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【発明の名称】 ハイブリッド自動車の制御装置
【発明者】 【氏名】島袋 栄二郎

【氏名】多々良 裕介

【氏名】杉山 哲

【氏名】玉川 裕

【氏名】金丸 善博

【要約】 【課題】無段変速機と駆動輪及び電動機との間に介装された係合要素の結合を、車速やエンジン回転数によらず行うことができ、これにより、運転者が要求する駆動力の変化に良好に対応することが可能なハイブリッド自動車の制御装置を提供する。

【解決手段】係合要素を結合させるにあたっては、係合要素同士の回転数差が所定値以上である場合には、エンジン回転数およびCVTの変速比のいずれか一方または双方を制御する(ステップS8,S9)ことにより、前記係合要素のうち前記無段変速機側に接続されたものの回転数を調整することとし、さらに、前記回転数差が前記所定値以内となった場合に、前記係合要素の結合動作を開始する(ステップS7)ようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内燃機関と、無段変速機と、電動機とを備え、前記内燃機関の出力軸が前記無段変速機の入力部に接続され、前記無段変速機の出力部が、結合・分離自在な一対の係合要素からなる係合部を介して前記電動機の出力軸に接続され、前記電動機の出力軸が、駆動輪に結合された駆動力伝達手段に対して接続されたハイブリッド自動車に適用される制御装置であって、前記係合要素の結合および分離を制御する係合要素制御手段と、前記係合要素のそれぞれの回転数を検出する回転数検出手段と、前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段と、前記内燃機関の回転数を制御する内燃機関回転数制御手段とを備えてなり、前記係合要素制御手段により前記係合要素を結合させるにあたって、前記係合要素同士の回転数差が所定値以上である場合には、前記内燃機関回転数制御手段および前記変速比制御手段のいずれか一方または双方を用いて、前記内燃機関の回転数および前記無段変速機の変速比のいずれか一方または双方を制御することにより、前記係合要素のうち前記無段変速機側に接続されたものの回転数を調整し、前記回転数差が前記所定値以内となった場合に、前記係合要素の結合動作を開始することを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。
【請求項2】 請求項1記載のハイブリッド自動車の制御装置であって、前記係合部において要求される伝達トルク容量を演算する伝達トルク演算手段を備えてなり、演算された前記伝達トルク容量が大きいほど、前記所定値を大に設定することを特徴とするハイブリッド自動車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関と、無段変速機と、電動機とを備え、前記内燃機関の出力軸が前記無段変速機の入力部に接続され、前記無段変速機の出力部が、結合・分離自在な一対の係合要素からなる係合部を介して前記電動機の出力軸に接続され、前記電動機の出力軸が、駆動輪に結合された駆動力伝達手段に対して接続されたハイブリッド自動車に適用される制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のハイブリッド自動車の制御装置は、例えば、図5に示す特開平9−224303号に記載されたものが知られている。図5において、エンジン1の出力軸は、オイルポンプ2を駆動するとともに、無段変速機3の入力軸に連結されており、無段変速機3の出力軸には、クラッチ4およびギア5を介して電動機6の出力軸が連結されている。また、無段変速機3の出力軸には、ディファレンシャルギア7を介して駆動輪8が連結されている。
【0003】また、無段変速機3の出力軸には回転数を検出する回転センサが取り付けており、回転センサからの出力信号は、電子制御装置(ECU)9の入力ポートに入力される。さらに、ECU9においては、ディファレンシャルギア7の減速比とタイヤ有効半径とから車速が検出される。
