| 【発明の名称】 |
電気自動車及びその制御方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】田端 淳
【氏名】多賀 豊
【氏名】中村 誠志
【氏名】天野 正弥
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| 【要約】 |
【課題】定速走行システムと減速度の調整システムとを搭載した電気自動車において、両システムを適切に使い分ける。
【解決手段】ハイブリッド車両において、動力源ブレーキによる減速度を調整可能なシステムであるEポジション機能を搭載する。また、一定の車速で走行するシステムであるオートクルーズも搭載する。各システムにおいては、それぞれ目標の減速度または車速が実現されるように制御ユニットが動力源の運転を制御する。オートクルーズが機能している状態で、Eポジション機能が操作されると、オートクルーズが自動的にキャンセルされる。逆の場合には、Eポジション機能がキャンセルされる。最後に操作されたシステムを有効なものとして選択することにより、違和感のない走行を実現できる。また、他方のシステムをキャンセルする操作が不要となり、操作負担が軽減される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも電動機を含む動力源に結合された車軸を有し、該動力源のトルクによって走行可能な電気自動車であって、該車両の目標速度を設定する目標速度設定手段と、前記目標速度で走行するように前記動力源を制御する速度制御手段と、該車両の目標減速度を設定する目標減速度設定手段と、該設定された目標減速度で減速が行われるよう前記電動機を制御する減速制御手段と、前記目標速度設定手段と前記目標減速度設定手段のうち、最後に目標値の設定がなされた手段に応じて、前記速度制御手段と減速制御手段とを選択的に実行する手段とを備える電気自動車。 【請求項2】 前記動力源は、電動機およびエンジンである請求項1記載の電気自動車。 【請求項3】 請求項1記載の電気自動車であって、変速比を複数変更可能な変速機が、前記動力源と前記車軸とに結合され、さらに、前記目標加速度を前記動力源のトルクにより実現可能な変速比を選択する変速比選択手段を備える電気自動車。 【請求項4】 少なくとも電動機を含む動力源に結合された車軸を有し、該動力源のトルクによって走行可能な電気自動車の制御方法であって、(a) 該車両の目標速度を設定する工程と、(b) 該車両の目標減速度を設定する工程と、(c) 前記目標速度と前記目標減速度のうち、最後に設定された目標値を判定する工程と、(d) 前記目標速度が最後に設定された場合には、該目標速度で走行するように前記動力源を制御する工程と、(e) 前記目標減速度が最後に設定された場合には、該目標減速度で減速が行われるよう前記電動機を制御する工程とを備える制御方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、少なくとも電動機を動力源とする電気自動車およびその制御方法に関し、詳しくは該車両の加速度を任意に調整可能な電気自動車および該制動を実現する制御方法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、電気自動車の一形態として、エンジンと電動機とを動力源とするハイブリッド車両が提案されている。例えば特開平9−37407に記載のハイブリッド車両は、変速機を介してエンジンの出力軸を駆動軸に結合した通常の車両の動力系統に対して、エンジンと変速機の間に直列に電動機を追加した構成からなる車両である。かかる構成によれば、エンジンおよび電動機の双方を動力源として走行することが可能である。一般に車両の発進時にはエンジンの燃費が悪い。ハイブリッド車両は、かかる運転を回避するため、電動機の動力を利用して発進する。車両が所定の速度に達して以降に、エンジンを始動し、その動力を利用して走行する。従って、ハイブリッド車両は、発進時の燃費を向上することができる。また、ハイブリッド車両は、駆動軸の回転を電動機により電力として回生して制動時することができる(以下、かかる制動を回生制動と呼ぶ)。ハイブリッド車両は、回生制動により、運動エネルギを無駄なく利用できる。これらの特徴によりハイブリッド車両は、燃費に優れるという利点を有している。 【0003】車両の制動方法には、ブレーキペダルの操作に応じてパッド等を押しつけて車軸に摩擦を与える形式の制動方法(以下、単にホイールブレーキと呼ぶ)と、いわゆるエンジンブレーキのように動力源から駆動軸に負荷を与える制動方法(以下、動力源ブレーキと呼ぶ)とがある。ハイブリッド車両では、動力源ブレーキとして、エンジンのポンピングロスに基づくエンジンブレーキと、電動機での回生負荷による回生制動とがある。動力源による制動は、アクセルペダルからブレーキペダルへの踏み換えを行うことなく制動を行うことができる点で有用である。動力源ブレーキの有用性を高めるためには、運転者の意図する減速度を任意に設定できることが望ましい。 【0004】ここで、エンジンブレーキは、吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングを変更しない限り、エンジンの回転数に応じて制動力がほぼ一定の値となる。従って、運転者がエンジンブレーキにより所望の減速度を得るためには、シフトレバーを操作して変速機の変速比を変更し、動力源のトルクと駆動軸に出力されるトルクとの比を変更する必要があった。一方、電動機の回生制動は、回生負荷を比較的容易に制御でき、減速度の制御が比較的容易に実現可能であるという利点がある。かかる観点から、特開平9−37407記載のハイブリッド車両では、電動機の回生制動力を制御することで使用者の設定した減速度を実現している。 【0005】一方、従来、エンジンのみを動力源とする通常の車両において、設定された一定の車速で走行を行う定速走行システムを搭載した車両が提案されている。定速走行システムは、一定の車速が得られるように動力源のトルクを制御するシステムである。定速走行システムが機能すると、運転者がアクセルペダルやブレーキペダルを操作しなくても所望の車速で走行することができるため、運転者の負担を軽減できる利点がある。動力源として電動機を搭載したハイブリッド車両は、動力源のトルクをより精度良く制御可能である。従って、ハイブリッド車両に定速走行システムを搭載すれば、従来以上に滑らかな走行を実現することができると期待される。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかし、定速走行システムと、運転者が動力源ブレーキによる減速度を調整可能な制動システムの双方を搭載した車両では、両者の機能を十分に実現できなくなる場合があることが見いだされた。 【0007】定速走行システムは、目標の車速で走行できるように制御装置が動力源の運転を制御するシステムである。現在の車速が目標の車速よりも高い場合には車両の制動が行われる場合がある。一方、上述の制動システムは運転者が任意の制動トルクを設定し、該トルクで動力源の運転を制御するシステムである。従って、両者を同時に機能させると、定速走行システムにより設定された制動力と、制動システムにより設定された制動トルクとが異なる値に設定される可能性がある。かかる場合に、制動システムにより設定された制動トルクで運転を行えば、運転者が意図した車速を維持できなくなる。逆に定速走行システムにより設定された目標トルクで運転を行えば、運転者が意図した減速度が実現されない。それぞれ運転者の意図に反した走行が行われる可能性がある。 【0008】以上で説明した種々の課題は、エンジンと電動機とを動力源とするハイブリッド車両のみならず、電動機のみを動力源とする車両にも共通の課題であった(以下、両者を包含して電気自動車と呼ぶ)。本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、定速走行および減速度の調整を実現する機能を適切に使い分け、運転者が意図した走行状態での走行を実現する電気自動車およびその制御方法を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上述の課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は次の構成を採った。本発明の電気自動車は、少なくとも電動機を含む動力源に結合された車軸を有し、該動力源のトルクによって走行可能な電気自動車であって、該車両の目標速度を設定する目標速度設定手段と、前記目標速度で走行するように前記動力源を制御する速度制御手段と、該車両の目標減速度を設定する目標減速度設定手段と、該設定された目標減速度で減速が行われるよう前記電動機を制御する減速制御手段と、前記目標速度設定手段と前記目標減速度設定手段のうち、最後に目標値の設定がなされた手段に応じて、前記速度制御手段と減速制御手段とを選択的に実行する手段とを備えることを要旨とする。 【0010】かかる電気自動車によれば、目標速度と目標減速度のうち最後に設定された目標値に応じて、速度制御手段と減速制御手段とを使い分けることができる。運転者は最後に設定された目標値で運転が行われることを要請しているのが通常である。従って、本発明の電気自動車によれば、運転者は違和感なく車両の運転を行うことができる。 【0011】また、本発明の電気自動車は、速度制御手段と減速制御手段とを使い分けることによって、車両の操作性を向上することもできる。速度制御手段が実行されている場合には車両を操作する運転者の負担が大きく軽減される。一方、一般に車両の走行中においては、ドライブフィーリングを向上するために、運転者の意に沿った制動力を実現できることが重要である。本発明の電気自動車によれば減速制御手段が実行されている場合には、運転者の意図した目標減速度での減速が行われるためドライブフィーリングを大きく向上することができる。なお、減速度とは、車両の速度が低減する変化率をいう。 【0012】本発明の電気自動車における速度制御手段と減速制御手段との使い分けについてより具体的に説明する。例えば、目標速度設定手段により目標速度の設定が行われると、速度制御手段が選択され該手段による制御が実行される。その後、目標減速度設定手段により目標減速度の設定が行われると、減速制御手段が選択され該手段による制御が実行される。再び目標速度の設定が行われると、速度制御手段による制御が実行される。本発明の電気自動車では、このように、より時間的に後に設定された目標値に応じた制御が順次実行されるのである。 【0013】目標値の設定は種々の態様で判断することができる。例えば、目標速度および目標減速度の設定の変更がなされた場合に新たな目標値が設定されたと判断することができる。かかる場合には、目標値の設定とともに該目標値に応じた制御が実現されるため、違和感のない運転を実現することができ、運転者の操作負担を軽減することもできる。 【0014】一方、速度制御および減速制御のそれぞれについて運転者がオン・オフを指定するための指定手段を備える場合には、最後にオンが指定された側について目標値の設定が有効になったものと判断することもできる。 【0015】こうすれば、運転者の自己の操作に応じて加速度設定手段の選択が行われるため、より違和感のない走行を実現することができる。また、予め所望の目標値を設定してからオンを指定すれば、目標値変更時の過渡期における違和感がない走行を実現することができる。 【0016】なお、いずれの場合においても、目標速度または目標減速度の一方が設定された場合には、他方の設定を解除するものとしてもよいし、維持するものとしてもよい。 【0017】本明細書にいう電気自動車には、種々の型の車両が含まれる。第1に電動機のみを動力源とする車両、いわゆる純粋な電気自動車である。第2にエンジンと電動機の双方を動力源とするハイブリッド車両である。ハイブリッド車両には、エンジンからの動力を直接駆動軸に伝達可能ないパラレルハイブリッド車両と、エンジンからの動力は発電にのみ使用され駆動軸には直接伝達されないシリーズハイブリッド車両とがある。本発明は、双方のハイブリッド車両に適用可能である。また、電動機を含めて3つ以上の発動機を動力源とするものにも適用可能であることは言うまでもない。 【0018】このように上述の電気自動車は、電動機以外の発動機を動力源として含むものであっても構わない。電動機のみを動力源とする場合、前記電動機トルク設定手段は、所望の制動力の全てを電動機で与えるようにそのトルクを設定する。一般には負のトルクとなり、電動機はいわゆる回生運転となる。電動機以外の発動機を動力源として含む場合、電動機トルク設定手段は、前記発動機によって与えられる制動力を考慮した上で電動機によるトルクを設定する。かかる場合には、該発動機による制動力を所定の値として扱ってもよいし、全体の制動力が所定の値になるように電動機のトルクをいわゆるフィードバック制御するものとしてもよい。 【0019】先に説明した通り、本発明は、種々の電気自動車に適用可能であるが、前記動力源は、電動機およびエンジンであるものとすることが望ましい。即ち、いわゆるパラレルハイブリッド車両に適用することが望ましい。 【0020】エンジンのトルクの制御は、応答性および精度が比較的低いという特性がある。特にエンジンブレーキをかける場合の制動力は柔軟に制御する事が困難である。これに対し、電動機は高い応答性および精度でトルクの制御をすることができる特長がある。本発明を上述のハイブリッド車両に適用すれば、エンジンを動力源とした場合の利点を活かしつつ、滑らかな加減速を実現することができる。つまり、本発明は、上述のハイブリッド車両にとって有用性が高い。 【0021】また、本発明の電気自動車においては、前記動力源のトルクと、前記車軸のトルクとの変速比を複数変更可能な変速機が、前記動力源と前記車軸とに結合され、さらに、前記目標加速度を前記動力源のトルクにより実現可能な変速比を選択する変速比選択手段を備えるものとすることが望ましい。 