トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 電力回生インバータ装置
【発明者】 【氏名】山本 光俊

【氏名】篠原 博

【氏名】馬場 謙二

【要約】 【課題】電力回生インバータ装置を備えている直流き電回路が短絡した場合に電力回生インバータ装置から流入する電流を抑制して事故の拡大の防止を図ることにある。

【解決手段】直流電車9が減速する際に生じる直流回生電力を商用電力系統13へ返還できるようにするために、直流電力を交流電力に変換する電力回生インバータ装置30を直流き電線8と商用電力系統13との間に接続するにあたって、当該電力回生インバータ装置30から前記直流き電線8の方向へ電流が流れるのを阻止する逆流阻止ダイオード40を挿入し、前記直流き電線8が短絡したときに、電力回生インバータ装置30を構成する平滑コンデンサ32の蓄積エネルギーが短絡点へ流入して、事故が拡大するのを防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】電気車へ直流電力を供給する直流き電回路にインバータを接続して前記電気車からの回生電力を前記インバータの交流電源側へ返還する電力回生インバータ装置において、前記インバータと直流き電回路との間に、このインバータから直流き電回路へ電流が流れるのを阻止する逆流阻止回路を備えることを特徴とする電力回生インバータ装置。
【請求項2】電気車へ直流電力を供給する直流き電回路にインバータを接続して前記電気車からの回生電力を前記インバータの交流電源側へ返還する電力回生インバータ装置において、前記インバータと直流き電回路との間にダイオードを挿入することを特徴とする電力回生インバータ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電力回生用のインバータを備えている直流き電回路が短絡しても事故の拡大を防止できる電力回生インバータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図2は電気車の主回路構成の一例を示した主回路接続図であって、直流き電線8からの直流電力はパンタグラフ17を介して直流電車9の車内へ取り込まれる。この直流電力はスイッチ23を介して、所望の電圧と周波数の交流電力に変換するVVVFインバータ19に与えられたのち、車輪22とレール21とを経て電源側へ還流する。誘導電動機20はこのVVVFインバータ19が出力する交流電力で駆動され、直流電車9を所望の速度で運転する。なおVVVFインバータ19の交流入力側には平滑コンデンサ18が接続されている。
【0003】走行中の直流電車9はその走行速度の2乗と直流電車9の質量との積に比例した運動エネルギーを保有しており、走行中の直流電車9を摩擦ブレーキを使って減速させると、その運動エネルギーは熱になって大気中に放散されてしまう。そこで直流電車9が減速する際の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して直流き電線8へ戻す電力回生運転を行えば、当該直流電車9は回生制動によりその速度を低下させることができるし、このときに回生された電気エネルギーで他の直流電車を力行運転するのに利用できるから、従来は無駄に捨てられていたエネルギーを有効利用できるので、多用されるようになってきている。
【0004】しかし、減速のために電力回生運転をしている直流電車9が接触している直流き電線8に、力行運転中の他の直流電車が接触していなければ、この回生電力は消費されないために直流き電線8の電圧を上昇させる。その結果、直流電車9の過電圧リレーが作動してスイッチ23をトリップさせるに至る。スイッチ23がトリップすれば直流電車9は回生制動により減速することができなくなってしまう。所謂回生失効現象を生じる。そこで直流き電線8と大地との間に短絡スイッチと抵抗器との直列回路を接続し、直流き電線8の電圧が上昇して所定値を越えれば、前記短絡スイッチを閉路して前記抵抗器で回生電力を消費させることにより、前述した回生失効現象の発生を回避するのであるが、この場合の回生電力は熱になって無駄に放散されるだけであり、省エネルギー効果は得られない。
【0005】図3は電気車が発生する回生電力を電源へ返還できる主回路構成の従来例を示した主回路接続図である。この従来例回路において、商用電力系統13からの交流電力は、第1遮断器1と第1変圧器2と整流器3により所望電圧の直流電力に変換されて直流き電線8へ供給されるから、直流電車9は所望の速度で走行することができる。なお符号21はレールである。この図3に図示の従来例回路では、自励式インバータ31とその直流側に接続した平滑コンデンサ32と直流リアクトル33と、当該自励式インバータ31の交流側に接続した第2変圧器34とで構成している電力回生インバータ装置30の直流側を直流き電線8とレール21との間に接続し、その交流側は第2遮断器35を介して商用電力系統13に接続している。
