| 【発明の名称】 |
車両制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】後藤 裕二
【氏名】服部 昇
|
| 【要約】 |
【課題】車両駆動装置に設けた回転電機により減速時回生動作を行うに当たり、エンジンとの接続を制御する電磁クラッチの励磁電流を最適制御することによりクラッチ寿命および回生効率を改善する。
【解決手段】車両の減速回生時にクラッチ回転数が低下するほど増大する特性の弱励磁電流を与えることにより電磁クラッチ接続時の応答性の要求を確保しつつクラッチ引きずりトルクを必要最小限として回生効率を向上させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】励磁電流に応じてエンジンと駆動装置との間の締結トルクを可変制御可能な電磁クラッチと、電磁クラッチの出力軸側の回転数を検出する回転数検出装置と、車両の加減速状態を検出する車両状態検出装置と、車両の駆動装置に連結した回転電機と、車両減速時に電磁クラッチの締結トルクを減殺すると共に前記回転電機によりエネルギ回生を行わせる回生制御装置とを備え、前記回生制御装置は、回転数検出手段からの信号に基づき、車両減速時に検出回転数が低下するほど増大する特性の弱励磁電流を電磁クラッチに供給するように構成した車両制御装置。 【請求項2】回生制御装置は、減速時の回転電機による回生トルクを、弱励磁電流による電磁クラッチの引きずりトルクにより補正するようにした請求項1に記載の車両制御装置。 【請求項3】回生制御装置は、減速時に電磁クラッチの締結トルクを減殺すると共にエンジンを停止させ、減速から加速に移行したときにはエンジンを始動したのちに電磁クラッチの締結トルクを増大してエンジン出力を駆動装置に伝達させるようにした請求項1に記載の車両制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はハイブリッド車など車両の減速時に回転電機を駆動することによりエネルギ回生を行うようにした車両の制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術と解決すべき課題】原動機としてエンジン(燃焼機関)と回転電機とを併有し、いずれか一方または双方の駆動力により走行するようにしたハイブリッド車両が知られている(例えば、鉄道日本社発行「自動車工学」VOL.46 No.7 1997年6月号 39〜52頁参照)。 【0003】この種のハイブリッド車両では、基本的に比較的負荷の小さい運転域では回転電機をモータとして駆動してその出力のみで走行し、負荷が増大するとエンジンを起動して所要の駆動力を確保する一方、減速時には回転電機を発電機として作動させることによりバッテリを充電する回生動作を行わせるようにしている。 【0004】ところで、こうしたハイブリッド車を初めとして、車両の駆動装置に連結した回転電機により減速時の回生動作を行わせるように構成された車両では、クラッチを切って駆動装置とエンジンとの接続を断ち、エンジンブレーキに相当する減速力をすべて回転電機によって発生させることで回生効率を高めることができる。しかしながら、このように減速中にクラッチを切ってしまうと、途中で運転者の加速要求により加速に転じたときに、クラッチが再び締結状態となるまでの時間的遅れからエンジン出力が駆動装置に伝達されるのに時間がかかり加速性能や運転性が損なわれてしまう。 【0005】これに対して、例えばパウダー式クラッチなど励磁電流に応じて締結トルクを可変制御できる電磁クラッチを使用し、減速時にクラッチを完全解放するのではなく、弱励磁電流を供給してある程度のクラッチ引きずり状態にしておくことにより再締結時の応答性を改善することが可能である。しかしながら、クラッチを引きずり状態にするとパウダー等のクラッチ構成要素が摩耗して耐久性が低下することに加えて、引きずりにより消費される分だけ回生トルク(発電量)が減少して回生効率が悪化するという問題も生じる。 【0006】本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、減速回生時の電磁クラッチの励磁電流を回転数に応じて最適制御することにより前記問題点を解消することを目的としている。 