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【発明の名称】 電気車制御装置
【発明者】 【氏名】丸山 高央

【氏名】芦谷 正裕

【要約】 【課題】車両速度が零になるまで電気ブレーキのみを作用させて停止させる。

【解決手段】車両を駆動する誘導電動機1を電力変換装置2によりベクトル制御するようにした電気車制御装置において、定点通過信号を受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の停止位置に停止するまでの停止時間を求め、停止時間で停止位置に停止させるための減速度を演算し、さらに停止位置に停止させるための減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算する停止トルクパターン発生器6を備え、停止トルクパターンを電力変換装置2に指令するようにしたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両を駆動する誘導電動機を電力変換装置によりベクトル制御するようにした電気車制御装置において、定点通過信号を受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の停止位置に停止するまでの停止時間を求め、上記停止時間で上記停止位置に停止させるための減速度を演算し、さらに上記停止位置に停止させる減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算し、上記停止トルクパターンを上記電力変換装置に指令する停止トルクパターン発生器を備えたことを特徴とする電気車制御装置。
【請求項2】 車両を駆動する誘導電動機を電力変換装置によりベクトル制御するようにした電気車制御装置において、定点通過信号を受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の停止位置に停止するまでの停止時間を求めて上記停止時間経過後に車両停止信号を出力すると共に、上記停止時間で上記停止位置に停止させる減速度を演算し、さらに上記停止位置に停止させる減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算し、上記停止トルクパターンを上記電力変換装置に指令する停止トルクパターン発生器と、上記車両停止信号が入力されると指令されたブレーキシリンダ圧力信号に基づいてブレーキシリンダの圧力を増加させる空気ブレーキ制御手段と、上記ブレーキシリンダの圧力が所定の圧力に達すると上記電力変換装置による電気ブレーキを停止させる電気ブレーキ停止信号を出力する電気ブレーキ停止信号発生器とを備えたことを特徴とする電気車制御装置。
【請求項3】 車両を駆動する誘導電動機を電力変換装置によりベクトル制御するようにした電気車制御装置において、定点通過信号を受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の停止位置に停止するまでの停止時間を求めて上記停止時間経過後に車両停止信号を出力すると共に、上記停止時間で上記停止位置に停止させる減速度を演算し、さらに上記停止位置に停止させる減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算し、上記停止トルクパターンを上記電力変換装置に指令する停止トルクパターン発生器と、上記車両停止信号が入力されると指令されたブレーキシリンダ圧力信号に基づいてブレーキシリンダの圧力を増加させる空気ブレーキ制御手段と、上記車両停止信号が出力されてから所定の時間が経過すると上記電力変換装置による電気ブレーキを停止させる電気ブレーキ停止信号を出力する電気ブレーキ停止信号発生器とを備えたことを特徴とする電気車制御装置。
【請求項4】所定の停止位置に停止するまでの停止時間の演算、及び上記停止時間で上記停止位置に停止させるための減速度の演算は、減速度の変化率を時間の一次関数として設定して実行されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電気車制御装置。
