| 【発明の名称】 |
ハイブリッド駆動装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】長島 伸幸
【氏名】梅山 光広
【氏名】伊藤 寛
【氏名】森沢 邦夫
【氏名】塩入 広行
【氏名】岩瀬 雄二
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| 【要約】 |
【課題】充電量が少ない場合であっても充分なトルクで後進走行の可能なハイブリッド駆動装置を提供する。
【解決手段】遊星歯車機構における3つの回転要素のうちのいずれか1つの回転要素5であって固定されることにより他の2つの回転要素4,8が互いに反対方向に回転する関係となる回転要素5を選択的に固定するブレーキ手段B1 が設けられるとともに、前記他の2つの回転要素4,8のいずれか一方の回転要素4に内燃機関1が常時もしくは選択的に連結され、かつ他方の回転要素8に電動機2が常時もしくは選択的に連結され、さらに電動機2が連結された回転要素8を出力部材10に選択的に連結する第1クラッチ手段C1 と、ブレーキ手段B1 によって固定される回転要素5に出力部材10を選択的に連結する第2クラッチ手段C2 とが設けられている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 サンギヤと、該サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、これらサンギヤとリングギヤとの間に配置された複数のピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持したキャリヤとを回転要素とする遊星歯車機構を介して、内燃機関と電動機とから出力部材に動力を出力するハイブリッド駆動装置において、前記3つの回転要素のうちのいずれか1つの回転要素であって固定されることにより他の2つの回転要素が互いに反対方向に回転する関係となる回転要素を選択的に固定するブレーキ手段が設けられるとともに、前記他の2つの回転要素のいずれか一方の回転要素に前記内燃機関が常時もしくは選択的に連結され、かつ他方の回転要素に前記電動機が常時もしくは選択的に連結され、さらに前記電動機が連結された回転要素を前記出力部材に選択的に連結する第1クラッチ手段と、前記ブレーキ手段によって固定される回転要素に前記出力部材を選択的に連結する第2クラッチ手段とが設けられていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項2】 前記遊星歯車機構が、前記サンギヤに噛合した第1ピニオンギヤと該第1ピニオンギヤおよび前記リングギヤに噛合した第2ピニオンギヤとを有するダブルピニオン型遊星歯車機構からなり、これらのピニオンギヤを保持しているキャリヤに前記電動機が連結され、かつ前記サンギヤに内燃機関が連結され、さらに前記ブレーキ手段が前記リングギヤとケーシングとの間に配置され、前記出力部材が、第1クラッチ手段を介して前記キャリヤに連結されるとともに第2クラッチ手段を介して前記リングギヤに連結されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。 【請求項3】 前記遊星歯車機構が、前記サンギヤに噛合した第1ピニオンギヤと該第1ピニオンギヤおよび前記リングギヤに噛合した第2ピニオンギヤとを有するダブルピニオン型遊星歯車機構からなり、これらのピニオンギヤを保持しているキャリヤに前記内燃機関が連結され、かつ前記サンギヤに電動機が連結され、さらに前記ブレーキ手段が前記リングギヤとケーシングとの間に配置され、前記出力部材が、第1クラッチ手段を介して前記サンギヤに連結されるとともに第2クラッチ手段を介して前記リングギヤに連結されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。 【請求項4】 前記遊星歯車機構が、前記サンギヤとリングギヤとに噛合した複数のピニオンギヤを有するシングルピニオン型遊星歯車機構からなり、これらのピニオンギヤを保持しているキャリヤとケーシングとの間に前記ブレーキ手段が配置され、かつ前記サンギヤに電動機が連結され、さらに前記リングギヤに前記内燃機関が連結され、前記出力部材が、第1クラッチ手段を介して前記サンギヤに連結されるとともに第2クラッチ手段を介して前記キャリヤに連結されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド駆動装置。 【請求項5】 サンギヤと、該サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、これらサンギヤとリングギヤとの間に配置された複数のピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持したキャリヤとを回転要素とする遊星歯車機構を介して、内燃機関と電動機とから出力部材に動力を出力するハイブリッド駆動装置において、前記3つの回転要素のうちのいずれか1つの回転要素であって固定されることにより他の2つの回転要素が互いに反対方向に回転する関係となる回転要素に、第1入力クラッチ手段を介して前記電動機が連結されるとともに、前記他の2つの回転要素のいずれか一方の回転要素に第2入力クラッチ手段を介して前記電動機が連結され、かつ他方の回転要素に前記内燃機関が常時もしくは選択的に連結され、さらに前記第2入力クラッチ手段によって前記電動機が連結された回転要素を前記出力部材に選択的に連結する第1出力クラッチ手段と、前記第1入力クラッチ手段によって前記電動機に連結された回転要素を前記出力部材に選択的に連結する第2出力クラッチ手段とが設けられていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項6】 前記第1入力クラッチ手段と前記第2出力クラッチ手段とに連結されている前記回転要素とケーシングとの間に一方向クラッチが配置されていることを特徴とする請求項5のハイブリッド駆動装置。 【請求項7】 内燃機関の出力する動力と電動機が出力する動力とを、個別にもしくは合成して出力部材に伝達するハイブリッド駆動装置において、第1サンギヤと、該第1サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、第1サンギヤに噛合した第1ピニオンギヤおよび該第1ピニオンギヤと前記リングギヤとに噛合した第2ピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持するキャリヤと、第2ピニオンギヤに噛合した第2サンギヤとを有するラビニヨ型遊星歯車機構と、前記内燃機関を前記第1サンギヤに選択的に連結する第1クラッチ手段と、前記内燃機関を前記第2サンギヤに選択的に連結する第2クラッチ手段と、前記キャリヤを選択的に固定するブレーキ手段とを有し、前記電動機が前記第2サンギヤに連結されるとともに、前記出力部材が前記リングギヤに連結されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項8】 内燃機関の出力する動力と電動機が出力する動力とを、個別にもしくは合成して出力部材に伝達するハイブリッド駆動装置において、第1サンギヤと、該第1サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、第1サンギヤに噛合した第1ピニオンギヤおよび該第1ピニオンギヤと前記リングギヤとに噛合した第2ピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持するキャリヤと、第2ピニオンギヤに噛合した第2サンギヤとを有するラビニヨ型遊星歯車機構と、前記内燃機関を前記第1サンギヤに選択的に連結する第1クラッチ手段と、前記電動機を前記キャリヤに選択的に連結する第2クラッチ手段と、前記リングギヤを選択的に固定するブレーキ手段とを有し、前記電動機が前記第2サンギヤに連結されるとともに、前記出力部材が前記キャリヤに連結されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項9】 前記出力部材もしくは出力部材に一体に連結されている部材の回転を選択的に止める固定手段が、更に設けられていることを特徴とする請求項7もしくは8に記載のハイブリッド駆動装置。 【請求項10】 前記第2ピニオンギヤの前記第1ピニオンギヤに噛合している部分の歯数と前記第2サンギヤに噛合している部分の歯数とが相違していることを特徴とする請求項7もしくは8に記載のハイブリッド駆動装置。 