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【発明の名称】 車両用電動機の制御装置
【発明者】 【氏名】田端 淳

【氏名】多賀 豊

【氏名】茨木 隆次

【要約】 【課題】電動機を非力行状態から力行状態に切り換える場合に、車輪に伝達されるトルクの急激な変化を抑制する。

【解決手段】車輪にトルクを伝達し、かつ、力行状態と非力行状態とで相互に切り換え可能な電動機と、この電動機と車輪との間に設けられ、かつ、係合・解放可能なクラッチを有するトルク伝達機構とを備えた車両用電動機の制御装置において、電動機を非力行状態から力行状態に切り換える場合は、クラッチの係合・解放状態に基づいて、電動機のトルクを制御する電動機制御手段(ステップ202,203,204,206,208,209)を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車輪に対してトルクを伝達する力行状態と車輪に対してトルクを伝達しない非力行状態とに切り換え可能な電動機と、この電動機と前記車輪との間に設けられ、かつ、係合・解放可能なクラッチを有するトルク伝達機構とを備えた車両用電動機の制御装置において、前記電動機を非力行状態から力行状態に切り換える場合は、前記クラッチの係合・解放状態に基づいて、前記電動機のトルクを制御する電動機制御手段を備えていることを特徴とする車両用電動機の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両用の動力源として搭載されている電動機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、車両の動力源として一般に使用されている内燃機関(エンジン)に加えて、第2の動力源として電動機(モータ・ジェネレータ)を搭載した車両が開発されている。この種の車両では、電動機の出力する動力が、車両の走行のためには必ずしも充分ではないが、電動機の出力の制御性がよいこと、電動機によってエネルギの回生をおこなうことできること、電動機は排ガスを生じないことなどの利点を生かして電動機を使用するように構成している。
【0003】このように、エンジンおよび電動機を動力源とするハイブリッド車の一例が特開平10−23607号公報に記載されている。この公報に記載されたハイブリッド車は、エンジンおよびモータ・ジェネレータと、モータ・ジェネレータと車輪との間に配置された自動変速機と、この自動変速機を制御するシフトレバーとを有する。自動変速機は遊星歯車機構および摩擦係合装置を備えており、摩擦係合装置の係合・解放により自動変速機の変速比が制御されるように構成されている。また、シフトレバーの操作により、Pポジション、Nポジションなどの非駆動ポジションと、Rポジション、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションなどの駆動ポジションとを選択することが可能である。そして、例えば、NポジションからDポジションにマニュアルシフトされた後に、直ちにアクセルが踏み込み操作された場合は、アクセル操作量の大きさに応じてモータ・ジェネレータのトルクの立ち上げ特性を設定することが記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記公報に記載されているようなハイブリッド車においては、車両の発進時などのような低負荷状態ではエンジンの燃料効率が悪いため、モータ・ジェネレータのトルクにより車両を発進させる制御がおこなわれる。すると、シフト装置を非駆動ポジションから駆動ポジションに切り換えるマニュアルシフトと、モータ・ジェネレータを非力行状態から力行状態に切り換える制御とが並行しておこなわれ、マニュアルシフトショックが発生する可能性がある。しかしながら、上記公報には、マニュアルシフト後のアクセル操作量に応じたモータ・ジェネレータのトルクの制御に関する記載はあるが、マニュアルシフト時のモータ・ジェネレータのトルクの制御については記載が無く、この点で未だ改善の余地が残されていた。
【0005】この発明は上記課題を解決するためのもので、電動機を非力行状態から力行状態に切り換える場合のショックを抑制することの可能な車両用電動機の制御装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記の目的を達成するためこの発明は、車輪に対してトルクを伝達する力行状態と車輪に対してトルクを伝達しない非力行状態とに切り換え可能な電動機と、この電動機と前記車輪との間に設けられ、かつ、係合・解放可能なクラッチを有するトルク伝達機構とを備えた車両用電動機の制御装置において、前記電動機を非力行状態から力行状態に切り換える場合は、前記クラッチの係合・解放状態に基づいて、前記電動機のトルクを制御する電動機制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0007】この発明によれば、電動機を非力行状態から力行状態に切り換える場合に、クラッチの係合・解放状態に基づいて電動機のトルクが制御される。