【請求項5】 停止位置近傍の車両速度は減速度の変化率を時間の一次関数として演算することにより算出される速度を使用することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電気車制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、誘導電動機で駆動される車両を電気ブレーキで停止させる電気車制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に鉄道車両においては電気ブレーキと空気ブレーキとが併用される。そして、車両の速度が高い高速度域では電気ブレーキが作用し、低速度域になると空気ブレーキに切り替えられて停止する。しかし、電気ブレーキから空気ブレーキに切り替えられるときに両ブレーキ間の応答速度差により、滑らかな切り替えが難しく乗り心地に悪影響を及ぼすことがある。さらに、空気ブレーキが作用時に摩耗するブレーキシューの保守が面倒である。これらの問題を解決するために近年では、電気ブレーキだけで車両を停止させることが提案されている。例えば、図9は平成10年度電気学会産業応用部門全国大会講演予稿集の第257頁から第262頁「零速までの電気鉄道車両用電気ブレーキ試験台試験」に記載された従来の電気車制御装置の動作を示す説明図である。
【0003】図9において、車両駆動用の誘導電動機(図示せず)はベクトル制御されている。従って、誘導電動機のトルク分電流と加減速度とは比例関係にある。そこで、車両速度Vに示すように加減速度を一定にして車両の速度を低下させる時間0〜t1 間の誘導電動機の電流は、トルク分電流が一定となるようにトルク分電流指令値Iq1 *により制御される。車両速度が減速されて時間t1 で車両速度V1 に達すると、時間t1 〜t3 の間はジャーク(加減速度の変化率)が一定となるように停止位置(時間t3 )に向かってトルクを徐々に小さくしていくトルク絞り込み制御が行われる。そして、車両速度が零になるようなトルク分電流指令値Iq2 *により制御が行われる。又、車両速度を検出する速度センサは低速度域での分解能に問題があるので、図9に示すように車両速度が零近傍の速度V2 以下になる時間t2 以降では推定値が使用される。この場合、速度V1 からV2 までの減速度が維持されたと推定することにより車両速度の演算が行われる。以上のように、誘導電動機を制御することにより車両速度が零になるまで電気ブレーキのみで車両を停止させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の電気車制御装置は以上のように構成されているので、車両速度がV1に達するとジャークが一定になるようにトルク絞り込み制御が行われるため、車両速度がV1 に達した時点の減速度により停止までの移動距離が変化し、所定の停止位置に停止させることが困難であるという問題点があった。さらに、電気ブレーキで停止した後の空気ブレーキへの切替についてついては、具体案が示されていないという問題点があった。この発明は以上のような問題点を解消するためになされたもので、車両速度が零になるまで電気ブレーキのみを作用させて所定の停止位置に停止させることができる電気車制御装置を提供することを目的とするものである。さらに、停止後に電気ブレーキから空気ブレーキへ切り替えるようにした電気車制御装置を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明に係わる電気車制御装置は、車両を駆動する誘導電動機を電力変換装置によりベクトル制御するようにした電気車制御装置において、定点通過信号を受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の停止位置に停止するまでの停止時間を求め、求めた停止時間で停止位置に停止させるための減速度を演算し、さらに停止位置に停止させる減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算し、停止トルクパターンを電力変換装置に指令する停止トルクパターン発生器を備えたものである。また、定点通過信号を受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の停止位置に停止するまでの停止時間を求めて停止時間経過後に車両停止信号を出力すると共に、求めた停止時間で停止位置に停止させる減速度を演算し、さらに停止位置に停止させる減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算し、停止トルクパターンを電力変換装置に指令する停止トルクパターン発生器と、車両停止信号が入力されると指令されたブレーキシリンダ圧力信号に基づいてブレーキシリンダの圧力を増加させる空気ブレーキ制御手段と、ブレーキシリンダの圧力が所定の圧力に達すると電力変換装置による電気ブレーキを停止させる電気ブレーキ停止信号を出力する電気ブレーキ停止信号発生器とを備えたものである。
