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【発明の名称】 ハイブリッド車の動力装置
【発明者】 【氏名】天野 正弥

【氏名】多賀 豊

【氏名】中村 誠志

【氏名】田端 淳

【要約】 【課題】電動機からの動力をトルクコンバータを介して駆動軸に出力するハイブリッド車の動力装置において、坂路発進などの際に車両がずり下がらないようにすると共に装置のエネルギ効率を向上させる。

【解決手段】アクセルポジションAPがオフでエンジン運転フラグFEが値0で車速Vの絶対値が閾値Vr未満のときは(S100〜S106)、ブレーキ油圧PBを車両の現在位置の勾配θに基づいて設定された基準油圧Prefと比較し(S108〜S114)、基準油圧Pref以上のときには、ブレーキによる制動力によって車両はずり下がらずに停止していると判定してモータの運転を停止し(S118)、基準油圧Pref未満のときには勾配θとブレーキ油圧PBとに基づいてモータの目標回転数Nm*を設定し(S116)、モータからトルクコンバータを介して駆動軸にクリープトルクを出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内燃機関からの動力と電動機からの動力とをトルクコンバータを介して駆動輪に接続された駆動軸に各々独立に出力可能なハイブリッド車の動力装置であって、前記内燃機関の運転が停止されている状態を検出する運転停止状態検出手段と、アクセルペダルの踏み込み状態を検出する踏み込み状態検出手段と、前記駆動軸の回転数を検出する回転数検出手段と、前記駆動軸に作用している制動力を検出する制動力検出手段と、前記運転停止状態検出手段により前記内燃機関の運転が停止されている状態が検出されると共に前記踏み込み状態検出手段により前記アクセルペダルが踏み込まれていない状態が検出され、かつ、前記回転数検出手段により検出された回転数が所定回転以下であるとき、前記制動力検出手段により検出される制動力に基づいて前記電動機の回転数を制御する制御手段とを備えるハイブリッド車の動力装置。
【請求項2】 請求項1記載のハイブリッド車の動力装置であって、前記制御手段は、前記制動力検出手段により検出される制動力に基づいて目標回転数を設定する目標回転数設定手段と、該設定された目標回転数で前記電動機が回転するよう該電動機を駆動制御する駆動制御手段とを備えるハイブリッド車の動力装置。
【請求項3】 前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が所定値以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該所定値未満のときには所定回転数を前記目標回転数に設定する手段である請求項2記載のハイブリッド車の動力装置。
【請求項4】 前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が所定値以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該所定値未満のときには該制動力が大きくなるほど小さな回転数を前記目標回転数に設定する手段である請求項2記載のハイブリッド車の動力装置。
【請求項5】 請求項1記載のハイブリッド車の動力装置であって、該ハイブリッド車の走行位置または停止位置の勾配を検出または推定する勾配検出推定手段を備え、前記制御手段は、前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配にも基づいて前記電動機の回転数を制御する手段であるハイブリッド車の動力装置。
【請求項6】 請求項5記載のハイブリッド車の動力装置であって、前記制御手段は、前記制動力検出手段により検出される制動力と前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配とに基づいて目標回転数を設定する目標回転数設定手段と、該設定された目標回転数で前記電動機が回転するよう該電動機を駆動制御する駆動制御手段とを備えるハイブリッド車の動力装置。
【請求項7】 前記目標回転数設定手段は、前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配に基づいて基準制動力を設定する基準制動力設定手段を備え、該設定された基準制動力と前記制動力検出手段により検出される制動力とに基づいて前記目標回転数を設定する手段である請求項6記載のハイブリッド車の動力装置。
【請求項8】 前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が前記基準制動力以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該基準制動力未満のときには所定回転数を前記目標回転数に設定する手段である請求項7記載のハイブリッド車の動力装置。
【請求項9】 前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が前記基準制動力以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該基準制動力未満のときには該制動力が大きくなるほど小さな回転数を前記目標回転数に設定する手段である請求項7記載のハイブリッド車の動力装置。
【請求項10】 前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が前記基準制動力以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該基準制動力未満のときには前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配が大きくなるほど大きな回転数を前記目標回転数に設定する手段である請求項7記載のハイブリッド車の動力装置。
