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【発明の名称】 高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式
【発明者】 【氏名】藤本 浩之

【氏名】上條 弘貴

【要約】 【課題】地上側のレールに相当する部分を強磁性体だけで構成できるような高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式を提供する。

【解決手段】高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、磁界発生源2とこの磁界発生源2の磁極方向が垂直方向に作用する高温超電導体からなる遮蔽体1とを備える移動体4と、強磁性体から構成される地上側レール3とを備え、磁界発生源2の幅は地上側レール3の幅よりは長くとり、地上側レール3と磁界発生源2が十字となるような配置にするとともに、前記遮蔽体1の幅は磁界発生源2の幅よりは小さく、長手方向には磁界発生源2に対して長くするように配置する。よって、浮上力を増加するとともに、無制御での浮上力の安定領域を大きく確保することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、(a)磁界発生源と該磁界発生源の磁極方向が垂直方向に作用する高温超電導体からなる遮蔽体とを備える移動体と、(b)強磁性体から構成される地上側レールとを備え、(c)前記磁界発生源の幅は前記地上側レールの幅よりは長くとり、前記地上側レールと前記磁界発生源が十字となるような配置にするとともに、前記遮蔽体の幅は前記磁界発生源の幅よりは小さく、長手方向には前記磁界発生源に対して長くするように配置することを特徴とする高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式。
【請求項2】 請求項1記載の高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、前記磁界発生源は永久磁石であることを特徴とする高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式。
【請求項3】 請求項1記載の高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、前記磁界発生源の上方に前記高温超電導体を配置する第1の組み立て体と、前記磁界発生源の側方に前記高温超電導体を配置し、該高温超電導体を前記地上側レールを挟むように配置する一対の第2の組み立て体とを具備することを特徴とする高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式。
【請求項4】 高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、(a)磁界発生源と該磁界発生源の磁極方向が垂直方向に作用する高温超電導体からなる遮蔽体とを備える移動体と、(b)底面に導電体が付設される強磁性体から構成される地上側レールと、(c)前記移動体に搭載され、鉄芯に多相励磁されるコイルが装着される推進駆動装置とを備え、(d)前記磁界発生源の幅は前記地上側レールの幅よりは長くとり、前記地上側レールと前記磁界発生源が十字となるような配置にするとともに、前記遮蔽体の幅は前記磁界発生源の幅よりは小さく、長手方向には前記磁界発生源に対して長くするように配置することを特徴とする高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式。
【請求項5】 請求項4記載の高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、前記磁界発生源の上方に前記高温超電導体を配置する第1の組み立て体と、前記磁界発生源の側方に前記高温超電導体を配置し、該高温超電導体を前記地上側レールを挟むように配置される一対の第2の組み立て体とを具備することを特徴とする高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、以下に開示されるものがあった。
