| 【発明の名称】 |
パンタグラフの覆いの姿勢保持方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】山上 順雄
【氏名】高瀬 秀樹
【氏名】小林 昇
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| 【要約】 |
【課題】空力騒音の低減ならびに雪害対策の目的で関節部の上枠および下枠の成す角が鋭角となる側である内側に蛇腹状の覆いを設けるが、この蛇腹状の覆いが気流によって寄せられて所期の目的を果せない場合がある。本発明は反なびき方向に走行する場合であっても、蛇腹状の覆いが姿勢を保持し、所期の目的を果たせるようにするものである。
【解決手段】蛇腹状の内側覆い18ならびにZ形パンタグラフ1の関節部5aなどにおいても、概ね気密性を保ったものとし、上枠部41あるいは下枠部42から関節部5aを覆う覆い16の内部に、走行による走行風の動圧を導入し、蛇腹状の内側覆い18の内面に作用する内圧を上昇させうる構成とする。これによって内側覆い18の外面に作用する圧力と内側覆い18の内面に作用する内圧とを、ほぼバランスさせて内側覆い18の姿勢を保持し、内側覆い18の所期の目的を確実に達成することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 上枠と下枠とを結合する関節部に覆いを設けたパンタグラフにおいて、覆いを含めて関節部を概ね気密とし、上枠部および下枠部の少なくとも一方から、関節部を覆う覆いの内部に走行による走行風の動圧を導入し、可撓性を有する蛇腹状の覆いの内面に作用する内圧を上昇させることによって覆いの内圧と覆いに作用する外圧とがほぼバランスして、覆いの姿勢を保持するようにしたことを特徴とするパンタグラフの覆いの姿勢保持方法。 【請求項2】 上枠と下枠とを結合する関節部に覆いを設けたパンタグラフにおいて、覆いを含めて関節部を概ね気密とし、関節部の側方から、関節部を覆う覆いの内部に走行による走行風の動圧を導入し、可撓性を有する蛇腹状の覆いの内面に作用する内圧を上昇させることによって覆いの内圧と覆いに作用する外圧とがほぼバランスして、覆いの姿勢を保持するようにしたことを特徴とするパンタグラフの覆いの姿勢保持方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば高速鉄道車両に好適に実施される、覆いを備えるパンタグラフの姿勢保持方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来から、電気鉄道車両においては、たとえば空中に支持された架線に、車両の屋根に取付けられたパンタグラフの舟体などが接触し、摺動しながら集電して車両に電力を供給する集電方式を採用している。パンタグラフには、舟体を支える枠組の構造によって、Z形パンタグラフ、菱形パンタグラフ、およびシングルアーム形パンタグラフなどがある。 【0003】Z形パンタグラフは、上枠、下枠、および2本の補助リンク部材などで構成されるリンク機構を形成する。上枠の一端には舟体が接続され、上枠の他端は下枠の一端と角変位自由に結合される。枠組は、前記上枠と下枠とが角変位自由に結合された関節部で、「く」の字状に屈曲する。Z形パンタグラフは、枠組を関節部で角変位することによって上下方向に伸縮され、舟体を昇降させる。 【0004】Z形パンタグラフに関する従来技術として、特開平1−138904号公報が挙げられる。上述の特開平1−138904号公報に開示されているZ形パンタグラフでは、Z形パンタグラフの下枠または中枠のいずれか一方の部材に、当該パンタグラフを上昇させるような回転力を加え、回転力を加えた部材に、その断面中心線を下縁側に向くようなオフセット量を加える。これによって、Z形パンタグラフの舟体を架線に押付ける付勢手段の部材の強度を保ちつつ軽量化し、架線への追随性を向上させることができる。 【0005】このようなZ形パンタグラフにおいて、前記関節部は、上枠、下枠、および2本の補助リンク部材などを角変位自由に連結するための多数のピン結合部材などによって凹凸が多く、車両走行時には周囲の気流を乱して空力騒音の発生原因になる。本件発明者は、空力騒音を低減させることができるパンタグラフについて、特開平8−265906号公報に開示されるように、既に提案している。 【0006】上述の特開平8−265906号公報に開示されているZ形パンタグラフは、前記関節部に、上枠と下枠との成す角が鈍角となる角度が大きい側の外側に設けられる外側覆いと、上述した上枠と下枠との成す角が鋭角となる角度が小さい側の内側に設けられる内側覆いとを備える。Z形パンタグラフは、外側覆いおよび内側覆いによって、関節部を走行方向前方に向けて走行するなびき方向、および関節部を走行方向後方に向けて走行する反なびき方向のいずれの走行であっても、関節部における気流の乱れを抑制して、空力騒音を低減することができる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】新幹線に代表される高速鉄道車両では、車両速度の高速化が進められている。また、速度上昇に伴い増加する騒音を減少させるために、様々な技術が考案され実施されている。特に新幹線では、騒音基準を満たすために、車両に様々な改良が加えられている。このように騒音を低減できるように車両を改良するために、車両の走行に伴う空力騒音の発生をより低減することのできるパンタグラフが望まれている。 【0008】本発明の目的は、車両が走行するときに発生する空力騒音を低減することができるパンタグラフを提供することである。 【0009】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明は、上枠と下枠とを結合する関節部に覆いを設けたパンタグラフにおいて、覆いを含めて関節部を概ね気密とし、上枠部および下枠部の少なくとも一方から、関節部を覆う覆いの内部に走行による走行風の動圧を導入し、可撓性を有する蛇腹状の覆いの内面に作用する内圧を上昇させることによって覆いの内圧と覆いに作用する外圧とがほぼバランスして、覆いの姿勢を保持するようにしたことを特徴とするパンタグラフの覆いの姿勢保持方法である。 