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【発明の名称】 ハイブリッド車の制御装置
【発明者】 【氏名】新田 智昭

【氏名】田中 寿

【要約】 【課題】ハイブリッド車のエンジン制御系を含むエンジンの系統に異常が発生した場合にも、駆動輪への出力を制限しつつ、安全且つ確実に所定の目的地までの走行を可能とする。

【解決手段】エンジン制御系を含むエンジンの系統に異常が発生したとき、インジェクタ電源停止信号によってエンジンを停止させ(S162)、多重通信によりT/M_ECUへロックアップクラッチOFFの制御指令を与える(S164)。更に、異常時制御信号によってモータAコントローラを低速定回転の異常時制御に移行させ(S165)、インヒビタスイッチ及びアクセルペダルセンサの出力に基づき、多重通信によりモータBコントローラにトルク指令を与える(S166)。これにより、プラネタリギヤのリングギヤ側に結合された第2のモータの駆動力をキャリアから出力する際、サンギヤ側の第1のモータによって出力が制限され、異常発生時に過度な出力を抑えつつ確実に所定の目的地へ車両を安全に移動させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの出力軸とシングルピニオン式プラネタリギヤのサンギヤとの間に連結される第1のモータ、上記プラネタリギヤのリングギヤに連結される第2のモータ、上記プラネタリギヤのサンギヤとキャリアとリングギヤの何れか2つを結合自在な連結機構、及び、上記プラネタリギヤのキャリアに連結され、複数段あるいは無段階に切り換え可能な変速比に応じて上記プラネタリギヤと駆動輪との間で変速及びトルク増幅を行なう動力変換機構を備えたハイブリッド車の制御装置であって、上記ハイブリッド車の駆動系或いは制御系に異常が発生したか否かを診断する異常診断手段と、上記エンジンの系統に異常が発生したとき、上記エンジンの停止を指示する異常時エンジン停止手段と、上記エンジンの系統に異常が発生したとき、上記連結機構の開放を指示する異常時連結機構開放手段と、上記エンジンの系統に異常が発生したとき、上記第1のモータを定回転数制御に移行させる第1の異常時制御手段と、上記エンジンの系統に異常が発生したとき、上記第2のモータを運転操作に応じた定トルク制御に移行させる第2の異常時制御手段とを備えたことを特徴とするハイブリッド車の制御装置。
【請求項2】 上記エンジンの系統に異常が発生したとき、異常を警告する警告手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のハイブリッド車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンと2つのモータとを併用するハイブリッド車の制御装置に関し、より詳しくは駆動系或いは制御系に異常が発生した場合にも、所定の目的地までの走行を可能とするハイブリッド車の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車等の車両においては、低公害、省資源の観点からエンジンとモータとを併用するハイブリッド車が開発されており、このハイブリッド車では、発電用と動力源用との2つのモータを搭載することで動力エネルギーの回収効率向上と走行性能の確保とを図る技術が多く採用されている。
【0003】例えば、特開平9−46821号公報には、ディファレンシャルギヤ等の差動分配機構による動力分配機構を用いてエンジンの動力を発電機とモータ(駆動用モータ)とに分配し、エンジンの動力の一部で発電しながらモータを駆動して走行するハイブリッド車が開示されており、また、特開平9−100853号公報には、プラネタリギヤによってエンジンの動力を発電機とモータ(駆動用モータ)とに分配するハイブリッド車が開示されている。
【0004】しかしながら、上述の各先行技術においては、低速時の駆動力の大半を駆動用モータに依存するため、駆動用に大容量の大型のモータが必要となるばかりでなく、駆動輪で必要とするトルクに対する増幅機能を電力に依存するため、バッテリー容量が十分でない場合にも一定の走行性能を維持することのできる発電容量をもった発電機が要求されることになり、コスト増の要因となる。
【0005】また、車両においてはモータ(発電機)の回転制御範囲を超えるような出力軸回転数の変化があるため、エンジン出力を発電機と駆動用モータとに分配するだけでは、駆動輪からの要求駆動力に対し、必ずしもエンジン及びモータの制御を十分に最適化できるとは限らない。
【0006】このため、本出願人は、先に、特願平10−4080号において、エンジンの出力軸とシングルピニオン式プラネタリギヤのサンギヤとの間に連結される第1のモータ、上記プラネタリギヤのリングギヤに連結される第2のモータ、上記プラネタリギヤのサンギヤとキャリアとリングギヤの何れか2つを結合自在なロックアップクラッチ等の連結機構、及び、上記プラネタリギヤのキャリアに連結され、複数段あるいは無段階に切り換え可能な変速比に応じて上記プラネタリギヤと駆動輪との間で変速及びトルク増幅を行なう無段変速機等の動力変換機構を備えたハイブリッド車を提案しており、このハイブリッド車では、比較的低出力の2つのモータを用いて駆動力の確保と動力エネルギーの回収効率向上を達成するとともに、駆動輪からの要求駆動力に対してエンジン及びモータ制御の最適化を実現することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先に本出願人が提案したハイブリッド車では、駆動輪からの要求駆動力に対してエンジン及び2つのモータを最適に制御するため、駆動系或いは制御系に異常が発生した場合、異常個所によっては、駆動力のバランスがくずれ、過剰な出力が駆動輪側に伝達される可能性があり、また、正常なモータ或いはエンジンに過大な負担が掛かってしまう。
【0008】例えば、エンジン或いはエンジン制御系に異常が発生し、エンジン回転数が過度に上昇した場合、通常の制御を続行すると、エンジンからの過剰な出力が駆動輪側に伝達される可能性があり、また、エンジン出力が低下した場合、エンジン側の第1のモータに過大な負担が掛かり、他の正常な部位に故障を誘発して走行困難となる虞がある。
【0009】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ハイブリッド車のエンジン制御系を含むエンジンの系統に異常が発生した場合にも、駆動輪への出力を制限しつつ、安全且つ確実に所定の目的地までの走行を可能とするハイブリッド車の制御装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エンジンの出力軸とシングルピニオン式プラネタリギヤのサンギヤとの間に連結される第1のモータ、上記プラネタリギヤのリングギヤに連結される第2のモータ、上記プラネタリギヤのサンギヤとキャリアとリングギヤの何れか2つを結合自在な連結機構、及び、上記プラネタリギヤのキャリアに連結され、複数段あるいは無段階に切り換え可能な変速比に応じて上記プラネタリギヤと駆動輪との間で変速及びトルク増幅を行なう動力変換機構を備えたハイブリッド車の制御装置であって、図1の基本構成図に示すように、上記ハイブリッド車の駆動系或いは制御系に異常が発生したか否かを診断する異常診断手段と、上記エンジンの系統に異常が発生したとき、上記エンジンの停止を指示する異常時エンジン停止手段と、上記エンジンの系統に異常が発生したとき、上記連結機構の開放を指示する異常時連結機構開放手段と、上記エンジンの系統に異常が発生したとき、上記第1のモータを定回転数制御に移行させる第1の異常時制御手段と、上記エンジンの系統に異常が発生したとき、上記第2のモータを運転操作に応じた定トルク制御に移行させる第2の異常時制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記エンジンの系統に異常が発生したとき、異常を警告する警告手段を更に備えたことを特徴とする。
【0012】すなわち、請求項1記載の発明では、ハイブリッド車の駆動系或いは制御系に異常が発生したか否かを診断し、その結果、エンジンの系統に異常が発生したときには、エンジンを停止させてプラネタリギヤのサンギヤとキャリアとリングギヤの何れか2つを結合する連結機構の開放を指示して結合を解除させ、サンギヤ側の第1のモータを定回転数制御に移行させると共に、リングギヤ側の第2のモータを運転操作に応じた定トルク制御に移行させることで、異常発生時の駆動輪への出力を制限しつつ、安全且つ確実な走行を可能とする。
【0013】この場合、請求項2に記載したように、異常を警告することで運転者の注意を喚起することが望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図2〜図23は本発明の実施の一形態に係わり、図2〜図4はHEV_ECUによるフェールセーフ処理メインルーチンを示すフローチャート、図5は停止制御(1)サブルーチンのフローチャート、図6は異常時制御(1)サブルーチンのフローチャート、図7は異常時制御(2)サブルーチンのフローチャート、図8はモータA制御指令ルーチンのフローチャート、図9はT/M制御指令ルーチンのフローチャート、図10は異常時制御(3)サブルーチンのフローチャート、図11は異常時制御(5)サブルーチンのフローチャート、図12は異常時制御(6)サブルーチンのフローチャート、図13及び図14はE/G制御指令ルーチンのフローチャート、図15は異常時制御(7)サブルーチンのフローチャート、図16は異常時制御(8)サブルーチンのフローチャート、図17はE/G・モータA制御指令ルーチンのフローチャート、図18はT/M_ECUによるフェールセーフ処理メインルーチンを示すフローチャート、図19は停止制御(2)サブルーチンのフローチャート、図20は異常時制御(4)サブルーチンのフローチャート、図21は駆動制御系の構成を示す説明図、図22はHEV_ECUを中心とする制御信号の流れを示す説明図、図23はフェールセーフシステムの概念図である。
【0015】本発明におけるハイブリッド車は、エンジンとモータとを併用する車両であり、図21に示すように、エンジン1と、エンジン1の起動及び発電・動力アシストを担うモータA(第1のモータ)と、エンジン1の出力軸1aにモータAを介して連結されるプラネタリギヤユニット3と、このプラネタリギヤユニット3の機能を制御し、発進・後進時の駆動力源になるとともに減速エネルギーの回収を担うモータB(第2のモータ)と、変速及びトルク増幅を行なって走行時の動力変換機能を担う動力変換機構4とを基本構成とする駆動系を備えている。
【0016】詳細には、プラネタリギヤユニット3は、サンギヤ3a、このサンギヤ3aに噛合するピニオンを回転自在に支持するキャリア3b、ピニオンと噛合するリングギヤ3cを有するシングルピニオン式のプラネタリギヤであり、サンギヤ3aとキャリア3bとリングギヤ3cのうち、本形態ではサンギヤ3aとキャリア3bとが連結機構としてのロックアップクラッチ2によって結合自在に形成されている。
【0017】また、動力変換機構4としては、歯車列を組み合わせた変速機や流体トルクコンバータを用いた変速機等を用いることが可能であるが、入力軸4aに軸支されるプライマリプーリ4bと出力軸4cに軸支されるセカンダリプーリ4dとの間に駆動ベルト4eを巻装してなるベルト式無段変速機(CVT)を採用することが望ましく、本形態においては、以下、動力変換機構4をCVT4として説明する。