【0003】(1)大崎博之:「高温超電導バルク材の磁気浮上システムへの適用性」、平成8年電気学会全国大会、S.20−5、1996.3(2)D.I.Jones,A.W.Pattullo,R.J.A.Paul:Assessment of Eddy−Current Effectsin the Mixed−mu Levitation System:10th Int.Conf.On Magnetically Levitated Systems(Maglev)、p.361−369、1988.7(3)筒井幸雄、樋口俊郎:「高温超電導体と軟磁性体を用いた磁気浮上」、低温工学Vol.30、No.5、p.231−236、1995.5上記文献にも示されるように、鉄道をはじめとした輸送、搬送システムにおいて、磁気浮上技術を適用することにより騒音、摩擦の少ない非接触駆動システムの実現が期待されており、各種方式の研究が進められている。
【0004】特に、高温超電導体の発見以来、反磁性効果やピン止め効果を利用した各種の超電導磁気浮上方式が提案され、小型モデルによる実験や数値解析が行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これらの超電導磁気浮上方式を鉄道に適用する場合には、輸送距離が長くなるため、建設コストやメンテナンスの点から地上側設備をできるだけ簡素化することが必要とされる。
【0006】本発明は、このような状況に鑑みて、地上側のレールに相当する部分を強磁性体で構成できるような高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、〔1〕高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、磁界発生源(2)と、この磁界発生源(2)の磁極方向が垂直方向に作用する高温超電導体からなる遮蔽体(1)とを備える移動体(4)と、強磁性体から構成される地上側レール(3)とを備え、前記磁界発生源(2)の幅は前記地上側レールの幅よりは長くとり、前記地上側レール(3)と前記磁界発生源(2)が十字となるような配置にするとともに、前記遮蔽体(1)の幅は前記磁界発生源(2)の幅よりは小さく、長手方向には前記磁界発生源(2)に対して長くするように配置するようにしたものである。
【0008】〔2〕上記〔1〕記載の高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、前記磁界発生源(2)は永久磁石である。
【0009】〔3〕上記〔1〕記載の高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、前記磁界発生源の上方に前記高温超電導体を配置する第1の組み立て体(11)と、前記磁界発生源の側方に前記高温超電導体を配置し、この高温超電導体を前記地上側レールを挟むように配置する一対の第2の組み立て体(21)とを具備するようにしたものである。
【0010】〔4〕高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、磁界発生源とこの磁界発生源の磁極方向が垂直方向に作用する高温超電導体からなる遮蔽体とを備える移動体と、底面に導電体が付設される強磁性体から構成される地上側レールと、前記移動体に搭載され、鉄芯に多相励磁されるコイルが装着される推進駆動装置(50)とを備え、前記磁界発生源の幅は前記地上側レールの幅よりは長くとり、前記地上側レールと前記磁界発生源が十字となるような配置にするとともに、前記遮蔽体の幅は前記磁界発生源の幅よりは小さく、長手方向には前記磁界発生源に対して長くするように配置するようにしたものである。
【0011】〔5〕上記〔4〕記載の高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式において、前記磁界発生源の上方に前記高温超電導体を配置する第1の組み立て体(41)と、前記磁界発生源の側方に前記高温超電導体を配置し、この高温超電導体を前記地上側レールを挟むように配置する一対の第2の組み立て体(42)とを具備するようにしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】図1は本発明の原理を示す高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式の模式図である。
