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【発明の名称】 ハイブリッド車の制御装置
【発明者】 【氏名】木下 貴博

【要約】 【課題】ハイブリッド車の複数の制御系を統括する中央制御系或いは中央制御系と各制御系とを結合する多重通信系に異常が発生した場合においても、異常時に対処するための変速制御を可能とする。

【解決手段】多重通信系に異常がないか否かを調べ(S21)、多重通信系が正常である場合には、異常判定フラグの値を参照してHEV_ECUが正常であるか否かを調べる(S22)。そして、多重通信系及びHEV_ECUが正常である場合には、HEV_ECUから取得した無段変速機入力トルクを用いて変速制御を行い(S23,S25,S26)、多重通信系或いはHEV_ECUに異常が発生している場合には、T/M_ECU内に予め保有のデータテーブルをプライマリプーリ回転数に基づき参照し、補間計算によって無段変速機入力トルクデータを設定し、設定した無段変速機入力トルクを用いて変速制御を行う(S24,S25,S26)ことで、異常時の変速制御を可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンとモータとの少なくとも一方から駆動力が入力され、複数段あるいは無限段に切り換え可能な変速比に応じて変速及びトルク増幅を行なう動力変換機構を備えたハイブリッド車の制御装置であって、互いに制御対象が異なる複数の制御系を統括し、多重通信系を介して各制御系へ制御指令を送信すると共に各制御系からフィードバックされる制御データを受信する中央制御系と、上記中央制御系から送信される上記動力変換機構の入力トルクに基づいて上記動力変換機構の変速制御を行い、上記中央制御系或いは上記多重通信系に異常が発生した場合には、上記動力変換機構の入力軸回転数に基づいて予め保有するデータテーブルを用いて上記動力変換機構への入力トルクを設定し、設定した入力トルクに基づいて上記動力変換機構の異常時変速制御を行う変速制御系とを備えたことを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
【請求項2】 上記動力変換機構を、入力軸に軸支されるプライマリプーリと出力軸に軸支されるセカンダリプーリとの間に駆動ベルトを巻装してなるベルト式無段変速機とすることを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンとモータとを併用するハイブリッド車の制御装置に関し、より詳しくは、ハイブリッド車の複数の制御系を統括する中央制御系或いは中央制御系と各制御系との間の多重通信系に異常が発生した場合にも、変速制御を可能とするハイブリッド車の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車等の車両においては、低公害、省資源の観点からエンジンとモータとを併用するハイブリッド車が開発されており、このハイブリッド車では、エンジン及びモータと駆動輪との間に、ギヤ式変速機や無段変速機等の変速及びトルク増幅を行なう動力変換機構を設け、駆動輪からの要求駆動力に対してエンジン及びモータを最適に制御するようにしている。
【0003】例えば、特開平9−331602号公報には、変速機の変速時に、該変速機に入力される入力トルクを一時的にトルクダウンさせる際、トルクダウン源としてのエンジン及びモータジェネレータを、予め定められた選択条件に従って選択的に使用する技術が開示されている。
【0004】この場合、ハイブリッド車では、エンジン、モータ、変速機等を個別の電子制御ユニット(ECU)で分担して制御すると共に各ECUを統合制御するための中央のECUを設け、各ECUを多重通信系で結合して制御データや制御指令等のやり取りを行なうことでトータルな制御性の向上を図るシステム構成とすることが多く、このようなシステムでは、中央のECUから変速制御に必要な変速機の入力トルクデータを送信することで、変速制御を行うようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ハイブリッド車の統合制御を行うための中央の制御系に異常が発生した場合や、多重通信系に異常が発生した場合、変速制御系では、変速機の入力トルクデータを取得することができなくなり、最低限の走行性能を確保して車両を安全に移動させるための変速制御動作を確保することが困難となる。