【0022】かかる車両によれば、上記変速比を種々切り替えることにより、車軸に伝達されるトルクを幅広い範囲で変更することができる。従って、幅広い範囲で車両の加速度を調整することが可能となり、車両の操作性を向上することができる。 【0023】また、本発明は以下に示す通り電気自動車の制御方法として構成することもできる。つまり、本発明の制御方法は、少なくとも電動機を含む動力源に結合された車軸を有し、該動力源のトルクによって走行可能な電気自動車の制御方法であって、(a) 該車両の目標速度を設定する工程と、(b) 該車両の目標減速度を設定する工程と、(c) 前記目標速度と前記目標減速度のうち、最後に設定された目標値を判定する工程と、(d) 前記目標速度が最後に設定された場合には、該目標速度で走行するように前記動力源を制御する工程と、(e) 前記目標減速度が最後に設定された場合には、該目標減速度で減速が行われるよう前記電動機を制御する工程とを備える制御方法である。 【0024】かかる制御方法によれば、先に本発明の電気自動車で説明したのと同様の作用により、複数の加速度設定工程を適切に使い分け、電気自動車を運転者が意図した走行状態で運転することができる。 【0025】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。 (1)装置の構成:図1は、実施例としてのハイブリッド車両の概略構成図である。本実施例のハイブリッド車両の動力源は、エンジン10とモータ20である。図示する通り、本実施例のハイブリッド車両の動力系統は、以下に示す通り、上流側からエンジン10、モータ20、トルクコンバータ30、および変速機100を直列に結合した構成を有している。具体的には、モータ20は、エンジン10のクランクシャフト12に結合されている。モータ20の回転軸13は、トルクコンバータ30に結合されている。トルクコンバータの出力軸14は変速機100に結合されている。変速機100の出力軸15はディファレンシャルギヤ16を介して車軸17に結合されている。 【0026】エンジン10は通常のガソリンエンジンである。但し、エンジン10は、ガソリンと空気の混合気をシリンダに吸い込むための吸気バルブ、および燃焼後の排気をシリンダから排出するための排気バルブの開閉タイミングを、ピストンの上下運動に対して相対的に調整可能な機構を有している(以下、この機構をVVT機構と呼ぶ)。VVT機構の構成については、周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。エンジン10は、ピストンの上下運動に対して各バルブが遅れて閉じるように開閉タイミングを調整することにより、いわゆるポンピングロスを低減することができる。この結果、いわゆるエンジンブレーキによる制動力を低減させることができる。また、エンジン10をモータリングする際にモータ20から出力すべきトルクを低減させることもできる。ガソリンを燃焼して動力を出力する際には、VVT機構は、エンジン10の回転数に応じて最も燃焼効率の良いタイミングで各バルブが開閉するように制御される。 【0027】モータ20は、三相の同期モータであり、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ22と、回転磁界を形成するための三相コイルが巻回されたステータ24とを備える。モータ20はロータ22に備えられた永久磁石による磁界とステータ24の三相コイルによって形成される磁界との相互作用により回転駆動する。また、ロータ22が外力によって回転させられる場合には、これらの磁界の相互作用により三相コイルの両端に起電力を生じさせる。なお、モータ20には、ロータ22とステータ24との間の磁束密度が円周方向に正弦分布する正弦波着磁モータを適用することも可能であるが、本実施例では、比較的大きなトルクを出力可能な非正弦波着磁モータを適用した。 【0028】ステータ24は駆動回路40を介してバッテリ50に電気的に接続されている。駆動回路40はトランジスタインバータであり、モータ20の三相それぞれに対して、ソース側とシンク側の2つを一組としてトランジスタが複数備えられている。図示する通り、駆動回路40は、制御ユニット70と電気的に接続されている。制御ユニット70が駆動回路40の各トランジスタのオン・オフの時間をPWM制御するとバッテリ50を電源とする疑似三相交流がステータ24の三相コイルに流れ、回転磁界が形成される。モータ20は、かかる回転磁界によって先に説明した通り電動機または発電機として機能する。 【0029】トルクコンバータ30は、流体を利用した周知の動力伝達機構である。トルクコンバータ30の入力軸、即ちモータ20の出力軸13と、トルクコンバータ30の出力軸14とは機械的に結合されてはおらず、互いに滑りをもった状態で回転可能である。両者の末端には、それぞれ複数のブレードを有するタービンが備えられており、モータ20の出力軸13のタービンとトルクコンバータ30の出力軸14のタービンとが互いに対向する状態でトルクコンバータ内部に組み付けられている。トルクコンバータ30は密閉構造をなしており、中にはトランスミッション・オイルが封入されている。このオイルが前述のタービンにそれぞれ作用することで、一方の回転軸から他方の回転軸に動力を伝達することができる。しかも、両者はすべりをもった状態で回転可能であるから、一方の回転軸から入力された動力を、回転数およびトルクの異なる回転状態に変換して他方の回転軸に伝達することができる。 【0030】変速機100は、内部に複数のギヤ、クラッチ、ワンウェイクラッチ、ブレーキ等を備え、変速比を切り替えることによってトルクコンバータ30の出力軸14のトルクおよび回転数を変換して出力軸15に伝達可能な機構である。図2は、変速機100の内部構造を示す説明図である。本実施例の変速機100は、大きくは副変速部110(図中の破線より左側の部分)と主変速部120(図中の破線より右側の部分)とから構成されており、図示する構造により前進5段、後進1段の変速段を実現することができる。 【0031】変速機100の構成について回転軸14側から順に説明する。図示する通り、回転軸14から入力された動力は、オーバードライブ部として構成された副変速部110によって所定の変速比で変速されて回転軸119に伝達される。副変速部110は、シングルピニオン型の第1のプラネタリギヤ112を中心に、クラッチC0と、ワンウェイクラッチF0と、ブレーキB0により構成される。第1のプラネタリギヤ112は、遊星歯車とも呼ばれるギヤであり、中心で回転するサンギヤ114、サンギヤの周りで自転しながら公転するプラネタリピニオンギヤ115、更にプラネタリピニオンギヤの外周で回転するリングギヤ118の3種類のギヤから構成されている。プラネタリピニオンギヤ115は、プラネタリキャリア116と呼ばれる回転部に軸支されている。 【0032】一般にプラネタリギヤは、上述の3つのギヤのうち2つのギヤの回転状態が決定されると残余の一つのギヤの回転状態が決定される性質を有している。プラネタリギヤの各ギヤの回転状態は、機構学上周知の計算式(1)によって与えられる。 Ns=(1+ρ)/ρ×Nc−Nr/ρ; Nc=ρ/(1+ρ)×Ns+Nr/(1+ρ); Nr=(1+ρ)Nc−ρNs; Ts=Tc×ρ/(1+ρ)=ρTr; Tr=Tc/(1+ρ); ρ=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数 ・・・(1); 【0033】ここで、Nsはサンギヤの回転数;Tsはサンギヤのトルク;Ncはプラネタリキャリアの回転数;Tcはプラネタリキャリアのトルク;Nrはリングギヤの回転数;Trはリングギヤのトルク;である。 【0034】副変速部110では、変速機100の入力軸に相当する回転軸14がプラネタリキャリア116に結合されている。またこのプラネタリキャリア116とサンギヤ114との間にワンウェイクラッチF0とクラッチC0とが並列に配置されている。ワンウェイクラッチF0はサンギヤ114がプラネタリキャリア116に対して相対的に正回転、即ち変速機への入力軸14と同方向に回転する場合に係合する方向に設けられている。サンギヤ114には、その回転を制止可能な多板ブレーキB0が設けられている。副変速部110の出力に相当するリングギヤ118は回転軸119に結合されている。回転軸119は、主変速部120の入力軸に相当する。 【0035】かかる構成を有する副変速部110は、クラッチC0又はワンウェイクラッチF0が係合した状態ではプラネタリキャリア116とサンギヤ114とが一体的に回転する。先に示した式(1)に照らせば、サンギヤ114とプラネタリキャリア116の回転数が等しい場合には、リングギヤ118の回転数もこれらと等しくなるからである。このとき、回転軸119は入力軸14と同じ回転数となる。またブレーキB0を係合させてサンギヤ114の回転を止めた場合、先に示した式(1)においてサンギヤ114の回転数Nsに値0を代入すれば明らかな通り、リングギヤ118の回転数Nrはプラネタリキャリア116の回転数Ncよりも高くなる。即ち、回転軸14の回転は増速されて回転軸119に伝達される。このように副変速部110は、回転軸14から入力された動力を、そのままの状態で回転軸119に伝える役割と、増速して伝える役割とを選択的に果たすことができる。 【0036】次に、主変速部120の構成を説明する。主変速部120は三組のプラネタリギヤ130,140,150を備えている。また、クラッチC1,C2、ワンウェイクラッチF1,F2およびブレーキB1〜B4を備えている。各プラネタリギヤは、副変速部110に備えられた第1のプラネタリギヤ112と同様、サンギヤ、プラネタリキャリアおよびプラネタリピニオンギヤ、並びにリングギヤから構成されている。三組のプラネタリギヤ130,140,150は次の通り結合されている。 【0037】第2のプラネタリギヤ130のサンギヤ132と第3のプラネタリギヤ140のサンギヤ142とは互いに一体的に結合されており、これらはクラッチC2を介して入力軸119に結合可能となっている。これらのサンギヤ132,142が結合された回転軸には、その回転を制止するためのブレーキB1が設けられている。また、該回転軸が逆転する際に係合する方向にワンウェイクラッチF1が設けられている。さらにこのワンウェイクラッチF1の回転を制止するためのブレーキB2が設けられている。 【0038】第2のプラネタリギヤ130のプラネタリキャリア134には、その回転を制止可能なブレーキB3が設けられている。第2のプラネタリギヤ130のリングギヤ136は、第3のプラネタリギヤ140のプラネタリキャリア144および第4のプラネタリギヤ150のプラネタリキャリア154と一体的に結合されている。更に、これら三者は変速機100の出力軸15に結合されている。 【0039】第3のプラネタリギヤ140のリングギヤ146は、第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152に結合されるとともに、回転軸122に結合されている。回転軸122はクラッチC1を介して主変速部120の入力軸119に結合可能となっている。第4のプラネタリギヤ150のリングギヤ156には、その回転を制止するためのブレーキB4と、リングギヤ156が逆転する際に係合する方向にワンウェイクラッチF2とが設けられている。 【0040】変速機100に設けられた上述のクラッチC0〜C2およびブレーキB0〜B4は、それぞれ油圧によって係合および解放する。図示を省略したが、各クラッチおよびブレーキには、かかる作動を可能とする油圧配管および油圧を制御するためのソレノイドバルブ等が設けられている。本実施例のハイブリッド車両では、制御ユニット70がこれらのソレノイドバルブ等に制御信号を出力することによって、各クラッチおよびブレーキの作動を制御する。 【0041】本実施例の変速機100は、クラッチC0〜C2およびブレーキB0〜B4の係合および解放の組み合わせによって、前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。また、いわゆるパーキングおよびニュートラルの状態も実現することができる。図3は、各クラッチ、ブレーキ、およびワンウェイクラッチの係合状態と変速段との関係を示す説明図である。この図において、○印はクラッチ等が係合した状態であることを意味し、◎は動力源ブレーキ時に係合することを意味し、△印は係合するものの動力伝達に閑係しないことを意味している。動力源ブレーキとは、エンジン10およびモータ20による制動をいう。なお、ワンウェイクラッチF0〜F2の係合状態は、制御ユニット70の制御信号に基づくものではなく、各ギヤの回転方向に基づくものである。 【0042】図3に示す通り、パーキング(P)およびニュートラル(N)の場合には、クラッチC0およびワンウェイクラッチF0が係合する。クラッチC2およびクラッチC1の双方が解放状態であるから、主変速部120の入力軸119から下流には動力の伝達がなされない。 【0043】第1速(1st)の場合には、クラッチC0,C1およびワンウェイクラッチF0,F2が係合する。また、エンジンブレーキをかける場合には、さらにブレーキB4が係合する。この状態では、変速機100の入力軸14は第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152に直結された状態に等しくなり、動力は第4のプラネタリギヤ150の変速比に応じた変速比で出力軸15に伝達される。リングギヤ156は、ワンウェイクラッチF2の作用により逆転しないように拘束され、事実上回転数は値0となる。かかる条件下で、先に示した式(1)に照らせば、入力軸14の回転数Nin、トルクTinと、出力軸15の回転数Nout、トルクToutとの関係は、次式(2)で与えられる。 【0044】 Nout=Nin/k1; Tout=k1×Tin k1=(1+ρ4)/ρ4; ρ4は第4のプラネタリギヤ150の変速比 ・・・(2); 【0045】第2速(2nd)の場合には、クラッチC1、ブレーキB3、ワンウェイクラッチF0が係合する。