【請求項11】 内燃機関の出力する動力と電動機が出力する動力とを、個別にもしくは合成して出力部材に伝達するハイブリッド駆動装置において、サンギヤと、該サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、これらサンギヤとリングギヤとの間に配置されたピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持したキャリヤとを回転要素する第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構におけるいずれか1つの回転要素であって固定されることにより他の2つの回転要素が互いに反対方向に回転する関係となる回転要素を選択的に固定するブレーキ手段が設けられるとともに、前記他の2つの回転要素のうちのいずれか一方の回転要素に前記内燃機関を選択的に連結する第2クラッチ手段が設けられ、かつ他方の回転要素が前記出力部材に連結され、前記第1遊星歯車機構におけるいずれか1つの回転要素であって固定されることにより他の2つの回転要素が互いに反対方に回転する関係となる回転要素が、前記出力部材に連結され、かつこの第1遊星歯車機構における前記他の2つの回転要素のうちのいずれか一方の回転要素に第1クラッチ手段を介して前記内燃機関が連結され、さらに前記第1遊星歯車機構における前記他の2つの回転要素のうちの他方の回転要素に、前記電動機の動力が伝達されるように構成されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置。 【請求項12】 前記第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構が、サンギヤとリングギヤとに噛合した複数のピニオンギヤを前記キャリヤによって自転かつ公転自在に保持したシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、前記ブレーキ手段が、第2遊星歯車機構のキャリヤとケーシングとの間に配置されるとともに、このキャリヤと前記第1遊星歯車機構のリングギヤとが連結され、前記第2クラッチ手段が、前記第2遊星歯車機構のサンギヤと内燃機関とを連結するように配置されとともにそのサンギヤに前記電動機が連結され、かつ第2遊星歯車機構のリングギヤが第1遊星歯車機構のキャリヤに連結され、さらに第1遊星歯車機構のキャリヤが第2遊星歯車機構のリングギヤおよび出力部材に連結され、かつこの第1遊星歯車機構のサンギヤが前記第1クラッチ手段を介して前記内燃機関に連結されていることを特徴とする請求項11のハイブリッド駆動装置。 【請求項13】 前記第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構が、サンギヤとリングギヤとに噛合した複数のピニオンギヤを前記キャリヤによって自転かつ公転自在に保持したシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、第2遊星歯車機構のキャリヤが前記第1遊星歯車機構のサンギヤに連結されるとともにこれらキャリヤとサンギヤとを選択的に固定するように前記ブレーキ手段が配置され、前記第2クラッチ手段が、前記第2遊星歯車機構のサンギヤと内燃機関とを連結するように配置され、かつ第2遊星歯車機構のリングギヤが第1遊星歯車機構のキャリヤに連結されるとともにこのキャリヤが前記出力部材に連結され、かつこの第1遊星歯車機構のリングギヤが前記第1クラッチ手段を介して前記内燃機関に連結されていることを特徴とする請求項11のハイブリッド駆動装置。 【請求項14】 前記出力部材もしくは出力部材に一体化されている部材の回転を選択的に止める固定手段が更に設けられていることを特徴とする請求項11ないし13のいずれかに記載のハイブリッド駆動装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関とモータやモータ・ジェネレータなどの電力によって動作して動力を出力する電動機とを備えた車両用のハイブリッド駆動装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】周知のように内燃機関は、不可避的に排ガスを生じる。その排ガスの成分や量は、内燃機関の運転状態に依存し、一般的な傾向としてスロットル開度を増大した高負荷運転時には排ガスの清浄度が低下しやすく、また燃費も低下しやすい。これに対して最近では、内燃機関を搭載した車両の排ガスに対する清浄度の要求が高くなってきており、このような要望に応えるべくハイブリッド駆動装置が開発されている。 【0003】ハイブリッド駆動装置は、内燃機関と電動機とを動力源として備えた駆動装置であって、基本的には、内燃機関は最も効率の良い状態で運転し、それ以外の走行状態では、電動機を補助的にもしくは動力源として使用するように構成されている。したがってハイブリッド駆動装置は、電流によってトルクを制御できる電動機を備えているので、内燃機関のみを動力源とした従来の車両におけるような変速装置は用いられていなかったが、いわゆるパラレルハイブリッド形式のように、内燃機関を発電用の動力源のみとしてではなく走行用の動力源としても使用するハイブリッド駆動装置では、変速装置を搭載するようになってきている。またさらに、内燃機関のトルクと電動機のトルクとを遊星歯車機構などの単一の変速機構に入力し、内燃機関の出力トルクを増幅して出力するように構成した装置も開発されている。 【0004】その一例が、特開平9−37411号公報に記載されている。この公報の図11に記載された装置は、ダブルピニオン型遊星歯車機構を備え、そのリングギヤに出力軸が連結されるとともに、サンギヤにモータ・ジェネレータが連結され、またキャリヤとエンジンとを選択的に連結する入力クラッチが設けられ、さらにキャリヤを選択的に固定するブレーキと、キャリヤとサンギヤとを連結して遊星歯車機構の全体を一体化する一体化クラッチが設けられている。そしてその出力軸は、無段変速機に連結することができる。 【0005】したがって上記の公報の図11に記載されたハイブリッド駆動装置においては、キャリヤにエンジンから動力を入力している状態でサンギヤにモータ・ジェネレータから動力を入力すると、出力部材であるリングギヤには、エンジントルクより大きいトルクが出力され、またモータ・ジェネレータを逆回転させて動力を吸収すれば、発電をおこなうことができる。また駆動力は、無段変速機での変速比に応じて連続的に変化させることができる。このような遊星歯車機構におけるトルク増幅機能と無段変速機の連続的な変速比の変更機能とを利用して、燃費が最も良好になるように内燃機関を運転することができる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】前述したように電動機を動力源として備えていれば、電流によって電動機の出力トルクを制御できるので、基本的には変速装置が不要であり、上述した従来のハイブリッド駆動装置においても、前記遊星歯車機構や無段変速機は、内燃機関の燃費が最良になるように運転するための制御手段として使用している。そのために、上記の遊星歯車機構の構成では、内燃機関の出力で走行している場合、出力要素であるリングギヤを入力要素であるキャリヤに対して反対方向に回転させることができない。したがって上記従来のハイブリッド装置によって後進走行する場合には、内燃機関をアイドリング状態とするとともに、キャリヤをブレーキで固定し、その状態でモータ・ジェネレータをモータとして機能させることにより、出力要素であるリングギヤを内燃機関とは反対方向に回転させている。 【0007】すなわち上記従来のハイブリッド駆動装置では、後進走行を電動機によっておこなうように構成されている。そのために、蓄電器(バッテリ)の充電量(SOC)が少ない場合には、後進走行に要求される充分なトルクを出力できない可能性があった。このような不都合を解消するためには、内燃機関を起動して充電をおこない、バッテリの充電量を増大させればよいが、そのためには、充電が完了するまで後進走行を待たなければならなくなる。特に電動機が発電機を兼ねた形式のパラレルハイブリッド装置では、電動機による走行と発電とを同時におこなうことができないから、蓄電器での充電量が低下した場合には、後進走行が直ちに困難になる不都合があった。 【0008】この発明は、上記の事情を背景にしてなされたものであり、蓄電器の充電量が少ない場合であっても後進走行のためのトルクを必要十分に確保することのできるハイブリッド駆動装置を提供することを目的とするものである。 【0009】 【課題を解決するための手段およびその作用】上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、サンギヤと、該サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、これらサンギヤとリングギヤとの間に配置された複数のピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持したキャリヤとを回転要素とする遊星歯車機構を介して、内燃機関と電動機とから出力部材に動力を出力するハイブリッド駆動装置において、前記3つの回転要素のうちのいずれか1つの回転要素であって固定されることにより他の2つの回転要素が互いに反対方向に回転する関係となる回転要素を選択的に固定するブレーキ手段が設けられるとともに、前記他の2つの回転要素のいずれか一方の回転要素に前記内燃機関が常時もしくは選択的に連結され、かつ他方の回転要素に前記電動機が常時もしくは選択的に連結され、さらに前記電動機が連結された回転要素を前記出力部材に選択的に連結する第1クラッチ手段と、前記ブレーキによって固定される回転要素に前記出力部材を選択的に連結する第2クラッチ手段とが設けられていることを特徴とするものである。 