【0014】この図において、1は高温超電導体、2はその高温超電導体の下部に固定される磁界発生源(例えば、永久磁石)、3はその高温超電導体の上方に固定される強磁性体からなる地上側レール、4は高温超電導体1と磁界発生源(例えば、永久磁石)が固定される移動体である。なお、図1において、矢印は磁界発生源(例えば、永久磁石)の磁極の方向を示している。
【0015】ここで、磁界発生源2の幅は前記地上側レールである強磁性体3の幅よりは長くとり、前記地上側レールである強磁性体3と磁界発生源2が十字となるような配置にするとともに、前記遮蔽体である高温超電導体1の幅は前記磁界発生源2の幅よりは小さく、長手方向には磁界発生源2に対して長くするように配置する。
【0016】このように、永久磁石2と強磁性体3に高温超電導体1を組み合わせることにより、高温超電導体3の磁気遮蔽効果を用いて磁束分布を整形することで、無制御の吸引浮上を実現する。つまり、磁束分布整形型の超電導磁気浮上方式について、小型モデルを用いた浮上力特性の基礎試験を行った。
【0017】磁束分布整形型の磁気浮上方式でも、磁界発生源、高温超電導体、強磁性体の種類、配置、構成によりいくつかの方法が考えられている。
【0018】本発明では、図1に示すように、強磁性体3のレールを地上側に置き、磁界発生源2と高温超電導体1から構成される移動体4との間の吸引力により浮上させる方式とした。磁界発生源2としては、永久磁石を使用し、高温超電導体1に対して垂直に磁束が印加するような磁極配置とした。高温超電導体1は、ゼロ磁界中で液体窒素により冷却(ゼロフィールドクール)された状態で、磁界発生源2から磁界を印加することにより、磁気遮蔽効果を持つようにした。
【0019】この構成により、磁界発生源2からの磁束は、高温超電導体1の磁気遮蔽効果により整形され、一部が高温超電導体1を回り込み強磁性体3との間で吸引力を発生する。この効果は、高温超電導体1が強磁性体3から離れているときは、近づくにつれて吸引力は増加するが、さらに高温超電導体1が強磁性体3に近づくと、整形された磁束の回り込みが不十分になるため吸引力が減少し、浮上力に安定領域ができるため、無制御による安定浮上が実現できる。
【0020】また、できるだけ浮上力を大きくとりつつ、浮上力の安定領域を確保するため、図1に示すように、永久磁石2の幅は強磁性体3より長くとり強磁性体3と永久磁石2が十字となるような配置にするとともに、高温超電導体1は、その幅を永久磁石2の幅より小さく、長手方向には永久磁石2に比べて長くするように配置した。
【0021】以下、上記した磁束分布整形型の超電導磁気浮上方式について、小型モデルを用いた浮上力特性の基礎試験を行ったので説明する。
【0022】試験は、ホット・フォージング法Bi系および溶融法Y系高温超電導体、永久磁石、強磁性体を使用し、小型モデルによる浮上力特性の基礎試験、磁気遮蔽効果の評価試験を行った。試験に使用した高温超伝導体、永久磁石、強磁性体や試験装置、方法は、以下の通りである。
【0023】磁束分布を整形するための遮蔽体である高温超電導体には、ホット・フォージング法Bi(2223)系および溶融法Y(123)系超電導体の2種を使用した。
【0024】ホット・フォージング法Bi系超電導体は、約100mm×約100mm角、厚さ1mmの均質な超電導体から、31mm×31mm角、63mm×31mm角に加工したものを、単体や2枚、3枚重ねにして使用した。
【0025】溶融法Y系超電導体は、クラックや粒界のない均質な超電導体を用意する必要から、46mmφ、厚さ15mmの均質なバルク体から30mm×30mm角、厚さ2mmのタイル状に加工したものを、単体やれんが積みに2層、3層重ねにして使用した。
【0026】磁界発生源には、永久磁石、コイル、電磁石の使用が考えられる。今回の試験では、厚さ方向に着磁されたフェライト系の永久磁石を使用した。永久磁石の寸法は、50mm×20mm×10mmおよび50mm×10mm×6mmで、液体窒素での初期冷却後の表面での最大磁界の大きさは、82.5mTおよび54.7mTである。
【0027】地上側のレールに相当する強磁性体には、一般構造用圧延鋼材SS41を使用した。強磁性体の寸法による浮上力特性への影響を把握するため、断面寸法の異なる4mm×80mm×2mm、4mm×80mm×4mm、8mm×80mm×4mmなど数種類の強磁性体を用意した。なお、強磁性体の長さは、すべて80mmとした。