【0018】すなわち、本形態におけるハイブリッド車の駆動系では、サンギヤ3aとキャリア3bとの間にロックアップクラッチ2を介装したプラネタリギヤユニット3がエンジン1の出力軸1aとCVT4の入力軸4aとの間に配置されており、プラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aがエンジン1の出力軸1aに一方のモータAを介して結合されるとともにキャリア3bがCVT4の入力軸4aに結合され、リングギヤ3cに他方のモータBが連結されている。そして、CVT4の出力軸4cに減速歯車列5を介してデファレンシャル機構6が連設され、このデファレンシャル機構6に駆動軸7を介して前輪或いは後輪の駆動輪8が連設されている。
【0019】この場合、前述したようにエンジン1及びモータAをプラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aへ結合するとともにリングギヤ3cにモータBを結合してキャリア3bから出力を得るようにし、さらに、キャリア3bからの出力をCVT4によって変速及びトルク増幅して駆動輪8に伝達するようにしているため、2つのモータA,Bは発電と駆動力供給との両方に使用することができ、比較的小出力のモータを使用することができる。
【0020】また、走行条件に応じてロックアップクラッチ2によりプラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aとキャリア3bとを結合することで、間に2つのモータA,Bが配置された、エンジン1からCVT4に至るエンジン直結の駆動軸を形成することができ、効率よくCVT4に駆動力を伝達し、或いは駆動輪8側からの制動力を利用することができる。
【0021】本形態では、エンジン1と2つのモータA,Bからなるハイブリッド車の走行パターンは、トランスミッション入力軸(4a)から見た場合、以下に示す3つの基本パターンに大別することができる。
【0022】(1)シリーズ・パラレル型走行要求駆動力が小さいとき、ロックアップクラッチ2を開放し、エンジン1によってモータAを発電機として駆動し、モータBで走行する。このとき、エンジン1の駆動力の一部がプラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aに入力され、リングギヤ3cのモータBの駆動力と合成されてキャリア3bから出力される。
【0023】(2)パラレル型走行要求駆動力が大きいとき、ロックアップクラッチ2を締結してプラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aとキャリア3bとを結合し、エンジン1の駆動力にリングギヤ3cからモータBの駆動力を加算してキャリア3bから出力し、エンジン1とモータBとの双方のトルクを用いて走行する。
【0024】(3)制動力回生減速時、ABSと協調しながらモータBで制動力を回生する。すなわち、ABS非作動時には、モータBに所定のトルク指令を与えて回生ブレーキをかけるが、ABS作動時には、モータBコントローラ22にトルク0指令を与えてモータBによる回生ブレーキを解除し、制御性の悪化を防止する。
【0025】尚、ロックアップクラッチ2の結合・開放時のプラネタリギヤユニット3を介したエンジン1及びモータA,Bのトルク伝達や発電による電気の流れについては、本出願人が先に提出した特願平10−4080号に詳述されている。
【0026】次に、ハイブリッド車の走行制御を行う制御系(ハイブリッド制御システム)について説明する。本形態におけるハイブリッド制御システムは、7つの電子制御ユニット(ECU)を多重通信系で結合した構成となっており、各ECUがマイクロコンピュータとマイクロコンピュータによって制御される機能回路とから構成されている。
【0027】各ECUを結合する多重通信系としては、高速通信に対応可能な通信ネットワークを採用することが望ましく、例えば、車両の通信ネットワークとしてISOの標準プロトコルの一つであるCAN(Controller Area Network)等を採用することができる。
【0028】具体的には、システム全体を統括するハイブリッドECU(HEV_ECU)20を中心とし、モータAを駆動制御するモータAコントローラ21、モータBを駆動制御するモータBコントローラ22、エンジン1を制御するエンジンECU(E/G_ECU)23、ロックアップクラッチ2及びCVT4の制御を行うトランスミッションECU(T/M_ECU)24、バッテリ10の電力管理を行うバッテリマネージメントユニット(BAT_MU)25が第1の多重通信ライン30でHEV_ECU20に結合され、ブレーキ制御を行うブレーキECU(BRK_ECU)26が第2の多重通信ライン31でHEV_ECU20に結合されている。
【0029】HEV_ECU20は、ハイブリッド制御システム全体の制御を行うものであり、ドライバの運転操作状況を検出するセンサ・スイッチ類、例えば、図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ(APS)11、図示しないブレーキペダルの踏み込みによってONするブレーキスイッチ12、変速機のセレクト機構部13の操作位置がPレンジ又はNレンジのときにONし、Dレンジ,Rレンジ等の走行レンジにセットされているときにOFFするインヒビタスイッチ14等が接続されている。
【0030】そして、HEV_ECU20では、各センサ・スイッチ類からの信号や各ECUから送信されたデータに基づいて必要な車両駆動トルクを演算して駆動系のトルク配分を決定し、図22に示すように、多重通信によって各ECUに制御指令を送信する。
【0031】尚、HEV_ECU20には、車速、エンジン回転数、バッテリ充電状態等の車両の運転状態を表示する各種メータ類や、異常発生時に運転者に警告するための警告手段としてのウォーニングランプ等からなる表示器27が接続されている。この表示器27は、T/M_ECU24にも接続され、後述するように、HEV_ECU20に異常が発生したとき、T/M_ECU24によって異常表示がなされる。
【0032】一方、モータAコントローラ21は、モータAを駆動するためのインバータを備えるものであり、基本的に、HEV_ECU20から多重通信によって送信されるサーボON/OFF指令や回転数指令によってモータAの定回転数制御を行う。また、モータAコントローラ21からは、HEV_ECU20に対し、モータAのトルク、回転数、及び電流値等をフィードバックして送信し、更に、トルク制限要求や電圧値等のデータを送信する。
【0033】モータBコントローラ22は、モータBを駆動するためのインバータを備えるものであり、基本的に、HEV_ECU20から多重通信によって送信されるサーボON/OFF(正転、逆転を含む)指令やトルク指令(力行、ABS作動時のトルク0を含む回生)によってモータBの定トルク制御を行う。また、モータBコントローラ22からは、HEV_ECU20に対し、モータBのトルク、回転数、及び電流値等をフィードバックして送信し、更に、電圧値等のデータを送信する。
【0034】E/G_ECU23は、基本的にエンジン1のトルク制御を行うものであり、HEV_ECU20から多重通信によって送信される正負のトルク指令、燃料カット指令、エアコンON/OFF許可指令等の制御指令、及び、実トルクフィードバックデータ、車速、インヒビタスイッチ14による変速セレクト位置(P,Nレンジ等)、APS11の信号によるアクセル全開データやアクセル全閉データ、ブレーキスイッチ12のON,OFF状態、ABS作動状態等に基づいて、図示しないインジェクタからの燃料噴射量、ETC(電動スロットル弁)によるスロットル開度、A/C(エアコン)等の補機類のパワー補正学習、燃料カット等を制御する。
【0035】また、E/G_ECU23では、HEV_ECU20に対し、エンジン1の制御トルク値、燃料カットの実施、燃料噴射量に対する全開増量補正の実施、エアコンのON,OFF状態、図示しないアイドルスイッチによるスロットル弁全閉データ等をHEV_ECU20にフィードバックして送信すると共に、エンジン1の暖機要求等を送信する。
【0036】T/M_ECU24は、HEV_ECU20から多重通信によって送信される目標プライマリ回転数、CVT入力トルク指示、ロックアップ要求等の制御指令、及び、E/G回転数、アクセル開度、インヒビタスイッチ14による変速セレクト位置、ブレーキスイッチ12のON,OFF状態、エアコン切替許可、ABS作動状態、アイドルスイッチによるエンジン1のスロットル弁全閉データ等の情報に基づいて、ロックアップクラッチ2の締結・開放を制御すると共にCVT4の変速比を制御する。
【0037】また、T/M_ECU24からは、HEV_ECU20に対し、車速、入力制限トルク、プライマリ回転数、セカンダリ回転数、ロックアップ完了、インヒビタスイッチ14に対応する変速状態等のデータをフィードバックして送信すると共に、CVT4の油量をアップさせるためのE/G回転数アップ要求、低温始動要求等を送信する。
【0038】BAT_MU25は、いわゆる電力管理ユニットであり、バッテリ10を管理する上での各種制御、すなわち、バッテリ10の充放電制御、ファン制御、外部充電制御等を行い、バッテリ10の残存容量、電圧、電流制限値等のデータや外部充電中を示すデータを多重通信によってHEV_ECU20に送信する。また、外部充電を行う場合には、コンタクタ9を切り換えてバッテリ10とモータAコントローラ21及びモータBコントローラ22とを切り離す。
【0039】BRK_ECU26は、HEV_ECU20から多重通信によって送信される回生可能量、回生トルクフィードバック等の情報に基づいて、必要な制動力を演算し、ブレーキ系統の油圧を制御するものであり、HEV_ECU20に対し、回生量指令(トルク指令)、車速、油圧、ABS作動状態等をフィードバックして送信する。
【0040】以上のハイブリッド制御システムにおいては、異常発生に対処するため、多重通信系を介した異常監視及び異常発生時の処理に加え、多重通信系とは別系統の異常監視系及び異常発生時の処理のための信号系を備えており、HEV_ECU20を中心としたフェールセーフシステムによって、本発明に係わる異常診断手段、異常時エンジン停止手段、異常時連結機構開放手段、第1の異常時制御手段、第2の異常時制御手段の機能を実現する。そして、異常発生時、走行不可のときには車両を安全に停止させ、また、走行可能なときには、多重通信系及び多重通信系とは別系統の信号系を併用して駆動系の出力制限を行って必要最低限の走行性を確保する。
【0041】多重通信系を介した異常監視は、主として、各ECUの自己診断機能による診断結果をシステムを統括するHEV_ECU20で集中的に管理することで行われる。各ECUの自己診断機能としては、ウォッチドッグタイマによるECU自体の診断に加え、センサの出力値そのものの監視による断線や短絡発生の診断、制御データとセンサ出力値との整合性のチェック、アクチュエータへの印加電圧や出力電流値によるアクチュエータ系の断線や短絡発生の診断等がある。
【0042】例えば、モータAコントローラ21,22の自己診断では、各々に備えたウォッチドッグタイマによるモータA制御システム、モータB制御システム自体の異常検出に加え、モータA,Bの駆動電流の検出値等からモータA,Bやセンサ系の異常を検出することが可能である。
【0043】また、E/G_ECU23の自己診断では、自己のウォッチドッグタイマによるエンジン制御システム自体の異常検出に加え、例えば、電動スロットル弁の制御値とセンサによって検出した実スロットル開度との整合性、HEV_ECU20から受け取ったAPS11のアクセル開度データに基づくエンジン制御値と実スロットル開度や実エンジン回転数との整合性等により、センサ系やアクチュエータ系の異常を検出することが可能である。