【請求項11】 前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が前記基準制動力以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該基準制動力未満のときには、該制動力が大きくなるほど小さな回転数となる関係と前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配が大きくなるほど大きな回転数となる関係とに基づいて前記目標回転数に設定する手段である請求項7記載のハイブリッド車の動力装置。
【請求項12】 前記駆動制御手段は、前記目標回転数に値0が設定されたときは前記電動機の運転を停止する手段である請求項3,4,8,9,10,11のいずれか記載のハイブリッド車の動力装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハイブリッド車の動力装置に関し、詳しくは、内燃機関からの動力と電動機からの動力とをトルクコンバータを介して駆動輪に接続された駆動軸に各々独立に出力可能なハイブリッド車の動力装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の動力装置としては、電動機からの動力により駆動する電気自動車の動力装置であって、車両が停車あるいは停車前後の駆動力制御時にブレーキペダルの踏み込み量に基づいて電動機から駆動軸に出力するトルクを制御するものが提案されている(例えば、特開平7−154905号公報など)。この装置では、車両が確実に停止している場合には電動機から駆動軸に出力するトルクを値0とし、そうでない場合にはブレーキペダルの踏み込み量が大きくなるほど電動機から駆動軸に出力するトルクを小さくして、例えば車両が坂路発進するときなどに後方へずり下がるのを防止している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、こうした装置の構成を、内燃機関からの動力と電動機からの動力とをトルクコンバータを介して駆動輪に接続された駆動軸に各々独立に出力可能なハイブリッド車の動力装置に適用しても、坂路発進する際に車両が後方へずり下がる場合を生じるという問題があった。これは、従来例の動力装置との構成の相違、即ち、電動機からの動力を直接に駆動軸に出力する構成と電動機からの動力をトルクコンバータを介して駆動軸に出力する構成との相違に基づくものと考えられる。
【0004】本発明のハイブリッド車の動力装置は、電動機からの動力をトルクコンバータを介して駆動軸に出力する構成でも坂路発進などの際に車両がずり下がらないようにすることを目的の一つとする。また、本発明のハイブリッド車の動力装置は、上述の目的を達成すると共にエネルギ効率の向上を目的の一つとする。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本発明のハイブリッド車の動力装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0006】本発明のハイブリッド車の動力装置は、内燃機関からの動力と電動機からの動力とをトルクコンバータを介して駆動輪に接続された駆動軸に各々独立に出力可能なハイブリッド車の動力装置であって、前記内燃機関の運転が停止されている状態を検出する運転停止状態検出手段と、アクセルペダルの踏み込み状態を検出する踏み込み状態検出手段と、前記駆動軸の回転数を検出する回転数検出手段と、前記駆動軸に作用している制動力を検出する制動力検出手段と、前記運転停止状態検出手段により前記内燃機関の運転が停止されている状態が検出されると共に前記踏み込み状態検出手段により前記アクセルペダルが踏み込まれていない状態が検出され、かつ、前記回転数検出手段により検出された回転数が所定回転以下であるとき、前記制動力検出手段により検出される制動力に基づいて前記電動機の回転数を制御する制御手段とを備えることを要旨とする。
【0007】この本発明のハイブリッド車の動力装置では、運転停止状態検出手段により内燃機関の運転が停止されている状態が検出されると共に踏み込み状態検出手段によりアクセルペダルが踏み込まれていない状態が検出され、かつ、回転数検出手段により検出された回転数が所定回転以下であるとき、制御手段が制動力検出手段により検出される駆動軸に作用している制動力に基づいてトルクコンバータを介して駆動軸に動力を出力可能な電動機の回転数を制御する。電動機を運転すると、電動機からの動力はトルクコンバータを介して駆動軸にトルクとして出力され、電動機の回転数の変更は駆動軸に出力されるトルクの変更として表われる。この結果、駆動軸に作用している制動力に基づいて電動機の回転数を制御することにより適切なトルクを駆動軸に出力することができ、坂路発進などの際のずり下がりなども防止することができる。なお、「所定回転数以下」には車両が前進しているときにおける駆動軸の回転数が所定回転数以下の場合を含むのは勿論、車両が後進しているときにおける駆動軸の回転数が所定回転数以下の場合も含まれる。
【0008】本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記制御手段は、前記制動力検出手段により検出される制動力に基づいて目標回転数を設定する目標回転数設定手段と、該設定された目標回転数で前記電動機が回転するよう該電動機を駆動制御する駆動制御手段とを備えるものとすることもできる。こうすれば、より適切なトルクを駆動軸に出力することができる。
