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【発明の名称】 ATC車上装置、及びATC車上装置における受信情報処理方法
【発明者】 【氏名】大和田 晃揮

【要約】 【課題】無信号マスク時間の値が短くなった場合でも瞬断に対しても安定なATC車上装置、及びATC車上装置における受信情報処理方法を提供する。

【解決手段】従来のATC車内信号の現示制御に加え、「直前合格信号が第4の所定時間以下の時間だけ検出されずその後に再度検出された場合には、瞬断と判断し、動作時間の値を、より短い瞬断用動作時間に置換してATC車内信号の現示処理を行なう」という論理を新たに設定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ATC地上装置から送信されるATC情報を受信し、前記受信されたATC情報の内容に基づいてブレーキ制御を行い列車の速度を制御するATC車上装置であって、ATC情報が検出された場合には、検出開始時点から第1の所定時間である動作時間が経過するまで継続して検出された時点で前記ATC情報が第1条件を満足すると判別し、第1条件を満足すると判別されたATC情報のうち前記速度の値が最低のものが第2条件を満足すると判別し、前記第1条件及び第2条件を満足するATC情報の内容に基くATC車内信号を前記列車内に現示させるとともに、第1条件を満足すると判別されたATC情報が存在しないときにはATC車内信号の現示を停止させ、直前まで第1条件を満足すると判別されていたATC情報である直前合格情報が検出されなくなった場合には、検出されなくなった時点から第2の所定時間である復旧時間が経過するまでの期間中は、前記直前合格情報が第1条件を満足するものとして取り扱い、その後、前記復旧時間が経過した時点で前記直前合格情報は第1条件を満足しないと判別し、前記直前合格情報が前記復旧時間に引き続いて検出されなくなった場合には、前記復旧時間の終了時点から第3の所定時間である無信号マスク時間が経過するまでの期間中は、第1条件を満足すると判別されたATC情報が他に存在しない場合にかぎり、前記直前合格情報が第1条件を満足するものとして取り扱い、その後、前記無信号マスク時間が経過した時点で前記直前合格情報は第1条件を満足しないと判別し、前記直前合格情報が第4の所定時間以下の時間だけ検出されずその後に再度検出された場合には、前記動作時間の値を、前記第1の所定時間よりも短い第5の所定時間に置換して前記ATC車内信号の現示処理を行なうことを特徴とするATC車上装置。
【請求項2】 ATC地上装置から送信されるATC情報を受信し、前記受信されたATC情報の内容に基づいてブレーキ制御を行い列車の速度を制御するATC車上装置における受信情報処理方法であって、ATC情報が検出された場合には、検出開始時点から第1の所定時間である動作時間が経過するまで継続して検出された時点で前記ATC情報が第1条件を満足すると判別し、第1条件を満足すると判別されたATC情報のうち前記速度の値が最低のものが第2条件を満足すると判別し、前記第1条件及び第2条件を満足するATC情報の内容に基くATC車内信号を前記列車内に現示させるとともに、第1条件を満足すると判別されたATC情報が存在しないときにはATC車内信号の現示を停止させ、直前まで第1条件を満足すると判別されていたATC情報である直前合格情報が検出されなくなった場合には、検出されなくなった時点から第2の所定時間である復旧時間が経過するまでの期間中は、前記直前合格情報が第1条件を満足するものとして取り扱い、その後、前記復旧時間が経過した時点で前記直前合格情報は第1条件を満足しないと判別し、前記直前合格情報が前記復旧時間に引き続いて検出されなくなった場合には、前記復旧時間の終了時点から第3の所定時間である無信号マスク時間が経過するまでの期間中は、第1条件を満足すると判別されたATC情報が他に存在しない場合にかぎり、前記直前合格情報が第1条件を満足するものとして取り扱い、その後、前記無信号マスク時間が経過した時点で前記直前合格情報は第1条件を満足しないと判別し、前記直前合格情報が第4の所定時間以下の時間だけ検出されずその後に再度検出された場合には、前記動作時間の値を、前記第1の所定時間よりも短い第5の所定時間に置換して前記ATC車内信号の現示処理を行なうことを特徴とするATC車上装置における受信情報処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道等において列車等の速度を制御する自動列車制御装置(ATC:Automatic Train Control )の車両側の装置であるATC車上装置、及びATC車上装置における受信情報処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】鉄道においては、列車を安全に運行するための手段との一つとして、ATCが用いられている。ATCは、先行列車との間隔ならびに進路の開通状況に応じて、許容運転速度情報を地上から列車側に伝送するとともに、列車側において列車の速度を連続的に照査し、許容速度(制限速度)を超える場合にはブレーキをかけ、許容速度以下の場合にはブレーキを緩めるといったブレーキ制御を行ない列車速度の減速制御を自動的に行なわせるシステムである。
