| 【発明の名称】 |
二次電池の電池容量劣化算出方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】辻 匡
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| 【要約】 |
【課題】二次電池の電池容量劣化を精度良く算出することができる電池容量劣化算出方法の提供。
【解決手段】二次電池の劣化時電池容量と初期電池容量との容量比から電池容量劣化を算出する二次電池の電池容量劣化算出方法において、容量比を電池初期時の開放電圧対放電電気量特性の回帰直線f20の傾きK0と電池劣化時の回帰直線f21の傾きKdとの比で算出するようにした。そのため、回帰直線f21の放電電気量に誤差ε(Ah)が生じても回帰直線f20の傾きK0は変化せず、誤差に影響されることなく容量劣化を精度良く算出することができる。特に、ハイブリッド自動車の場合には放電電気量の積算誤差が出やすいので効果的である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 二次電池の劣化時電池容量と初期電池容量との容量比から電池容量劣化を算出する二次電池の電池容量劣化算出方法において、前記容量比を、電池初期時の開放電圧対放電電気量特性の傾きと電池劣化時の開放電圧対放電電気量特性の傾きとの比で算出することを特徴とする二次電池の電池容量劣化算出方法。 【請求項2】 請求項1に記載の電池容量劣化算出方法において、前記開放電圧対放電電気量特性における放電電気量は、放電電気量を車両起動毎にゼロにリセットして各起動時から積算した放電電気量積算値であることを特徴とする二次電池の電池容量劣化算出方法。 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の電池容量劣化算出方法において、前記二次電池は、原動機の出力および/または電動機の出力で走行駆動力を得るハイブリッド自動車の前記電動機に電力を供給する二次電池であることを特徴とする二次電池の電池容量劣化算出方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ハイブリッド電気自動車等を含む電気自動車駆動に用いられる二次電池の電池容量劣化算出方法に関する。 【0002】 【従来の技術】二次電池の電池特性の一つに、パワー対放電電力特性がある。通常、基本となる初期特性Wh(P)を温度補正係数α,電池容量劣化を表す容量劣化補正係数βおよび内部抵抗劣化を表す内部抵抗劣化補正係数γで補正した基準特性を用いて放電電力量の推定などが行われる。ここで用いられる容量劣化補正係数βおよび内部抵抗劣化補正係数γの算出方法としては、本発明者が特開平10−289734号で提案したものが一例としてあげられる。 【0003】前記特開平10−289734号で提案した容量劣化補正係数βの算出方法では、初期特性Wh(P)を内部抵抗劣化補正係数γでWh(Pn/γ)と補正し、実放電電力量(積算値)IWHnとWh(Pn/γ)との比を容量劣化補正係数βn(nはn=1,2,3,…)として、複数得られたβnを平均するなどして容量劣化補正係数βを求めている。ここで、Pnは実放電電力量IWHnが得られた時のパワー演算値である。一般的に、容量劣化補正係数βnの演算は、比較的精度良く算出することができる放電末期において行われる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ハイブリッド車(HEV)のようにSOC(State of charge)が30〜70%程度で使用され、容量劣化補正係数βが算出される放電末期まで使用されない場合には、容量劣化補正係数βに関して所望の学習精度が得られないという欠点があった。また、実放電電力IWHnに積算誤差が生じると、その積算誤差が容量劣化補正係数βの誤差要因となるという問題もあった。 