【0004】図6および図7に示すものは、このハイブリッド自動車の制御装置における車両走行時の動作の手順である。これにより、このハイブリッド自動車における発進時の制御は以下のようになる。すなわち、運転者がアクセルペダルを踏むと、ステップS101において、アクセルスイッチがONと判断され、ステップS102に進む。ステップS102において、車速Vが10km/h以下と判断されると、ステップS301においてクラッチ4が開放されるとともに、ステップS302においてエンジン1がアイドリング状態に維持される。一方、ステップS102において車速Vが10km/h以上と判断されたときには、ステップS103において、クラッチ4が結合状態とされる。なお、このステップS103においては、無段変速機3の入力軸の回転数とエンジン1のアイドリング回転数とが一致したところでクラッチ4を接続させる。
【0005】この制御によれば、発進時において、車速Vが10km/h以下のときには、エンジン1がアイドリング状態とされることとなり、また、車速Vが10km/hを越えたところで、無段変速機3の入力軸の回転数とエンジン1のアイドリング回転数とが一致したところで、クラッチ4を結合させることとなる。この場合、図5に示すようにエンジン1の出力軸と無段変速機3の入力軸とは一致しているから、エンジン1がアイドリング状態にあれば、無段変速機3の入力軸回転数は、必ずアイドル回転数と一致する。したがって、このハイブリッド自動車においては、発進後に、車速Vが10km/hを越えたところで、クラッチ4が接続され、そのときのエンジン1の回転数は、アイドリング回転数であることとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、一般に、クラッチの結合をショック無く行うためには、クラッチの入力回転数と出力回転数とを一致させた状態で結合動作を行う必要がある。上述のハイブリッド自動車においては、図5に示した動力伝達系の構造によれば、クラッチ4の出力回転数が車速により決定されることとなっており、さらに、上述のようにクラッチ4を結合する際の車速が一定値(10km/h)に規定されることとなっている。このため、結合時のクラッチ4の出力回転数は自ずと一定値に定まることになる。これより、クラッチ4の結合をショック無く行うためには、クラッチ4の入力回転数も一定値とする必要がある。
【0007】クラッチ4の入力回転数は、図5の構造より、エンジン1の回転数と無段変速機3の変速比とで決定されることになるが、上述の制御によれば、クラッチ4の結合時のエンジン1の回転数がアイドリング回転数に定められているために、クラッチ4の入力回転数と出力回転数とを一致させるためには、無段変速機3の変速比を一定値としなくてはならなくなる。
【0008】したがって、上述のハイブリッド自動車においては、車両発進時の運転者の駆動力要求が大きく、エンジン1により即座に大きな駆動力を発生させたい場合に、車速によらずエンジン回転数を上昇させ、高出力運転が可能な状態でクラッチ4の結合を行うことが不可能であり、運転者の要求に十分に応えることができない。
【0009】このような事情に鑑み、本発明においては、無段変速機と駆動輪または電動機との間に介装された係合要素の結合を、車速やエンジン回転数によらず行うことができ、これにより、運転者が要求する駆動力の変化に良好に対応することが可能なハイブリッド自動車の制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明においては以下の手段を採用した。すなわち、請求項1記載のハイブリッド自動車の制御装置は、内燃機関(例えば、実施の形態におけるエンジンE)と、無段変速機(例えば、実施の形態におけるCVT18)と、電動機(例えば、実施の形態における駆動/回生用モータM)とを備え、前記内燃機関の出力軸が前記無段変速機の入力部(例えば、実施の形態における駆動側プーリ19)に接続され、前記無段変速機の出力部(例えば、実施の形態における被動側プーリ21)が、結合・分離自在な一対の係合要素(例えば、実施の形態における係合要素26,27)からなる係合部(例えば、実施の形態におけるクラッチ28)を介して前記電動機の出力軸に接続され、前記電動機の出力軸が、駆動輪に結合された駆動力伝達手段(例えば、実施の形態における最終減速ギア30)に対して接続されたハイブリッド自動車(例えば、実施の形態におけるハイブリッド自動車10)に適用される制御装置(例えば、実施の形態における制御装置11)であって、前記係合要素の結合および分離を制御する係合要素制御手段(例えば、実施の形態におけるステップS7およびステップS12)と、前記係合要素のそれぞれの回転数を検出する回転数検出手段(例えば、実施の形態におけるステップS2)と、前記無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段(例えば、実施の形態におけるステップS9およびS11)と、前記内燃機関の回転数を制御する内燃機関回転数制御手段(例えば、実施の形態におけるステップS8およびS10)とを備えている。