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【発明の名称】 電動車両の走行制御装置
【発明者】 【氏名】石田 好伸

【要約】 【課題】モータの駆動力の方向と車輪の現実の回転方向とが相異なる場合における電動車両の操作性を向上させる。

【解決手段】駆動力の方向と現実の駆動輪の回転方向とが相異なる場合において、速度増加中であって駆動力が減少すると認められる場合、及び、速度減少中であって駆動力が増加すると認められる場合にそれぞれ、変化量dFaを半減する処理(ステップ705,708)を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致せず、かつ、当該速度が増大していると判断する場合、前回出力された駆動力に対して、少なくとも駆動力の減少を抑制した新たな駆動力を前記モータに発生させる制御部とを備えたことを特徴とする電動車両の走行制御装置。
【請求項2】操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致せず、当該速度が増大しており、かつ、今回算出される駆動力が前回出力された駆動力より減少すると判断する場合、この減少割合を抑えた新たな駆動力、及び前回出力した駆動力よりも大きな値とした新たな駆動力のいずれか一方を前記モータに発生させる制御部とを備えたことを特徴とする電動車両の走行制御装置。
【請求項3】操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致せず、当該速度が減少しており、かつ、今回算出される駆動力が前回出力された駆動力より増大すると判断する場合、この増大割合を抑えた新たな駆動力、及び前回出力した駆動力よりも小さな値とした新たな駆動力のいずれか一方を前記モータに発生させる制御部とを備えたことを特徴とする電動車両の走行制御装置。
【請求項4】前回出力された駆動力から前記新たな駆動力への変化量は、所定の演算によって算出される駆動力の変化量を所定割合で低減したものであることを特徴とする請求項2又は3記載の電動車両の走行制御装置。
【請求項5】前記新たな駆動力は、前回出力された駆動力を維持したものであることを特徴とする請求項2又は3記載の電動車両の走行制御装置。
【請求項6】前記新たな駆動力は、前回出力された駆動力に対して正の所定値を加算したものであることを特徴とする請求項2記載の電動車両の走行制御装置。
【請求項7】前記新たな駆動力は、前回出力された駆動力に対して正の所定値を減算したものであることを特徴とする請求項3記載の電動車両の走行制御装置。
【請求項8】操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致しない場合において、当該速度が増大しており、かつ、今回算出される駆動力が前回出力された駆動力より減少すると判断するとき、この減少割合を抑えた新たな駆動力、及び前回出力した駆動力よりも大きな値とした新たな駆動力のいずれか一方を前記モータに発生させ、また、前記一致しない場合において、前記速度が減少しており、かつ、今回算出される駆動力が前回出力された駆動力より増大すると判断するとき、この増大割合を抑えた新たな駆動力、及び前回出力した駆動力よりも小さな値とした新たな駆動力のいずれか一方を前記モータに発生させる制御部とを備えたことを特徴とする電動車両の走行制御装置。
【請求項9】操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致せず、かつ、当該速度が正又は負のいずれか一方向に変化していると判断する場合、前回算出された駆動力に対する算出変化量をその逆符号方向に調整して得られる変化量に基づく駆動力を前記モータに発生させる制御部とを備えたことを特徴とする電動車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動車椅子等の電動車両における走行制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、特開平10−99378号公報に記載された従来の電動車両の走行制御装置によれば、電動車椅子における介護者用のハンドルに操作力検知手段が設けられており、介護者がこのハンドルに加えた操作力の方向及び大きさに基づいて、駆動部により所定の方向及び大きさの駆動力を発生させる。そして、この駆動力と、介護者の操作力とを合計した駆動力により、電動車椅子が推進される。また、特開平10−201792号にも、同様な走行制御装置を搭載した電動車椅子が示されている。上記のような電動車椅子は、例えば上り坂において介護者の操作力負担が軽減され、容易に車両を登坂させることができる。また、下り坂では、車両の進行方向と逆方向の操作力を加えることにより、駆動部において車輪の回転方向と逆方向に駆動力を発生させ、車両の速度を抑えようとする介護者の操作力負担が軽減される。なお、上記の操作力検知手段は介護者用のハンドルに設けられているが、車輪に設けられたハンドリムに操作力検知手段を設けた電動車椅子も知られている。このような電動車椅子では、搭乗者自身がハンドリムに加える操作力の方向及び大きさに基づいて、駆動部にて所定の方向及び大きさの駆動力を発生させる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の走行制御装置を搭載した電動車椅子において、下り坂では、例えば介護者はハンドルを引きながら電動車椅子を下降させる。ハンドルを引くことにより、モータに逆転方向の駆動力を発生させ、重力による加速を防止しながら電動車椅子を下降させる。しかし、速度が遅すぎると感じた場合、介護者はハンドルを引く力を緩め、逆転方向の駆動力を低下させる。このような場合、下り坂であることにより急速に速度が増大しやすい。急速に速度が増大すると、介護者は慌ててハンドルを強く引く。従って、急速に速度が落ちる。その結果、電動車椅子の挙動がぎくしゃくしたものとなる。このようなぎくしゃくした挙動を避けて、操作者が望む速度を安定的に維持した状態で車両を推進させるには、重力により車輪が降坂方向に回転しようとする力に対して、車輪を逆方向に回転させようとする駆動力を適切に与えなければならない。しかしながら、下り坂という不安定な状況で、適切な駆動力を適時に付与することは意外に困難である。また、左右の操作力が同一とは限らないので、左右の車輪の駆動力が大きく異なる場合もあり、極端に挙動が不安定になった場合には電動車椅子が蛇行を生じることもあり得る。