【0005】本発明の目的は、二次電池の電池容量劣化を精度良く算出することができる電池容量劣化算出方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】発明の実施の形態を示す図6に対応付けて説明する。 (1)請求項1の発明は、二次電池の劣化時電池容量と初期電池容量との容量比から電池容量劣化を算出する二次電池の電池容量劣化算出方法に適用され、容量比を、電池初期時の開放電圧対放電電気量特性f20の傾きK0と電池劣化時の開放電圧対放電電気量特性f21の傾きKdとの比で算出することにより上述の目的を達成する。 (2)請求項2の発明では、請求項1に記載の電池容量劣化算出方法において、開放電圧対放電電気量特性における放電電気量は、放電電気量を車両起動毎にゼロにリセットして各起動時から積算した放電電気量積算値とした。 (3)請求項3の発明では、請求項1または請求項2に記載の電池容量劣化算出方法において、二次電池は、原動機の出力および/または電動機の出力で走行駆動力を得るハイブリッド自動車のの電動機に電力を供給する二次電池であるものとした。 【0007】 【発明の効果】本発明によれば、電池容量劣化を表す容量比を、電池初期時の開放電圧対放電電気量特性の傾きと電池劣化時の開放電圧対放電電気量特性の傾きとの比で算出するようにしたので、開放電圧対放電電気量特性を求める際の放電電気量に積算誤差が生じた場合でも開放電圧対放電電気量特性の傾きは変化することがなく、放電電気量の誤差に影響されることなく容量劣化を精度良く算出することができる。特に、ハイブリッド自動車駆動用二次電池の場合には放電電気量の積算誤差が出やすいので、効果的である。また、請求項2のように、放電電気量を車両起動毎にゼロにリセットして各起動時から積算した放電電気量積算値を用いることによって、開放電圧対放電電気量特性における放電電気量の積算誤差を小さくすることができ、容量劣化をより精度良く算出することができる。 【0008】なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために発明の実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が発明の実施の形態に限定されるものではない。 【0009】 【発明の実施の形態】以下、図1〜図12を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1はパラレル・ハイブリッド車の構成を示すブロック図である。エンジン2の主軸には電動モータ3の回転子が直結されており、エンジン2および/またはモータ3の駆動力は駆動系4を介して車軸7に伝達される。パラレル・ハイブリッド車におけるモータ3の運転モードには、車軸7を駆動する駆動モードと二次電池6を充電する発電モードとがある。車両自体の駆動モード時、すなわち加速時,平坦路走行時や登坂時等に、モータ3へ電力を供給する二次電池6が充分な充電状態にある場合には、モータ3を駆動モードで運転してエンジン2とモータ3の両方の両駆動力により走行する。 【0010】ただし、二次電池6の充電状態が低い場合にはモータ3を発電モードで運転して、エンジン2の駆動力により走行を行うとともにエンジン2の駆動力によりモータ3の回転子を回転し、モータ3による発電を行って二次電池6を充電する。インバータ5は二次電池6からの直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給するとともに、発電モード時にはモータ3からの交流電力を直流電力に変換して二次電池6へ供給する。 【0011】一方、車両の制動モード時、すなわち減速時や降坂時などには、駆動系4を介した車輪の回転力によってエンジン2およびモータ3が駆動される。このとき、モータ3を発電モードで運転し回生エネルギーを吸収して二次電池6を充電する。コントローラ1はマイクロコンピュータとその周辺部品から構成され、二次電池6の端子電圧値Vを検出する電圧センサ8,充放電時の電流値Iを検出する電流センサ9,二次電池6の温度Tを検出する温度センサ10が接続される。