【0028】図2は本発明に係る試験装置の概略図であり、図2(a)はその試験装置の模式図、図2(b)はその試験装置の浮上機構の配置図である。
【0029】試験では、永久磁石、高温超電導体、強磁性体の配置は実際の浮上機構の配置(図1参照)の場合とは逆の構成とし、永久磁石と高温超電導体を入れた移動体が上下する構造とした。なお、軸方向は、図2に示すように強磁性体の長手方向をX軸、幅方向をY軸、上下方向をZ軸とした。なお、図2において、矢印は永久磁石の磁極の方向を示している。
【0030】浮上力の測定には、電子天秤101を使用し、ギャップの測定には、材料試験システムを使用した。
【0031】浮上力特性試験は、以下の手順で行った。
【0032】(1)測定条件にしたがって、移動体106に永久磁石105と高温超電導体104を所定の位置にセットし、材料試験システムに取り付け、強磁性体103を電子天秤101上にセットする。
【0033】(2)移動体106を強磁性体103に近づけていき、接触(電子天秤の値が急激に増加)する直前の位置を、ギャップGは0とする。
【0034】(3)移動体106を強磁性体103から離して行き、電子天秤101の指示値に変化がなくなるまで充分に(100mm以上)離し、その時点における電子天秤101の値を0とする。
【0035】(4)高温超電導体104を冷却しない状態で、移動体106と強磁性体103間のギャップGと浮上力を測定しながら、移動体106と強磁性体103間のギャップGがなくなるまで近づけた後、同様に移動体106と強磁性体103間のギャップGと浮上力を測定しながら元の位置まで離して行く。
【0036】(5)永久磁石105を一旦外し、高温超電導体104を液体窒素によりゼロフィールドクールした後、永久磁石105を高温超電導体104の上部に再度セットする。
【0037】(6)高温超電導体104を冷却したままの状態で、上記(4)と同様に移動体106と強磁性体103間のギャップGと浮上力を測定し、移動体106と強磁性体103間のギャップGがなくなるまで近づけた後、同様に移動体106と強磁性体103間のギャップGと浮上力を測定しながら元の位置まで離して行く。
【0038】なお、測定は必要に応じて、高温超電導体104を冷却したままの状態で測定を繰り返し行い、再現性、クリープの影響などについても調べた。
【0039】高温超電導体104の磁気遮蔽効果により、永久磁石105が発生する磁束分布を整形し、無制御での吸引浮上を実現しようとしているため、高温超電導体104による遮蔽効果が浮上力特性を左右することになる。そこで、試験に使用したホット・フォージング法Bi系および溶融法Y系超電導体は、磁気遮蔽評価試験によりクラックや粒界のない均質な高温超電導体104であること確認して使用した。また、浮上力特性試験のときと同様に、永久磁石105と高温超電導体104で構成した移動体106について、その表面の磁界分布の測定も行った。
【0040】高温超電導体104にクラックや粒界がないことを確認するための磁気遮蔽評価試験は、冷却した高温超電導体104にソレノイドコイルにより平行磁界を印加し、高温超電導体104表面の磁界分布をホール素子により測定した。
【0041】また、浮上力特性試験を模擬した測定として、ゼロフィールクールされた高温超電導体104を永久磁石105の上部に置き、高温超電導体104表面の磁界分布をホール素子により測定した。
【0042】次に、試験結果について説明する。
【0043】浮上力特性試験に使用したホット・フォージング法Bi系および溶融法Y系超電導体は、磁気遮蔽評価試験により、30〜50mT程度の磁界を印加した状態で、高温超電導体表面の磁界分布に局所的な乱れがなく、クラックや粒界のない均質な高温超電導体であることを確認した。
【0044】高温超電導体と永久磁石を浮上力特性試験と同様の配置にした場合の磁気遮蔽評価試験の結果を示す。永久磁石はフェライト系(Xp=20mm、Yp=50mm、Zp=10mm)、高温超電導体はホット・フォージング法Bi系超電導体(Xs=63mm、Ys=31mm、Zs=1mm)を2枚重ね、永久磁石−超電導体間の距離を10mmとした場合について、超電導体表面から2mmの位置の磁界分布を図3に示す。図3(a)は、冷却前で高温超電導体が常電導状態にあり遮蔽効果がない場合で、永久磁石の発生磁界を示すものである。図3(b)は、液体窒素によりゼロフィールドクールされ、超電導状態にある高温超電導体に永久磁石をセットし、遮蔽効果がある場合である。また、図4には、永久磁石−高温超電導体間の距離を4mmとして、高温超電導体への印加磁界が大きくなった場合を示す図である。