【0004】上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、モータの駆動力の方向と車輪の現実の回転方向が相異なる場合における電動車両の操作性を向上させる走行制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の電動車両の走行制御装置は、操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致せず、かつ、当該速度が増大していると判断する場合、前回出力された駆動力に対して、少なくとも駆動力の減少を抑制した新たな駆動力を前記モータに発生させる制御部とを備えたものである(請求項1)。
【0006】上記のように構成された電動車両の走行制御装置(請求項1)では、車輪の回転方向が駆動力の方向と一致せず、かつ、速度が増大していると判断する場合、制御部は、前回出力された駆動力に対して、少なくとも駆動力の減少を抑制した新たな駆動力(例えば減少割合を低下させた新たな駆動力、減少させずに前回と同じに維持した新たな駆動力、又は、前回よりむしろ増大させた新たな駆動力)をモータに発生させる。このように、駆動力の減少を抑制することにより、速度が増大している状態、すなわち車輪が進行方向に回転しようとする力が、車輪を逆方向に回転させようとする駆動力よりも上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が加速されることがない。これにより、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止される。
【0007】また、本発明の電動車両の走行制御装置は、操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致せず、当該速度が増大しており、かつ、今回算出される駆動力が前回出力された駆動力より減少すると判断する場合、この減少割合を抑えた新たな駆動力、及び前回出力した駆動力よりも大きな値とした新たな駆動力のいずれか一方を前記モータに発生させる制御部とを備えたものであってもよい(請求項2)。
【0008】上記のように構成された電動車両の走行制御装置(請求項2)では、車輪の回転方向が駆動力の方向と一致せず、速度が増大しており、かつ、駆動力が減少方向にあると判断する場合、制御部は、前回出力された駆動力に対して、減少割合を抑えた新たな駆動力、又は、前回より大きな新たな駆動力をモータに発生させる。これにより、速度が増大している状態、すなわち車輪が進行方向に回転しようとする力が、車輪を逆方向に回転させようとする駆動力よりも上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が加速されることがない。これにより、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止される。
【0009】また、本発明の電動車両の走行制御装置は、操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致せず、当該速度が減少しており、かつ、今回算出される駆動力が前回出力された駆動力より増大すると判断する場合、この増大割合を抑えた新たな駆動力、及び前回出力した駆動力よりも小さな値とした新たな駆動力のいずれか一方を前記モータに発生させる制御部とを備えたものであってもよい(請求項3)。
【0010】上記のように構成された電動車両の走行制御装置(請求項3)では、車輪の回転方向が駆動力の方向と一致せず、速度が減少しており、かつ、駆動力が増大方向にあると判断する場合、制御部は、前回出力された駆動力に対して、増大割合を抑えた新たな駆動力、又は、前回より小さな新たな駆動力をモータに発生させる。これにより、速度が減少している状態、すなわち車輪が進行方向に回転しようとする力よりも車輪を逆方向に回転させようとする駆動力が上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が減速されることがない。これにより、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止される。
【0011】また、上記電動車両の走行制御装置(請求項2又は3)において、前回出力された駆動力から新たな駆動力への変化量は、所定の演算によって算出される駆動力の変化量を所定割合で低減したものであってもよい(請求項4)。この場合、駆動力の変化量が所定割合に低減されるので、速度の増大又は減少のペースを抑えることができる。
【0012】また、上記電動車両の走行制御装置(請求項2又は3)において、新たな駆動力は、前回出力された駆動力を維持したものであってもよい(請求項5)。この場合、新たな駆動力は前回値に維持され、速度の増大又は減少が抑制される。
