示しないセンサ・スイッチ類やアクチュエータ類が接続される入出力(I/O)インターフェース104、通信コントローラ105をパラレルバス106を介して互いに接続してなるマイクロコンピュータを中心とし、その他、各部に制御電圧Vccを供給する電源回路107を備えている。
【0013】通信コントローラ105は、各ECU同士の制御情報を共有するために多重通信バス200を介してのデータ通信を専用に処理する通信制御部であり、各ECUが通信コントローラ105を介して多重通信バス200によって結合され、ハイブリッド車の総合的な制御を担うハイブリッド制御システムが形成される。
【0014】中央のECU10では、各センサ・スイッチ類からの信号や各ECUから送信されたデータに基づいて必要な車両駆動トルクを演算して駆動系のトルク配分を決定し、各ECUに対する制御指令、例えば、エンジン制御用ECU20に対するトルク指令や燃料カット指令、モータA制御用ECU30に対するサーボON/OFF指令や回転数指令、モータB制御用ECU40に対するサーボON/OFF(正転、逆転を含む)指令やトルク指令(力行、回生)、変速制御用ECU50に対する無段変速機入力トルク指示やロックアップ要求等を、多重通信バス200を介して送信する。
【0015】一方、中央のECU10に対し、エンジン制御用ECU20からは、エンジン1の制御トルク値等のフィードバックデータ、エンジン1の暖機要求等を送信し、モータA制御用ECU30からは、モータAのトルク、回転数、及び電流値等のフィードバックデータ、トルク制限要求、電圧値等のデータを送信する。また、モータB制御用ECU40からは、モータBのトルク、回転数、及び電流値等のフィードバックデータ、電圧値等のデータを中央のECU10へ送信し、変速制御用ECU50からは、車速、入力制限トルク、変速状態等のフィードバックデータ、無段変速機3へ供給する油量をアップさせるためのエンジン回転数アップ要求、低温始動要求等を中央のECU10へ送信する。
【0016】ここで、ハイブリッド車においては、エンジン1、モータA,B、インバータ等の電気的ノイズの発生源の存在により、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのみを走行駆動源として搭載する車両に比較して極めてノイズの多い環境とならざるを得ず、また、制御応答性を向上するための通信速度を上げるにつれて必然的にラジオノイズが発生しやすくなる。従って、従来の各ECU間を接続するシリアル通信バスを介しての通信に際しては、ノイズの混入する可能性が相対的に高くなり、受信データの誤認識や、また、ラジオノイズによるアンテナ等への悪影響の虞がある。
【0017】このため、本形態の多重通信バス200には、第1の信号ライン200aと第2の信号ライン200bとの2系統の信号ラインが備えられており、各ECUの通信コントローラ105では、所定の基準信号レベルに対するデータの論理値を2系統の信号ラインで互いに反転して送信する一方、2系統の信号ラインから受信した2つの信号の差分を取ることにより、ラジオノイズの抑制とデータの誤認識を防止するようにしている。
【0018】具体的には、図2に示すように、通信コントローラ105には、第1の信号ライン200aに対し、PチャンネルMOSFET210とNチャンネルMOSFET211とで形成するプッシュプル回路による第1の送信部が備えられると共に、第2の信号ライン200bに対し、同様に、PチャンネルMOSFET212とNチャンネルMOSFET213とで形成するプッシュプル回路による第2の送信部が備えられており、また、2系統の信号ライン200a、200bからの2つの信号を差動増幅して波形整形するアンプ214による受信部が備えられている。
【0019】第1の送信部では、PチャンネルMOSFET210のドレイン端子に直列接続されるNチャンネルMOSFET211のドレイン端子を出力端として、この出力端がコンデンサC2を並列接続したダイオードD2のカソード側に接続され、ダイオードD2のアノード側が抵抗R2を介して第1の信号ライン200aに接続されている。一方、第2の送信部では、PチャンネルMOSFET212のドレイン端子に直列接続されるNチャンネルMOSFET213のドレイン端子を出力端として、この出力端がコンデンサC1を並列接続したダイオードD1のアノード側に接続され、ダイオードD1のカソード側が抵抗R1を介して第2の信号ライン200bに接続されている。
【0020】また、受信部のアンプ214は、一方の入力端に、抵抗R6を介して第1の信号ライン200aが接続されると共にバス上の各ノードでの基準信号レベルVmean(本形態では、Vmean=Vcc/2)を安定化するためのアンプ215の出力端が抵抗R5を介して接続され、他方の入力端に、抵抗R4を介して第2の信号ライン200bが接続されると共にアンプ215の出力端が抵抗R3を介して接続されている。