【0006】また、定点通過信号を受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の停止位置に停止するまでの停止時間を求めて停止時間経過後に車両停止信号を出力すると共に、求めた停止時間で停止位置に停止させる減速度を演算し、さらに停止位置に停止させる減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算し、停止トルクパターンを電力変換装置に指令する停止トルクパターン発生器と、車両停止信号が入力されると指令されたブレーキシリンダ圧力信号に基づいてブレーキシリンダの圧力を増加させる空気ブレーキ制御手段と、車両停止信号が出力されてから所定の時間が経過すると電力変換装置による電気ブレーキを停止させる電気ブレーキ停止信号を出力する電気ブレーキ停止信号発生器とを備えたものである。また、所定の停止位置に停止するまでの停止時間の演算、及び求めた停止時間で停止位置に停止させるための減速度の演算は、減速度の変化率を時間の一次関数として設定して実行されるものである。さらに、停止位置近傍の車両速度は減速度の変化率を時間の一次関数として演算することにより算出される速度を使用するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1は実施の形態1を示す構成図である。図1において、1は車両を駆動する誘導電動機、2は誘導電動機1を制御する電力変換装置で、誘導電動機1の2次磁束パターンΦ2 *、後述の車両速度V及びトルクパターンTqr*に基づいて誘導電動機1をベクトル制御する。3は誘導電動機1の回転数を検出する回転数検出器、4は速度演算器で、回転数検出器3により検出された誘導電動機1の回転数に基づいて車両速度Vを演算する。5は定点通過検知器で、車両が所定の定点を通過したときに定点通過信号Cpとして「1」を出力し、所定の定点を通過するまでは「0」を出力する。6は車両速度V、定点通過信号Cp及び後述のトルクパターンTqr*が入力される停止トルクパターン発生器で、車両を電気ブレーキのみで所定の停止位置に停止させる停止トルクパターンTqs*及び切替信号Ctを出力する。なお、切替信号Ctは定点通過信号Cpが「0」のとき「0」、「1」のとき「1」が出力される。7はパターン切替器で、切替信号Ctが「0」のときに運転士又は自動列車運転装置等のブレーキ系から指令される指令トルクパターンTq*をトルクパターンTqr*として電力変換装置2へ入力し、切替信号Ctが「1」のときに停止トルクパターンTqs*をトルクパターンTqr*として電力変換装置2へ入力する。
【0008】次に動作について説明する。図2は図1の動作を説明するタイムチャートである。図1及び図2において、車両が定点を通過するまでは定点通過信号Cpは図2(a)に示すように「0」である。そして、車両は定点通過までは図2(b)に示すようにトルク一定の指令トルクパターンTq*により制御が行われている。トルク一定制御により図2(c)に示すように車両が減速度一定の電気ブレーキで減速される。この状態で定点を通過するまでは、図2(d)に示すように切替信号Ctが「0」である。この場合、トルクパターンTqr*は図2(e)に示すようにブレーキ系から指令された減速度一定の指令トルクパターンTq*が選択されている。従って、電力変換装置2はブレーキ系から指令された指令トルクパターンTq*により誘導電動機1のベクトル制御をしている。その後、車両が定点を通過すると図2(a)に示すように定点通過信号Cpが「1」になるので、停止トルクパターン発生器6において演算された停止トルクパターンTqs*が出力される(図2(f)参照)と共に、図2(d)に示すように切替信号Ctの「1」が出力される。
【0009】切替信号Ctの「1」が出力されることにより、パターン切替器7が動作して図2(e)に示すように停止トルクパターンTqs*が選択される。これにより、停止トルクパターンTqs*がトルクパターンTqr*として電力変換装置2に指令される。ここで、停止トルクパターンTqs*の作成について説明する。回転数検出器3で検出された誘導電動機1の回転数、誘導電動機1と車輪との間の歯車比G及び車輪の半径とにより速度演算器4において車両の速度vを演算する。次に停止トルクパターン発生器6で車両の速度vに基づいて所定のサンプル時間Ts間の減速度β(n)を式(1)により演算する。さらに、車両が定点を通過するまでにトルクパターンTqr*、誘導電動機1が駆動する車輪が負担する車両重量M、車輪の半径r及び歯車比Gとにより車両の走行抵抗Trを式(2)により演算する。nは整数である。
【0010】
【数1】