コントローラ1の演算部1aでは上述した各センサの検出値に基づいて二次電池6の電池状態を演算し、制御部1bは各検出値および電池状態に基づいてエンジン2,インバータ5,モータ3を制御する。 【0012】図2は二次電池6の電池状態を表す特性の一つであるパワー対放電電力特性に関して、その初期特性Wh(P)の温度補正および劣化補正を説明する図である。図2の横軸は出力可能パワーP、縦軸は放電電力量Whを表しており、電池の初期特性Wh(P)は一般的に出力可能パワーPのn次式で近似することができる。Wh(P/α)は初期特性Wh(P)を温度補正係数αで温度補正した特性であり、温度補正したものをさらに内部抵抗劣化補正係数γで補正したものがWh(P/αγ)であり、この特性Wh(P/αγ)をさらに容量劣化補正係数βで補正したものがβ・Wh(P/αγ)である。このようにして得られるパワー対放電電力特性β・Wh(P/αγ)が電池の基準特性として用いられる。温度補正係数αは、温度による電池の内部抵抗変化を表すパラメータであり、温度に応じたテーブル参照値の形で与えられる。また、容量劣化補正係数βおよび内部抵抗劣化補正係数γは以下のようにして算出される。 【0013】以下では、最初に、本発明者が特願平10−174821号および特願平9−298959号で提案したβおよびγの算出方法を第1および第2の算出方法として説明し、次いで、それらと対比しながら第3および第4の算出方法において本発明による電池容量劣化算出方法、すなわち容量劣化補正係数βの算出方法について説明する。 【0014】−第1の算出方法−まず、内部抵抗劣化補正係数γの算出方法について説明する。図3は、電池が新品で劣化していない場合、および経時変化により劣化している場合のそれぞれの放電IV特性直線を示したものであり、縦軸は放電電圧V、横軸は放電電流Iを表している。直線f0は劣化していない場合の放電IV特性直線を示しており、放電中に放電電流Iおよび放電電圧Vを複数回測定し、得られた複数のデータa1〜a4から一次回帰演算により得られる。一方、直線f1は、劣化時のデータb1〜b4から一次回帰演算により得られる放電IV特性直線である。これらのIV特性直線の傾きは電池の内部抵抗Rを表しており、IV特性直線と放電電圧Vを表す縦軸との交点が電池の推定開放電圧Eを表している。 【0015】すなわちIV特性直線は次式(1) 【数1】V=E−IR …(1) で表され、特性直線f0からは電池の初期内部抵抗R0(電池が新品の時の内部抵抗)が得られ、特性直線f1からは劣化時内部抵抗R1が得られる。そして、次式(2)により内部抵抗劣化補正係数γが算出される。 【数2】γ=R0/R1 …(2) このγの算出は、算出誤差を小さく抑えることができる放電初期〜中期(例えば、SOCが50〜100%の間)において行われる。 【0016】なお、放電初期の規定放電量までに内部抵抗を複数算出し、それらの平均値の比をγとして用いても良い。すなわち、電池初期時に得られる内部抵抗をR01,R02,…,R0m、劣化時に得られる内部抵抗をRd1,Rd2,…,Rdnとしたとき、次式(3)のように内部抵抗劣化補正係数γを算出する。 【数3】R0’=(R01+R02+…+R0m)/mRd=(Rd1+Rd2+…+Rdn)/nγ=R0’/Rd …(3) ここで、R0’は初期時の内部抵抗平均値であり、Rdは劣化時の内部抵抗平均値である。 【0017】次に、容量劣化補正係数βの算出方法について説明する。図4において、特性Wh(P/α)は初期特性Wh(P)を温度補正係数αで補正した基準特性である。また、曲線L31は基準特性Wh(P/α)を抵抗劣化補正係数γで補正した基準特性Wh(P/αγ)を表しており、曲線L32は基準特性Wh(P/αγ)を容量劣化補正係数βで補正した真の電池特性β・Wh(P/αγ)を表している。 【0018】ここで、放電電力量WHnのときにパワーPnが計測され、計測された放電電力量WHnに誤差ΔWhがある場合について考える。このとき、真の放電電力量をWhnと書くとWHnは次式(4)で表され、点G2(WHn,Pn)は計測データに基づいて算出される特性曲線L33上にある。 