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【発明の名称】 電気車制御装置
【発明者】 【氏名】多田 征史

【要約】 【課題】誘導電動機の始動時においてトルク制御が行なえるようにすることにある。

【解決手段】運転台からの車両速度情報と速度演算器の出力とを切替える切替器を設けたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 インバータ出力に対する電流検出手段と電圧検出手段を有し、それぞれの検出値と電動機定数を用いて一次鎖交磁束ベクトル、二次鎖交磁束ベクトルおよび出力トルクを推定し、これらの値から電動機回転子の回転速度を推定し、この回転速度は回転子角周波数に比例するもので、この回転子角周波数にすべり周波数相当を加算してインバータの出力周波数とするインバータ制御部を有する電気車制御装置において、前記回転子角周波数信号の出力を切り替える切替器を設け、インバータ装置と独立して作動している列車モニタ装置、自動列車制御装置(ATS,ATC)、車両速度検知装置等のいずれかの車両速度に相当する車両速度情報を前記切替器に入力し、インバータの始動時はこの外部の車両速度情報に切替え、前記ベクトル演算の値が外部の車両速度情報に対して所定の誤差範囲に入った時点で、自身の速度検知信号に切替えることを特徴とした電気車制御装置。
【請求項2】 回転子角周波数信号の出力を切り替える切替器を設け、インバータ装置と独立して作動している列車モニタ装置、自動列車制御装置(ATS,ATC)、車両速度検知装置等のいずれかの車両速度に相当する車両速度情報を切替器に入力し、インバータの始動時はこの外部の車両速度情報に切替え、前記ベクトル演算の磁束の大きさが所定の値より大きくなった時点で自身の速度検知信号に切替える請求項1記載の電気車制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道車両等で推進および電気制動のための誘導電動機のトルク制御を行う電気車制御装置、特にインバータ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、鉄道車両等で推進および電気制動のための誘導電動機のトルク制御を行うインバータ装置は、図3のブロック図に示すような基本構成ですでに実用化されている。車両のトルク制御は、例えば、加速時はトルクに比例する電流指令値を正極性で、電気制動時はこの指令値を負極性で与え、インバータの出力電流の検出値(電流検出器14で検知して実効値等に換算)をこの指令値と一致させるように、すべり周波数指令ωsを可変する自動制御系を構成する。すべり周波数指令ωsは電動機の軸に連結された速度センサからの信号(回転子周波数に換算)と加算することで、インバータの出力周波数、すなわち電動機の一次周波数ωeが決定される。インバータの出力電圧は、比較的低い周波数領域では、電圧対周波数の関係を概略一定とし、インバータの出力可能電圧が上限になる周波数より高い周波数領域では、その一定電圧のままとする。以上が従来の車両用インバータ装置のトルク制御の基本形である。
【0003】図2において、インバータ制御部12は、トルク制御部16’の出力である周波数指令ωeを受けて、電圧対周波数の関係を満足させるPWM制御を行い、集電装置11から取込んだ直流電圧を交流電圧および所望の周波数に変換する。誘導電動機15は、図では1個で示しているが、従来装置では2台、4台の並列接続の場合もある。従来のトルク制御の方法では、速度センサ13は電気車制御装置にとって不可欠の構成要素であった。近年、トルク制御を電流実効値を使わずに三相交流の瞬時値から電動機の一次鎖交磁束ベクトル、二次鎖交磁束ベクトル、電動機の出力トルクを演算処理で求め、さらにこれらを演算処理して二次角周波数、すべり角周波数を得て最終的に回転子角周波数を求めることができるようになった。このことによって、電動機の回転軸に連結する速度センサを設けずにトルク制御を実現することができるようになった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】車両用のインバータ装置に特有の運転方法として力行(加速)と回生(または制動の減速)運転の繰り返しがあり、それぞれの運転状態の間には惰行という、インバータを停止して電動機に電圧を印加せずに走る状態がある。速度センサを設けない場合は、この惰行の間はインバータ装置は電動機の回転速度情報が得られない。この状態から再力行または回生の減速運転を開始するときに、上述した一次・二次鎖交磁束ベクトル演算値が正確に求まらない状態があり、結果的に回転子角周波数が所定の値に定まらず、所定の加減速ができなくなる可能性がある。これは、始動時に流れる電流から求めた磁束ベクトルの大きさが小さ過ぎたり、電流値に対して所定の大きさの磁束が得られないことが原因である。