【0006】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ハイブリッド車の複数の制御系を統括する中央制御系或いは中央制御系と各制御系とを結合する多重通信系に異常が発生した場合においても、異常時に対処するための変速制御を可能とするハイブリッド車の制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エンジンとモータとの少なくとも一方から駆動力が入力され、複数段あるいは無限段に切り換え可能な変速比に応じて変速及びトルク増幅を行なう動力変換機構を備えたハイブリッド車の制御装置であって、互いに制御対象が異なる複数の制御系を統括し、多重通信系を介して各制御系へ制御指令を送信すると共に各制御系からフィードバックされる制御データを受信する中央制御系と、上記中央制御系から送信される上記動力変換機構の入力トルクに基づいて上記動力変換機構の変速制御を行い、上記中央制御系或いは上記多重通信系に異常が発生した場合には、上記動力変換機構の入力軸回転数に基づいて予め保有するデータテーブルを用いて上記動力変換機構への入力トルクを設定し、設定した入力トルクに基づいて上記動力変換機構の異常時変速制御を行う変速制御系とを備えたことを特徴とする。
【0008】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記動力変換機構を、入力軸に軸支されるプライマリプーリと出力軸に軸支されるセカンダリプーリとの間に駆動ベルトを巻装してなるベルト式無段変速機とすることを特徴とする。
【0009】すなわち、請求項1記載の発明では、システムが正常な状態では、エンジン、モータ等の各制御系から中央制御系に多重通信系を介してフィードバックされた制御データに基づく動力変換機能の入力トルクデータが中央制御系から変速機制御系に送信され、この入力トルクに基づいて動力変換機構の変速制御が行われる。一方、中央制御系或いは多重通信系に異常が発生した場合には、変速機制御系で予め保有するデータテーブルを用い、動力変換機構の入力軸回転数に基づいて動力変換機構への入力トルクを設定し、設定した入力トルクに基づいて動力変換機構の異常時変速制御を行う。
【0010】この場合、動力変換機構としては、請求項2記載の発明で示すように、入力軸に軸支されるプライマリプーリと出力軸に軸支されるセカンダリプーリとの間に駆動ベルトを巻装してなるベルト式無段変速機を用い、ギヤ比を無段階に切り換えて変速及びトルク増幅を行なうことが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図5は本発明の実施の第1形態に係わり、図1はHEV_ECUにおける処理を示すフローチャート、図2はT/M_ECUにおける処理を示すフローチャート、図3は無段変速機入力トルクテーブルの説明図、図4は駆動制御系の構成を示す説明図、図5はHEV_ECUを中心とする制御信号の流れを示す説明図である。
【0012】図4に示すように、本形態におけるハイブリッド車は、エンジン1と、エンジン1の起動及び発電・動力アシストを担うモータA(第1のモータ)と、エンジン1の出力軸1aにモータAを介して連結されるプラネタリギヤユニット3と、このプラネタリギヤユニット3の機能を制御し、発進・後進時の駆動力源になるとともに減速エネルギーの回収を担うモータB(第2のモータ)と、変速及びトルク増幅を行なって走行時の動力変換機能を担う動力変換機構4とを基本構成とする駆動系を備えている。
【0013】詳細には、プラネタリギヤユニット3は、サンギヤ3a、このサンギヤ3aに噛合するピニオンを回転自在に支持するキャリア3b、ピニオンと噛合するリングギヤ3cを有するシングルピニオン式のプラネタリギヤであり、サンギヤ3aとキャリア3bとを締結・解放するためのロックアップクラッチ2が併設されている。
【0014】また、動力変換機構4としては、歯車列を組み合わせた変速機や流体トルクコンバータを用いた変速機等を用いることが可能であるが、入力軸4aに軸支されるプライマリプーリ4bと出力軸4cに軸支されるセカンダリプーリ4dとの間に駆動ベルト4eを巻装してなるベルト式無段変速機(CVT)を採用することが望ましく、本形態においては、以下、動力変換機構4をCVT4として説明する。
【0015】すなわち、本形態におけるハイブリッド車の駆動系では、サンギヤ3aとキャリア3bとの間にロックアップクラッチ2を介装したプラネタリギヤユニット3がエンジン1の出力軸1aとCVT4の入力軸4aとの間に配置されており、プラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aがエンジン1の出力軸1aに一方のモータAを介して結合されるとともにキャリア3bがCVT4の入力軸4aに結合され、リングギヤ3cに他方のモータBが連結されている。そして、CVT4の出力軸4cに減速歯車列5を介してデファレンシャル機構6が連設され、このデファレンシャル機構6に駆動軸7を介して前輪或いは後輪の駆動輪8が連設されている。