【数4】WHn=Whn+ΔWh …(4) 一方、点G1(Whn,Pn)は真の電池特性を表す特性曲線L32上となり、次式(5)を満たしている。 【数5】Whn=β・Wh(Pn/αγ) …(5) WHn−ΔWh=β・Wh(Pn/αγ) …(6) 式(6)は、式(5)を計測データ(WHn、Pn)を用いて書き表したものである。よって、2つの計測データ(WH1、P1),(WH2、P2)に対する連立方程式(7)を解くことにより、容量劣化補正係数βが算出される。 【数6】WH1−ΔWh=β・Wh(P1/αγ)WH2−ΔWh=β・Wh(P2/αγ) …(7) 【0019】このように、連立方程式(7)を解いて容量劣化補正係数βを算出することにより、放電電力量の計測データWHnに含まれる誤差ΔWh、例えば放電電力を積算して求めることによる積算誤差の影響をβから取り除くことができる。しかし、上述した算出方法では、容量劣化補正係数βは算出誤差が比較的良好な放電中期〜末期にかけて算出されるため、ハイブリッド車(HEV)のように使用範囲がSOC=30〜70%程度の場合には容量劣化補正係数βに関して所望の学習精度が得られないという欠点がある。特に、パラレル・ハイブリッド車では内燃エンジンによる走行時にも二次電池の充電が行われることがり、放電中期から末期にかけてのβがほとんど得られることが無いためにこのような欠点が顕著に現れる。 【0020】−第2の算出方法−第2の算出方法では、内部抵抗劣化補正係数γについては第1の算出方法と同様に求め容量劣化補正係数βの算出方法のみが異なる。そこで、以下では容量劣化補正係数βの算出方法についてのみ説明する。図5(a)は放電電気量の異なる二次電池の放電IV特性を示した図である。直線f10は放電電気量Ah=0のとき、すなわちSOC=100%(満充電時)の場合を表しており、直線f11,f12,f13の場合の放電電気量Ahは順にAh1,Ah2,Ah3(ただし、Ah1<Ah2<Ah3)である。すなわち、放電電気量Ahが0→Ah1→Ah2→Ah3と大きくなるにつれてIV特性はf10→f11→f12→f13と変化し、そのときの推定開放電圧もE0→E1→E2→E3と変化する。 【0021】なお、開放電圧としては、充放電IV特性を用いて推定したり、無負荷時の電圧を測定して得られる実際の開放電圧を用いても良い。リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の場合には充放電IV特性の直線性が良く、推定開放電圧と実際の開放電圧とが良く一致する。 【0022】図5(b)は放電電気量Ahと開放電圧Eとの関係を示す図であり、リチウムイオン電池の初期電池特性と劣化時特性について示したものである。ところで、容量劣化補正係数βは次式(8)のように二次電池の劣化時電池容量Cdと初期電池容量C0との比で表すことができる。 【数7】β=Cd/C0 …(8) ここで、開放電圧が予め定めた放電容量規定電圧Veになるまでの放電電気量Ahを二次電池の電池容量Cとすると、電池容量C0,Cdは直線E=Veと初期特性曲線および劣化時特性曲線との交点における放電電気量で表せる。 【0023】図5(b)において黒丸は電池初期時のデータ(Ah,E)を、白丸は劣化時のデータ(Ah,E)をそれぞれ示しており、f20は初期時データから一次回帰演算により得られる回帰直線で、f21は劣化時データから得られる回帰直線である。なお、一次以上の回帰演算を行えばより電池特性に近い回帰曲線が得られるが、リチウムイオン電池の場合には、開放電圧Eが著しく減少する放電末期(放電電気量Ahが大きい領域)を除いて一次回帰演算により電池特性を精度良く求めることができる。そのため、回帰直線f20,f21と直線E=Veとの交点における放電電気量Ah0、Ahdを電池容量C0,Cdとして用いることができる。 【0024】これらの回帰直線f20,f21は次式(9)によって表される。