【0008】
【発明の実施の形態】つぎにこの発明を図面を参照して具体的に説明する。図2は、この発明を適用したハイブリッド車A1の基本的な構成を示している。ここに示す例は、エンジン1の出力側にモータ・ジェネレータ(MG)2が配置され、モータ・ジェネレータ2の出力側にトルクコンバータ(T/C)5を介して自動変速機6が配置されている。エンジン1は、燃料の燃焼によって動力を出力する形式の装置であり、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのほかに、液化石油ガスや天然ガスなどのガス燃料を燃焼させるエンジンなどがその例である。
【0009】図3は、エンジン1からトルクコンバータ5に至るパワートレーンの概略構成を示すブロック図であり、図4はエンジン1から自動変速機6に至るパワートレーンのスケルトン図である。エンジン1のクランクシャフト13にフライホイール3が連結されているとともに、このフライホイール3に制振機構(ダンパ)4が連結されている。また、エンジン1とモータ・ジェネレータ2との間には、係合・解放可能なクラッチ100が設けられている。
【0010】モータ・ジェネレータ2は、エンジン1とは異なる種類の動力源であり、電気的エネルギを回転運動などの運動エネルギに変換して出力することのできる電動機としての機能と、運動エネルギを電気的エネルギに変換する発電機としての機能(回生機能)とを有する。前記モータ・ジェネレータ2として、例えば永久磁石型同期モータが使用され、その出力側部材であるロータの回転角度を検出するためのレゾルバ7がモータ・ジェネレータ2と並列に配列されている。そして、レゾルバ7のロータもモータ・ジェネレータ2のロータと同様に、ダンパ4とトルクコンバータ5とを連結している部材もしくはトルクコンバータ5の入力側の部材に連結されている。
【0011】さらに、モータ・ジェネレータ2にはインバータ101を介してバッテリ102が接続され、モータ・ジェネレータ2およびインバータ101ならびにバッテリ102を制御するコントローラ103が設けられている。前記インバータ101は、バッテリ102の直流電流を3相交流電流に変換してモータ・ジェネレータ2に供給する一方、モータ・ジェネレータ2で発電された3相交流電流を直流電流に変換してバッテリ102に供給する3相ブリッジ回路を備えている。この3相ブリッジ回路は、例えば6個のパワートランジスタを電気的に接続して構成され、これらのパワートランジスタのオン・オフを切り換えることにより、モータ・ジェネレータ2とバッテリ102との間の電流の向きを切り換える。このようにして、3相交流電流と直流電流との相互の変換と、モータ・ジェネレータ2に印可される3相交流電流の周波数の調整と、モータ・ジェネレータ2に印可される3相交流電流の大きさの調整と、モータ・ジェネレータ2の回生制動トルクの大きさの調整とがおこなわれる。
【0012】そして、モータ・ジェネレータ2を電動機として機能させる場合は、バッテリ102からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ・ジェネレータ2に供給する。また、モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させる場合は、回転子の回転により発生した誘導電圧をインバータ101により直流電圧に変換してバッテリ102に充電する。さらに、コントローラ103は、バッテリ102からモータ・ジェネレータ2に供給される電流値、またはモータ・ジェネレータ2により発電される電流値を検出または制御する機能を備えている。また、コントローラ103は、モータ・ジェネレータ2の回転数を制御する機能と、バッテリ102の充電状態(SOC:state of charge)を検出および制御する機能とを備えている。上記のモータ・ジェネレータ2は、エンジン1を始動させる機能と、車輪104に伝達する動力を出力する機能と、車輪104から入力される運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有する。このモータ・ジェネレータ2によりエンジン1を始動させる場合はクラッチ100が係合される。また、公知のスタータモータ105が設けられており、このスタータモータ105によりエンジン1を始動させることも可能である。