そして、前記係合要素制御手段により前記係合要素を結合させるにあたっては、前記係合要素同士の回転数差が所定値(例えば、100rpm、または実施の形態におけるステップS4において設定される値)以上である場合には、前記内燃機関回転数制御手段および前記変速比制御手段のいずれか一方または双方を用いて、前記内燃機関の回転数および前記無段変速機の変速比のいずれか一方または双方を制御することにより、前記係合要素のうち前記無段変速機側に接続されたものの回転数を調整することとし、さらに、前記回転数差が前記所定値以内となった場合に、前記係合要素の結合動作を開始するようにしている。
【0011】このように構成したために、このハイブリッド自動車の制御装置においては、係合要素同士を結合させる際の内燃機関の回転数と無段変速機の変速比とが一定に定められることが無く、例えば、発進時の運転者の駆動力要求が大きいときには、内燃機関の回転数を上昇させ、高出力運転が可能な状態としたまま係合要素同士の結合動作を行うことができる。
【0012】請求項2記載のハイブリッド自動車の制御装置は、請求項1記載のハイブリッド自動車の制御装置において、前記係合部において要求される伝達トルク容量を演算する伝達トルク演算手段(例えば、実施の形態におけるステップS41)を備え、演算された前記伝達トルク容量が大きいほど、前記所定値を大に設定するようにしている。
【0013】このような構成により、係合要素の伝達トルク容量が大であるほど、係合要素同士の結合開始の回転数差が大となることとなるが、一般に、運転者は、低負荷のクルーズ走行をしている場合には小さなショックでもこれを敏感に感じ、高負荷の加速走行等の場合には、多少のショックでもあまり気にならないので、高負荷走行、すなわち、伝達トルク容量の大きいときには、回転数差の所定値を大きく設定するようにしても、運転者の感じるショックは小さいと考えられる。これにより、高負荷走行時に、内燃機関の回転数制御などに要する時間や燃料を、運転者の走行快適性を損なわない範囲内で省略することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第一および第二の実施の形態の一例を、図面に基づいて説明する。
[第一の実施の形態]図2に示すものは、ハイブリッド自動車10の動力伝達系の模式図と、ハイブリッド自動車10に適用された制御装置11のブロック図とを併せて示したものである。
【0015】図2に示す動力伝達系において、エンジン(内燃機関)Eの動力は、振動減衰ダンパー12を介して前後進切り替え用プラネタリーギアセット13に入力される。この前後進切り替え用プラネタリーギアセット13は、図示略のセレクトレバーに機械的に連結された油圧切り替えバルブ(図示略)によって、セレクトレバーの操作により油圧作動の摩擦要素16,17を選択的に係合できるようになっており、これにより、CVT18の駆動側プーリ(入力部)19に入力されるエンジンEの動力の回転方向を切り替えるようになっている。
【0016】また、駆動側プーリ19の回転は金属ベルト20を介して被動側プーリ(出力部)21に伝えられる。ここに、駆動側プーリ19と被動側プーリ21との回転数比は、各プーリに対する金属ベルト20の巻き付き径により決まり、この巻き付き径は、各プーリの側室22,23に与えた油圧により発生する押しつけ力によって制御される。なお、この油圧は、エンジンEによって駆動されるオイルポンプ24により発生し、油圧制御装置25を介して、側室22,23に供給される。
【0017】被動側プーリ21は、一対の係合要素26,27からなるクラッチ(係合部)28を介して駆動/回生用モータMの出力軸に接続されている。クラッチ28と駆動/回生用モータMとの間には、最終減速ギア(駆動力伝達手段)30およびギア31が介装されており、被動側プーリ21の駆動力は、最終減速ギア30を介して車軸32に伝達され、駆動輪Wを回転させる。また、駆動/回生用モータMの駆動力は、ギア31および最終減速ギア30を介して、車軸32に伝達され、駆動輪Wを回転させるようになっている。
【0018】一方、制御装置11は、図示しないCPU、RAM、ROM等からなるマイクロコンピュータを有するECU35を備えた構成となっている。ECU35には、エンジンEの回転数を検出するためのエンジン回転数センサS1、および、係合要素26,27の回転数を検出するためのクラッチ回転数センサS2の検出結果が入力され、これにより、エンジンEの回転数と、クラッチ28の入力側および出力側の回転数とを把握できるようになっている。