【0010】したがって請求項1の発明によれば、ブレーキ手段によってこのブレーキ手段に連結されている回転要素を固定するとともに、第1クラッチ手段によって電動機の連結された回転要素を出力部材に連結し、さらに第2クラッチ手段を非動作状態としてブレーキ手段で固定される回転要素と出力部材との連結を解除すれば、内燃機関が連結された回転要素と出力部材が連結されている回転要素とが互いに反対方向に回転する関係となる。そのため、内燃機関を駆動すれば、出力部材が逆回転し、後進走行することができる。また、ブレーキ手段を非動作状態として回転要素の固定を解除し、かつ第1クラッチ手段を非動作状態として出力部材と電動機が連結された回転要素との連結を解除し、さらに第2クラッチ手段を動作させてブレーキ手段に連結されている回転要素と出力部材とを連結すれば、内燃機関が連結されている回転要素に対して反力要素となる回転要素に電動機の動力を入力できるので、出力部材のトルクを電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0011】また、請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記遊星歯車機構が、前記サンギヤに噛合した第1ピニオンギヤと該第1ピニオンギヤおよび前記リングギヤに噛合した第2ピニオンギヤとを有するダブルピニオン型遊星歯車機構からなり、これらのピニオンギヤを保持しているキャリヤに前記電動機が連結され、かつ前記サンギヤに内燃機関が連結され、さらに前記ブレーキ手段が前記リングギヤとケーシングとの間に配置され、前記出力部材が、第1クラッチ手段を介して前記キャリヤに連結されるとともに第2クラッチ手段を介して前記リングギヤに連結されるように構成されていることを特徴とするものである。 【0012】したがって請求項2の発明によれば、ブレーキ手段によってリングギヤを固定すれば、サンギヤとキャリヤとが互いに反対方向に回転する関係なるので、第1クラッチ手段によってキャリヤを出力部材に連結した状態で内燃機関を駆動すれば、出力部材が内燃機関とは反対方向に逆回転し、したがって後進走行をおこなうことができる。また、ブレーキ手段によるリングギヤの固定を解除するとともに、第2クラッチ手段によってリングギヤと出力部材とを連結すれば、サンギヤに対して反力要素となるキャリヤに電動機の動力が入力されるから、出力部材のトルクを電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0013】請求項3の発明は、請求項1の構成において、前記遊星歯車機構が、前記サンギヤに噛合した第1ピニオンギヤと該第1ピニオンギヤおよび前記リングギヤに噛合した第2ピニオンギヤとを有するダブルピニオン型遊星歯車機構からなり、これらのピニオンギヤを保持しているキャリヤに前記内燃機関が連結され、かつ前記サンギヤに電動機が連結され、さらに前記ブレーキ手段が前記リングギヤとケーシングとの間に配置され、前記出力部材が、第1クラッチ手段を介して前記サンギヤに連結されるとともに第2クラッチ手段を介して前記リングギヤに連結されるように構成されていることを特徴とするものである。 【0014】したがって請求項3の発明によれば、ブレーキ手段によってリングギヤを固定するとともに、第1クラッチ手段によってサンギヤと出力部材とを連結し、かつ第2クラッチ手段によるリングギヤと出力部材との連結を解除した状態とすれば、請求項2の発明と同様に、サンギヤとキャリヤとが互いに反対方向に回転する関係となるので、キャリヤに内燃機関の動力を入力すると、サンギヤがキャリヤとは反対方向すなわち内燃機関に対して逆回転し、その結果、サンギヤと一体の出力部材が逆回転するために、内燃機関の動力によって後進走行をおこなうことができる。また、ブレーキ手段によるリングギヤの固定を解除した状態で第1クラッチ手段によるサンギヤと出力部材との連結を解除し、かつ第2クラッチ手段によってリングギヤと出力部材とを連結すれば、キャリヤに対して反力要素となるサンギヤに電動機の動力が入力されるために、出力部材のトルクを、電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0015】請求項4の発明は、請求項1の構成において、前記遊星歯車機構が、前記サンギヤとリングギヤとに噛合した複数のピニオンギヤを有するシングルピニオン型遊星歯車機構からなり、これらのピニオンギヤを保持しているキャリヤとケーシングとの間に前記ブレーキ手段が配置され、かつ前記サンギヤに電動機が連結され、さらに前記リングギヤに前記内燃機関が連結され、前記出力部材が、第1クラッチ手段を介して前記サンギヤに連結されるとともに第2クラッチ手段を介して前記キャリヤに連結されるように構成されていることを特徴とするものである。 【0016】したがって請求項4の発明によれば、ブレーキ手段によってキャリヤを固定するとともに、第1クラッチ手段によってサンギヤと出力部材とを連結し、かつ第2クラッチ手段によるキャリヤと出力部材との連結を解除した状態とすれば、キャリヤが固定要素であることにより、内燃機関の連結されているリングギヤと出力部材に連結されているサンギヤとが互いに反対方向に回転する関係となり、したがって内燃機関を駆動すれば、サンギヤおよびこれに連結されている出力部材が逆回転(すなわち内燃機関の回転方向とは反対方向の回転)することになり、その結果、内燃機関の動力によって後進走行することができる。また、ブレーキ手段によるキャリヤの固定を解除した状態で第1クラッチ手段による出力部材とサンギヤとの連結を解除する一方、第2クラッチ手段によって出力部材とキャリヤとを連結すれば、内燃機関の連結されているリングギヤに対して反力要素となるサンギヤに電動機からの動力を入力することができるので、キャリヤに連結されている出力部材のトルクを、電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0017】請求項5の発明は、サンギヤと、該サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、これらサンギヤとリングギヤとの間に配置された複数のピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持したキャリヤとを回転要素とする遊星歯車機構を介して、内燃機関と電動機とから出力部材に動力を出力するハイブリッド駆動装置において、前記3つの回転要素のうちのいずれか1つの回転要素であって固定されることにより他の2つの回転要素が互いに反対方向に回転する関係となる回転要素に、第1入力クラッチ手段を介して前記電動機が連結されるとともに、前記他の2つの回転要素のいずれか一方の回転要素に第2入力クラッチ手段を介して前記電動機が連結され、かつ他方の回転要素に前記内燃機関が常時もしくは選択的に連結され、さらに前記第2入力クラッチ手段によって前記電動機が連結された回転要素を前記出力部材に選択的に連結する第1出力クラッチ手段と、前記第1入力クラッチ手段によって前記電動機に連結された回転要素を前記出力部材に選択的に連結する第2出力クラッチ手段とが設けられていることを特徴とするものである。 【0018】したがって請求項5の発明によれば、第1入力クラッチ手段と第1出力クラッチ手段とを動作状態としてこれらのクラッチ手段よる前記各回転部材の連結をおこない、かつ第2入力クラッチ手段と第2出力クラッチ手段とを非動作状態としてこれらのクラッチ手段による連結状態を解除すれば、電動機の出力する動力が第1入力クラッチ手段によって連結された回転要素に伝達され、これに対して出力部材が他の回転要素に連結される。この状態では、内燃機関の連結されている回転要素と出力部材が連結されている回転要素とが、相互にいわゆる反力要素となり、したがって電動機によって第1入力クラッチ手段によって連結されている回転要素を固定すれば、内燃機関の動力が反転して出力部材に伝達され、その結果、内燃機関の動力によって後進走行することができる。その場合、電動機の出力する動力を制御すれば、出力部材の連結されている回転要素の回転数あるいはトルクが変化し、したがって電動機によって後進走行時の駆動力を制御することができる。また、その出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、止めることもできる。これに対して、第2入力クラッチ手段と第2出力クラッチ手段とを動作させてこれらのクラッチ手段による各回転部材の連結をおこない、かつ第2入力クラッチ手段と第1出力クラッチ手段とを非動作状態としてこれらのクラッチ手段による連結動作を解除すれば、第2出力クラッチ手段によって出力部材の連結されている回転要素が出力要素となるとともに、内燃機関の連結されている回転要素と第2入力クラッチ手段によって電動機が連結されている回転要素とが互いに反力要素となる。したがって内燃機関を動作させた状態で電動機の出力する動力を変化させれば、電動機の出力するトルクに応じて出力部材のトルクが変化するので、出力部材のトルクを電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0019】請求項6の発明は、請求項5の構成において、前記第1入力クラッチ手段と前記第2出力クラッチ手段とに連結されている前記回転要素とケーシングとの間に一方向クラッチが配置されていることを特徴とするものである。 