【0013】一方、前記トルクコンバータ5は、フロントカバー33、ポンプインペラ35、タービンランナ48、ステータ35A、一方向クラッチ43、ロックアップクラッチ49などを有する公知の流体式トルク伝達装置である。また、前記自動変速機6は変速機入力軸44を有し、その先端部にハブ46が取り付けられている。そして、このハブ46に対して、タービンランナ48とロックアップクラッチ49とが連結されている。また、自動変速機6は、後述する歯車変速機部55と油圧制御部56とを備えており、歯車変速機部55から後方側に延びた出力軸57を介して動力を車輪104に伝達するようになっている。
【0014】さらに、油圧制御部56は、前記ロックアップクラッチ49の係合・解放の制御および変速制御ならびに摩擦係合装置の係合圧の制御をおこなうためのものであって、複数の電磁バルブや切り換えバルブならびに調圧バルブを備え、電磁バルブを電気的に制御することにより、上記の各制御を実行するように構成されている。なお、この油圧制御部56としては、従来知られている自動変速機用の油圧制御装置を採用することができる。
【0015】前記自動変速機6は後進段を含む複数の変速段を設定することができるように構成されている。その歯車変速機部55の一例を図4に示してある。ここに示す構成では、前進5段・後進1段の変速段を設定するように構成されている。すなわちここに示す自動変速機6は、トルクコンバータ5に続けて副変速部61と、主変速部62とを備えている。その副変速部61は、いわゆるオーバードライブ部であって1組のシングルピニオン型遊星歯車機構63によって構成され、キャリヤ64が前記変速機入力軸44に連結され、またこのキャリヤ64とサンギヤ65との間に一方向クラッチF0 と一体化クラッチC0 とが並列に配置されている。なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ65がキャリヤ64に対して相対的に正回転(変速機入力軸44の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ65の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部61の出力要素であるリングギヤ66が、主変速部62の入力要素である中間軸67に接続されている。
【0016】したがって副変速部61は、多板クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構63の全体が一体となって回転するため、中間軸67が変速機入力軸44と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ65の回転を止めた状態では、リングギヤ66が変速機入力軸44に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0017】他方、主変速部62は三組の遊星歯車機構70,80,90を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構70のサンギヤ71と第2遊星歯車機構80のサンギヤ81とが互いに一体的に連結され、また第1遊星歯車機構70のリングギヤ73と第2遊星歯車機構80のキャリヤ82と第3遊星歯車機構90のキャリヤ92との三者が連結され、かつそのキャリヤ92に出力軸57が連結されている。さらに第2遊星歯車機構80のリングギヤ83が第3遊星歯車機構90のサンギヤ91に連結されている。
【0018】この主変速部62の歯車列では後進段と前進側の四つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されている第2遊星歯車機構80のリングギヤ83および第3遊星歯車機構90のサンギヤ91と中間軸67との間に第1クラッチC1 が設けられ、また互いに連結された第1遊星歯車機構70のサンギヤ71および第2遊星歯車機構80のサンギヤ81と中間軸67との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0019】つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構70および第2遊星歯車機構80のサンギヤ71,81の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ71,81(すなわち共通サンギヤ軸)とトランスミッションハウジング10との間には、第1一方向クラッチF1 と多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されており、その第1一方向クラッチF1 はサンギヤ71,81が逆回転(変速機入力軸44の回転方向とは反対方向の回転)しようとする際に係合するようになっている。