【0009】この制御手段が目標回転数設定手段と駆動制御手段とを備える態様の本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が所定値以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該所定値未満のときには所定回転数を前記目標回転数に設定する手段であるものとすることもできる。ここで、「所定値」には車両が確実に停止していることができる制動力の値やそれ以上の値が含まれる。こうすれば、所定のトルクを駆動軸に出力することができる。この際、電動機の目標回転数として設定される「所定回転数」を車両に想定される坂路発進において車両がずり下がらない程度のトルクが駆動軸に作用する電動機の回転数以上の回転数として設定すれば、より確実に坂路発進の際などにおいて車両がずり下がることを防止することができる。また、車両が確実に停止しているときなどには電動機を回転させず、電動機から駆動軸にトルクを出力しないから、車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0010】また、制御手段が目標回転数設定手段と駆動制御手段とを備える態様の本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が所定値以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該所定値未満のときには該制動力が大きくなるほど小さな回転数を前記目標回転数に設定する手段であるものとすることもできる。この態様における「所定値」の意味については前述のとおりである。こうすれば、駆動軸に作用している制動力に応じたトルクを駆動軸に出力することができる。また、きめ細かく電動機の回転数を制御するから、電動機により消費されるエネルギを少なくすることができる。もとより、車両が確実に停止しているときなどには電動機を回転させないから、車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0011】本発明のハイブリッド車の動力装置において、該ハイブリッド車の走行位置または停止位置の勾配を検出または推定する勾配検出推定手段を備え、前記制御手段は、前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配にも基づいて前記電動機の回転数を制御する手段であるものとすることもできる。坂路発進の際に車両がずり下がるか否かは車両に作用している力の釣り合いに基づいて定まり、これは車両の位置する道路などの勾配と駆動軸に作用しているトルクとによって求まる。即ち、勾配が異なれば、車両を静止させるために駆動軸に必要なトルクが異なるのである。したがって、この態様のように車両の位置の勾配と駆動軸に作用する制動力に基づいて電動機の回転数を制御することにより、駆動軸に出力するトルクをより適切に制御することができると共に、よりエネルギ効率を向上させることができる。
【0012】この勾配に基づいて制御を行なう態様の本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記制御手段は、前記制動力検出手段により検出される制動力と前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配とに基づいて目標回転数を設定する目標回転数設定手段と、該設定された目標回転数で前記電動機が回転するよう該電動機を駆動制御する駆動制御手段とを備えるものとすることもできる。こうすれば、より適切なトルクを駆動軸に出力することができる。
【0013】この勾配に基づいて制御を行なう制御手段が目標回転数設定手段と駆動制御手段とを備える態様の本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記目標回転数設定手段は、前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配に基づいて基準制動力を設定する基準制動力設定手段を備え、該設定された基準制動力と前記制動力検出手段により検出される制動力とに基づいて前記目標回転数を設定する手段であるものとすることもできる。ここで、「基準制動力」には、その勾配で車両が確実に停止していることができる制動力の値やその前後の近傍の値が含まれる。こうすれば、よりきめ細かく電動機の回転数を制御することができる。
【0014】この基準制動力設定手段を備える態様の本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が前記基準制動力以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該基準制動力未満のときには所定回転数を前記目標回転数に設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、所定のトルクを駆動軸に出力することができる。この際、電動機の目標回転数として設定される「所定回転数」を車両に想定される坂路発進において車両がずり下がらない程度のトルクが駆動軸に作用する電動機の回転数以上の回転数として設定すれば、より確実に坂路発進の際などにおいて車両がずり下がることを防止することができる。また、車両が確実に停止しているときなどには電動機を回転させず、電動機から駆動軸にトルクを出力しないから、車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0015】また、基準制動力設定手段を備える態様の本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が前記基準制動力以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該基準制動力未満のときには該制動力が大きくなるほど小さな回転数を前記目標回転数に設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、駆動軸に作用している制動力に応じたトルクを駆動軸に出力することができる。また、きめ細かく電動機の回転数を制御するから、電動機により消費されるエネルギを少なくすることができる。もとより、車両が確実に停止しているときなどには電動機を回転させないから、車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0016】さらに、基準制動力設定手段を備える態様の本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が前記基準制動力以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該基準制動力未満のときには前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配が大きくなるほど大きな回転数を前記目標回転数に設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、勾配に応じたトルクを駆動軸に出力することができる。