【0020】したがって請求項6の発明によれば、一方向クラッチによって前記回転要素の回転を止めた状態では、内燃機関の連結されている回転要素と電動機が連結されている回転要素とが互いに反力要素となるので、電動機を逆回転させることにより、この電動機に第2入力クラッチ手段によって連結された回転要素が逆回転する一方、内燃機関の連結されている回転要素が正回転するために、電動機の出力トルクが反転されて内燃機関に伝達される。すなわち電動機によって内燃機関を回転させることができるので、この状態で内燃機関に燃料を供給するなどのことにより、内燃機関を始動することができる。 【0021】請求項7の発明は、内燃機関の出力する動力と電動機が出力する動力とを、個別にもしくは合成して出力部材に伝達するハイブリッド駆動装置において、第1サンギヤと、該第1サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、第1サンギヤに噛合した第1ピニオンギヤおよび該第1ピニオンギヤと前記リングギヤとに噛合した第2ピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持するキャリヤと、第2ピニオンギヤに噛合した第2サンギヤとを有するラビニヨ型遊星歯車機構と、前記内燃機関を前記第1サンギヤに選択的に連結する第1クラッチ手段と、前記内燃機関を前記第2サンギヤに選択的に連結する第2クラッチ手段と、前記キャリヤを選択的に固定するブレーキ手段とを有し、前記電動機が前記第2サンギヤに連結されるとともに、前記出力部材が前記リングギヤに連結されていることを特徴とするものである。 【0022】したがって請求項7の発明によれば、ブレーキ手段によってキャリヤを固定し、かつ第1クラッチ手段による連結を解除し、さらに第2クラッチ手段によって内燃機関を第2サンギヤに連結すれば、その第2サンギヤとリングギヤとが、シングルピニオン型遊星歯車機構におけるサンギヤとリングギヤとの関係とになるので、内燃機関によって第2サンギヤを正回転させることにより、リングギヤおよびこれに連結されている出力部材が逆回転する。すなわち、内燃機関の動力によって後進走行をおこなうことができる。また、第1クラッチ手段によって内燃機関を第1サンギヤに連結するとともに、第2クラッチ手段とブレーキ手段とを非動作状態として各回転部材の連結を解除すれば、互いに反力要素となる第1サンギヤと第2サンギヤとに内燃機関と電動機とが連結された状態となる。したがって出力部材のトルクを電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0023】請求項8の発明は、内燃機関の出力する動力と電動機が出力する動力とを、個別にもしくは合成して出力部材に伝達するハイブリッド駆動装置において、第1サンギヤと、該第1サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、第1サンギヤに噛合した第1ピニオンギヤおよび該第1ピニオンギヤと前記リングギヤとに噛合した第2ピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持するキャリヤと、第2ピニオンギヤに噛合した第2サンギヤとを有するラビニヨ型遊星歯車機構と、前記内燃機関を前記第1サンギヤに選択的に連結する第1クラッチ手段と、前記電動機を前記キャリヤに選択的に連結する第2クラッチ手段と、前記リングギヤを選択的に固定するブレーキ手段とを有し、前記電動機が前記第2サンギヤに連結されるとともに、前記出力部材が前記キャリヤに連結されていることを特徴とするものである。 【0024】したがって請求項8の発明によれば、第1クラッチ手段によって内燃機関を第1サンギヤに連結し、かつブレーキ手段によってリングギヤを固定し、さらに第2クラッチ手段を非動作状態としてキャリヤと電動機との連結を解除することにより、第1サンギヤに対してキャリヤが逆回転する。したがって内燃機関を駆動して第1サンギヤを正回転させることにより、キャリヤおよびこれに連結された出力部材が逆回転し、その結果、内燃機関の動力によって後進走行することができる。また、第1クラッチ手段のみを動作させて内燃機関を第1サンギヤに連結すれば、互いに反力要素となる各サンギヤに内燃機関と電動機とが連結された状態となるので、出力部材のトルクを電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0025】請求項9の発明は、請求項7もしくは8の構成において、前記出力部材もしくは出力部材に一体に連結されている部材の回転を選択的に止める固定手段が、さらに設けられていることを特徴とするものである。 【0026】したがって請求項9の発明によれば、固定手段によって出力部材もしくはこれに一体の部材の回転を止め、その状態で電動機を動作させれば、電動機の連結された第2サンギヤに対して反力要素となる第1サンギヤが、第2サンギヤに対して反対方向に回転する。したがって第1クラッチ手段によって内燃機関を第1サンギヤに連結しておき、電動機を逆回転させれば、第1サンギヤおよびこれに連結されている内燃機関が正回転する。その状態で、内燃機関に燃料を供給し、また必要に応じて点火すれば、内燃機関を始動することができる。 【0027】請求項10の発明は、請求項7もしくは8の構成において、前記第2ピニオンギヤの前記第1ピニオンギヤに噛合している部分の歯数と前記第2サンギヤに噛合している部分の歯数とが相違していることを特徴とするものである。 【0028】したがって請求項10の発明によれば、電動機の動力を出力部材に伝達する際のギヤ比が、請求項7もしくは8に記載した構成とは相違し、例えば、第2サンギヤが噛合している部分の歯数を多くすることにより、電動機の動力で走行する場合の駆動力を大きくすることができる。 【0029】請求項11の発明は、内燃機関の出力する動力と電動機が出力する動力とを、個別にもしくは合成して出力部材に伝達するハイブリッド駆動装置において、サンギヤと、該サンギヤに対して同心円上に配置されたリングギヤと、これらサンギヤとリングギヤとの間に配置されたピニオンギヤを自転かつ公転自在に保持したキャリヤとを回転要素する第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構と、第2遊星歯車機構におけるいずれか1つの回転要素であって固定されることにより他の2つの回転要素が互いに反対方向に回転する関係となる回転要素を選択的に固定するブレーキ手段が設けられるとともに、前記他の2つの回転要素のうちのいずれか一方の回転要素に前記内燃機関を選択的に連結する第2クラッチ手段が設けられ、かつ他方の回転要素が前記出力部材に連結され、前記第1遊星歯車機構におけるいずれか1つの回転要素であって固定されることにより他の2つの回転要素が互いに反対方に回転する関係となる回転要素が、前記出力部材に連結され、かつこの第1遊星歯車機構における前記他の2つの回転要素のうちのいずれか一方の回転要素に第1クラッチ手段を介して前記内燃機関が連結され、さらに前記第1遊星歯車機構における前記他の2つの回転要素のうちの他方の回転要素に、前記電動機の動力が伝達されるように構成されていることを特徴とするものである。 【0030】したがって請求項11の発明によれば、ブレーキ手段によって第2遊星歯車機構における所定の回転要素を固定することにより、他の2つの回転要素が互いに反対方向に回転する状態となる。そして第2クラッチ手段を動作させることにより、これら他の2つの回転要素のうちの一方に内燃機関が連結され、かつ他方に出力部材が連結されているので、内燃機関を駆動することにより、出力部材が内燃機関とは反対方向に回転する。したがって内燃機関の動力によって後進走行することができる。また、第1クラッチ手段によって内燃機関を第1遊星歯車機構の所定の回転要素に連結し、かつ第2クラッチ手段とブレーキ手段とを非動作状態として各回転要素の連結を解除した状態で、電動機をおよび内燃機関を駆動すると、第2遊星歯車機構では、所定の回転要素に出力部材からの負荷が掛かっている状態で他の回転要素に内燃機関からトルクが入力されるので、更に他の回転要素にトルクが生じてこれが第1遊星歯車機構における前記他の2つの回転要素のいずれか一方に伝達される。また、第1遊星歯車機構では、他方の回転要素に内燃機関の出力するトルクが掛かり、また前記他方の回転要素に電動機の出力に応じたトルクが作用しているので、出力要素である回転要素を挟んで互いに反力要素となる2つの回転要素に、内燃機関の動力と電動機の動力とが作用していることになる。