【0011】車両が定点を通過して定点通過信号Cpが「1」になると、その時点における式(1)(2)の減速度の初期値をβ0 及び走行抵抗の初期値をTr0 とする。又、定点通過信号Cpが「1」になったときの車両速度の初期値をv0 とする。さらに、定点通過信号Cpを受信した定点から所定の停止位置までの残り距離の初期値をx0 とする。なお、残り距離x0 は定点通過信号Cpと共に受信するか、または定点通過信号Cpと対応して車上に記憶されている。これらの各初期値を設定した上でジャーク(減速度の変化率)j(t)を式(3)に示すように、定点通過後の経過時間tの関数として与える(図2(g)参照)。そして、式(3)を演算することにより減速度β(t)、車両の速度v(t)及び車両の停止位置までの残り距離x(t)は、式(4)から式(6)のように表すことができる(図2(h)(i)(j)参照)。
j(t)=k1 +2・k2 ・t ・・・(3)
β(t)=β0 +k1 ・t+k2 ・t2 ・・・(4)
v(t)=v0 +β0 ・t+k1 ・t2 /2+k2 ・t3 /3・・・(5)
x(t)=x0 +v0 ・t+β0 ・t2 /2 +k1 ・t3 /6+k2 ・t4 /12 ・・・(6)
車両が定点通過信号Cpを受信してから残り距離x0 を進んで所定の停止位置で停止する条件として、残り距離x0 を進んだときの速度及び減速度を零としてk1 、k2 を求めると式(7)(8)となる。さらに、残り距離x0 を進むまでの経過時間t0 は式(9)により求められる。なお、式(9)は初期条件によっては平方根内が負になる。この場合は、定点通過信号Cpを受信したときから停止位置までの経過時間t0 を式(10)により求める。そして、経過時間t0 を用いてk1 ,k2 を求める。この場合、通過信号Cpを受信した地点から停止位置までの移動距離Xは式(11)で表され、減速度の初期値β0 に依存して変化する。
【0012】
【数2】

【0013】以上のように、式(7)(8)のk1 、k2 を用いて式(4)から車両を残り距離x0 の所定の停止位置に停止させるための減速度β(t)を演算する。さらに、減速度β(t)を実現させるために式(2)と同様の関係式で走行抵抗Tr0 として、必要なトルクを式(12)により演算する。そして、式(12)で演算されたトルクTq(t)が停止トルクパターン発生器6から図2(f)に示すように停止トルクパターンTqs*として出力される。
【0014】
【数3】

【0015】ここで、定点通過信号Cpが「1」で切替信号Ctの「1」が出力されることにより、パターン切替器7が停止トルクパターンTqs*を選択して、電力変換装置2へ停止トルクパターンTqs*が指令される。定点通過信号Cpを受信した以後は、電力変換装置2がトルクパターンTqs*により図2(c)に示すように誘導電動機1のベクトル制御を行い、所定の停止位置で車両を停止させる。なお、定点を通過して時間t0 が経過後にトルクTq(t0 )を出力して空気ブレーキに切り替える。以上のように、停止トルクパターン発生器6において定点通過信号Cpを受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の停止位置に停止するまでの停止時間を求め、求められた停止時間で停止位置に停止させるための減速度を演算し、さらに停止位置に停止させるための減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算する。そして、演算された停止トルクパターンを電力変換装置2に指令して誘導電動機1をベクトル制御することにより、車両速度が零になるまで電気ブレーキのみを作用させて所定の停止位置に停止させることができる。
【0016】実施の形態2.図3は実施の形態2を示す構成図である。図3において、1〜3,5,7は実施の形態1のものと同様のものである。8は後述の速度演算器9からの車両速度v、定点通過信号Cp及びトルクパターンTqr*が入力される停止トルクパターン発生器で、車両を電気ブレーキのみで所定の停止位置に停止させる停止トルクパターンTqr*と、切替信号Ctと、停止位置近傍の低速度域における車両速度v(t)を演算して出力する。9は速度演算器で、回転数検出器3により検出された誘導電動機1の回転数に基づいて車両速度vを演算する。さらに、速度演算器9は停止位置近傍の低速度域では停止トルクパターン発生器8から入力された車両速度v(t)をv=v(t)として出力する。