また、エンジンブレーキをかける場合には、さらにクラッチC0が係合する。この状態では、変速機100の入力軸14は第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152および第3のプラネタリギヤ140のリングギヤ146に直結された状態に等しい。一方、第2のプラネタリギヤ130のプラネタリキャリア134は固定された状態となる。第2のプラネタリギヤ130および第3のプラネタリギヤ140について見れば、両者のサンギヤ132、142の回転数は等しい。また、リングギヤ136とプラネタリキャリア144の回転数は等しい。これらの条件下で、先に説明した式(1)に照らせば、プラネタリギヤ130、140の回転状態は一義的に決定される。入力軸14の回転数Nin、トルクTinと、出力軸15の回転数Nout、トルクToutとの関係は、次式(3)で与えられる。出力軸15の回転数Noutは第1速(1st)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第1速(1st)のトルクよりも低くなる。 【0046】 Nout=Nin/k2; Tout=k2×Tin k2={ρ2(1+ρ3)+ρ3}/ρ2; ρ2は第2のプラネタリギヤ130の変速比; ρ3は第3のプラネタリギヤ140の変速比 ・・・(3); 【0047】第3速(3rd)の場合には、クラッチC0,C1、ブレーキB2、ワンウェイクラッチF0,F1が係合する。また、エンジンブレーキをかける場合には、さらにブレーキB1が係合する。この状態では、変速機100の入力軸14は第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152および第3のプラネタリギヤ140のリングギヤ146に直結された状態に等しい。一方、第2および第3のプラネタリギヤ130、140のサンギヤ132、142はブレーキB2およびワンウェイクラッチF1の作用により逆転が禁止された状態となり、事実上回転数は値0となる。かかる条件下で、第2速(2nd)の場合と同様、先に説明した式(1)に照らせば、プラネタリギヤ130、140の回転状態は一義的に決定され、出力軸15の回転数も一義的に決定される。入力軸14の回転数Nin、トルクTinと、出力軸15の回転数Nout、トルクToutとの関係は、次式(4)で与えられる。出力軸15の回転数Noutは第2速(2nd)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第2速(2nd)のトルクよりも低くなる。 【0048】 Nout=Nin/k3; Tout=k3×Tink3=1+ρ3 ・・・(4); 【0049】第4速(4th)の場合には、クラッチC0〜C2およびワンウェイクラッチF0が係合する。ブレーキB2も同時に係合するが、動力の伝達には無関係である。この状態では、クラッチC1,C2が同時に係合するため、入力軸14は第2のプラネタリギヤ130のサンギヤ132、第3のプラネタリギヤ140のサンギヤ142およびリングギヤ146、第4のプラネタリギヤ150のサンギヤ152に直結された状態となる。この結果、第3のプラネタリギヤ140は入力軸14と同じ回転数で一体的に回転する。従って、出力軸15も入力軸14と同じ回転数で一体的に回転する。従って第4速(4th)では、出力軸15は第3速(3rd)よりも高い回転数で回転する。つまり、入力軸14の回転数Nin、トルクTinと、出力軸15の回転数Nout、トルクToutとの関係は、次式(5)で与えられる。出力軸15の回転数Noutは第3速(3rd)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第3速(3rd)のトルクよりも低くなる。 【0050】 Nout=Nin/k4; Tout=k4×Tink4=1 ・・・(5); 【0051】第5速(5th)の場合には、クラッチC1、C2、ブレーキB0が係合する。ブレーキB2も係合するが、動力の伝達には無関係である。この状態では、クラッチC0が解放されるため、副変速部110で回転数が増速される。つまり、変速機100の入力軸14の回転数は、増速されて主変速部120の入力軸119に伝達される。一方、クラッチC1,C2が同時に係合するため、第4速(4th)の場合と同様、入力軸119と出力軸15とは同じ回転数で回転する。先に説明した式(1)に照らせば、副変速部110の入力軸14と出力軸119の回転数、トルクの関係を求めることができ、出力軸15の回転数、トルクを求めることができる。入力軸14の回転数Nin、トルクTinと、出力軸15の回転数Nout、トルクToutとの関係は、次式(6)で与えられる。出力軸15の回転数Noutは第4速(4th)の回転数よりも高くなり、トルクToutは第4速(4th)のトルクよりも低くなる。 【0052】 Nout=Nin/k5; Tout=k5×Tin k5=1/(1+ρ1) ρ1は第1のプラネタリギヤ112の変速比 ・・・(6); 【0053】リバース(R)の場合には、クラッチC2、ブレーキB0、B4が係合する。このとき、入力軸14の回転数は副変速部110で増速された上で、第2のプラネタリギヤ130のサンギヤ132、第3のプラネタリギヤ140のサンギヤ142に直結された状態となる。既に説明した通り、リングギヤ136、プラネタリキャリア144、154の回転数は等しくなる。リングギヤ146とサンギヤ152の回転数も等しくなる。また、第4のプラネタリギヤ150のリングギヤ156の回転数はブレーキB4の作用により値0となる。これらの条件下で先に説明した式(1)に照らせば、プラネタリギヤ130、140、150の回転状態は一義的に決定される。このとき出力軸15は負の方向に回転し、後進が可能となる。 【0054】以上で説明した通り、本実施例の変速機100は、前進5段、後進1段の変速を実現することができる。入力軸14から入力された動力は、回転数およびトルクの異なる動力として出力軸15から出力される。出力される動力は、第1速(1st)から第5速(5th)の順に回転数が上昇し、トルクが低減する。これは入力軸14に負のトルク、即ち制動力が付加されている場合も同様である。上で示した式(2)〜(6)中の変数k1〜k5は、それぞれ各変速段の変速比を表している。入力軸14にエンジン10およびモータ20により、一定の制動力が付加された場合、第1速(1st)から第5速(5th)の順に出力軸15に付加される制動力は低減する。なお、変速機100としては、本実施例で適用した構成の他、周知の種々の構成を適用可能である。変速段が前進5速よりも少ないものおよび多いもののいずれも適用可能である。 【0055】変速機100の変速段は、制御ユニット70が車速等に応じて設定する。運転者は、車内に備えられたシフトレバーを手動で操作し、シフトポジションを選択することによって、使用される変速段の範囲を変更することが可能である。図4は本実施例のハイブリッド車両におけるシフトポジションの操作部160を示す説明図である。この操作部160は車内の運転席横のフロアに車両の前後方向に沿って備えられている。 【0056】図示する通り、操作部160としてシフトレバー162が備えられている。運転者はシフトレバー162を前後方向にスライドすることにより種々のシフトポジションを選択することができる。シフトポジションは、前方からパーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブポジション(D)、第4ポジション(4)、第3ポジション(3)、第2ポジション(2)およびローポジション(L)の順に配列されている。 【0057】パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)は、それぞれ図3で示した係合状態に対応する。ドライブポジション(D)は、図3に示した第1速(1st)から第5速(5th)までを使用して走行するモードの選択を意味する。以下、第4ポジション(4)は第4速(4th)まで、第3ポジション(3)は第3速(3rd)まで、第2ポジション(2)は第2速(2nd)までおよびローポジション(L)は第1速(1st)のみを使用して走行するモードの選択を意味する。 【0058】本実施例のハイブリッド車両は、後述する通り、動力源ブレーキによる制動力、即ち車両の減速度を運転者が任意に設定可能となっている。シフトポジションを選択するための操作部160には、減速度を設定するための機構も設けられている。 【0059】図4に示す通り、本実施例のハイブリッド車両におけるシフトレバー162は、前後にスライドしてシフトポジションを選択することができる他、ドライブ(D)ポジションで横にスライドすることも可能である。このようにして選択されたポジションをEポジションと呼ぶものとする。シフトレバー162がEポジションにある場合には、以下の通りシフトレバー162を前後に操作することによって動力源ブレーキによる制動力の設定を変更することが可能となる。なお、操作部160には、内部にシフトポジションを検出するためのセンサ、およびシフトレバー162がEポジションにある場合にオンとなるEポジションスイッチが設けられている。これらのセンサ、スイッチの信号は後述する通り、制御ユニット70に伝達され、車両の種々の制御に用いられる。 【0060】シフトレバー162がEポジションにある場合の動作について説明する。シフトレバー162は運転者が手を離した状態ではEポジションの中立位置に保たれる。運転者は減速度を増したい場合、つまり急激な制動を行いたい場合には、シフトレバー162を後方(Decel側)に倒す。減速度を低減したい場合、つまり緩やかな制動を行いたい場合には、シフトレバー162を前方(Can−Decel側)に倒す。かかる場合、シフトレバー162は前後方向に連続的にスライドするのではなく、節度感を持って動く。つまり、シフトレバー162は、中立状態、前方に倒した状態、後方に倒した状態の3つのうちいずれかの状態を採る。運転者がシフトレバー162に加える力を緩めればシフトレバー162は直ちに中立位置に戻るようになっている。動力源ブレーキの制動力は、シフトレバー162の前後方向の操作回数に応じて段階的に変化するようになっている。 【0061】本実施例のハイブリッド車両は、上述したシフトレバー162の操作の他、ステアリングにも動力源ブレーキによる減速度を変更するための操作部が設けられている。図5は、ステアリングに設けられた操作部を示す説明図である。図5(a)はステアリング164を運転者に対向する側、つまり前面から見た状態を示している。図示する通り、ステアリング164のスポーク部に減速度を増すためのDecelスイッチ166L,166Rが設けられている。これらのスイッチは、運転者がステアリングを操作する際に、右手または左手の親指で操作しやすい場所に設けられている。本実施例では、ステアリングを回転した場合でも混乱なく適切な操作を行うことができるように、前面に設けられた2つのスイッチは同じ機能を奏するものに統一してある。 【0062】図5(b)はステアリング164を裏面から見た状態を示している。図示する通り、Decelスイッチ166L,166Rのほぼ裏側に当たる場所に、減速度を低減するためのCan−Decelスイッチ168L,168Rが設けられている。これらのスイッチは、運転者がステアリングを操作する際に、右手または左手の人差し指で操作しやすい場所に設けられている。Decelスイッチ166L,166Rと同様の理由により、両スイッチは同じ機能を奏するものに統一してある。 【0063】運転者がDecelスイッチ166L,166Rを押すと、その回数に応じて減速度が増加する。Can−Decelスイッチ168L,168Rを押すと、その回数に応じて減速度が低減する。なお、これらのスイッチ166L,166R,168L,168Rは、シフトレバー162がEポジション(図4参照)にある場合にのみ有効となる。このように構成することにより、運転者がステアリング164を操作する際に意図せずこれらのスイッチを操作して、目標制動力の設定が変更されることを回避することができる。 【0064】操作部160には、この他、スノーモードスイッチ163が設けられている。スノーモードスイッチ163は、路面が雪道などの摩擦係数が低く、スリップしやすい状況にある場合に運転者により操作される。スノーモードスイッチ163がオンになっている場合には、後述する通り、目標制動力の上限値が所定値以下に抑制されるようになっている。摩擦係数が低い路面を走行中に、大きな制動力で減速が行われるとスリップが生じる可能性がある。スノーモードスイッチ163がオンになっている場合には、制動力を所定値以下に抑制されるため、スリップを回避することができる。もちろん、スノーモードスイッチ163がオンとなっている場合には、スリップが生じない程度の範囲で、減速度を変更することは可能である。 【0065】操作部160には、また、オートクルーズのオン・オフを指定するオートクルーズスイッチ169が設けられている。オートクルーズスイッチ169がオンになると、運転者がアクセルペダルの踏み込みを緩めても、スイッチをオンにした時点の車速を維持して走行される。但し、前方の車両との車間距離が所定以下に接近すると、車間を広げるように自動的に減速される。かかる制御を実現可能とするために、本実施例のハイブリッド車両には、図1に示した通り車速センサ171および車間センサ170が搭載されている。本実施例では、車間センサ170として、車両先端に設けられたレーザ測距装置を用いている。車間センサ170としては、その他、超音波や電波などを利用した種々のセンサを適用することが可能である。 【0066】なお、シフトポジションの選択および目標制動力の設定を行うための操作部は、本実施例で示した構成(図4)以外にも種々の構成を適用することが可能である。図6は、変形例の操作部160Aを示す説明図である。この操作部160Aは、運転者の横に車両の前後方向に沿って設けられている。運転者がシフトレバー162を前後方向にスライドすることにより種々のシフトポジションを選択することができる。