【0003】次に、従来のATCの構成とその作用について、図4ないし図7を参照しつつ説明する。図4は、従来のATCの構成を示すブロック図である。図4に示すように、このATC10Aは、ATC地上装置11と、ATC車上装置12Aを備えて構成されている。
【0004】ATC地上装置11は、リレー回路を有しており、先行列車の位置や駅構内の進路状況等の必要な関連情報が取り込まれる。ATC地上装置は、これらの関連情報に基いて、該当する列車に送るべき許容運転速度情報(ATC情報)を含むATC信号を生成し、ATC信号を搬送波に重畳させ、該当する軌道回路のレールRに電流として流す。
【0005】ATC車上装置12Aは、図4に示すように、受電器13と、受信部14と、論理部15Aと、ブレーキ制御部16と、車輪17と、速度発電機18と、車内信号機19を有している。まず、受電器13がレールRからATC信号電流を取り込む。受電器13によって取り込まれたATC信号電流は、受信部14で検出され、論理部15Aへ出力される。
【0006】一方、走行中の列車は、速度発電機18により、自車の走行速度を常に検出している。自車走行速度は、列車内に設けられた速度計(図示せず)により運転士等に対して表示されるとともに、受信部14から論理部15Aに出力される。
【0007】論理部15Aは、図5に示すように、1系統(A系)のCPU(Central Processing Unit :中央演算装置)21,ROM(読出し専用メモリ:Read Only Memory)32,RAM(随時書込み読出しメモリ:Random Access Memory)23と、他系統(B系)のCPU25,ROM(読出し専用メモリ:Read Only Memory)36,RAM(随時書込み読出しメモリ:Random Access Memory)27と、バス照合部24と、バスインターフェイス28を有している。
【0008】これらのうち、CPU21,25は、演算やプログラム実行等の処理を行う部分である。また、ROM32は、CPU21の実行するプログラム等を格納した記憶装置であり、ROM36は、CPU25の実行するプログラム等を格納した記憶装置である。また、RAM23は、CPU21により演算されたデータ等を一時記憶する記憶装置であり、RAM27は、CPU25により演算されたデータ等を一時記憶する記憶装置である。
【0009】このような構成により、論理部15AのCPU21,25は、受信部14から送られてくるATC信号の指示速度と、現在の自車走行速度情報とをつき合わせて照合する。この照合により、ATC信号の指示速度よりも自車走行速度の方が高い場合には、ブレーキ制御部16にブレーキ作動指令を出力する。これにより、ブレーキ制御部16は、ブレーキを作動させ、列車の速度を減速させる。また、自車走行速度がATC信号の指示速度以下の場合には、ブレーキ制御部16にブレーキ緩め指令を出力する。これにより、ブレーキ制御部16は、ブレーキを緩めるように制御する。また、この際、ATC信号の指示速度は、ATC車内信号として車内信号機19に出力され運転士等に対して表示(以下、「現示」という。)される。
【0010】次に、従来のATCにおけるATC信号の受信時の信号処理方法を、図6に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。図6は、従来のATC車上装置におけるATC信号の受信時の基本的な信号処理方法を示すタイミングチャートであり、図の左から右に向かって時間が経過する。
【0011】図6の上段のタイミングチャートは、受信部14が検出したあるATC信号のタイミングチャートを示している。このATC信号(以下、「ATC信号A」という。)は、「ある速度Aを現示させること」を内容とするものであり、帯状に図示されている期間の間だけ受信部14が検出したことを示している。すなわち、帯状の図形の図における左端の時点でこのATC信号Aが検出され始め、図における右端の時点で検出が終了したことを示している。
【0012】また、図6の中段のタイミングチャートは、受信部14が検出した他のATC信号のタイミングチャートを示している。このATC信号(以下、「ATC信号B」という。)は、「ある速度Bを現示させること」を内容とするものである。この図では、帯状の図形の図における左端の時点でこのATC信号Bが検出され始めたことが示されている。