なお、Kは特性直線の傾き、Vfは特性直線の電圧切片であり、回帰直線f20の傾きはK0、回帰直線f21の傾きはKdである。 【数8】E=Vf−Ah・K …(9) 具体的には、回帰直線を得るに充分な放電電気量(通常、放電中期〜放電末期)に達したならば、回帰式を外挿して放電容量規定電圧Veとの交点の放電電気量Ah0,Ahdを電池容量C0,Cdとする。そして、これらの値を式(8)に代入して容量劣化補正係数βを算出する。 【0025】上述した第2の算出方法は以下のような特徴を有する。 (a)内部抵抗劣化分と分離して、直接に容量比を求めるので精度が高い。 (b)図5(b)に示すように、開放電圧Eの将来的な変化を回帰演算により推定して放電容量Cを推定しているので精度が高い。しかし、上述した放電電気量Ah0,Ahdは積算によって求めるため積算誤差ε(Ah)が生じやすく、劣化時特性(計測データに基づく特性)は図6に示すように積算誤差ε(Ah)の分だけ横軸方向にずれてしまうことになる。なお、図6では「ε(Ah)<0」であって、特性曲線はマイナス方向にずれている。このときの劣化時電池容量Cd1は式(10)で表され、容量劣化補正係数β1は式(11)のように真の値βに対して誤差が生じてしまうという問題がある。 【数9】 Cd1=Ahd+ε(Ah)=Cd+ε(Ah) …(10) β1=Cd1/C0=β+ε(Ah)/C0 …(11) 【0026】−第3の算出方法−上述した第2の算出方法では、式(11)のように容量劣化補正係数βが積算誤差ε(Ah)の影響を受けてしまったが、以下に述べる第3の算出方法では、回帰直線から得られる電池容量C0,Cdを用いないで容量劣化補正係数βを算出することにより、積算誤差ε(Ah)の影響を除去するようにした。なお、抵抗劣化補正係数γについては第1の算出方法と同じなので説明を省略し、また、図6に示すような回帰直線を求める段階までは第2の算出方法と同様である。 【0027】上述した図5(b)に示した回帰直線f21は放電電気量Ahに積算誤差が無い場合を示しており、回帰直線f20,f21の電圧切片は等しくなる。このとき、電池容量C0,Cdは、次式(12),(13)で表される。 【数10】C0=(Vf−Ve)/K0 …(12) Cd=(Vf−Ve)/Kd …(13) これらの放電容量C0,Cdを用いると、容量劣化補正係数βは式(14)に示すようにK0とKdとの比、すなわち、回帰直線の傾きの比で表すことができる。放電電気量Ahに含まれる積算誤差ε(Ah)によって劣化時の特性曲線が図6のように横軸方向にずれても傾きKdは変化しないので、式(14)で算出される容量劣化補正係数βは積算誤差ε(Ah)の影響を受けないことが分かる。 【数11】 β=Cd/C0=K0/Kd …(14) 【0028】−第4の算出方法−上述した第3の算出方法では、回帰直線の傾きK0,Kdを求める際に、放電電気量Ahとして絶対値(積算された値そのもの)を用いた。しかし、積算誤差ε(Ah)は常に一定とは限らないので、データのばらつきにより回帰直線が求め難くなったり、真の特性と回帰直線とのズレが大きくなるおそれがある。そこで、以下に述べる第4の算出方法では、放電電気量Ahの代わりに車両起動時を基準とした放電電気量積算値ΔAhを用いて回帰直線の傾きK0,Kdを算出する。すなわち、車両起動時毎に放電電気量の積算値をゼロにリセットして、放電電気量を車両起動時から積算するようにした。そのため、放電電気量積算値ΔAhに含まれる積算誤差(Δε(Ah)と記す)の大きさ|Δε(Ah)|は|ε(Ah)|より小さくなる。その結果、データのバラツキが小さくなって回帰直線が求め易くなるとともに、回帰直線がより真の特性に近いものとなる。なお、|ε(Ah)|はε(Ah)の絶対値を表す。 【0029】次に、容量劣化補正係数βの演算手順を図7のフローチャートを参照して説明する。このフローチャートは車両起動(例えば、車両電源オン)によりスタートし、ステップS1へ進む。ステップS1では、車両電源オンの時に放電電気量積算値ΔAhをΔAh=0にリセットし、その後に放電電気量積算値ΔAhの積算を開始する。