図6では、ドライブポジション(D)のみを示し、4ポジション等を省略したが、図4の操作部160と同様、種々のシフトポジションを設けることができる。変形例の操作部160Aでは、シフトポジションを選択するための通常の可動範囲の更に後方にEポジションを設けてある。運転者は、Eポジション内でシフトレバー162を前後方向にスライドすることにより減速度の設定を連続的に変更することができる。この例では、シフトレバー162を後方にスライドすることによって減速度が増加し、前方にスライドすることによって減速度が低減する。なお、この変形例は一例に過ぎず、減速度を設定するための機構は、この他にも種々の構成を適用することが可能である。 【0067】以上で説明した減速度の設定は、車内の計器板に表示される。図7は、本実施例におけるハイブリッド車両の計器板を示す説明図である。この計器板は、通常の車両と同様、運転者の正面に設置されている。計器板には、運転者から見て左側に燃料計202、速度計204が設けられており、右側にエンジン水温計208、エンジン回転計206が設けられている。中央部にはシフトポジションを表示するシフトポジションインジケータ220が設けられており、その左右に方向指示器インジケータ210L、210Rが設けられている。これらは、通常の車両と同等の表示部である。本実施例のハイブリッド車両では、これらの表示部に加えて、Eポジションインジケータ222がシフトポジションインジケータ220の上方に設けられている。また、設定された減速度の表示を行う減速度インジケータ224がEポジションインジケータ222の右側に設けられている。 【0068】Eポジションインジケータ222は、シフトレバーがEポジションにある際に点灯する。減速度インジケータ224は、運転者がDecelスイッチおよびCan−Decelスイッチを操作して減速度を設定すると、車両のシンボルに併せて設けられた後ろ向きの矢印(図7の右向きの矢印)の長さが増減して、設定結果を感覚的に表すようになっている。本実施例のハイブリッド車両は、後述する通り、種々の条件に基づいて設定された減速度を抑制することがある。Eポジションインジケータ222および減速度インジケータ224は、かかる抑制が行われた場合には、点滅表示など通常とは異なる態様での表示を行うことで、減速度の抑制を運転者に報知する役割も果たす。 【0069】本実施例のハイブリッド車両では、エンジン10、モータ20、トルクコンバータ30、変速機100等の運転を制御ユニット70が制御している(図1参照)。制御ユニット70は、内部にCPU、RAM,ROM等を備えるワンチップ・マイクロコンピュータであり、ROMに記録されたプログラムに従い、CPUが後述する種々の制御処理を行う。制御ユニット70には、かかる制御を実現するために種々の入出力信号が接続されている。図8は、制御ユニット70に対する入出力信号の結線を示す説明図である。図中の左側に制御ユニット70に入力される信号を示し、右側に制御ユニット70から出力される信号を示す。 【0070】制御ユニット70に入力される信号は、種々のスイッチおよびセンサからの信号である。かかる信号には、例えば、エンジン10のみを動力源とする運転を指示するハイブリッドキャンセルスイッチ、車両の加速度を検出する加速度センサ、エンジン10の回転数、エンジン10の水温、イグニッションスイッチ、バッテリ50の残容量SOC、エンジン10のクランク位置、デフォッガのオン・オフ、エアコンの運転状態、車速センサ171により検出された車速、トルクコンバータ30の油温、シフトポジション(図4参照)、サイドブレーキのオン・オフ、フットブレーキの踏み込み量、エンジン10の排気を浄化する触媒の温度、アクセル開度、オートクルーズスイッチのオン・オフ、Eポジションスイッチのオン・オフ(図4参照)、目標制動力の設定を変更するDecelスイッチおよびCan−Decelスイッチ、車間センサ170により検出された車間、過給器のタービン回転数、雪道など低摩擦係数の路面の走行モードを指示するスノーモードスイッチ、燃料計からのフューエルリッド信号などがある。 【0071】制御ユニット70から出力される信号は、エンジン10,モータ20,トルクコバータ30,変速機100等を制御するための信号である。かかる信号には、例えば、エンジン10の点火時期を制御する点火信号、燃料噴射を制御する燃料噴射信号、エンジン10の始動を行うためのスタータ信号、駆動回路40をスイッチングしてモータ20の運転を制御するMG制御信号、変速機100の変速段を切り替える変速機制御信号、変速機100の油圧を制御するためのATソレノイド信号およびATライン圧コントロールソレノイド信号、アンチロックブレーキシステム(ABS)のアクチュエータを制御する信号、駆動力源を表示する駆動力源インジケータ信号、エアコンの制御信号、種々の警報音を鳴らずための制御信号、エンジン10の電子スロットル弁の制御信号、スノーモードの選択を表示するスノーモードインジケータ信号、エンジン10の吸気バルブ、排気バルブの開閉タイミングを制御するVVT信号、車両の運転状態を表示するシステムインジケータ信号、および設定された減速度を表示する設定減速度インジケータ信号などがある。 【0072】(2)一般的動作:次に、本実施例のハイブリッド車両の一般的動作について説明する。先に図1で説明した通り、本実施例のハイブリッド車両は動力源としてエンジン10とモータ20とを備える。制御ユニット70は、車両の走行状態、即ち車速およびトルクに応じて両者を使い分けて走行する。両者の使い分けは予めマップとして設定され、制御ユニット70内のROMに記憶されている。 【0073】図9は、車両の走行状態と動力源との関係を示す説明図である。図中の曲線LIMは、車両が走行可能な領域の限界を示している。図中の領域MGはモータ20を動力源として走行する領域であり、領域EGはエンジン10を動力源として走行する領域である。以下、前者をEV走行と呼び、後者を通常走行と呼ぶものとする。図1の構成によれば、エンジン10とモータ20の双方を動力源として走行することも可能ではあるが、本実施例では、かかる走行領域は設けていない。 【0074】図示する通り、本実施例のハイブリッド車両は、まずEV走行で発進する。先に説明した通り(図1参照)、本実施例のハイブリッド車両は、エンジン10とモータ20とが一体的に回転するように構成されている。従って、EV走行時にもエンジン10は回転している。但し、燃料噴射および点火を行わず、モータリングされている状態である。先に説明した通り、エンジン10にはVVT機構が備えられている。制御ユニット70は、EV走行時にはモータ20に与える負荷を減らし、モータ20から出力される動力が車両の走行に有効に使われるようにするため、VVT機構を制御して、吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングを遅らせる。 【0075】EV走行により発進した車両が図9のマップにおける領域MGと領域EGの境界近傍の走行状態に達した時点で、制御ユニット70は、エンジン10を始動する。エンジン10はモータ20により既に所定の回転数で回転しているから、制御ユニット70は、所定のタイミングでエンジン10に燃料を噴射し、点火する。また、VVT機構を制御して、吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングをエンジン10の運転に適したタイミングに変更する。 【0076】こうしてエンジン10が始動して以後、領域EG内ではエンジン10のみを動力源として走行する。かかる領域での走行が開始されると、制御ユニット70は駆動回路40のトランジスタを全てシャットダウンする。この結果、モータ20は単に空回りした状態となる。 【0077】制御ユニット70は、このように車両の走行状態に応じて動力源を切り替える制御を行うとともに、変速機100の変速段を切り替える処理も行う。変速段の切り替えは動力源の切り替えと同様、車両の走行状態に予め設定されたマップに基づいてなされる。図10は、変速機100の変速段と車両の走行状態との関係を示すマップである。このマップに示す通り、制御ユニット70は、車速が増すにつれて変速比が小さくなるように変速段の切り替えを実行する。 【0078】この切り替えはシフトポジションによる制限を受ける。ドライブポジション(D)では、図10に示す通り、第5速(5th)までの変速段を用いて走行する。4ポジションでは、第4速(4th)までの変速段を用いて走行する。この場合には、図10における5thの領域であっても第4速(4th)が使用される。変速段の切り替えはこのマップによる切り替えの他、運転者がアクセルペダルを急激に踏み込むことにより一段変速比が高い側に変速段を移す、いわゆるキックダウンと呼ばれる切り替えも行われる。これらの切り替え制御は、エンジンのみを動力源とし、自動変速装置を備えた周知の車両と同様である。本実施例では、EV走行をしている場合(領域MG)にも同様の切り替えを実行する。なお、変速段と車両の走行状態との関係は、図10に示した他、変速機100の変速比に応じて種々の設定が可能である。 【0079】なお、図9および図10には、車両の走行状態に応じてEV走行と通常走行とを使い分ける場合のマップを示した。本実施例の制御ユニット70は、全ての走行状態を通常走行で行う場合のマップも備えている。かかるマップは、図9および図10において、EV走行の領域(領域MG)を除いたものとなっている。EV走行を行うためには、バッテリ50にある程度の電力が蓄えられていることが必要である。従って、制御ユニット70は、バッテリ50の蓄電状態に応じてマップを切り替えて、車両の制御を実行する。即ち、バッテリ50の残容量SOCが所定値以上である場合には、図9および図10に基づき、EV走行と通常走行とを使い分けて運転を行う。バッテリ50の残容量SOCが所定値よりも小さい場合には、発進および微速走行時にもエンジン10のみを動力源とする通常走行で運転する。上記2つのマップの使い分けについては、所定の間隔で繰り返し判定される。従って、残容量SOCが所定値以上でありEV走行で発進を開始した場合でも、発進後に電力が消費された結果、残容量SOCが所定値よりも小さくなれば、車両の走行状態が領域MG内にあっても通常走行に切り替えられる。 【0080】次に、本実施例のハイブリッド車両の制動について説明する。本実施例のハイブリッド車両は、ブレーキペダルを踏み込むことによって付加されるホイールブレーキと、エンジン10およびモータ20からの負荷トルクによる動力源ブレーキの2種類のブレーキによる制動が可能である。動力源ブレーキによる制動は、アクセルペダルの踏み込みを緩めた場合に行われる。動力源ブレーキは、車速に応じて変化する。 【0081】本実施例のハイブリッド車両は、先に説明したEポジションでの操作によって、動力源ブレーキの制動力を運転者が段階的に変化させることができる。EポジションにおいてDecelスイッチを操作すると、動力源ブレーキは段階的に強くなる。Can−Decelスイッチを操作すると、動力源ブレーキは段階的に弱くなる。 【0082】本実施例のハイブリッド車両は、このように段階的に設定された動力源ブレーキを変速機100の変速段の切り替えおよびモータ20による制動力の双方を組み合わせて制御することにより実現する。図11は、本実施例のハイブリッド車両について、車速および減速度と、変速段との組み合わせのマップを示す説明図である。なお、図11では、減速度を絶対値で示している。DecelスイッチおよびCan−Decelスイッチの操作によって、車両の減速度は図11中の直線BL〜BUの範囲で段階的に変化する。 【0083】動力源ブレーキによる制動力は、モータ20のトルクを制御することにより、一定の範囲で変化させることができる。また、変速機100の変速段を切り替えれば、動力源のトルクと車軸17に出力されるトルクとの比を変更することができるから、変速段に応じて車両の減速度を変更することができる。この結果、変速段が第2速(2nd)にあるときは、モータ20のトルクを制御することにより、図11中の短破線で示した範囲の減速度を達成することができる。第3速(3rd)にあるときは、図11中の実線で示した範囲の減速度を達成することができる。第4速(4th)にあるときは、図11中の一点鎖線で示した範囲の減速度を達成することができる。第5速(5th)にあるときは、図11中の長破線で示した範囲の減速度を達成することができる。 【0084】制御ユニット70は、図11のマップに応じて設定された減速度を実現する変速段を選択して制動を行う。例えば、減速度が図11中の直線BLに設定されている場合、車速が値VCよりも高い領域では、第5速(5th)により制動を行い、車速が値VCよりも低い領域では、第4速(4th)に変速段を切り替えて制動を行う。かかる領域では、第5速(5th)では所望の減速度を実現できなくなるからである。本実施例では、各変速段で実現される減速度の範囲が重複して設定されている。車速が値VCよりも高い領域では、第4速(4th)と第5速(5th)の双方で直線BLに相当する減速度を実現可能である。従って、かかる領域では、制御ユニット70は、種々の条件に基づいて第4速(4th)または第5速(5th)のいずれか、より制動に適した変速段を選択して制動を行う。 【0085】本実施例における変速段の設定について更に詳細に説明する。図12は、ある車速Vsにおける制動力と変速段との関係を示した説明図である。図11中の直線Vsに沿った制動力と変速段との関係に相当する。図12に示す通り、減速度が比較的小さい区間D1では、第5速(5th)のみで制動力が実現される。それよりも減速度が大きい区間D2では、第5速(5th)および第4速(4th)で制動力が実現される。同様に制動力が順次大きくなるにつれて、区間D3では第4速(4th)のみ、区間D4では第3速(3rd)または第4速(4th)、区間D5では第3速(3rd)のみ、区間D6では第2速(2nd)または第3速(3rd)、区間D7では第2速(2nd)のみでそれぞれの制動力が実現される。