| 【発明の名称】 |
動力システムの故障検出方式 |
| 【発明者】 |
【氏名】▲鶴▼見 隆史
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| 【要約】 |
【課題】ハイブリッド車等の動力システムにおいて、推進用の電気モータに供給される相電流を阻害する故障の発生を検出する故障検出方式を提供すること。
【解決手段】バッテリ3の直流電力はインバータ200により3相交流電力に変換されて電気モータMに給電される。コントローラ100は、電気モータMの出力トルクが目標トルクとなるようにインバータ200を駆動制御する。電気モータMに供給される各相電流は電流センサーS10により検出されて比較回路104に与えられる。比較回路104は、検出された各相電流の値と電流リミット値算出回路103により算出された電流リミット値103Sとを比較し、相電流が異常に上昇したことを表す信号104Sを出力する。この信号104Sはカウンタ105でカウントされ、このカウント値に基づき故障の発生が判定される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両を走行させる動力機としての電気モータと、前記電気モータに多相電流を供給して該電気モータを駆動するモータ制御システムとを有し、前記電気モータの出力トルクが該電気モータが発生すべき目標トルクとなるよう前記多相電流の各相電流を変化させるべく構成された動力システムにおいて、前記多相電流の各相における異常な上昇電流を検出する異常電流検出手段と、前記異常電流検出手段により検出された異常な上昇電流の発生頻度に基づき故障を判定する故障判定手段と、を備えたことを特徴とする動力システムの故障検出方式。 【請求項2】 前記異常電流検出手段は、前記モータ制御システムから前記電気モータに供給される多相電流の各相電流をそれぞれ検出する電流センサーと、前記目標トルクと前記電気モータの回転数と前記電気モータに供給される電源電圧とに応じて、前記異常な上昇電流を検出する上での基準を与える参照値を算出する参照値算出回路と、前記電流センサーにより検出された各相電流の値と前記参照値とを比較する比較回路と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の動力システムの故障検出方式。 【請求項3】 前記故障判定手段は、前記比較回路による比較の結果に基づき前記異常な上昇電流の発生回数をカウントするカウンタを有し、前記カウンタのカウント値が、前記電気モータに供給される各相電流において偶発的に発生する異常な上昇電流の発生頻度を有意に超えたことを条件として、故障が発生した旨の判定を行うことを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の動力システムの故障検出方式。 【請求項4】 前記比較回路での比較結果に基づき、前記電気モータに供給される各相電流を制限する電流リミッタ回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の動力システムの故障検出方式。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電気モータを動力機として有する電気自動車やハイブリッド車などの車両に搭載される動力システムの故障検出方式に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、環境保護や省エネルギーなどの観点から、自動車の動力機として、エンジンのシリンダ内に燃料を直接的に噴射するいわゆる筒内直噴エンジンが開発されて実用化に至り、さらには、この種のエンジンと推進用の電気モータとを組み合わせた動力システムを搭載するハイブリッド車が注目されている。 【0003】このハイブリッド車の一種に、エンジンの出力を補助する補助駆動源として電気モータを使用するパラレルハイブリッド車がある。このパラレルハイブリッド車は、例えば、特開平7−123509号公報に開示されているように、加速時においては電気モータによってエンジンの出力をアシストし、減速時においては減速回生によってバッテリ等への充電を行う等、様々な制御を行い、バッテリの残容量を確保しつつ、ドライバーの要求を満足できるようになっている。 【0004】図5に、このハイブリッド車に搭載される動力システムの主要部を示す。同図において、符号3は、電気モータMを駆動するためのバッテリーであり、直流電力を発生する。符号200は、バッテリー3から給電される直流電力を3相交流電力に変換するインバータであり、後述するコントローラ800からの信号UL,UH,VL,VH,WL,WHによりそれぞれ導通制御されるトランジスタ(IGBT)201,202,203,204,205,206を備える。 【0005】ここで、トランジスタ201および202は、信号ULおよびUHにより相補的に導通制御され、これらの接続点からU相の交流電力を発生する。