【0017】次に動作について説明する。図4は図3の動作を説明するタイムチャートである。図3及び図4において、図4(c)に示すように車両が電気ブレーキで減速されて速度v1 及び時間t1 で定点を通過するまでは図4(a)に示すように切替信号Ctが「0」である。この場合、実施の形態1と同様にトルクパターンTqr*は図4(e)に示すようにブレーキ系から指令された指令トルクパターンTqr*が選択されている。そして、車両が時間t1 で定点を通過して定点通過信号Cpが「1」になると、図4(e)に示すように停止トルクパターンTqs*が選択される。なお、停止トルクパターンTqs*は実施の形態1と同様に式(10)で演算されたTq(t)で与えられる。この時点では車両速度vは回転数検知器3により検出された誘導電動機1の回転数に基づいて演算された値が使用されている。車両が停止トルクパターンTqs*により減速されて時間t2において停止位置近傍の低速度域である車両速度がv2 に達すると、速度演算器9は停止トルクパターン発生器8で式(5)及びk1 ,k2 により演算した車両速度v(t)を車両速度vとして出力する。
【0018】以上のように、停止トルクパターン発生器8において定点通過信号Cpの「1」を受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の位置に停止するまでの時間を求め、求められた停止時間が停止位置に停止させるための減速度を演算する。そして、停止位置に停止させるための減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算して電力変換装置2に指令することにより、誘導電動機1をベクトル制御して車両速度が零になるまで電気ブレーキのみを作用させて所定の位置に停止させることができる。さらに、停止位置近傍の低速度域では式(5)により算出された車両速度v(t)を車両速度vとして使用することにより、回転数検出器3の分解能に影響されることなく車両速度の検出が困難な低速度域においても、電気ブレーキのみを作用させて所定の停止位置に精度よく停止させることができる。
【0019】実施の形態3.図5は実施の形態3を示す構成図である。図5において、1,3〜5は実施の形態1のものと同様のものである。10は誘導電動機1を制御する電力変換装置で、誘導電動機1の2次磁束パターンΦ2 *、後述の車両速度及びトルクパターンTqr*に基づいて誘導電動機1をベクトル制御する。さらに、電力変換装置10は後述の電気ブレーキ停止信号CEBにより電気ブレーキ制御を停止する。11は車両速度V、定点通過信号Cp及び後述のトルクパターンTqr*が入力される停止トルクパターン発生器で、車両を電気ブレーキのみで所定の停止位置に停止させる停止トルクパターンTqs*及び切替信号Ctを出力する。ここで、停止トルクパターンTqs*は実施の形態1で示した式(12)により停止トルクパターン発生器11において演算される。また、切替信号Ctは定点通過信号Cpが「0」のとき「0」、「1」のとき「1」が出力される。なお、定点通過信号Cpは車両が定点を通過したとき「1」が出力される。
【0020】さらに、停止トルクパターン発生器11は定点通過信号Cpが「1」になった時点から時間t0 が経過すると、車両が停止したものとして車両停止信号CSpの「1」を出力する。12はパターン切替器で、切替信号Ctが「0」のときに運転士又は自動列車運転装置等のブレーキ系から指令される指令トルクパターンTq*をトルクパターンTqr*として電力変換装置10へ入力し、切替信号Ctが「1」のときに停止トルクパターンTqs*をトルクパターンTqr*として電力変換装置10へ入力する。13は空気ブレーキ系から指令されたブレーキシリンダ圧力指令信号BC*と車両停止信号CSpとが入力される空気ブレーキ制御手段で、車両停止信号CSpの「1」が入力されると同時に後述のブレーキシリンダ14の空気圧BCを目標のブレーキシリンダ圧力指令信号BC*に向けて増加させる。14はブレーキシリンダで、空気圧BCにより後述のブレーキシューを押圧する。15はブレーキシューで、ブレーキシリンダ14の押圧力により車輪(図示せず〕に押圧されて車両に空気ブレーキが作用する。16はブレーキシリンダ圧力指令信号BC*と空気圧BCとが入力される電気ブレーキ停止信号発生器で、ブレーキシリンダ圧力指令信号BC*に対して空気圧BCが所定の値に達すると電気ブレーキ停止信号CEBを出力する。
【0021】次に動作について説明する。図6は動作を説明するタイムチャートである。図5及び図6において、車両が定点を通過するまでは定点通過信号Cpは図6(a)に示すように「0」である。そして、車両は定点通過までは図6(b)に示すようにトルク一定の指令トルクパターンTq*によりベクトル制御が行われている。トルク一定制御により図6(c)に示すように車両が減速度一定の電気ブレーキで減速される。この状態で定点を通過するまでは図6(d)に示すように切替信号Ctが「0」である。この場合、トルクパターンTqr*は図6(e)に示すようにブレーキ系から指令された減速度一定の指令トルクパターンTq*が選択されている。従って、電力変換装置10はブレーキ系から指令された指令トルクパターンTq*により誘導電動機1のベクトル制御をしている。その後、車両が定点を通過すると図6(a)に示すように定点通過信号Cpが「1」になるので、停止トルクパターン発生器11において演算された停止トルクパターンTqs*が出力される(図6(f)参照)と共に、図6(d)に示すように切替信号Ctの「1」が出力される。切替信号Ctの「1」が出力されることにより、パターン切替器12が動作して図6(e)に示すように停止トルクパターンTqs*が選択される。これにより、停止トルクパターンTqs*がトルクパターンTqr*として電力変換装置10に指令される。