なお、ここでは第2速(2nd)までを用いたマップを示したが、第1速(L)を用いた制動を行うものとしても構わない。 【0086】各変速段での減速度が重複している理由について説明する。図13は、第2速(2nd)における減速度を示す説明図である。図中の破線TLは第2速(2nd)で実現される減速度の下限を示し、破線TUは上限と示している。直線TEはエンジン10によるエンジンブレーキのみで実現される減速度を示している。本実施例のハイブリッド車両では、VVT機構を制御することにより、エンジンブレーキによる減速度を変更することも可能ではある。但し、かかる制御は、応答性および精度が低い。従って、本実施例では、制動時にはVVT機構を制御していない。この結果、図13に示す通り、エンジンブレーキによる減速度は車速に応じて一義的に決まった値となる。 【0087】本実施例ではモータ20によるトルクを制御することによって、減速度を変化させている。図13中のハッチングを示した領域Bgでは、モータ20をいわゆる回生運転し、モータ20でも制動力を付加することによってエンジンブレーキによる減速度よりも大きい減速度を実現している。その他の領域Bp、即ち直線TEと破線TLとの間の領域では、モータ20を力行運転し、モータ20からは駆動力を出力することによってエンジンブレーキよりも低い減速度を実現している。 【0088】図14は、モータ20を回生運転する場合の制動トルクと、モータ20を力行運転する場合の制動トルクとの関係を模式的に示した説明図である。図中の左側には、モータ20を力行運転する場合の制動トルク(領域Bpにおける状態)を示した。エンジンブレーキによる制動トルクは図中の帯BEで示される。領域Bpでは、エンジンブレーキによる制動トルクとは逆方向に、モータ20が帯BMで示された駆動力を出力する。車軸17には、両者の総和からなる制動トルクが出力されるから、図中にハッチングで示した通り、エンジンブレーキによる制動トルクBEよりも低い制動トルクが出力される。 【0089】図中の右側には、モータ20を回生運転する場合の制動トルク(領域Bgにおける状態)を示した。エンジンブレーキによる制動トルクは領域Bpにおける場合と同じ同じ大きさの帯BEで示される。領域Bpでは、エンジンブレーキによる制動トルクと同方向に、モータ20が帯BMで示された制動トルクを出力する。車軸17には、両者の総和からなる制動トルクが出力されるから、図中にハッチングで示した通り、エンジンブレーキによる制動トルクBEよりも大きい制動トルクが出力される。 【0090】このように本実施例のハイブリッド車両は、モータ20の運転状態を回生運転と力行運転とで切り替えることによって、エンジンブレーキによる減速度よりも大きい減速度および低い減速度を実現している。そして、例えば、変速比の大きい側の変速段において力行運転により実現される減速度の領域と、変速比の小さい側の変速段において回生運転により実現される減速度の領域とが重複するように図11のマップを設定している。例えば、第2速(2nd)での力行運転による制動の領域と第3速(3rd)での回生運転による制動の領域とを重複させている。 【0091】このように設定することにより、バッテリ50の残容量SOCに適した態様で制動を行うことができる。例えば、バッテリ50が更に充電可能な状態にある場合には、モータ20の回生運転により所望の減速度が得られるように変速比が小さい側の変速段を選択する。バッテリ50が満充電に近い状態にある場合には、モータ20の力行運転により所望の減速度が得られるように変速比が大きい側の変速段を選択する。本実施例では、上述した通り、2つの変速段による減速度の範囲を重複して設定することにより、このように、バッテリ50の残容量SOCに関わらず所望の減速度の実現を可能としている。 【0092】もちろん、これらの設定は、一例に過ぎず、各変速段により実現される減速度が重複しないように設定してもよい。また、図11のマップのように全ての変速段がそれぞれ他の変速段と重複する領域を有する設定とするのではなく、一部の変速段のみが重複する領域を有する設定としてもよい。 【0093】一方、オートクルーズスイッチ169がオンになっている場合には、制御ユニット70が車速や車間に基づいて適切な加速度を設定する。車両を減速する必要がある場合には、図11のマップ中の直線BL〜BUの範囲で減速度が設定される。この場合の減速度はEポジションでの減速度の設定とは異なり、直線BL〜BUの連続的な範囲で設定される。制御ユニットは、Eポジションの場合と同様、図11のマップを参照して変速比の選択とエンジン、電動機の制御を実行する。正の加速度についても図11と同様のマップが用意されており、制御ユニットは該マップに基づいて変速比の選択、エンジン、電動機の制御を実行する。 【0094】本実施例では、このように種々の方法で設定された減速度での制動を実現する。但し、かかる制御は先に説明したEポジションまたはオートクルーズがオンになっている場合に行われる(以下、かかる制動を減速度制御制動と呼ぶ)。これらの条件が満たされていない場合、つまりシフトレバーがEポジションになく、オートクルーズもオフになっている場合には、通常の制動が行われる。通常の制動では、減速度制御制動とは異なり、変速段の切り替えを行わない。従って、動力源ブレーキがかけられる時点で使用されていた変速段のままで制動を行う。ドライブポジション(D)にある場合には、第5速(5th)で走行しているのが通常であるから、該変速段で実現可能な比較的低い制動力での制動が行われる。4ポジション(4)にある場合には、第4速(4th)までを使用して走行しているから、ドライブポジション(D)よりも若干大きい減速度での制動が実現される。通常の制動時には、モータ20の制動力も一定の負荷を与える回生運転となる。従って、図11に示したマップのように各変速段で幅広い範囲の減速度を実現することはできず、各変速段につき1つの直線で示される減速度しか実現し得ない状態となる。 【0095】(3)運転制御処理:本実施例のハイブリッド車両は、制御ユニット70が、エンジン10、モータ20等を制御することによって、上述した走行を可能としている。以下では、本実施例のハイブリッド車両に特徴的な制動時の運転に絞って、減速制御の内容を説明する。 【0096】図15は、減速制御処理ルーチンのフローチャートである。この処理は、制御ユニット70のCPUが所定の周期で実行する処理である。この処理が開始されると、CPUは、まず機能判定処理を行う(ステップS10)。本実施例のハイブリッド車両は、減速度を設定する機能がEポジション、オートクルーズの2種類存在する。機能判定処理とは、オートクルーズのオン・オフおよびEポジションの選択状況を判定し、いずれの機能を有効にすべきかを判定する処理である。 【0097】図16は、機能判定処理ルーチンのフローチャートである。機能判定処理ルーチンでは、CPUはまずスイッチの信号を入力する(ステップS15)。ここで入力すべき信号は、図8に一覧で示した。もっとも、機能判定処理ルーチンに直接関係のある信号としては、シフトポジションを表す信号、Eポジションスイッチの信号、オートクルーズスイッチ169のオン・オフを示す信号である。従って、ステップS15では、これらの信号のみを入力するものとしても構わない。 【0098】次に、CPUは入力された信号に基づいて、DポジションからEポジションへのシフトポジションの切り替えが行われたか否かを判定する(ステップS20)。入力されたシフトポジションがEポジションであり、かつ、従前のシフトポジションがDポジションであれば、上述の切り替えが行われたものと判断される。Eポジションスイッチがオフの状態からオンの状態に変わったか否かに基づいて判断するものとしてもよい。 【0099】DポジションからEポジションへの切り替えが行われた場合には、オートクルーズを禁止する処理を行う(ステップS25)。本実施例では、オートクルーズの実行の可否を示すためのオートクルーズフラグを値0にするものとしている。また、これと同時に減速度の設定を許可する処理が行われる(ステップS25)。本実施例では、減速度の設定の可否を示すための減速度設定フラグを値1にするものとしている。次に、CPUはEポジションインジケータ(図7参照)をオンにする(ステップS30)。図8に示したシステムインジケータ信号として、Eポジションインジケータをオンにする信号を出力する。この信号に応じてEポジションインジケータが点灯される。Eポジションインジケータの点灯に併せて、CPUは目標制動力の初期化として、設定値をDポジション相当の値とする(ステップS35)。 【0100】Dポジション時において、第5速(5th)で走行している場合、ステップS60では、この変速段で実現される減速度に対応した目標制動力を初期値として設定するのである。なお、本実施例においては、図11に示した通り、車速の低い領域では、設定される減速度の最低値(図中の直線BL)が、第5速(5th)で実現される減速度よりも大きい場合がある。フローチャートでは明記していないが、ステップS60における目標制動力の設定は、あくまでもEポジションにおいて採りうる減速度の範囲で行われる。従って、Dポジションで実現される減速度がEポジションで採りうる最低限の減速度(直線BL)よりも低い場合には、減速度は直線BL相当の値に設定される。この結果、Dポジションで使用している変速段によって、減速度の初期設定値は、車速が比較的高い領域ではDポジションで実現される減速度相当の値となり、車速が比較的低い領域ではDポジションで実現される減速度よりも大きい減速度となる場合もある。 【0101】ステップS20において、DポジションからEポジションへの切り替えではないと判定された場合には、CPUは、オートクルーズスイッチ169をオンにする操作がなされたか否かを判定する(ステップS40)。オートクルーズスイッチ169が継続的にオンとなっているか否かを判定するものではなく、操作が行われたか否かを判定する。つまり、オートクルーズスイッチのオン・オフを示す信号がオフの状態からオンの状態に切り替わった場合には、オン操作がなされたものと判定される。オートクルーズスイッチをオンにする操作が行われている場合には、オートクルーズの機能を許可する処理がなされる。つまり、オートクルーズの可否を示すフラグを値1とする処理が行われる。 【0102】オートクルーズスイッチをオンにする操作が行われていない場合には、CPUは、EポジションからDポジションへの切り替えが行われたか否かを判定する(ステップS30)。つまり、入力されたシフトポジションがDポジションであり、かつ、従前のシフトポジションがEポジションであれば、上述の切り替えが行われたことになる。Eポジションスイッチがオンの状態からオフの状態に変わったか否かに基づいて判断するものとしてもよい。オートクルーズスイッチをオンにする操作が行われている場合には、上記判定はスキップされる。 【0103】ステップS25またはステップS30のいずれかの条件を満たす場合には、CPUは、Eポジションインジケータ(図7参照)をオフにする(ステップS35)。つまり、図8に示したシステムインジケータ信号に併せてEポジションインジケータをオフにする信号を出力する。この信号に応じてEポジションインジケータが消灯される。Eポジションインジケータの消灯に併せて、CPUは目標制動力の設定値を解除する(ステップS40)。Eポジションでの走行中には、後述する通り運転者がDecelスイッチおよびCan−Decelスイッチを操作して、所望の減速度を設定するが、ステップS40では、こうした一切の設定を解除するのである。 【0104】また、減速度の設定を禁止する処理を実行する(ステップS45)。本実施例では、減速度設定フラグを値0にするものとした。かかる処理が行われた場合には、Eポジションが選択されている場合でも、DecelスイッチおよびCan−Decelスイッチの操作による減速度の設定が禁止されることになる。ステップS25およびステップS30の双方とも満たさない場合には、ステップS35〜S45の処理がスキップされる。 【0105】以上で説明した通り、シフトレバー162の操作およびオートクルーズスイッチ169の操作に応じて、有効な機能の選択を行うと、CPUは機能判定処理ルーチンを終了する。CPUは機能判定処理ルーチンが終了すると、減速制御処理ルーチンに戻り、次に減速度設定処理を実行する(ステップS100)。この処理は、DecelスイッチおよびCan−Decelスイッチの操作に基づいて、Eポジションで実現すべき減速度の設定を行う処理である。減速度設定処理の内容を図17に基づいて説明する。 【0106】図17は、減速度設定処理ルーチンのフローチャートである。この処理が開始されると、CPUはスイッチの信号を入力する(ステップS105)。ここで入力する信号は、図8に示した種々の信号のうち、Decelスイッチ、Can−Decelスイッチ、Eポジションスイッチ、スノーモードスイッチの信号である。もちろん、その他の信号を併せて入力するものとしても構わない。 【0107】次に、CPUは運転者による減速度の設定が許可されているか否かを判定する(ステップS110)。この判定は、減速度設定フラグの値に基づいて行われる。該フラグが値1であれば、減速度の設定が許可されていると判定されるし、該フラグが値0であれば、減速度の設定が禁止されていると判定される。減速度の設定が禁止されていると判定された場合には、減速度の設定の変更は受け付けるべきではないと判断し、CPUは何も処理を行うことなく減速度設定処理ルーチンを終了する。 【0108】ステップS110において、減速度の設定が許可されていると判断された場合、CPUは次にDecelスイッチおよびCan−Decelスイッチが故障しているか否かを判定する(ステップS115)。故障は、種々の方法により判断可能である。例えば、スイッチの接触不良時には、いわゆるチャタリングが生じ、スイッチのオン・オフが非常に頻繁に切り替わって検出される。所定時間に亘って、所定以上の周波数でオン・オフが検出された場合には、スイッチが故障しているものと判定することができる。また、逆に通常の操作では想定し得ない程の長時間に亘ってスイッチがオンとなっている場合にも故障と判定することができる。 