【0044】また、T/M_ECU24の自己診断では、自己のウォッチドッグタイマによる変速制御システム自体の異常検出に加え、例えば、プライマリプーリ4bの回転数を検出するセンサの出力値とセカンダリプーリ4dの回転数を検出するセンサの出力値とに基づき算出される実変速比と、CVT4に対する変速比制御値との整合性等から、変速比制御弁等の異常や回転数を検出するセンサの異常等を検出することが可能である。
【0045】また、BAT_MU25の自己診断では、自己のウォッチドッグタイマによるバッテリ管理システム自体の異常検出に加え、例えば、バッテリ10の電圧を検出するセンサの出力値やバッテリ10からの出力電流を検出するセンサからの出力値等に基づいて、バッテリ10の異常やコンタクタ9の異常を検出することが可能である。
【0046】さらに、BRK_ECU26の自己診断では、自己のウォッチドッグタイマによるブレーキ制御システム自体の異常検出に加え、例えば、ブレーキ系統の油圧を検出するセンサの出力値や車輪速を検出するセンサの出力値等に基づいて、油圧制御弁や、その他のブレーキアクチュエータの異常を検出することが可能である。
【0047】HEV_ECU20では、各ECUでの自己診断によって異常が検出され、多重通信によって異常通達を受けたとき、或いは、所定のECUからの定期的な通信が実行されないとき、或いは、多重通信によって各ECUに送信した制御指令と各ECUからフィードバックされた制御データとが整合しないとき等には、そのECUが異常であるとして他のECUに異常発生を通達し、後述する停止制御や異常時制御によって各ECUの動作を規制すると共に、表示器27に異常発生を表示して運転者に故障発生を知らせる。
【0048】例えば、多重通信系としてCANを採用する場合、各ECUが制御指令やフィードバックを行うため一定時間毎に送信されるデータフレームとは別に、各ECUが制御異常を知らせるためのデータフレームを用い、メッセージの優先順位に対応し、且つメッセージの内容を識別するためのアイデンティファイアに続き、エラー発生を示すエラーフラグとエラー内容を示すエラー番号とを有するデータフィールドを送信することで、多重通信系を介した異常通達を行う。
【0049】この異常発生を知らせるためのデータフレームは、各ECUからの異常発生時の送信、すなわちランダム周期での送信の他、システム始動時及び定期的なシステム診断時にHEV_ECU20から各ECUの自己診断結果を要求するリモートフレームに応答して、各ECUから送信される。
【0050】一方、多重通信系とは別系統の信号系を併用した異常監視は、主として、制御量を決定するためのパラメータを検出するセンサ類やアクチュエータへの制御出力を検出するセンサ類を対象として行う。
【0051】本形態においては、図23に示すように、エンジン1の電動スロットル弁の開度を検出するETCスロットルセンサ15の信号をE/G_ECU23及びHEV_ECU20の双方に入力し、E/G_ECU23とHEV_ECU20との双方で制御データとETCスロットルセンサ15の出力値との整合性をチェックして異常を監視する。
【0052】例えば、E/G_ECU23では、自己診断によりAPS11の出力値とETCスロットルセンサ15の出力値との整合性をチェックし、アクセルペダルを踏み込んだにも拘わらずスロットル弁が逆向きに作動した等の異常を検出する。また、HEV_ECU20では、E/G_ECU23から多重通信系を介して受信したアイドルスイッチによるスロットル弁全閉データに対し、ETCスロットルセンサ15の出力値が整合しているか否かをチェックし、アイドルスイッチ或いはAPS11の異常、さらには、電動スロットル弁の作動異常等を検出する。
【0053】また、コンタクタ9からモータAコントローラ21への電力ライン32に設けた電流センサ16の信号をモータAコントローラ21及びHEV_ECU20の双方に入力し、モータAコントローラ21では電流センサ16の出力値に基づいて自己診断を行い、HEV_ECU20では、モータAコントローラ21から多重通信を介してフィードバックされるモータAの電流値と電流センサ16の出力値との整合性をチェックして異常を監視する。
【0054】同様に、コンタクタ9からモータBコントローラ22への電力ライン32に設けた電流センサ17の信号をモータBコントローラ22及びHEV_ECU20の双方に入力し、モータBコントローラ22では電流センサ17の出力値に基づいて自己診断を行い、HEV_ECU20では、モータBコントローラ22から多重通信を介してフィードバックされるモータBの電流値と電流センサ17の出力値との整合性をチェックして異常を監視する。
【0055】さらに、システムを統括するHEV_ECU20に異常が発生した場合に対処するため、T/M_ECU24によってHEV_ECU20の異常を監視すると共に、HEV_ECU20による異常監視結果をT/M_ECU24において記憶・保持するようにしており、HEV_ECU20における自己診断によって異常が検出された場合、多重通信によってHEV_ECU20からT/M_ECU24へ異常通達を行うとともに、図23に示すように、HEV_ECU20からT/M_ECU24へ異常時信号を出力するようにしている。
【0056】T/M_ECU24は、HEV_ECU20に異常が発生し、多重通信により異常通達を受信したとき、或いは、HEV_ECU20から多重通信系とは別系統で異常時信号を受けたときには、HEV_ECU20に代って後述する停止制御或いは異常時制御を行い、表示器27に異常発生を表示して運転者に警告を行う。
【0057】次に、多重通信系とは別系統の異常時発生時の出力制限のための保護機能について説明する。この保護機能は、基本的にHEV_ECU20とT/M_ECU24とによる2系統の信号系を用いて実現するようにしており、本形態では、モータAコントローラ21、モータBコントローラ22、E/G_ECU23を制御するための信号系、モータA,Bを駆動するための電源やインジェクタを駆動するための電源をON/OFFするための信号系、コンタクタ9の開閉を行うための信号系を備えている。
【0058】モータAコントローラ21、モータBコントローラ22、E/G_ECU23を制御するための信号としては、HEV_ECU20から出力される異常時制御信号と、T/M_ECU24から出力される異常時制御信号とがあり、図23に示すように、モータAコントローラ21には、HEV_ECU20から出力される異常時制御信号を反転した信号とT/M_ECU24から出力される異常時制御信号を反転した信号との論理和を出力するロジック回路21aによって異常時制御信号が与えられる。
【0059】また、モータBコントローラ22には、HEV_ECU20から出力される異常時制御信号を反転した信号とT/M_ECU24から出力される異常時制御信号を反転した信号との論理和を出力するロジック回路22aによって異常時制御信号が与えられ、E/G_ECU23には、HEV_ECU20から出力される異常時制御信号がロジック回路23aで反転されて入力される。
【0060】本形態においては、HEV_ECU20から出力される異常時制御信号、T/M_ECU24から出力される異常時制御信号は、異常無しの状態では共にハイレベル、異常発生時に共にローレベルである。
【0061】従って、モータAコントローラ21では、HEV_ECU20から出力される異常時制御信号とT/M_ECU24から出力される異常時制御信号との少なくとも一方がローレベル(異常発生時)になると、ロジック回路21aを介してモータAコントローラ21へ入力される異常時制御信号がハイレベルとなり、多重通信による制御データの如何に拘わらず、所定の回転数を目標値とする定回転数制御に移行する。
【0062】また、モータBコントローラ22では、HEV_ECU20から出力される異常時制御信号とT/M_ECU24から出力される異常時制御信号との少なくとも一方がローレベル(異常発生時)になると、ロジック回路22aを介してモータBコントローラ22へ入力される異常時制御信号がハイレベルとなり、多重通信による制御データの如何に拘わらず、所定のトルクを目標値とする定トルク制御に移行する。
【0063】この場合、モータBコントローラ22には、インヒビタスイッチ14からの信号とアクセルペダルの踏み込み・開放によってON,OFFするアクセルスイッチ18からの信号とが直接入力されるようになっており、モータBコントローラ22自身に直接入力されるインヒビタスイッチ14による変速操作位置や、アクセルスイッチ18による運転者の発進操作情報に応じてモータBを定トルク運転することにより、異常発生時のリンプホームのための走行を可能とする。
【0064】また、E/G_ECU23では、HEV_ECU20から出力される異常時制御信号がローレベル(異常発生時)となり、E/G_ECU23へハイレベルの異常時制御信号が入力されると、多重通信によるE/G制御データの如何に拘わらず、所定の回転数を目標値とする定回転数制御に移行する。
【0065】次に、モータA,Bを駆動するための電源、インジェクタを駆動するための電源をON/OFFするための信号としては、モータAコントローラ21への制御電源21bに対する電源ON信号、モータBコントローラ22への制御電源22bに対する電源ON信号、E/G_ECU23へのインジェクタ電源23bに対するインジェクタ電源停止信号があり、各信号がHEV_ECU20とT/M_ECU24とからそれぞれ出力される。
【0066】制御電源21bは、モータAコントローラ21内の制御部とは独立してロジック回路21cによって制御され、このロジック回路21cでは、HEV_ECU20から入力される電源ON信号とT/M_ECU24から入力される電源ON信号との論理和を取り、さらにイグニッションスイッチからの信号IGとの論理積を出力する。
【0067】同様に、制御電源22bは、モータBコントローラ22内の制御部とは独立してロジック回路22cによって制御され、このロジック回路22cは、HEV_ECU20から入力される電源ON信号とT/M_ECU24から入力される電源ON信号との論理和を取り、さらにイグニッションスイッチからの信号IGとの論理積を出力する。
【0068】また、インジェクタ電源23bは、イグニッションスイッチからの信号IGと、HEV_ECU20から出力されるインジェクタ電源停止信号を反転した信号と、T/M_ECU24から出力されるインジェクタ電源停止信号を反転した信号との論理積を出力するロジック回路23cによって制御され、E/G_ECU23内の制御部とは独立して作動する。
【0069】尚、ロジック回路21a,21c及び制御電源21b、ロジック回路22a,22c及び制御電源22b、ロジック回路23a,23c及びインジェクタ電源23bは、それぞれ、モータAコントローラ21、モータBコントローラ22、E/G_ECU23に内蔵するようにしても良い。
【0070】本形態では、HEV_ECU20から出力される制御電源21bに対する電源ON信号、及び制御電源22bに対する電源ON信号は、異常無しの状態ではハイレベル、異常発生時にローレベルとなる。また、T/M_ECU24から出力される制御電源21bに対する電源ON信号、及び制御電源22bに対する電源ON信号は、HEV_ECU20が正常の状態ではローレベルのままであり、HEV_ECU20に異常が発生し、モータA、モータBを運転させる場合に、ハイレベルとなる。
【0071】すなわち、制御電源21b,制御電源22bは、HEV_ECU20に異常が発生していない通常の場合、イグニッションスイッチからの信号IGがハイレベル(イグニッションスイッチON)、且つ、HEV_ECU20からの電源ON信号がハイレベル(異常無し)のとき、ロジック回路21c,22cの出力がハイレベルとなって制御電源21b,22bがONされ、モータA,Bの運転が可能となる。