【0022】定点通過信号Cpを受信した後は、電力変換装置10がトルクパターンTqs*により図6(c)に示すように誘導電動機1のベクトル制御を行う。そして、定点通過信号Cpを受信してから時間t0 後に所定の停止位置に車両が停止したものとして、停止トルクパターン発生器11から時間t0 におけるトルクパターンTq(t0 )が出力されると共に、図6(g)に示されるように車両停止信号CSpの「1」が出力される。空気ブレーキ制御手段13に車両停止信号CSpが入力されると、ブレーキシリンダ圧力指令信号BC*によりブレーキシリンダ14の空気圧BCが上げられる。ブレーキシリンダ14の空気圧BCが上昇されることによりブレーキシュー15が車輪(図示せず)に押圧されて空気ブレーキが作用する。そして、ブレーキシリンダ14の空気圧BCが図6(h)に示すように所定の空気圧RBCに達すると、図6(i)に示すように電気ブレーキ停止信号発生器6から電気ブレーキ停止信号CEBの「1」が出力される。なお、電気ブレーキ停止信号CEBは空気ブレーキのみで車両の停止状態が保持できる空気圧BCに達したときに出力されるように設定されている。電気ブレーキ停止信号CEBの「1」が電力変換装置10へ入力されると、電力変換装置10は電気ブレーキ制御を停止させる。
【0023】以上のように、電力変換装置10により電気ブレーキで車両を停止させ、車両停止信号CSpが入力されるとブレーキシリンダ圧力指令信号BC*に基づいてブレーキシリンダ14の圧力を増加させ、ブレーキシリンダ14の圧力が所定の圧力に達すると電気ブレーキ停止信号発生器16から電気ブレーキ停止信号CEBを出力して、車両の停止後に電気ブレーキから空気ブレーキへ切り替えるので、乗り心地に支障を与えるのを防止することができる。上記実施の形態3において電気ブレーキ停止信号発生器16でブレーキシリンダ圧力指令信号BC*と空気圧BCとを比較するものについて説明したが、電気ブレーキ停止信号発生器18に設定したしきい値と空気圧BCとを比較するようにしても同様の効果を期待することができる。
【0024】実施の形態4.図7は実施の形態4を示す構成図である。図7において、1,3〜5は実施の形態1のものと同様のものであり、10〜15は実施の形態3のものと同様のものである。17は車両停止信号CSpが入力される電気ブレーキ停止信号発生器で、車両停止信号CSpの「1」が出力されてからの経過時間を計測し、所定の時間t1 に達すると電気ブレーキ停止信号CEBの「1」を出力する。そして、電気ブレーキ停止信号CEBは電力変換装置10へ入力される。
【0025】次に動作について説明する。図8は動作を説明するタイムチャートである。図7及び図8において、車両が定点を通過するまでは定点通過信号Cpは図8(a)に示すように「0」である。そして、車両は定点通過までは図8(b)に示すようにトルク一定の指令トルクパターンTq*によりベクトル制御が行われている。トルク一定制御により図8(c)に示すように車両が減速度一定の電気ブレーキで減速される。この状態で定点を通過するまでは図8(d)に示すように切替信号Ctが「0」である。この場合、トルクパターンTqr*は図8(e)に示すようにブレーキ系から指令された減速度一定の指令トルクパターンTq*が選択されている。従って、電力変換装置10はブレーキ系から指令された指令トルクパターンTq*により誘導電動機1のベクトル制御をしている。その後、車両が定点を通過すると図8(a)に示すように定点通過信号Cpが「1」になるので、停止トルクパターン発生器11において演算された停止トルクパターンTqs*が出力される(図8(f)参照)と共に、図8(d)に示すように切替信号Ctの「1」が出力される。切替信号Ctの「1」が出力されることにより、パターン切替器12が動作して図8(e)に示すように停止トルクパターンTqs*が選択される。これにより、停止トルクパターンTqs*がトルクパターンTqr*として電力変換装置10に指令される。
