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【発明の名称】 モータ駆動装置
【発明者】 【氏名】鈴井 康介

【要約】 【課題】燃料電池と2次電池の電力混合を適切に行う。

【解決手段】燃料電池10は第1インバータ16を介して、モータ20の巻線の一端に接続されている。2次電池12は第2インバータ18を介して、モータ20の巻線の他端に接続されている。すなわち、モータ20の巻線を挟んで反対側に2つの電源が配置されている。そして、燃料電池10と2次電池12の中性点電位が等しくなるように第1インバータ16と第2インバータ18が制御される。従ってモータ20に不適当な直流電流を流さずに、2つの電源の電力を混合してモータ20を駆動できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 直流電圧を発生する第1直流電圧発生手段と、前記第1直流電圧発生手段により発生した直流電圧を交流電圧に変換する第1変換手段と、前記第1直流電圧発生手段と異なる特性をもち直流電圧を発生する第2直流電圧発生手段と、前記第2直流電圧発生手段により発生した直流電圧を交流電圧に変換する第2変換手段と、各相の巻線の両端がそれぞれ前記第1変換手段および前記第2変換手段に接続されたモータと、前記第1直流電圧発生手段と前記第2直流電圧発生手段の中性点電位が等しくなるように前記第1変換手段および前記第2変換手段を制御する制御手段と、を含むことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】 請求項1に記載のモータ駆動装置において、前記第1直流電圧発生手段は燃料電池であり、前記第2直流電圧発生手段は2次電池であり、前記第1変換手段および前記第2変換手段はインバータであることを特徴とするモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はモータ駆動装置に関し、特に、特性が異なる2種類の直流電源からの電力でモータを駆動する装置に関する。2種類の電源は、例えば、燃料電池および2次電池である。
【0002】
【従来の技術】電気自動車の電力源として燃料電池が注目されている。燃料電池は水素などの燃料から電気を発生し、推進用のモータへ供給する。ただし、燃料電池の出力は比較的緩やかに増減する。従って、車両の走行に必要なモータ側の電力の要求に対する燃料電池出力の応答性が十分でないので、これを補うバッファ用の2次電池を搭載することが好適である。
【0003】ところが、燃料電池と2次電池では図6に例示するように出力特性(電流電圧特性)が異なるので、この特性の相違を考慮したシステム構成を採用する必要がある。従来周知のエネルギ混合方法の一つは、2つの電力源の間にDC−DCコンバータ回路を介在させ、DCレベルでエネルギを混合する方法である。また、各電力源にそれぞれ対応する2つのモータを使用し、モータ出力側で機械的にエネルギを混合する方法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、DC−DCコンバータを使用する構成の場合、電気自動車を駆動するレベルの電力を取り扱うDC−DCコンバータは体格・重量が大きく、また高価であり、従って車載が難しいという問題がある。
【0005】また、モータを2つ使用する構成の場合、比較的安価にシステムを構成できるものの、同レベルの駆動モータを2台も自動車に搭載することは、搭載スペースの観点から不利である。
【0006】さらに、特開平8−331705号公報を参照すると、その図1に示されるように、燃料電池と2次電池から独立に出力を取り出してモータを駆動する技術が開示されている。燃料電池の第1インバータを介して第1モータコイルが接続され、2次電池に第2インバータを介して第2モータコイルが接続されている。そして、両コイルが一つのモータステータに組み付けられている。しかし、同公報の装置は、原理的には2つのモータを使用する従来技術に属する。各モータのコイルが小さくなるので容量の範囲が制限されるという不利もある。