【0072】また、イグニッションスイッチからの信号IGがハイレベルの状態で、HEV_ECU20に異常が発生してHEV_ECU20からの電源ON信号がローレベル(異常有り)になった場合には、T/M_ECU24からの電源ON信号によってモータA,Bの運転・停止を制御可能となる。
【0073】すなわち、ロジック回路21c,22cへのイグニッションスイッチからの信号IGがハイレベル且つHEV_ECU20からの電源ON信号がローレベルの状態では、T/M_ECU24からの電源ON信号がローレベルのとき、ロジック回路21c,22cの出力がローレベルとなって制御電源21b,22bがOFFされてモータA,Bが停止し、T/M_ECU24からの電源ON信号がハイレベルのときには、ロジック回路21c,22cの出力がハイレベルとなって制御電源21b,22bがONされ、モータA,Bの運転が可能となる。
【0074】尚、イグニッションスイッチからの信号IGがローレベル(イグニッションスイッチOFF)になったときには、当然ながら制御電源21b,22bは電源OFFとなる。
【0075】一方、HEV_ECU20から出力されるインジェクタ電源停止信号、T/M_ECU24から出力されるインジェクタ電源停止信号は、本形態では、異常無しの状態でローレベル、異常発生時にハイレベルとなる。
【0076】従って、イグニッションスイッチからの信号IGがハイレベル(イグニッションスイッチON)、且つ、HEV_ECU20からのインジェクタ電源停止信号とT/M_ECU24からのインジェクタ電源停止信号との双方がローレベル(異常無し)のとき、ロジック回路23cの出力がハイレベルとなってインジェクタ電源23bがONされる。
【0077】また、イグニッションスイッチからの信号IGがローレベル(イグニッションスイッチOFF)、或いは、HEV_ECU20からのインジェクタ電源停止信号とT/M_ECU24からのインジェクタ電源停止信号との少なくとも一方がハイレベル(異常有り)になると、ロジック回路23cの出力がローレベルとなってインジェクタ電源23bがOFFされ、インジェクタが非作動となって燃料噴射が停止し、エンジン1が停止する。
【0078】次に、コンタクタ9の開閉を行うための信号としては、HEV_ECU20から出力されるコンタクタ制御信号と、T/M_ECU24から出力されるコンタクタ制御信号とがあり、双方のコンタクタ制御信号とイグニッションスイッチからの信号IGとが入力されるロジック回路25aの出力により、コンタクタ9がBAT_MU25内の制御部とは独立して開閉制御される。
【0079】ロジック回路25aは、HEV_ECU20から出力されるコンタクタ制御信号と、T/M_ECU24から出力されるコンタクタ制御信号を反転した信号との論理和を取り、さらにイグニッションスイッチからの信号IGとの論理積を出力するものである。尚、ロジック回路25aは、HEV_ECU20に内蔵するようにしても良い。
【0080】本形態では、HEV_ECU20から出力されるコンタクタ制御信号は、コンタクタ9をONさせる場合にハイレベル、コンタクタ9をOFFさせる場合にローレベルとなり、また、T/M_ECU24から出力されるコンタクタ制御信号は、コンタクタ9をONさせる場合にローレベル、コンタクタ9をOFFさせる場合にハイレベルとなる。
【0081】通常、T/M_ECU24から出力されるコンタクタ制御信号は、HEV_ECU20が正常の状態ではハイレベル(コンタクタOFF)であり、この状態でイグニッションスイッチからの信号IGがハイレベル(イグニッションON)且つHEV_ECU20からのコンタクタ制御信号がハイレベルのとき、ロジック回路25aの出力がハイレベルとなり、コンタクタ9がONする。
【0082】また、イグニッションスイッチからの信号IGがハイレベルの状態で、HEV_ECU20に異常が発生した場合には、HEV_ECU20からのコンタクタ制御信号がローレベルとなり、T/M_ECU24からの制御信号によってコンタクタ9の開閉制御が可能となる。すなわち、イグニッションスイッチからの信号IGがハイレベルでHEV_ECU20からのコンタクタ制御信号がローレベルのとき、T/M_ECU24からのコンタクタ制御信号がハイレベルでコンタクタ9がOFFし、T/M_ECU24からのコンタクタ制御信号がローレベルでコンタクタ9がONする。
【0083】以下、多重通信系及び多重通信系とは別系統の信号系を用いたHEV_ECU20及びT/M_ECU24によるフェールセーフ処理について、図2〜図20のフローチャートを用いて説明する。
【0084】尚、以下に説明する処理は、HEV_ECU20及びその周辺システム系(HEV_ECU系)、第1のモータの系統としてモータAコントローラ21及びその周辺システム系(モータAコントローラ系)、第2のモータの系統としてモータBコントローラ22及びその周辺システム系(モータBコントローラ系)、エンジンの系統としてE/G_ECU23及びその周辺システム系(エンジン制御系)、連結機構及び動力変換機構の系統としてT/M_ECU24及びその周辺システム系(変速機制御系)、電源系統としてBAT_MU25及びその周辺システム系(バッテリマネージメント系)の異常の有無に応じた処理であり、BRK_ECU26及びその周辺系に異常が発生した場合には、運転者に警告を発すると共に回生制動を禁止する。
【0085】図2〜図4は、HEV_ECU20において所定時間毎に実行されるフェールセーフ処理のメインルーチンであり、先ず、ステップS101でHEV_ECU20自身の自己診断機能によりHEV_ECU系に異常が発生していないか調べる。
【0086】そして、HEV_ECU系に異常が検出された場合には、ステップS101からステップS102へ進み、T/M_ECU24へ多重通信によってHEV_ECU系の異常発生を通達するとともに、多重通信系とは別系統のT/M_ECU24へのの異常時信号をローレベルにし、HEV_ECU系の異常を通達する。尚、この場合には、T/M_ECU24がHEV_ECU20に代って異常時の処理を行うことになるが、これについては後述する。
【0087】一方、HEV_ECU20の自己診断によってHEV_ECU系に異常が検出されていない場合には、ステップS101からステップS103以降へ進み、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、バッテリマネージメント系、エンジン制御系、変速機制御系の異常の有無に応じ、走行不可の場合には、以下に説明する停止制御(1)のサブルーチンを実行して車両を安全に停止させ、走行可能な場合には、以下に説明する異常時制御(1),(2),(3),(5),(6),(7),(8)のサブルーチンを選択的に実行してリンプホーム機能を実現する。
【0088】ここで、車両が走行可能か否かは、プラネタリギヤユニット3を中心とする駆動系の構成を考慮し、故障部位に応じて判断することができる。すなわち、ロックアップクラッチ2、CVT4は、機構的に、変速機制御系に異常が発生した場合、それぞれ、クラッチ開放、変速比一定に固定されるため、エンジン1とモータAとの少なくとも一方で反力を受けることが可能であれば、モータBの駆動力を有効な走行駆動力として駆動輪に伝達することができ、また、モータBが使用不可であっても、エンジン1とモータAとの少なくとも一方が使用可能でロックアップクラッチ2を直結にすることが可能であれば、エンジン1及びモータAの双方或いは一方の駆動力を有効に駆動輪に伝達することができる。
【0089】従って、エンジン制御系、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、変速機制御系に対し、それぞれの異常・正常状態を表す事象を、E/G、MA、MB、T/Mとし、各事象の値が1のとき正常、0のとき異常とすると、以下の合成事象の値を評価することで走行可能か否かを判別することができる。合成事象の値が1のときには走行可、値が0のときには走行不可である。
(E/G ∪ MA)×(MB ∪ T/M)
【0090】バッテリマネージメント系の異常は、モータA及びモータBへの正常な電力供給ができないことからモータAコントローラ系とモータBコントローラ系との双方が異常であることと等価であり、エンジン制御系、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、変速機制御系、及び、バッテリマネージメント系の5つの系における異常発生の組み合わせを整理すると、以下の(a)〜(d)のNG条件が成立するときには走行不可、それ以外のときには、走行可となる。
(a)少なくともエンジン制御系及びモータAコントローラ系が異常(b)少なくともエンジン制御系及びバッテリマネージメント系が異常(c)少なくともモータBコントローラ系及び変速機制御系が異常(d)少なくともバッテリマネージメント系及び変速機制御系が異常【0091】従って、ステップS103以降では、異常発生の場合、上述の(a)〜(d)のNG条件の何れかに該当するときには走行不可として停止制御を行い、該当しないとき、リンプホームのための異常時制御を行うことになる。具体的には、ステップS103でエンジン制御系が異常か否かを調べ、E/G_ECU23から多重通信によって異常通達を受信した場合、E/G_ECU23から定期通信が送信されずエンジン制御系が異常であると判断される場合、或いは、多重通信系とは別系統でのETCスロットルセンサ15の監視データ等からエンジン制御系が異常であると判断される場合には、さらに、ステップS104へ進んでモータAコントローラ21からの異常通達や定期通信、電流センサ16の出力データをチェックし、モータAコントローラ系が異常か否かを調べる。
【0092】その結果、ステップS104でモータAコントローラ系が異常である場合、すなわちエンジン制御系及びモータAコントローラ系が共に異常である場合には、走行不可(NG条件(a)に該当)と判断してステップS105へ進み、図5に示す停止制御(1)サブルーチンを実行して車両を安全に停止させる。
【0093】一方、ステップS104でモータAコントローラ系が正常である場合には、ステップS104からステップS106へ進み、モータBコントローラ22からの異常通達や定期通信、電流センサ17の出力データをチェックしてモータBコントローラ系が異常か否かを調べる。
【0094】そして、モータBコントローラ系が異常の場合、ステップS107でBAT_MU25からの異常通達や定期通信をチェックしてバッテリマネージメント系が異常か否かを調べ、バッテリマネージメント系が正常である場合、更に、ステップS108でT/M_ECU24からの異常通達や定期通信をチェックして変速機制御系が異常か否かを調べる。
【0095】その結果、ステップS107でバッテリマネージメント系が異常、或いはステップS108で変速機制御系が異常の場合、すなわち、モータAコントローラ系は正常であるものの、エンジン制御系とモータBコントローラ系とが共に異常であり、且つ、バッテリマネージメント系或いは変速機制御系が異常の場合には、エンジン1の使用不能及びバッテリマネージメント系の異常によるモータAの使用不能によって走行不可(NG条件(b)に該当)、或いは、モータBが使用不能でロックアップクラッチ2も締結できず走行不可(NG条件(c)に該当)のため、前述のステップS105へ進んで図5に示す停止制御(1)サブルーチンを実行し、車両を安全に停止させる。
【0096】また、ステップS108で変速機制御系が正常の場合、すなわち、エンジン制御系とモータBコントローラ系とが共に異常であるものの、モータAコントローラ系、バッテリマネージメント系、変速機制御系が正常である場合には、モータAのみによる走行が可能と判断し、ステップS109へ進んで図7に示す異常時制御(2)サブルーチンを実行することで、モータAのみの走行によるリンプホーム制御を行う。