【0045】図3(a)と図3(b)から、冷却された高温超電導体の遮蔽効果により、永久磁石から発生する磁束が遮蔽されて、高温超電導体のある部分では磁界が小さくなり、高温超電導体からはずれた両側に磁界の大きな部分が分かれていることが分かる。しかし、遮蔽効果は、高温超電導体の材質や印加される磁界の大きさに影響されるため、図4に示すように、永久磁石−高温超電導体間の距離を小さくして印加される磁界を大きくすると、高温超電導体による遮蔽効果が充分でなくなり、高温超電導体のある部分の磁界も大きく、永久磁石のみの場合の磁界分布に近づいている。
【0046】また、高温超電導体として臨界電流密度が大きく比較的高磁界まで磁気遮蔽効果が維持できる溶融法Y系超電導体を用いた場合にも同様の測定を行った結果、ホット・フォージング法Bi系超電導体を用いた場合と比べて、高温超電導体のある部分とない部分の磁界の強弱がはっきり現れることや、永久磁石−超電導体間の距離を小さくして印加磁界を大きくしても磁気遮蔽効果を維持できることが確かめられた。
【0047】浮上力特性試験の結果として、永久磁石はフェライト系(Xp=20mm、Yp=50mm、Zp=10mm)、高温超電導体はホット・フォージング法Bi系超電導体(Xs=63mm、Ys=31mm、Zs=1mm)を2枚重ね、強磁性体は一般構造用圧延鋼材SS41(Xf=80mm、Yf=4mm、Zf=4mm)とした場合において、永久磁石−超電導体間の距離を4mm、8mm、10mmと変えて浮上力特性を測定した結果を、図5、図6および図7に示す。
【0048】これらの図において、(a)は高温超電導体が冷却前で、遮蔽効果がない場合、(b)は高温超電導体が超電導状態にあり遮蔽効果がある場合における、移動体−強磁性体間のギャップと浮上力の関係を示した。
【0049】測定結果から、移動体と強磁性体間の浮上力特性は、永久磁石、高温超電導体、強磁性体の寸法、起磁力などの組合せにより、図7(b)に示すように、移動体−強磁性体間のギャップの減少にともない増加していた浮上力が、ギャップの減少にともない浮上力も減少する安定領域のあることが確認できた。
【0050】しかし、組合せによっては、図5に示すように高温超電導体の遮蔽効果がないときと同じ浮上力特性になる場合や、図6に示すようにギャップの減少にともない浮上力の増加が小さくなるだけで浮上力に安定領域がない場合もあった。また、浮上力に安定領域がある場合には、高温超電導体の遮蔽効果により強磁性体と永久磁石間の浮上力がかなり小さくなることや、移動体を強磁性体に近づけていく場合とと離していく場合とでは浮上力特性にヒステリシスが見られることが分かった。
【0051】このように、永久磁石、高温超電導体、強磁性体の寸法、起磁力などの組合せにより浮上力に安定領域がある場合とない場合があることが分かった。そこで永久磁石の起磁力(永久磁石−超電導体間の距離Gpsを変えることで等価的な変更)、強磁性体の寸法などを変えた場合などについて、浮上力に安定領域があるかどうか、浮上力の大きさがどのように変化するかについて試験した。
【0052】高温超電導体に印加される磁界の大きさにより、高温超電導体の磁気遮蔽効果が図3(b)や図4に示すように変わるため、浮上力特性に影響する。そこで、永久磁石−超電導体間の距離を変えることにより、超電導体に印加される磁界の大きさを等価的に変えた場合の浮上力特性を測定した。
【0053】測定結果として、永久磁石はフェライト系(Xp=20mm、Yp=50mm、Zp=10mm)、高温超電導体はホット・フォージング法Bi系超電導体(Xs=63mm、Ys=31mm、Zs=1mm)の2枚重ね、強磁性体は一般構造用圧延鋼材SS41(Xf=80mm、Yf=4mm、Zf=4mm)とした場合において、永久磁石−超電導体間の距離を4mm、6mm、8mm、10mm、12mm、14mmと変えて浮上力特性を測定した結果を、図8に示す。