その結果、出力部材のトルクを電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0031】請求項12の発明は、請求項11の構成において、前記第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構が、サンギヤとリングギヤとに噛合した複数のピニオンギヤを前記キャリヤによって自転かつ公転自在に保持したシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、前記ブレーキ手段が、第2遊星歯車機構のキャリヤとケーシングとの間に配置されるとともに、このキャリヤと前記第1遊星歯車機構のリングギヤとが連結され、前記第2クラッチ手段が、前記第2遊星歯車機構のサンギヤと内燃機関とを連結するように配置されとともにそのサンギヤに前記電動機が連結され、かつ第2遊星歯車機構のリングギヤが第1遊星歯車機構のキャリヤに連結され、さらに第1遊星歯車機構のキャリヤが第2遊星歯車機構のリングギヤおよび出力部材に連結され、かつこの第1遊星歯車機構のサンギヤが前記第1クラッチ手段を介して前記内燃機関に連結されていることを特徴とするものである。 【0032】したがって請求項12の発明によれば、ブレーキ手段によって第2遊星歯車機構におけるキャリヤを固定することにより、サンギヤとリングギヤとが互いに反対方向に回転する関係となる。そして第2クラッチ手段を動作させることにより、第2遊星歯車機構のサンギヤに内燃機関が連結され、かつリングギヤに出力部材が連結されているので、内燃機関を駆動することにより、出力部材が内燃機関とは反対方向に回転する。したがって内燃機関の動力によって後進走行することができる。また、第1クラッチ手段によって内燃機関を第1遊星歯車機構のサンギヤに連結し、かつ第2クラッチ手段とブレーキ手段とを非動作状態として各回転部材の連結を解除した状態で、電動機および内燃機関を駆動すると、第2遊星歯車機構では、リングギヤに出力部材からの負荷が掛かっている状態でサンギヤにトルクが入力されるので、キャリヤにトルクが生じてこれが第1遊星歯車機構のリングギヤに伝達される。また、第1遊星歯車機構では、サンギヤに内燃機関の出力するトルクが掛かり、またリングギヤに電動機の出力に応じたトルクが作用しているので、出力要素であるキャリヤを挟んで互いに反力要素となるサンギヤとリングギヤとに、内燃機関の動力と電動機の動力とが作用していることになる。その結果、出力部材のトルクを電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0033】請求項13の発明は、請求項11の構成において、前記第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構が、サンギヤとリングギヤとに噛合した複数のピニオンギヤを前記キャリヤによって自転かつ公転自在に保持したシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成され、第2遊星歯車機構のキャリヤが前記第1遊星歯車機構のサンギヤに連結されるとともにこれらキャリヤとサンギヤとを選択的に固定するように前記ブレーキ手段が配置され、前記第2クラッチ手段が、前記第2遊星歯車機構のサンギヤと内燃機関とを連結するように配置され、かつ第2遊星歯車機構のリングギヤが第1遊星歯車機構のキャリヤに連結されるとともにこのキャリヤが前記出力部材に連結され、かつこの第1遊星歯車機構のリングギヤが前記第1クラッチ手段を介して前記内燃機関に連結されていることを特徴とするものである。 【0034】したがって請求項13の発明によれば、ブレーキ手段によって第2遊星歯車機構におけるキャリヤを固定することにより、サンギヤとリングギヤとが互いに反対方向に回転する状態となる。そして第2クラッチ手段を動作させることにより、第2遊星歯車機構のサンギヤに内燃機関が連結され、かつリングギヤに出力部材が連結されているので、内燃機関を駆動することにより、出力部材が内燃機関とは反対方向に回転する。したがって内燃機関の動力によって後進走行することができる。また、第1クラッチ手段によって内燃機関を第1遊星歯車機構のリングギヤに連結し、かつ第2クラッチ手段とブレーキ手段とを非動作状態として各回転部材の連結を解除した状態で、電動機をおよび内燃機関を駆動すると、第2遊星歯車機構では、リングギヤに出力部材からの負荷が掛かっている状態でサンギヤにトルクが入力されるので、キャリヤにトルクが生じてこれが第1遊星歯車機構のサンギヤに伝達される。また、第1遊星歯車機構では、リングギヤに内燃機関の出力するトルクが掛かり、またサンギヤに電動機の出力に応じたトルクが作用しているので、出力要素であるキャリヤを挟んで互いに反力要素となるリングギヤとサンギヤとに、内燃機関の動力と電動機の動力とが作用していることになる。その結果、出力部材のトルクを電動機のトルクによって制御でき、また出力部材の回転を、電動機の出力を制御することにより、内燃機関を運転したまま停止させることができる。 【0035】そして、請求項14の発明は、請求項11もしくは13のいずれかの構成において、前記出力部材もしくは出力部材に一体化されている部材の回転を選択的に止める固定手段が更に設けられていることを特徴とするものである。 【0036】したがって請求項14の発明によれば、固定手段によって出力部材もしくはこれと一体の回転要素の回転を止めることにより、電動機を連結した回転要素と内燃機関を連結した回転要素とが、同方向もしくは反対方向に回転する状態となるので、電動機からこれに連結されている回転要素に適宜の方向のトルクを入力すると、内燃機関が正回転方向に回転させられる。したがってその状態で内燃機関に燃料を供給し、また必要に応じて点火することにより、内燃機関を始動することができる。 【0037】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明をより具体的に説明する。図1はこの発明に係るハイブリッド駆動装置の一例を示す模式図であって、内燃機関1および電動機2の動力を個別にもしくは合成して出力するように構成されている。その内燃機関1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼して動力を出力する動力装置である。以下の説明では、内燃機関をエンジン(Eng.)1と記す。 【0038】また電動機2は、要は、電流が供給されることにより回転して動力を出力する動力装置であって、同期型などの各種の形式のモータを使用することができ、さらには発電機能を備えた電動機を使用することができる。以下の説明では、電動機として発電機能を備えたものを例として示し、電動機をモータ・ジェネレータ(M/G)2と記す。 【0039】これらエンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動力を個別にもしくは合成して出力する機構としてダブルピニオン型遊星歯車機構3を主体とした機構が設けられている。この遊星歯車機構3は、外歯歯車であるサンギヤ4と、このサンギヤ4と同心円上に配置した内歯歯車であるリングギヤ5と、サンギヤ4に噛合する第1ピニオンギヤ6およびこの第1ピニオンギヤ6とリングギヤ5とに噛合した第2ピニオンギヤ7とを自転かつ公転自在に保持したキャリヤ8とを回転要素とし、これら3つの回転要素の間で差動作用をおこなう公知の構成のものである。 【0040】これらの回転要素のうちサンギヤ4にエンジン1の出力軸(例えばクランクシャフト)が連結されている。エンジン1としてレシプロエンジンを使用した場合には、燃料の間欠的な燃焼によるトルクの変動すなわち振動が生じるので、その振動を吸収もしくは緩和するために、エンジン1とサンギヤ4との間にダンパ機構(図示せず)を介在させてもよい。また、キャリヤ8にモータ・ジェネレータ2のロータ2rが連結されている。 【0041】さらに、リングギヤ5とケーシング9との間にブレーキB1 が設けられている。このブレーキB1 はリングギヤ5を選択的に固定するためのものであって、ケーシング9 との間に設けた多板ブレーキやバンドブレーキなどの摩擦係合式の装置を使用することができる。また、このブレーキB1 は、油圧によって動作する形式のもの以外に、電気的に動作する形式のものを使用することもできる。 【0042】出力部材である出力軸10がエンジン1と同一軸線上に配置されている。この出力軸10に対して動力を選択的に伝達するための手段として2つのクラッチが設けられている。すなわちキャリヤ8と出力軸10とを選択的に連結する第1クラッチC1 と、リングギヤ5と出力軸10とを選択的に連結する第2クラッチC2 とが設けられている。これらのクラッチC1 ,C2 は、油圧によって係合・解放する多板式のものが最も一般的であるが、これ以外に噛み合い式のクラッチなど各種の形式のものを使用することができ、またその係合・解放のための手段として電気式の手段を備えたものを使用することもできる。 【0043】前記出力軸10が変速機11に連結されている。この変速機11は、変速比を変更して駆動トルクを増減するためのものであって、遊星歯車機構を主体として構成された有段式の変速機や、同期切換機構(シンクロナイザー)などによって回転部材の連結関係を変更するタイプの有段式変速機、ベルト式の無段変速機、トロイダル式の無段変速機などの各種の変速機を使用することができる。図1には、ベルト式の無段変速機11を模式的に示してある。 【0044】この無段変速機11は、公知の構成のものであって、溝幅を変更することのできる駆動プーリ12と従動プーリ13とを平行に配置し、これらのプーリ12,13に対するベルト(図示せず)の巻き掛け半径を、各プーリ12,13の溝幅を変更することにより変更して変速比を連続的に変化させるように構成されている。 