【0097】一方、ステップS106でモータBコントローラ系が正常である場合には、ステップS106からステップS110へ進んでバッテリマネージメント系が異常か否かを調べる。そして、バッテリマネージメント系が異常の場合、すなわち、モータAコントローラ系及びモータBコントローラ系は正常であるものの、エンジン制御系及びバッテリマネージメント系が異常である場合には、エンジン1が使用不能、且つモータA,Bへの正常な電力供給が不能のため走行不可(NG条件(b)に該当)と判断し、前述のステップS105へ進んで図5に示す停止制御(1)サブルーチンを実行し、車両を安全に停止させる。
【0098】また、ステップS110でバッテリマネージメント系が正常である場合には、更に、ステップS111で変速機制御系が異常か否かを調べ、変速機制御系が正常の場合、すなわち、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、バッテリマネージメント系、及び、変速機制御系は正常であり、エンジン制御系のみが異常である場合には、モータA,Bによる走行が可能なため、ステップS110からステップS112へ進んで図6に示す異常時制御(1)サブルーチンを実行し、モータBの駆動力に対する反力をモータAで受け、モータBによる走行でのリンプホーム制御を行う。
【0099】また、ステップS111で変速機制御系が異常の場合、すなわち、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、及び、バッテリマネージメント系は正常であり、エンジン制御系と変速機制御系とが異常である場合には、モータA,Bによる走行が可能であるため、ステップS111からステップS113へ進み、図10に示す異常時制御(3)サブルーチンを実行し、ロックアップクラッチ2を開放にしてCVT4の変速比を一定とした上でモータAで反力を受けてモータBにより走行するリンプホーム制御を行う。
【0100】次に、ステップS103でエンジン制御系が正常である場合について説明する。ステップS103でエンジン制御系が正常である場合には、ステップS103からステップS114へ進んでモータAコントローラ系が異常か否かを調べる。そして、モータAコントローラ系が正常である場合には、ステップS122以降へ進み、モータAコントローラ系が異常の場合、ステップS115〜S121で、モータBコントローラ系、バッテリマネージメント系、変速機制御系の異常の有無に応じた処理を行う。
【0101】エンジン制御系が正常でモータAコントローラ系が異常の場合のステップS115〜S121の処理では、ステップS115でモータBコントローラ系が異常か否かを調べ、モータBコントローラ系が正常の場合、さらに、ステップS116でバッテリマネージメント系が異常か否かを調べる。
【0102】そして、ステップS115でモータBコントローラ系が異常の場合、或いはステップS116でバッテリマネージメント系が異常の場合には、ステップS115或いはステップS116からステップS117へ進んで変速機制御系が異常か否かを調べる。その結果、ステップS117で変速機制御系が異常の場合には、エンジン制御系は正常であるものの、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、変速機制御系が異常である状況、或いは、エンジン制御系とモータBコントローラ系は正常であるものの、モータAコントローラ系、バッテリマネージメント系、変速機制御系が異常である状況であるため、走行不可(NG条件(c)或いはNG条件(d)に該当)と判断してステップS117から前述のステップS105へジャンプし、図5に示す停止制御(1)サブルーチンを実行して車両を安全に停止させる。
【0103】また、ステップS117で変速機制御系が正常の場合には、エンジン制御系と変速機制御系が正常でモータAコントローラ系及びモータBコントローラ系が異常である状況、或いは、エンジン制御系とモータBコントローラ系と変速機制御系とが正常で、モータAコントローラ系及びバッテリマネージメント系が異常である状況であり、いずれにしてもモータA,Bは使用不能であるため、エンジン1のみによる走行が可能と判断してステップS118へ進み、図12に示す異常時制御(6)サブルーチンを実行してエンジン1の動力のみを用いたリンプホーム制御を行う。
【0104】一方、ステップS116でバッテリマネージメント系が正常の場合には、ステップS116からステップS119へ進んで変速機制御系が異常か否かを調べる。そして、ステップS119で変速機制御系が異常の場合、すなわち、エンジン制御系、モータBコントローラ系、バッテリマネージメント系は正常であり、モータAコントローラ系と変速機制御系とが異常である場合には、モータBによる走行が可能と判断してステップS120へ進んで図15に示す異常時制御(7)サブルーチンを実行し、ロックアップクラッチ2を開放にしてCVT4の変速比を一定とした上でエンジン1で反力を受けてモータBによって走行するリンプホーム制御を行う。
【0105】また、ステップS119で変速機制御系が正常である場合、すなわち、エンジン制御系、モータBコントローラ系、バッテリマネージメント系、変速機制御系は正常であり、モータAコントローラ系のみが異常である場合には、モータBによる走行が可能と判断してステップS121で図11に示す異常時制御(5)サブルーチンを実行し、エンジン1で反力を受けてモータBによって走行するリンプホーム制御を行う。
【0106】次に、エンジン制御系及びモータAコントローラ系が正常の場合のステップS122以降の処理では、ステップS122でモータBコントローラ系が異常か否かを調べ、モータBコントローラ系が正常の場合、ステップS126以降へ進み、モータBコントローラ系が異常の場合には、ステップS123で変速機制御系が異常か否かを調べる。
【0107】そして、ステップS123で変速機制御系が異常の場合、すなわち、エンジン制御系及びモータAコントローラ系が正常で、モータBコントローラ系及び変速機制御系が異常の場合には、走行不可(NG条件(c)に該当)と判断して前述のステップS105へジャンプし、図5に示す停止制御(1)サブルーチンを実行して車両を安全に停止させる。
【0108】また、ステップS123で変速機制御系が正常の場合には、更にステップS124でバッテリマネージメント系が異常か否かを調べる。そして、ステップS124でバッテリマネージメント系が異常の場合、すなわち、エンジン制御系、モータAコントローラ系、変速機制御系が正常で、モータBコントローラ系とバッテリマネージメント系とが異常の場合には、バッテリマネージメント系の異常によりモータA,Bは使用できないもののエンジン1のみによる走行は可能であるため、前述のステップS118へジャンプして図12に示す異常時制御(6)サブルーチンを実行する。
【0109】一方、ステップS124でバッテリマネージメント系が正常である場合、すなわち、エンジン制御系、モータAコントローラ系、変速機制御系、バッテリマネージメント系が正常で、モータBコントローラ系のみが異常の場合には、ロックアップクラッチ2を締結することでエンジン1及びモータAによる走行が可能と判断してステップS124からステップS125へ進み、図16に示す異常時制御(8)サブルーチンを実行してエンジン1とモータAとを併用して走行するリンプホーム制御を行う。
【0110】次に、ステップS122でモータBコントローラ系が正常でステップS126以降へ進んだ場合には、ステップS126でバッテリマネージメント系が異常か否かを調べ、バッテリマネージメント系が異常の場合、更にステップS127で変速機制御系が異常か否かを調べる。
【0111】そして、ステップS127で変速機制御系が異常の場合、すなわち、エンジン制御系、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系が正常で、バッテリマネージメント系と変速機制御系とが異常の場合には、走行不可(NG条件(d)に該当)と判断して前述のステップS105へジャンプし、図5に示す停止制御(1)サブルーチンを実行して車両を安全に停止させる。
【0112】また、ステップS127で変速機制御系が正常である場合、すなわち、エンジン制御系、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、変速機制御系が正常で、バッテリマネージメント系のみが異常の場合には、バッテリマネージメント系の異常によってモータA,Bが使用不可でエンジン1のみによる走行が可能であるため、前述のステップS118へジャンプして図12に示す異常時制御(6)サブルーチンを実行する。
【0113】また、ステップS126でバッテリマネージメント系が正常である場合には、ステップS126からステップS128へ進み、変速機制御系が異常か否かを調べる。そして、ステップS128で変速機制御系が異常の場合、すなわち、エンジン制御系、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、バッテリマネージメント系が正常で、変速機制御系のみが異常の場合には、ロックアップクラッチ2を開放にしてCVT4の変速比を一定としたモータA,Bによる走行が可能であるため、前述のステップS113へジャンプして図10に示す異常時制御(3)サブルーチンを実行する。
【0114】一方、ステップS128で変速機制御系が正常の場合、すなわち、エンジン制御系、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、バッテリマネージメント系、変速機制御系が全て正常の場合には、ステップS128からステップS129へ進んでHEV_ECU20を中心とした通常の制御を実行する。
【0115】次に、以上のフェールセーフ処理メインルーチンにおける各サブルーチンにつて説明する。
【0116】先ず、図5の停止制御(1)サブルーチンについて説明すると、この停止制御(1)サブルーチンでは、ステップS151で多重通信により他のECUに異常を通達して異常発生を知らせると、ステップS152でインジェクタ電源23bを制御するロジック回路23cに対するインジェクタ電源停止信号をハイレベルの信号とし、多重通信系とは別系統の信号系でインジェクタ電源停止を指令する。これにより、ロジック回路23cの出力がローレベルとなってインジェクタ電源23bがOFFされ、インジェクタからの燃料噴射が停止されてエンジン1が停止する。
【0117】続くステップS153では、モータAコントローラ21の制御電源21bを制御するロジック回路21cに対する電源ON信号をローレベルの信号として電源OFFを指令し、更にステップS154でモータBコントローラ22の制御電源22bを制御するロジック回路22cに対する電源ON信号をローレベルの信号として電源OFFを指令する。これにより、ロジック回路21c,22cの出力がローレベルとなり、制御電源21b,22bがOFFとなってモータA,Bが停止される。
【0118】次に、ステップS155へ進み、コンタクタ9を開閉制御するロジック回路25aに対するコンタクタ制御信号をローレベルにし、ロジック回路25aの出力をローレベルにしてコンタクタ9をOFFにしてバッテリ10とモータAコントローラ21及びモータBコントローラ22とを切り離す。
【0119】さらに、ステップS156で、モータAコントローラ21のロジック回路21aに対する異常時制御信号を正常時のハイレベルの信号とし、同様に、ステップS157で、モータBコントローラ22のロジック回路22aに対する異常時制御信号を正常時のハイレベルの信号とする。すなわち、モータAコントローラ21及びモータBコントローラ22をバッテリ10から切離した上で、モータAコントローラ21及びモータBコントローラ22に正常時制御を実行可能な指令を与え、正常に復帰した場合に備える。