【0013】また、上記電動車両の走行制御装置(請求項2)において、新たな駆動力は、前回出力された駆動力に対して正の所定値を加算したものであってもよい(請求項6)。この場合、新たな駆動力は前回値より大きくなり、電動車両の速度の増大を抑えることができる。
【0014】また、上記電動車両の走行制御装置(請求項3)において、新たな駆動力は、前回出力された駆動力に対して正の所定値を減算したものであってもよい(請求項7)。この場合、新たな駆動力は前回値より小さくなり、電動車両の速度の減少を抑えることができる。
【0015】また、本発明の電動車両の走行制御装置は、操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致しない場合において、当該速度が増大しており、かつ、今回算出される駆動力が前回出力された駆動力より減少すると判断するとき、この減少割合を抑えた新たな駆動力、及び前回出力した駆動力よりも大きな値とした新たな駆動力のいずれか一方を前記モータに発生させ、また、前記一致しない場合において、前記速度が減少しており、かつ、今回算出される駆動力が前回出力された駆動力より増大すると判断するとき、この増大割合を抑えた新たな駆動力、及び前回出力した駆動力よりも小さな値とした新たな駆動力のいずれか一方を前記モータに発生させる制御部とを備えたものであってもよい(請求項8)。
【0016】上記のように構成された電動車両の走行制御装置(請求項8)では、車輪の回転方向が駆動力の方向と一致せず、速度が増大しており、かつ、駆動力が減少方向にあると判断する場合、制御部は、前回出力された駆動力に対して、減少割合を抑えた新たな駆動力、又は、前回より大きな新たな駆動力をモータに発生させる。これにより、速度が増大している状態、すなわち車輪が進行方向に回転しようとする力が、車輪を逆方向に回転させようとする駆動力よりも上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が加速されることがない。一方、車輪の回転方向が駆動力の方向と一致せず、速度が減少しており、かつ、駆動力が増大方向にあると判断する場合、制御部は、前回出力された駆動力に対して、増大割合を抑えた新たな駆動力、又は、前回より小さな新たな駆動力をモータに発生させる。これにより、速度が減少している状態、すなわち車輪を逆方向に回転させようとする駆動力が、車輪が進行方向に回転しようとする力よりも上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が減速されることがない。こうして、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止される。
【0017】また、本発明の電動車両の走行制御装置は、操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段と、前記操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を所定の演算により算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させるとともに、前記方向・速度検知手段によって検知された前記車輪の回転方向及び速度に基づいて、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致せず、かつ、当該速度が正又は負のいずれか一方向に変化していると判断する場合、前回算出された駆動力に対する算出変化量をその逆符号方向に調整して得られる変化量に基づく駆動力を前記モータに発生させる制御部とを備えたものであってもよい(請求項9)。
【0018】上記のように構成された電動車両の走行制御装置(請求項9)では、車輪の回転方向が駆動力の方向と一致せず、かつ、速度が変化していると判断する場合、制御部は、前回算出された駆動力に対する算出変化量をその逆符号方向に調整して得られる変化量に基づく駆動力を前記モータに発生させる。「前回算出された駆動力に対する算出変化量をその逆符号方向に調整して得られる変化量」とは、例えば算出変化量が正の値であれば、これを負の方向に調整したもの、すなわち、(1)減少させた正の値、(2)0にしたもの、(3)負の値にしたもの、のいずれかである。また、算出変化量が負の値であれば、これを正の方向に調整したもの、すなわち、(1)絶対値を減少させた負の値、(2)0にしたもの、(3)正の値にしたもの、のいずれかである。これにより、車輪の回転方向が駆動力の方向と一致せず、かつ、速度が変化(増大又は減少)している場合において、速度が変化している状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が加速又は減速されることがない。これにより、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止される。
【0019】また、本発明は、以下の構成を採用してもよく、この場合も、前記走行制御装置(請求項8)と同様の作用を得ることができる。すなわち、操作者により電動車両に与えられる操作力の方向と大きさとを検知する操作力検知手段と、この操作力検知手段によって検知された操作力に基づいて、必要な駆動力の大きさ及び方向を算出し、この駆動力を、前記車輪を駆動するモータに発生させる制御部とを備えた電動車両の走行制御装置において、前記電動車両における車輪の回転方向及び速度を検知する方向・速度検知手段を設ける。また、前記制御部は、前記操作力検知手段によって検知された操作力から設定値を減算した値に、任意の係数を乗算して駆動力の変化量を算出し、この変化量を前回出力した駆動力に加味して、所定の方向及び大きさとされた駆動力を算出するとともに、前記車輪の回転方向及び速度を検出し、当該回転方向が前記駆動力の方向と一致しているか否かを判断し、一致していないと判断すると、前記速度が増大しており、かつ、前記変化量が負であるとの判断で、この変化量を低減するか又は正の値とされた変化量を設定して、新たな駆動力を算出し、また、前記一致していないとの判断において、前記速度が減少しており、かつ、前記変化量が正であるとの判断で、この変化量を低減するか又は負の値とされた変化量を設定して、新たな駆動力を算出する。