また、きめ細かく電動機の回転数を制御するから、電動機により消費されるエネルギを少なくすることができる。もとより、車両が確実に停止しているときなどには電動機を回転させないから、車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0017】あるいは、基準制動力設定手段を備える態様の本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記目標回転数設定手段は、前記制動力検出手段により検出された制動力が前記基準制動力以上のときには値0を前記目標回転数に設定し、該検出された制動力が該基準制動力未満のときには、該制動力が大きくなるほど小さな回転数となる関係と前記勾配検出推定手段により検出または推定された勾配が大きくなるほど大きな回転数となる関係とに基づいて前記目標回転数に設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、駆動軸に作用している制動力と勾配とに応じたトルクを駆動軸に出力することができる。このように駆動軸に作用している制動力と勾配とに基づいてきめ細かく電動機の回転数を制御するから、電動機により消費されるエネルギを少なくすることができる。もとより、車両が確実に停止しているときなどには電動機を回転させないから、車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0018】目標回転数に値0を設定する態様の本発明のハイブリッド車の動力装置において、前記駆動制御手段は、前記目標回転数に値0が設定されたときは前記電動機の運転を停止する手段であるものとすることもできる。こうすれば、電動機により消費される電力を値0とすることができ、車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド車の動力装置20の構成の概略を示す構成図である。図示するように、ハイブリッド車の動力装置20は、クランクシャフト24に動力を出力するエンジン22と、同じくクランクシャフト24に動力を出力するモータ30と、流体の作用によりクランクシャフト24のトルクを増幅して後段に伝達するトルクコンバータ42と、回転数を所定の変速比で減速あるいは増速するトランスミッション50と、装置全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUという)70とを備える。
【0020】エンジン22は、ガソリンを燃料として動力を出力する内燃機関であり、その運転は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUと呼ぶ)26により制御されている。エンジンECU26によるエンジン22の運転制御は、図示しないスロットルバルブの開度の制御と図示しない燃料噴射弁の開弁時間の制御により行なわれるが、その詳細は本発明の中核をなさないから省略する。
【0021】モータ30は、同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。モータ30の運転は、インバータ32を介してモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)36により制御されている。モータECU36によるモータ30の運転制御は、バッテリ38に接続されたインバータ32が備えるスイッチング素子としての6個のトランジスタのON時間の割合を順次制御してモータ30の三相コイルの各コイルに流れる電流を制御することによって行なわれる。なお、実施例ではモータ30を同期電動発電機としたから、制動時やエンジン22による駆動時にモータ30を発電機として動作させることにより、バッテリ38の充電が行なえるようになっている。このモータ30を発電機として動作させる制御もモータECU36によりなされる。なお、モータ30の制御のためにその回転数Nmを検出するためのレゾルバ34がクランクシャフト24に取り付けられており、その信号は信号ラインによりモータECU36に入力されている。
【0022】バッテリ38は、充放電可能な二次電池、例えばニッケル水素系の電池として構成されており、その蓄電状態や充放電はバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)40により制御されている。
【0023】トルクコンバータ42は、循環するオイルの作用によりトルクを増幅して後方に伝達する周知の流体式のトルクコンバータである。トランスミッション50は、トルクコンバータ42の出力軸にその入力軸が接続され、入力軸の回転数を所定の変速比で減速あるいは増速する。このトランスミッション50の出力軸は駆動軸60に連結されており、駆動軸60はディファレンシャルギヤ62を介して駆動輪64,66に接続されている。トランスミッション50は、油圧を動力源として前進5段、後進1段の切換が可能な遊星歯車機構として構成されており、この切換のために設けられているクラッチやブレーキの駆動源としての油圧制御は、オートマチックトランスミッション用電子制御ユニット(以下、ATECUという)52により行なわれている。
【0024】ハイブリッド用電子制御ユニット(HVECU)70は、CPU72を中心として構成されたワンチップマイクロプロセッサとして構成されており、処理プログラムを記憶したROM74と、一時的にデータを記憶するRAM76と、エンジンECU26やモータECU36,バッテリECU40,ATECU52と通信する図示しない通信ポートと、図示しない入力ポートとを備える。このHVECU70には、駆動輪64,66に取り付けられた車輪速センサ65,67からの車輪速VR,VLやアクセルペダル80の踏み込み状態を検出するアクセルポジションセンサ82からのアクセルポジションAP,ブレーキペダル84の踏み込み状態を検出するブレーキポジションセンサ86からのブレーキポジションBP,ブレーキペダル84の踏み込みにより油圧を生じるブレーキ油圧系統88に取り付けられた油圧センサ89からのブレーキ油圧PB,シフトレバー90のポジションを検出するシフトポジションセンサ92からのシフトポジションSP,駆動装置全体を駆動するためのスタータスイッチ94からのスタータ信号STなどが入力ポートを介して入力されている。