【0120】そして、ステップS158で表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達すると、ステップS159で、多重通信によりT/M_ECU24へロックアップクラッチ2をOFF(開放)にする制御指令とCVT4の変速比を所定の変速比(中立値)とする変速比指令とを与えてルーチンを抜ける。
【0121】すなわち、走行不能の異常が発生した場合、単に車両を停止させるのではなく、システムが突然正常に復帰した場合をも想定し、車両を停止させるための処理を行うと同時に、正常復帰時に直ちに各系が正常の制御状態となるようにしているため、正常復帰時に急激な発進等の不慮の事態が発生することを未然に回避することができる。
【0122】次に、図6の異常時制御(1)サブルーチンについて説明する。異常時制御(1)サブルーチンは、エンジン制御系のみに異常が発生した場合に実行される処理であり、異常発生時に、プラネタリギヤユニット3における反力をモータAに分担させてモータBの駆動力による走行を確保することで、リンプホーム機能を実現する。
【0123】図6の異常時制御(1)サブルーチンでは、ステップS161で多重通信により他のECUに異常を通達してエンジン制御系に異常が発生したことを知らせると、ステップS162で、インジェクタ電源23bを制御するロジック回路23cに対するインジェクタ電源停止信号を停止指令を示すハイレベルの信号としてエンジン1を停止させ、正常に復帰した場合の不具合を未然に防止するとともに、ステップS163で表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達する。
【0124】次に、ステップS164へ進み、多重通信によりT/M_ECU24へロックアップクラッチ2をOFF(開放)にする制御指令を与えると、ステップS165で、モータAコントローラ21のロジック回路21aに対する異常時制御信号をローレベルにし、ロジック回路21aからモータAコントローラ21にハイレベルの異常時信号を与えて、モータAコントローラ21によりモータAを低速定回転(例えば、300rpm程度)で運転する異常時制御に移行させる。
【0125】そして、ステップS166でインヒビタスイッチ14、APS11の出力に基づき、多重通信によりモータBコントローラ22にトルク指令を与えてルーチンを抜ける。
【0126】これにより、プラネタリギヤユニット3のリングギヤ3cに結合されたモータBの駆動力をキャリア3bから出力する際、サンギヤ3aのモータAで受けることのできる反力によってキャリア3bからの出力が制限されるため、異常発生時に過度な出力を抑えて電気エネルギーの消耗を抑え、確実に所定の目的地(例えば修理工場等)へ車両を安全に移動させることができる。
【0127】次に、図7の異常時制御(2)サブルーチンについて説明する。異常時制御(2)サブルーチンは、エンジン制御系とモータBコントローラ系とが異常である場合に実行される処理であり、異常発生時にモータAのみによる走行を確保してリンプホーム機能を実現する。
【0128】図7の異常時制御(2)サブルーチンでは、ステップS171で多重通信により他のECUに異常を通達してエンジン制御系及びモータBコントローラ系に異常が発生したことを知らせると、ステップS172でインジェクタ電源23bを制御するロジック回路23cに対するインジェクタ電源停止信号を停止指令を示すハイレベルの信号としてエンジン1を停止させる。
【0129】次に、ステップS173でモータBコントローラ22の制御電源22bを制御するロジック回路22cに対する電源ON信号をローレベルの信号として制御電源22bをOFFさせ、モータBを停止させると、ステップS174で正常に復帰した場合の不具合を未然に回避するため、モータBコントローラ22のロジック回路22aに対する異常時制御信号を正常時のハイレベルの信号とし、ステップS175で表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達し、ルーチンを抜ける。
【0130】そして、異常時制御(2)サブルーチンによるエンジン制御系及びモータBコントローラ系に対する処理の後、図8のモータA制御指令ルーチン及び図9のT/M制御指令ルーチンを実行し、走行制御を行う。
【0131】図8のモータA制御指令ルーチンでは、ステップS181でAPS11の出力に基づき、多重通信によりモータAコントローラ21に回転数指令を与えてモータAを定回転で運転させ、図9のT/M制御指令ルーチンによってモータAの駆動力の駆動輪への伝達を制御する。
【0132】図9のT/M制御指令ルーチンでは、ステップS191でAPS11の出力に基づいてアクセルペダルONか否か、すなわち運転者が図示しないアクセルペダルを踏み込んで車両を走行させようとしているか否かを調べる。そして、アクセルペダルONでないとき、すなわち、車両停止のときには、ステップS191からステップS194へ進み、多重通信によりT/M_ECU24へロックアップクラッチ2をOFF(開放)にする制御指令を与える。
【0133】また、ステップS191でアクセルペダルがONのときには、ステップS192へ進んでブレーキスイッチ12がONか否かを調べ、ブレーキスイッチ12がONのときには、前述のステップS194で多重通信によりT/M_ECU24へロックアップクラッチ2をOFF(開放)にする制御指令を与え、ブレーキスイッチ12がOFFのとき、ステップS193で多重通信によりT/M_ECU24へロックアップクラッチ2をON(締結)にする制御指令を与える。
【0134】すなわち、モータAのみの駆動力を用いて走行する場合には、プラネタリギヤユニット3での反力分担が無いため、ロックアップクラッチ2を締結してプラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aとキャリア3bとを直結にしてモータAの駆動力を直接CVT4に入力する。また、ブレーキングによる車両減速時、或いは車両停止時には、ロックアップクラッチ2を開放しサンギヤ3aとキャリア3bとの結合を解除して、モータAの回転を継続し車両を減速或いは停止する。
【0135】ここで、ロックアップクラッチ2やCVT4の各プーリ4b,4dを作動するための油圧を供給するために図示しないオイルポンプが設けられており、このオイルポンプは、モータA及びエンジン1により駆動される(但し、このときには、エンジン1は燃料供給が停止されており、モータAによる空転状態にある)。従って、モータAの回転を止めることなく、車両を減速或いは停止することで、オイルポンプの作動を継続し、車両の再加速時、或いは発進時にロックアップクラッチ2を直ちに締結可能とする。
【0136】異常時制御(2)においても、過度な出力を抑えて電気エネルギーの消耗を防止し、確実に修理工場等へ車両を移動させることができる。
【0137】次に、図10の異常時制御(3)サブルーチンについて説明する。異常時制御(3)サブルーチンは、エンジン制御系と変速機制御系とが異常である場合、或いは、変速機制御系のみが異常の場合に実行される処理であり、異常発生時に、プラネタリギヤユニット3における反力をモータAに分担させてモータBの駆動力による走行を確保し、リンプホーム機能を実現する。
【0138】図10の異常時制御(3)サブルーチンでは、ステップS201で多重通信により他のECUに異常を通達し、エンジン制御系及び変速機制御系での異常発生、或いは、変速機制御系での異常発生を知らせると、ステップS202でインジェクタ電源23bを制御するロジック回路23cに対するインジェクタ電源停止信号を停止指令を示すハイレベルの信号としてエンジン1を停止させる。
【0139】次に、ステップS203へ進み、コンタクタ9を開閉制御するロジック回路25aに対するコンタクタ制御信号をハイレベルとしてロジック回路25aの出力をハイレベルにし、コンタクタ9をONしてバッテリ10とモータAコントローラ21及びモータBコントローラ22とを接続する。
【0140】続くステップS204では、モータAコントローラ21の制御電源21bを制御するロジック回路21cに対する電源ON信号をハイレベルの信号とし、制御電源21bをONさせてモータAの運転を可能とし、ステップS205で、同様に、モータBコントローラ22の制御電源22bを制御するロジック回路22cに対する電源ON信号をハイレベルの信号とし、制御電源22bをONさせてモータBの運転を可能とする。
【0141】その後、ステップS206へ進み、モータBの駆動力をプラネタリギヤユニット3を介してCVT4に出力する際の反力をモータAで受けるため、モータAコントローラ21のロジック回路21aに対する異常時制御信号を異常時のローレベルにし、ロジック回路21aからハイレベルの異常時信号をモータAコントローラ21に与えてモータAコントローラ21を低速定回転制御に移行させる。
【0142】さらに、ステップS207で、モータBコントローラ22のロジック回路22aに対する異常時制御信号を異常時のローレベルとしてロジック回路22aからハイレベルの信号を与え、モータBコントローラ22自身に接続されているインヒビタスイッチ14からの信号とアクセルスイッチ18からの信号に応じて、モータBコントローラ22によりモータBを定トルクで運転する定トルク制御を実行させる。
【0143】そして、ステップS208で表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達すると、ステップS209で、正常に復帰した場合の不慮の事態が発生することを未然に防止するため、多重通信によりT/M_ECU24へロックアップクラッチ2をOFF(開放)にする制御指令とCVT4の変速比を所定の変速比(中立値)とする変速比指令とを与え、ルーチンを抜ける。
【0144】異常時制御(3)では、前述の異常時制御(1)と同様、電気エネルギーの消耗を防止しつつ、モータAで反力を受けてモータBの駆動力によって走行し、所定の目的地までの安全な走行を確保でき、且つ、変速機制御系の異常に対してCVT4の変速比を一定とし、正常復帰時の不具合発生を未然に防止する。
【0145】次に、図11の異常時制御(5)サブルーチンについて説明する。異常時制御(5)サブルーチンは、モータAコントローラ系のみが異常である場合に実行される処理であり、異常発生時に、モータBの駆動力をプラネタリギヤユニット3を介して出力する際の反力をエンジン1で受け、モータBの駆動力による走行を確保してリンプホーム機能を実現する。
【0146】図11の異常時制御(5)サブルーチンでは、ステップS211で多重通信により他のECUに異常を通達してモータAコントローラ系に異常が発生したことを知らせると、ステップS212でモータAコントローラ21の制御電源21bを制御するロジック回路21cに対する電源ON信号をローレベルの信号として制御電源21bをOFFさせ、モータAを停止させる。
【0147】次いでステップS213へ進み、正常に復帰した場合の不具合を未然に回避するため、モータAコントローラ21のロジック回路21aに対する異常時制御信号を正常時のハイレベルの信号とし、ステップS214で表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達する。
【0148】続くステップS215では、多重通信によりT/M_ECU24へロックアップクラッチ2をOFF(開放)にする制御指令を与え、ステップS216で、E/G_ECU23のロジック回路23aに対する異常時制御信号を異常時のローレベルの信号とする。この異常時制御信号を受けてロジック回路23aからハイレベルの信号がE/G_ECU23へ入力されると、E/G_ECU23では、エンジン1を低速定回転(例えば、目標アイドル回転数による一定回転数)に制御し、モータBの反力を受けるとともに、図示しないオイルポンプを駆動してCVT4の油圧を確保する。
