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【発明の名称】 内燃機関型電気機関車用制御装置
【発明者】 【氏名】丸山 高央

【要約】 【課題】ディーゼル電気機関車においてエンジン出力とエンジン負荷である誘導電動機のトルク指令との協調をとり、エンジンの過負荷状態を回避するディーゼル電気機関車用制御装置を得る。

【解決手段】主幹制御器1から出力されるノッチ信号Nとノッチ信号Nに対応したエンジン回転数指令値n*とエンジン回転数nと誘導電動機17の回転数frを入力し、ノッチ信号Nが変化した場合にはエンジン回転数制御応答時間の間はノッチ信号変化前後のトルク指令値からエンジン回転数nに応じたトルク指令値Tpを演算し、それ以外の場合はノッチ変化後のノッチ信号Nに対応したトルク指令値Tpを演算する協調制御部15を設け、トルク指令値Tpをインバータ制御装置20に出力するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンにより駆動される交流発電機の発電出力を整流器で直流電力に変換し、この直流電力を電力変換器にて交流電力に変換して車両推進用の誘導電動機を駆動制御する内燃機関型電気機関車用制御装置において、エンジン回転数を決めるノッチ信号を出力する主幹制御器と、前記ノッチ信号に対応したエンジン回転数指令値を発生するエンジン回転数指令発生器と、前記主幹制御器から出力されるノッチ信号、前記エンジン回転数指令値及びエンジン回転数と前記誘導電動機の回転数を入力し、前記ノッチ信号が変化した場合にはエンジン回転数制御応答時間の間はノッチ信号変化前後のトルク指令値から前記エンジン回転数に応じた前記誘導電動機の出力指令値を演算し、それ以外の場合はノッチ変化後のノッチ信号に対応した前記出力指令値を演算する出力指令値演算手段と、この出力指令値に応じた出力制御信号を前記電力変換器に出力する電力変換器制御手段とを備えたことを特徴とする内燃機関型電気機関車用制御装置。
【請求項2】 エンジン回転数に応じた最適なエンジン出力をエンジン出力指令として出力するエンジン出力指令発生器と、前記エンジン出力指令から前記エンジンの電気的負荷である補機回路で消費される補機電力を減算し、その減算値に基づいて前記誘導電動機の出力制限値を生成する出力制限値生成手段と、この生成された出力制限値で出力指令値演算手段で演算された出力指令値を制限して電力変換器制御手段に出力する出力指令制限手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関型電気機関車用制御装置。
【請求項3】 出力指令値演算手段は、ノッチ信号が増加方向に変化した場合には、エンジン回転数制御応答時間の間はノッチ信号変化前後のトルク指令値から前記エンジン回転数に応じた出力指令値を演算し、それ以外の場合はノッチ変化後のノッチ信号に対応した出力指令値を演算することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関型電気機関車用制御装置。
【請求項4】 出力制限値生成手段は、前記エンジン出力指令から前記エンジンの電気的負荷である補機回路で消費される補機電力を減算する減算器と、その値を前記誘導電動機の角速度で除算して出力制限値としてのトルク制限値を生成して出力指令制限手段に出力する除算器とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の内燃機関型電気機関車用制御装置。
【請求項5】 出力制限値生成手段は、トルク制限値を電流制限値に変換するトルク/電流変換手段を備え、この電流制限値を出力制限値として出力指令制限手段に出力することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関型電気機関車用制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可変電圧可変周波数インバータにより駆動される誘導電動機を車両推進用の電動機として使用したディーゼル電気機関車に好適な内燃機関型電気機関車用制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ディーゼル電気機関車は、ディーゼルエンジンの出力を交流発電機で三相交流電力に変換したうえで三相交流電力を三相ダイオード整流器で直流電力に変換し、さらにその直流電力を可変電圧可変周波数インバータで再度交流電力に変換して車両推進用の誘導電動機に供給して駆動するものである。