【0109】スイッチの故障が検出された場合には、運転者の意図しない減速度が設定されることを回避すべく、CPUは目標制動力の設定を解除する(ステップS170)。目標制動力の設定を変更しない処理を行うものとしても構わない。本実施例では、運転者が自己の意図に沿わない値に設定された減速度を修正している途中にスイッチが故障した場合も想定し、目標制動力の設定を解除するものとした。こうして、目標制動力の設定を解除した後、CPUはスイッチの故障を運転者に報知するための故障表示を行う(ステップS175)。故障表示は種々の方法を採ることができる。本実施例では、警報音と鳴らすと共に、Eポジションインジケータ(図7参照)を点滅させるものとした。これらの報知は、図8に示した警報音の信号、システムインジケータの信号にそれぞれ該当する信号を出力することで実現される。 【0110】CPUは、更に減速度制御制動を禁止するための処理を行う(ステップS180)。本実施例では、禁止のための処理として、CPUは、減速度制御制動を禁止するために設けられた禁止フラグをオンにする。後述する通り、実際の制動の制御を行う際に、この禁止フラグのオン・オフによって減速度制御制動が禁止または許可される。減速度制御制動が禁止された場合には、シフトレバーがEポジションの位置にあるか否かに関わらず、Dポジション相当の制動が行われることになる。スイッチが故障した場合には、CPUは以上の処理を実行して減速度設定処理ルーチンを終了する。 【0111】ステップS115において、スイッチが故障していないと判定された場合、CPUは目標制動力の設定を変更するための処理に移行する。かかる処理として、まずCPUは、DecelスイッチおよびCan−Decelスイッチが同時に操作されているか否かを判定する(ステップS120)。両スイッチが同時に操作された場合には、いずれのスイッチを優先すべきか不明であるため、以下に示す目標制動力の設定の変更のための処理をスキップし、現状の設定を維持する。 【0112】先に図4および図5に示した通り、本実施例のハイブリッド車両は、シフトレバーおよびステアリングに設けられたスイッチの双方で目標制動力の設定を行うことができる。従って、運転者の誤操作によって、シフトレバーのスイッチと、ステアリング部のスイッチが同時に操作される可能性がある。また、ステアリング部に設けられたDecelスイッチおよびCan−Decelスイッチの双方が同時に操作される可能性もある。特にこうした誤操作は、操舵のためにステアリングを操作した場合など、運転者が減速度の変更を意図せずに行う可能性が高い。本実施例で、DecelスイッチおよびCan−Decelスイッチの双方が同時に操作された場合に目標制動力の設定を維持するのは、運転者の意に添わない誤操作で目標制動力の設定が変更されることを回避する意図も含まれている。 【0113】DecelスイッチおよびCan−Decelスイッチの双方が同時に操作されてはいないと判定された場合には、各スイッチの操作に応じて目標制動力の設定を変更する。即ち、Decelスイッチがオンになっていると判定される場合には(ステップS125)、CPUは目標制動力の設定を増加する(ステップS130)。Can−Decelスイッチがオンになっていると判定される場合には(ステップS135)、CPUは目標制動力の設定を低減する(ステップS140)。本実施例では、それぞれのスイッチの操作回数に応じて目標制動力の設定を段階的に変更している。いずれのスイッチも操作されていない場合には、当然ながら目標制動力の設定は変更されない。 【0114】上記処理(ステップS120〜S140)によって、目標制動力の設定がなされると、CPUは設定された減速度がリジェクト範囲にあるか否かを判定する(ステップS145)。本実施例では、スノーモードスイッチ(図8参照)のオン・オフに応じて減速度の上限値を変更している。スノーモードスイッチは、雪道のように低摩擦係数の路面を走行しているときに運転者が操作するスイッチである。低摩擦係数の路面を走行中に急激な制動を行えば、車両がスリップする可能性がある。運転者がスノーモードスイッチをオンにすると、減速度の上限値は車両のスリップを回避できる程度に抑制される。 【0115】設定された減速度が上述の上限値を超える場合には、リジェクト範囲にあるものと判定される。減速度がリジェクト範囲にあると判定された場合、CPUは設定された設定された減速度を許容される上限値に抑制する(ステップS150)。また、目標制動力の設定が抑制されたことを運転者に報知するための処理を行う(ステップS155)。本実施例では、減速度インジケータ224を1秒程度の間、点滅させるものとしている。また、これに併せて警報音を発するものとしている。これらの報知は、図8に示した警報音、設定減速度インジケータの制御信号にそれぞれ適切な信号を出力することで実現される。ステップS145において、設定された減速度がリジェクト範囲にないと判定された場合には、これらの処理をスキップする。以上の処理により、減速度が設定されると、CPUは結果を減速度インジケータ224に表示して(ステップS160)、減速度設定処理ルーチンを終了する。 【0116】上記処理(ステップS120〜S140)によって、目標制動力の設定が変更される様子を図18〜図21の具体例に基づいて説明する。図18は、第1の設定例を示すタイムチャートである。横軸に時間を取り、DecelスイッチおよびCan−Decelスイッチの操作の有無、目標目標制動力の設定値の変化、設定された減速度を実現するためのモータ20のトルクおよび変速段の変化の様子をそれぞれ図示した。なお、図18は車速が一定であるものとして図示した。 【0117】時刻a1において、Decelスイッチがオンにされたものとする。図17のフローチャートでは明記しなかったが、本実施例では、所定時間以上連続でオンとなった場合にのみ設定の変更を受け付けるものとしている。つまり、CPUは、減速度設定処理ルーチン(図17)のステップS105において、スイッチが所定時間以上連続でオンとなっているか否かの判断を踏まえて、スイッチの操作結果を入力しているのである。一般にスイッチにはチャタリングと呼ばれる現象によって、オン・オフの切り替え時に非常に短い周期でオン・オフの信号が交互に検出されるのが通常である。所定時間経過時に設定の変更を行うものとすれば、チャタリングによって運転者の意図に反して減速度が大きく変更することを回避できる。 【0118】また、所定時間操作されて初めてスイッチの入力を受け付けることによって、運転者が意図せずスイッチに触れただけで目標制動力の設定が変化することを回避できる。特に、本実施例では、ステアリング部にDecelスイッチおよびCan−Decelスイッチを設けているため、運転者が偶然にスイッチに触れる可能性が高い。従って、偶発的な操作による目標制動力の設定の変更を回避する手段は特に有効性が高い。 【0119】上述の所定時間(以下、オン判定基準時間と呼ぶ)は、このように運転者がスイッチを意図的に操作したか否かを判断する基準として設定することができる。オン判定基準時間が短ければ、運転者の偶発的な操作で目標制動力の設定が変更される可能性が高くなる。逆に、オン判定基準時間が長ければ、DecelスイッチおよびCan−Decelスイッチの応答性が悪くなる。オン判定基準時間は、これらの条件を考慮した上で、適切な値を実験等によって設定することができる。もちろん、運転者が自己に適した値に設定可能としてもよい。 【0120】図18の例では、時刻a1〜a2までの時間は、上述したオン判定基準時間を超えている。従って、時刻a2で設定された減速度が一段階大きくなる。図11で説明した通り、本実施例では変速段とモータのトルクの双方を組み合わせて制御することにより、幅広い範囲で任意の減速度を実現することができる。図11から明らかな通り、減速度の範囲は、変速段を切り替えることで大きく変動し、モータのトルクを制御することで細かく変更することができる。本実施例では、設定された減速度は、比較的細かな範囲で段階的に変更される。図18の時刻a2の時点で変更されたステップは、図示する通り、変速段の変更を伴わず、モータのトルクを変更することによって変更可能な範囲のステップである。なお、変速段は、第5速(5th)が初期値となる場合を例にとって説明した。 【0121】次に、時刻a3〜a4の間、オン判定基準時間を超えてDecelスイッチがオンになると、図示する通り、設定された減速度は更に一段階増大する。本実施例では、図示する通り、減速度の2度目の変更も変速段の切り替えを伴うことなく、モータのトルクの変更で実現される。このように、本実施例では、減速度のステップが細かな刻みに設定されている。こうすることにより、変速段の切り替えを伴わずに、目標制動力の設定を変更できる選択範囲が広がるため、運転者は自己の要求に適合した減速度を容易に設定することができる。従って、図18に示す通り、モータのトルクは、時刻a4の時点で変化するが、変速段は第5速(5th)のまま維持される。 【0122】本実施例では、スイッチの操作を受け付けるための条件として、オン判定基準時間の他、スイッチを連続的に操作した場合の間隔に関する操作間隔基準時間が設定されている。つまり、スイッチが連続的に操作された場合、最初の操作の後、上述の操作間隔基準時間以上経過してから後の操作がなされた場合にのみ、後の操作は有効なものとして受け付けられる。CPUは、減速度設定処理ルーチン(図17)のステップS105において、前回の操作から操作間隔基準時間以上経過しているか否かの判定を行った上で、スイッチの操作を入力しているのである。 【0123】例えば、図18において、時刻a5〜a6の間で3回目の操作として、Decelスイッチが操作されている。操作時間は、オン判定基準時間を超えている。しかし、ここでの操作は前回の操作の後、時刻a4〜a5に相当するわずかの時間しか経過していない。本実施例では、この時間は、操作間隔基準時間よりも短い。従って、オン判定基準時間を超える時間操作されているにも関わらず、3回目の操作は有効な操作として受け付けられず、目標目標制動力の設定、モータのトルク、変速段のいずれも変化しない。 【0124】このように操作間隔基準時間を設けることによって、運転者の操作に基づき過度に急激に目標制動力の設定が変更されるのを回避することができる。運転者が減速度を変更した場合、実際に該減速度での減速が行われるまでには、所定の時間遅れが生じるのが通常である。ところが、操作間隔基準時間を設けることなく、目標制動力の設定の変更を受け付けた場合、該設定によって実現される減速度を確認することなく、目標制動力の設定を次々に変更する可能性がある。この結果、運転者の意図以上に急激に減速度が変更される可能性もある。本実施例では、操作間隔基準時間を設けることにより、かかる事態を回避しているのである。 【0125】操作間隔基準時間は、かかる意図を満たすよう、実験等によって設定することができる。操作間隔基準時間が短ければ、目標制動力の設定の変化を十分緩やかにすることができない。逆に、操作間隔基準時間が長ければ、目標制動力の設定の変化に長時間を要することになり、操作性が低下する。操作間隔基準時間は、これらの条件を考慮して、適切な値を実験等により設定することができる。もちろん、運転者が自己に適した値に設定可能としてもよい。 【0126】図18の例では、4回目の操作として時刻a7〜a8の間でDecelスイッチが操作されている。この操作時間は、オン判定基準時間を超えている。従って、4回目の操作に応じて設定された減速度は更に増す。Decelスイッチを操作する前の基準の減速度から3段階増したことになる。本実施例では、モータのトルクを制御するのみではかかる減速度は実現できない設定となっている。従って、4回目の操作時には、設定された減速度の増加に応じて、変速段が第5速(5th)から第4速(4th)に変更される。変速段の切り替えは、既に説明した通り図11のマップに基づいてなされる。変速段を第4速に切り替えることによって、実現可能な減速度の範囲が全体的に大きくなる。従って、4回目の操作では、基準の減速度から3段階増した減速度を実現するために、モータのトルクを減じている。モータのトルクは、図11のマップに従って、設定された設定された減速度および変速段に基づき設定される。 【0127】なお、減速度の増加に応じて変速段を切り替えることは、要求された減速度を実現する目的の他、速やかな加速を実現するという利点も有している。一般に大きな減速度で制動を行った後は、制動前の車速に戻すために速やかな加速が要求されることが多い。減速度の増加とともに変速比が大きい側に変速段を切り替えておけば、制動後にその変速段を用いて速やかな加速を行うことができる。従って、設定された減速度に応じて変速段を切り替えることによって加減速時の車両の応答性を向上することができる。 【0128】以上では、減速度を増す側の操作について説明したが、減速度を低減する側の操作についても同様である。図18に示す通り、時刻a9〜a10では、5回目の操作としてCan−Decelスイッチが操作されている。操作時間は、オン判定基準時間を超えている。従って、この操作に応じて設定された減速度は一段階低くなり、時刻a4で設定された減速度に等しくなる。また、この減速度を実現するために、変速段およびモータのトルクも同時に変更される。 【0129】次に、時刻a11〜a12において、6回目の操作としてCan−Decelスイッチが操作されている。この操作時間は、オン判定基準時間よりも短い。従って、この操作は無効と判定され、設定された減速度、モータのトルク、変速段のいずれも変化しない。図18では例示していないが、Can−Decelスイッチの操作間隔が操作間隔基準時間よりも短い場合も同様に、その操作は無効と判定され、設定された減速度等は変化しない。 【0130】次に、設定された減速度の第2の設定例について説明する。図19は、第2の設定例を示すタイムチャートである。図示する通り、時刻b1〜b2の間でDecelスイッチが操作されたものとする。操作時間は、先に説明したオン判定基準時間を超えているものとする。