【0149】そして、ステップS217で、インヒビタスイッチ14、APS11の出力に基づき、多重通信によりモータBコントローラ22にトルク指令を与え、ルーチンを抜ける。
【0150】これにより、モータBの駆動力をプラネタリギヤユニット3を介して出力する際の反力をエンジン1で受け、モータBの駆動力によって走行することができ、異常発生時の過度な出力を制限して電気エネルギーの消耗を防止しつつ、確実に修理工場等へ車両を移動させることができる。
【0151】しかも、モータAコントローラ系が正常に復帰した場合を考慮し、予めモータAコントローラ21を正常制御が可能な状態としてあるため、モータBの反力を適正に受けることができ、走行駆動力が急激に変化することがなく、正常復帰時の不具合を未然に回避することができる。
【0152】次に、図12の異常時制御(6)サブルーチンについて説明する。異常時制御(6)サブルーチンは、エンジン制御系は正常であるものの、モータA,Bが使用不可の場合(モータAコントローラ系とモータBコントローラ系とが共に異常の場合、或いは、バッテリマネージメント系が異常の場合)に実行される処理であり、異常発生時にエンジン1のみの駆動力による走行を確保し、リンプホーム機能を実現する。
【0153】図12の異常時制御(6)サブルーチンでは、ステップS221で多重通信により他のECUに異常を通達し、モータAコントローラ系及びモータBコントローラ系が異常、或いはバッテリマネージメント系が異常であることを知らせると、ステップS222で、モータAコントローラ21の制御電源21bを制御するロジック回路21cに対する電源ON信号をローレベルの信号として制御電源21bをOFFさせてモータAを停止させ、ステップS223でモータBコントローラ22の制御電源22bを制御するロジック回路22cに対する電源ON信号をローレベルの信号として制御電源22bをOFFさせ、モータBを停止させる。
【0154】続くステップS224では、コンタクタ9を開閉制御するロジック回路25aに対するコンタクタ制御信号をローレベルにし、ロジック回路25aの出力をローレベルにしてコンタクタ9をOFFにしてバッテリ10とモータAコントローラ21及びモータBコントローラ22とを切り離す。
【0155】その後、システムが正常に復帰した場合に不慮の事態が発生することを未然に回避するため、ステップS225でモータAコントローラ21のロジック回路21aに対する異常時制御信号を正常時のハイレベルの信号とし、同様に、ステップS226でモータBコントローラ22のロジック回路22aに対する異常時制御信号を正常時のハイレベルの信号とする。そして、ステップS227で表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達し、ルーチンを抜ける。
【0156】また、異常時制御(6)サブルーチンによる処理が済むと、次に、図9のT/M制御指令ルーチンと同様の処理を実行し、アクセルペダルのON,OFF状態、ブレーキスイッチ12のON,OFF状態に応じてロックアップクラッチ2のON,OFFをT/M_ECU24へ指令すると共に、ロックアップクラッチ2のON,OFFに応じ、図13に示すE/G制御指令ルーチン、図14に示すE/G制御指令ルーチンを実行する。
【0157】すなわち、ロックアップクラッチ2がONのときには、図13に示すE/G制御指令ルーチンを実行し、ステップS231でAPS11の出力に基づいて、多重通信によりE/G_ECU23へトルク指令を与え、エンジン1の駆動力を直接CVT4に出力させる。
【0158】一方、ロックアップクラッチ2がOFFのときには、図14に示すE/G制御指令ルーチンを実行し、ステップS241でE/G_ECU23のロジック回路23aに対する異常時制御信号を異常時のローレベルの信号としてロジック回路23aからハイレベルの信号をE/G_ECU23へ与え、エンジン1を低速定回転(例えば、目標アイドル回転数による一定回転数)の制御に移行させ、エンジン回転数の上昇を抑える。
【0159】異常時制御(6)では、モータA,Bが使用不可の異常発生時にもロックアップクラッチ2のON,OFFを適切に制御してエンジン1の駆動力を有効に使用し、所定の目的地まで安全に車両を移動させることができる。
【0160】次に、図15の異常時制御(7)サブルーチンについて説明する。異常時制御(7)サブルーチンは、モータAコントローラ系と変速機制御系とが異常の場合に実行される処理であり、異常発生時に、エンジン1をモータBの反力分担に使用してモータBの駆動力による走行を確保し、リンプホーム機能を実現する。
【0161】図15の異常時制御(7)サブルーチンでは、ステップS251で多重通信により他のECUに異常を通達してモータAコントローラ系及び変速機制御系が異常であることを知らせると、ステップS252でインジェクタ電源23bを制御するロジック回路23cに対するインジェクタ電源停止信号をローレベルの信号としてインジェクタ電源23bをONさせ、インジェクタを駆動して燃料噴射を実施させてエンジン1を運転させる。
【0162】次いで、ステップS253へ進み、コンタクタ9を開閉制御するロジック回路25aに対するコンタクタ制御信号をハイレベルとしてロジック回路25aの出力をハイレベルにし、コンタクタ9をONしてバッテリ10とモータAコントローラ21及びモータBコントローラ22とを接続する。
【0163】そして、ステップS254で、モータAコントローラ21の制御電源21bを制御するロジック回路21cに対する電源ON信号をローレベルの信号として制御電源21bをOFFさせ、モータAを停止させると、ステップS255で、モータBコントローラ22の制御電源22bを制御するロジック回路22cに対する電源ON信号をハイレベルの信号として制御電源22bをONさせ、モータBの運転を可能とする。
【0164】続くステップS256では、E/G_ECU23のロジック回路23aに対する異常時制御信号を異常時のローレベルの信号とし、ロジック回路23aからハイレベルの信号をE/G_ECU23に与え、エンジン1を低速定回転(例えば、目標アイドル回転数による一定回転数)で制御させると、ステップS257で、モータBコントローラ22のロジック回路22aに対する異常時制御信号を異常時のローレベルとしてロジック回路22aからハイレベルの信号を与え、モータBコントローラ22自身に接続されているインヒビタスイッチ14からの信号とアクセルスイッチ18からの信号に応じて、モータBコントローラ22によりモータBを定トルクで運転する定トルク制御を実行させる。
【0165】そして、ステップS258で表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達し、ステップS259で、多重通信によりT/M_ECU24へロックアップクラッチ2をOFF(開放)にする制御指令と、CVT4の変速比を所定の変速比(中立値)とする変速比指令とを与えてルーチンを抜け、システムが正常に復帰した場合の急激な発進等を未然に防止する。
【0166】異常時制御(7)では、モータAコントローラ系の異常に対し、エンジン1で反力を受けてモータBの駆動力により走行することで、電気エネルギーの消耗を防止しつつ所定の目的地までの安全な走行を確保でき、且つ、変速機制御系の異常に対してCVT4の変速比を一定とし、正常復帰時の不具合発生を未然に防止することができる。
【0167】次に、図16の異常時制御(8)サブルーチンについて説明する。異常時制御(8)サブルーチンは、モータBコントローラ系のみが異常の場合に実行される処理であり、異常発生時にエンジン1とモータAとを併用した走行を確保し、リンプホーム機能を実現する。
【0168】図16の異常時制御(8)サブルーチンでは、ステップS271で、多重通信により他のECUに異常を通達し、モータBコントローラ系に異常が発生したことを知らせると、ステップS272で、モータBコントローラ22の制御電源22bを制御するロジック回路22cに対する電源ON信号をローレベルの信号として制御電源22bをOFFさせ、モータBを停止させる。
【0169】次に、ステップS273でモータBコントローラ22のロジック回路22aに対する異常時制御信号を正常時のハイレベルの信号として正常に復帰した場合に不慮の事態が発生することを未然に回避し、ステップS274で表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達し、ルーチンを抜ける。
【0170】そして、異常時制御(8)サブルーチンによる処理が済むと、次に、図9のT/M制御指令ルーチンと同様の処理を実行してアクセルペダルのON,OFF状態、ブレーキスイッチ12のON,OFF状態に応じてロックアップクラッチ2のON,OFFをT/M_ECU24へ指令する。
【0171】また、T/M_ECU24への制御指令処理と並行して図17に示すE/G・モータA制御指令ルーチンによる処理を実行し、E/G・モータA制御指令ルーチンのステップS281でAPS11の出力に基づき、E/G_ECU23へ多重通信を介してトルク指令を与えると共に、モータAコントローラ21へ多重通信を介して回転数指令を与える。
【0172】これにより、走行時には、ロックアップクラッチ2を締結してプラネタリギヤユニット3のサンギヤ3aとキャリア3bとを結合してエンジン1とモータAとによる駆動力を直接CVT4に出力し、アクセルペダルの踏み込みに応じた走行を可能とする。また、ブレーキングによる車両減速時、或いは、車両停止時には、ロックアップクラッチ2を開放して、エンジン1及びモータAの回転を継続し、車両を減速或いは停止する。すなわち、エンジン1及びモータAの回転を止めることなく、車両を減速或いは停止することで、オイルポンプの作動を継続し、車両の再加速時、或いは発進時にロックアップクラッチ2を直ちに締結可能とする。
【0173】異常時制御(8)では、モータBコントローラ系の異常に対し、ロックアップクラッチ2のON,OFFを適切に制御してエンジン1及びモータAの駆動力を直接CVT4に出力して走行することができ、異常発生時の過度な出力を制限して所定の目的地まで車両を安全に移動させることができる。
【0174】一方、HEV_ECU20によるフェールセーフ処理に対し、T/M_ECU24では、システムを統括するHEV_ECU20自体に異常が発生した場合に対処するため、図18に示すフェールセーフ処理を並行して実行するようにしており、HEV_ECU20に異常が発生した場合、HEV_ECU20に代ってT/M_ECU24が異常時処理を行う。
【0175】この場合、HEV_ECU20では、HEV_ECU系の異常を検出すると、以下の(1)〜(8)に示す処理を順次行うようになっており、T/M_ECU24は、自身のフェールセール処理によってHEV_ECU系の異常を検出した場合、多重通信系とは別系統の信号系を介して車両停止或いは異常時制御を実現する。
(1)多重通信によりT/M_ECU24へ異常を通達する。
(2)T/M_ECU24への異常時信号を、所定時間(例えば、100msec)以上の間、ローレベル(異常有り)とする。
(3)インジェクタ電源23bを制御するロジック回路23cに対するインジェクタ電源停止信号をハイレベル(電源停止)とする。
(4)コンタクタ9を開閉制御するロジック回路25aに対するコンタクタ制御信号をローレベル(コンタクタOFF)とする。
(5)モータAコントローラ21の制御電源21bを制御するロジック回路21cに対する電源ON信号をローレベル(電源OFF)とする。
(6)モータBコントローラ22の制御電源22bを制御するロジック回路22cに対する電源ON信号をローレベル(電源OFF)とする。