【0003】ディーゼルエンジンの出力は、主幹制御器のノッチ指令によって決まるエンジン回転数によって決定され、各ノッチ毎に最適な出力が存在する。従って、この最適なエンジン出力に対応してエンジンの負荷である推進用誘導電動機の出力を常にエンジン出力以下になるように制御しなければならない。もしも、エンジン出力に対して過負荷になると最悪の場合、エンジンが失速状態に陥ることもある。
【0004】そこで、従来からエンジン出力とその負荷の協調制御方法が検討されている。この協調制御方法として例えば、特開平6−98412号公報に記載されている方法がある。図9に協調制御を行う従来のディゼール電気機関車用制御装置の構成図を示す。図において、1は主幹制御器でありノッチ信号Nを出力する。2,3は関数発生器であり、関数発生器2はエンジン回転数信号nを変数として、所定のエンジン出力に相当する関数出力Pnを発生する。一方、関数発生器3は、主幹制御器1のノッチ信号Nを変数として、所定のエンジン出力に相当する関数出力PNを発生する。
【0005】4は低位優先選択器であり、関数発生器2からの関数出力Pnと関数発生器3からの関数出力PNを入力し、関数出力の小さい方を選択して出力する。5は比較器であり、低位優先選択器4の出力をエンジンガバナから出力される負荷調整信号により補正する。
【0006】6は定出力パターン発生器であり、関数として、推進用電動機のロータ周波数frを変数とし、エンジン回転数信号nまたは主幹制御器1のノッチ信号Nに対応した比較器5からの信号Ppをパラメータとする電流パターンIpを作成し、この電流パターンIpが推進用電動機を駆動制御するインバータ制御装置の電流パターンになる。
【0007】従来装置はこのような構成になっているので、主幹制御器1のノッチ信号Nが増加(ノッチアップ)、すなわちエンジン回転数およびエンジン出力増のときには、PNはすぐにノッチ信号変化後の値になるが、エンジン回転数がノッチ変化後の回転数になるまでにはエンジンの制御応答時間が存在するため、その間エンジン回転数によるPnはノッチ信号によるPNより小さくなるので、低位優先選択器4の出力としてPnが選択され、エンジンにとって過負荷となる状態は回避される。
【0008】逆に、主幹制御器1のノッチ信号が減少(ノッチダウン)、すなわちエンジン回転数およびエンジン出力減のときには、PNはすぐにノッチ信号変化後の値になるが、エンジン回転数がノッチ変化後の回転数になるまでにはエンジンの制御応答時間が存在するため、その間エンジン回転数によるPnはノッチ信号によるPNより大きくなるので、低位優先選択器4の出力としてPNが選択される。なお、ノッチダウン時には、PnでもPNでもどちらも過負荷になることはないので、どちらを選択してもよいが、この例ではPNを選択している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のように従来技術におけるディーゼル電気機関車用制御装置は、エンジン出力との協調制御を実現するものであるが、充電器、空気圧縮機、冷却用ブロワー等の補機用電力の変化を考慮していないため、従来技術による制御装置ではエンジンにとって最適な運転状態になっているとは限らないという問題点があった。
【0010】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、補機用電力を考慮することによりエンジンの過負荷状態を回避できるとともにエンジンを最適な運転状態に保つことができる内燃機関型電気機関車用制御装置を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る内燃機関型電気機関車用制御装置は、エンジンにより駆動される交流発電機の発電出力を整流器で直流電力に変換し、この直流電力を電力変換器にて交流電力に変換して車両推進用の誘導電動機を駆動制御する電気機関車用制御装置において、前記エンジン回転数を決めるノッチ信号を出力する主幹制御器と、前記ノッチ信号に対応したエンジン回転数指令値を発生するエンジン回転数指令発生器と、前記主幹制御器から出力されるノッチ信号、前記エンジン回転数指令値及びエンジン回転数と前記誘導電動機の回転数を入力し、前記ノッチ信号が変化した場合にはエンジン回転数制御応答時間の間はノッチ信号変化前後のトルク指令値から前記エンジン回転数に応じた前記誘導電動機の出力指令値を演算し、それ以外の場合はノッチ変化後のノッチ信号に対応した前記出力指令値を演算する出力指令値演算手段と、この出力指令値に応じた出力制御信号を前記電力変換器に出力する電力変換器制御手段とを備えたものである。