【0020】
【発明の実施の形態】図6及び図7は、それぞれ、本発明の電動車両の走行制御装置を搭載した電動車椅子の側面図及び背面図である。図6及び図7において、電動車椅子の車体1は、複数のパイプ部材からなるフレーム2と、減速機構等を内蔵した駆動用の左右一対のモータ3とによって構成されている。一対の駆動輪4(図6は輪郭のみを略記)は各モータ3に取り付けられ、一対のキャスタ5は車体1の前部に取り付けられている。アームレスト6は、左右のフレーム2の上部に取り付けられており、その各々の内部に、モータ3を駆動するバッテリ(図示せず)が装着されている。車体1の両側面の、アームレスト6の下方には、モータ3を制御するための制御部7が設けられている。
【0021】車体1の後方最上部には、略水平に操作部(グリップ)8が設けられ、その下部にブレーキレバー9が取り付けられている。操作部8は内部に操作力検知部としての例えばポテンショメータを有しており、電動車椅子を押し引きする介護者の操作力を検出することができるようになっている(詳細後述)。なお、ポテンショメータに代えて、ストレインゲージを含むブリッジ回路を用いてもよい。また、介護者なしでも電動補助ができるタイプの電動車椅子では、駆動輪4のハンドリム10(図7)に操作力検知部が設けられ、この操作力検知部により、搭乗者がハンドリム10に与える操作力が検出される。上記ブレーキレバー9は、車体1の前方に設けられた他のブレーキレバー11とワイヤ12を介して連係しており、どちらか一方からのブレーキ操作により、機械的に駆動輪4を制動することができる。上記操作部8、制御部7、バッテリ及びモータ3は、ケーブル13、14及び15等によって相互に接続されている。
【0022】図8は、走行制御装置の電気回路接続図である。上記モータ3、駆動輪4、制御部7及び操作部8について、車体1の右側に設けられているものには符号にRを付けて表記し、車体1の左側に設けられているものには符号にLを付けて表記している。操作部8R及び8L内の操作力検知部については、それぞれ81R及び81Lとする。また、バッテリは、右側が16R、左側が16Lとする。図8において、右側の制御部7Rは、操作力検知部81R、バッテリ16R及びモータ3Rと接続されている。また、制御部7Rの表面にスイッチ17及び表示灯18が設けられている。充電器19はバッテリ16R及び16Lの充電時にのみ充電端子20に接続される。一方、左側の制御部7Lは、操作力検知部81L、バッテリ16L及びモータ3Lと接続されている。左右の制御部7R及び7Lは、ケーブル15を介して相互に接続されている。なお、図8におけるケーブル13〜15はそれぞれ、図6において示したものに相当する。
【0023】上記制御部7R内には、制御回路71、電源回路72及び駆動回路73が設けられており、相互に接続されている。また、制御回路71には設定部75が接続されている。一方、制御部7L内には駆動回路74が設けられている。制御部7R内の電源回路72には、バッテリ16Rから直流電圧が供給されるとともに、ケーブル15を介してバッテリ16Lからも直流電圧が供給される。電源回路72は、供給された直流電圧に基づいて、制御回路71並びに駆動回路73及び74に所定の電源電圧を供給する。電源回路72は、スイッチ17、表示灯18及び充電端子20とも接続されており、スイッチ17のオン操作によって各部への電源供給を開始し、表示灯18を点灯させる。
【0024】駆動回路73及び74は、例えば半導体スイッチング素子のブリッジ回路を含んでおり、電源回路72から供給された直流電圧を、制御回路71から供給されたPWM信号に基づいてスイッチングし、直流電圧の平均値を変化させてモータ3R及び3Lを駆動する。また、電気制動時における駆動回路73及び74は、モータ3R及び3Lが回転している状態で直流電圧の供給を停止するとともに、例えばPWM信号のHレベルの期間に各巻線端子を短絡し、Lレベルの期間に開放する。これにより、モータ3R及び3Lは、PWM信号のデューティ比に応じた発電制動を行う状態となる。
【0025】制御回路71は、CPU、メモリ、A/Dコンバータ等を含むものであり、操作力検知部81R及び81Lから入力される操作力に相当する操作力信号をディジタル値に変換した後、所定の処理を施す。操作力検知部81R及び81Lは、介護者が付与した押し引きの操作力をそれぞれ独立に検知して、操作力信号を発生させる。操作力検知部81R及び81Lはそれぞれ、操作部8R及び8Lが操作されていない中立位置を基点としてそこから前方又は後方に操作部8R及び8Lが操作されたとき、その操作力に従って出力値を変化させる。例えば、操作力が付与されていない状態の中立位置では、操作力信号は所定の値(通常、0でない値)である。前進方向への操作力が操作部8R及び8Lに付与されたときは、その操作力に応じて操作力信号の電圧値が上記所定の値から増大する。後退方向への操作力が操作部8R及び8Lに付与されたときは、その操作力に応じて操作力信号の電圧値は上記所定の値から減少する。