【0013】この場合、ATC信号Aが指示する許容速度AとATC信号Bが指示する許容速度Bの間には、A<Bの関係があり、速度Aは速度Bよりも低速であり、速度Bは速度Aよりも高速となっている。このような場合、速度Aの現示は「下位現示」といい、速度Bの現示は「上位現示」という。
【0014】また、図6の下段のタイミングチャートは、車内信号機19が実際に現示したATC車内信号の表示内容(ATC信号速度値)のタイミングチャートを示している。この図では、帯状の図形の図における左端の時点で速度Aが現示され、その後速度Bが現示されたことが示されている。
【0015】車内信号機19にATC車内信号を現示させる場合は、受信部14が検出したATC信号を図4における論理部15が判断し、車内信号機19に現示指令を出力することにより車内信号現示が行われる。論理部15の判断や指令の動作は、図5におけるCPU21、25が制御しており、CPU21、25は、ROM32、36に格納されたプログラムに基いて制御動作を実行している。
【0016】まず、受信部14でATC信号が検出された場合には、検出開始時点から、第1の所定時間(以下、「動作時間」という。)が経過するまで継続して検出された時点で、CPU21、25は、「このATC信号が、車内信号機19に現示を行うための第1の条件(以下、「第1条件」という。)を満足する。」と判別する。
【0017】また、「第1条件を満足する。」と判別されたATC信号が複数存在する場合には、CPU21、25は、「これらのATC信号のうち、ATC指示速度の値が最低のもの(最も下位の現示のもの)が車内信号機19に現示を行うための第2の条件(以下、「第2条件」という。)を満足する。」と判別する。したがって、「第1条件を満足する。」と判別されたATC信号が1個のみの場合には、CPU21、25は、「その1個のみのATC信号が第2条件を満足する。」と判別する。
【0018】次に、CPU21、25は、第1条件と第2条件を同時に満足するATC信号の内容である指示速度値を車内信号機に現示させるように制御する。
【0019】また、CPU21、25は、「第1条件を満足する。」と判別されたATC信号が存在しないときには、車内信号機への現示を停止させるように制御する。
【0020】また、CPU21、25は、直前まで「第1条件を満足する。」と判別されていたATC信号(以下、「直前合格信号」という。)が検出されなくなった場合には、検出されなくなった時点から、第2の所定時間(以下、「復旧時間」という。)が経過するまでの期間中は、直前合格信号が第1条件を満足するものとして取り扱う。
【0021】そして、CPU21、25は、直前合格信号が復旧時間に引き続いて検出されなくなった場合には、復旧時間の終了時点から第3の所定時間(以下、「無信号マスク時間」という。)が経過するまでの期間中は、「第1条件を満足する。」と判別されたATC信号が他に存在しない場合にかぎり、直前合格信号が第1条件を満足するものとして取り扱う。
【0022】その後、CPU21、25は、無信号マスク時間が経過した時点で、「直前合格信号は第1条件を満足しない。」と判別する。
【0023】上記のような信号処理、及び制御により、図6の上段及び下段に示すように、ATC信号Aが検出された後、動作時間が経過すると、他に検出されているATC信号が存在しないから、このATC信号Aが車内信号機19に現示される。このように、動作時間が設けられているのは、不安定な信号でATC車内信号を現示することを避け、確実な信号によりATC車内信号を現示するためである。
【0024】また、図6の上段及び下段に示すように、受信部14がATC信号Aを検出しなくなっても、すぐ車内信号機19は無現示状態にはならない。すなわち、ATC信号Aが検出されなくなった場合には、検出されなくなった時点から、復旧時間が経過するまでの期間中は、車内信号機19は直前の現示である速度Aを現示し続ける。このような復旧時間が設けられているのは、ATC地上装置11から送られてくるATC信号自体には変化がないにもかかわらず、種々の条件や支障等によって車上に取り込まれ検出されたATC信号が短い時間だけ途絶える場合(以下、「瞬断」という。)があるが、このような場合に即座にATC車内信号が無現示状態となることを避けるためである。
【0025】また、CPU21、25は、ATC信号の復旧時間が経過しても、ただちに「このATC信号は第1条件を満足しない。」とは判定しない。直前合格信号(図6の場合にはATC信号A)が復旧時間に引き続いて検出されなくなった場合には、復旧時間の終了時点から、無信号マスク時間の計時を行う。また、無信号マスク時間が経過するまでの期間中は、「第1条件を満足する。」と判別されたATC信号が他に存在しない場合にかぎり、直前合格信号(図6の場合にはATC信号A)が第1条件を満足するものとして取り扱う。