【0010】本発明に従えば、上枠と下枠とを関節部で結合して形成されるパンタグラフにおいて、前記関節部は、可撓性を有する蛇腹状の覆いを用いて覆われる。前記覆いは、上枠および下枠の角変位を妨げることなく関節部を覆い、車両が関節部を前側にして走行するなびき方向およびその反対方向である反なびき方向に高速で走行するとき、この車両の走行に伴う走行風である気流が関節部に直接作用して乱れるのを防ぎ、空力騒音を低減することができる。 【0011】また車両が前記反なびき方向に走行するときには、概ね気密とされる関節部を覆う覆いの内部に、上枠部および下枠部の少なくとも一方から、車両の走行に伴う走行風である気流の動圧が導入される。これによって覆いの内面に作用する内圧が上昇して、前記気流によって覆いの外面に作用する外圧を大きく下まわることが防がれる。このようにして覆いは車両の走行中においても気流によって変形することなく、所定の形状を保持することができる。したがって関節部に覆いを設けることによる上述の効果が確実に得られる。 【0012】上述のように関節部を覆う覆いの内部には、前記気流の動圧が導かれるので、車両の走行速度および周囲の環境に応じて覆いの内圧の制御を行うような装置を別途に用いることなく、前記内圧を上昇させて車両の走行速度に応じた圧力に保つことができる。具体的に述べると、車両の速度の上昇時またはトンネル突入時など外圧すなわち覆いの外面に作用する気流の動圧が急に変動しても、覆いの内側に導入される動圧も同時に変動するので、前記内圧を外圧の変動に応じて変動させることができ、覆いの姿勢を保持できる。 【0013】このように覆いの外面に作用する外圧と覆いの内面に作用する内圧とをほぼバランスさせて覆いの姿勢を保持するので、覆いを構成する材料を剛性の高いものにする必要はなく、覆いを剛性の高い材料で形成した構成と比較して大きな力を要することなく上枠および下枠を角変位することができる。すなわち前記外圧および内圧によるパンタグラフの特性に対する影響が少ない。 【0014】またさらに覆いの姿勢保持は高速時に特に問題となるので、導入される空気量は豊富にあり、各部は厳密な気密でなくても機能を発揮できる。 【0015】またさらに前記動圧は、車両の走行時に気流にさらされやすい上枠部および下枠部の少なくとも一方から関節部を覆う覆いの内部に導かれるので、車両の走行に伴う気流による前記外圧の変動に応じて、前記内圧を確実に変動させることができる。 【0016】請求項2記載の本発明は、上枠と下枠とを結合する関節部に覆いを設けたパンタグラフにおいて、覆いを含めて関節部を概ね気密とし、関節部の側方から、関節部を覆う覆いの内部に走行による走行風の動圧を導入し、可撓性を有する蛇腹状の覆いの内面に作用する内圧を上昇させることによって覆いの内圧と覆いに作用する外圧とがほぼバランスして、覆いの姿勢を保持するようにしたことを特徴とするパンタグラフの覆いの姿勢保持方法である。 【0017】本発明に従えば、上枠と下枠とを関節部で結合して形成されるパンタグラフにおいて、前記関節部は可撓性を有する蛇腹状の覆いを用いて覆われる。前記覆いは、上枠および下枠の角変位を妨げることなく関節部を覆い、車両が関節部を前側にして走行するなびき方向およびその反対方向である反なびき方向に高速で走行するとき、この車両の走行に伴う走行風である気流が関節部に直接作用して乱れることを防ぎ、空力騒音を低減することができる。 【0018】また車両が前記反なびき方向に走行するときには、概ね気密とされる関節部を覆う覆いの内部に、関節部の側方から、車両の走行に伴う走行風である気流の動圧が導入される。これによって覆いの内面に作用する内圧が上昇して、前記気流によって覆いの外面に作用する外圧を大きく下まわることが防がれる。このようにして覆いは車両の走行中においても気流によって変形することなく、所定の形状を保持することができる。したがって関節部に覆いを設けることによる上述の効果が確実に得られる。 【0019】上述のように関節部を覆う覆いの内部には、前記気流の動圧が導かれるので、車両の走行速度および周囲の環境に応じて覆いの内圧の制御を行うような装置を別途に用いることなく、前記内圧を上昇させて車両の走行速度に応じた圧力に保つことができる。具体的に述べると、車両の速度の上昇時またはトンネル突入時など外圧すなわち覆いの外面に作用する気流の動圧が急に変動しても、覆いの内側に導入される動圧も同時に変動するので、前記内圧を外圧の変動に応じて変動させることができ、覆いの姿勢を保持できる。 【0020】このように覆いの外面に作用する外圧と覆いの内面に作用する内圧とを、ほぼバランスさせて覆いの姿勢を保持するので、覆いを構成する材料を剛性の高いものにする必要はなく、覆いをより剛性の高い材料で形成した構成と比較して、大きな力を要することなく上枠および下枠を角変位することができる。すなわち前記外圧および内圧によるパンタグラフの特性に対する影響が少ない。 【0021】またさらに覆いの姿勢保持は高速時に特に問題となるので、導入される空気量は豊富にあり、各部は厳密な気密でなくても機能を発揮できる。 【0022】またさらに前記動圧は、覆いによって覆われる関節部の側方から関節部を覆う覆いの内部に導かれるので、上述したように覆いによって乱されずに覆いの両側に振り分けられた速度の高い気流の動圧を取込むことができる。これによって覆いの外面に作用する圧力より大きな内圧を覆いの内面に作用させることができるので、覆いを所定の形状に確実に保持することができる。 【0023】 【発明の実施の形態】図1は本発明の実施の第1の形態のパンタグラフの覆いの姿勢保持方法が実施されるZ形パンタグラフ1の構成を示す正面図であり、図2は図1の左側から見たZ形パンタグラフ1の側面図であり、図3は図1の上方から見たZ形パンタグラフ1の平面図であり、図4は関節部5a付近を拡大して示す斜視図である。なお、図1は図解を容易にするため、部分的に切欠いて示されている。また本発明では便宜上、軌条が延びる方向である車両の前後軸方向を水平方向とし、軸条が敷設される地表面に垂直な方向を上下方向として説明する。本実施の形態のZ形パンタグラフ1は、たとえば車両2の屋根上に電気絶縁用の碍子3を介して固定される。Z形パンタグラフ1は、枠4、枠組5、舟体支持部材6、および舟体7を含んで構成される。 【0024】枠4は、枠組5を支え、この枠組5を碍子3を介して車両2の屋根上に固定する。