多板ブレーキである第3ブレーキB3 は第1遊星歯車機構70のキャリヤ72とトランスミッションハウジング10との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構90のリングギヤ93の回転を止めるブレーキとして多板ブレーキである第4ブレーキB4 と第2一方向クラッチF2 とがトランスミッションハウジング10との間に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ93が逆回転しようとする際に係合するようになっている。
【0020】上述した各変速部61,62の回転部材のうち副変速部61のクラッチC0 の回転数を検出するタービン回転数センサ68と、出力軸57の回転数を検出する出力軸回転数(車速)センサ69とが設けられている。そして、出力軸57にはプロペラシャフト(図示せず)などの動力伝達装置が接続され、この動力伝達装置を介して動力が車輪104に伝達されるように構成されている。
【0021】上記の自動変速機6では、各クラッチやブレーキを図5の作動図表に示すように係合・解放することにより前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図5において○印は係合状態、空欄は解放状態、◎印はエンジンブレーキ時の係合状態、△印は係合するものの動力伝達に関係しないことをそれぞれ示す。
【0022】自動変速機6は、図2に示すシフトレバー106をマニュアル操作することにより、例えばP(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションを選択することが可能である。ここで、Pポジション、Nポジションが、トルクを車輪104に伝達することの不可能な非駆動ポジションに相当し、Rポジション、Dポジション、4ポジション、3ポジション、2ポジション、Lポジションが、トルクを車輪104に伝達することの可能な駆動ポジションに相当する。
【0023】そして、Dポジションは車速やアクセル開度などの車両の走行状態に基づいて前進第1速ないし第5速を設定するためのポジションであり、また4ポジションは、第1速ないし第4速、3ポジションは第1速ないし第3速、2ポジションは第1速および第2速、Lポジションは第1速をそれぞれ設定するためのポジションである。なお、3ポジションないしLポジションは、エンジンブレーキレンジを設定するポジションであり、それぞれのポジションで設定可能な変速段のうち最も高速側の変速段でエンジンブレーキを効かせるように構成されている。
【0024】さらに、油圧制御部56に対して油圧を供給する電動オイルポンプ107が設けられている。この電動オイルポンプ107は、ギヤポンプやベーンポンプなどのポンプとモータとを一体化した構成のものであって、油圧制御部56に接近した位置(例えばトルクコンバータ5の外周側)に配置されている。
【0025】上記のエンジン1、モータ・ジェネレータ2、油圧制御部56、クラッチ100、電動オイルポンプ107などの各装置は、車両の状態を示す各種の検出信号や、予め設定されているデータならびに制御パターンに基づいて制御される。例えば図6に示すように、マイクロコンピュータを主体とする総合制御装置(ECU)60に各種の信号を入力し、その入力された信号に基づく演算結果を制御信号として出力するようになっている。
【0026】この入力信号の例を挙げれば、ABS(アンチロックブレーキシステム)コンピュータからの信号、車両安定化制御(VSC:商標)コンピュータからの信号、エンジン回転数NE の信号、エンジン水温の信号、イグニッションスイッチからの信号、バッテリ102のSOC(State of Charge:充電状態)信号、ヘッドライトのオン・オフ信号、デフォッガのオン・オフ信号、エアコンのオン・オフ信号、車速信号、自動変速機6の作動油温の信号、シフトレバー106の操作を示すシフトポジション信号、サイドブレーキのオン・オフ信号、フットブレーキペダル108のオン・オフ信号、触媒(排気浄化触媒)温度信号、アクセルペダル109の操作量を示すアクセル開度の信号、カム角センサからの信号、スポーツシフト信号、車両加速度センサからの信号、モータ・ジェネレータ2の回生制動トルクを調整するための動力源ブレーキ力スイッチからの信号、タービン回転数NT センサ68からの信号、レゾルバ7の信号などである。