【0007】本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、一つのモータを駆動するために2種類の電力源の電力を適切に混合できるモータ駆動装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明に係るモータ駆動装置は、直流電圧を発生する第1直流電圧発生手段と、前記第1直流電圧発生手段により発生した直流電圧を交流電圧に変換する第1変換手段と、前記第1直流電圧発生手段と異なる特性をもち直流電圧を発生する第2直流電圧発生手段と、前記第2直流電圧発生手段により発生した直流電圧を交流電圧に変換する第2変換手段と、各相の巻線の両端がそれぞれ前記第1変換手段および前記第2変換手段に接続されたモータと、前記第1直流電圧発生手段と前記第2直流電圧発生手段の中性点電位が等しくなるように前記第1変換手段および前記第2変換手段を制御する制御手段と、を含む。
【0009】好ましくは、前記第1直流電圧発生手段は燃料電池であり、前記第2直流電圧発生手段は2次電池であり、前記第1変換手段および前記第2変換手段はインバータである。
【0010】本発明によれば、モータの各相の巻線の一端には第1変換手段を介して第1直流電圧発生手段が接続され、巻線の他端には第2変換手段を介して第2直流電圧発生手段が接続されている。そして、両直流電圧発生手段の中性点電位が等しくなるように両変換手段を制御し、中性点電位の相違に起因する不適当な電流成分の発生を防ぐ。これによりモータ両側の電源の電力をモータに供給し、すなわち2つの電力源の出力を混合して、モータを駆動することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)について、図面を参照し説明する。図1は、電気自動車のモータ駆動装置の全体構成を示すブロック図である。
【0012】燃料電池10は、本発明の第1直流電圧発生手段の一形態であり、車両走行の主電力源である。燃料電池10は、水素ガスと酸素ガスを燃料として電気化学反応により電気エネルギを生成する。2次電池12は、本発明の第2直流電圧発生手段の一形態であり、鉛バッテリなどからなる。2次電池12は高い出力応答性を有しており、燃料電池10の応答性を補う。
【0013】電力変換部14は第1インバータ16および第2インバータ18を有し、これらは本発明の第1変換手段および第2変換手段に対応する。燃料電池10は第1インバータ16に、2次電池12は第2インバータ18に接続されている。各インバータ16、18は、該当する電源の直流電圧を交流電圧に変換し、駆動モータ20に供給する。
【0014】駆動モータ20は3相交流式である。通常のモータでは3相のコイルの端部が一つに束ねられているのと異なり、モータ20の3相のコイル、すなわちU相巻線20a、V相巻線20bおよびW相巻線20cは切り離されている。図では簡略化されているが、各相のコイルの一端は第1インバータ16に接続され、他端は第2インバータ18に接続されている。
【0015】また、電力変換部14において、第1インバータ16の入力側には、容量が等しい2つのコンデンサ24、26が並列に接続されている。また、第2インバータ18の入力側にも、容量が等しい2つのコンデンサ28、30が並列に接続されている。そして、コンデンサ24、26の中間点Aが、コンデンサ28、30の中間点Bと接続されている。
【0016】図2を参照すると、燃料電池10側には2つの電圧センサ32、34が設けられている。電圧センサ32は燃料電池10の端子間の電圧を検出する。電圧センサ34は燃料電池10の一方端子と中間点Aの電圧を検出する。同様に、2次電池12側でも、電圧センサ36が端子間電圧を検出し、電圧センサ38が一方端子と中間点Bの電圧を検出する。これらの電圧検出信号から、各電源における現状の中性点電圧の偏差を知ることができる。
【0017】図1に戻り、制御装置40は、「モータ20の出力トルク要求と燃料電池10の出力要求の双方を満たし」、かつ、「燃料電池10と2次電池12の中性点電位が等しくなるように」、2つのインバータ16、18を制御する。
【0018】モータ20の出力トルクは、アクセル、ブレーキなどの操作系情報および車速などの車両情報から決まる。制御装置40は、主として燃料電池10の電力を使い、補足的に2次電池12の電力を使って所望のモータ出力を得る。
【0019】しかし実際には、燃料電池10は、モータ側の要求に応えるような高い応答性はもっていない。そして、燃料電池10は、各時点で自分の出力要求を持っており、この出力要求の電力を放出しようとする。そこで、制御装置40は、燃料電池10には出力要求の電力を放出させるとともに(第1インバータ16の制御)、バッファとしての2次電池12を使ってモータ側の要求に応える(第2インバータ18の制御)。
【0020】燃料電池10の出力がモータ側の要求を下回るとき、2次電池12が第2インバータ18を介して電力を放出し、トルクの不足分を補う。逆に燃料電池10の出力がモータ側の要求を上回るとき、余った電力を2次電池12が吸収するように第2インバータ18が制御される。これにより2次電池12が充電される。