また枠4には、舟体7を昇降させるために、ばねおよび空気シリンダなどで構成される昇降装置8が取付けられている。 【0025】枠組5は、略直円筒状の上枠9と、略長円筒状の下枠10と、上枠9内に挿通される第1補助リンク部材11と、下枠10内に挿通される第2補助リンク部材12とを有する。前記上枠9は、その上辺すなわち上部側表面21が、上枠9の軸線L1に平行となるように形成され、ストレートに通っている。上枠9の軸線方向一端部201は、上方に開放した略U字状の連結部材13に角変位自由に連結される。この連結部材13には、下枠10の軸線方向一端部202が固定される。上枠9および下枠10の各軸線方向一端部201,202は、連結部材13を介して、車両2の前後軸方向一方A1に凸となるように、上枠9の軸線L1および下枠10の軸線L2を含む仮想一平面(図1の紙面に平行な平面)内で角変位自由に結合される。このように枠組5は、上枠9、下枠10、第1補助リンク部材11、および第2補助リンク部材12によってリンク機構が形成され、上枠9と下枠10とが結合部である関節部5aで角変位して上下方向に伸縮する。 【0026】上枠9の軸線方向他端部203には、前記仮想一平面内で角変位自由に結合される舟体支持部材6を介して、舟体7が連結される。舟体7は、架線19と接触して、摺動しながら集電を行う。舟体7の幅方向両端には、一対のホーン15が取付けられている。このような舟体7は、枠組5が昇降装置8によって伸縮駆動されることによって、上下方向に昇降変位することができる。 【0027】また下枠10の軸線方向他端部204は、枠4の固定部材14に前記仮想一平面内で角変位自由に連結される。昇降装置8は、前記固定部材14と連動して舟体7を昇降させる。枠4には、図1に二点鎖線で示すように、昇降装置8および固定部材14を覆うカバー部材22が設けられる。 【0028】枠組5の関節部5aには、関節部5aを覆う覆い16が設けられる。覆い16は、上枠9および下枠10の各軸線L1,L2の成す角が鈍角(直角を含む)となる角度が大きい側の外側に設けられる外側覆い17と、前記角が鋭角となる角度が小さい側に設けられる内側覆い18とを有する。 【0029】外側覆い17は、前後軸方向一方A1側から関節部5aを覆うように設けられる。外側覆い17は、周壁25と、前記関節部5aに上方から臨む上壁26と、関節部5aに下方から臨む下壁27とを有する。前記周壁25の前後軸方向一方A1側の端部28は、水平面における断面形状がほぼ半円状であるように形成される。このような外側覆い17の前後軸方向一方A1側の端部28の最も前後軸方向一方A1側の先端を、上述した仮想一平面に垂直な方向(図1の紙面に垂直な方向)から見たときの側面17aは、直線状に形成される。この側面17aは、Z形パンタグラフ1が常用作用高さにある状態で、上下方向に沿って延びる。 【0030】上述した前記端部28は、水平面における断面形状が、最も前後軸方向一方A1側の先端の曲率半径が小さく、縁辺部29a,29bすなわち関節部5aに近接する例である前後軸方向他方A2側に向かうにつれて曲率半径が大きくなるような滑らかな曲線状に形成されてもよい。 【0031】外側覆い17の前後仮想一平面に垂直な方向の最大幅W3は、少なくとも下枠10の幅W2とほぼ同一に形成される。本実施の形態では、上枠9の幅W1は、前記幅W2,W3よりも狭く形成される。 【0032】図5は内側覆い18の具体的構成を説明するための正面図であり、図6は図5の内側覆い18の左側面図であり、図7(1)は図5の切断面線A−Aから見た断面図であり、図7(2)は図5の切断面線B−Bから見た断面図であり、図7(3)は図5の切断面線C−Cから見た断面図であり、図7(4)は図5の切断面線D−Dから見た断面図であり、図7(5)は図5の切断面線a−aから見た断面図であり、図7(6)は図5の切断面線b−bから見た断面図である。内側覆い18は、前後軸方向他方A2側から関節部5aを覆うように設けられる。 【0033】内側覆い18は、外観上2つのV字状のくびれ部36,37によって中空の蛇腹状に形成される。このような内側覆い18は、上枠9および下枠10が関節部5aで角変位するとき、上枠9の下半面に接する半円筒状の上端面31と下枠10の上半面に接する半円筒状の下端面32とが成す角度θ1が増加および減少する方向33に伸縮自在である。 【0034】内側覆い18の前後軸方向一方A1側の基端部である基部35から突出する各凸状部34a,34b,34cは、前後軸方向他方A2に向かうにつれて先細状となる。すなわち、図7(1)には図5の切断面線A−Aから見た上側凸状部34aの付け根付近の断面が示され、図7(2)には図5の切断面線B−Bから見た中央凸状部34bの付け根付近の断面が示され、図7(3)には図5の切断面線C−Cから見た下側凸状部34cの付け根付近の断面が示される。これらの図に示される上側凸状部34aの内側覆い18の上枠9および下枠10の各軸線L1,L2を含む仮想一平面に垂直な方向の付け根付近の幅W4は、上枠9の幅W1にほぼ等しく形成される。また中央凸状部34bの付け根付近の幅W5および下側凸状部34cの付け根付近の幅W6は、下枠10の幅W2にほぼ等しく形成される。 【0035】図7(4)および図7(5)に示すように、前記中央凸状部34bは前後軸方向他方A2に向かうにつれて先細状となる。すなわち図7(4)に示される中央凸状部34bの先端部付近の幅W7は、この中央凸状部34bの付け根付近の幅W5よりも小さく形成される。また各凸状部34a,34cは、先端部付近の幅は付け根付近の各幅W4,W6と同一であるけれども、図1から明らかなように幅方向および各凸状部34a,34cの突出方向と垂直な方向の寸法が小さくなるように、前後軸方向他方A2に向かうにつれて先細状となる。さらに図7(6)に示すように、くびれ部36,37においても前後軸方向他方A2に向かって先細状に形成されている。 【0036】図1の2点斜線23で示されるように枠組5を折り畳んだとき、内側覆い18は、関節部5aを前後軸方向他方A2側から覆った状態のままで、上枠9と下枠10とによって圧縮され、また図1の実線で示されるように、Z形パンタグラフ1が常用作用高さに伸長したとき、前記関節部5aを覆った状態で元の状態に復帰し、上枠9および下枠10の角変位動作を許容することができる。