【0006】図4は図3の従来例回路に図示している電力回生インバータ装置の回路構成を示した主回路接続図であって、直流き電線8からの直流電力は直流リアクトル33と平滑コンデンサ32とを介して自励式インバータ31へ入力する。自励式インバータ31は、半導体スイッチ素子であるGTOサイリスタ31Gとダイオード31Dとの逆並列接続でなるスイッチング回路の6組を3相ブリッジ接続した構成であって、6組のスイッチング回路を適切な時点でオン・オフ動作させることにより、入力する直流電力を交流電力に変換しており、この交流電力を第2変圧器34で変圧して商用電力系統13へ返還するように動作する。
【0007】走行中の直流電車9が減速するのに伴って生じる回生電力は、この回生電力を消費する他の直流電車が存在しなければ直流き電線8の電圧を上昇させるが、電圧が所定値まで上昇すれば図示していない過電圧リレーが動作して電力回生インバータ装置30は作動を開始して、前述の動作により直流電車9からの回生直流電力を交流電力に変換し、第2遮断器35を介して商用電力系統13へ返還する。従って商用電力系統13に接続している他の電気機器はこの回生電力で運転し、省エネルギー効果が得られる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで直流き電線8は一般に風雨に晒される環境に設置されるから、事故を完全に排除することは困難である。例えば飛来物で直流き電線8と大地またはレール21とが短絡する事故や、直流き電線8が垂れ下がってレール21に接触するなどで短絡する事故が発生することがあり、このときは直ちに第1遮断器1と第2遮断器35をトリップさせて商用電力系統13を事故地点から切り離すことにより、事故の拡大の防止を図っている。しかしながら電力回生インバータ装置30を構成している平滑コンデンサ32にはエネルギーが蓄積されていて、第2遮断器35がトリップしても、この平滑コンデンサ32が短絡事故点へ電流を供給するので、故障を拡大させてしまう恐れがある。自励式インバータ31の直流側には大きな静電容量の平滑コンデンサ32が設置されるから、その蓄積エネルギーも大きく、事故時には過大な電流が流れる。
【0009】そこでこの発明の目的は、電力回生インバータ装置を備えている直流き電回路が短絡した場合に電力回生インバータ装置から流入する電流を抑制して事故の拡大の防止を図ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、この発明の電力回生インバータ装置は、電気車へ直流電力を供給する直流き電回路に、当該電気車からの回生電力を前記インバータの交流電源側へ返還する電力回生インバータ装置を接続する際に、当該電力回生インバータ装置から前記直流き電回路の方向へ電流が流れるのを阻止する逆流阻止回路を設置する。前記電力回生インバータ装置と直流き電線との間にダイオードを挿入して、直流き電線の方向への電流を阻止する。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施例を表した主回路接続図であるが、この図1の実施例回路は、図3で既述の従来例回路に逆流阻止ダイオード40を追加した構成であるから、図3の従来例回路と同じ部分の説明は省略する。
【0012】本発明の実施例では、電力回生インバータ装置30と直流き電線8との間に逆流阻止ダイオード40を挿入する。直流き電線8とレール21とが何らかの原因で短絡することは、平滑コンデンサ32の正負極間が短絡することであり、当該平滑コンデンサ32の蓄積エネルギーがこの短絡点を通って放電するのであるが、逆流阻止ダイオード40を挿入することで平滑コンデンサ32の蓄積エネルギーの放電を阻止するので、事故が拡大するのを防止できる。
【0013】
【発明の効果】直流き電線からの直流電力で走行する直流電車が減速する際に生じるエネルギーを有効利用するために、直流き電線に電力回生インバータ装置を接続し、直流電車が回生する直流電力を交流電力に変換して商用電力系統へ返還することで省エネルギー効果が得られる。しかし直流き電線に短絡事故が生じた場合に、従来は電力回生インバータ装置の構成要素である平滑コンデンサが短絡点へ大電流を供給するので、事故が拡大する恐れがあった。本発明では電力回生インバータ装置と直流き電線との間に逆流阻止ダイオードを挿入することで、短絡点へ大電流が供給されるのを阻止している。よって僅かな部品を追加するのみで短絡事故が拡大して大事故に発展する恐れを未然に防止できる効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
【出願日】 平成11年4月2日(1999.4.2)
【代理人】 【識別番号】100088339
【弁理士】
【氏名又は名称】篠部 正治
【公開番号】 特開2000−295704(P2000−295704A)
【公開日】 平成12年10月20日(2000.10.20)
【出願番号】 特願平11−96164