なお、以下では起動時の放電電気量積算値をΔAh(0)(=0)と記し、データサンプリング時の積算値ΔAhをΔAh(j)と書くことにする。なお、jはサンプリングデータを識別するための符号であり、j=0,1,2,3,…の値をとる。次いで、ステップS2においてj=1とした後に、ステップS3へ進む。 【0030】続くステップS3〜ステップS9は、回帰演算に必要なデータ(放電電気量積算値ΔAh(j),開放電圧E(j))をサンプリングするステップである。まず、ステップS3においてΔAh(j)が|ΔAh(j)−ΔAh(j−1)|≧δAhであるか否か、すなわち放電電気量積算値ΔAhが規定値δAhだけ変化(増加・減少)したか否かを判断し、|ΔAh−ΔAh(j−1)|<δAhの間はステップS3を繰り返し実行し、|ΔAh(j)−ΔAh(j−1)|≧δAhとなったならばステップS4へ進む。なお、δAhはデータサンプリング間隔を規定する放電電気量である。 【0031】ステップS4では、開放電圧E(j)を次の何れかの方法で求める。 (a)無負荷時に実測して得られる開放電圧Ea(b)充放電時にサンプリングされた電流値および電圧値から得られるIV特性により、すなわちパワー演算(放電IV外挿)により推定される開放電圧Eb(c)充放電時の電流値および総電圧値に基づいて推定される開放電圧Ecなお、各開放電圧Eb,Ecの算出方法の詳細は後述する。 【0032】ステップS5はステップS4で得られた開放電圧E(j)が規定値Emin以下であるか否かを判断し、YESならばステップS3へ戻り、NOならばステップS6へ進む。放電電気量Ahと開放電圧Eとの関係を表す特性曲線は図8に示すような形状となり、放電初期〜中期ではほぼ直線で表されるが、放電電気量Ahの大きな放電末期ではリニアな関係が崩れてしまう。そして、サンプリングデータに放電末期のノンリニア領域のデータが含まれると良好な回帰演算が行えないので、ステップS5では図8のノンリニア領域のデータ(開放電圧EがE≦Eminであるデータ)を除くようにしている。 【0033】ステップS5において開放電圧E(j)がEminより大きい場合には、ステップS6に進んでデータ(ΔAh(j),E(j))を記憶する。続くステップS7は放電電気量積算値ΔAh(j)の大きさ|ΔAh(j)|が規定値ΔAh0以上となったか否かを判断するステップであり、YESならばステップS9へ進み、NOならばステップS8へ進んでjを1だけ増加させた後にステップS3へ戻る。ステップS9は蓄積データ個数jが既定値N以上となったか否かを判断するステップであり、個数jがNより小さい場合にはステップS8へ進んでjを1だけ増加させた後にステップS3へ戻り、N以上となったならばステップS10へ進んで一次回帰演算を行い回帰直線を算出する。図9はデータ(ΔAh(j),E(j))とそのデータから回帰演算により得られる回帰直線を示す図であり、縦軸は開放電圧E、横軸は起動時にゼロリセットした後に得られる放電電力積算値ΔAhである。放電電気量積算値ΔAh(j)は起動時が基準となっているため、正負の両方の値をとる。 【0034】ステップS11は回帰演算における相関係数が95%以上か否かを判断するステップであり、YESならばステップS12へ進んで傾きKdを算出し、NOならばステップS2へ戻ってデータサンプリングからやり直す。ステップS13では、ステップS12で算出された傾きKdと予め記憶されている初期データK0とを用いて容量劣化補正係数β=K0/Kdを算出する。図10は、初期時の回帰直線(傾きK0)と劣化時の回帰直線(傾きKd)を示す図である。ステップS14では、ステップS13で算出された容量劣化補正係数βと記憶されている過去のデータβとを用いて平均処理(例えば、加重平均処理)を行い、一連の処理を終了する。なお、図7に示したフローチャートでは容量劣化補正係数βの算出は起動時に1回しか行われないが、所定放電電流毎にβを算出するようにしても良い。 【0035】次に、上述した開放電圧EbおよびEcの算出方法について説明する。