【0026】制御回路71は、上記のように変化する操作力信号から上記所定の値を減算したものを「操作力検知信号」として、図9に示すような「操作力」対「操作力検知信号」の特性を得る。すなわち、操作力が付与されていないとき操作力検知信号は0であり、前進方向(押し方向)の操作力が付与されたときは一定勾配で増大する正の値となり、後退方向(引き方向)の操作力が付与されたときは、上記一定勾配で負の方向に増大する値となる。従って、前進又は後退の識別は操作力検知信号の正負をもって、また、操作力の大小は操作力検知信号の絶対値によって検知することができる。こうして、操作力検知部81R及び81Lは、制御回路71と共に、「操作力検知手段」を構成している。上記のようにして得られた操作力検知信号を基に、モータ3R及び3Lの駆動又は制動が行われる。図9において、操作力の「+Fs」及び「−Fs」は、所定の設定値である。なお、操作部8R及び8Lに付与された操作力は、モータ3R及び3Lの発生する動力とは別に、それ自体が、それぞれ車体1を介して左右の駆動輪4R及び4Lに伝達され、人力による駆動力となる。
【0027】図8に示すように、モータ3R及び3Lの各々には、回転子の回転速度に応じた頻度でパルス信号を発生するパルス発生器21が複数個内蔵されている。パルス発生器21から出力されるパルス信号は、対応する駆動回路73及び74を介して、制御回路71に送られる。制御回路71は単位時間あたりのパルス数をカウントすることにより、モータ3R及び3Lの回転速度、すなわち、電動車椅子の速度を検知する。また、制御回路71は、複数個のパルス発生器21相互間におけるパルスの位相のずれを基に、モータ3R及び3Lの回転方向、すなわち、対応する左右の駆動輪4R及び4Lの回転方向を検知する。このように、パルス発生器21は、制御回路71と共に、駆動輪4(4R,4L)の回転方向と速度とを検出する「方向・速度検知手段」を構成している。なお、パルス発生器21の代わりに、モータ3R,3L又は駆動輪4R,4Lに付帯してタコジェネレータ等の速度センサを設けてもよい。この場合は、タコジェネレータの出力電圧により速度が、出力電圧の極性により回転方向が、それぞれ検出される。
【0028】次に、制御回路71の動作について説明する。制御回路71は、正常時には駆動モード、制動モード、及びオフモードのうち1つのモードを選択的に実行する。駆動モードは、操作力検知部81R及び81Lに与えられた操作力に基づいて電動車椅子を推進させるようにモータ3(3R,3L)を駆動するモードである。操作力が連続して押し方向であるときはモータ3が正転(前進)し、操作力が連続して引き方向であるときはモータ3が逆転(後退)する。左右のモータ3R及び3Lで回転方向が互いに逆であるときには、電動車椅子は旋回する。制動モードは、操作力が付与されなくなったとき、モータ3を制動するモードである。オフモードは、駆動モードから制動モードに移行する場合、又は逆に、制動モードから駆動モードに移行する場合に、モータ3の出力を停止させるモードである。
【0029】本発明は、上記駆動モードに関するものであるため、以下、駆動モードに関して詳細に説明する。図4は、制御回路71(図8)のCPU(以下、単にCPUという。)によって実行される駆動モードのメインルーチンを示すフローチャートである。このメインルーチンは所定のサンプリング時間ごとに実行される。まず、ステップS1においてCPUは、操作力検知部81R及び81Lに付与された操作力に対応して出力される操作力信号の値から、操作力が付与されていないときの操作力信号の値を減算する処理(入力値変換)を行う。この処理によって、操作力検知部81Rに対する操作力に対応する操作力検知信号FinRと、操作力検知部81Lに対する操作力に対応する操作力検知信号FinLとが得られる。また、CPUは、左右のモータ3R及び3L内のパルス発生器21から入力されるパルスをカウントして、右の駆動輪4Rの速度VelR及び左の駆動輪4Lの速度VelLを求める。
【0030】次に、CPUは、制御回路71から左右の駆動回路73及び74に供給される駆動力指令信号FoutR及びFoutL(モータ3R及び3Lが発生する駆動力に相当する。)について、FoutR=0又はFoutL=0が成り立つか否かを判断する(ステップS2)。この論理が成り立たないのは、既に左右の駆動力指令信号(0以外の)を出力中である場合であり、その場合は既に駆動力の方向が決まっているため、CPUはステップS4にジャンプする。駆動力指令信号FoutR及びFoutLのいずれか1つでも0であれば、CPUはステップS3に進む。ステップS3においてCPUは、駆動力指令信号が0である方の操作力検知信号FinL又はFinRの符号(正負)を参照して、対応するモータ3R又は3Lを正転させるのか、逆転させるのかを決定する。なお、駆動モードに入った初期の時点では、双方のモータ3R及び3Lについて、正転・逆転の決定が行われる。
【0031】次にCPUは、操作力の変動量を算出する(ステップS4)。具体的には、右の操作部8Rに対する操作力変動量をdFinRT、左の操作部8Lに対する操作力変動量をdFinLT、ステップの実行回数をtとして、下記の演算を行う。
dFinRT(t)=FinR(t)−FinR(t−1) ...(1) dFinLT(t)=FinL(t)−FinL(t−1) ...(2)すなわち、操作力変動量とは操作力検知信号の前回値から今回値への変動量である。なお、ノイズ等の急峻な変化を取り除くためには、上記(1),(2)式に換えて、下記の演算を行う。
dFinRT(t)={dFinRT(t−1)+(FinR(t)−FinR(t−1))}/2 ...(3) dFinLT(t)={dFinLT(t−1)+(FinL(t)−FinL(t−1))}/2 ...(4)すなわち、上記(3),(4)式による操作力変動量とは、操作力検知信号の前回値から今回値への変動量と、前回求めた操作力変動量との平均値であることを示している。