また、トランジスタ203および204は、信号VLおよびVHにより相補的に導通制御され、これらの接続点からV相の交流電力を発生する。さらに、トランジスタ205および206は、信号WLおよびWHにより相補的に導通制御され、これらの接続点からW相の交流電力を発生する。 【0006】符号Mは、インバータ200から3相交流電力が給電されて駆動される例えばDCブラシレス型の電気モータ、符号S8はバッテリー3の出力電流を検出する電流センサー、符号S9はバッテリー10の出力電圧を検出する電圧センサー、符号70は電気モータ30の磁極位置を検出する磁極位置センサー、符号800は各センサーからの信号に基づいてインバータ200を駆動制御するための信号UL,UH,VL,VH,WL,WHを生成するコントローラである。以下の説明において、電気モータMを駆動制御するためのインバータ200やコントローラ800などの制御系をモータ制御システムと称する。 【0007】以下、このモータ制御システムによる電気モータMの制御動作を説明する。電気モータMを電圧入力により駆動する場合、モータ制御システムをなすコントローラ800は、電気モータMのトルク制御を行なう。即ち、コントローラ800は、電圧センサーS9、電流センサーS8、および磁極位置センサー70からの各信号を入力し、バッテリー3から供給される電流および電圧と、電気モータMの回転数とをモニタする。そして、外部より指示された目標トルクと電気モータMの回転数とに応じてバッテリー3から供給されるべき目標電力を求め、モニタされた電流と電圧との積(すなわち電力)が目標電力と一致するようにインバータ200に出力する信号UL,UH,VL,VH,WL,WHの各電圧値を調整する。これにより、インバータ200の各トランジスタを流れる電流(すなわち各相電流)が制御される結果、電気モータMの出力トルクが目標トルクとなるように、トルク制御が行われる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上述の動力システムでは、厳重な品質管理の下に製造されるにもかかわらず、長年の使用により各部品の経時的劣化が徐々に進み、耐用年数を超えた場合、電気モータMに供給される各相電流が阻害されるようなモードの故障が発生する場合がある。具体的な故障例としては、コントローラ800からインバータ200のゲートに信号を供給するためのゲートドライブライン810や、インバータ200から電気モータMに3相交流電力を供給するための3相線210の導通状態が不良となったり、断線する場合が考えられる。また、インバータ200を構成するトランジスタが導通不良となったり、電気モータMの巻き線が断線したり、電気モータMの永久磁石が減磁するなどの故障例も考えられる。 【0009】ここで、上述の動力システムにおいて、電気モータMに供給される例えばU相の電流を阻害するような故障が発生した場合、上述のモータ制御システムによれば、U相の電流が阻害された状況下で目標トルクを発生するように、残りのV相およびW相の電流を増加させるため、V相およびW相の各電流値が異常に上昇することとなる。このようにトルク制御が行われると、見かけ上、電気モータMの出力トルクには大きな変化が現れず、車両のドライバーがその故障に気づかない場合が多いという問題がある。また、この種の故障が長期間にわたって放置されると、電気モータ30に供給される異常電流に起因して故障個所が拡大するという問題もある。 【0010】この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、電気自動車やハイブリッド車などの動力システムにおいて、推進用の電気モータに供給される電流を阻害するような故障の発生を検出する動力システムの故障検出方式を提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】この発明は、上記目的を達成するため、以下の構成を有する。すなわち、この発明にかかる動力システムの故障検出方式は、車両を走行させる動力機としての電気モータ(例えば後述する電気モータMに相当する構成要素)と、前記電気モータに多相電流を供給して該電気モータを駆動するモータ制御システム(例えば後述するバッテリ3、トルク制御処理回路101、インバータ200、電流センサーS8、電圧センサーS9に相当する構成要素)とを有し、前記電気モータの出力トルクが該電気モータが発生すべき目標トルクとなるよう前記多相電流の各相電流を変化させるべく構成された動力システムにおいて、前記多相電流の各相における異常な上昇電流を検出する異常電流検出手段(例えば後述する電流センサーS10、電流リミット値算出回路103、比較回路104に相当する構成要素)と、前記異常電流検出手段により検出された異常な上昇電流の発生頻度に基づき故障を判定する故障判定手段(例えば後述するカウンタ105、故障判定処理部(ステップS1〜S4)に相当する構成要素)と、を備えたことを特徴としており、電気モータに供給される相電流において発生する異常な上昇電流を検出して故障判断することにより、推進用の電気モータに供給される一部の相電流を阻害する故障の発生を検出するものである。 