(7)モータAコントローラ21のロジック回路21aに対する異常時制御信号をハイレベル(非異常時)とする。
(8)モータBコントローラ22のロジック回路22aに対する異常時制御信号をハイレベル(非異常時)とする。
【0176】以下、T/M_ECU24によるフェールセーフ処理について説明する。図18に示すフェールセーフ処理メインルーチンでは、ステップS301で自己診断によって変速機制御系に異常が発生していないかを調べ、異常が発生している場合、ステップS302で多重通信によりHEV_ECU20へ異常を通達してルーチンを抜ける。
【0177】また、ステップS301で変速機制御系が正常である場合、ステップS301からステップS303以降へ進み、HEV_ECU20から多重通信系を介して通達されてT/M_ECU24自体で記憶・保持している現在までの異常発生状況を調べ、異常発生状況に応じた処理を行う。
【0178】すなわち、ステップS303で、先ずエンジン制御系に異常がないか否かを調べ、エンジン制御系が正常である場合、ステップS304でモータAコントローラ系に異常がないか否かを調べる。そして、モータAコントローラ系が正常である場合、ステップS304からステップS305へ進んでモータBコントローラ系に異常がないか否かを調べ、モータBコントローラ系が正常である場合、更に、ステップS306でバッテリマネージメント系に異常がないか否かを調べる。
【0179】その結果、ステップS306でバッテリマネージメント系が正常である場合には、ステップS306からステップS308へ進み、多重通信によるHEV_ECU20からの異常通達、HEV_ECU20からの異常時信号、或いは、定期通信の状況により、HEV_ECU系に異常が発生しているか否かを調べる。
【0180】また、ステップS303でエンジン制御系が異常の場合、ステップS303からステップS307へ進んでモータBコントローラ系に異常がないか否かを調べ、モータBコントローラ系が正常の場合、前述のステップS308へ進んでHEV_ECU系に異常がないか否かを調べ、モータBコントローラ系が異常の場合、ステップS310へ進んでHEV_ECU系に異常がないか否かを調べる。
【0181】一方、ステップS303でエンジン制御系が正常であり、ステップS304でモータAコントローラ系が異常の場合、或いは、ステップS305でモータBコントローラ系が異常の場合、或いは、ステップS306でバッテリマネージメント系が異常の場合には、該当ステップから前述のステップS310へ進み、HEV_ECU系に異常があるか否かを調べる。
【0182】すなわち、ステップS308では、変速機制御系、エンジン制御系、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、及び、バッテリマネージメント系が全て正常である場合、或いは、変速機制御系とモータBコントローラとが正常でエンジン制御系が異常である場合に、HEV_ECU系が異常であるか否かを調べるようにしている。
【0183】このため、ステップS308でHEV_ECU系が正常である場合には、ステップS311へ進んで、T/M_ECU24は、HEV_ECU20からの指令に基づく通常の制御を実行する。また、ステップS308でHEV_ECU系が異常の場合には、少なくとも変速機制御系とモータBコントローラ系とが正常であるためモータBを走行駆動源として使用可能と判断し、ステップS309へ進んで図20に示す異常時制御(4)サブルーチンを実行することで、エンジン1を停止させてモータAで反力を受け、モータBで走行させる処理を、HEV_ECU20に代ってT/M_ECU24が実行する。
【0184】また、ステップS310においては、変速機制御系とエンジン制御系とが正常で、モータAコントローラ系、モータBコントローラ系、バッテリマネージメント系の何れかが異常である場合、或いは、変速機制御系が正常でエンジン制御系とモータBコントローラ系とが異常である場合に、HEV_ECU系が異常であるか否かを調べるようにしている。
【0185】このため、ステップS310でHEV_ECU系が正常である場合には、同様にステップS311へ進んで、T/M_ECU24は、HEV_ECU20からの指令に基づく通常の制御を実行する。また、ステップS310でHEV_ECU系が異常の場合には、駆動系の状態如何によっては走行できる可能性があるものの、HEV_ECU系の異常によって確実な走行制御ができないため走行不可とし、ステップS312へ進んで図19に示す停止制御(2)サブルーチンを実行して車両を安全に停止させる。
【0186】次に、T/M_ECU24によるフェールセーフ処理メインルーチンにおける各サブルーチンについて説明する。
【0187】先ず、図19の停止制御(2)サブルーチンでは、ステップS321で多重通信により他のECUに異常を通達し、ステップS322でインジェクタ電源23bを制御するロジック回路23cに対するインジェクタ電源停止信号をハイレベルとしてエンジン1を停止させる。
【0188】次に、ステップS323へ進み、モータAコントローラ21の制御電源21bを制御するロジック回路21cに対する電源ON信号をローレベルの信号として制御電源21bをOFFさせ、モータAを停止させると、ステップS324で、モータBコントローラ22の制御電源22bを制御するロジック回路22cに対する電源ON信号をローレベルの信号として制御電源22bをOFFさせ、モータBを停止させる。
【0189】続くステップS325では、コンタクタ9を開閉制御するロジック回路25aに対するコンタクタ制御信号をハイレベルとしてロジック回路25aの出力をローレベルにし、コンタクタ9をOFFにしてバッテリ10とモータAコントローラ21及びモータBコントローラ22とを切り離す。
【0190】その後、システムが正常に復帰した場合に不慮の事態が発生することを未然に回避するため、ステップS326でモータAコントローラ21のロジック回路21aに対する異常時制御信号を正常時のハイレベルの信号とし、また、ステップS327でモータBコントローラ22のロジック回路22aに対する異常時制御信号を正常時のハイレベルの信号とする。
【0191】そして、ステップS328で表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達し、ステップS329で、同様に、システムが正常に復帰した場合に不慮の事態が発生することを未然に回避するため、ロックアップクラッチ2をOFF(開放)にすると共に、CVT4の変速比を所定の値(中立値)に固定し、ルーチンを抜ける。
【0192】これにより、システムを統括するHEV_ECU系に異常が発生し、且つ、モータA,Bの正常な制御が不能である場合にも、車両を停止させて安全を確保することができる。しかも、エンジン1を停止させてモータA,Bをバッテリ10から切り離し、ロックアップクラッチをOFFにしてCVT4の変速比を中立値に固定することで、HEV_ECU系が正常に復帰して機能が回復した場合にも、HEV_ECU20が通常の状態に戻すような急激な制御動作を起こすことが無く、予測しないような不慮の事態が発生することを未然に回避することができる。
【0193】一方、図20の異常時制御(4)サブルーチンでは、ステップS331で多重通信により他のECUに異常を通達すると、ステップS332でインジェクタ電源23bを制御するロジック回路23cに対するインジェクタ電源停止信号をハイレベルとしてエンジン1を停止させる。
【0194】次に、ステップS333へ進み、コンタクタ9を開閉制御するロジック回路25aに対するコンタクタ制御信号をローレベルとし、HEV_ECU20からのローレベルのコンタクタ制御信号に対してロジック回路25aの出力をハイレベルとすることで、コンタクタ9をONしてバッテリ10とモータAコントローラ21及びモータBコントローラ22とを接続する。
【0195】その後、ステップS334へ進んでモータAコントローラ21の制御電源21bを制御するロジック回路21cに対する電源ON信号をハイレベルの信号とし、HEV_ECU20からのローレベルの電源ON信号に対してロジック回路21cの出力をハイレベルとし、制御電源21bをONさせてモータAの運転を可能とする。
【0196】次に、ステップS335へ進み、モータBコントローラ22の制御電源22bを制御するロジック回路22cに対する電源ON信号をハイレベルの信号とし、HEV_ECU20からのローレベルの電源ON信号に対してロジック回路22cの出力をハイレベルとして制御電源22bをONさせ、モータBの運転を可能とする。
【0197】続く、ステップS336では、モータAコントローラ21のロジック回路21aに対する異常時制御信号を異常時のローレベルにし、HEV_ECU20からのハイレベルの異常時制御信号に対してロジック回路21aの出力をハイレベルとしてモータAコントローラ21に与え、モータAコントローラ21を低速定回転制御に移行させる。
【0198】更に、ステップS337で、モータBコントローラ22のロジック回路22aに対する異常時制御信号を異常時のローレベルとし、HEV_ECU20からのハイレベルの異常時制御信号に対してロジック回路22aの出力をハイレベルとしてモータBコントローラに与え、モータBコントローラ22自身に接続されているインヒビタスイッチ14からの信号とアクセルスイッチ18からの信号に応じて、モータBコントローラ22によりモータBを定トルクで運転する定トルク制御を実行させる。
【0199】そして、ステップS338で、表示器27に異常発生を表示して運転者に異常を通達し、ステップS339で、ロックアップクラッチ2をOFF(開放)にすると共に、CVT4の変速比を所定の変速比(中立値)に固定してルーチンを抜け、T/M_ECU24自身の制御を停止する。
【0200】異常時制御(4)では、システムを統括するHEV_ECU系に異常が発生しても、モータBの駆動力が使用可能である限り、所定の目的地へ車両を安全に移動させることが可能であり、しかも、エンジン1を停止させ、ロックアップクラッチをOFFにしてCVT4の変速比を中立値に固定することで、HEV_ECU系が正常に復帰して機能が回復した場合にも、HEV_ECU20が通常の状態に戻すような急激な制御動作を起こすことが無く、予測しないような不慮の事態が発生することを未然に回避することができる。
【0201】
【発明の効果】以上説明したように請求項1記載の発明によれば、ハイブリッド車の駆動系或いは制御系に異常が発生したか否かを診断し、その結果、エンジンの系統に異常が発生したときには、エンジンを停止させてプラネタリギヤのサンギヤとキャリアとリングギヤの何れか2つを結合する連結機構の開放を指示して結合を解除させ、サンギヤ側の第1のモータを定回転数制御に移行させると共に、リングギヤ側の第2のモータを運転操作に応じた定トルク制御に移行させるため、エンジンの系統に異常が発生した場合にも、駆動輪への出力を制限しつつ、安全且つ確実に所定の目的地までの走行を可能とすることができる。
【0202】また、請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加え、エンジンの系統に発生した異常を警告し、運転者に注意を喚起してより安全性を高めることができる効果を有する。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成10年11月5日(1998.11.5)
【代理人】 【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
【公開番号】 特開2000−152412(P2000−152412A)
【公開日】 平成12年5月30日(2000.5.30)
【出願番号】 特願平10−315003