【0032】次に、CPUは上記各ステップにて求めた駆動力の方向と操作力変動量dFinRT(t),dFinLT(t)とを基に、パターンの決定を行う(ステップS5)。パターンとは、操作力検知信号Fin(FinR及びFinLの総称)に対する駆動力の変化量dFa(左右の変化量dFa_r及びdFa_lの総称)の特性であり、図5に示す(a)、(b)及び(c)の特性から選択される。図の(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、「負荷増加」、「負荷維持」及び「負荷減少」のパターンである(詳細後述)。図5において、横軸は操作力検知信号Finであり、符号は、正転時が正、逆転時が負である。一方、縦軸は駆動力の変化量dFaである。また、実線が正転を表し、点線が逆転を表している。Fsは、図9で示した設定値である。
【0033】上記駆動力の変化量dFaは、ステップの実行回数をtとして、前回出力した駆動力Fa(t−1)及び今回出力する駆動力Fa(t)との間で、以下の関係を有するものである。
Fa(t)=Fa(t−1)+dFa ...(5)すなわち、モータ3に発生させる駆動力Fa(t)は、変化量dFaの累積値として表される。従って、駆動力Faは変化量dFaが正のとき増大し、負のとき減少する。また、モータ3の回転方向は、駆動力Faが正のとき正転であり、負のとき逆転である。なお、実際には後のステップ(図4のS7,S9)において後述の速度補整及び直進補整が行われるため、上記駆動力Fa(t)は、最終的に出力されるものではないが、基本的な駆動力を示す値として取り扱うことができる。
【0034】図5の(a)に示す「負荷増加」パターンによれば、操作力検知信号FinがFsl以下の場合、変化量dFa=0であり、Fsl以上の場合、操作力検知信号Finの絶対値の増大に伴って勾配K1(正転)及びK2(逆転)の直線に沿って変化量dFaも増大する。従って、当該パターンは、以下の式で表される。
|Fin|≦Fslのとき、dFa=0 ...(6)|Fin|>Fslのとき、正転時 dFa=K1(Fin−Fsl) ...(7)逆転時 dFa=K2(−Fin−Fsl) ...(8)【0035】また、図5の(b)に示す「負荷維持」パターンは、操作力検知信号Finが|Fin|<Fsmのとき、及び、|Fin|>Fsのときの正転・逆転における勾配をそれぞれK3(>K1)及びK4(>K2)とすると、以下の式で表される。
|Fin|<Fsmのとき、 正転時 dFa=K3(Fin−Fsm) ...(9) 逆転時 dFa=K4(−Fin−Fsm) ...(10)Fsm≦|Fin|≦Fsのとき、dFa=0 ...(11)|Fin|>Fsのとき、 正転時 dFa=K3(Fin−Fs) ...(12) 逆転時 dFa=K4(−Fin−Fs) ...(13)【0036】また、図5の(c)に示す「負荷減少」パターンは、操作力検知信号Finが|Fin|<Fsのときの正転・逆転における勾配をそれぞれK1及びK2とすると、以下の式で表される。|Fin|<Fsのとき、正転時 dFa=K1(Fin−Fs) ...(14)逆転時 dFa=K2(−Fin−Fs) ...(15)|Fin|≧Fsのとき、dFa=0 ...(16)【0037】図2は、上記ステップS5におけるパターン決定のサブルーチン内容を示すフローチャートである。パターン決定は左右のモータ3R及び3Lのそれぞれについて行われる。ここでは、右のモータ3Rについてのみ説明するが、左のモータ3Lについても同様である。図2において、まずCPUは右の駆動輪4Rの駆動方向が正転か逆転かを判断し(ステップ501)、正転時はステップ502に進む。ステップ502でCPUは、操作力変動量dFinRTが正か否かを判断し、正の場合はステップ503に進む。従って、駆動輪4Rが正転していて、さらに正転方向に操作力が増している場合は、「正転で負荷増加」のパターン(図5の(a)の実線)に決定される。一方、ステップ502においてNOの場合、CPUはステップ504に進み、操作力変動量dFinRTが負か否かを判断する。ここで、操作力変動量dFinRTが負であれば、CPUはステップ505に進む。従って、駆動輪4Rが正転していて、操作力が減少した場合は、「正転で負荷減少」のパターン(図5の(c)の実線)に決定される。また、ステップ504においてNOの場合、CPUはステップ506に進む。従って、駆動輪4Rが正転していて、操作力が変動していない場合は、「正転で負荷維持」のパターン(図5の(b)の実線)に決定される。
【0038】一方、ステップ501において駆動輪4の駆動方向が逆転である場合、CPUはステップ507に進む。ステップ507でCPUは、操作力変動量dFinRTが負か否かを判断し、負の場合はステップ508に進む。従って、駆動輪4Rが逆転していて、さらに逆転方向に操作力が増している場合は、「逆転で負荷増加」のパターン(図5の(a)の点線)に決定される。一方、ステップ507においてNOの場合、CPUはステップ509に進み、操作力変動量dFinRTが正か否かを判断する。ここで、操作力変動量dFinRTが正であれば、CPUはステップ510に進む。従って、駆動輪4Rが逆転していて、操作力が減少した場合は、「逆転で負荷減少」のパターン(図5の(c)の点線)に決定される。また、ステップ509においてNOの場合、CPUはステップ511に進む。従って、駆動輪4Rが逆転していて、操作力が変動していない場合は、「逆転で負荷維持」のパターン(図5の(b)の点線)に決定される。
【0039】次に、CPUはメインルーチン(図4)に戻り、上記(6)〜(16)式に基づいて、左右のモータ3R及び3Lのそれぞれについての駆動力の変化量dFa_r及びdFa_lを算出する(ステップS6)。続いて、CPUは速度補整を行う(ステップS7)。図1は、この速度補整のサブルーチン内容を示すフローチャートである。速度補整は左右のモータ3R及び3Lのそれぞれについて行われる。ここでは、右のモータ3Rについてのみ説明するが、左のモータ3Lについても同様である。