【0019】また、ECU35は、油圧制御装置25と接続されており、油圧制御装置25を介してCVT18の各側室22,23に供給される油圧を検出・制御できるようになっている。これにより、ECU35においてCVT18の変速比を把握するとともに、制御できるようになっている。
【0020】さらに、ECU35は、エンジンEの作動を制御するための燃料噴射量制御用アクチュエータ36やスロットル制御用アクチュエータ37に接続され、これらのアクチュエータを介してエンジンEを制御するようになっている。また、ECU35は、駆動/回生用モータMの動作を制御するモータ制御装置38に接続されるとともに、係合要素26,27の分離または結合を制御するためのクラッチ制御用アクチュエータ39に接続され、駆動/回生用モータMの回転作動を制御できるとともに、クラッチ28の結合・開放動作を制御できるようになっている。
【0021】さらに、駆動/回生用モータMは モータ制御装置38を介してバッテリ(蓄電装置)41に電気的に接続されている。バッテリ41には、バッテリ41の充電状態を検出可能なバッテリ容量センサ(充電状態検出手段)42が設けられており、このバッテリ容量センサ42の出力値は、ECU35に入力されるようになっている。
【0022】このハイブリッド自動車10においては、車両停止時には、エンジンEを停止させることにより、燃料消費量の低減を図ることができ、さらに、この状態から発進する際には、係合要素26,27を分離してクラッチ28を開放状態とし、駆動/回生用モータMを駆動させて、駆動/回生用モータMのみにより発進することができる。これにより、発進の際に、エンジンEの立ち上がりを待つ必要が無く、運転者の要求に応じた迅速な発進を実現することができる。
【0023】また、駆動/回生用モータMを駆動源として発進した際に、運転者が更に大きな駆動力を要求する場合には、エンジンEを始動するとともにクラッチ28を結合状態とすることにより、エンジンEの駆動力をCVT18およびクラッチ28を介して車軸32に供給することができ、これにより、運転者の要求に十分に応えることができる。
【0024】このように、駆動/回生用モータMのみによって走行している際にエンジンEを始動させて駆動力を発揮させるには、開放していたクラッチ28を結合状態とする必要があるが、この際、ECU35は、図1に示すようなフローチャートに基づき、係合要素26,27を結合させる。
【0025】まず、ステップS1において、クラッチ28の結合指令を、クラッチ制御アクチュエータ38(図2参照)に対して発するべきか否かの判断を行う。クラッチ結合指令を発するべきで無いとの判断が行われた際には、この制御を通過する。また、クラッチ結合指令を発するべきであるとの判断が行われた際には、ステップS2において、クラッチ28の入力および出力回転数、すなわち、係合要素26,27の回転数を検出し、ステップS3において、クラッチ28における入力回転数と出力回転数との差を演算する。
【0026】次に、ステップS4において、係合要素26,27を結合させるにあたっての許容回転数差を設定する。この許容回転数差は、クラッチ28の入力および出力側の回転数がほぼ一致し、クラッチ28を結合させても殆どショックが発生しないような回転数差であり、具体的には100rpm程度である。
【0027】ステップS5では、ステップS3で演算した回転数差の絶対値が許容回転数差である100rpmよりも大きいか否かを判定する。回転数差が100rpmよりも小さい場合には、ステップS7において、クラッチ制御用アクチュエータ39(図2参照)を作動させることによりクラッチ結合を開始する。
【0028】これに対し、回転数差が100rpmよりも大きい場合には、ステップS6で回転数差の正負を判定する。回転数差が正の場合には、クラッチ28の入力側回転数が出力側回転数よりも大きいことになるから、ステップS8およびS9において、エンジンEの回転数を低下させる制御およびCVT18の変速比を減少させる(Highレシオ側へ変速する)制御のいずれか一方または双方を行い、クラッチ28の入力側の回転数、すなわち、係合要素26の回転数を低下させる。
【0029】逆に、回転数差が負の場合には、クラッチ28の出力側回転数が入力側よりも大きいことになるから、ステップS10およびS11において、エンジンEの回転数を上昇させる制御およびCVT18の変速比を増加させる(Lowレシオ側へ変速する)制御のいずれか一方または双方を行い、クラッチ28の入力側の回転数、すなわち、係合要素26の回転数を上昇させる。