このため内側覆い18は、材料としてたとえば布を用いる場合には、布をバイアス方向に配置して材料に伸縮性を持たせるなどして内側覆い18に可撓性を備えさせ、上述したZ形パンタグラフ1の伸縮動作の妨げとならないように形成される。前記バイアス方向とは、布の織目が上述した伸縮の方向に対して斜めとなる方向をさす。 【0037】上述のように構成される外側覆い17および内側覆い18によって、枠組5の関節部5aが覆われる。これによって、車両2が関節部5aを前側にして走行するなびき方向、すなわち前後軸方向一方A1に走行するとき、この走行によって発生する走行風である気流を、外側覆い17の前記端部28によって前記上枠9および下枠10の各軸線L1,L2を含む仮想一平面に沿って滑らかに振り分けることができる。さらに前後軸方向他方A2に向かうにつれて、先細状に形成される内側覆い18によって、上述のように振り分けられた気流を、走行方向上流側で滑らかに合流させることができる。したがって車両の走行に伴う気流が関節部5aに直接作用して乱れることを抑制し、このような気流の乱れによって発生する渦の相互の干渉を防ぎ、車両の走行に伴う空力騒音を低減することができる。 【0038】さらに上枠9は、上辺すなわち上部側表面21が、上枠9の軸線L1と平行となるようにストレートに形成されているので、これによっても気流を滑らかに案内することができる。 【0039】逆に、車両2が前記なびき方向の反対方向である反なびき方向、すなわち前後軸方向他方A2に走行するときには、前記走行方向下流側に向かうにつれて、先細状に形成される内側覆い18によって、車両2の走行に伴って走行方向下流側から関節部5aに作用する気流を、前記仮想一平面に沿って滑らかに振り分けることができる。さらにこのとき、前述の振り分けられた気流を、外側覆い17の周壁25の側面に沿って乱すことなく、走行方向の上流側へと流すことができる。したがって前記気流が関節部5aに直接作用して乱れることによって発生する渦の相互の干渉を防ぎ、空力騒音を低減することができる。 【0040】またさらに上述したような内側覆い18で関節部5aを覆っていることによって、降雪時に車両2が前記反なびき方向に走行しているときには、関節部5aを覆う覆い16の内部に雪が入り込むのを防ぐことができる。すなわち上述した降雪時における反なびき方向の走行では、雪が直接関節部に当たるとともに、車両の走行に伴う気流によって関節部に雪が集まる傾向があり、関節部に着氷することが考えられる。このような着氷が起こると、Z形パンタグラフの伸縮などの機能を阻害することもある。このような不具合を解消するために、本発明では、内側覆い18はその内部に雪が入り込むのを防ぐ役目もある。 【0041】また外側覆い17の最大幅W3は、少なくとも下枠10の幅W2とほぼ同一に形成され、これによっても空力騒音を低減することができる。本実施の形態では、上枠9の幅W1は、下枠10の幅W2および外側覆い17の最大幅W3よりも狭く形成される。また上枠9の幅W1を下枠10の幅W2および外側覆い17の最大幅W3と等しく形成することも可能である。これによっても本実施の形態と同様の効果を得ることができる。 【0042】また上述したように、昇降装置8および固定部材14を覆ってカバー部材22が設けられるので、これによって車両2の走行に伴う気流が、昇降装置8および固定部材14に直接作用するのを防ぐことができる。したがって前記カバー部材22が設けられない構成と比較して、空力騒音をより低減することができる。 【0043】本発明のZ形パンタグラフ1は、外側覆い17と内側覆い18とが、相互に、かつ上枠9および下枠10に対してほとんど隙間のない状態で得られる。すなわち関節部5aを覆う覆い16の内部は概ね気密状態とされる。これによって車両2が反なびき方向すなわち前後軸方向他方A2に走行するとき、関節部5aを覆う覆い16の内部に、車両2の走行に伴う走行風である気流の動圧が導入される。前記関節部5aを覆う覆い16の内部とは、外側覆い17および内側覆い18によって覆われる関節部5a付近の空間をさす。前記空間は、上枠9の内部空間および下枠10の内部空間と連通する。この関節部5aを覆う覆い16の内部に導入される前記動圧を取込むための取込口は、上枠部41および下枠部42の少なくともいずれか一方に形成される。前記上枠部41は、上枠9および上枠9付近の部材を含むZ形パンタグラフ1の関節部5aより上側の部分をさす。同様に前記下枠部42は、下枠10および下枠10付近の部材を含むZ形パンタグラフ1の関節部5aより下側の部分をさす。 【0044】前記動圧を取込むための取込口として、たとえば図1に示す取込口47が上枠部41に形成される。このとき内側覆い18は、前後軸方向一方A1側の端部である基部35が、外側覆い17の前後軸方向他方A2側の端部である各縁辺部29a,29bとの間に隙間をほとんど形成しない状態で設けられる。 【0045】取込口47は、上枠9の軸線方向他端部203に形成される。これによって車両2が反なびき方向に走行するとき、前記取込口47から矢符43で示されるように上枠9の内部空間に車両2の走行に伴う気流の動圧を取込み、上枠9の内部空間を通して矢符45で示されるように関節部5aを覆う覆い16の内部に導入し、内圧すなわち内側覆い18の内面に作用する圧力を停車時に比べて上昇させることができる。 【0046】これによって前記内圧は、外圧すなわち前記気流によって内側覆い18の外面に作用する圧力を大きく下まわることが防がれる。このようにして、内側覆い18は車両2の反なびき方向の走行中においても気流によって変形することなく、所定の形状を保持することができる。したがって関節部5aに内側覆い18を設けることによる上述の効果が確実に得られる。 【0047】また関節部5aを覆う覆い16の内部には前記気流の動圧が導かれるので、車両2の走行速度に応じて内側覆い18の内圧の制御を行うような装置を別途に用いることなく、内側覆い18の前記内圧を車両2の走行速度に応じた圧力に保つことができる。具体的に述べると、車両2の速度の上昇時またはトンネル突入時など外圧すなわち内側覆い18の外面に作用する気流の動圧が急に変動しても、覆い16の内側に導入される動圧も同様に変動するので、前記内圧を外圧の変動に応じて変動させることができ、内側覆い18の姿勢を確実に保持することができる。 