【0021】一方、多重通信バス200では、第1の信号ライン200a及び第2の信号ライン200bに対するネットワーク終端部200cに、バス上の信号レベルを定めるための電圧を供給するアンプ201,202が備えられており、アンプ201の出力端から抵抗R8を介して第1の信号ライン200aが延出されると共に、アンプ202の出力端から抵抗R7を介して第2の信号ライン200bが延出される。本形態では、アンプ201から各信号ラインへ供給される電圧は、第1の信号ライン200aに対して電圧レベルV_HR、第2の信号ライン200bに対して電圧レベルV_LRであり、V_HR>Vmean(=Vcc/2)>V_LRである。
【0022】通信コントローラ105の第1,第2の送信部のプッシュプル回路の出力TX0,TX1は、第1の信号ライン200a上の信号レベルと第2の信号ライン200b上の信号レベルとが基準信号レベルVmeanに対する論理値が互いに反転関係となるよう制御され、バス上での出力の衝突が回避される。
【0023】すなわち、図3に示すように、バス上の信号レベルは、第1の信号ライン200aの信号レベルが基準信号レベルVmean(=Vcc/2)より高い信号レベルV_HRで、第2の信号ライン200bが基準信号レベルVmeanより低い信号レベルV_LRにある第1のロジック状態と、第1の信号ライン200aの信号レベルが基準信号レベルVmeanより低い信号レベルV_HD(但し、V_HD<V_LR)で、第2の信号ライン200bの信号レベルが基準信号レベルVmeanより高い信号レベルV_LD(但し、V_LD>V_HR)にある第2のロジック状態とのいずれの状態となり、これらのロジック状態によってバスが占有状態にあるか空き状態にあるかを各ECUの通信コントローラ105が判断し、送信側となるか或いは送信を中止して受信側に回るかを決定することで、バス上の衝突を回避することができる。
【0024】本形態では、多重通信バス200のロジック状態が第1のロジック状態にあるときにはバスが空き状態であり、第2のロジック状態にあるときにはバスが占有状態すなわち送信不可の状態にあるものとし、受信側に回ったノードでは、通信コントローラ105の受信部で第1の信号ライン200aからの信号RX0と第2の信号ライン200bからの信号RX1との差分を増幅して波形整形し、受信データRXを認識する。
【0025】すなわち、第1のロジック状態では、第1の信号ライン200aと第2の信号ライン200bとの信号レベルの差がVdiffR(=V_HR−V_LR)となり、受信部のアンプ214での差動増幅及び波形整形を経て論理値1の信号として認識される。また、第2のロジック状態では、第1の信号ライン200aと第2の信号ライン200bとの信号のレベル差が−VdiffD(=V_HD−V_LD)となり、受信部のアンプ214での差動増幅及び波形整形を経て論理値0の信号として認識される。
【0026】これにより、図4に示すように、ハイブリッド車の内部或いは外部で発生するノイズが多重通信バス200に混入しても、通常、ノイズは2系統の信号ライン200a,200bで同様に乗るため、2系統の信号ライン200a,200bから受信した2つの信号の差分を取ることにより、混入したノイズ成分を相殺して正しい受信データを認識することができる。従って、ノイズによる情報伝達の誤りを防止してシステムの信頼性を向上することができると共に、ラジオノイズ等の発生を抑制しながら通信速度を上げることが可能となる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ハイブリッド車の複数の制御装置を接続する多重通信バスに2系統の信号ラインを備えるようにし、各制御装置の通信制御部では、所定の基準信号レベルに対するデータの論理値を2系統の信号ラインで互いに反転して送信する一方、2経系統の信号ラインから受信した2つの信号を差分することで受信データを認識するので、多重通信バスに混入したノイズ成分を相殺して正しい情報を認識することができ、ノイズによる情報伝達の誤りを防止してシステムの信頼性を向上すると共に、ラジオノイズ等の発生を抑制しながら通信速度を上げることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成11年5月12日(1999.5.12)
【代理人】 【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
【公開番号】 特開2000−324611(P2000−324611A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−131689