【0025】こうして構成された実施例のハイブリッド車は、バッテリ38の蓄電状態が良好であって車両に対する要求負荷が小さいときには、エンジン22の運転を停止した状態でモータ30の動力のみで車両を駆動するよう制御される。このとき、エンジン22は燃料供給や点火が行なわれていない状態でモータ30により連れ回されることになる。バッテリ38の蓄電状態が良好であっても車両に対する要求負荷が大きいときには、エンジン22は運転され、このエンジン22からの動力で車両は駆動されるよう制御される。車両の減速時には、モータ30を発電機として作動させて発電された電力によりバッテリ38を充電するよう制御される。車両に対する要求負荷が小さいときや車両が停止しているときには、前述したように、バッテリ38の蓄電状態が良好であればモータ30の動力のみで車両を駆動するよう制御されるが、バッテリ38の蓄電状態が低下して充電が必要になると、エンジン22の運転を開始すると共にモータ30を発電機として機能させてバッテリ38を充電する制御が行なわれる。こうした各制御は、HVECU70がアクセルポジションセンサ82やブレーキポジションセンサ86,車輪速センサ65,67により検出されたアクセルポジションAPやブレーキポジションBP,車輪速VR,VLに基づいて車両に対する要求負荷を演算すると共に通信によりバッテリECU40からバッテリ38の蓄電状態を入力して判断し、どの制御とするかを決定し、各制御に対応するそれぞれの運転信号をエンジンECU26やモータECU36,バッテリECU40,ATECU52に通信により出力することによって行なわれる。これらの制御は、本発明の中核をなさず、これ以上の説明は冗長となるから、これ以上の説明は省略する。
【0026】次に、こうした制御が行なわれて駆動する実施例のハイブリッド車の動力装置20の車両の発進時や停車時などの動作について説明する。図2は、実施例のHVECU70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、シフトポジションセンサ92により検出されるシフトポジションSPがDレンジや1レンジ,2レンジ,Rレンジのときに所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行されるものである。
【0027】本ルーチンが実行されると、CPU72は、まず、アクセルポジションセンサ82により検出されるアクセルポジションAPとエンジン運転フラグFEと車速Vを読み込む処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン運転フラグFEは、エンジン22が運転状態にあるか運転停止状態にあるかを値として持つフラグであり、HVECU70がエンジン22を始動するようエンジンECU26に信号を出力するときに、これと同時にRAM76の所定アドレスに値1を書き込み、逆にエンジン22の運転を停止するようエンジンECU26に信号を出力するときに、これと同時に所定アドレスに値0を書き込むものである。したがって、エンジン運転フラグFEの読み込み処理は、RAM76の所定アドレスの値を読み込む処理となる。車速Vの読み込み処理は、図示しない車速演算ルーチンによって車輪速センサ65,67から求められRAM76の所定アドレスに書き込まれた車速Vを読み込む処理となる。なお、実施例のハイブリッド車の動力装置20では車輪速センサ65,67から車速Vを演算するものとしたが、車速センサを取り付け、この車速センサにより検出される車速Vを直接読み込むものとしてもよい。こうして読み込み処理を行なうと、読み込んだアクセルポジションAPがオフでないときや(ステップS102)、エンジン運転フラグFEが値0でないとき(ステップS104)、あるいは車速Vの絶対値が閾値Vr以上のときには、何もしないで本ルーチンを終了する。いま、処理の対象としているのは、車両の発進時や停車時,停止時等であるからである。なお、アクセルポジションAPがオフとはアクセルペダル80が踏み込まれていない状態を意味する。また、閾値Vrは、車両は停車しておらず僅かなスピードで動いている状態をもこの制御に含めるために設定される値であり、例えば、歩く程度の速さの値等に設定されるものである。車速Vの絶対値を考えるのは、車両が前進しているときは勿論、後進しているときも含むからである。
【0028】読み込んだアクセルポジションAPがオフであり、エンジン運転フラグFEが値0であり、さらに車速Vの絶対値が閾値Vr未満であるときには、CPU72は、車両の停車している位置または車両の走行している位置の路面あるいは地面の勾配θを読み込む処理を実行する(ステップS108)。ここで、勾配θは、車速Vや車速Vから演算される加速度や駆動軸60に出力しているトルク,エンジン22やモータ30の負荷などにより演算されるものであり、実施例では図示しない勾配演算ルーチンにより演算されRAM76の所定アドレスに書き込まれる勾配θを読み込む処理とした。なお、勾配θは、ナビゲーションシステムなどを利用して地図情報と車両の現在位置と車速Vとから導出するものとしてもよく、また車両の勾配θを検出する勾配検出センサを取り付け、このセンサにより検出された値を読み込むものとしてもよい。
【0029】次に、読み込んだ勾配θに基づいて基準油圧Prefを設定する処理を実行する(ステップS110)。基準油圧Prefは、モータ30からトルクコンバータ42を介して駆動軸60にトルクを出力しなくても車両が勾配θに対してずり下がることなく停止していることができるブレーキ油圧PBの値やこれより若干高い値または若干低い値に設定されるものである。実施例では、勾配θと基準油圧Prefとの関係を示すマップをROM74の所定アドレスに書き込んでおき、読み込んだ勾配θとこのマップとを用いて基準油圧Prefを導出するものとした。図3に勾配θと基準油圧Prefとの関係の一例を示す。図示するように、基準油圧Prefは、勾配θが大きくなるほど大きくなっている。車両が停止していることができるブレーキ油圧PBは勾配θが大きくなるほど大きくなるからである。