【0016】この場合、前述したようにエンジン1及びモータAをプラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aへ結合するとともにリングギヤ3cにモータBを結合してキャリア3bから出力を得るようにし、さらに、キャリア3bからの出力をCVT4によって変速及びトルク増幅して駆動輪8に伝達するようにしているため、2つのモータA,Bは発電と駆動力供給との両方に使用することができ、比較的小出力のモータを使用することができる。
【0017】また、走行条件に応じてロックアップクラッチ2によりプラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aとキャリア3bとを結合することで、間に2つのモータA,Bが配置された、エンジン1からCVT4に至るエンジン直結の駆動軸を形成することができ、効率よくCVT4に駆動力を伝達し、或いは駆動輪8側からの制動力を利用することができる。
【0018】尚、ロックアップクラッチ2の結合・解放時のプラネタリギヤユニット3を介したエンジン1及びモータA,Bのトルク伝達や発電による電気の流れについては、本出願人が先に提出した特願平10−4080号に詳述されている。
【0019】以上の駆動系は、7つの電子制御ユニット(ECU)を多重通信系で結合したハイブリッド車の走行制御を行う制御系(ハイブリッド制御システム)によって制御されるようになっており、各ECUがマイクロコンピュータとマイクロコンピュータによって制御される機能回路とから構成されている。
【0020】具体的には、システム全体を統括するハイブリッドECU(HEV_ECU)20を中心とし、モータAを駆動制御するモータAコントローラ21、モータBを駆動制御するモータBコントローラ22、エンジン1を制御するエンジンECU(E/G_ECU)23、ロックアップクラッチ2及びCVT4の制御を行うトランスミッションECU(T/M_ECU)24、バッテリ10の電力管理を行うバッテリマネージメントユニット(BAT_MU)25が第1の多重通信バス30でHEV_ECU20に結合され、ブレーキ制御を行うブレーキECU(BRK_ECU)26が第2の多重通信バス31でHEV_ECU20に結合されている。
【0021】HEV_ECU20は、ハイブリッド制御システム全体の制御を行う中央制御系としての機能を担うものであり、ドライバの運転操作状況を検出するセンサ・スイッチ類、例えば、図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ(APS)11、図示しないブレーキペダルの踏み込みによってONするブレーキスイッチ12、変速機のセレクト機構部13の操作位置がPレンジ又はNレンジのときにONし、Dレンジ,Rレンジ等の走行レンジにセットされているときにOFFするインヒビタスイッチ14等が接続されている。
【0022】そして、HEV_ECU20では、各センサ・スイッチ類からの信号や各ECUから送信されたデータに基づいて必要な車両駆動トルクを演算して駆動系のトルク配分を決定し、図5に示すように、多重通信によって各ECUに制御指令を送信する。
【0023】尚、HEV_ECU20には、車速、エンジン回転数、バッテリ充電状態等の車両の運転状態を表示する各種メータ類や、異常発生時に運転者に警告するための警告手段としてのウォーニングランプ等からなる表示器27が接続されている。この表示器27は、T/M_ECU24にも接続され、HEV_ECU20に異常が発生したとき、T/M_ECU24によって異常表示がなされる。
【0024】一方、モータAコントローラ21は、モータAを駆動するためのインバータを備えるものであり、モータAの電流や回転数を検出するための図示しないセンサ類が接続され、HEV_ECU20から多重通信によって送信されるサーボON/OFF指令や回転数指令等により、モータAを制御する。また、モータAコントローラ21からは、HEV_ECU20に対し、モータAのトルク、回転数、及び電流値等をフィードバックして送信し、更に、トルク制限要求や電圧値等のデータを送信する。