【0030】なお、ステップS8,S9またはステップS10,S11において、エンジンEの回転数およびCVT18の変速比のどちらをどの程度変化させるかについては、例えば、以下のようにして決定する。すなわち、ステップS6で回転数差が正と判断された場合、先ず運転者の要求する駆動力と車速からCVT18の目標変速比を決定し、実際の変速比が目標変速比よりもLow側にあれば、目標変速比を超えない範囲においてステップS9でHighレシオ側へ変速し、同時にステップS8でエンジン回転を低下させる。逆に実際の変速比が目標変速比よりもHigh側にあれば、ステップS9による変速は行わずに、ステップS8によりエンジン回転を低下させる。ステップS6で回転数差が負と判断された場合も同様で、実際の変速比が目標の変速比よりもHigh側にあれば、目標変速比を超えない範囲で、ステップS11でLow側へ変速し、同時にステップS10でエンジン回転を上昇させる。逆に実際の変速比が目標変速比よりもLow側にあれば、ステップS11による変速は行わずに、ステップS10によりエンジン回転を上昇させる。
【0031】そして、回転数差が100rpmよりも大きい間は、以上の制御を繰り返し、その間ステップS12においてクラッチ28の結合を禁止する。また、以上の制御を繰り返すことにより、回転数差が許容回転数差である100rpm以内となった場合には、ステップS7において、係合要素26,27の結合動作を開始することとする。
【0032】これにより、係合要素26,27の結合に先立ち、これら係合要素26,27の回転数差は、確実に許容回転数差である100rpm以下に制御され、その後に係合要素26,27が結合されるため、クラッチ28の結合にあたって発生することが懸念される不快なショックを確実に防止することができる。
【0033】以上のように、図1に示した制御によれば、係合要素26,27を結合させるにあたって、係合要素26,27間の回転数差が所定値(100rpm)以上である場合には、エンジンEの回転数およびCVT18の変速比のいずれか一方または双方を制御することにより、CVT18側に接続された係合要素26の回転数を調整し、回転数差が所定値(100rpm)以内となった場合に、係合要素26,27の結合動作を開始することとしたため、従来と異なり、クラッチ28を結合させる際に、エンジンEの回転数およびCVT18の変速比とが一定に定められることが無い。したがって、車両発進時の運転者の駆動力要求が大きいときに、エンジンEの回転数を上昇させ、高出力運転が可能な状態としたまま係合要素26,27の結合動作を行うことができ、運転者の駆動力要求を十分に満たすことが可能となる。また、運転者の駆動力要求が小さいときには、エンジンEの回転数の低い静かな状態で係合要素26,27の結合動作を行うことができる。これにより、走行快適性の向上を図ることができる。
【0034】なお、上記実施の形態において、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、他の構成を採用するようにしてもよい。例えば、上記実施の形態においては、ステップS4において設定される許容回転数差が一定値(100rpm)に決められていたが、これを変化させるようにしてもよい。
【0035】この場合、図1のステップS4の部分を、図3に示すフローチャートで置換するのが好適である。図3に示すフローチャートにおいては、まず、ステップS41において、クラッチ28において要求される伝達トルク容量が演算される。この伝達トルク容量の演算は、具体的には、以下のようにして行う。すなわち、まず、アクセル開度と車速から運転者の要求する駆動力を決定する。これに駆動輪(タイヤ)半径を乗じて駆動トルクとし、これを最終減速ギア30の減速比および伝達効率で除することによりクラッチの伝達容量が計算される。
【0036】次に、ステップS41において演算された伝達トルク容量に対応した許容回転数差を設定する。この許容回転数差の設定は、図中ステップS41において示すようなグラフで表されるデータテーブルをあらかじめ設定しておき、このデータテーブルに基づいて行う。このデータテーブルは、クラッチ28における伝達トルク容量(横軸)の増加に対して許容回転数差(縦軸)が単調に増加するような構成となっており、具体的には、例えば、伝達トルク容量が、7.5kgfmのときに、許容回転数差が75rpmに設定され、また、伝達トルク容量が15kgfmのときに、許容回転数差が100rpmに、伝達トルク容量が30kgfmのときに、許容回転数差が150rpmに設定されている。(なお、これらの値は、車両の重量、駆動輪半径等により種々異なる。)