【0048】このように内側覆い18の外面に作用する外圧と内側覆い18の内面に作用する内圧とをほぼバランスさせているので、内側覆い18を構成する材料を剛性の高いものにする必要はない。これによって内側覆い18を剛性の高い材料で形成した構成と比較して、Z形パンタグラフ1の特性に対する影響が少ない。すなわち前記外圧および内圧が、Z形パンタグラフ1の伸縮および架線19の押上げなどに与える影響が少ない。 【0049】また内側覆い18を上述のように材料に伸縮性を持たせるようにして実現した場合においても、本実施の形態のように内側覆い18の内部に前記動圧を導入することによって内側覆い18の内面に作用する内圧を上昇させて、前記材料を伸びた状態に保つことができる。言い換えると内側覆い18を張った状態とし、姿勢を保持することができる。 【0050】またさらに、内側覆い18の姿勢保持は車両2が反なびき方向に高速で走行するときに特に問題となるので、覆い16の内部に導入される空気量は豊富にあり、各部は厳密な空気でなくても機能を発揮することができる。 【0051】またさらに前記動圧は、車両2の走行時に気流にさらされやすい上枠部41から、関節部5aを覆う覆い16の内部に導かれるので、車両2の走行に伴う気流による前記外圧の変動に応じて、前記内圧を確実に変動させることができる。 【0052】また取込口47に代えて、図1に示すように取込口48を形成するようにしてもよく、この取込口48は下枠10の軸線方向他端部204に形成される。これによって車両2が前記反なびき方向に走行するとき、前記取込口48から矢符44で示されるように下枠10の内部空間に車両2の走行に伴う気流の動圧を取込み、下枠10の内部空間を通して矢符45で示されるように前記関節部5aを覆う覆い16の内部に導入し、内圧を上昇させることができる。これによって上述した上枠部41に取込口47を形成する場合と同様の効果を得ることができる。 【0053】このように取込口47,48は、少なくともいずれか一方が形成されればよく、また取込口47,48を共に形成するようにして、動圧を確実に導入するようにしてもよい。 【0054】また上枠部41および下枠部42の取込口47,48に代えて、関節部5aの側方に、図1に示す取込口49を形成してもよい。このとき、上枠9および下枠10には、各取込口47,48は形成されない。 【0055】たとえば取込口49は、内側覆い18の前後軸方向一方A1側の端部である基部35と外側覆い17の前後軸方向他方A2側の端部である縁辺部29a,29bとの間の隙間として形成される。これによって車両2が前記反なびき方向に走行するとき、矢符46で示されるように前記取込口49から車両2の走行に伴う走行風である気流の動圧を取込み、前記関節部5aを覆う覆い16の内部に導入し、内圧を上昇させることができる。これによって内圧すなわち内側覆い18の内面に作用する圧力が、外圧すなわち走行風によって内側覆い18の外面に作用する圧力を大きく下まわることが防がれ、内側覆い18は車両2の走行中においても気流によって変形することなく、所定の形状を保持することができる。したがって関節部5aに内側覆い18を設けることによる上述の効果が確実に得られる。 【0056】また関節部5aを覆う覆い16の内部には前記気流の動圧が導かれるので、車両2の走行速度に応じて内側覆い18の内圧の制御を行うような装置を別途に用いることなく、内側覆い18の内圧を上昇させて車両2の走行速度に応じた圧力に保つことができる。具体的に述べると、車両2の走行の上昇時またはトンネル突入時など外圧すなわち内側覆い18の外面に作用する動圧が急に変動しても、内側覆い18の内面に作用する動圧も同様に変動するので、前記内圧を外圧の変動に応じて変動させることができ、内側覆い18の姿勢を確実に保持することができる。 【0057】さらに内側覆い18の外面に作用する外圧と内側覆い18の内面に作用する内圧とをほぼバランスさせているので、内側覆い18を構成する材料を剛性の高いものにする必要はない。これによって内側覆い18を剛性の高い材料で形成した構成と比較して、Z形パンタグラフ1の特性に対する影響が少ない。すなわち前記外圧および内圧が、Z形パンタグラフ1の伸縮および架線19押上げなどに与える影響が少ない。 【0058】また内側覆い18を上述のように材料に伸縮性を持たせるようにして実現した場合においても、本実施の形態のように内側覆い18の内部に前記動圧を導入することによって内側覆い18の内面に作用する内圧を上昇させて、前記材料を伸びた状態に保つことができる。言い換えると内側覆い18を張った状態とし、姿勢を保持することができる。 【0059】またさらに、内側覆い18の姿勢保持は車両2が反なびき方向に高速で走行するときに特に問題となるので、覆い16の内部に導入される空気量は豊富にあり、各部は厳密な空気でなくても機能を発揮することができる。 【0060】またさらに前記動圧は、内側覆い18に対して気流の下流側に位置する関節部5aの側方に形成される取込口49から前記関節部5aを覆う覆い16の内部に導かれるので、上述のように内側覆い18によって乱されずに内側覆い18の両側に振り分けられた速度の高い気流の動圧を取込むことができる。これによって、内側覆い18の外面に作用する動圧より、前記バランスを保持できる程度に大きな内圧を、内側覆い18の内面に作用させることができる。これによって内側覆い18を所定の形状に確実に保持することができる。 【0061】図8は本発明の実施の第2の形態のパンタグラフの覆いの姿勢保持方法が実施されるZ形パンタグラフ51を簡略化して示す正面図であり、図9は内側覆い52の断面形状を示す図であり、図9(1)は図8の切断面線E−Eから見た断面を示し、図9(2)は図8の切断面線F−Fから見た断面を示し、図9(3)は図8の切断面線G−Gから見た断面を示し、図9(4)は図8の切断面線H−Hから見た断面を示し、図10は内側覆い52の先端部53付近の斜視図である。図8に示す本実施の形態のZ形パンタグラフ51は、図1〜図7に示す実施の第1の形態で示したZ形パンタグラフ1と類似の構成を有しており、対応する部分に同一の参照符を付し、構成が大きく異なる特徴のある構成について説明する。本実施の形態で示すZ形パンタグラフ51が、上述した実施の第1の形態で示したZ形パンタグラフ1と大きく異なるのは、内側覆い52である。 