【0027】また、出力信号の例を挙げると、クラッチ100への制御信号、点火装置への制御信号、噴射(燃料の噴射)装置への制御信号、コントローラ103への信号、スタータモータ105への信号、油圧制御部56の自動変速機(AT)ソレノイドへの信号、油圧制御部56のATライン圧コントロールソレノイドへの信号、ABSアクチュエータへの信号、エアコン用コンプレッサなどの補機を制御する信号、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の駆動・停止をそれぞれ別個に表示する動力源インジケータへの信号、スポートモードインジケータへの信号、VSCアクチュエータへの信号、油圧制御部56のATロックアップコントロールバルブへの信号、電動オイルポンプ107に対する制御信号などである。
【0028】そして、アクセル開度、シフトポジション、車速、フットブレーキペダル108のオン・オフなどの信号が総合制御装置60に入力されると、これらの信号に対応するエンジン出力、モータ・ジェネレータ2の出力が演算され、総合制御装置60から制御信号が出力されて車両の駆動力が制御される。例えば、アクセル開度および車速をパラメータとするマップに基づいて、駆動力要求を演算するとともに、この駆動力要求の全部をエンジン1で発生させる駆動モードと、加速時などのように、駆動力要求の一部をエンジン1で発生させ、その不足分をモータ・ジェネレータ2の動力により補う駆動モードと、発進時などのように、エンジン効率の低い状態において、駆動力要求の全部をモータ・ジェネレータ2により発生させる駆動モードとを選択することが可能である。
【0029】また、総合制御装置60においては、フットブレーキペダル108の信号、車速などに基づいて車両に対する減速要求が演算され、その減速要求に対応して油圧ブレーキ装置(図示せず)により負担するべき制動力と、モータ・ジェネレータ2により負担するべき制動力(回生制動トルク)とが演算される。
【0030】ここで、実施形態の構成とこの発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、モータ・ジェネレータ2がこの発明の電動機に相当し、自動変速機6がこの発明のトルク伝達機構に相当する。
【0031】つぎに、シフトレバー106のマニュアルシフト時におけるモータ・ジェネレータ2の制御内容を、図1のフローチャートに基づいて説明する。まず、総合制御装置60に入力される信号が処理され(ステップ201)、シフトレバー106がPポジションまたはNポジションの非駆動ポジションに操作されているか否かが判断される(ステップ202)。ステップ202で肯定判断された場合は、モータ・ジェネレータ2からトルクを出力する制御がおこなわれないためリターンされる。
【0032】これに対して、シフトレバー106が、前記非駆動ポジションから駆動ポジション(例えばDポジション、Rポジション)にマニュアルシフトされて、車両が発進する可能性がある場合は、ステップ202で否定判断され、ついで、モータ・ジェネレータ2が、車輪104に対してトルクを伝達しない非力行状態(停止状態)から、車輪104に対してトルクを伝達する力行状態(駆動状態)に切り換えられるか否かが判断される(ステップ203)。
【0033】すなわち、Dポジションが選択されているとしても、車速が零であり、かつフットブレーキスイッチがオンされている場合は、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2がともに駆動を停止している。そこで、ステップ203においては、この状態から、DポジションまたはRポジションへの切り換え操作に対応して、モータ・ジェネレータ2を単独で駆動するモードが選択されたか否か、言い換えればモータ・ジェネレータ2のトルクに応じて、トルクコンバータ5の機能によるクリープ力が発生する状態にあるか否かを判断しているのである。なお、モータ・ジェネレータ2を単独で駆動するモードであるか否かは、車速およびアクセル開度をパラメータとするマップに基づいて判断される。
【0034】ステップ203で否定判断された場合は、マニュアルシフトショックの可能性がないためリターンされる。ステップ203で肯定判断された場合は、前進段へのマニュアルシフトであれば第1クラッチC1 が係合しているか否か、後進段へのマニュアルシフトであれば、第2クラッチC2 が係合しているか否かが判断される(ステップ204)。このステップ204における「係合」には、第1クラッチC1 または第2クラッチC2 の「係合過渡状態」は含まれない。