【0054】図8においては、高温超電導体を冷却しない状態の永久磁石と強磁性体間の浮上力の最大値A(図7に示す点Aの値)、高温超電導体を冷却し磁気遮蔽効果がある状態で移動体を近づけていくときの浮上力の極大値B〔図5(b)から図7(b)点Bの値〕、移動体が最も近づいたときの浮上力に極小値C〔図7(b)点Cの値〕、移動体を離していくときの浮上力の極大値D〔図7(D)の値〕を示した。なお、浮上力に安定領域がなかった永久磁石−超電導体間の距離が4mm、6mm、8mmの場合には、高温超電導体を冷却しない状態の移動体と挟持性体間の浮上力の最大値Aと、高温超電導体を冷却し、磁気遮蔽効果がある状態で移動体を近づけていくときの浮上力の最大値Bの値を示した。
【0055】試験の結果から、永久磁石−超電導体間の距離が4mm、6mmと小さく高温超電導体に印加される磁界が大きい場合には、磁気遮蔽効果が充分でなく、浮上力特性に安定領域が見られない。永久磁石−超電導体間の距離が10mm以上になり印加磁界が小さくなると、高温超電導体の磁気遮蔽効果が有効に働いて、浮上力に安定領域ができることが分かった。しかし、強磁性体に作用する磁束が少なくなるため、得られる浮上力も永久磁石−超電導体間の距離の増加にともない減少してしまう。
【0056】浮上力を大きくする方法の一つとして、強磁性体の寸法を大きくすることが考えられる。そこで、強磁性体の寸法を変えた場合の浮上力特性を測定した。
【0057】測定結果として、永久磁石はフェライト系(Xp=20mm、Yp=50mm、Zp=10mm)、高温超電導体はホット・フォージング法Bi系超電導体(Xs=63mm、Ys=31mm、Zs=1mm)の2枚重ね、永久磁石−超電導体間の距離を10mmとした場合において、強磁性体の幅Yfおよび高さZfを変えて浮上特性を測定した結果を、図9に示した。なお、強磁性体の長さXfは、80mmで一定とした。
【0058】試験の結果から、強磁性体の断面寸法が大きくなると、浮上力が増加することが分かる。しかし、80mm×8mm×10mmまで大きくした場合には浮上力に安定領域がなくなることから、断面寸法があまり大きくなり過ぎると磁束の整形効果が有効に働かなくなり、浮上力特性が悪くなるものと考えられる。
【0059】高温超電導体の寸法が、浮上力特性にどんな影響を与えているのかを確かめるため、高温超電導体の寸法を変えた場合の浮上力特性について測定した。
【0060】測定結果として、永久磁石はフェライト系(Xp=20mm、Yp=50mm、Zp=10mm)、強磁性体は一般構造用圧延鋼材SS41(Xf=80mm、Yf=4mm、Zf=4mm)とした場合において、超電導体にホット・フォージング法Bi系超電導体(Xs=33mm、Ys=31mm、Zs=1mm)の2枚重ねとしてX方向の長さを半分にして浮上力特性を測定した結果を、図10に示した。
【0061】試験の結果から、高温超電導体の寸法Xsを63mmから31mmに短くした場合には、63mmの場合には浮上力に安定領域があった永久磁石−高温超電導体間の距離が10mmおよび14mmの場合でも、安定領域がなかった。これは、X軸方向への磁束の回り込みにより、充分な磁束の整形効果が得られないためと考えられる。
【0062】磁気遮蔽効果の高い高温超電導体を用いれば永久磁石の起磁力が増加でき、浮上力も大きくすることができる可能性がある。そこで、高温超電導体として、溶融法Y系超電導体を用いた場合の浮上力特性について測定した。
【0063】測定結果として、永久磁石はフェライト系(Xp=20mm、Yp=50mm、Zp=10mm)、超電導体は溶融法Y系超電導体(Xs=30mm、Ys=30mm、Zs=2mm)1枚、強磁性体は一般構造用圧延鋼材SS41(Xf=80mm、Yf=4mm、Zf=4mm)とした場合において、永久磁石−高温超電導体間の距離を0mm、1mm、2mm、3mm、4mm、6mm、8mmと変えて浮上力特性を測定した結果を、図11に示した。
【0064】測定の結果から、高磁界まで磁気遮蔽効果が維持できるため、永久磁石−高温超電導体間の距離が1mmと小さく、印加磁界が大きい場合でも、安定領域があった。しかし、磁気遮蔽効果が高いため、得られる浮上力は、最大で3g程度までしか増加できなかった。また、永久磁石−高温超電導体間の距離が6mm以上では、使用した高温超電導体のXsが30mmと短いため、磁束の長手方向の回り込みにより浮上力に安定領域がなくなったものと考えられる。