第1の設定例で説明した通り、かかる操作に応じて設定された減速度は一段階増加する。また、かかる減速度を実現するようにモータのトルクも増加する。 【0131】次に、時刻b3〜b6の間で2回目の操作としてDecelスイッチが操作されたものとする。先に説明したオン判定基準時間を超えているものとする。但し、この場合には、Decelスイッチの操作と併せて、時刻b4〜b6の間でCan−Decelスイッチも操作されている。Decelスイッチの操作が開始された時刻b3からCan−Decelスイッチの操作が開始される時刻b4までの時間は、オン判定基準時間よりも短いものとする。従って、Can−Decelスイッチの操作が開始された時刻b4の時点では、Decelスイッチの操作は有効なものとして受け付けられてはいない。 【0132】先に減速度設定処理ルーチンで説明した通り、制御ユニット70のCPUはDecelスイッチとCan−Decelスイッチとが同時に操作された場合には、目標制動力の設定を変更しない(図17のステップS120参照)。従って、図19に示す通り、時刻b3〜b5の間でオン判定基準時間を超えてDecelスイッチが操作されているにも関わらず、設定された減速度、モータのトルク、変速段のいずれも変化しない。なお、図19では、Decelスイッチのみが操作されている時間(時刻b3〜b4の間)、およびCan−Decelスイッチのみが操作されている時間(時刻b5〜b6の間)のいずれもがオン判定基準時間を超えていないからである。例えば、時刻b3〜b4の間がオン判定基準時間を超えている場合には、Decelスイッチの操作によって設定された減速度が一段階増大する。時刻b5〜b6の間がオン判定基準時間を超えている場合には、Can−Decelスイッチの操作によって設定された減速度が一段階低減する。 【0133】次に、操作間隔基準時間以上の間隔を経た後に、3回目の操作として時刻b7〜b8の間でオン判定基準時間を超えてDecelスイッチが操作されると、スイッチの操作が有効なものとして受け付けられ、目標目標制動力の設定が一段階増加する。これに併せてモータのトルクも増す。 【0134】2回目の操作では、Decelスイッチの操作が開始された後に、Can−Decelスイッチの操作が行われた場合について説明した。両スイッチが同時に操作された場合に目標制動力の設定が変化しないのは、Can−Decelスイッチが先に操作された場合も同様である。図19に示す通り、時刻b9〜b11の間で4回目の操作としてCan−Decelスイッチが操作されている。この操作と併せて時刻b10〜b12の間でDecelスイッチが操作されている。時刻b10〜b11の間では、双方のスイッチが同時に操作されていることになる。かかる場合にも、2回目の操作で説明したのと同様、設定された減速度、モータのトルクおよび変速段のいずれも変化しない。 【0135】DecelスイッチとCan−Decelスイッチとが同時に操作されている場合には、運転者の誤操作である可能性が高い。図19に具体的に示した通り、双方のスイッチが同時に操作された場合には、目標制動力の設定を維持するため、誤操作によって運転者の意図に反して減速度が変更されるのを回避することができる。また、こうすることにより、DecelスイッチとCan−Decelスイッチの操作タイミングによって、頻繁に目標目標制動力の設定が変動することを抑制することもできる。 【0136】第1および第2の設定例(図18および図19)では、設定された減速度がDecelスイッチおよびCan−Decelスイッチの操作回数に応じて段階的に変化する場合を示した。かかる態様で目標制動力を設定するものとすれば、節度感のある設定が可能となる。また、目標制動力が段階的に変化するため、比較的短時間の操作で幅広く目標制動力を変更することができ、操作性に優れるという利点もある。これに対し、目標目標制動力の設定がスイッチの操作時間に応じて連続的に変化するように構成してもよい。操作時間に応じて目標制動力の設定が変更する場合の例を、第3の設定例として図20に示す。 【0137】この例では、1回目の操作として、時刻c1〜c3の間でDecelスイッチが操作されている。第1および第2の設定例と同じく、スイッチの操作はオン判定基準時間を経過した時点で有効なものとして受け付けられる。図20の例では、時刻c1〜c2の間隔がオン判定基準時間に相当する。1回目の操作では時刻c2〜c3の間でDecelスイッチの操作時間に比例して設定された減速度が増大する。また、かかる設定された減速度を実現するため、モータのトルクも同時に変化する。 【0138】2回目の操作として、時刻c4〜c6の間でDecelスイッチが操作されると、操作の開始からオン判定基準時間だけ経過した時刻c5以降、Decelスイッチの操作時間に応じて設定された減速度が増大する。また、これに併せてモータのトルクも変化する。なお、第3の設定例では、1回目および2回目の操作による設定された減速度はモータのトルクを変化させることで実現可能であるため、変速段は変化していない。設定された減速度がモータのトルクの変化のみでは実現できない程度に変化した場合には、図11のマップに基づき、変速段が切り替えられる。 【0139】その後、3回目の操作として、時刻c7〜c8の間でDecelスイッチが操作されている。但し、2回目の操作が終了した時刻c6から3回目の操作が開始される時刻c7までの間隔は、操作間隔基準時間よりも短い。従って、第1および第2の設定例と同様、3回目の操作は有効なものとして受け付けられず、設定された減速度は変化しない。 【0140】4回目の操作として、時刻c9〜c10の間でDecelスイッチが操作されている。この操作時間は、オン判定基準時間よりも短い。従って、4回目の操作は有効なものとして受け付けられず、設定された減速度は変化しない。 【0141】第3の設定例では、設定された減速度を増大する側のみならず、低減する側もCan−Decelスイッチの操作時間に応じて設定が変化する。時刻c11〜c13の間で5回目の操作としてCan−Decelスイッチが操作されると、オン判定基準時間を経過した時刻c12以降で、スイッチの操作時間に比例して設定された減速度が低減する。 【0142】その後、6回目の操作として時刻c14〜c15の間でCan−Decelスイッチが操作されている。この操作時間は、オン判定基準時間よりも短い。従って、6回目の操作は有効なものとして受け付けられず、設定された減速度は変化しない。 【0143】第3の設定例のように、スイッチの操作時間に応じて連続的に設定された減速度が変化するものとすれば、スイッチを何度も操作することなく運転者が所望の減速度を得ることができる利点がある。また、目標制動力が連続的に変化するため、運転者の意図に応じて目標制動力を緻密に設定可能となる利点もある。なお、第3の設定例では、スイッチの操作時間に比例して設定された減速度が変化するものとしているが、操作時間に対して非線形に設定された減速度が変化するものとしてもよい。例えば、操作開始当初は比較的緩やかに設定された減速度が変化し、操作時間が長くなるにつれて速やかに設定された減速度が変化するようにしてもよい。 【0144】次に、第4の設定例として設定された減速度がリジェクト範囲に入る場合の例を図21に示す。第4の設定例では、1回目の操作として、時刻d1〜d3までの間にDecelスイッチが操作されている。操作開始からオン判定基準時間が経過した時刻d2において、Decelスイッチの操作は有効なものとして受け付けられ、設定された減速度は一段階増加する。これに併せてモータのトルクも増加する。 【0145】2回目の操作として、時刻d4〜d6の間にDecelスイッチが操作された場合も同様に、オン判定基準時間を経過した時刻d5において、Decelスイッチの操作は有効なものとして受け付けられ、設定された減速度は一段階増加する。これに併せてモータのトルクも増加する。 【0146】3回目の操作として、時刻d7〜d9までの間にDecelスイッチが操作された場合も同様に、オン判定基準時間を経過した時刻d8において、Decelスイッチの操作は有効なものとして受け付けられ、設定された減速度は増加する。設定された減速度の上限値が制限されていない場合には、図21中に一点鎖線で示す通り、設定された減速度が一段階増加する。この場合、第1の設定例(図18)と同様、モータのトルクおよび変速段も変化する。 【0147】第4の設定例では、減速度の上限値がDClimに制限されているものとする。3回目の操作で設定された減速度を一点鎖線で示す値に変更すると、設定された減速度はこの上限値DClimを超えることになる。かかる場合には、設定された減速度がリジェクト範囲にあることになるから、先に説明したとおり(図17のステップS150参照)、設定された減速度は上限値DClimに抑制され、図21中に実線で示した値となる。また、これに併せてモータのトルクおよび変速段もそれぞれ実線で示した設定値となる。図21では、抑制前に比べてモータのトルクが増し、変速段が第5速(5th)を維持する設定となっているが、これらは減速度DClimを実現するように図11のマップに従って設定された結果である。必ずしも変速段およびモータのトルクが抑制前とかかる関係にあるとは限らない。 【0148】以上の具体例で示した通り、本実施例のハイブリッド車両は、DecelスイッチおよびCan−Decelスイッチを操作することにより、運転者が種々の設定された減速度を設定することができる。また、誤操作や頻繁な操作などによって、運転者が意図せず、減速度が変更されることを抑制することができる。 【0149】減速度設定処理が終了すると、CPUは減速制御処理ルーチン(図15)に戻り、オートクルーズ設定処理を実行する(ステップS170)。図22は、オートクルーズ設定処理のフローチャートである。この処理が開始されると、CPUはオートクルーズの設定が許可されているか否かの判定を行う(ステップS172)。この判定は、オートクルーズフラグのオン・オフによって行われる。該フラグが値1であれば設定が許可されていると判定され、該フラグが値0であれば設定が禁止されていると判定される。設定が禁止されていると判定された場合には、CPUは何ら処理を行うことなくオートクルーズ設定処理ルーチンを終了する。 【0150】設定が許可されていると判定された場合には、CPUは車速および車間に基づいて目標加速度を設定する処理を実行する。このために、まず車速および車間を検出する(ステップS174)。これらはそれぞれ車速センサ171および車間センサ170により検出される。 【0151】次に、CPUは車間が所定の基準値LLよりも小さいか否かを判定する(ステップS176)。車間が基準値LLよりも小さい場合には、車間が接近しすぎることによる危険を回避するために、車両を減速する必要がある。従って、かかる場合には、CPUは、車間距離に応じた減速度を目標減速度として設定する(ステップS178)。本実施例では、それぞれの車速において車間距離に応じて目標減速度を予め設定したテーブルを制御ユニット内のROMに記憶している。ステップS178では、このテーブルを参照することにより、目標減速度を設定している。基準値LLは、このように車間が接近しすぎることを回避するための減速を行うか否かの基準となる値であり、実験又は解析により予め適切な値を設定することができる。基準値LLは、車速に応じて異なる値としてもよい。 【0152】ステップS176において、車間が基準値LL以上であると判定された場合には、CPUはオートクルーズの機能として、目標の車速V*を維持するための制御を実行する。本実施例では、現在の車速Vと目標の車速V*との偏差ΔVに基づき、いわゆるPID制御によって目標加速度ACを設定する(ステップS180)。即ち、目標加速度ACは、次式(7)によって設定される。 AC=k1・ΔV+k2・Σ(ΔV)+k3・d(ΔV)/dt; ΔV=V*−v; …(7) 但し、d(ΔV)/dtはΔVの時間微分を意味する。 【0153】上式(7)に示した通り、目標加速度ACは、速度の偏差ΔVの比例項(右辺第1項)、積分項(第2項)、微分項(第3項)から求められる。k1,k2,k3はそれぞれゲインであり、実験または解析により所望の応答性および安定性が実現されるように適切な値を設定することができる。PID制御は周知の技術であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。 【0154】かかる演算の結果、車速Vが目標の車速V*よりも高い場合には、目標加速度ACで制動が行われることになる。逆に、車速Vが目標の車速V*よりも低い場合には、所定の加速度で加速が行われることになる。両者は共に上式(7)によって求められる。前者の場合には、目標加速度ACは負の値となり、後者の場合には、目標加速度ACは正の値となる。以上の処理によって、車間および車速に応じてそれぞれ目標の加速度を設定すると、CPUはオートクルーズ設定処理ルーチンを終了して、減速制御処理ルーチン(図15)に戻る。 【0155】減速制御処理ルーチンでは、次に、CPUは制動を行うための条件が成立しているか否かを判定する(ステップS200)。制動を行うための条件は、機能判定処理(ステップS10)の結果、および設定された加速度の値に基づいて以下の通りなされる。まず、オートクルーズが有効な機能として選択されている場合、つまりオートクルーズフラグが値1となっている場合について説明する。この場合は、アクセルペダルの踏み込み量に関わらずオートクルーズ設定処理(ステップS170)で設定された加速度が負の値、即ち車両を減速すべき値となっている場合に制動を行うための条件が満たされていると判断される。 【0156】次に、オートクルーズが有効な機能として選択されていない場合、即ち、オートクルーズフラグが値0となっている場合について説明する。かかる場合としては、Eポジションが有効なものとして選択されている場合、およびオートクルーズがオフとなっている場合の双方が該当する。かかる場合には、アクセルペダルがオフとなっているときに制動を行うための条件が成立しているものと判断される。