【0035】これに対して、第1クラッチC1 が係合された時はステップ204で肯定判断される。ついで、アクセルペダル109が踏み込まれているか否かが判断され(ステップ205)、ステップ205で否定判断された場合は、運転者による積極的な発進意図はなく、モータ・ジェネレータ2のトルクを急激に増加させると、出力軸57の出力トルクが急激に変化してマニュアルシフトショックが発生する可能性がある。そこで、モータ・ジェネレータ2のトルクを徐々に変化(増加)させる制御をおこなう(ステップ206)とともに、ロックアップクラッチ49をオン(係合)し(ステップ207)、リターンされる。
【0036】一方、NポジションまたはPポジションから、例えばDポジションに切り換えられた場合はステップ204で否定判断される。そして、第1クラッチC1 または第2クラッチC2 の係合処理を継続するとともに(ステップ208)、モータ・ジェネレータ2のトルクを速やかに増加する制御をおこなう(ステップ209)。このようにステップ208およびステップ209の制御をおこなった場合は、第1クラッチC1 または第2クラッチC2 の係合圧の制御によりモータ・ジェネレータ2のトルク変化が吸収されるため、車輪104に伝達される駆動トルクの急激な変化が抑制される。さらに、ロックアップクラッチ49を係合し(ステップ210)、リターンされる。
【0037】前記ステップ205で肯定判断された場合は、運転者が発進を意図していることになるため、マニュアルシフトショックの抑制機能よりも、モータ・ジェネレータ2のトルクの増加応答性を重視してステップ209に進む。なお、図1の制御例において、ステップ205の内容を、フットブレーキペダルが108のオン・オフを判断する内容に置換し、フットブレーキペダル108がオンされている(駆動要求がない)場合はステップ206に進み、フットブレーキペダル108がオフされている(駆動要求がある)場合はステップ209に進むようなルーチンを構成することも可能である。ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明する。すなわち、ステップ203,204,206,208,209がこの発明の電動機制御手段に相当する。
【0038】上記制御例に対応するタイムチャートの一例を、図7に基づいて説明する。まず、ステップ204およびステップ208,209,210に対応するシステムの状態を説明する。すなわち、モータ・ジェネレータ2の駆動指令が発生する以前は、第1クラッチC1 が実線で示すように非係合状態にあり、ロックアップクラッチ49がオフ(解放)され、かつ、モータ・ジェネレータ2のトルクが零に制御されている。
【0039】そして、時刻t1においてモータ・ジェネレータ2の駆動指令が発生すると、時刻t1から時刻t2に亘って、モータ・ジェネレータ2のトルクを、実線で示すように速やかに増加する制御がおこなわれる。また、時刻t2以降は第1クラッチC1 に作用する油圧を徐々に増加する制御がおこなわれ、モータ・ジェネレータ2のトルクがほぼ一定値に制御される。その後、時刻t5に到達する前に第1クラッチC1 の係合が完了し、ついで、時刻t6からロックアップクラッチ29の係合が開始されるとともに、モータ・ジェネレータ2のトルクを再度増加させる制御がおこなわれる。さらに、時刻t7でロックアップクラッチ29の係合が完了し、かつ、時刻t7以降はモータ・ジェネレータ2のトルクがほぼ一定値に制御される。
【0040】つぎに、ステップ204およびステップ205,206,207に対応するシステムの状態について説明する。すなわち、モータ・ジェネレータ2の駆動指令が発生する以前に、第1クラッチC1 が破線で示すように係合状態にあり、ロックアップクラッチ49がオフ(解放)され、かつ、モータ・ジェネレータ2のトルクが零に制御されている。
【0041】そして、時刻t1においてモータ・ジェネレータ2の駆動指令が発生すると、時刻t1から時刻t3に亘って、モータ・ジェネレータ2のトルクを、破線または二点鎖線で示すように、徐々に増加する制御がおこなわれる。すなわち、破線または二点鎖線で示すトルク増加特性の方が、実線で示すトルク増加特性に比べて、トルクの増加勾配(立ち上げ割合)が緩やかに設定されている。
【0042】図7においては、破線で示すモータ・ジェネレータ2の特性が、フットブレーキペダル108のオフ(踏み込まれていない)に対応し、二点鎖線で示すモータ・ジェネレータ2の特性が、フットブレーキペダル108のオン(踏み込まれている)に対応する。具体的には、フットブレーキペダル108がオンされている場合よりも、フットブレーキペダル108がオフされている場合の方が、モータ・ジェネレータ2のトルクが緩やかに増加するような勾配に設定されている。なお、ステップ205において、アクセルペダル109の状態により駆動力要求を判断する場合は、モータ・ジェネレータ2のトルクの増加特性は、実線で示す特性よりも緩やかに増加される特性であればよい。