【0026】その後、ATC信号Bの動作時間が経過した時点においては、第1条件を満足する他のATC信号Bが存在することになるため、この時点で、「直前合格信号であるATC信号Aは第1条件を満足しない。」と判別される。これにより、第1条件を満足しているATC信号は、ATC信号Bのみとなるため、CPU21、25は、「ATC信号Bが第2条件を満足する。」と判別し、第1条件と第2条件を同時に満足するATC信号Bの内容である指示速度値Bを車内信号機19に現示させるように制御する。すなわち、この時点で、車内信号機19の現示が、速度Aから速度Bに切り替わる(図5の下段のタイミングチャート参照)。
【0027】このように、無信号マスク時間が設けられているのは、車内信号機19が下位現示から上位現示に切り替わる時間を短縮化するためである。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来のATC車上装置における受信信号の処理方法においては、図7のケースの場合に問題があった。すなわち、受信された信号が、図7の第1段のタイミングチャートに示すように、ある時点から検出されなくなり(無信号となり)、同じATC信号がその後再度検出されるようになった場合である。このケースでは、第4段と第5段のタイミングチャートに示すように、検出されなくなったATC信号(直前合格信号)の無信号マスク時間が経過する前に、再度検出されたATC信号の動作時間が経過している。このため、図7の第2段に示すように、車内信号機19の現示は、途切れることなく直前合格信号の内容を現示している。
【0029】しかし、無信号マスク時間の値を、現状よりも短くした場合には、図7の第4段において、破線で示すように、無信号マスク時間の右端が図の左側に移動することになる。このようにすると、新たな無信号マスク時間の経過時点では、再度検出されたATC信号の動作時間は経過していない。このため、この時点で車内信号機19は、それまで現示していた直前合格信号の内容を現示を停止し、無現示状態となる。すなわち、無信号マスク時間の値を短くすると、ATC信号が瞬断した場合に、無現示状態となりやすい、という問題がある。
【0030】本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、本発明の解決しようとする課題は、無信号マスク時間の値が短くなった場合でも瞬断に対しても安定なATC車上装置、及びATC車上装置における受信情報処理方法を提供することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明に係るATC車上装置は、ATC地上装置から送信されるATC情報を受信し、前記受信されたATC情報の内容に基づいてブレーキ制御を行い列車の速度を制御するATC車上装置であって、ATC情報が検出された場合には、検出開始時点から第1の所定時間である動作時間が経過するまで継続して検出された時点で前記ATC情報が第1条件を満足すると判別し、第1条件を満足すると判別されたATC情報のうち前記速度の値が最低のものが第2条件を満足すると判別し、前記第1条件及び第2条件を満足するATC情報の内容に基くATC車内信号を前記列車内に現示させるとともに、第1条件を満足すると判別されたATC情報が存在しないときにはATC車内信号の現示を停止させ、直前まで第1条件を満足すると判別されていたATC情報である直前合格情報が検出されなくなった場合には、検出されなくなった時点から第2の所定時間である復旧時間が経過するまでの期間中は、前記直前合格情報が第1条件を満足するものとして取り扱い、その後、前記復旧時間が経過した時点で前記直前合格情報は第1条件を満足しないと判別し、前記直前合格情報が前記復旧時間に引き続いて検出されなくなった場合には、前記復旧時間の終了時点から第3の所定時間である無信号マスク時間が経過するまでの期間中は、第1条件を満足すると判別されたATC情報が他に存在しない場合にかぎり、前記直前合格情報が第1条件を満足するものとして取り扱い、その後、前記無信号マスク時間が経過した時点で前記直前合格情報は第1条件を満足しないと判別し、前記直前合格情報が第4の所定時間以下の時間だけ検出されずその後に再度検出された場合には、前記動作時間の値を、前記第1の所定時間よりも短い第5の所定時間に置換して前記ATC車内信号の現示処理を行なうことを特徴とする。
【0032】また、本発明に係るATC車上装置における受信情報処理方法は、ATC地上装置から送信されるATC情報を受信し、前記受信されたATC情報の内容に基づいてブレーキ制御を行い列車の速度を制御するATC車上装置における受信情報処理方法であって、ATC情報が検出された場合には、検出開始時点から第1の所定時間である動作時間が経過するまで継続して検出された時点で前記ATC情報が第1条件を満足すると判別し、第1条件を満足すると判別されたATC情報のうち前記速度の値が最低のものが第2条件を満足すると判別し、前記第1条件及び第2条件を満足するATC情報の内容に基くATC車内信号を前記列車内に現示させるとともに、第1条件を満足すると判別されたATC情報が存在しないときにはATC車内信号の現示を停止させ、直前まで第1条件を満足すると判別されていたATC情報である直前合格情報が検出されなくなった場合には、検出されなくなった時点から第2の所定時間である復旧時間が経過するまでの期間中は、前記直前合格情報が第1条件を満足するものとして取り扱い、その後、前記復旧時間が経過した時点で前記直前合格情報は第1条件を満足しないと判別し、前記直前合格情報が前記復旧時間に引き続いて検出されなくなった場合には、前記復旧時間の終了時点から第3の所定時間である無信号マスク時間が経過するまでの期間中は、第1条件を満足すると判別されたATC情報が他に存在しない場合にかぎり、前記直前合格情報が第1条件を満足するものとして取り扱い、その後、前記無信号マスク時間が経過した時点で前記直前合格情報は第1条件を満足しないと判別し、前記直前合格情報が第4の所定時間以下の時間だけ検出されずその後に再度検出された場合には、前記動作時間の値を、前記第1の所定時間よりも短い第5の所定時間に置換して前記ATC車内信号の現示処理を行なうことを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る列車進路設定支援装置の実施形態について、図面を参照しながら説明を行う。
【0034】図1は、本発明の一実施形態であるATCの構成を示すブロック図である。また、図2は、図1のATC車上装置における論理部のさらに詳細な構成を示すブロック図である。
【0035】図1に示すように、このATC10は、ATC地上装置11と、ATC車上装置12を備えて構成されている。ATC地上装置11は、従来のものと同様の構成と作用を有している。また、本実施形態のATC車上装置12は、受電器13と、受信部14と、論理部15と、ブレーキ制御部16と、車輪17と、速度発電機18と、車内信号機19を有している。これらのうち、従来のATC車上装置12Aと異なる構成要素は、論理部15であり、他の構成要素については、従来のものと同様の構成と作用を有しているので、その説明は省略する。
【0036】また、図2に示すように、論理部15は、1系統(A系)のCPU21,ROM22,RAM23と、他系統(B系)のCPU25,ROM26,RAM27と、バス照合部24と、バスインターフェイス28を有している。これらのうち、従来の論理部15Aと異なる構成要素は、ROM22、26であり、他の構成要素については、従来のものと同様の構成と作用を有しているので、その説明は省略する。
【0037】すなわち、本実施形態のATC車上装置12は、ROM22、26に格納された制御プログラムが異なっている。したがって、ATC車内信号の現示の制御については、論理部15のCPU21、25において、従来とは異なる論理による制御動作が実行されている。以下、その制御動作について、図3を参照しつつ詳細に説明する。
【0038】図3は、本実施形態のATC車上装置12におけるATC信号の受信時の信号処理方法を示すタイミングチャートであり、図の左から右に向かって時間が経過する。また、信号や速度現示は、帯状に図示され、帯状の図形の図における左端の時点で信号検出や現示が開始され、図における右端又は縦の区分線の時点で信号検出や現示が終了したことを示している。
【0039】本実施形態のATC車上装置のATC車内信号の現示制御において異なるのは、以下点である。
【0040】直前合格信号が第4の所定時間以下の時間だけ検出されず、その後に再度検出された場合には、動作時間の値を、第1の所定時間よりも短い第5の所定時間に置換して、上記したATC車内信号の現示処理を行なう。
【0041】以下、本実施形態における現示制御の論理について、図3を参照しつつ、詳細に説明する。
【0042】第1段のタイミングチャートに示すように、受信部14がATC信号Aを検出し、第2段のタイミングチャートに示すように車内信号機19がこのATC信号Aを現示している。
【0043】次に、その後、受信部14が、それまで検出していたATC信号を検出しなくなり、ある時間経過後に、受信部14が同じATC信号(以下、「直前合格信号」という。)を再度検出し始める(図3の第1段のタイミングチャート参照)。
【0044】この場合、この直前合格信号については、検出されなくなった時点から、復旧時間の計時が開始される(図3の第3段のタイミングチャート参照)。復旧時間が経過するまでの期間中は、車内信号機19は直前の現示である速度Aを現示し続けるように制御される(図3の第2段のタイミングチャート参照)。この現示制御論理は、従来と同様である。
【0045】その後、直前合格信号の復旧時間が経過している(図3の第3段のタイミングチャート参照)。そして、直前合格信号は、復旧時間に引き続いて検出されない(図3の第1段のタイミングチャート参照)。この場合には、復旧時間の終了時点から、第3の所定時間である無信号マスク時間の計時が行われる。また、無信号マスク時間が経過するまでの期間中は、「第1条件を満足する。」と判別されたATC信号が他に存在しない場合にかぎり、直前合格信号が第1条件を満足するものとして取り扱われる。