【0012】請求項2の発明に係る内燃機関型電気機関車用制御装置は、エンジン回転数に応じた最適なエンジン出力をエンジン出力指令として出力するエンジン出力指令発生器と、前記エンジン出力指令から前記エンジンの電気的負荷である補機回路で消費される補機電力を減算し、その減算値に基づいて前記誘導電動機の出力制限値を生成する出力制限値生成手段と、この生成された出力制限値で出力指令値演算手段で演算された出力指令値を制限して電力変換器制御手段に出力する出力指令制限手段とを備えたものである。
【0013】請求項3の発明に係る内燃機関型電気機関車用制御装置の出力指令値演算手段は、ノッチ信号が増加方向に変化した場合には、エンジン回転数制御応答時間の間はノッチ信号変化前後のトルク指令値から前記エンジン回転数に応じた出力指令値を演算し、それ以外の場合はノッチ変化後のノッチ信号に対応した出力指令値を演算するものである。
【0014】請求項4の発明に係る内燃機関型電気機関車用制御装置の出力制限値生成手段は、前記エンジン出力指令から前記エンジンの電気的負荷である補機回路で消費される補機電力を減算する減算器と、その値を前記誘導電動機の角速度で除算して出力制限値としてのトルク制限値を生成して出力指令制限手段に出力する除算器とを備えたものである。
【0015】請求項5の発明に係る内燃機関型電気機関車用制御装置の出力制限値生成手段は、トルク制限値を電流制限値に変換するトルク/電流変換手段を備え、この電流制限値を出力制限値として出力指令制限手段に出力するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下に本発明の実施の形態1について、図に従って説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る内燃機関型電気機関車用制御装置の構成図である。図1において、1は主幹制御器、7は主幹制御器1から出力されるノッチ信号Nにしたがって内燃機関の一種である例えばディーゼルエンジンの回転数指令値n*を出力するエンジン回転数指令発生器、8はディーゼルエンジンであり、エンジン回転数指令値n*を入力してエンジン回転数nがこの回転数指令値n*になるように調整される。
【0017】9は主幹制御器1から出力されるノッチ信号Nにしたがって直流電圧指令値Vdc*を出力する直流電圧指令発生器、10はディーゼルエンジン8に回転軸が直結された交流発電機、11は交流発電機10の励磁回路であり直流電圧指令発生器9から出力された直流電圧指令値Vdc*と直流電圧検出値Vdcを入力して、交流出力が直流電圧指令値Vdc*に応じた値になるように励磁電流が制御される。
【0018】12は三相ダイオード整流器であり、交流発電機10の交流出力を直流電力に変換する。13は直流電圧検出用の直流電圧検出器、14は直流電圧平滑用のコンデンサである。15は主幹制御器1の出力であるノッチ信号N,エンジン回転数指令発生器7の出力であるエンジン回転数指令値n*、ディーゼルエンジン8から得られるエンジン回転数nおよび誘導電動機17の回転数frを入力してエンジン回転数に合致したトルク指令値Tpを出力する協調制御部(出力指令値演算手段)である。
【0019】16はコンデンサ14で平滑された直流電力を可変電圧可変周波数の交流電力に変換するインバータ回路(電力変換器)、17はインバータ回路16の出力で駆動制御される車両推進用の誘導電動機、18はインバータ回路16の出力電流を検出する電流検出器、19は誘導電動機17の回転数frを検出する回転数検出器、20はトルク指令値Tp,直流電圧Vdc、誘導電動機回転数frおよびインバータ出力電流iu,iv,iwに基づきインバータ回路16のゲート信号を決めて出力するインバータ制御装置(電力変換器制御手段)である。