【0012】すなわち、この発明によれば、モータ制御システムは、電気モータが目標トルクを発生するように各相電流を制御する。ここで、電気モータに供給される多相電流のうちの或る相電流を阻害する故障が発生すると、この相電流は減少し、電気モータの出力トルクは目標トルクから低下する。このとき、モータ制御システムは、他の相電流を増加させることにより、電気モータの出力トルクを目標トルクに維持するように動作する。この結果、一部の相電流が異常に上昇する。したがって、この異常な上昇電流を検出すれば、故障の発生を検出することが可能となる。また、相電流の異常な上昇は、故障以外のノイズなどの他の要因によっても希に発生する場合があるが、この発明によれば、異常な上昇電流の発生頻度から故障に起因して発生する異常な上昇電流を把握して故障を判定する。 【0013】また、前記異常電流検出手段は、前記モータ制御システムから前記電気モータに供給される多相電流の各相電流をそれぞれ検出する電流センサー(例えば後述する電流センサーS10に相当する構成要素)と、前記目標トルクと前記電気モータの回転数と前記電気モータに供給される電源電圧とに応じて、前記異常な上昇電流を検出する上での基準を与える参照値(例えば後述する電流リミット値103Sに相当する要素)を算出する参照値算出回路(例えば後述する電流リミット値算出回路103に相当する構成要素)と、前記電流センサーにより検出された各相電流の値と前記参照値とを比較する比較回路(例えば後述する比較回路104に相当する構成要素)と、を備えたことを特徴とする。 【0014】この構成によれば、電流センサーによって検出された電気モータの各相電流の値を、異常な上昇電流を検出する上での基準を与える参照値と比較することにより、異常な上昇電流を検出する。ここで、参照電流値は、例えば、全ての相電流が阻害されない状態下において各相電流が設定される最大値と、一部の相電流が阻害された場合に他の相電流が設定される最小値との間に設定される。 【0015】さらに、前記故障判定手段は、前記比較回路による比較の結果に基づき前記異常な上昇電流の発生回数をカウントするカウンタ(例えば後述するカウンタ105に相当する構成要素)を有し、前記カウンタのカウント値が、前記電気モータに供給される各相電流において偶発的に発生する異常な上昇電流の発生頻度を有意に超えたことを条件として、故障が発生した旨の判定を行うこと(例えば後述する故障判定処理部が実行するステップS1〜S4に相当する機能)を特徴とする。 【0016】この構成によれば、異常電流検出手段により検出された異常な上昇電流の発生回数がカウントされ、このカウント値が、偶発的に発生する異常な上昇電流の発生頻度を有意に超えた場合、故障の発生が検出される。したがって、故障以外の偶発的な要因によって異常な上昇電流が発生しても、故障が発生した旨の判定が行われず、故障の発生に関する誤判定を回避することが可能となる。 【0017】さらにまた、前記比較回路での比較結果に基づき、前記電気モータに供給される各相電流を制限する電流リミッタ回路(例えば後述する電流リミッタ回路102に相当する構成要素)をさらに備えたことを特徴とする。 【0018】この構成によれば、電気モータに供給される相電流が異常に上昇した場合、この相電流が制限される。したがって、この相電流の制限量を適切に設定すれば、異常な電流が流れても、上昇した相電流に起因して故障が拡大することがなくなる。つまり、モータ制御システムは、或る相電流が阻害される故障が発生した場合、電気モータの出力トルクが目標トルクとなるように他の相電流を上昇させるが、この結果、電気モータに過大な電流が流れ、故障が拡大する場合がある。そこで、異常な上昇電流が発生した場合、故障を拡大するような過大な電流の発生を電流リミッタ回路により抑制する。 【0019】なお、この発明において、「電流の上昇」とは、電流の絶対値の増加を意味するものする。したがって、電流が正方向に増加した場合はもちろんのこと、負方向に増加した場合も「電流の上昇」の概念に含まれる。 【0020】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。なお、各図において前述の図5に示す要素と共通する要素には同一符号を付し、その説明を適宜省略する。図1に、この実施の形態にかかる故障検出方式が適用されたパラレルハイブリッド車に搭載される動力システムの全体構成を示す。動力機としてのエンジンE及び電気モータMの両方の駆動力は、オートマチックトランスミッションあるいはマニュアルトランスミッションよりなるトランスミッションTを介して駆動輪たる前輪Wf,Wfに伝達される。