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【発明の名称】 交流電気車の制御装置
【発明者】 【氏名】寺澤 清

【氏名】三宅 亙

【氏名】稲荷田 聡

【氏名】小澤 寛之

【氏名】佐川 哲

【要約】 【課題】PWMコンバータにより電源系統に発生した高調波成分を、電流検出器やフィルタを使用することなく、高調波低減用PWMコンバータによりこの高調波を精度よく低減し、低コスト化することにある。

【解決手段】PWMコンバータ4a,4bは、コンバータ入力側に発生すべき交流電圧の基本波を変調波として制御回路11a,11bでPWM制御を行い、得られたゲート信号にしたがってPWM動作する。高調波低減用PWMコンバータの制御回路12では、制御回路11a,11bから取込んだゲート信号から同じく取込んだ変調波を引算して打消したい高調波成分を得る。これを逆位相としたものを高調波低減用PWMコンバータ8の変調波としてPWM制御を行い、PWMコンバータ4a,4bによって発生した打消したい高調波成分と同周波数成分で逆位相の高調波を主変圧器3の1次側に発生し、その高調波成分を打消す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 交流を電源とする電気車において、主変圧器により降圧された交流電圧を直流電圧に電力変換する駆動用PWMコンバータと、駆動用PWMコンバータの出力を交流変換して電動機に供給するインバータと、駆動用PWMコンバータのスイッチング動作により電源系統に発生した高調波を打ち消すための高調波低減用PWMコンバータを備え、前記駆動用PWMコンバータのゲート信号と変調波信号を取り込み、これらに基づいて高調波低減制御を実施することを特徴とした交流電気車の制御装置。
【請求項2】 請求項1において、前記駆動用PWMコンバータのゲート信号と変調波を使って前記高調波低減用PWMコンバータのPWM制御を行う機能を付加した駆動用PWMコンバータの制御回路を有することを特徴とした交流電気車の制御装置。
【請求項3】 請求項1において、前記駆動用PWMコンバータのゲート信号と変調波を出力する駆動用PWMコンバータ制御回路と、前記ゲート信号と変調波に基づいて前記高調波低減用PWMコンバータのPWM制御を行う高調波低減用PWMコンバータ制御回路を有することを特徴とした交流電気車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、交流電気車において架線電圧を直流電圧に変換するパルス幅変調制御コンバータ(以下、駆動用PWMコンバータと云う。)より電力系統に発生する高調波成分を打ち消す機能を備えた交流電気車の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】交流電気車の制御装置の電源系統に発生した高調波成分を抑制する方法の一例として、図3に、特開平9−154203号公報に記載された交流電気車の制御装置の構成を示す。図3において、1は交流架線、2はパンタグラフ、3はパンタグラフ2と1次巻線3Pが電気的に接続され、1次巻線3Pに印加された交流電圧(例えば、AC20kV)を降圧する主変圧器、4a,4bは主変圧器3の各2次巻線3Sに接続され、交流電圧を例えばDC1800Vの直流に変換する駆動用PWMコンバータ、5は駆動用PWMコンバータ4の出力に接続され、直流電圧を可変電圧可変周波数の交流に変換し、車両駆動用の誘導電動機6に供給する可変電圧可変周波数インバータ(以下、VVVFインバータと云う。)である。7は主変圧器3に設けられた3次巻線であり、この3次巻線7には高調波低減用PWMコンバータ8が接続されている。12は高調波低減用PWMコンバータの制御回路である。10は主変圧器3の2次巻線3Sに設置された2次側電流検出器であり、この2次側電流検出器10は検出した2次側電流を高調波低減用PWMコンバータの制御回路12に入力する。
【0003】次に、従来装置の動作について説明する。まず初めに、交流電気車のPWMコンバータによる電源系統側での高調波の発生について説明する。図3において、交流架線1からパンタグラフ2を介して主変圧器3の1次巻線3Pに交流電圧が印加されると、この交流電圧は降圧されて2次巻線3Sより各駆動用PWMコンバータ4a,4bに入力される。各駆動用PWMコンバータ4a,4bはパルス幅変調制御(以下、PWM制御と云う。)を行うことによって、力率をほぼ1に保ちながら、交流電圧を直流電圧に電力変換し、一定の直流出力電圧をVVVFインバータ5に供給する。VVVFインバータ5では、直流電圧を可変電圧可変周波数の交流電圧に変換して誘導電動機6のトルク・速度制御を行う。