【0026】定点通過信号Cpの「1」を受信した後は、電力変換装置10がトルクパターンTqs*により図8(c)に示すように誘導電動機1のベクトル制御を行う。そして、定点通過信号Cpを受信してから時間t0 後に所定の停止位置に車両が停止したものとして、停止トルクパターン発生器11から時間t0 におけるトルクパターンTq(t0 )が出力されると共に、図8(g)に示されるように車両停止信号CSpの「1」が出力される。空気ブレーキ制御手段13に車両停止信号CSpの「1」が入力されると、ブレーキシリンダ圧力指令信号BC*によりブレーキシリンダ14の空気圧BCが上げられる。ブレーキシリンダ14の空気圧BCが上昇されることによりブレーキシュー15が車輪(図示せず)に押圧されて空気ブレーキが作用する。
【0027】そして、車両停止信号CSpの「1」が出力されてからの経過時間を電気ブレーキ停止信号発生器17で計測し、所定の時間t1 に達すると電気ブレーキ停止信号CEBの「1」を出力する。ブレーキ停止信号CEBの「1」が電力変換装置10へ入力されると、電力変換装置10は電気ブレーキ制御を停止させる。このとき、ブレーキシリンダ圧力指令信号BC*により立ち上げられたブレーキシリンダ14の空気圧BCは、空気ブレーキのみで車両の停止状態が保持できる空気圧BCに達するように設定されている。以上のように、車両が停止して車両停止信号CSpが出力されるとブレーキシリンダ圧力指令信号BC*に基づいてブレーキシリンダ14の圧力を増加させると共に、車両停止信号CSpが出力されてから所定の時間t1 が経過するとブレーキ停止信号CEBにより電力変換装置10による電気ブレーキを停止させるので、乗り心地に支障を与えるのを防止することができる。
【0028】上記実施の形態1から実施の形態4において、減速度β(n)は式(1)により演算するものについて説明したが、加速度計等で直接検出するようにしても同様の効果を期待することができる。また、走行抵抗Trを式(2)により演算するものについて説明したが、車両の線路上の位置と対応した走行抵抗のデータを、予め車上に記憶しておくようにしても同様の効果を期待することができる。さらに、停止位置近傍の低速度域では式(5)により算出された車両速度v(t)を車両速度vとして使用することにより、回転数検出器3の分解能に影響されることなく車両速度の検出が困難な低速度域においても、電気ブレーキのみを作用させて所定の停止位置に精度よく停止させることができる。
【0029】
【発明の効果】この発明によれば、停止トルクパターン発生器において定点通過信号を受信した時点の減速度、走行抵抗及び車両速度を演算して所定の停止位置に停止するまでの停止時間を求め、求められた停止時間で停止位置に停止させるための減速度を演算し、さらに停止位置に停止させるための減速度を実現させるための停止トルクパターンを演算し、演算された停止トルクパターンを電力変換装置に指令して誘導電動機をベクトル制御することにより、車両速度が零になるまで電気ブレーキのみを作用させて所定の停止位置に停止させることができる。また、電力変換装置により電気ブレーキで車両を停止させ、車両停止信号が入力されるとブレーキシリンダ圧力指令信号に基づいてブレーキシリンダの圧力を増加させ、ブレーキシリンダの圧力が所定の圧力に達すると電気ブレーキ停止信号発生器から電気ブレーキ停止信号を出力して、車両の停止後に電気ブレーキから空気ブレーキへ切り替えるので、乗り心地に支障を与えるのを防止することができる。
【0030】また、車両が停止して車両停止信号が出力されるとブレーキシリンダ圧力指令信号に基づいてブレーキシリンダの圧力を増加させると共に、車両停止信号が出力されてから所定の時間 が経過するとブレーキ停止信号により電力変換装置による電気ブレーキを停止させるので、乗り心地に支障を与えるのを防止することができる。また、減速度の変化率を時間の一次関数として設定して、所定の停止位置に停止するまでの停止時間の演算、及び演算した停止時間で停止位置に停止させるための減速度の演算を行うことにより、停止トルクパターンを容易に算出することができる。さらに、停止位置近傍の車両速度を減速度の変化率を時間の一次関数として算出することにより、回転数検出器の分解能に影響されることなく電気ブレーキのみを作用させて所定の停止位置に精度よく停止させることができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成11年2月17日(1999.2.17)
【代理人】 【識別番号】100073759
【弁理士】
【氏名又は名称】大岩 増雄
【公開番号】 特開2000−245004(P2000−245004A)
【公開日】 平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願番号】 特願平11−38246