また、ハイブリッド車の減速時に前輪Wf,Wf側から電気モータM側に駆動力が伝達されると、電気モータMは発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収する。なお、駆動用の電気モータとは別に、発電機を備える構成としてもよい。 【0021】電気モータMの駆動及び回生作動は、モータECU1からの制御指令を受けてパワードライブユニット2により行われる。このパワードライブユニット2には、電気モータMと電気エネルギーの授受を行う高圧系のバッテリ3が接続されており、バッテリ3は、例えば、複数のセルを直列に接続したモジュールを1単位として更に複数個のモジュールを直列に接続したものである。また、ハイブリッド車両には、各種補機類を駆動するための12ボルトの補助バッテリ4が搭載されており、この補助バッテリ4はバッテリ3にダウンバータ5を介して接続される。FIECU11により制御されるダウンバータ5は、バッテリ3の電圧を降圧して補助バッテリ4を充電する。 【0022】モータECU1は、後述のFIECU11の管理の下に電気モータMの駆動状態を制御するためのもので、バッテリ3から供給される電流および電圧をそれぞれ検出する電流センサーS8および電圧センサーS9からの各信号と、パワードライブユニット2から電気モータMに供給される3相電流を検出する電流センサーS10からの信号とを入力し、パワードライブユニット2を駆動制御する。 【0023】FIECU11は、前記モータECU1及び前記ダウンバータ5に加えて、エンジンEへの燃料供給量を制御する燃料供給量制御手段6の作動と、スタータモータ7の作動の他、点火時期等の制御を行う。そのために、FIECU11には、従動輪たる後輪Wr,Wrの回転数に基づいて車速を検出する車速センサS1からの信号と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサS2からの信号と、トランスミッションTのシフトポジションを検出するシフトポジションセンサS3からの信号と、ブレーキペダル8の操作を検出するブレーキスイッチS4からの信号と、クラッチペダル9の操作を検出するクラッチスイッチS5からの信号と、スロットル開度を検出するスロットル開度センサS6からの信号と、吸気管負圧を検出する吸気管負圧センサS7からの信号とが入力される。尚、図1中、符号21はCVT制御用のCVTECUを示し、符号31はバッテリ3を保護し、バッテリ3の残容量を算出するバッテリECUを示す。 【0024】図2に、上述の図1に示す動力システムの構成要素のうち、この実施の形態にかかる故障検出方式に関連する要素を抽出して示す。図2において、符号Su,Sv,Swは、3相線210を介してインバータ200から電気モータMに供給される3相交流電力の各相電流を検出するための電流センサーであって、これらは電流センサーS10を構成する。 【0025】符号200は、パワーユニットドライブ2に内蔵されたインバータであり、バッテリ3の直流電力を3相交流電力に変換して電気モータMに供給するものである。符号100は、モータECU1に内蔵されたコントローラであり、電気モータMのトルク制御に関する処理を実行するトルク制御処理回路101に加えて、この発明にかかる故障検出を行うための電流リミッタ回路102、電流リミット御値算出回路103、比較回路104、およびカウンタ105を有する。 【0026】ここで、トルク制御処理回路101は、外部から指定された目標トルクTに応じて、インバータ200を駆動制御するための信号UL,UH,VL,VH,WL,WHを、ゲートドライブライン810を介してインバータ200に与えることにより、電気モータMのトルク制御を行うものであり、前述の図5に示すコントローラ800と同等の機能を有する。 【0027】電流リミッタ回路102は、ゲートドライブライン810上に設けられ、電気モータMに供給される各相電流が異常に上昇した場合に、インバータ200に与えられる信号UL,UH,VL,VH,WL,WHの電圧値を制限することにより、電気モータMに供給される電流を制限するためのものである。電流リミット値算出回路103は、電気モータMに供給される各相電流の異常な上昇を検出して電気モータMに供給される電流を制限する上での基準を与える電流リミット値103Sを算出するためのものである。 【0028】なお、この実施の形態において、「電流の上昇」とは、電流の絶対値の増加を意味するものする。したがって、電流が正方向に増加した場合はもちろんのこと、負方向に増加した場合も「電流の上昇」の概念に含まれる。 【0029】比較回路104は、参照電流値103Sと電流センサーS10により検出された相電流値とを比較して、相電流値が参照電流値を超えたか否かを示す信号104Sを出力するものである。カウンタ105は、比較回路104からの信号104Sに基づき、電気モータMに供給される相電流が異常に上昇した回数をカウントするものである。 