【0065】上記したように、本発明では高温超電導体の磁気遮蔽効果を用いて磁束分布を整形することで、無制御の吸引浮上を実現する磁束分布整形型の超電導磁気浮上方式の浮上力特性について基礎的な試験を行った。
【0066】その結果、高温超電導体の磁気遮蔽効果により磁束分布が整形され、浮上力に安定領域があることを確認した。また、強磁性体、高温超電導体、永久磁石の寸法、種類、構成、起磁力などの組合せにより、安定領域がなくなることや、浮上力の最大値、安定領域の大きさなどこれらの組み合わせが浮上力特性に影響することを確かめられた。
【0067】図12は本発明の第1の実施例を示す高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式の模式図である。
【0068】この図において、10は移動体、11は第1の組み立て体であり、この第1の組み立て体11は、磁界発生源12A,12Bと、その上側に配置される遮蔽体である高温超電導体13A,13Bからなる。21は第2の組み立て体であり、この第2の組み立て体は、磁界発生源22A,22Bとこれらの側方の内側に配置される遮蔽体である高温超電導体23A,23Bからなる。つまり、第1の組み立て体11が90度回転したような配置となっている。31は強磁性体からなる地上側レールであり、この地上側レール31は高温超電導体13A,13Bの上方で、かつ高温超電導体23A,23Bに挟まれるような配置となっている。つまり、第2の組み立て体21は、移動体10の幅方向を規制するガイドの機能を果たしている。なお、図12において、矢印は磁界発生源の磁極の方向を示している。
【0069】図13は本発明の第2の実施例を示す高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式の模式図、図14はその前方からみた磁気浮上方式の模式図、図15は推進駆動装置の斜視図である。
【0070】この図において、40は移動体、41は第1の組み立て体(第1実施例における11と対応)、42は第2の組み立て体(第1実施例における21と対応)、43は地上側のレールであり、強磁性体43Aの下面にアルミニウムや銅などの導電体43Bを付設する。50は移動体40に搭載され、鉄芯51の溝52に装着される多相励磁されるコイル53を有する推進駆動装置である。このコイル53は、例えば、図示しないが3相VVVF電源が接続されたコイル53U,53V,53Wから構成され、誘導モータの原理で推進力を得ることができる。なお、60は移動体40と推進駆動装置50間に敷設される高機能性の絶縁体、61は推進駆動装置50と第1の組み立て体41との電磁的遮蔽を行う絶縁体壁である。
【0071】なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0072】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0073】(1)永久磁石と強磁性体に高温超電導体を組み合わせることにより、高温超電導体の磁気遮蔽効果を用いて磁束分布を整形することで、無制御の吸引浮上を実現する高温超電導体の磁気遮蔽効果を利用した磁気浮上方式を構築することができる。
【0074】(2)地上側レールは強磁性体であり、構造がシンプルな磁気浮上方式を構築することができる。
【0075】(3)磁界発生源の幅は地上側レールの幅よりも長くとり、地上側レールと磁界発生源が十字となるような配置にするとともに、遮蔽体の幅は磁界発生源の幅より小さく、長手方向には磁界発生源に対して長くするように配置することで、浮上力を増加するとともに、無制御での浮上力の安定領域を大きく確保することができる。
【出願人】 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【出願日】 平成11年1月26日(1999.1.26)
【代理人】 【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守 (外1名)
【公開番号】 特開2000−217207(P2000−217207A)
【公開日】 平成12年8月4日(2000.8.4)
【出願番号】 特願平11−16713