【0020】21はディーゼルエンジン8に回転軸が直結された補機電力用の補機発電機、22は補助発電機21から電力が供給される充電器、空気圧縮機、冷却用ブロワーなどの補機回路、23はエンジン回転数nに応じて最適なエンジン出力指令値Pe*を出力するエンジン指令発生器、24はエンジン出力指令器23の出力Pe*から補機回路22で消費している補機用電力Paを減算してモータ出力制限値Plimを出力する減算器、25はモータ出力制限値Plimを誘導電動機17の回転数frに2πを乗算した値で除算してモータ出力制限値Plimをトルク制限値Tlimに変換する除算器、26は協調制御部15から出力されるTpと除算器25から出力されるトルク制限値Tlimを入力し、Tp≦TlimのときにはTm=Tpとし、Tp>TlimのときにはTm=Tlimとしてインバータ制御装置20に出力するトルク指令値TMを出力するトルク指令制限器(出力指令制限手段)である。尚、減算器24,除算器25より出力制限値生成手段を構成する。
【0021】次に、協調制御部15の処理を中心に本実施の形態の動作について説明する。協調制御部15では、従来例の定出力パターン発生器6と同じように、ノッチ信号N毎に誘導電動機17の回転数frの変数としてトルク指令値Tpの関数を例えばテーブルとして図示しないメモリに持っている。その関係を図2に示す。例えば、ノッチ信号がN1で誘導電動機17の回転数がfr1の時には、トルク指令値はTp(N1,fr1)になる。
【0022】主幹制御器1から出力されるノッチ信号NがN1の場合、エンジン回転数指令発生器7はノッチ信号N1に対応したエンジン回転数指令値n1*を出力し、エンジン8はエンジン回転数nが指令値n1*になるように調整される。また、直流電圧指令値発生器9からは、ノッチ信号N1に対応した直流電圧指令値Vdc1*が出力され、励磁回路11で直流電圧Vdcが直流電圧指令値Vdc1*になるように交流発電機10の励磁電流が調整される。
【0023】交流発電機10の出力は、三相ダイオード整流器12で直流電力に変換され、直流電圧はコンデンサ14で平滑され、直流電圧は直流電圧検出器13で検出される。協調制御部15には、ノッチ信号N1,エンジン回転数指令値n1*、エンジン回転数nおよび誘導電動機17の回転数frが入力されており、トルク指令値TpはTp=Tp(N1,fr)が出力される。トルク指令値Tpは、トルク指令制限器26に入力される。更に、トルク指令制限器26からはトルク指令値TMが、直流電圧検出値Vdc、インバータ出力電流iu,iv,iwおよび誘導電動機17の回転数frと共にインバータ制御装置20に入力される。インバータ制御装置20はこれら入力信号に基づきインバータ回路16のゲート信号を出力する。
【0024】この状態から主幹制御器1から出力されるノッチ信号NがN2に変化するとエンジン回転数指令発生器7はノッチ信号N2に対応したエンジン回転数指令値n2*を出力し、ディーゼルエンジン8はエンジン回転数nが指令値n2*になるように調整されるが、エンジン回転数nが指令値n2*になるまでには制御応答時間が存在する。この制御応答時間の間は、協調制御部15でエンジン回転数nに見合ったトルク指令値Tpを以下の(1)式により求めて出力する。
【0025】
Tp=R×(Tp(N2,fr)−Tp(N1,fr))+Tp(N1,fr)・・・・・・・・・・(1)
【0026】ここで、Rは、エンジン回転数nがエンジン回転数指令値n1*とn2*の間のどの辺りに有るかを示す変数であり、以下の(2)式で演算される。
【0027】
R=(n−n1*)/(n2*−n1*)・・・・(2)
【0028】また、Tp(N1,fr)とTp(N2,fr)は、前述のように図2の関係を用いて得られる。なお、エンジン回転数の制御応答時間は、(2)式のRで求めることができる。すなわち、(2)式からRは0から1の間の値をとることがわかり、R=1がエンジン回転数nがエンジン回転数指令値n2*に達したことを現している。したがって、1より少し小さい設定値RLMを用いてR<RLMの間は、エンジン回転数の制御応答時間内であるとして、(1)式で求まるトルク指令値Tpを出力し、R≧RLMになると制御応答時間経過したとしてTp=Tp(N2,fr)を出力する。
【0029】このようにしてエンジン回転数nの制御応答時間の間は、エンジン回転数nに見合ったトルク指令値Tpを得ることができる。