【0030】また、図示しないが、コントローラ100は、カウンタ105のカウント値に基づき故障の判定処理を実行するための故障判定処理部を備えている。この故障判定処理部には、故障を判断するための前提条件を与える故障検知条件が予め設定されており、この故障検知条件が満足された場合にカウンタ105のカウント値に基づき判定を行うように構成されている。この実施の形態では、故障検知条件として、電気モータMの回転数が2000rpm以上であることと、その出力トルクが1kgfm以上であることの2つの条件が設定されている。 【0031】また、この故障判定処理部には、故障の発生を判断する上での基準を与えるためのしきい値が設定されている。このしきい値は、電気モータMに供給される各相電流における異常な上昇電流の発生頻度が、ノイズなどの故障以外の要因に起因して偶発的に発生する異常な上昇電流の発生頻度を有意に超えたことの指標となるものである。このしきい値は、例えば、この発明が適用される動力システムにおいて、或る一定期間での異常な上昇電流の発生回数を観測することにより実験的に取得される。 【0032】以下、この実施の形態にかかる故障検出方式の動作について、まず、故障が存在しない場合を説明する。コントローラ100のトルク制御処理回路101は、外部から指示された目標トルクTに基づき、この目標トルクTを得る上でバッテリ3から供給されるべき目標電力を求める。そして、図3(a)に例示するように、電圧センサーS9と電流センサーS8とによりそれぞれ検出された電圧値と電流値との積が目標電力と一致する方向に、各信号UL,UH,VL,VH,WL,WHの電圧を調整してインバータ200のゲートに印加し、電気モータMのトルク制御を行なう。 【0033】一方、電流リミット値算出回路103は、電気モータMに供給される相電流の異常な上昇を判断する上での基準を与える電流リミッタ値103Sを算出する。ここで、電気モータMに供給される相電流は、発生すべき目標トルクT、電気モータMの回転数R、バッテリ3の電源電圧VBに応じて異なる。すなわち、目標トルクTが大きく設定された状態では、各相電流は増加され、目標トルクTが小さく設定された状態では、各相電流は抑えられる。また、目標トルクは電気モータMの回転数に応じて設定されるので、回転数に応じて各相電流も変化する。さらに、電気モータMの出力トルクは、電気モータMに供給される電力(電流と電圧との積)に応じて定まるので、バッテリ3の電源電圧に応じて相電流も変化する。 【0034】このように、通常時の動作状態において、目標トルクT、回転数R、電源電圧VBに応じて相電流が常に変化している。このため、電気モータMに供給される相電流の上昇が異常かどうかについての判断は、目標トルクTや回転数Rなどを考慮する必要がある。そこで、電流リミット値算出回路103は、目標トルクTと電気モータMの回転数Rと電源電圧VBとに基づき、相電流の上昇が異常かどうかの判断の基準を与える電流リミッタ値103Sを算出する。 【0035】比較回路104は、電流リミット値算出回路103により算出された電流リミット値103Sと各電流センサーSu,Sv,Swにより検出された各相電流値とを比較し、検出された相電流値が、電流リミット値103Sを超えたか否かを表す信号104Sを出力する。いま、故障は存在しないので、電流センサーS10により検出された各相電流の値は電流リミット値103Sを超えることがなく、この旨を表す信号104Sが出力される。以下の説明において、電流センサーS10により検出された相電流が電流リミット値103Sを超えた場合、信号104Sが論理値「1」を示し、相電流が電流リミット値103Sを超えていない場合、信号104Sが論理値「0」を示すものとする。 【0036】電流リミッタ回路102は、比較回路104から、相電流値が電流リミット値103Sを超えていない旨の論理値「0」を示す信号104Sを受けると、トルク制御処理回路101から出力される信号UL,UH,VL,VH,WL,WHを制限することなく、そのままインバータ200に与える。カウンタ105は、比較回路104から信号104Sを入力して、相電流値が電流リミット値103Sを超えている旨を表す論理値「1」をカウントする。 【0037】すなわち、カウンタ105は、図4(a)に示すように、信号104Sの論理値「1」を入力すると、それまでのカウント値に「1」を加算し、これを新たなカウント値とすることにより、信号104Sの論理値「1」を累積してカウント値とする(ステップS)。図4(a)に示すフローは、信号104Sとして比較回路104から論理値「1」が出力された場合に随時実行されるようにルーチン化されている。いま、故障は存在しないので、信号104Sは論理値「0」に固定され、カウンタ105のカウント値はゼロを維持する。 【0038】コントローラ100の図示しない故障判定処理部は、以下に説明するように、図4(b)に示すフローに従って、一定時間毎にカウンタ105のカウント数に基づき故障の発生を判定するための処理を実行する。 