【0025】モータBコントローラ22は、モータBを駆動するためのインバータを備えるものであり、モータBの電流や回転数を検出するための図示しないセンサ類が接続され、HEV_ECU20から多重通信によって送信されるサーボON/OFF(正転、逆転を含む)指令やトルク指令(力行、ABS作動時のトルク0を含む回生)等により、モータBを制御する。また、モータBコントローラ22からは、HEV_ECU20に対し、モータBのトルク、回転数、及び電流値等をフィードバックして送信し、更に、電圧値等のデータを送信する。
【0026】E/G_ECU23は、エンジン1の制御を行うものであり、エンジン回転数やスロットル開度等を検出するための図示しないセンサ類が接続され、例えば、HEV_ECU20から多重通信によって送信される正負のトルク指令、燃料カット指令、エアコンON/OFF許可指令等の制御指令、及び、実トルクフィードバックデータ、車速、インヒビタスイッチ14による変速セレクト位置(P,Nレンジ等)、APS11の信号によるアクセル全開データやアクセル全閉データ、ブレーキスイッチ12のON,OFF状態、ABS作動状態等に基づいて、図示しないインジェクタからの燃料噴射量、ETC(電動スロットル弁)によるスロットル開度、A/C(エアコン)等の補機類のパワー補正学習、燃料カット等を制御する。
【0027】また、E/G_ECU23では、HEV_ECU20に対し、エンジン1の制御トルク値、燃料カットの実施、燃料噴射量に対する全開増量補正の実施、エアコンのON,OFF状態、図示しないアイドルスイッチによるスロットル弁全閉データ等をHEV_ECU20にフィードバックして送信すると共に、エンジン1の暖機要求等を送信する。
【0028】T/M_ECU24は、ロックアップクラッチ2の締結・解放を制御すると共にCVT4の変速比を制御する変速制御系の機能を担うものであり、プライマリプーリ回転数やセカンダリプーリ回転数等を検出するための図示しないセンサ類が接続され、HEV_ECU20から多重通信によって送信されるロックアップ要求等の制御指令、及び、CVT入力トルク、E/G回転数、アクセル開度、インヒビタスイッチ14による変速セレクト位置、ブレーキスイッチ12のON,OFF状態、エアコン切替許可、ABS作動状態、アイドルスイッチによるエンジン1のスロットル弁全閉データ等の情報に基づいて、ロックアップクラッチ2の締結・解放を制御すると共に、CVT4のスチールベルトによるトルク伝達に必要なライン圧の制御目標値である目標セカンダリ油圧を設定し、変速制御を行う。
【0029】また、T/M_ECU24からは、HEV_ECU20に対し、プライマリプーリ回転数、車速、入力制限トルク、プライマリプーリ回転数、セカンダリプーリ回転数、ロックアップ完了、インヒビタスイッチ14に対応する変速状態等のデータをフィードバックして送信すると共に、CVT4の油量をアップさせるためのE/G回転数アップ要求、低温始動要求等を送信する。
【0030】BAT_MU25は、いわゆる電力管理ユニットであり、バッテリ10を管理する上での各種制御、すなわち、バッテリ10の充放電制御、ファン制御、外部充電制御等を行い、バッテリ10の残存容量、電圧、電流制限値等のデータや外部充電中を示すデータを多重通信によってHEV_ECU20に送信する。また、外部充電を行う場合には、コンタクタ9を切り換えてバッテリ10とモータAコントローラ21及びモータBコントローラ22とを切り離す。
【0031】BRK_ECU26は、HEV_ECU20から多重通信によって送信される回生可能量、回生トルクフィードバック等の情報に基づいて、必要な制動力を演算し、ブレーキ系統の油圧を制御するものであり、HEV_ECU20に対し、回生量指令(トルク指令)、車速、油圧、ABS作動状態等をフィードバックして送信する。
【0032】以上のハイブリッド制御システムにおいては、HEV_ECU20を中心とするフェールセーフシステムによって異常を監視するようにしており、駆動系或いは制御系の異常発生時、走行不可の場合には車両を安全に停止させ、また、走行可能な場合には駆動系の出力制限を行ってリンプホームのための必要最低限の走行性を確保する。
【0033】HEV_ECU20による異常監視は、主として、各ECUの自己診断機能による診断結果を集中的に管理することで行われる。各ECUの自己診断機能としては、ウォッチドッグタイマによるECU自体の診断に加え、センサの出力値そのものの監視による断線や短絡発生の診断、制御データとセンサ出力値との整合性のチェック、アクチュエータへの印加電圧や出力電流値によるアクチュエータ系の断線や短絡発生の診断等がある。