【0030】協調制御部15の処理を一般化してフローチャートにしたものを図3に示す。図中n*(−1)、N(−1)は、それぞれ1制御周期前のエンジン回転数指令値、ノッチ信号である。CHGはノッチ指令変化後の制御応答時間内か否かを示すフラッグでありCHG=1が制御応答時間内、1以外が制御応答時間外を意味する。また、上述の説明に当てはめるとnBがn1*、NBがN1に対応し、n*、n*(−1)は、n1*またはn2*、N,N(−1)はN1またはN2それぞれどちらの値も取りうる。
【0031】次に本実施の形態における協調制御部15の処理内容を図3のフローチャートに従って詳細に説明する。ステップS1では、現在のノッチ信号N、エンジン回転数指令値n*、エンジン回転数nおよび誘導電動機17の回転数frを入力する。ステップS2では、1制御周期前に中間変数n0、N0に保存されていたエンジン回転数指令値とノッチ信号を1制御周期前のエンジン回転数指令値n*(−1)とノッチ信号N(−1)に移動し、中間変数n0、N0に現在のエンジン回転数指令値n*とノッチ信号Nを保存する。なお、ディーゼル電気機関車の起動時には、初期値としてそれぞれn0にはエンジンのアイドリング回転数、N0にはノッチ信号無し(ノッチ切信号)状態であるので0を設定する。
【0032】ステップS3では、現在のノッチ信号Nと1制御周期前のノッチ信号N(−1)の減算によりノッチ変化を示す信号dNを求める。即ち、dN=0のときにはノッチ変化無し、dN<0の時にはノッチダウン、dN>0の時にはノッチアップを表す。ステップS4は、ノッチ変化の有無による分岐であり、ノッチ変化無しの時にはステップS5に進み、ノッチ変化有りのときにはステップS9に進む。ステップS5は、ノッチ信号変化後の制御応答時間内か否かを示すフラッグCHGが1であるか否かによる分岐であり、CHG=1のときにはステップS11に進み、1以外のときにはステップS6に進む。ステップS6では、現在のノッチ信号Nと誘導電動機17の回転数frからtp(N,fr)を図2の関係から求める。
【0033】ステップS7では、Tp(N,fr)をトルク指令値Tpにセットし、ステップS8でトルク指令値Tpを出力する。ステップS9は、ステップS5と同様にノッチ信号変化後の制御応答時間か否かを示すフラッグCHGが1であるか否かによる分岐であり、CHG=1のときにはステップS11に進み、CHG=1以外のときにはステップS10へ進む。ステップS10は、ノッチ変化直後の制御周期の時だけ通る処理であり、CHG=1にすると共に、1制御周期前のエンジン回転数指令値n*(−1)とノッチ信号N(−1)をそれぞれnb,Nbとして保存する。
【0034】ステップS11は、ステップS12においてゼロによる割り算を防ぐための処理部であり、現在のノッチ信号NとNBの減算結果がゼロであるか否かによる分岐であり、ゼロの時にはステップS15に進み、ゼロでない時にはステップS12に進む。ステップS12では、現在のエンジン回転数nとエンジン回転数指令値n*およびnBを用いて、エンジン回転数nがエンジン回転数指令値n*とnBの間のどの辺りにあるかを示す変数Rを次式(3)の演算により求める。
【0035】
R=(n−nB)/(n*−nB)・・・・・・・(3)
【0036】ステップS13は、Rの領域による分岐であり、R<0のときにはステップS15に進み、それ以外のときにはステップS14に進む。ステップS14では、1より少し小さい設定値RLMを用いてエンジン回転数の制御応答時間内か否かを判断する分岐であり、R<RLMでないときにはステップS16に進む。ステップS15では、Rにゼロを設定する。ステップS16では、制御応答時間外になったのでCHGにゼロを設定する。ステップS17では、現在のノッチ信号Nと誘導電動機17の回転数frからTp(N,fr)を、同様にNBとfrからTp(NB,fr)をそれぞれ図2の関係から求める。ステップS18では、次式(4)の演算によりトルク指令値Tpを求め、ステップS8でトルク指令値Tpを出力する。
【0037】
Tp=R×(Tp(N,fr)−Tp(NB,fr))+Tp(NB,fr)
・・・・・・(4)