ステップS1:まず、電気モータMの回転数Rとその出力トルクが故障検知条件を満足しているか否かを判定する。いま、故障検知条件として、電気モータMの回転数が2000rpm以上であることと、出力トルクが1kgfm以上であることの2つの条件が設定されているので、これらの各条件が満足されているかどうかが判定される。 【0039】ステップS2:ここで、故障検知条件が満足されている場合(ステップS1:YES)、カウンタ105のカウント値が、故障の発生を判断する上での指標を与えるしきい値以上か否かを判定する。 ステップS3:カウント値がこのしきい値以上である場合(ステップS2:YES)、故障が発生したものと確定し、故障が発生した旨の判定を行う。 【0040】ステップS4:また、上述のステップS1において故障検知条件が満足されていない場合(ステップS1:NO)、またはステップS2においてカウント値がしきい値未満である場合(ステップS2:NO)には、カウンタ105のカウント値がゼロにリセットされ、この処理が一旦終了する。上述のステップS1からS4の一連の処理は、例えば100msecの一定時間毎に実行されるようにルーチン化されており、この処理は一定時間の間隔をおいて、繰り返し実行される。 【0041】上述の図4(b)に示す処理が実行される過程において、カウンタ105は一定時間ごとにリセットされるので、結局のところ、カウンタ105のカウント値は、一定期間での異常な上昇電流の発生回数を示す。この実施の形態では、100msec毎に図4(b)に示す処理を実行するものとしたが、この処理の繰り返し周期は、例えば、上述のしきい値を取得する際に設定される期間(異常な上昇電流の発生回数を観測するための期間)と同一に設定される。以上により、カウンタ105のカウント値に基づき、図示しない故障判定処理部による故障判定が行われる。 【0042】次に、図2において、3相線210を構成するV相の配線が断線した場合を例として、この実施の形態にかかる故障検出方式の動作を具体的に説明する。この場合、図3(b)に示すように、電気モータMに供給される3相電流のうち、V相の電流が阻害され、電気モータMの出力トルクが低下しようとする。このとき、トルク制御処理回路101は、この出力トルクが目標トルクに維持されるように、U相およびW相の各相電流を上昇させる。 【0043】ここで、図3(b)に示すように、U相およびW相の電流が、電流リミット値103Sで特定される電流しきい値TH(またはしきい値TL)を超えると、比較回路104は、信号140Sとして論理値「1」を出力する。これを入力する電流リミッタ回路102は、信号UL,UH,VL,VH,WL,WHの電圧値を下げ、インバータ200から電気モータMに供給される電流が過剰とならないように制限する。したがって、この場合、電気モータMのトルク制御は、電流リミッタ回路102により電気モータMに供給される電流が制限された状態で行われることとなる。 【0044】また、比較回路104は、U相およびW相の電流値が電流しきい値THを超える都度、信号104Sとして論理値「1」を出力し、カウンタ105のカウント値を進める。図示しない故障判定処理部は、カウンタ105のカウント値が、故障の発生を判断するための基準を与えるしきい値を超えると、電気モータMに供給される電流を阻害する故障が発生したものと判断し、故障が検出される。この検出結果は、例えばドライバーに故障の発生を報知するなどの各種の警告処理に利用される。 【0045】上述の実施の形態にかかる故障検出方式によれば、推進用の電気モータMに供給される或る相電流が阻害されると他の相電流が上昇することに着目し、この相電流の上昇を検出して故障を判定するようにしたので、推進用の電気モータMに供給される相電流を阻害するモードの故障の発生を検出することができる。したがって、電気モータがトルク制御された状態であっても、ドライバーが故障の発生を早期に知ることが可能となる。 【0046】また、上述の実施の形態では、3相線210が断線した場合を例として故障の検出動作を説明したが、この実施の形態にかかる故障検出方式によれば、3相線210の断線に限らず、ゲートドライブライン810が断線したり、インバータ200を構成する各トランジスタ(IGBT)が導通不良となった場合や、電気モータMのモータ巻き線が断線したり、電気モータの永久磁石が減磁した場合などのように、電気モータMの出力トルクの低下を招くような一切の故障の発生を検出することができる。 【0047】なぜならば、この種の動力システムでは、電気モータの出力トルクが目標トルクとなるように電気モータMに供給される電流が制御され、出力トルクの低下が生じると、電気モータに供給される電流が上昇するからである。例えば、ある相の電流が供給不能となった場合、インバータ200に入力される電力が目標値と一致するようにトルク制御が行われ、残りの相の電流値が結果的に正常値よりも増加する。