まず、(b)のパワー演算による推定開放電圧Ebの算出方法について図11を用いて説明する。最初に、充放電時の電流変化を捉えて電流値Iおよび電圧値Vをサンプリングする。図11の×印はサンプリングデータをIV座標上に示したものであり、これらのサンプリングデータに基づいてIV特性を一次回帰演算して特性直線Lを求める。この直線Lと縦軸(電圧)との交点の値が推定開放電圧Ebである。なお、直線Lと放電下限電圧(車両システムとしての使用下限電圧)Vminとの交点から、そのときの二次電池の最大出力Pmax=Vmin×Imaxがパワー演算値Pとして算出される。また、直線Lの傾きから二次電池の内部抵抗Rを算出することができる。ただし、Imaxは直線Lにおいて電圧が放電下限電圧Vminとなるときの値であり、放電下限電圧Vminは以下の(1),(2)の要因から決定される。 (1)電池の寿命を考慮した使用電圧範囲の下限電圧(放電終止電圧) (2)車両搭載ユニットの性能,機能を保証可能な使用電圧範囲の下限電圧【0036】一方、(c)の推定開放電圧Ecは次式(15)のように表される。 【数12】 Ec=(総電圧)+(電流)×(温度・劣化補正された内部抵抗) …(15) 充放電時の二次電池の電流値をI、電圧値をV、補正された内部抵抗をRで表すと、上述した式(15)は次式(16)のように表される。 【数13】Ec=V+I×R …(16) ただし、Rは、内部抵抗初期値R0,温度補正係数α,内部抵抗劣化補正係数γを用いて式(17)のように表される。 【数14】R=R0/(α×γ) …(17) 【0037】上述した第4の算出方法では、回帰演算を行う際のデータとして(放電電気量積算値ΔAh(j),開放電圧E(j))を使用したが、放電電気量積算値ΔAh(j)の代わりにそれの絶対値|ΔAh(j)|を用い、E(j)の代わりに起動時の開放電圧Esを基準とした電圧|ΔE|を用いるようようにしても良い。電圧|ΔE|は次式(18)のように表せる。 【数15】|ΔE|=E(j)−Es …(18) ただし、E(j)は「E(j)≦Emin」を満たすもののみを採用する。図12は、このときのデータ(|ΔAh(j)|,|ΔE|)の分布の様子および回帰直線を示す図であり、図9ではΔAhの負領域にもデータが分布していたが、図12ではΔAhが正負に拘わらず同一領域(|ΔAh(j)|軸の正領域)に分布する。 【0038】上述したように、第3の算出方法によれば、開放電圧Eおよび積算された放電電気量Ahで構成される複数のデータに基づき回帰演算を行い、回帰直線の傾きの比K0/Kdにより容量劣化補正係数βを算出するようにしたので、容量劣化補正係数βに対する放電電気量Ahの誤差の影響を小さくすることができる。特に、ハイブリッド電気自動車(HEV)のように積算誤差の生じやすい場合には有効である。さらに、第4の算出方法によれば、起動時に放電電気量をゼロにリセットし、起動時を基準に積算された放電電気量積算値ΔAhを用いるようにしたので、積算誤差の影響をほとんど除去することができる。 【0039】上述した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において回帰直線f20,f21は開放電圧対放電電気量特性を構成する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年3月9日(1999.3.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100084412 【弁理士】 【氏名又は名称】永井 冬紀
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| 【公開番号】 |
特開2000−261901(P2000−261901A) |
| 【公開日】 |
平成12年9月22日(2000.9.22) |
| 【出願番号】 |
特願平11−61067 |
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