【0040】図1において、CPUはまず、モータ3Rに発生させている駆動力の方向と、回転子の現実の回転方向とをチェックする(ステップ701)。次に、CPUは駆動力の方向と回転方向とが相異なるか否かを判断する(ステップ702)。同一である場合、CPUは速度補整を終了してメインルーチンに戻る。異なる場合には、CPUはステップ703に進み、メインルーチンのステップS1で取得した速度VelRを前回値と比較して、駆動輪4Rの速度が増大しているか否かを判断する。速度増大中である場合、CPUはステップ704に進み、駆動力の変化量dFa(dFa_r)の符号が負であるか否かを判断する。dFaの符号が負であることは、駆動力が前回値より減少することを意味する。dFaの符号が負であれば、CPUはステップ705に進み、dFaの値を1/2にして、メインルーチンに戻る。
【0041】上記ステップ703における判断結果がNOである場合、CPUはステップ706に進み、駆動輪4Rの速度が減少しているか否かを判断する。この判断結果がNOの場合とは、速度が一定のときであり、この場合は速度補整を終了してメインルーチンに戻る。速度減少中である場合には、CPUはステップ707に進み、駆動力の変化量dFaの符号が正であるか否かを判断する。dFaの符号が正であることは、駆動力が前回値より増大することを意味する。dFaの符号が正であれば、CPUはステップ708に進み、dFaの値を1/2にして、メインルーチンに戻る。
【0042】上記速度補整の意義は、以下の点にある。ステップ705が実行されるのは、モータ3R及び3Lの各々における駆動力の方向と、これに接続された駆動輪4(4R,4L)の実際の回転方向とが相異なり、速度が増大中で、しかも駆動力の変化量dFaがマイナスの場合である。これは例えば、下り坂で、介護者が操作部8を引き操作しながら電動車椅子を下降させている場合において、速度は増大傾向にあり、かつ、引き操作力は緩められつつある場合である。この場合、もし、引き操作力が緩められて急速に駆動力が低下したならば、重力に抗する力が失われて電動車椅子は急速に加速される。しかしながら、このような場合に、ステップ705の実行により変化量dFaが半減されることで、操作部8の実際の操作量(引き操作の戻し量)よりも駆動力の変化が小さくなり、駆動力の急速な低下は抑制される。従って、電動車椅子の急速な加速が防止される。これにより、操作力の不安定化を防止して、操作性を向上させることができる。
【0043】一方、ステップ708が実行されるのは、モータ3R及び3Lの各々における駆動力の方向と、これに接続された駆動輪4(4R,4L)の実際の回転方向とが相異なり、速度が減少中で、しかも駆動力の変化量dFaがプラスの場合である。これは例えば、下り坂で、介護者が操作部8を引き操作しながら電動車椅子を下降させている場合において、速度は減少傾向にあり、かつ、引き操作力は強められつつある場合である。この場合、もし、引き操作力が強められて急速に駆動力が増大したならば、重力に抗する力が増大して電動車椅子は急速に減速される。しかしながら、このような場合に、ステップ708の実行により変化量dFaが半減されることで、操作部8の実際の操作量(引き操作の増大量)よりも駆動力の変化が小さくなり、駆動力の急速な増大は抑制される。従って、電動車椅子の急速な減速を防止することができる。
【0044】図4に戻り、CPUは次にステップS8において、モータ3R及び3Lの駆動力が左右同一か否かを判断する。同一である場合、CPUは直進補整を行う(ステップS9)。ここで、直進補整とは、直進性を高めるための既知の補整方法である(例えば、特開平10−201792号公報参照)。直進補整の後、CPUはステップS10において駆動力の算出を行う。なお、左右の駆動力の方向が異なる場合は、電動車椅子を旋回させようとしている場合であるので、直進補整は必要としない。従ってこの場合、CPUは直進補整を省略して、ステップS10にジャンプする。
【0045】図3は、上記ステップS9の直進補整の内容と、続くステップS10における駆動力の算出との対応関係とを示した図である。図において、ar,bl,br及びalは所定の補整係数(0から1までの正の数)であり、設定部75(図8)から入力される。これらの補整係数と、右側における駆動力の変化量dFa_r及び左側における駆動力の変化量dFa_lとに基づいて、右側の補整変化量dFa_rw及び左側の補整変化量dFa_lwが算出される。すなわち、変化量dFa_rに補整係数arを乗じたものと、変化量dFa_lに補整係数brを乗じたものとの和が補整変化量dFa_rwである。また、変化量dFa_lに補整係数alを乗じたものと、変化量dFa_rに補整係数blを乗じたものとの和が補整変化量dFa_lwである。ステップS10において、右側での前回の駆動力Fa_r(t−1)と補整変化量dFa_rwとの和が次に出力される駆動力Fa_r(t)となる。また、左側での前回の駆動力Fa_l(t−1)と補整変化量dFa_lwとの和が次に出力される駆動力Fa_l(t)となる。
【0046】最後にCPUは、駆動力Fa_r(t)及びFa_l(t)をPWM信号に変換し、駆動力信号FoutR及びFoutLとして、それぞれ駆動回路73及び74(図8)に供給する(図4のステップS11)。