【0034】HEV_ECU20では、各ECUでの自己診断によって異常が検出され、多重通信によって異常通達を受けたとき、或いは、所定のECUからの定期的な通信が実行されないとき、或いは、多重通信によって各ECUに送信した制御指令と各ECUからフィードバックされた制御データとが整合しないとき等には、そのECUが異常であるとし、表示器27に異常発生を表示して運転者に故障発生を知らせると共に多重通信によって他のECUに異常発生を通達する。そして、各ECUの動作を規制し、エンジン1、モータA,Bのいずれかの駆動力が使用可能な場合には、必要最低限の走行性を確保してリンプホームを可能とし、走行不可の場合には、ロックアップクラッチ2をOFF(解放)させると共に、CVT4の変速比を所定の値(中立値)に固定させ、車両を安全に停止させる。
【0035】この場合、システムを統括するHEV_ECU20或いは多重通信系自体に異常が発生すると、T/M_ECU24では、CVT4の制御に必要なデータが得られなくなり、エンジン1、モータA,Bの駆動力を使用して車両を安全に移動させる際の変速制御が困難となる。従って、T/M_ECU24では、多重通信系或いはHEV_ECU20に異常が発生した場合には、CVT4の制御に必要な入力トルクを自身で保有するデータテーブルを用いて設定し、この入力トルクを用いてCVT4の変速制御を行う。
【0036】以下、HEV_ECU20及びT/M_ECU24のフェールセーフに係わる処理について、図1及び図2のフローチャートを用いて説明する。
【0037】図1はHEV_ECU20における処理を示すルーチンであり、先ず、ステップS10でHEV_ECU20自身及びその周辺系に対する自己診断を行い、ステップS11で自己診断結果が異常か否かを調べる。そして、自己診断結果が正常である場合には、ステップS12でHEV_ECU20が正常であることを示すため異常判定フラグを1にセットしてステップS14へ進み、自己診断結果が異常である場合、ステップS13でHEV_ECU20が異常であることを示すため異常判定フラグを0にセットしてステップS14へ進む。
【0038】ステップS14では、他のECUから送信要求があるか否かを調べ、他のECUから送信要求がない場合には、ステップS14からルーチンを抜け、送信要求がある場合、ステップS15で、異常判定フラグを含めたデータを多重通信により該当ECUへ送信し、ルーチンを抜ける。
【0039】HEV_ECU20から送信されたデータは、送信要求を発した該当ECUで受信され、該当ECUでは、その受信データに含まれる異常判定フラグの値を参照してHEV_ECU20が正常であるか否かを判定し、その判定結果に応じた制御へ移行する。
【0040】この場合、HEV_ECU20が異常であり、最低限の走行に必要な駆動力が確保できる状況では、T/M_ECU24は、HEV_ECU20からのデータを用いることなく、自己保有のデータテーブルを用いて異常時の変速制御を行う。次に、図2のT/M_ECU24における処理を示すルーチンについて説明する。
【0041】T/M_ECU24のルーチンでは、先ず、ステップS20で多重通信によりHEV_ECU20へのデータ送信要求を行い、ステップS21で多重通信系に異常がないか否かを調べる。そして、多重通信系に異常がない場合には、更に、ステップS22で受信したHEV_ECU20からのデータに含まれる異常判定フラグの値を参照し、HEV_ECU20が正常であるか否かを調べる。
【0042】その結果、異常判定フラグが1であり、HEV_ECU20が正常である場合には、ステップ23へ進んで、HEV_ECU20からのデータによりCVT4の入力軸トルクである無段変速機入力トルクデータを取得し、ステップS25へ進む。
【0043】一方、ステップS21において多重通信系に異常が発生している場合、或いはステップ22において異常判定フラグが0でHEV_ECU20に異常が発生している場合には、HEV_ECU20からの無段変速機入力トルクデータを得ることができないため、ステップS21或いはステップS22からステップS24へ分岐し、T/M_ECU24内に予め保有のデータテーブルをプライマリプーリ回転数に基づき参照し、補間計算によって無段変速機入力トルクデータを設定してステップS25へ進む。
【0044】図3は、CVT4の入力トルクデータのテーブル例を示し、エンジン1、モータA,Bによる動力出力が極低回転域を除いて比較的フラットとなる特性を考慮し、プライマリプーリ回転数をパラメータとして予めシミュレーション或いは実験等によって適切な入力トルク値を定め、HEV_ECU20の異常発生時に使用するテーブルとしてT/M_ECU24のメモリ内に格納しておく。