【0062】内側覆い52は、図9(1)に示されるように外観上上枠9から下枠10に向かう方向に延びる複数のV字状の第1くびれ部55と、この第1くびれ部55に交差する方向に延びる図9(4)に示される複数の第2くびれ部56とによって中空の蛇腹状に形成される。このような内側覆い52は、上枠9および下枠10が関節部5aで角変位するとき、上枠9の下半面に接する半円筒状の上端面57と下枠10の上半面に接する半円筒状の下端面58とが成す角度が増加および減少する方向に伸縮自在である。 【0063】内側覆い52の前後軸方向一方A1側の端部である基部54から突出する各凸状部59a,59b,59cは、前後軸方向他方A2に向うにつれて先細状となる。すなわち図9(2)には図8の切断面線F−Fから見た中央凸状部59bの付け根付近の断面が示され、図9(3)には図8の切断面線G−Gから見た中央凸状部59bの先端部53付近の断面が示され、図9(4)には図8の切断面線H−Hから見た中央凸状部59bの断面が示される。これらの図に示されるように、内側覆い52の上枠9および下枠10の各軸線L1,L2を含む仮想一平面に垂直な方向の幅は、前記前後軸方向一方A1側の端部である基部54から前記前後軸方向他方A2側の第2のくびれ部56に向かうにつれて一旦小さくなり、第2くびれ部56から逆に大きくなり、中途部60で最大の幅W10となり、さらに前記前後軸方向他方A2側である先端部53に向かうにつれて再び小さくなるように先細状に形成される。このように各凸状部59a,59b,59cは前後軸方向他方A2に向かうにつれて先細状となる。 【0064】また上側凸状部59aの付け根付近の幅W8は、上枠9の幅W1にほぼ等しく形成される。また中央凸状部59bおよび下側凸状部59cの付け根付近の幅W9は、下枠10の幅W2にほぼ等しく形成される。図9(1)および図9(3)に示す断面における各幅W8,W9,W11は、図9(2)における内側覆い52の最大幅W10よりも当然小さい。図9(2)〜図9(4)には、各凸状部59a〜59cのうちの1つの代表として、中央凸状部59bの断面が示される。 【0065】内側覆い52は、上述した実施の第1の形態で示した内側覆い18と同様に、枠組5を折り畳んだとき、関節部5aを前後軸方向他方A2側から覆った状態のままで上枠9と下枠10とによって圧縮され、またZ形パンタグラフ51が常用作用高さに伸長するとき、前記関節部5aを覆った状態で元の状態に復帰し、上枠9および下枠10の角変位動作を許容することができる。 【0066】このような形状の内側覆い52であっても、上述した実施の第1の形態で示したZ形パンタグラフ1に設けられる内側覆い18と同様の車両2のなびき方向および反なびき方向のいずれの走行においても空力騒音を低減できる効果を達成する。また前記内側覆い52は、同様に関節部5aを覆う覆い66の内部が概ね気密状態とされ、車両2が前記反なびき方向に走行するとき、前記関節部5aを覆う覆い66の内部に車両2の走行に伴う走行風である気流の動圧が導入される。この関節部5aを覆う覆い66の内部に導入される前記動圧を取込むために、上述した実施の第1の形態で示したZ形パンタグラフ1と同様に、上枠部41に形成される取込口47および下枠部42に形成される取込口48の少なくともいずれか一方が形成される。また上述した実施の第1の形態で示したZ形パンタグラフ1と同様に、前記取込口47,48に代えて、関節部5aの側方に取込口49が形成される。これによって内側覆い52の姿勢を保持し、上述の内側覆い52の効果を達成することができる。 【0067】具体的に述べると、このような取込口47〜49を形成しない場合、車両が前記反なびき方向に走行するときあるいは、さらに高速で反なびき方向に走行するとき、図11に示すように車両の走行方向300の前方からの気流301、上枠の下端面に案内される気流302および下枠の上端面に案内される気流303が、それぞれ内側覆いの外面に作用する。これによって可撓性を有する内側覆いは、図11に矢符310,311で示すように各々上枠および下枠から離れる方向に変形して寄せられてしまい、内側覆いの上述したような所期の目的を果せないという不具合が生じる。本発明のパンタグラフは、上述したように関節部5aを覆う覆い66の内部に車両2の走行に伴う気流の動圧を導入するための取込口を形成するので、このような不具合を解消することができる。 【0068】本発明では、図12に示すように前記関節部5aを覆う覆い66の内部に導入される動圧を取込むための取込口が、上枠部41および下枠部42の少なくともいずれか一方に形成される。前記各取込口は、図1に示した各取込口47,48と同様に形成され、同一の参照符を付し、説明は省略する。このとき内側覆い52は、前後軸方向一方A1側の端部である基部54が、外側覆い17の前後軸方向他方A2側の端部である各縁辺部29a,29bとの間に隙間をほとんど形成しない形状で設けられる。 【0069】Z形パンタグラフ51においても、上枠部41および下枠部42の少なくとも一方から関節部5aを覆う覆い66の内部に気流の動圧を導入することによる効果が、上述した実施の第1の形態で示したZ形パンタグラフ1と同様に得られる。このとき前記関節部5aを覆う覆い66の内部に導かれる動圧は、車両2が反なびき方向に走行するとき、車両2の走行方向となる前後軸方向他方A2側に臨んで開口する取込口47および取込口48の少なくとも一方から取込まれる。したがって内圧すなわち内側覆い52の内面に作用する圧力は、図11に示したような内側覆い52の前方からの気流301、上枠9の上端面に案内される気流302、および下枠10の上端面に案内される気流303によって内側覆い52の外面に作用する動圧とほぼ等しい。したがって内側覆い52に外面から作用する外圧を、前記関節部5aを覆う覆い66の内面に作用する内圧によって相殺することができる。これによって可撓性を有する内側覆いが図11に矢符310,311で示すように変形してしまうことを防ぐことができる。このように本実施の形態に示すZ形パンタグラフ51においても、車両2が反なびき方向に走行する場合でも、内側覆い52の形状を、図8に示すような好適に気流を案内することができる形状に確実に保持することができる。したがって上述した内側覆い52の空力騒音を低減することができる効果を確実に達成することができる。 