【0046】したがって、この時点では、第1条件を満足するATC信号は、直前合格信号のみである。このような場合には、CPU21、25は、「ATC信号Aが第2条件を満足する。」と判別する。この結果、ATC信号Aは、第1条件と第2条件を満足することになり、CPU21、25は、直前合格信号の内容を車内信号機19に現示させるように制御する(図3の第2段のタイミングチャート参照)。
【0047】その後、直前合格信号が再度検出され始める(図3の第1段のタイミングチャート参照)。この場合、CPU21、25は、直前合格信号が途絶えていた時間(以下、「信号断絶時間」という。)を計時する。そして、直前合格信号が途絶えていた時間と、第4の所定時間(以下、「瞬断判別時間」という。)とを比較する。その結果、信号断絶時間の値が、瞬断判別時間の値よりも短い場合には、この信号断絶を「瞬断」と判別する。
【0048】次に、CPU21、25は、「信号断絶が瞬断である。」と判別した場合には、動作時間の値を、第1の所定時間よりも短い第5の所定時間(以下、「瞬断時用動作時間」という。)に置換し、上記したATC車内信号の現示処理を行なう。すなわち、図3の第5段において、破線で示すように、瞬断用動作時間では、従来の動作時間よりもその右端が図の左側に移動することになる。
【0049】この結果、図3の第4段と第5段のタイミングチャートに示すように、無信号マスク時間を短縮したとしても、無信号マスク時間が経過する前に瞬断用動作時間が経過するように設定することができる。したがって、図3の第2段に示すように、車内信号機19に、途切れることなく直前合格信号の内容を現示させることができる。
【0050】したがって、無信号マスク時間の値が短くなった場合でも、車内信号機19が瞬断によって容易に無現示となることを防止することができ、瞬断に対する安定性を向上させることができる。
【0051】上記した各時間の値としては、例えば、復旧時間が400ミリ秒、無信号マスク時間が400ミリ秒の場合、従来は300ミリ秒程度であった動作時間を、瞬断用動作時間の場合は100ミリ秒程度とするとよい。このようにすれば、無信号マスク時間の値に対して瞬断用動作時間は十分小さく、無信号マスク時間が経過する前に瞬断用動作時間が経過し、現示を継続させることが容易となる。また、瞬断判別時間の値は、例えば1秒以下程度の値に設定される。
【0052】上記において、受信部14において検出されるATC信号は、ATC情報に相当している。また、直前まで「第1条件を満足する。」と判別されていたATC信号である直前合格信号は、直前合格情報に相当している。
【0053】なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】例えば、上記実施形態においては、ATCが用いられる対象として鉄道を例に挙げて説明したが、本発明はこの例には限定されず、他の適用対象、例えば、モノレール、新交通システムであってもよい。また、本発明は、ATCシステムだけでなく、ATO(自動列車運転システム)にも適用可能である。また、ATC情報を送信する媒体についても、レールに流す信号電流以外に、電波、光等も利用可能である。
【0055】また、上記実施形態においては、ATC車上装置12の論理部15が車内信号機の現示制御を行う例について説明したが、本発明はこの例には限定されず、他の構成、例えば、ATC車上装置12の受信部14内にCPU等の信号判別手段や現示制御手段を設け、これらの信号判別手段や現示制御手段によって上記の車内信号現示制御を行うようにしてもよい。
【0056】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば、従来のATC車内信号の現示制御に加え、「直前合格情報が第4の所定時間以下の時間だけ検出されずその後に再度検出された場合には、動作時間の値を、第1の所定時間よりも短い第5の所定時間に置換してATC車内信号の現示処理を行なう」という論理を新たに設定したので、無信号マスク時間の値が短くなった場合でも瞬断に対する安定性を向上することができる、という利点を有している。
【出願人】 【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
【出願日】 平成10年12月28日(1998.12.28)
【代理人】 【識別番号】100105108
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 洋一
【公開番号】 特開2000−197217(P2000−197217A)
【公開日】 平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願番号】 特願平10−373062