【0047】なお、上記実施形態における速度補整は、(1) 駆動力の方向と現実の駆動輪4の回転方向とが相異なる場合において、速度増大中であって駆動力が減少すると認められる場合、及び、(2) 駆動力の方向と現実の駆動輪4の回転方向とが相異なる場合において、速度減少中であって駆動力が増大すると認められる場合、にそれぞれ、変化量dFaを半減する処理(図1のステップ705,708)を行った。これにより、(1)の場合には駆動力の減少のペースを落とし、(2)の場合には駆動力の増大のペースを落としている。しかしながら、半減に限らず、必要に応じて1/2〜1/8程度の低減処理を行うことができる。また、(1)及び(2)に共通に、減少又は増大を停止して前回値を維持することもできる。さらに、(1)の場合には、前回出力した駆動力に所定値(正の値)を加算してむしろ駆動力を増大させ、(2)の場合には、前回出力した駆動力から所定値(正の値)を減算してむしろ駆動力を減少させる処理を行うこともできる。要するに、(1)の場合には、少なくとも駆動力の減少を抑制すること、(2)の場合には、少なくとも駆動力の増大を抑制すること、がそれぞれ必要である。また、上記(1)及び(2)の条件はそれぞれ下記(1')及び(2')のように緩和してもよい。
(1') 駆動力の方向と現実の駆動輪4の回転方向とが相異なる場合において、速度増大中である場合、及び、(2') 駆動力の方向と現実の駆動輪4の回転方向とが相異なる場合において、速度減少中である場合。このような緩和された条件の下では、駆動力の増減傾向が考慮されないため、操作力の変化に呼応した速度補整はできないが、加速・減速を抑制することで、操作力の不安定化を防止して、操作性を向上させることができる。
【0048】
【発明の効果】以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。請求項1の電動車両の走行制御装置によれば、速度が増大している状態、すなわち車輪が進行方向に回転しようとする力が、車輪を逆方向に回転させようとする駆動力よりも上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が加速されることがない。これにより、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止されるので、電動車両の操作性が向上する。
【0049】請求項2の電動車両の走行制御装置によれば、速度が増大している状態、すなわち車輪が進行方向に回転しようとする力が、車輪を逆方向に回転させようとする駆動力よりも上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が加速されることがない。これにより、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止されるので、電動車両の操作性が向上する。
【0050】請求項3の電動車両の走行制御装置によれば、速度が減少している状態、すなわち車輪を逆方向に回転させようとする駆動力が、車輪が進行方向に回転しようとする力よりも上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が減速されることがない。これにより、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止されるので、電動車両の操作性が向上する。
【0051】請求項4の電動車両の走行制御装置によれば、駆動力の変化量が所定割合に低減されることで、速度の増大又は減少のペースを抑えることができるので、その分、操作力の不安定さを低減して操作性を向上させることができる。
【0052】請求項5の電動車両の走行制御装置によれば、新たな駆動力は前回値に維持され、速度の増大又は減少が抑制されるので、その分、操作力の不安定さを低減して操作性を向上させることができる。
【0053】請求項6の電動車両の走行制御装置によれば、新たな駆動力は前回値より大きくなり、電動車両の速度の増大を抑えることができるので、操作力の不安定さを低減して操作性を向上させることができる。
【0054】請求項7の電動車両の走行制御装置によれば、新たな駆動力は前回値より小さくなり、電動車両の速度の減少を抑えることができるので、操作力の不安定さを低減して操作性を向上させることができる。
【0055】請求項8の電動車両の走行制御装置によれば、速度が増大している状態、すなわち車輪が進行方向に回転しようとする力が、車輪を逆方向に回転させようとする駆動力よりも上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が加速されることがない。また、速度が減少している状態、すなわち車輪を逆方向に回転させようとする駆動力が、車輪が進行方向に回転しようとする力よりも上回っている状態を、さらに加速的に発展させることがない。言い換えれば、急速に電動車両が減速されることがない。従って、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止されるので、電動車両の操作性が向上する。
【0056】請求項9の電動車両の走行制御装置によれば、速度が変化している状態を、さらに加速的に発展させることがないので、急速に電動車両が加速又は減速されることがない。従って、電動車両の速度変動は緩和され、操作力が不安定になることが防止されるので、電動車両の操作性が向上する。
【出願人】 【識別番号】000004019
【氏名又は名称】株式会社ナブコ
【出願日】 平成10年11月13日(1998.11.13)
【代理人】 【識別番号】100092705
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆文
【公開番号】 特開2000−152425(P2000−152425A)
【公開日】 平成12年5月30日(2000.5.30)
【出願番号】 特願平10−323659