【0007】 【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、励磁電流に応じてエンジンと駆動装置との間の締結トルクを可変制御可能な電磁クラッチと、電磁クラッチの出力軸側の回転数を検出する回転数検出装置と、車両の加減速状態を検出する車両状態検出装置と、車両の駆動装置に連結した回転電機と、車両減速時に電磁クラッチの締結トルクを減殺すると共に前記回転電機によりエネルギ回生を行わせる回生制御装置とを備え、前記回生制御装置を、回転数検出手段からの信号に基づき、車両減速時に検出回転数が低下するほど増大する特性の弱励磁電流を電磁クラッチに供給するように構成した。なお前記弱励磁電流とは電磁クラッチが引きずりを生じる程度の弱い電流値である。 【0008】請求項2の発明は、上記請求項1の発明の回生制御装置を、減速時の回転電機による回生トルクを、弱励磁電流による電磁クラッチの引きずりトルクにより補正するように構成した。 【0009】請求項3の発明は、上記請求項1の発明の回生制御装置を、減速時に電磁クラッチの締結トルクを減殺すると共にエンジンを停止させ、減速から加速に移行したときにはエンジンを始動したのちに電磁クラッチの締結トルクを増大してエンジン出力を駆動装置に伝達させるように構成した。 【0010】 【作用・効果】上記請求項1以下の各発明において、減速回生時には電磁クラッチに対してクラッチ出力軸の回転数が低下するほど増大する特性の弱励磁電流を付与し、これにより当該弱励磁電流に応じてクラッチ回転数が低下するほど引きずりトルクが増大するような特性で電磁クラッチが作動する。図3はこのように電磁クラッチが引きずりを生じる程度の弱電流値を付与した状態から所要の締結トルクとなるまでの応答時間との関係をクラッチ出力軸の回転数(以下単に「クラッチ回転数」という。)を変化させながら求めた実験結果を示したもので、図示したように同一電流値ではクラッチ回転数が高いほど応答時間が短くなり、換言すれば所定の目標応答時間を達成するのに要する弱励磁電流の値は高速回転時ほど小さくなる。 【0011】したがって、本発明のようにクラッチ回転数が低下するほど弱励磁電流の値が増大する特性を設定することにより、減速過程での回転数変化にかかわらず加速に転じた際のクラッチ締結までの応答時間を常に所定の許容限度内に収めることができ、かつその間の引きずりを必要限度内に抑えて電磁クラッチの耐久性を改善することができる。 【0012】また、請求項2の発明では、減速時の回転電機による回生トルクを、弱励磁電流により生じる電磁クラッチの引きずりトルクに応じて補正する。減速時の回転電機による回生トルクつまり発電量は通常エンジンブレーキに相当する適度な減速力を生じるように設定するが、電磁クラッチに引きずりがある場合にはこの回生トルクは引きずりにより消費されるトルクの分だけ少なくなる。したがって、回生時のクラッチ回転数に応じてクラッチ引きずりトルクが変化する運転状態下において、本発明のように回生トルクをクラッチ引きずりトルクによる消費分だけ補正してやることにより、適切な減速力を発揮させつつその範囲内で最大限に回生効率を高めることができる。特に本発明ではクラッチ高速回転時ほどクラッチ引きずりトルクが小さくなるような特性で電磁クラッチを制御しているので、回生効率の高い高速回転域を有効利用して回生効果を十分に引き出すことができる。 【0013】さらに、請求項3の発明によれば、減速時に電磁クラッチの締結トルクを減殺すると共にエンジンを停止させ、減速から加速に移行したときにはエンジンを始動したのちに電磁クラッチの締結トルクを増大してエンジン出力を駆動装置に伝達させる。このように、減速回生時にエンジンを停止させることによりエンジン運転のための燃料消費を最小限に抑えて総合的なエネルギー効率をより高められると共に排気エミッション性能をも改善することができる。減速から加速に移行するときにはエンジンを始動したのちその出力を電磁クラッチを締結して駆動装置に伝えるのでエンジンによる十分な加速力を確保できる。なお、エンジンが始動して所要の出力が立ち上がるまでの間は回転電機を動力源として駆動することにより加速応答性を改善することができる。 【0014】 【発明の実施の形態】以下本発明をハイブリッド車両に適用した実施形態につき図面に基づいて説明する。まず図1〜図2にハイブリッド車両の構成例を示す。これは走行条件に応じてエンジンまたはモータの何れか一方または双方の動力を用いて走行するパラレル方式のハイブリッド車両である。 【0015】図1において、太い実線は機械力の伝達経路を示し、太い破線は電力線を示す。また、細い実線は制御線を示し、二重線は油圧系統を示す。この車両のパワートレインは、モータ1、エンジン2、クラッチ3、モータ4、無段変速機5、減速装置6、差動装置7および駆動輪8から構成される。