【0037】このような構成を採用することにより、以下のような効果が得られる。すなわち、一般に運転者は、低負荷のクルーズ走行をしている場合には小さなショックでもこれを敏感に感じ、高負荷の加速走行等の場合には、多少のショックでもあまり気にならないので、高負荷走行、すなわち、伝達トルク容量が大きいときには、回転数差の所定値を大きく設定するようにしても、運転者の感じるショックは小さいと考えられる。したがって、上述のように、伝達トルク容量が大きいほど、許容回転数差が大に設定することとすれば、運転者がショックを感じない範囲内で、エンジンEの回転数制御やCVT18の変速比制御に要する時間や燃料を省略することができ、これにより、クラッチ28の結合動作を迅速に行い得るとともに、クラッチ28の結合制御に要する燃料を削減して燃料消費改善効果を向上させることができる。
【0038】[第二の実施の形態]次に、上述のハイブリッド自動車10において減速回生時にクラッチ28の制御を行う場合の実施の形態を説明する。上述した従来のハイブリッド自動車においては、減速時にクラッチ4を開放状態とすることにより、クラッチ4より上流側の要素、すなわち、無段変速機3やエンジン1といった摩擦抵抗や慣性質量として作用する部分を分離することができ、この状態で、電動機6あるいは駆動/回生用モータMを回転させることにより車体の運動エネルギーを余すところ無く電気エネルギーに変換(回生)することができる。
【0039】このように、減速時にクラッチを開放して運動エネルギーを回生する場合、車両の減速度は、電動機6において設定される回生出力で決まる。回生されたエネルギーは、バッテリ(蓄電装置)の充電に用いられるが、バッテリ(蓄電装置)の電気容量が100%(満充電状態)となり、電気エネルギーが受け入れなくなった場合には、電動機6の減速回生動作を禁止せざるを得なくなり、これにより車両の減速度が変化してしまう。一般に、運転者は、車両に一定の減速度を見込んだ状態で運転を行っているため、このように車両の減速度が変化することにより、運転操作性の低下を招く懸念が生ずる。
【0040】そこで、上述のハイブリッド自動車10の制御装置11においては、減速回生時における減速度が、蓄電装置の容量により変化させられることを回避し、これにより、良好な運転操作性を実現することを課題として、以下の手段を採用することとした。
【0041】すなわち、この場合、ハイブリッド自動車10の制御装置11は、内燃機関(エンジンE)と、無段変速機(CVT18)と、電動機(駆動/回生用モータM)と、前記電動機により発電された電気エネルギーを蓄電するための蓄電装置(バッテリ41)とを備え、前記内燃機関の出力軸が前記無段変速機の入力部(駆動側プーリ19)に接続され、前記無段変速機の出力部(被動側プーリ21)が、結合・分離自在な一対の係合要素(係合要素26,27)からなる係合部(クラッチ28)を介して前記電動機の出力軸に接続され、前記電動機の出力軸が、駆動輪(駆動輪W)に結合された駆動力伝達手段(最終減速ギア30)に対して接続されたハイブリッド自動車10に適用される制御装置11であって、前記蓄電装置の残容量を検出する蓄電装置残容量検出手段と、前記係合要素の結合および分離を制御する係合要素制御手段とを備えており、前記蓄電装置の残容量が所定値(例えば、満充電容量の95%)以上の場合には、前記電動機による回生発電を禁止するとともに、前記係合要素の分離を禁止することを特徴とする。
【0042】このようにしたために、ハイブリッド自動車10の制御装置11においては、電動機(駆動/回生用モータM)による回生発電が禁止された場合には、係合要素(係合要素26,27)が結合状態とされるために、電動機による回生制動力が無くても、係合要素の上流側に位置する無段変速機や内燃機関などが摩擦抵抗や慣性質量として作用することにより、制動力を確保できる。
【0043】以下に、ハイブリッド自動車10の制御装置11による減速時の制御内容についてを、図4に基づいて説明する。なお、ハイブリッド自動車10の動力伝達系の概略構成、および制御装置11の概略構成については、上記第一の実施の形態において説明したとおりである。
【0044】図4において、ステップS11は、車両の減速状態の判定部分であり、具体的には、アクセルペダルが操作されていない状態を検出し、この場合に、減速状態であるとの判断を行う。減速状態であるとの判断がなされた場合には、ステップS2に進み、それ以外の場合には、この制御を通過する。