ステップS200において、制動を行うための条件が成立していないものと判断された場合には、CPUは以下何ら処理を行うことなく減速制御処理ルーチンを終了する。 【0157】制動を行うための条件が成立している場合には、CPUは、減速度制御制動が許可されている状態か否かを判定する(ステップS205)。先に減速度設定処理ルーチン(図17)において説明した通り、スイッチが故障している場合には、減速度制御制動を禁止するための禁止フラグがオンになっている(図17のステップS180)。このフラグがオンになっている場合には、減速度制御制動が許可されない状態と判定される。その他、オートクルーズがオフとなっており、かつシフトレバーがEポジションにない場合にも減速度制御制動が許可されない状態と判定される。 【0158】ステップS205において、減速度制御制動が許可されない状態であると判定された場合には、CPUは通常制動処理として、モータ20の目標トルクを所定の負の値Tm0に設定する(ステップS210)。所定値Tm0は、モータ20の定格の範囲内でいかなる値にも設定可能である。本実施例では、Dポジションにおいて、動力源ブレーキにより過不足ない制動力が得られる程度の値に設定してある。 【0159】一方、ステップS205において、減速度制御制動が許可される状態であると判定された場合には、CPUは減速度制御制動処理を実行する。具体的には、まず変速段の切り替え処理を行う(ステップS215)。 【0160】図23は、変速段切り替え処理のフローチャートである。変速段切り替え処理では、CPUはまず図11に示したマップを参照する(ステップS220)。次に、CPUは、設定された減速度に応じて該マップを参照し、設定された減速度を実現可能な変速段が2つ以上存在するか否かを判定する(ステップS226)。設定された減速度を実現する変速段が1つだけしか存在しない場合には、変速段の設定をマップから求められる変速段に決定する(ステップS228)。 【0161】設定された減速度を実現する変速段が2つあると判定された場合には、バッテリ50の残容量SOCを参照し、SOCが所定の値HL以上であるか否かを判定する(ステップS230)。先に図13で説明した通り、各変速段において、モータ20を回生運転することによって実現される減速度と、モータ20を力行運転することによって実現される減速度とがある。設定された減速度に対して2つの変速段が対応している場合、一方の変速段ではモータ20の回生運転により設定された減速度が実現され、他方の変速段ではモータ20の力行運転により設定された減速度が実現される。従って、設定された減速度に対して2つの変速段が対応する場合には、バッテリ50の残容量SOCに応じて、適した変速段を選択することができる。 【0162】残容量SOCが所定値H以上である場合には、バッテリ50の過充電を回避するため、電力を消費することが望ましい。従って、CPUはモータ20を力行運転して設定された減速度を実現する側の変速段、即ち2つの変速段のうち変速比が大きい側の変速段を選択する(ステップS232)。残容量SOCが所定値Hよりも小さい場合には、バッテリ50を充電することが望ましい。従って、CPUはモータ20を回生運転して設定された減速度を実現する側の変速段、即ち2つの変速段のうち変速比が小さい側の変速段を選択する(ステップS234)。もちろん、2つの変速段の選択が残容量SOCに応じて頻繁に切り替わるのを防止するため、ステップS230の判定には所定のヒステリシスを設けることが好ましい。 【0163】以上の処理によって、使用すべき変速段が設定されると、CPUは変速段の切り替えを行う(ステップS236)。変速段の切り替えは、変速機制御信号(図8参照)に所定の信号を出力し、図3で示した通り設定された変速段に応じて変速機100のクラッチ、ブレーキのオン・オフを制御することで実現される。 【0164】こうして変速段の切り替えが完了すると、CPUは減速制御処理ルーチンに戻り、モータ20が出力すべきトルクの目標値を演算する(ステップS250)。変速段に応じて、先に式(2)〜(6)で示した変速比k1〜k5を用いれば、設定された減速度、即ち車軸17に出力されるトルクに基づいて、エンジン10とモータ20の動力源から出力すべき総トルクを算出することができる。エンジン10から出力される制動力、いわゆるエンジンブレーキは、クランクシャフト12の回転数に応じてほぼ一義的に決まる。従って、動力源から出力する総トルクからエンジンブレーキによるトルクを減ずることによりモータ20で出力すべきトルクを求めることができる。 【0165】本実施例では、このように演算によりモータ20の目標トルクを求めるものとしているが、図11のマップと併せて、モータ20の目標トルクを与えるマップを用意するものとしても構わない。また、車両の減速度を加速度センサで検出し、設定された減速度が実現されるようにモータ20のトルクをフィードバック制御するものとしてもよい。なお、図15のフローチャートでは、図示の都合上、変速段の切り替え処理が終了してからモータトルクを演算するものとしているが、切り替え処理と並行して演算するものとしても構わないことは当然である。 【0166】以上の処理により、通常制動処理、Eポジション制動処理のそれぞれに応じてモータの目標トルクが設定された。CPUは、制動制御処理(ステップS250)として、モータ20の運転およびエンジン10の運転の制御を実行する。エンジン10の制御は、エンジンブレーキをかけるための制御として、CPUはエンジン10への燃料の噴射をアイドル運転相当とする。エンジン10に装備されているVVT機構の制御も同時に行うことも可能ではあるが、本実施例では動力源ブレーキの制動力はモータ20のトルクで制御可能であるため、VVT機構の制御は行っていない。 【0167】モータ20は、いわゆるPWM制御により運転される。CPUはステータ24のコイルに印可すべき電圧値を設定する。かかる電圧値は予め設定されたテーブルに基づいて、モータ20の回転数および目標トルクに応じて与えられる。モータ20が回生運転する場合には電圧値は負の値として設定され、力行運転する場合には電圧値は正の値として設定される。CPUは、かかる電圧がコイルに印可されるように駆動回路40の各トランジスタのオン・オフを制御する。PWM制御は周知の技術であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。 【0168】以上で説明した減速制御処理ルーチンを繰り返し実行することにより、本実施例のハイブリッド車両は、動力源ブレーキによる制動を行うことができる。もちろん、かかる制動に併せてホイールブレーキによる制動を行うことも可能であることはいうまでもない。 【0169】本実施例のハイブリッド車両による減速度の変化の様子を図24に示す。図24は、オートクルーズスイッチ、シフトポジション、Decelスイッチの操作によって目標減速度が変更する様子を示す説明図である。図示する通り、当初Eポジションが選択されていたものとする。また、オートクルーズスイッチはオフであったものとする。 【0170】かかる状態においては、先に図18〜図20で示した通り、運転者がDecelスイッチを操作することにより目標減速度を段階的に変更することができる。即ち、Decelスイッチについて1回目の操作st1が行われた時刻e1において目標減速度は基準値から一段階高い値DC1に変更される。2回目の操作st2が行われると時刻e2において目標減速度はさらに一段階高い値DC2に変更される。 【0171】ここで、時刻e3においてオートクルーズスイッチがオンになったものとする。シフトポジションはEポジションのままである。機能判定処理ルーチン(図16)で示した通り、オートクルーズスイッチがオンになると、Eポジションが選択されていても、その設定は解除され、目標減速度はオートクルーズの機能により設定される。この結果、図24中に示す通り、減速度は車間および車速に応じて定まる値DAに設定される。この状態では、Eポジションでの機能が全て禁止されているから、Decelスイッチについて3回目の操作st3が実行されても目標減速度の設定は変更されない。なお、ここではオートクルーズによる減速度を値DAの一定値として示したが、現実には減速度は、車速および車間に応じて時々刻々変動する。 【0172】次に、時刻e4においてシフトポジションが一旦Dポジションに戻された後、再びEポジションが選択されると、オートクルーズスイッチがオンになっていてもその機能が禁止され、Eポジションでの機能が有効なものとして選択される。Decelスイッチについての操作st1,st2による減速度の設定は解除されている。従って、時刻e4では、目標減速度は、Eポジションにおける基準の減速度となる。この状態で運転者がDecelスイッチについて5回目の操作st5を行うと、1回目の操作st1の場合と同様、目標減速度は基準の減速度よりも一段階高い値DC1に設定される。 【0173】なお、本実施例では、一旦Dポジションに戻した後、再びEポジションを選択することにより、Eポジションでの機能が有効になるものとしているが、Decelスイッチが操作されることによりEポジションでの機能が有効になるものとしてもよい。かかる場合には、オートクルーズ機能が有効になった後、Decelスイッチについての3回目の操作st3が行われた時点で目標減速度の設定が変更されることになる。 【0174】本実施例では、このようにEポジションとオートクルーズの2つのシステムのうち、運転者が最後に操作したシステムが有効なものとして選択される。このように車両の走行状態に関与する2つのシステムが存在する場合、運転者は最後に操作したシステムが有効に機能することを要求している可能性が高い。本実施例のハイブリッド車両では、最後に操作されたシステムを有効なものとして選択することにより、運転者にとってほとんど違和感のない走行を実現することができ、車両の操作性およびドライブフィーリングを向上することができる。 【0175】また、本実施例のハイブリッド車両では、Eポジションとオートクルーズの2つのシステムについて、一方を選択する際に他方をキャンセルする必要がない。従って、運転者の操作の負担少なく、快適な走行を実現することができる。 【0176】本実施例では、エンジン10とモータ20とを直結し、変速機100を介して車軸17と結合する構成からなるパラレルハイブリッド車両を示した。本発明は、他にも種々の構成からなるパラレルハイブリッド車両、即ちエンジンからの出力を車軸に直接伝達可能なハイブリッド車両に適用可能である。また、エンジンからの動力は発電にのみ使用され駆動軸には直接伝達されないシリーズハイブリッド車両に適用することも可能である。 【0177】図25は、かかるシリーズハイブリッド車両の構成を示す説明図である。図示する通り、このハイブリッド車両には動力源としてのモータ20Aがトルクコンバータ30Aおよび変速機100Aを介して車軸17Aに結合されている。エンジン10Aと発電機Gとが結合されている。エンジン10Aは車軸17Aと結合してはいない。モータ20Aは、駆動回路40Aを介してバッテリ50Aと接続されている。発電機Gは駆動回路41を介してバッテリ50Aと接続されている。駆動回路40A、41は本実施例と同様のトランジスタインバータである。これらの運転は、制御ユニット70Aにより制御される。 【0178】かかる構成を有するシリーズハイブリッド車両では、エンジン10Aから出力された動力は発電機Gにより電力に変換される。この電力はバッテリ50Aに蓄電されるとともに、モータ20Aの駆動に用いられる。車両は、モータ20Aの動力で走行することができる。また、モータ20Aから制動力として負のトルクを出力すれば、動力源ブレーキをかけることもできる。このハイブリッド車両も、変速機100Aを備えているから、モータ20Aのトルクと変速段とを組み合わせて制御することによって、本実施例のハイブリッド車両と同様、幅広い範囲で運転者が設定した制動力を実現することができる。 【0179】本実施例のハイブリッド車両では、車軸17に出力すべき総トルクからエンジブレーキによる制動トルクを引いてモータ20の目標トルクを設定した。これに対し、変形例のハイブリッド車両では、エンジンブレーキによる制動力が値0となるから、車軸17Aに出力すべき制動トルクをモータ20Aの目標トルクとすればよい。 【0180】また、本発明は、電動機のみを動力源とする、純粋な電気自動車にも適用可能である。かかる電気自動車の構成は、図25のシリーズハイブリッド車両からエンジン10A、発電機Gおよび駆動回路41を除去した構成に相当する。純粋な電気自動車であっても、車軸に結合されたモータ20Aのトルクと変速段とを制御することによって、シリーズハイブリッド車両および本実施例のハイブリッド車両と同様、幅広い範囲で運転者が設定した制動力を実現することができる。 【0181】上述の実施例では、段階的に変速比を変更可能な変速機を適用した場合を説明した。これに対し、連続的に変速比を変更可能な変速機を適用するものとしても構わない。 【0182】以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論である。本実施例で説明した種々の制御処理は、ハードウェアにより実現するものとしても構わない。また、本実施例で説明した種々の制御処理のうち、一部のみを実施するものとしても構わない。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年2月18日(1999.2.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100096817 【弁理士】 【氏名又は名称】五十嵐 孝雄 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−245016(P2000−245016A) |
| 【公開日】 |
平成12年9月8日(2000.9.8) |
| 【出願番号】 |
特願平11−39848 |
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