【0004】駆動用PWMコンバータ4a,4bに使用される主回路スイッチング素子は、自励形の大電力半導体を用いる必要があり、最近ではGTOサイリスタやIGBTを使用している。これらの素子のスイッチング周波数は約500Hz〜1500Hz程度であり、駆動用PWMコンバータ4a,4bの動作により、主変圧器3の各々の2次巻線3Sにはスイッチング周波数の2倍の約1〜3kHz程度の高調波成分が発生する。この各々の2次巻線3Sに発生した高調波は、お互いに位相差をつけることにより、主変圧器3の1次側においては、特定の高調波成分を打ち消すことができる。そのために、駆動用PWMコンバータ4a,4bを複数個設けて各々のPWM制御に位相差を設定して多重運転を行う場合がある。しかし、多くの駆動用PWMコンバータ4a,4bを設置することは難しく、一般には2〜4台程度であり、打消せなかったスイッチング周波数の整数倍(2×多重運転台数)の高調波成分が電源系統側に発生する。
【0005】そこで、従来装置においては、主変圧器3の3次巻線7に高調波低減用PWMコンバータ8を接続し、駆動用PWMコンバータ4a,4bの多重運転により打消せなかった高調波成分を打ち消すように制御して、電源系統側に発生する高調波成分を抑制している。以下にその動作を述べる。高調波低減用PWMコンバータの制御回路12は、2次側電流検出器10より主変圧器3の2次側電流を入力し、バンドパスフィルタ(以下、BPFと云う。)を通して打消したい高調波成分(付近の信号機や通信設備に障害を与える恐れがある周波数帯、例えば1kHz)を検出する。次に、検出成分の逆位相の成分(プラスとマイナスを逆にしたもの)をPWM制御部に入力して、高調波低減用PWMコンバ―タ8の入力電流制御パタンとする。この結果、高調波低減用PWMコンバータ8は、駆動用PWMコンバータ4a,4bによって発生した打消したい高調波成分と同周波数成分で逆位相の高調波を主変圧器3に発生させ、その高調波成分を打ち消す。高調波低減用PWMコンバータ8は、高調波の発生源である2次側電流から2次側電流検出器10により高調波を検出しているため、高調波成分の打消しをフィードフォワード的な制御により行っていることとなる。
【0006】この外に、高調波の検出手段としては、2次側電流検出器10に代り1次側電流検出器を用いて1次側電流中の高調波成分を検出してフィードバック的に高調波低減する方法や、装置構成としては、主変圧器3次巻線の代りに2次巻線に接続したPWMコンバータにより高調波を打ち消す方法があり、いずれも前述の特開平9−154203号公報に記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の制御装置では、打消したい高調波を検出するために、1次巻線または2次巻線に流れる高調波成分を含んだ電流を電流検出器によって検出し、これをフィルタに通して高調波成分のみ取出すようにしている。この方法では、電流検出器の検出遅れやフィルタの位相特性が高調波の検出精度に大きく影響し、検出した高調波の位相が実際の高調波と少しでもずれると、高調波を打ち消す効果が著しく減少することとなる。したがって、高調波低減効果は、電流検出器の精度、周波数特性や、フィルタの性能に大きく依存しており、高調波に対応した高精度な電流検出器と性能の良いフィルタが必須となり、装置が高価となる。また、実際に流れている高調波成分を検出してから、これを打ち消すように制御するため、高調波低減用PWMコンバータの動作が少なからず遅れることとなり、特に、2次巻線から高調波成分を検出するフィードフォワード的制御では、高調波低減の効果が減少することとなる。
【0008】本発明の課題は、上記のような問題点に鑑み、電源系統側に発生した高調波成分を精度よく低減し、かつ、低コストの交流電気車の制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題は、交流を電源とする電気車において、主変圧器により降圧された交流電圧を直流電圧に電力変換する駆動用PWMコンバータと、駆動用PWMコンバータの出力を交流変換して電動機に供給するインバータと、駆動用PWMコンバータのスイッチング動作により電源系統に発生した高調波を打ち消すための高調波低減用PWMコンバータを備え、前記駆動用PWMコンバータのゲート信号と変調波信号を取り込み、これらに基づいて高調波低減制御を実施することによって、解決される。ここで、駆動用PWMコンバータのゲート信号と変調波を使って高調波低減用PWMコンバータのPWM制御を行う機能を付加した駆動用PWMコンバータの制御回路を有する。また、駆動用PWMコンバータのゲート信号と変調波を出力する駆動用PWMコンバータ制御回路と、ゲート信号と変調波に基づいて高調波低減用PWMコンバータのPWM制御を行う高調波低減用PWMコンバータ制御回路を有する。
【0010】本発明は、高調波発生源である駆動用PWMコンバータのスイッチング動作に関する情報を高調波低減用PWMコンバータに教えることができるため、高調波低減用PWMコンバータでは主変圧器の2次側電流にどのような高調波が発生するかを予め知ることができるので、電流検出器とフィルタを用いて高調波成分を検出する必要がなく、これらを省略して装置のコスト低減を図ることができる。また、高調波が発生することを前もって知ることにより、高調波を打ち消す動作が遅れずにすみ、高調波低減効果を向上させることができる。