【0030】そして、油圧センサ89により検出されるブレーキ油圧PBを読み込み(ステップS112)、読み込んだブレーキ油圧PBを設定された基準油圧Prefと比較する(ステップS114)。ブレーキ油圧PBが基準油圧Pref以上のときには、ブレーキによる制動力で車両は十分に停止していることができると判断し、モータ30の目標回転数Nm*に値0を設定し(ステップS118)、ブレーキ油圧PBが基準油圧Pref未満のときには、ブレーキによる制動力だけでは車両は停止していることができないと判断し、勾配θとブレーキ油圧PBとに基づいて求められる値をモータ30の目標回転数Nm*に設定する(ステップS116)。モータ30の目標回転数Nm*の設定としては、勾配θが大きくなるほど車両が勾配θに対してずり下がることなく停止していることができるために必要な駆動軸60に出力すべきトルクが大きくなることや、このトルクをブレーキ油圧PBから出力されるトルクとモータ30からトルクコンバータ42を介して出力されるトルクとの和で賄えばよいことに基づいて行なわれる。実施例では、こうした勾配θとブレーキ油圧PBとモータ30の目標回転数Nm*との関係を実験などにより予め求めてマップとしてROM74に記憶しておき、勾配θとブレーキ油圧PBとが与えられると、このマップを用いて勾配θとブレーキ油圧PBとからモータ30の目標回転数Nm*を導出するものとした。勾配θとモータ30の目標回転数Nm*とを軸にしてブレーキ油圧PBを変化させたときの勾配θと目標回転数Nm*との関係の一例を図4に、ブレーキ油圧PBとモータ30の目標回転数Nm*とを軸として勾配θを変化させたときのブレーキ油圧PBと目標回転数Nm*との関係の一例を図5に示す。ここで、図4中ブレーキ油圧PB1〜PB5はPB1<PB2<PB3<PB4<PB5の関係であり、図5中勾配θ1〜θ5はθ1<θ2<θ3<θ4<θ5の関係である。即ち、図4から明らかなように、同じブレーキ油圧PBのときには勾配θが大きくなるにしたがって目標回転数Nm*も大きな値が設定され、図5から明らかなように、同じ勾配θのときにはブレーキ油圧PBが大きくなるにしたがって目標回転数Nm*は小さな値が設定される。なお、モータ30から出力すべきトルクを設定するのではなく目標回転数Nm*を設定するのは、モータ30からトルクが直接駆動軸60に出力されるのではなくトルクコンバータ42を介して出力されることに基づく。即ち、モータ30から出力されるトルクを制御しても所望のトルクが駆動軸60に出力されるものではないこと、駆動軸60の回転数(車速V)等により出力すべきトルクが同じでもモータ30の回転数が変化すること等から、モータ30のトルク制御は回転数制御に比して困難なものとなるからである。
【0031】こうしてモータ30の目標回転数Nm*が設定されると、モータ30の回転数Nmが目標回転数Nm*となるようモータ30を制御する処理を実行して(ステップS120)、本ルーチンを終了する。モータ30の制御は、具体的には、HVECU70が通信により設定した目標回転数Nm*をモータECU36に送り、これを受信したモータECU36が、モータ30が目標回転数Nm*で回転するようインバータ32のスイッチング素子のオンオフ制御をすることにより行なわれる。したがって、図2には、HVECU70により実行されるルーチンのステップとしてモータ30の制御処理を記載したが、実際は前述のとおり、モータECU36によってモータ30の回転数制御がなされるのである。なお、実施例では、モータ30の目標回転数Nm*に値0が設定されたときのモータ30の制御は、モータ30を運転しない制御としている。
【0032】図6は、車両が勾配θの道路で停止し、その後発進する際の車速Vと勾配θとブレーキ油圧PBとモータ30の回転数Nmと駆動軸60に作用するトルク(クリープトルク)Tとの関係の一例を時系列として示すタイムチャートである。図示するように、運転者のブレーキペダル84の踏み込みにより勾配θにおける基準油圧Prefより大きなブレーキ油圧PBによって駆動軸60に作用する制動力により、車両は時間t1で停止する。車両を発進させるために運転者がブレーキペダル84の踏み込み量を小さくすることによりブレーキ油圧PBが基準油圧Pref未満になると(時間t2)、勾配θとブレーキ油圧PBとに基づいてモータ30の目標回転数Nm*が設定されてモータ30の回転数制御が行なわれる。このモータ30の回転数制御により駆動軸60には、トルクコンバータ42およびトランスミッション50を介してモータ30からのトルクがクリープトルクとして出力される。
【0033】以上説明した実施例のハイブリッド車の動力装置20によれば、勾配θとブレーキ油圧PBとに基づいてモータ30の回転数を制御することにより適切なトルクを駆動軸60に出力することができる。この結果、坂路発進などの際のずり下がりなどを防止することができる。また、実施例のハイブリッド車の動力装置20によれば、ブレーキ油圧PBが勾配θに基づいて設定される基準油圧Pref以上のときには、モータ30の目標回転数Nm*に値0を設定し、モータ30の運転を停止して電気エネルギを節約するから、エネルギ効率のよい動力装置とすることができる。さらに、実施例のハイブリッド車の動力装置20によれば、モータ30をトルク制御ではなく回転数制御により制御するから、モータ30の制御を容易なものとすることができる。