【0038】一方、補助発電機21はエンジン回転数に関係なく補機回路22で補機用電力Paを供給する。補機用電力Paもディーゼルエンジン8の負荷であるので、ディーゼルエンジン8の過負荷状態を回避するためには補機用電力Paも考慮する必要がある。また、ディーゼルエンジン8には、エンジン回転数nに応じて燃料効率が最適となるエンジン出力Pe*が存在する。従って、エンジン出力をPe*以下に保つために誘導電動機17の出力は、Pe*−Paに制限しなければならない。本発明では、これを次のように実現している。
【0039】エンジン出力指令発生器23ではエンジン回転数nと最適エンジン出力Pe*の関係を用いてエンジン回転数に対応した最適なエンジン出力指令値Pe*を出力する。補機用電力Paは補機回路22から得られ、減算器24でPe*−Paの演算を行い誘導電動機17の出力制限値Plimが求まる。除算器25では出力制限値Plimをトルク制限値Tlimに変換するためTlim=Plim/2πfrの演算を行いトルク制限値Tlimを得る。次に、トルク指令制限値tlimを入力し、Tp≦TlimのときにはTm=Tpとし、Tp>TlimのときにはTm=Tlimとしてインバータ制御装置20に出力するトルク指令値Tmを出力する。
【0040】このトルク指令値Tmに基づいてインバータ制御装置20は制御されるので、エンジン出力に対して過負荷になること無く燃焼効率の最適なエンジン運転状態を保つことができる。
【0041】上述の説明では、エンジン回転数nは、エンジン8から直接得られるものとして説明したが、(3)式のように交流発電機10の交流出力電圧の周波数を検出し、その周波数を交流発電機の極対数で割り算することでも得られる。
【0042】
エンジン回転数=交流電圧の周波数/極対数 …(5)
【0043】誘導電動機17の回転数frに関しては、機関車の速度を用いて図2の横軸がfrの代わりに機関車速度の場合もある。さらに、エンジン8はディーゼルエンジンとしたが、ガソリンエンジンなど他の内燃機関でも同様に本発明を適用できる。交流発電機10は、励磁回路11によって直流電圧の制御を実施する場合について説明したが、交流発電機10の交流出力電圧を制御するものでも同様に本発明を適用できる。
【0044】図1では、補機用電力は補助発電機21で供給されるものとしたが、図4,5に示すような構成もあり、これら構成でも同様に本発明を適用できる。図4は、交流発電機10の交流出力から補機回路22の電力を供給する場合の構成である。図5は三相ダイオード整流器12の直流出力から補機回路22の電力を供給する場合の構成である。
【0045】実施の形態2.実施の形態1では、ノッチ信号Nが変化するとエンジン回転数制御応答時間の間は(1)式で求めたトルク指令値Tpを出力するようにしていたが、ノッチ信号が減少する方向に変化した場合は、トルク指令値はノッチ信号変化後のTp(N2,fr)の方が(1)式で求めたトルク指令値Tpよりも小さくなるので、エンジン8にとっては、Tp(N2,fr)を用いる方が好ましい。
【0046】そこで、本実施の形態では、ノッチ信号の変化方向が、増加する方向の場合だけエンジン回転数制御応答時間の間(1)式で求めたトルク指令値Tpを出力し、それ以外はTp(N2,fr)を出力するようにしたものである。この場合の協調制御部15のフローチャートを図6に示す。図6のステップS4Aでノッチ信号Nの変化が正であるか、それ以外であるか判断し、正であれば(1)式でトルク指令値をもとめ、それ以外の場合はその時のノッチ信号Nと誘導電動機17の回転数frに対応したTp(N,fr)をトルク指令値Tpとして出力する。
【0047】実施の形態3.実施の形態1,2では、インバータ制御装置20の入力はトルク指令値としていたが、インバータ制御装置20の構成によっては、トルク指令値の代わりに誘導電動機17の電流指令値を用いる場合もある。この時には、協調制御部15ではトルク指令値Tpの代わりに電流指令値Ipを求めて出力する。
【0048】ノッチ信号毎に図2と同様に誘導電動機の回転数frの関数として電流指令値Ipが与えられ、ノッチ信号がN1,誘導電動機17の回転数がfr1の時には電流指令値はIp(N1,fr1)になる。図3,6のフローチャートもTpをIpに代えれば同じ構成で電流指令値Ipが得られ、実施の形態1,2と同様の効果が得られる。