【0070】このような取込口47,48は、少なくともいずれか一方が形成されればよく、また取込口47,48を共に形成するようにして、動圧を確実に導入するようにしてもよい。 【0071】また各取込口47,48に代えて、図13に示すように、関節部5aの側方に取込口が形成される。前記取込口は、図1に示した取込口49と同様に形成され、同一の参照符を付し、説明は省略する。 【0072】Z形パンタグラフ51においても、関節部5aの側方から関節部5aを覆う覆い66の内部に気流の動圧を導入することによる効果が、上述した実施の第1の形態で示したZ形パンタグラフ1と同様に得られる。 【0073】前記内側覆い52は、内側覆い52を形成する材料およびその材料の配置によって可撓性を有することが可能であるけれども、上述した実施の第1の形態のZ形パンタグラフ1に備えられる内側覆い18と比較してくびれた部分が多く、車両との反なびき方向の走行では図11に示されるような気流の影響で形状を容易に保持することができない不具合を有する。しかしながら上述した内側覆い52の内部に気流の動圧を導く本発明の覆いの姿勢保持方法によって、内側覆い52の内面に作用する内圧を上昇させて内側覆い52を張った状態とし、姿勢を保持することができる。 【0074】図14は、気流の動圧を取込むために上枠部41に形成される取込口47の具体的な構造を示す、上枠9の軸線方向他端部203付近の上枠9の軸線L1および下枠10の軸線L2を含む仮想一平面における簡略化した断面図である。上枠9は、上枠本体71と、上枠本体71の軸線方向他端部205にその軸線方向一端部206が気密に嵌着される連結片72を有する。連結片72の軸線方向他端部207側の領域では、上壁部73および下壁部74が切欠かれて、間隔をあけた側壁部75a,75bが突出しており、各側壁部75a,75b間に舟体支持部材6の連結部76が嵌まり込む状態で、両側から挟むようにして設けられ、舟体支持部材6に回動自在に連結される。連結部76は、舟体支持部材6の本体の前後軸方向一方A1側の側部に固定され、前後軸方向一方A1側の上端が上方および前後軸方向一方A1に凸となる滑らかな孤を描くように形成される。 【0075】この連結片72の軸線方向他端部207の下壁部74に形成される切欠きによって連結片72と連結部76との間に開口が形成され、この開口が前記取込口47として機能する。上枠9の内部空間内に挿通される第1補助リンク部材11は、その軸線方向他端部208が屈曲して前記取込口47から上枠9の外部空間に突出し、前記連結部76に回動自在に連結される。 【0076】前記連結片72の上壁部73には、前後軸方向他方A2側の端部79に、たとえばポリテトラフルオロエチレンなどの可撓性および弾発性を有し、さらに耐寒性を有する材料から成る摺動部材80が固定されている。摺動部材80の遊端部80aは、少なくとも本発明のパンタグラフが常用作用高さに伸長された状態で、連結部76の前後軸方向一方A1側の上端に、前後軸方向一方A1側から弾発的に当接し、連結部76との隙間を塞いでいる。このような摺動部材80を用いることによって、舟体支持部材6に対する上枠9の角変位を許容するために容易に変形することができるとともに、不所望な変形を防止することができる。 【0077】このようにして車両2の走行時に気流にさらされやすい上枠9に、取込口47が形成される。この取込口47は、車両2が前記反なびき方向に走行するとき、車両2の走行方向に臨んで開口し、車両2の走行に伴って生じる気流に対向して、矢符43で示されるように取込口47から上枠9の内部空間へと前記気流の動圧を確実に取込むことができる。 【0078】またさらに前記摺動部材80によって、上述の車両2の走行に伴う気流が上枠9および下枠10の角変位に伴って生じる前記隙間に臨む壁部にぶつかって、隙間の空気が振動して乱れることによって騒音を発生する、いわゆる「笛吹き」の現象を防ぐことができる。さらに摺動部材80は、降雪時に車両2が走行する場合には、前述の隙間から上枠9の内部空間に雪が入り込むのを防ぐことができる。またポリテトラフルオロエチレンから成ることによって、雪および雨水が氷結してしまうことがない。 【0079】上述したような気流の動圧を取込むために上枠部41に取込口47を形成した場合の具体的な構造は、実施の第1の形態で示したZ形パンタグラフ1および実施の第2の形態で示したZ形パンタグラフ51のいずれについても同様に形成される。 【0080】図15は、実施の第2の形態で示したZ形パンタグラフ51に取込口47が形成される場合の外側覆い17および内側覆い52によって覆われる関節部5a付近の具体的な構造を示す、上枠9の軸線L1および下枠10の軸線L2を含む前記仮想一平面で一部切欠いた簡略化した側面図である。上枠9は、前記上枠本体71および連結片72に加えて、上枠本体71の軸線方向一端部209に嵌着される連結片81とを有する。連結片81は、軸線方向一端部210が上枠本体71に気密に嵌着され、軸線方向他端部211が連結部材に回動自在に連結される。連結片81は軸線方向他端部211が球の一部をなす形状に形成され、この連結片81の軸線方向他端部211寄りの領域の下部には、開口82が形成される。第1補助リンク部材11は、軸線方向一端部212が下方に屈曲して前記開口82から上枠9の外部空間に突出し、連結部材に回動自在に連結される。 【0081】外側覆い17は、前述のように周壁25、上壁26、および下壁27を有し、前後軸方向他方A2側に開放しており、この開放する側の部分、具体的には周壁25の縁辺部29a,29bおよび縁辺部29a,29bに連なる下壁27の前後軸方向他方A2側の部分とによって、連結部材を外側から覆うように、連結部材に固定される。 【0082】このとき連結部材と外側覆い17との間には、隙間は形成されていない。外側覆い17の上壁26は、上枠9の連結部材に対する角変位を許容するために、前後軸方向他方A2側が部分的に切欠かれ、隙間が形成されている。この上壁26には、前後軸方向他方A2側の端部83に、たとえばポリテトラフルオロエチレンなどの可撓性および弾発性を有し、さらに耐寒性を有する材料から成る摺動部材84が固定されている。摺動部材84の遊端部84aは、少なくともZ形パンタグラフ51が常用作用高さに伸長された状態で、連結片81の上面85に上側から弾発的に当接し、連結片81との間の隙間を塞いでいる。