モータ1の出力軸、エンジン2の出力軸およびクラッチ3の入力軸は互いに連結されており、また、クラッチ3の出力軸、モータ4の出力軸および無段変速機5の入力軸は互いに連結されている。前記モータ4が本発明の回転電機に相当し、これは上述したように無段変速機5、減速装置6等で構成された駆動装置に連結されている。 【0016】クラッチ3締結時はエンジン2とモータ4が車両の推進源となり、クラッチ3解放時はモータ4のみが車両の推進源となる。エンジン2またはモータ4の駆動力は、無段変速機5、減速装置6および差動装置7を介して駆動輪8へ伝達される。無段変速機5には油圧装置9から圧油が供給され、ベルトのクランプと潤滑がなされる。油圧装置9のオイルポンプ(図示せず)はモータ10により駆動される。 【0017】クラッチ3を締結している状態でモータ1を車両の推進と制動に用いることもでき、モータ4をエンジン始動や発電(回生)に用いることもできる。クラッチ3はパウダー式の電磁クラッチであり、後述するコントローラ16からの指令電流値に応じて伝達トルクが可変制御される可変容量のものである。無段変速機5はベルト式やトロイダル式などの無段変速機であり、減速比を無段階に調節することができる。 【0018】モータ1,4,10はそれぞれ、インバータ11,12,13により駆動される。なお、モータ1,4,10に直流電動モータを用いる場合には、インバータの代わりにDC/DCコンバータを用いる。インバータ11〜13は共通のDCリンク14を介してメインバッテリ15に接続されており、メインバッテリ15の直流充電電力を交流電力に変換してモータ1,4,10へ供給するとともに、モータ1,4の交流発電電力を直流電力に変換してメインバッテリ15を充電する。なお、インバータ11〜13は互いにDCリンク14を介して接続されているので、回生運転中のモータにより発電された電力をメインバッテリ15を介さずに直接、力行運転中の他のモータへ供給することができる。メインバッテリ15には、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池などの各種電池や、電機二重層キャパシターいわゆるパワーキャパシターが適用される。 【0019】16は本発明の回生制御装置を初めとするハイブリッド車両の各種制御機能を発揮するコントローラであり、マイクロコンピュータとその周辺部品や各種アクチュエータなどを備え、クラッチ3の伝達トルク、モータ1,4,10の回転数や出力トルク、無段変速機5の変速比、エンジン2の燃料噴射量・噴射時期、点火時期などを制御する。 【0020】コントローラ16には、図2に示すように、キースイッチ20、セレクトレバースイッチ21、アクセルセンサ22、ブレーキスイッチ23、車速センサ24、バッテリ温度センサ25、バッテリSOC検出装置26、エンジン回転数センサ27、スロットル開度センサ28、クラッチ回転数センサ29が接続される。キースイッチ20は、車両のキーが0N位置またはSTART位置に設定されると閉路する(以下、スイッチの閉路をオンまたは0N、開路をオフまたはOFFと呼ぷ)。セレクトレバースイッチ21は、パーキングP、ニュートラルN、リバースRおよびドライブDの何れかのレンジに切り換えるセレクトレバー(図示せず)の設定位置に応じて、P,N,R,Dのいずれかのスイッチがオンする。 【0021】アクセルペダルセンサ22は本発明の車両状態検出装置に相当し、アクセルペダルの踏み込み量から加減速等の要求負荷状態を検出する。ブレーキスイッチ23はブレーキペダルの踏み込み状態(この時、スイッチオン)を検出する。車速センサ24は車両の走行速度を検出し、バッテリ温度センサ25はメインバッテリ15の温度を検出する。また、バッテリSOC検出装置26はメインバッテリ15の実容量の代表値であるSOC(State Of Charge)を検出する。エンジン回転数センサ27はエンジン2の回転数を検出し、スロットル開度センサ28はエンジン2のスロットルバルブ開度を検出する。クラッチ回転数センサ29は本発明の回転数検出装置に相当し、クラッチ3の出力軸側の回転数(図1の構成ではモータ4の回転数に等しい)を検出する。 【0022】コントローラ16にはまた、エンジン2の燃料噴射装置30、点火装置31、可変動弁装置(バルブタイミング調節装置)32などが接続される。コントローラ16は、燃料噴射装置30を制御してエンジン2への燃料の供給と停止および燃料噴射量・噴射時期を調節するとともに、点火装置31を駆動してエンジン2の点火時期制御を行う。また、コントローラ16は可変動弁装置32を制御してエンジン2の吸・排気弁の作動状態を調節する。