【0011】
【発明の実施形態】以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態による交流電気車の制御装置を示す。なお、図中、図3と同一符号の部分は図3に同一あるいは相当する部分である。図1において、7は主変圧器3に設けられた3次巻線であり、この3次巻線7には高調波低減用PWMコンバータ8が接続されている。11a,11bは駆動用PWMコンバータの制御回路である。12は高調波低減用PWMコンバータの制御回路であり、制御回路11a,11bより駆動用PWMコンバータ4a,4bのゲート信号と変調波信号を取り込む。
【0012】次に、本実施形態の動作について説明する。駆動用PWMコンバータ4a,4bは、コンバータ入力側に発生すべき交流電圧の基本波を変調波として制御回路11a,11bでPWM制御を行い、得られたゲート信号にしたがってPWM動作する。このとき、2次側電流には駆動用PWMコンバータ4a,4bのスイッチングによる高調波が発生する。これを打ち消すため、高調波低減用PWMコンバータ8では次の考えに基づいて制御する。PWM制御回路11a,11bでは、変調波と搬送波との大小比較によりパルス状の波形を作ることで、変調波を基本波成分にもち、かつ、高調波成分を含んだ交流波形を生成する。よって、PWM制御回路11a,11bにより得られたパルス状の波形からその基本波成分を引くことにより、高調波成分のみを特定することができる。言換えると、PWM制御回路11a,11bにより得られたゲート信号波形から変調波を引算することで、そのPWM動作に起因する高調波成分を検出することができることとなる。このときのゲート信号波形と変調波および高調波成分の波形図を図4に示す。図4において、ゲート信号波形YGから変調波YCを引き算すると、高調波成分YHを得る。以上の考えに基づき、高調波低減用PWMコンバータの制御回路12では、駆動用PWMコンバータの制御回路11a,11bから取込んだゲート信号から同じく取り込んだ変調波を引算して打消したい高調波成分を得る。これを逆位相としたものを高調波低減用PWMコンバータ8の変調波としてPWM制御を行う。この結果、高調波低減用PWMコンバータ8は、駆動用PWMコンバータ4a,4bによって発生した打消したい高調波成分と同周波数成分で逆位相の高調波を主変圧器3の1次側に発生し、その高調波成分を打ち消す。図1では、高調波低減用PWMコンバータ8を主変圧器3の3次巻線7に接続したものとしているが、2次巻線3Sに接続した場合でも同様の手法により、高調波成分を検出して高調波低減を図ることができる。
【0013】図2は、本発明の他の実施形態を示す。なお、図中、図1と同一符号の部分は、図1に同一あるいは相当する部分である。図2において、13は高調波低減用PWMコンバータ8の制御機能を備えた駆動用PWMコンバータ4aの制御回路である。制御回路13では、PWM制御により駆動用PWMコンバータ4aにゲート信号を与えると同時に、そのゲート信号から駆動用PWMコンバータ4aの変調波を引算し、これを逆位相としたものを高調波低減用PWMコンバータ8の変調波としてPWM制御を行い、高調波低減用PWMコンバータ8にゲート信号を出力する。この結果、高調波低減用PWMコンバータ8は、駆動用PWMコンバータ4aによって発生した打消したい高調波成分と同周波数成分で逆位相の高調波を主変圧器3の1次側に発生し、その高調波成分を打ち消す。図2では、高調波低減用PWMコンバータ8を主変圧器3の3次巻線7に接続したものとしているが、2次巻線3Sに接続した場合でも同様の手法により、高調波成分を検出して高調波低減を図ることができる。
【0014】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、駆動用PWMコンバータのスイッチングに起因する高調波の検出のために、高精度かつ高周波数対応の電流検出器と性能の良いフィルタを使用する必要がなく、これらを省略して装置のコスト低減を図ることができる。また、高調波の原因である駆動用PWMコンバータのスイッチング動作に即応して、高調波低減用PWMコンバータを制御するため、高調波低減効果の向上を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成11年1月22日(1999.1.22)
【代理人】 【識別番号】100099302
【弁理士】
【氏名又は名称】笹岡 茂 (外1名)
【公開番号】 特開2000−217202(P2000−217202A)
【公開日】 平成12年8月4日(2000.8.4)
【出願番号】 特願平11−14272