【0045】その従動プーリ13と平行にカウンタ軸14が配置され、これら従動プーリ13とカウンタ軸14とが1対のカウンタギヤ15,16によって連結されている。また、このカウンタ軸14に取り付けられた他のギヤ17が出力ギヤ18に噛合している。この出力ギヤ18は、一例としてディファレンシャル装置のリングギヤである。 【0046】つぎに上述したハイブリッド駆動装置の作用について説明する。この発明に係る上述した装置では、ブレーキB1 および各クラッチC1 ,C2 の係合状態に応じて各種の走行(運転)モードが可能であって、これを表に示せば図2のとおりである。なお、図2およびこれと同種の他の図において、×印は解放(非動作)状態を示し、また○印は係合(動作)状態を示す。以下、各運転モードについて説明する。 【0047】先ず、エンジンの始動モードについて説明する。このモードは、車両の停止状態でエンジン1を始動するモードであって、ブレーキB1 を係合させる。すなわち遊星歯車機構3のリングギヤ5をケーシング9に対して固定する。なお、これに加えて第2クラッチC2 を係合させて出力軸10を固定してもよい。この状態でエンジン1の回転方向とは反対方向にモータ・ジェネレータ2を駆動してキャリヤ8を逆回転させると、リングギヤ5が固定されていることにより、サンギヤ4が正回転する。すなわちサンギヤ4に連結されたエンジン1が正回転させられるので、同時に燃料の供給を開始し、またガソリンエンジンであれば点火をおこなうことにより、エンジン1が始動する。 【0048】この状態を図3に共線図として示してある。なお、図3およびこれと同種の他の図において“S”はサンギヤ4を示し、“R”はリングギヤ5を示し、“CR”はキャリヤ8を示する。また、矢印はトルクの方向を示している。さらにρは、サンギヤとリングギヤとの歯数の比(ギヤ比)を示す。図3において、リングギヤ5を固定した状態でモータ・ジェネレータ2によってキャリヤ8を逆回転方向に回転させると、サンギヤ4が正回転させられ、そのサンギヤ4に連結されたエンジン1が始動させられる。 【0049】つぎに前進走行時のETCモードについて説明する。このETCモードは、上述した装置をトルクコンバータとして機能させるモードであり、上記の第2クラッチC2 のみを係合させて出力軸10をリングギヤ5に連結する。このモードでは、エンジン1を例えば最も効率の良い状態で運転し、これに対してモータ・ジェネレータ2は、リングギヤ5に生じるトルクが走行の要求に沿うものとなるように駆動する。この状態を示す共線図は、例えば図4のとおりであり、エンジン1が駆動していることによりサンギヤ4に正のトルクが生じており、これに対して車両を走行させるための負荷によりリングギヤ5には負の方向のトルクが作用しており、さらにキャリヤ8にはモータ・ジェネレータ2の出力するトルクが正方向に作用している。この状態でモータ・ジェネレータ2を逆回転させれば、リングギヤ5の回転数が低下し、モータ・ジェネレータ2の回転数によっては、図4に実線で示してあるように、リングギヤ5の回転数がゼロになり、車両が停止した状態となる。すなわち、エンジン1を駆動しつつ車両を停止状態に維持することができる。 【0050】また、図4に実線で示す状態からモータ・ジェネレータ2の正方向の出力トルクを増大させてその回転数を正回転方向に増大させると(逆回転方向の回転数を減少させると)、エンジン1およびこれと一体のサンギヤ4の回転数が一定に維持されているので、図4に破線で示すように、出力要素であるリングギヤ5が正方向に回転する。そしてそのトルクは、入力したトルクを、遊星歯車機構3のギヤ比ρに応じて増幅させたトルクとなる。すなわちトルクの増幅作用が生じる。言い換えれば、モータ・ジェネレータ2によるアシスト作用が生じる。 【0051】さらに、モータモードについて説明する。このモードは、モータ・ジェネレータ2の動力のみによって走行するモードであって、第1クラッチC1 のみを係合させ、その状態でモータ・ジェネレータ2を駆動する。この状態では、モータ・ジェネレータ2およびキャリヤ8ならびに出力軸10が直結された状態となるので、モータ・ジェネレータ2の動力がそのまま出力軸10に伝達され、モータ・ジェネレータ2によって走行することができる。 【0052】さらに、エンジン・モータ(Eng+モータ)モードについて説明する。このモードは、いわゆる直結走行モードであって、第1クラッチC1 と第2クラッチC2 とを係合させる。これらのクラッチC1 ,C2 が係合することにより、キャリヤ8とリングギヤ5とが出力軸10を介して連結されるから、遊星歯車機構3の全体が一体化される。すなわちエンジン1およびモータ・ジェネレータ2が出力軸10に直結された状態となる。したがってエンジン1およびモータ・ジェネレータ2から出力された動力がそのまま出力軸10を経て変速機11に入力される。 【0053】つぎに、後進走行のためのモードについて説明する。後進走行はエンジン1の動力での走行、モータ・ジェネレータ2の動力での走行、ならびにエンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動力での走行が可能である。先ず、エンジンモードについて説明すると、このモードでは、第1クラッチC1 を係合させてキャリヤ8に出力軸10を連結するとともに、ブレーキB1 を係合させてリングギヤ5を固定する。この状態を示す共線図は図5のとおりであって、エンジン1を駆動すれば、リングギヤ5を固定した状態でサンギヤ4が正回転することによりキャリヤ8が逆回転する。すなわちエンジン1の回転方向とは反対方向に出力軸10が回転することにより、エンジン1の動力によって後進走行する。 【0054】またモータ後進モードは、第1クラッチC1 のみを係合させる。これは、前述した前進走行でのモータモードと同様であり、モータ・ジェネレータ2が出力軸10に直結された状態になるので、モータ・ジェネレータ2を逆回転させることにより、出力軸10が逆回転する。すなわちモータ・ジェネレータ2の動力により後進走行する。 【0055】後進走行でのエンジン・モータ(Eng+モータ)モードでは、第1クラッチC1 とブレーキB1 とを係合させる。これは、後進走行でのエンジンモードと同様な状態であり、エンジン1を駆動することにより、キャリヤ8およびこれに連結されている出力軸10が逆回転するが、キャリヤ8にはモータ・ジェネレータ2が常時連結されているので、モータ・ジェネレータ2を逆回転方向に駆動することにより、その動力が出力軸10に伝達され、後進走行のための駆動力が増大する。すなわちモータ・ジェネレータ2によって駆動力をアシストすることができる。 【0056】このように、図1に示すハイブリッド駆動装置では、ETCモードにおいて、エンジン1によって出力したトルクを、遊星歯車機構3にモータ・ジェネレータ2のトルクを入力することにより増幅して出力軸10に出力することができる。また、モータ・ジェネレータ2の回転数を制御することにより、エンジン1を駆動したまま、出力軸10の回転を止めることができる。したがって遊星歯車機構3をトルクコンバータと同様に機能させることができる。 【0057】さらに、後進走行する場合、エンジン1の動力にのみによって走行することができ、したがって変速機11として、上記のベルト式無段変速機のように後進段を設定することのできない変速機を採用することができる。そしてまた、モータ・ジェネレータ2の動力によってエンジン1を回転させてエンジン1を始動することができる。そのため、上記のハイブリッド駆動装置では、従来必要としていたスタータモータを廃止することができる。 【0058】上記のハイブリッド駆動装置では、前進走行の際のETCモードで第2クラッチC2 によって出力軸10をリングギヤ5に連結し、またエンジン1の動力による後進走行の際には第1クラッチC1 によって出力軸10をキャリヤ8に連結する。このように、出力軸10を連結する回転要素を変更することによっていわゆるETCモードとエンジン1による後進走行が可能となり、したがって上記の各クラッチC1 ,C2 が、いわゆる出力切り換えクラッチとなっている。 【0059】上述したハイブリッド駆動装置を具体化した例を図6ないし図8に示してある。ここに示すハイブリッド駆動装置は、フロントケース20とミッドケース21とリヤケース22とを有しており、これら三者でケーシング23が形成されている。フロントケース20は、エンジンに連結されるように構成され、エンジンの出力軸24と軸線を一致させた貫通孔を有する隔壁部25がその内部に形成されている。この隔壁部25を挟んでエンジンとは反対側の開口端にカバー26が取り付けられており、このカバー26と隔壁部25との間にモータ室27が形成されている。このモータ室27の内部にモータ・ジェネレータ28が収容されている。 【0060】前記カバー26には、隔壁部25と同様に前記出力軸24と軸線を一致させた貫通孔が形成されており、これら隔壁部25の内周部とカバー26の内周部とに嵌合させた軸受29によってロータ30が回転自在に保持されている。このロータ30は、軸受29によって支持されたボス部から半径方向で外側に突出したフランジ部の外周部に永久磁石を取り付けたものであって、その永久磁石と半径方向で対向する位置に、ステータ31が配置されている。このステータ31は、フロントケース20の内周面に固定されている。