【0045】ステップS12においては、バッテリ41の充電状態、すなわち、バッテリ41の残容量を検出する。このステップS12は、上記の蓄電装置残容量検出手段に相当する。そして、次のステップS13において、検出されたバッテリ41の残容量が、満充電に近い所定の値以上、具体的には満充電容量の95%以上か否かを判定する。
【0046】バッテリ41の残容量が95%以下の場合は、ステップS16において、駆動/回生用モータMによる回生動作を継続するとともに、ステップS17において、係合要素26,27を分離した状態を維持するようにする。これにより、バッテリ41の残容量が95%以下のときには、クラッチ28を開放して、駆動輪W側と、CVT18、前後進切り替え用プラネタリーギアセット13、およびエンジンE等の摩擦抵抗あるいは慣性質量として作用する部分とを分離することができ、車両の運動エネルギーを最大限に回収しつつ車両の減速度を維持することができる。
【0047】一方、バッテリ41の残容量が95%以上の場合には、このまま回生動作を継続すると、まもなく回生した電気エネルギーをバッテリ41が受け入れることが不可能となる。したがって、回生動作を禁止せざるを得なくなるとともに、駆動/回生用モータMによる回生制動力が失われることとなる。
【0048】そこで、この場合には、ステップS14において駆動/回生用モータMによる回生動作を禁止するとともに、ステップS15において係合要素26,27の分離を禁止し、係合要素26,27を結合状態に維持するようにする。これにより、クラッチ28の上流側に位置するCVT18、前後進切り替え用プラネタリーギアセット13、およびエンジンE等の摩擦抵抗あるいは慣性質量として作用する部分を駆動輪W側に結合させて、通常のエンジンブレーキと同じ効果を得ることができ、回生の禁止による減速度の減少を効果的に防止できる。なお、この場合、上述のステップS15およびS17は、上記の係合要素制御手段に相当する。
【0049】以上説明した実施の形態によれば、バッテリ41の残容量が所定値(95%)以上の場合には、駆動/回生用モータMによる回生発電を禁止するとともに、係合要素26,27の分離を禁止するようにしたため、駆動/回生用モータMによる回生制動力が無くても、CVT18やエンジンEを摩擦抵抗あるいは慣性質量として作用させることにより、制動力を確保することができ、したがって、回生作動が禁止されることにより車両の減速度が減少して運転操作性が低下することを防ぐことができる。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係るハイブリッド自動車の制御装置においては、係合要素を結合させるにあたって、係合要素間の回転数差が所定値以上である場合には、内燃機関の回転数および無段変速機の変速比のいずれか一方または双方を制御することにより、無段変速機側に接続された係合要素の回転数を調整し、回転数差が所定値以内となった場合に、係合要素の結合動作を開始するようにしたため、従来と異なり、係合部を結合させる際に、内燃機関の回転数および無段変速機の変速比と一定に定められることが無い。したがって、車両発進時の運転者の駆動力要求が大きいときに、内燃機関の回転数を上昇させ、高出力運転が可能な状態としたまま係合要素の結合動作を行うことができ、運転者の駆動力要求を十分に満たすことが可能となる。また、運転者の駆動力要求が小さいときには、内燃機関の回転数の低い静かな状態で係合要素の結合動作を行うことができる。これにより、走行快適性の向上を図ることができる。
【0051】請求項2に係るハイブリッド自動車の制御装置においては、伝達トルク容量が大きいほど、係合要素同士を結合する際の許容回転数差を大に設定することにしたため、運転者がショックを感じない範囲内で、内燃機関の回転数制御や無段変速比の変速比制御に要する時間や燃料を省略することができる。これにより、係合要素の結合動作を迅速に行い得るとともに、結合制御に要する燃料を削減して燃料消費改善効果を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年5月10日(1999.5.10)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外8名)
【公開番号】 特開2000−324610(P2000−324610A)
【公開日】 平成12年11月24日(2000.11.24)
【出願番号】 特願平11−129312