【0045】ステップS25では、セカンダリプーリ側に供給する油圧をライン圧として、このライン圧の制御目標値である目標セカンダリ油圧を、入力トルク、プライマリプーリ回転数、セカンダリプーリ回転数等のパラメータに基づいて算出し、ステップS26で、ライン圧制御や変速比制御の無段変速機制御を行う。すなわち、図示しないオイルポンプの吐出圧を調圧してライン圧を目標セカンダリ油圧に制御し、セカンダリプーリの溝幅をプライマリプーリの溝幅に対して反比例状態に可変することでトルク伝達に必要なベルトの張力を設定すると共に、ライン圧を減圧してプライマリプーリ側に供給するプライマリ圧を制御し、プライマリプーリの溝幅を可変して変速比を制御する。
【0046】すなわち、HEV_ECU20或いは多重通信系に異常が発生し、CVT4の入力トルクデータをHEV_ECU20から得られない場合であっても、T/M_ECU24では、予め保有するデータテーブルを用いてCVT4を制御することができ、エンジン1、モータA,Bの駆動力を使用可能な場合には、必要な走行性能を確保して車両を安全に移動させることができる。
【0047】図6及び図7は本発明の第2形態に係わり、図6はHEV_ECUにおける処理を示すフローチャート、図7はT/M_ECUにおける処理を示すフローチャートである。
【0048】第2形態は、HEV_ECU20での自己診断の結果、異常発生と診断した場合、HEV_ECU20から各ECUへ直ちに異常通達を送信し、この異常通達の受信によりT/M_ECU24では直ちに内部のデータテーブルに切り換え、異常時変速制御に移行するものである。
【0049】すなわち、図6に示すように、HEV_ECU20側の処理ルーチンでは、ステップS10での自己診断の結果が異常である場合、ステップS11を経てステップS13で異常判定フラグを0にセットした後、ステップS16で多重通信により異常判定フラグのデータを各ECUへ送信することで異常通達を行う。自己診断結果が正常である場合には、第1形態と同様である。
【0050】また、T/M_ECU24側の処理ルーチンでは、図7に示すように、先ず、ステップS19でHEV_ECU20から異常通達を受信しているか否かを調べ、HEV_ECU20からの異常通達を受信しておらず、HEV_ECU20が正常である場合には、ステップS20でのデータ送信要求を経てステップS21での多重通信エラーのチェックを行い、多重通信系に異常がない場合、ステップ23で、HEV_ECU20から送信されたデータによりCVT4の入力軸トルクである無段変速機入力トルクデータを取得する。
【0051】一方、ステップS19においてHEV_ECU20からの異常通達を受信している場合、或いは、ステップS21において多重通信エラーを検出した場合には、ステップS19或いはステップS21からステップS24へ分岐し、プライマリプーリ回転数に基づきT/M_ECU24内に予め保有のデータテーブルを参照し、補間計算により無段変速機入力トルクデータを設定する。
【0052】そして、ステップS25において、HEV_ECU20からの送信データによるCVT4の入力トルク或いは自己のデータテーブルを用いて設定した入力トルクに基づいて目標セカンダリ油圧を算出した後、ステップS26で、ライン圧制御や変速比制御の無段変速機制御を行う。
【0053】第2形態では、HEV_ECU20に異常が発生した場合、迅速に対応することが可能であり、より安全性を高めることができる。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ハイブリッド車の複数の制御系を統括する中央制御系或いは各制御系を結合する多重通信系に異常が発生した場合、正常時には中央制御系から取得する動力変換機構への入力トルクを、変速機制御系で予め保有するデータテーブルを用いて動力変換機構の入力軸回転数に基づいて設定し、設定した入力トルクに基づいて動力変換機構の異常時変速制御を行うので、最低限の走行性能を確保して車両を安全に移動させるための変速制御動作を確保することができる。
【0055】その際、請求項2記載の発明では、請求項1記載の動力変換機構をベルト式無段変速機としてギヤ比を無段階で変化させて変速及びトルク増幅を行なうので、動力変換機構の入出力トルク及び回転数に対して自由度の高い制御を可能とし、異常発生時にも柔軟に対処することができる。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成11年4月21日(1999.4.21)
【代理人】 【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
【公開番号】 特開2000−308207(P2000−308207A)
【公開日】 平成12年11月2日(2000.11.2)
【出願番号】 特願平11−113931