また、ロータ30のボス部とカバー26の内壁面との間にレゾルバー32が配置されている。なお、前記軸受29は、モータ室27の液密性を確保するために、シール材を備えた軸受であることが好ましい。 【0061】前記モータ室27の外周側には、液密構造の中空部33が形成されており、この中空部33に冷却水を流すことにより、モータ・ジェネレータ28を冷却するように構成されている。すなわちこの中空部33がウォータージャケットとなっている。 【0062】前記ロータ30のボス部は、中空軸状に形成されており、そのボス部の内部に入力軸34が回転自在に挿入されている。この入力軸34は、前記隔壁部25を貫通してエンジン側に突出しており、その突出端がドライブプレート35を介してエンジンの出力軸24に連結されている。すなわちドライブプレート35は、外周側の質量を大きくした慣性モーメントの大きいプレートであって、エンジンの出力軸24に取り付けられている。また、このドライブプレート35は、回転方向に向けた配置したコイルスプリングなどの弾性体を有するダンパー機構36を備えており、そのダンパー機構36のボス部が前記入力軸34の先端部に一体的に嵌合している。 【0063】上記のフロントケース20に連結されたミッドケース21には、入力軸34と軸線を一致させた貫通孔を有する隔壁部37が、軸線方向での中間部に形成されている。この隔壁部37と前記カバー26との間に形成されている中空部に、遊星歯車機構38およびブレーキB1 ならびに2つのクラッチC1 ,C2 が収納されている。 【0064】この遊星歯車機構38は、前述したダブルピニオン型の遊星歯車機構であって、前記カバー26に隣接して配置されている。この遊星歯車機構28におけるサンギヤ39は、前記入力軸34と一体に形成されている。また前記ロータ30のボス部が入力軸34の外周面に沿って遊星歯車機構38側に延びており、そのボス部(すなわち中空軸部)の先端外周部に、キャリヤ40がスプライン嵌合されている。このキャリヤ40のカバー26側の側面には、半径方向に飛散する潤滑油をピニオンギヤ側に導くガイドプレート41が取り付けられている。 【0065】リングギヤ42は、円筒状の部材であって、これを軸線方向および半径方向に支持するリテーナ43が、リングギヤ42の内周面でかつ軸線方向での一端部に連結されている。このリテーナ43は、キャリヤ40とカバー26との間に配置され、これらキャリヤ40とカバー26との間に配置したスラスト軸受によって軸線方向に対して位置決めされ、またキャリヤ40のボス部に回転自在に嵌合することにより半径方向に対して位置決めされている。 【0066】リングギア42の外周面に円筒状をなすブレーキハブ44が一体的に固定されている。このブレーキハブ44にスプライン嵌合させた複数枚の摩擦板とミッドケース21の内周面にスプライン嵌合させた摩擦板とが軸線方向において交互に配置されており、これらの摩擦板によってブレーキB1 が構成されている。 【0067】前記隔壁部37とミッドケース21の内周面との交差部分にはブレーキB1 側に向けて開口した中空部が形成されており、この中空部にピストン45が軸線方向に前後動するように配置されている。このピストン45の先端部が前記ブレーキB1 の近傍にまで延びており、したがってこのピストン45の背面側に油圧を供給することにより、ピストン45が図6の右方向に移動して摩擦板を押圧することにより、ブレーキB1 を係合させるように構成されている。 【0068】ピストン45の内周側には、第2クラッチC2 用のクラッチドラム46が配置されている。このクラッチドラム46は、前記隔壁部37に沿う側壁部を有する有形円筒状の中空部材であって隔壁部37のボス部によって回転自在に保持されている。このクラッチドラム46の円筒部分における内周面に前記ブレーキハブ44の先端がスプライン嵌合するとともに、複数枚の摩擦板がスプライン嵌合させられており、これらの摩擦板の間に他の摩擦板が交互に配置されている。これら他の摩擦板はクラッチドラム46の内周側に配置した第1クラッチC1 用のクラッチドラム47の外周面にスプライン嵌合しており、したがってこれらの摩擦板によって第2クラッチC2 が構成されている。 【0069】これらの摩擦板を押圧して第2クラッチC2 を係合させるピストン48が前記クラッチドラム46の内周部に軸線方向へ前後動するように収納されている。このピストン48の背面側すなわちクラッチドラム46の内部に対する油圧の供給は、前記隔壁部37に形成した油路を介しておこなうように構成されている。さらに、このピストン48の前面側(図6における右側)には、リテーナによって保持したリターンスプリング49が配置されている。 【0070】隔壁部37の内周側には出力軸50が貫通して回転自在に保持されておりこの出力軸50の後端部(図6の右側の端部)は、前記入力軸34の先端部に回転自在に嵌合している。この出力軸50における入力軸34側の端部には、半径方向に突出したフランジ部が形成されており、ここに前記クラッチドラム47が一体的に連結されている。したがって、第2クラッチC2 によって、リングギア42と出力軸50とを選択的に連結するように構成されている。 【0071】このクラッチドラム47は第1クラッチC1 用のものであって、その内周面に複数枚の摩擦板がスプライン嵌合されており、これらの摩擦板と軸線方向において交互に配置した摩擦板が前記キャリヤ40に一体化させたクラッチハブ51の外周面にスプライン嵌合させられている。すなわち、こられの摩擦板によって第1クラッチC1 が構成されている。この第1クラッチC1 を係合させるピストン52は、出力軸50の半径方向に伸びるフランジ部によって保持されている。このピストン52を動作させる油圧は、前記隔壁部37から出力軸50の内部を通ってピストン52の背面側に供給するように構成されている。このピストン52を復帰動作させるリターンスプリング53がピストン52の前面側に配置されている。 【0072】なお、上述したハイブリッド駆動装置では、図6に示すようにロータ30およびステータ31を可及的に外周側に配置することによりモータ・ジェネレータ28により発生するトルクを大きくする一方、ステータ31の内周側に生じる空間部に遊星歯車機構38の一部を入り込ませることにより、スペースを有効利用して軸線方向での寸法が短縮化されている。 【0073】ミッドケース21に連結されたリヤケース22と前記隔壁部37との間の中空部に変速機54が配置されている。この変速機54は前述したようにベルト式の無段変速機であって、出力軸50と同一軸線上に駆動プーリ55が配置されている。この駆動プーリ55は固定シーブ56と可動シーブ57とから構成されており、これらのシーブ56、57の対向する壁面がテーパ面となっていて、これらのテーパ面によって、ベルト58を挟み込む溝部が形成されている。固定シーブ56は中空状の軸部を備えており、その軸部の一端部の外周側に嵌合させた軸受59を介して前記隔壁部37によって回転自在に支持され、かつその中空部に前記出力軸50の先端部が挿入されてスプライン嵌合されている。可動シーブ56の他方の端部はリヤケース22の内周部に取り付けた軸受60によって回転自在に保持されている。可動シーブ57はこの固定シーブ56における中空軸部の外周側に軸線方向へスライド可能に嵌合されている。この可動シーブ57はダブルピストンタイプの油圧サーボ機構61によって固定シーブ56側へ移動させられるように構成されている。 【0074】上記の駆動プーリ55と平行に従動プーリ62が設けられている。この従動プーリ62は駆動プーリ55と同様に固定シーブ63と可動シーブ64とから構成されており、これらの各シーブ63,64の間の溝部にベルト58を巻掛けるように構成されている。固定シーブ63は中空の軸部を有しており、その一方の端部(図7での左側の端部)が軸受65を介して、リヤケース22によって回転自在に保持されており、また他方の端部が軸受66を介して隔壁部37によって回転自在に保持されている。可動シーブ64は、この固定シーブ63における中空軸部の外周に軸線方向へ移動し得るよう嵌合させられている。この可動シーブ64と固定シーブ63の中空軸部との間には、可動シーブ64を軸線方向に滑らかに移動させるとともに、固定シーブ63と一体的に回転させるためにボールスプライン67が設けられている。この可動シーブ64の背面側(図7の右側)には可動シーブ64を固定シーブ63側に押圧する油圧サーボ機構68が設けられている。 【0075】この変速機54の変速比の制御は各油圧サーボ機構61,68に油圧を供給することによっておこなわれるが、その制御は従来のベルト式無段変速機による制御とほぼ同様である。すなわち、従動プーリ62側の油圧サーボ機構68に要求トルクに応じた油圧を供給しておき、これに対して駆動プーリ55側の油圧サーボ機構61には要求される変速比を設定する油圧を供給する。すなわち、従動プーリ62側の油圧によって、ベルト58に所定の張力を付与しておく一方、駆動プーリ55側の油圧を高くすることにより、駆動プーリ55の溝幅が狭くなって、ベルト58の巻き掛け半径が大きくなり、その結果、変速比が小さくなる。これとは反対に駆動プーリ55側の油圧を低下させると、ベルト58に掛かっている張力により駆動プーリ55の溝幅が押し広げられ、その結果、ベルト58の巻き掛け半径が小さくなるために、変速比が大きくなるように構成されている。 