【0049】一方、除算器で得られるトルク制限値Tlimは、図7に示すようにトルク−電流変換器27で誘導電動機17の特性に基づきトルク制限値Tlimから電流制限値に変換される。そして、トルク指令制限器26は協調制御部15から出力されるIpとトルク−電流変換器27から出力される電流制限値Ilimを入力し、Ip≦IlimのときにはIm=Ipとし、Ip>IlimのときにはIm=Ilimとしてインバータ制御装置20に出力する電流指令値Imを出力する。なお、この場合も実施の形態1,2と同様の効果が得られる。
【0050】実施の形態4.実施の形態1,2,3では、直流回路部は平滑用コンデンサ14と直流電圧検出器13で構成されるものとして説明したが、図8に示すように三相ダイオード整流器12にプラス出力導体に直列に直流リアクトル28を追加した構成の場合も、同様に本発明を適用でき同様の効果が得られる。
【0051】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、エンジンにより駆動される交流発電機の発電出力を整流器で直流電力に変換し、この直流電力を電力変換器にて交流電力に変換して車両推進用の誘導電動機を駆動制御する電気機関車用制御装置において、前記エンジン回転数を決めるノッチ信号を出力する主幹制御器と、前記ノッチ信号に対応したエンジン回転数指令値を発生するエンジン回転数指令発生器と、前記主幹制御器から出力されるノッチ信号、前記エンジン回転数指令値及びエンジン回転数と前記誘導電動機の回転数を入力し、前記ノッチ信号が変化した場合にはエンジン回転数制御応答時間の間はノッチ信号変化前後のトルク指令値から前記エンジン回転数に応じた前記誘導電動機の出力指令値を演算し、それ以外の場合はノッチ変化後のノッチ信号に対応した前記出力指令値を演算する出力指令値演算手段と、この出力指令値に応じた出力制御信号を前記電力変換器に出力する電力変換器制御手段とを備えたので、エンジン回転数に見合った誘導電動機の出力指令値を得てエンジンを最適な運転状態に保つことができるという効果がある。
【0052】請求項2の発明によれば、エンジン回転数に応じた最適なエンジン出力をエンジン出力指令として出力するエンジン出力指令発生器と、前記エンジン出力指令から前記エンジンの電気的負荷である補機回路で消費される補機電力を減算し、その減算値に基づいて前記誘導電動機の出力制限値を生成する出力制限値生成手段と、この生成された出力制限値で出力指令値演算手段で演算された出力指令値を制限して電力変換器制御手段に出力する出力指令制限手段とを備えたので、エンジンの過負荷状態を回避できるとともにエンジンを最適な運転状態に保つことができるという効果がある。
【0053】請求項3の発明によれば、出力指令値演算手段は、ノッチ信号が増加方向に変化した場合には、エンジン回転数制御応答時間の間はノッチ信号変化前後のトルク指令値から前記エンジン回転数に応じた出力指令値を演算し、それ以外の場合はノッチ変化後のノッチ信号に対応した出力指令値を演算するようにしたので、エンジン回転数の制御応答時間の間はエンジンの回転数に見合った誘導電動機の出力指令値を得てエンジンを最適な運転状態に保つことができるという効果がある。
【0054】請求項4の発明によれば、出力制限値生成手段は、前記エンジン出力指令から前記エンジンの電気的負荷である補機回路で消費される補機電力を減算する減算器と、その値を前記誘導電動機の角速度で除算して出力制限値としてのトルク制限値を生成して出力指令制限手段に出力する除算器とを備えたので、エンジンの過負荷状態を回避できるとともにエンジンを最適な運転状態に保つことができるという効果がある。
【0055】請求項5の発明によれば、出力制限値生成手段は、トルク制限値を電流制限値に変換するトルク/電流変換手段を備え、この電流制限値を出力制限値として出力指令制限手段に出力するようにしたので、電力変換器の構成に応じた誘導電動機の出力指令値を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成10年10月9日(1998.10.9)
【代理人】 【識別番号】100057874
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外6名)
【公開番号】 特開2000−115907(P2000−115907A)
【公開日】 平成12年4月21日(2000.4.21)
【出願番号】 特願平10−287574