【0034】実施例のハイブリッド車の動力装置20では、モータ30の目標回転数Nm*を勾配θとブレーキ油圧PBとに基づいて設定したが、ブレーキ油圧PBにのみ基づいて目標回転数Nm*を設定するものとしたり、勾配θのみに基づいて目標回転数Nm*を設定するものとしてもよい。ブレーキ油圧PBのみに基づいて目標回転数Nm*を設定する場合、図2の駆動制御ルーチンのステップS116およびS118は、図7に例示する変形例の駆動制御ルーチンのステップS116BおよびS118Bのようにすればよい。即ち、ブレーキ油圧PBが設定された基準油圧Pref未満のときにはモータ30の目標回転数Nm*をブレーキ油圧PBに基づいて設定し(ステップS116B)、ブレーキ油圧PBが設定された基準油圧Pref以上のときにはモータ30の目標回転数Nm*に値0を設定するのである(ステップS118B)。ブレーキ油圧PBが基準油圧Pref未満のときのブレーキ油圧PBと目標回転数Nm*との関係は、基本的には図5に例示する関係である。こうした変形例の駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド車の動力装置20によっても、坂路発進などの際のずり下がりなどを防止することができると共に装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【0035】また、勾配θのみに基づいて目標回転数Nm*を設定する場合、図2の駆動制御ルーチンのステップS116およびS118は、図8に例示する変形例の駆動制御ルーチンのステップS116CおよびS118Cのようにすればよい。即ち、ブレーキ油圧PBが設定された基準油圧Pref未満のときにはモータ30の目標回転数Nm*を勾配θに基づいて設定し(ステップS116C)、ブレーキ油圧PBが設定された基準油圧Pref以上のときにはモータ30の目標回転数Nm*に値0を設定するのである(ステップS118C)。ブレーキ油圧PBが基準油圧Pref未満のときの勾配θと目標回転数Nm*との関係は、基本的には図4に例示する関係であるが、ブレーキ油圧PBによらず車両のずり下がりを防止するため、ブレーキペダル84が踏み込まれていないときの関係が用いられる。こうした変形例の駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド車の動力装置20によっても、坂路発進などの際のずり下がりなどを防止することができると共に装置のエネルギ効率を向上させることができる。
【0036】これら図7や図8の変形例の駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド車の動力装置20では、ブレーキ油圧PBが基準油圧Pref未満のときにはブレーキ油圧PBや勾配θに基づいてモータ30の目標回転数Nm*を設定したが、所定値を目標回転数Nm*に設定するものとしてもよい。この場合、所定値は、例えば従来のAT車並のクリープ力が出せる値として設定すればよい。または、坂路でのずり下がりを防止あるいは抑制するために従来のAT車並のクリープ力が出せる値より高めの値として設定してもよい。
【0037】実施例のハイブリッド車の動力装置20では、ブレーキ油圧PBが基準油圧Pref以上のときにはモータ30の目標回転数Nm*に値0を設定してモータ30の運転を停止し、ブレーキ油圧PBが基準油圧Pref未満になるとモータ30の目標回転数Nm*に値を設定してモータ30を運転するものとしたが、モータ30の運転を停止する基準油圧と逆にモータ30の運転を開始する基準油圧とを設定するものとしてもよい。その場合、ブレーキ油圧PBが基準油圧Pref付近で変化するときにモータ30の運転の停止と開始とが頻繁に行なわれないよう基準油圧にヒステリシスを設けるものとしてもよい。この場合の駆動制御ルーチンの一例の一部を図9に示す。以下、実施例のハイブリッド車の動力装置20が図2の駆動制御ルーチンに代えてこの図9の駆動制御ルーチンを実行した場合の動作について簡単に説明する。なお、図9の駆動制御ルーチンでも図2の駆動制御ルーチンのステップS100ないしS106の処理と同一の処理を行なうから、この部分についての図9への図示は省略した。
【0038】アクセルポジションAPがオフであり、エンジン運転フラグFEが値0であり、さらに車速Vの絶対値が閾値Vr未満であるときには、車両の停車している位置または車両の走行している位置の路面あるいは地面の勾配θを読み込み(ステップS208)、読み込んだ勾配θに基づいて基準油圧Ponと基準油圧Poffとを設定する(ステップS210)。基準油圧Ponは、モータ30の運転を開始するための閾値であり、図2の駆動制御ルーチンのステップS110で設定される基準油圧Prefと同様に設定される。一方、基準油圧Poffは、モータ30の運転を停止するための閾値であり、設定された基準油圧Ponに所定偏差ΔPを加えた値として設定される。図10に勾配θと基準油圧Ponと基準油圧Poffとの関係の一例を示す。
【0039】次に、CPU72は、ブレーキ油圧PBとモータ運転フラグFMとを読み込む処理を実行する(ステップS212)。ここで、モータ運転フラグFMは、モータ30が運転状態にあるか運転停止状態にあるかを値として持つフラグであり、本ルーチンにより設定されるものである。その設定については後述する。
【0040】そして、読み込んだモータ運転フラグFMの値を調べ(ステップS214)、モータ運転フラグFMが値0のときには、モータ30は運転停止状態にあると判定し、ブレーキ油圧PBをモータ30の運転開始の閾値として設定された基準油圧Ponと比較する(ステップS216)。ブレーキ油圧PBが基準油圧Pon以上のときには、ブレーキによる制動力で車両は十分に停止していることができると判断すると共にモータ30の運転開始は必要ないと判定し、そのまま本ルーチンを終了する。この場合、モータ30は運転停止状態を保持する。一方、ブレーキ油圧PBが基準油圧Pon未満のときには、ブレーキによる制動力だけでは車両は停止していることができないと判断してモータ運転フラグFMに値1を設定すると共に(ステップS218)、勾配θとブレーキ油圧PBとに基づいてモータ30の目標回転数Nm*を設定し(ステップS220)、この設定した目標回転数Nm*でモータ30が運転されるようモータ30の制御を行なって(ステップS228)、本ルーチンを終了する。