【0021】上記の制御を行うため、制御装置40には操作系情報および車両情報が入力され、これらの情報からモータの出力トルク要求が決定される。また、燃料電池10からは発電電力(出力要求)が入力される。さらに、電力変換部14からは、各インバータ16、18の出力電圧および入力電圧、中性点電圧偏差が入力される。さらに、モータ20に取り付けられた回転センサ(図示せず)から、ロータの回転位置・速度情報が入力される。
【0022】これらの情報に基づいて、制御装置40は、第1インバータ16および第2インバータ18のPWMパターン信号を個別に生成し、電力変換部14へ出力する。第1インバータ16および第2インバータ18は、入力信号に従ってスイッチング動作を行う。
【0023】図3は、上記の制御方法を示すブロック図である。制御装置40は、運転者の操作情報および車両情報(100)から、駆動モータ20が出力すべきトルク(モータトルク指令)を演算する(102)。そして、例えばベクトル制御等の周知の制御手法を用いてモータ電流ベクトル(電流指令)が演算される(104)。ここまでは、従来の一般的な電気自動車と同じ制御が行われる。
【0024】前述のように、本システムの主電源である燃料電池10は、車両の要求する駆動力の変化に対して十分な応答性をもたない。そこで、まず、燃料電池10が出力すべき電力の要求値が、燃料電池10の内部情報から算出される(200)。
【0025】燃料電池10の出力電力を駆動モータ20が吸収できるように、燃料電池側の電圧ベクトル(電圧指令)が算出される(202)。ここで、吸収電力の大きさに応じて必要ならば、駆動モータの出力トルクに影響が無いように、モータ電流ベクトルが再演算される(204)。再演算ではトルク電流と直交する電流ベクトルが加減される。そして、再演算された電流ベクトルとモータ20に流れる電流とが一致するように、2次電池側の電圧ベクトルが演算される(206)。ここでは、電流センサ(図示せず)で検出したモータ電流がフィードバックされ(208)、フィードバック制御が行われる。
【0026】ここまでの処理により、各インバータ16、18についての電圧ベクトルが決まる。上記の処理では、要するに、モータトルク指令と燃料電池出力要求が先に決まる。そして、燃料電池の出力要求を達成するように燃料電池側の電圧ベクトルを決める。さらに、モータトルク指令を達成するように、燃料電池と2次電池についての電圧ベクトルを適当に設定する。このとき、2次電池側の電圧ベクトル演算にはモータ電流のフィードバックを適用するが、燃料電池側の演算にはモータ電流はフィードバックしていない。
【0027】そして、燃料電池10の出力要求がトルク指令を下回るときは、不足分のトルクを補うため、2次電池12に電力を放出させるような電圧ベクトル演算結果が得られる。逆に、燃料電池10の出力要求がトルク指令を上回るときは、2次電池12が充電されるような電圧ベクトル演算結果が得られる。
【0028】図4および図5は、上記の制御処理の電流ベクトルおよび電圧ベクトルの例を示している。第1インバータ16および第2インバータ18についての電圧ベクトルVinv1、Vinv2を合成したものが、モータの電圧ベクトルVmotである。電圧ベクトルVmotおよび電流ベクトルImotからモータトルクが決まる。
【0029】図4は定常状態、すなわち、モータ20が一定の出力を出し続けている状態を示す。定常状態では、燃料電池10の発生電力のみでモータ20が駆動される。この例では、モータ出力Pmotは10kW、第1インバータ16側の出力Pinv1は10kW、第2インバータ18側の出力Pinv2は0kWである。VmotがVinv1と一致し、Vinv2は0である。
【0030】図5は過渡状態を示している。定常状態からモータ出力Pmotが5kWに低下している。このとき、燃料電池10は、応答性が低いために、直ぐには出力を5kWまで落とすことができない。その間、モータ駆動力の減少が必要な分(5kW)が第2インバータ18の制御で吸収される。第1インバータ16側の出力Pinv1は定常状態と同様に10kWであるが、第2インバータ18側の出力Pinv2は−5kWである。これを実現するために、一時的にモータの力率が下げられる。両インバータの電圧ベクトルVinv1、Vinv2の合成ベクトルがモータ電圧ベクトルVmotである。
【0031】上記の処理でインバータ16、18の電圧ベクトルが個別に決まったので、それぞれの電圧ベクトルをPWMパターンに変換し、インバータ16、18への指令を作成する。