本発明は上述した点に鑑みて創案されたもので、その目的とするところは、これらの欠点を解消する電気車制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】つまり、その目的を達成するための手段は、(1)請求項1において、インバータ出力に対する電流検出手段と電圧検出手段を有し、それぞれの検出値と電動機定数を用いて一次鎖交磁束ベクトル、二次鎖交磁束ベクトルおよび出力トルクを推定し、これらの値から電動機回転子の回転速度を推定し、この回転速度は回転子角周波数に比例するもので、この回転子角周波数にすべり周波数相当を加算してインバータの出力周波数とするインバータ制御部を有する電気車制御装置であって、前記回転子角周波数信号の出力を切り替える切替器を設け、インバータ装置と独立して作動している列車モニタ装置、自動列車制御装置(ATS,ATC)、車両速度検知装置等のいずれかの車両速度に相当する車両速度情報を前記切替器に入力し、インバータの始動時はこの外部の車両速度情報に切替え、前記ベクトル演算の値が外部の車両速度情報に対して所定の誤差範囲に入った時点で、自身の速度検知信号に切替えることを特徴とした電気車制御装置である。
【0006】(2)請求項2において、回転子角周波数信号の出力を切り替える切替器を設け、インバータ装置と独立して作動している列車モニタ装置、自動列車制御装置(ATS,ATC)、車両速度検知装置等のいずれかの車両速度に相当する車両速度情報を切替器に入力し、インバータの始動時はこの外部の車両速度情報に切替え、前記ベクトル演算の磁束の大きさが所定の値より大きくなった時点で自身の速度検知信号に切替える請求項1記載のた電気車制御装置である。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。
【0007】
【発明の実施の形態】図1は本発明の請求項1記載の一実施例を示すブロック図であり、図3の従来技術と同一な部分は説明を省略し異なる部分(符号17と符号18)のみを説明する。図1において、集電装置11、インバータ制御部12、電流検出器14、電動機15は図3と同じであり、本発明のトルク制御部16は、電動機の回転軸に連結する速度センサを必要としない場合である。電流iは電流検出器14から取込むが、電圧情報vはインバータ制御部12から直流入力電圧とPWM制御の加味された波形信号19で取込まれる。この電圧情報vは一次巻線抵抗による電圧降下分を補正して一次鎖交磁束ベクトルを演算する。実トルクは一次鎖交磁束と一次電流のベクトル外積で得られる。一次鎖交磁束に含まれる二次電流方向の成分を考慮すると、この一次鎖交磁束と一次電流とから二次鎖交磁束が得られ、さらに二次角周波数ω2が求まる。また二次鎖交磁束と実トルクと二次巻線抵抗の値からすべり角周波数ωsが得られ、回転子角周波数ωmは次式で表される。
【0008】ωm=ω2−ωsインバータの出力情報から得た回転子角周波数ωmに、トルク指令から得られるすべり角周波数指令ωs*を加算器20で加算して、インバータ周波数指令ωe’とする。
【0009】切替器17は、インバータ制御部の停止時(停車中および惰行中)から始動後の所定の期間は、トルク制御部16の出力である信号ωm’の代わりに、別途受信する、例えば列車モニタの車両速度情報18の出力である信号ωmを選択する。列車モニタの場合は直列データ伝送ラインが装備されることが多く、特別に艤装線を増やすことは少ない。また自動列車制御装置(ATS,ATC)と並列に速度信号をとる場合は、同一速度センサであっても電気回路的には独立の出力端から信号を取ることで、インバータ装置側の故障が外部装置の故障に波及しないように考慮する。また車輪等、回転部にセンサを設けずに、光学的または超音波や電波計測で車両速度を検知するセンサを列車単位に1〜2台装備する方式もあり、電動機の回転速度ではなく車両の速度として外部機器からインバータ装置に取込む方式でも本発明は有効である。図1の切替器17は当ブロック内に信号ωmとωm’の誤差を検知する部分を含んでいるものとする。始動時にωmを選択していた切替器は、ωmとωm’の誤差が予め設定した値以下になったことを検知して、回転子角周波数の演算値ωm’を選択するように切替えるものである。この状態はインバータ制御部の運転中は持続する。
【0010】図2は本発明の請求項2記載の一実施例を示すブロック図であり、信号ωmとωm’の切替え条件を異にするものである。課題のところで前述したように、ωm’の検知不能状態は磁束の小さい状態で起こる。したがって、例えば二次鎖交磁束の大きさが所定の値より大きくなったことを検知する磁束レベル検知部21を設け、この出力で切替器17をωmからωm’へ切替えるものである。外部の速度信号を使うことは、トルクの制御誤差になりやすいため、できるだけ速やかに自身で検知した速度信号に切替える方が制御特性上は好都合である。
【0011】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、インバータによる誘導電動機のトルク制御装置により始動時においても誘導電動機のトルク制御ができ、実用上、極めて有用性の高いものである。
【出願人】 【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
【出願日】 平成10年9月16日(1998.9.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−92629(P2000−92629A)
【公開日】 平成12年3月31日(2000.3.31)
【出願番号】 特願平10−280532