【0041】ステップS214で、モータ運転フラグFMが値1であると判定すると、ブレーキ油圧PBをモータ30の運転停止の閾値として設定された基準油圧Poffと比較する(ステップS222)。ブレーキ油圧PBが基準油圧Poff未満ののときには、まだブレーキによる制動力だけでは車両は停止していることができないと判断して勾配θとブレーキ油圧PBとに基づいてモータ30の目標回転数Nm*を設定し(ステップS220)、この設定した目標回転数Nm*でモータ30が運転されるようモータ30の制御を行なって(ステップS228)、本ルーチンを終了する。一方、ブレーキ油圧PBが基準油圧Poff以上のときには、ブレーキによる制動力で車両は十分に停止していることができると判断すると共にモータ30の運転は必要ないと判定し、モータ運転フラグFMに値0を設定すると共に(ステップS224)、モータ30の目標回転数Nm*に値0を設定し(ステップS226)、モータ30の運転を停止する制御を行なって(ステップS228)、本ルーチンを終了する。
【0042】図11は、モータ30の運転の開始と停止とにヒステリシスを持たせた際のブレーキ油圧PBとモータ運転フラグFMとの関係の一例を時系列に示したタイムチャートである。図示するように、運転者がブレーキペダル84の踏み込みをゆるめることにより時間t1でブレーキ油圧PBが基準油圧Pon未満となると、モータ運転フラグFMに値1が設定されると共にモータ30の運転が開始されて、駆動軸60にクリープトルクが作用する。運転者のブレーキペダル84の踏み込みの緩め方が不安定でブレーキ油圧PBが基準油圧Pon付近をふらついて基準油圧Pon以上の値(時間t2ないしt3の間)となっても、モータ30の運転を停止する閾値である基準油圧Poff未満の間はモータ運転フラグFMは書き換えられず、モータ30の運転は継続される。運転者が再度ブレーキペダル84を踏み込むことにより時間t4でブレーキ油圧PBが基準油圧Poff以上となると、モータ運転フラグFMには値0が設定されて、モータ30の運転は停止される。
【0043】以上説明した図2の駆動制御ルーチンに代えて図9の駆動制御ルーチンを実行する実施例のハイブリッド車の動力装置20によれば、モータ30の運転の開始と停止とにヒステリシスを持たせたので、モータ30の運転の開始と停止とが頻繁に行なわれるという不都合を防止することができる。この結果、耐久性の優れた装置にすることができる。
【0044】実施例のハイブリッド車の動力装置20では、車両の現在位置の勾配θに基づいてモータ30の運転を開始するための基準油圧Prefを設定したが、勾配θに基づかない所定値を閾値としてモータ30の運転を開始してもよい。この場合の駆動制御ルーチンの一例を図12に示す。以下、実施例のハイブリッド車の動力装置20が図2の駆動制御ルーチンに代えてこの図12の駆動制御ルーチンを実行した場合の動作について簡単に説明する。なお、図12の駆動制御ルーチンにおけるステップS300ないしS306の処理は図2の駆動制御ルーチンにおけるステップS100ないしS106の処理と同一である。
【0045】アクセルポジションAPがオフであり、エンジン運転フラグFEが値0であり、さらに車速Vの絶対値が閾値Vr未満であるときには、CPU72は、ブレーキ油圧PBを読み込み(ステップS312)、読み込んだブレーキ油圧PBを所定値である閾値P1と比較する(ステップS314)。ここで、閾値P1は、モータ30からトルクコンバータ42を介して駆動軸60にトルクを出力しなくても車両に予定されている高い値の勾配θに車両が位置してもずり下がることなく停止していることができるブレーキ油圧PBの値やこれより若干高い値もしくはこれより若干低い値として設定されるものである。
【0046】ブレーキ油圧PBが閾値P1以上のときには、ブレーキによる制動力で車両は十分に停止していることができると判断し、モータ30の目標回転数Nm*に値0を設定し(ステップS318)、ブレーキ油圧PBが閾値P1未満のときには、ブレーキによる制動力だけでは車両は停止していることができないと判断し、ブレーキ油圧PBに基づいて求められる値をモータ30の目標回転数Nm*に設定する(ステップS316)。そして、設定した目標回転数Nm*となるようモータ30を制御して(ステップS320)、本ルーチンを終了する。
【0047】以上説明した図2の駆動制御ルーチンに代えて図12の駆動制御ルーチンを実行する実施例のハイブリッド車の動力装置20によれば、勾配θを用いなくても車両のずり下がりを防止することができる。
【0048】この図12の駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド車の動力装置20では、ブレーキ油圧PBが閾値P1未満のときにはブレーキ油圧PBに基づいてモータ30の目標回転数Nm*を設定したが、所定値を目標回転数Nm*に設定するものとしてもよいのは、図7や図8の駆動制御ルーチンの変形例として説明したのと同様である。
【0049】実施例のハイブリッド車の動力装置20やその変形例ではモータ30をクランクシャフト24に取り付けたが、モータ30を減速機を介してクランクシャフト24に取り付けるものとしてもよい。また、実施例のハイブリッド車の動力装置20やその変形例では、モータ30からの動力のみで駆動しているときには、モータ30が停止しているエンジン22を連れ回すものとしたが、クランクシャフト24にクラッチを設け、モータ30からの動力のみで駆動しているときには、クラッチによりエンジン22を切り離すものとしてもよい。こうすれば、エンジン22を連れ回さないから、装置をエネルギ効率の高いものとすることができる。
【0050】実施例のハイブリッド車の動力装置20やその変形例では、モータ30を同期電動発電機として構成したが、発電できる電動機であれば如何なる電動機として構成してもよい。
【0051】以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年4月22日(1999.4.22)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
【公開番号】 特開2000−308209(P2000−308209A)
【公開日】 平成12年11月2日(2000.11.2)
【出願番号】 特願平11−114752