【0032】ただし、実際にインバータが動作するとき、燃料電池10の中性点電位と2次電池12の中性点電位がずれていると、モータ20の各コイル20a〜20cに不適当な直流電流が流れる。これを避けるため、両電源10、12の中性点電位を揃える制御が行われる。
【0033】すなわち、燃料電池側の中性点電圧偏差が検出され(300)、偏差をなくすためのオフセット電圧が演算される(302)。図2を参照すると、点Aの電位が端子間電圧の半分(センサ34の検出電圧がセンサ32の検出電圧の半分)であれば中性点電圧偏差が0であるが、それ以外の場合には中性点電圧偏差が生じている。
【0034】そこで、中性点電圧偏差が生じている場合、これを修正して0にする制御を行う。中性点電位は、第1インバータ16の3相出力電圧に応じて変化する。そこで、マイナスの偏差が生じている場合には、インバータ出力電圧を高くするオフセット電圧が演算され、電圧ベクトルに加えられる。逆にプラスの偏差が生じている場合には、インバータ出力電圧を低くするオフセット電圧が演算され、電圧ベクトルに加えられる。オフセットは、中性点電圧偏差が0になるまで与えられる。
【0035】2次電池側についても同様の処理が行われる。中性点電圧偏差が検出され(304)、偏差をなくすためのオフセット電圧が演算される(306)。図2を参照すると、点Bの電位(センサ38の検出信号)と電池両端電圧(センサ36の検出信号)から中性点電圧偏差が求められる。そして、この偏差を修正するようなオフセットを第2インバータ18の三相出力電圧に与える処理が行われる。
【0036】両電源に関し、オフセット演算後に最終的なPWMパターンが生成、出力される(400、402)。オフセットを与えた電圧ベクトルがPWMパターンに変換される。この処理は、燃料電池10と2次電池12に関して個別に行われる。第1インバータ16および第2インバータ18は、入力されたPWMパターンに従ってスイッチング動作を行う。これにより、2つの電源からの電流を合成した電流がモータ20のコイル20a〜20cに流れる。その結果、モータ20の出力トルクは、制御装置40が決めたトルク指令値に等しくなる。
【0037】ここで、燃料電池10の中性点電圧偏差と2次電池12の中性点電圧偏差がそれぞれ修正されているので、両電源の中性点電位は等しくなる。従って、モータ20に不要な直流電流成分が流れるのを回避できる。
【0038】以上のように、本実施形態によれば、燃料電池と2次電池がモータ(各相コイル)の反対側に配置されており、かつ、両電源の中性点電位が等しくなるように制御されている。このような構成を採用したので、両電源の電力をモータに供給してモータを駆動でき、燃料電池と2次電池の適切な電力混合が実現されている。
【0039】なお、本実施形態では、燃料電池と2次電池の組合せが採用された。しかし、本発明はこの組合せには限定されない。例えば、バッテリとキャパシタ、高容量バッテリと高出力バッテリ、高電圧バッテリと低電圧バッテリの組合せにも本発明を適用可能である。
【0040】また、本発明は電気自動車に限られず、他のモータ利用システムにも同様に適用可能である。
【0041】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によれば、モータの各相の巻線の両端のそれぞれに変換手段を介して直流電圧発生手段を接続し、かつ、2つの電圧発生手段の中性点電位が等しくなるように制御するので、2種類の異なる特性の電源の出力を適当に混合して1つのモータを駆動することができる。
【0042】従って、2つの直流電源の電力混合を、1つのモータと2つの直流/交流変換手段という比較的簡素・安価な構成で実現できる。しかも、特性の異なる2つの直流電源の動作点を独立に制御できる。上記の例では燃料電池および2次電池の動作点を個別のインバータを使って独立に制御している。従って、各電源を効率よく使用でき、エネルギ効率の高いシステムを構築可能である。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成10年10月13日(1998.10.13)
【代理人】 【識別番号】100075258
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 研二 (外2名)
【公開番号】 特開2000−125411(P2000−125411A)
【公開日】 平成12年4月28日(2000.4.28)
【出願番号】 特願平10−290184