なお、コントローラ16には低圧の補助バッテリ33から電源が供給される。 【0023】以上は本発明が適用可能なハイブリッド車両の基本的な構成例を示したものであり、本発明ではこうしたハイブリッド車両において減速回生作動時のクラッチ制御電流を適切に制御することによりクラッチ寿命または回生効率を改善することを目的としている。以下にこのためにコントローラ16が実行する制御の実施形態につき図面を参照しながら説明する。 【0024】図4は減速時回生制御の流を概略的に示したもので、これはハイブリッド車両の総合的な制御の一環として周期的に実行される。この制御ではまず車速センサ24、アクセルペダルセンサ22、エンジン回転数センサ27からの信号に基づきそれぞれ車速VSP、アクセル開度APS、エンジン回転数Neを検出し、前記アクセル開度APSと車速VSPとから車両が減速状態にあるか否かを判定する(ステップ301〜303)。前記判定では、アクセル開度APSが0つまりアクセルペダルが踏み込まれておらず、かつ車速VSPが所定の基準値V1よりも大であれば減速と判定してステップ304以降の回生制御に入り、前記以外の条件であれば定常または加速状態であると判定してステップ312以降の非減速時の制御に入る。 【0025】回生制御の当初ではクラッチ3の出力軸側回転数Ncをクラッチ回転数センサ29からの信号に基づいて検出し、次いでこのクラッチ回転数Ncからクラッチ3に付与する弱励磁電流Icを決定してこの弱励磁電流Icによりクラッチ3の締結トルクを制御する(ステップ304〜306)。既述したように所要のクラッチ締結応答とクラッチ回転数との関係は実験的に求めることができるので、図5に例示したように前記弱励磁電流Icをクラッチ回転数Ncに応じて付与するようなテーブルを予め用意しておき、これを検索することで適切な弱励磁電流Icを速やかに決定することができる。 【0026】次にエンジン2が停止しているか否かをエンジン回転数Neから判定し、停止していなければ停止させてから回生トルク演算の処理に移る(ステップ307、308)。 【0027】回生トルク演算では、予め設定したテーブル検索等の処理により目標回生トルクTrを設定する(ステップ309)。このときの目標回生トルクTrは、基本的にはモータ4の回転数(この場合クラッチ回転数Ncに等しい)の関数として求められるもので、例えばエンジン2によるエンジンブレーキトルクに相当する回転抵抗が生じるようにモータ4に発電作動させるための設定値である。ただし本発明ではクラッチ3に弱励磁電流を与え、停止状態としたエンジン側との間に若干の引きずりを発生させているので、この引きずりトルクΔTを補正量として前記目標トルクTrから減じることでモータ4が発生すべき正味のトルクに補正し、これに基づいてモータ4に回生作動をさせている(ステップ310、311)。前記引きずりトルクΔTについても実験的に求められるので、図6に例示したように引きずりトルクΔTを弱励磁電流Icに応じて付与するようなテーブルを予め用意しておき、このテーブル検索することで適切な引きずりトルクΔTひいては目標回生トルクTrを設定することができる。 【0028】一方、ステップ302〜303の判定処理にて非減速時であると判定されたときには、エンジン回転数Neを所定の判定値N1と比較することでエンジン2が始動しているか否かを判定し、Ne<N1のときは未始動と判定してエンジン2を始動させてから上記回生制御を停止状態とし、クラッチ3を締結する(ステップ312〜315)。これによりエンジン2が車両の駆動装置に連結されてエンジン出力が車両の駆動に利用される状態となる。図示しないがこのときの車両駆動力は必要に応じてモータ4も負担し、減速から加速へと転じたときには所要の駆動力が得られるようにモータ4は回生作動から力行作動へと制御が切り換えられることになる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003997 【氏名又は名称】日産自動車株式会社
|
| 【出願日】 |
平成10年11月4日(1998.11.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100075513 【弁理士】 【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2000−152411(P2000−152411A) |
| 【公開日】 |
平成12年5月30日(2000.5.30) |
| 【出願番号】 |
特願平10−313361 |
|