また、電気モータMの永久磁石が減磁した場合にも、インバータの入力電力が目標値と一致するようにトルク制御が行われる結果、必要な出力トルクが得られる。このとき、トルク定数も変化するため正常値よりも多くの相電流を流す必要があり、相電流が上昇される。したがって、このような現象が起きた場合、電流リミッタ回路102が作動し、その単位時間あたりの作動回数を確認することにより、故障の有無を判断することが可能となる。 【0048】また、上述の実施の形態では、一部の相電流が上昇する故障例について説明したが、電気モータMの内部に故障原因が存在する場合には、トルク制御が行われる結果、全ての相の電流値が上昇する傾向を示す場合がある。したがって、この場合、全ての相電流が異常に上昇したことを検出することにより、故障部位を特定することが可能となる。同様にして、電流が異常に上昇した部位を解析して故障部位を割り出し、故障の発生部位を表示させるように構成することも可能である。 【0049】以上、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば上述の実施の形態では、電流リミッタ回路102を設けて、相電流が異常に上昇した場合に、電気モータMに供給される電流を制限するようにしたが、電気モータに供給される電流の上昇が特に故障を拡大する性質のものでない場合には、電流リミッタ回路102を省いてもよく、必要に応じて電流リミッタ回路102を設ければよい。 【0050】また、上述の実施の形態では、電気モータMに3相交流電力を供給するように構成された動力システムについて説明したが、これに限定されることなく、多相の交流電力を電気モータに供給するように構成された動力システムあればよい。さらに、上述の実施の形態では、電流リミット値算出回路103は、目標トルクT、回転数R、および電源電圧VBに基づいて電流リミット値103Sを算出するものとしたが、これに限定されることなく、この発明を適用しようとする動力システムの特性に応じて電流リミット値を適切に設定すればよい。さらにまた、上述の実施の形態では、電流リミッタ回路102を独立に設けるものとしたが、トルク制御処理回路101の機能として実現してもよい。 【0051】 【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、以下の効果を得ることができる。すなわち、電気モータの出力トルクが該電気モータが発生すべき目標トルクとなる方向に多相電流の各相電流を変化させるように構成された動力システムにおいて、前記多相電流の各相における異常な上昇電流を検出し、検出された異常な上昇電流の発生頻度に基づき故障を判定するようにしたので、電気自動車やハイブリッド車などの動力システムにおいて、推進用の電気モータに供給される電流を阻害するモードの故障の発生を検出することができる。 【0052】また、電気モータに供給される多相電流の各相電流をそれぞれ検出し、目標トルクと電気モータの回転数と電気モータに供給される電源電圧とに応じて、異常な上昇電流を検出する上での基準を与える参照値を算出し、検出された各相電流の値と前記参照値とを比較するようにしたので、電気モータに供給される相電流の異常な上昇を検出することが可能となる。 【0053】各相電流の値と前記参照値との比較の結果に基づき異常な上昇電流の発生回数をカウントし、そのカウント値が、電気モータに供給される各相電流において偶発的に発生する異常な上昇電流の発生頻度を有意に超えたことを条件として、故障が発生した旨の判定を行うようにしたので、故障に起因した相電流の上昇を判別することができる。したがって、故障の発生に関する誤判定を回避しながら故障の発生のみを検出することが可能となる。 【0054】さらに、各相電流の値と前記参照値との比較の結果に基づき、電気モータに供給される各相電流を制限するようにしたので、故障に起因して上昇する電流が原因となって、故障が拡大することを防止することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005326 【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年5月7日(1999.5.7) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100064908 【弁理士】 【氏名又は名称】志賀 正武 (外8名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−324602(P2000−324602A) |
| 【公開日】 |
平成12年11月24日(2000.11.24) |
| 【出願番号】 |
特願平11−127789 |
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