【0043】さらに、時刻t3から時刻t4に亘って、モータ・ジェネレータ2のトルクがほぼ一定値に制御される。その後、時刻t4からロックアップクラッチ29の係合が開始されるとともに、モータ・ジェネレータ2のトルクを再度増加させる制御がおこなわれる。さらに、時刻t5でロックアップクラッチ29の係合が完了し、かつ、時刻t5以降はモータ・ジェネレータ2のトルクがほぼ一定値に制御される。
【0044】以上のようにこの実施形態によれば、シフトレバー106が非駆動ポジションから駆動ポジションに切り換えられ、かつ、モータ・ジェネレータ2を非力行状態から力行状態に切り換える場合は、第1クラッチC1 ,第2クラッチC2 の係合・解放状態、または、アクセルペダル109あるいはフットブレーキペダル108の操作による駆動力要求の変化状態に基づいて、モータ・ジェネレータ2のトルクの変化状態が制御されている。このトルク変化状態には、トルクの変化量、変化速度、変化割合、変化率、変化勾配などの特性が含まれる。
【0045】具体的には、第1クラッチC1 ,第2クラッチC2 が係合され、かつ、アクセルペダル109が踏み込まれていない場合は、第1クラッチC1 ,第2クラッチC2 が係合されていない場合に比べて、モータ・ジェネレータ2のトルクを緩やかに増加する制御がおこなわれている。つまり、モータ・ジェネレータ2を非力行状態から力行状態に切り換える際に、第1クラッチC1 または第2クラッチC2 が係合されていない場合は、この第1クラッチC1 または第2クラッチC2 がの係合圧の制御により、車輪104に伝達されるトルクの急激な変化が抑制され、マニュアルシフトショックを防止することができる。
【0046】これに対して、モータ・ジェネレータ2を非力行状態から力行状態に切り換える際に、第1クラッチC1 または第2クラッチC2 が係合されている場合は、モータ・ジェネレータ2のトルク自体を徐々に増加させることにより、車輪104に伝達されるトルクの急激な変化が抑制され、マニュアルシフトショックを抑制することができる。
【0047】ここで、上記の実施形態に開示されたこの発明の特徴的な構成を記載すれば以下のとおりである。すなわち、車輪に動力を伝達する電動機と、この電動機と前記車輪との間に設けられ、かつ、係合・解放可能なクラッチを有するトルク伝達機構と、前記クラッチを制御することにより、前記電動機の動力を前記車輪に伝達する駆動ポジション、または前記電動機の動力を前記車輪に伝達しない非駆動ポジションを選択可能なシフト装置と、車両の乗員により操作される駆動力要求装置とを有し、この駆動力要求装置の操作状態に応じて前記電動機のトルクを制御することの可能な車両用電動機の制御装置において、前記シフト装置を非駆動ポジションから駆動ポジションに切り換える操作にともなって前記電動機のトルクを制御する場合に、前記駆動力要求装置の操作による駆動力要求の変化状態に基づいて、前記電動機のトルクの変化状態を制御する電動機制御手段を備えていることを特徴とする。ここで、シフト装置にはシフトレバーが含まれる。また、駆動力要求装置には、アクセルペダルとフットブレーキペダルとが含まれる。さらに、駆動力要求の変化状態には、変化量、変化速度、変化率、変化勾配が含まれる。
【0048】
【発明の効果】この発明によれば、電動機を非力行状態から力行状態に切り換える場合は、クラッチの係合・解放状態に基づいて電動機のトルクが制御される。したがって、例えば、シフト装置を非駆動ポジションから駆動ポジションに切り換える操作と、電動機を非力行状態から力行状態に切り換える制御とが並行しておこなわれる場合は、クラッチの係合・解放状態に応じて電動機のトルクを制御することにより、駆動トルクの急激な変化が抑制され、マニュアルシフトショックを回避することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成10年12月8日(1998.12.8)
【代理人】 【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 丈夫
【公開番号】 特開2000−175311(P2000−175311A)
【公開日】 平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願番号】 特願平10−349078