このような摺動部材84を用いることによって、連結部材に対する上枠9の角変位を許容するために容易に変形することができるとともに、不所望な変形を防止することができる。 【0083】また内側覆い52は、Z形パンタグラフ51が常用作用高さに伸長した状態で、内側覆い52の前後軸方向一方A1側の端部である基部54と外側覆い17が前後軸方向他方A2側の端部である縁辺部29a,29bとの間に隙間がほとんど形成されないように設けられている。 【0084】このようにして、枠組5の関節部5aは、外側覆い17および内側覆い52によって、上枠9および下枠10との間に隙間ができないように覆われ、この関節部5a付近で大きな隙間を介して外部に連通しないように、大略的に気密に覆われる。上枠9の軸線方向一端部201および下枠10の軸線方向一端部202は、外側覆い17および内側覆い52によって囲まれる外部と大略的に気密に仕切られた空間に臨んで開口している。これによって上述したように取込口47から上枠9内に取込まれた気流の動圧は、概ね気密状態とされる関節部5aを覆う覆い66の内部に確実に導入される。 【0085】またさらに前記摺動部材84によって、上述の車両2の走行に伴う気流が上枠9および下枠10の角変位に伴って生じる前記隙間に臨む壁部にぶつかって、隙間の空気が振動して乱れることによって騒音を発する、いわゆる「笛吹き」の現象を防ぐことができる。さらに摺動部材84は、降雪時に車両2が走行する場合には、前述の隙間から前記覆い66の内部に雪が入り込むのを防ぐことができる。またポリテトラフルオロエチレンから成ることによって、雪および雨水が氷結してしまうことがない。 【0086】上述したような取込口47が形成される場合の外側覆い17および内側覆い52によって覆われる関節部5a付近の具体的な構造は、実施の第1の形態で示したZ形パンタグラフ1についても同様に形成される。 【0087】図16は、気流の動圧を取込むために下枠部42に形成される取込口48の具体的な構造を示す下枠10の軸線方向他端部204付近の、上枠9の軸線L1および下枠10の軸線L2を含む仮想一平面における簡略化した断面図である。下枠10は、軸線方向他端部204が前後軸方向他方A2側および下方に臨んで開口しており、この開口が取込口48として機能する。 【0088】このように車両2の走行時に気流にさらされやすい下枠部42に、取込口48が形成される。この取込口48は、車両2が前記反なびき方向に走行するとき、車両2の走行方向に臨んで開口し、車両2の走行に伴って生じる気流に対向して矢符44で示されるように取込口48から下枠10内へと前記気流の動圧を確実に取込むことができる。 【0089】本発明は、上述の各実施の形態に示したZ形パンタグラフに限定されることなく、形状および材質などの変更は可能である。さらに気流の動圧を取込むための取込口についても、上枠部および下枠部の少なくともいずれか一方、あるいは関節部の側方に形成されればよく、上述の各実施の形態で示した取込口に限定されない。また関節部を覆う覆いの内部に動圧を導くために、管路などを別途に設ける構成であってもよい。 【0090】 【発明の効果】以上のように本発明によれば、上枠と下枠とを関節部で結合して形成されるパンタグラフにおいて、前記関節部は、可撓性を有する蛇腹状の覆いを用いて覆われる。前記覆いは、上枠および下枠の角変位を妨げることなく関節部を覆い、車両が関節部を前側にして走行するなびき方向およびその反対方向である反なびき方向に高速で走行するとき、この走行に伴う走行風である気流が関節部に直接作用して乱れるのを防ぎ、空力騒音を低減することができる。 【0091】また車両が前記反なびき方向に走行するときには、概ね気密とされる関節部を覆う覆いの内部に、上枠部および下枠部の少なくとも一方から、車両の走行に伴う走行風である気流の動圧が覆いの内圧として導入される。これによって覆いの内面に作用する内圧が、前記気流によって覆いの外面に作用する外圧を大きく下まわることが防がれ、覆いは車両の走行中においても気流によって変形することなく、所定の形状を保持することができる。したがって関節部に覆いを設けることによる上述の効果が確実に得られる。 【0092】上述のように関節部を覆う覆いの内部には、前記気流の動圧が導かれるので、車両の走行速度および周囲の環境に応じて覆いの内面に作用する内圧の制御を行うような装置を別途に用いることなく、前記内圧を車両の走行速度に応じた圧力に保つことができる。具体的に述べると、車両の速度の上昇時またはトンネル突入時など覆いの外面に作用する気流の動圧が急に変動しても、覆いの内側に導入される動圧も同時に変動するので、覆いの姿勢を保持できる。 【0093】このように覆いの外面に作用する外圧と導入した前記内圧とをほぼバランスさせて覆いの姿勢を保持するので、覆いを構成する材料を剛性の高いものにする必要はなく、覆いを剛性の高い材料で形成した構成と比較して大きな力を要することなく上枠および下枠を角変位することができる。すなわち前記外圧および内圧によるパンタグラフの特性に対する影響が少ない。 【0094】またさらに覆いの姿勢保持は高速時に特に問題となるので、導入される空気量は豊富にあり、各部は厳密な気密でなくても機能を発揮できる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000974 【氏名又は名称】川崎重工業株式会社 【識別番号】598143103 【氏名又は名称】川重車両エンジニアリング株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年3月25日(1999.3.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075557 【弁理士】 【氏名又は名称】西教 圭一郎 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−278804(P2000−278804A) |
| 【公開日】 |
平成12年10月6日(2000.10.6) |
| 【出願番号】 |
特願平11−82611 |
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