【0076】前記出力軸50および固定シーブ56の内部にはその中心軸線に沿って貫通したポンプシャフト69が配置されており、そのポンプシャフト69の一方の端部は入力軸34にスプライン嵌合させられている。このポンプシャフト69の先端部には、チェーンスプロケット70が取り付けられている。このチェーンスプロケット70は図示しないオイルポンプに駆動力を伝達するためのものである。また、このチェーン70および図示しないチェーンはエンドカバー71によって覆われている。また、図7において符号72は、パーキングギアであって、従動プーリ62における固定シーブ63にスプライン嵌合されている。 【0077】前記フロントケース20とミッドケース21とは、半径方向に突出した部分を備えており、その突出部分にカウンターシャフト73とディファレンシャル74とが収納されている。カウンターシャフト73は比較的短い回転軸であって、その両端部を軸受75によって回転自在に保持されるとともに、前記従動プーリ62における固定シーブ63の軸部に一対のカウンターギア76によって連結されている。またこのカウンターシャフト73には他の歯車77が一体に形成されており、この歯車77がディファレンシャル74におけるリングギア78(出力ギア)に噛合している。なお、図6において符号79は、シール部材を示し、フロントケース20における隔壁25と入力軸34との間を液密状態にシールしている。 【0078】上述した図6ないし図8に示す構成であれば、外径の大きいモータ・ジェネレータ28がドライブプレート35と隣接して配置され、またブレーキB1 やクラッチC1 ,C2 が無段変速機54側に配置されているから、外径寸法の近似した部材を互いに隣接させる構成となっており、その結果、全体としてコンパクトな装置とすることができる。 【0079】つぎにこの発明の他の例について説明する。図9に示す例は、前述した図1に示す構成の配置および連結関係を変更したものである。すなわちエンジン1がキャリヤ8に常時連結されており、これに対してモータ・ジェネレータ2がサンギヤ4に常時連結されている。このように、エンジン1とモータ・ジェネレータ2との連結関係を、図1に示す構成から変更したことにより、第1クラッチC1 は出力軸10とサンギヤ4とを選択的に連結するように配置されている。また、モータ・ジェネレータ2は変速機11を挟んで各クラッチC1 ,C2 とは反対側に配置されている。したがってモータ・ジェネレータ2とサンギヤ4とを連結する軸が駆動プーリ12の中心軸線に沿って貫通している。 【0080】この図9に示す構成のハイブリッド駆動装置においても図1に示すハイブリッド駆動装置におけると同様な走行モード(運転モード)が可能である。すなわち、図10に示すようにエンジン始動モードでは、第2クラッチC2 とブレーキC1 とを係合させる。したがってリングギヤ5を固定した状態でサンギヤ4をモータ・ジェネレータ2によって回転させることになるから、キャリヤ8がサンギヤ4とは反対方向に回転する。この状態を図11に共線図によって示してあり、モータ・ジェネレータ2を逆回転させることにより、キャリヤ8およびこれに連結してあるエンジン1が正回転する。したがってこの状態でエンジン1に燃料を供給し、また必要に応じて点火することにより、エンジン1を始動することができる。 【0081】前進走行の際のETCモードは、第2クラッチC2 のみを係合させることによって設定する。これは、図1に示す例と同様であって、エンジン1あるいはモータ・ジェネレータ2が連結されていない回転要素を出力軸10に連結することにより設定される。この状態では、出力軸10に連結されているリングギヤ5を固定した場合に互いに反力要素となるサンギヤ4とキャリヤ8とにモータ・ジェネレータ2およびエンジン1が連結されているので、エンジン1を例えば最も効率の良い状態で運転し、その状態でモータ・ジェネレータ2の出力を制御することにより、リングギヤ5およびこれに連結してある出力軸10の回転が止まり、またその出力軸10にエンジン1の出力トルクを増幅したトルクが生じ、遊星歯車機構3がトルクコンバータと同様に機能する。このモードでの共線図を図12に示してある。 【0082】モータ走行モードは、第1クラッチC1 を係合させて設定する。すなわち、モータ・ジェネレータ2をサンギヤ4を介して出力軸10に連結する。したがってモータ・ジェネレータ2の動力によって走行することができる。その場合、第2クラッチC2 を係合させれば、遊星歯車機構3の全体が一体回転するので、キャリヤ8に連結してあるエンジン1が正回転する。そのため、モータ走行モードでエンジン1を始動させることができる。 【0083】エンジン1およびモータ・ジェネレータ2による走行モード(Eng+モータモード)は、遊星歯車機構3の全体を一体化させてエンジン1およびモータ・ジェネレータ2を出力軸10に直結するモードであり、これは、第1クラッチC1および第2クラッチC2 を係合させて設定する。図1に示す装置でのエンジン・モータモードと同様である。 【0084】後進時には、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2のいずれかあるいは両方によって走行することができる。すなわちエンジン1の動力で後進走行する場合、第1クラッチC1 およびブレーキB1 を係合させ、リングギヤ5を固定するとともにサンギヤ4を出力軸10に連結した状態でキャリヤ8をエンジン1によって正回転させる。その結果、図13に共線図を示すように、サンギヤ4およびこれに連結してある出力軸10が逆回転するので、後進走行することになる。 【0085】またモータ・ジェネレータ2によって後進走行する場合、モータ・ジェネレータ2を出力軸10に直結すればよいのであるから、第1クラッチC1 を係合させる。またその場合、第2クラッチC2 も同時に係合させて遊星歯車機構3における回転要素同士の相対回転を生じないようにしてもよい。これは、図1に示す装置においても同様である。 【0086】エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の両方の動力で後進走行する場合には、第1クラッチC1 とブレーキB1 とを係合させる。これは、後進走行時のエンジンモードと同様であって、リングギヤ5を固定した状態でキャリヤ8をエンジン1によって回転させるので、サンギヤ4およびこれに連結してある出力軸10が逆回転し、後進走行状態となる。その場合、モータ・ジェネレータ2を逆回転させてサンギヤ4に逆回転方向のトルクを付加することにより、エンジン1とモータ・ジェネレータ2との動力によって後進走行することができる。 【0087】このように図9に示すように構成したハイブリッド駆動装置においても、エンジン1の動力によって後進走行することができるので、バッテリ(図示せず)の充電容量が低下している場合であっても後進走行の際の駆動力が不足することはない。また、いわゆるETCモードが可能であって、エンジン1の出力するトルクをモータ・ジェネレータ2によって増幅して出力軸10から出力することができるので、エンジン1を最適運転状態に維持しつつ発進時などに必要十分な駆動トルクを得ることができる。また特に、図9に示す構成では、モータ・ジェネレータ2を軸線方向での一端部に配置することができるので、モータ・ジェネレータ2の冷却が容易になる。 【0088】この図9に示す構成では、上記の説明から知られるように、キャリヤ8が常時正回転する。これを利用してオイルポンプOp を内蔵した構成とすることができる。その例を図14に示してある。この図14に示す構成は、図9に示す構成を改良したものであって、キャリヤ8にオイルポンプOp が連結されるとともに、キャリヤ8とエンジン1との間にクラッチC0 が配置され、さらに、ブレーキB1 と並列に一方向クラッチF1 が配置されている。他の構成は、図9に示す構成と同一である。 【0089】このような構成であれば、前進および後進のいずれの走行モードであってもキャリヤ8が正回転することにより、オイルポンプOp が正常に駆動され、必要な油圧を発生させることができる。 【0090】上述した各例は、出力要素を変更するように構成した例であるが、これに加えて、モータ・ジェネレータ2の動力を入力する要素を変更するように構成してもよい。図15にその一例を記載してある。この図15に示す例は、図1に示す構成を改良したものであって、モータ・ジェネレータ2とリングギヤ5との間に第1入力クラッチC1 が配置され、またモータ・ジェネレータ2とキャリヤ8との間に第2入力クラッチC2 が配置され、さらにキャリヤ8と出力軸10との間には、図1に示す第1クラッチに相当する第1出力クラッチC3 が配置され、そしてリングギヤ5と出力軸10との間には、図1に示す第2クラッチに相当する第2出力クラッチC4 が配置されている。またさらに、図1に示すブレーキに替えて一方向クラッチF1 がリングギヤ5とケーシング9との間に配置されている。 【0091】この図15に示すハイブリッド駆動装置の作用すなわち各走行モードについて説明する。このハイブリッド駆動装置によれば、図16に示す7つのモードを設定することができ、先ず、エンジン始動モードについて説明すると、このモードでは、第2入力クラッチC2 を係合させる。すなわちモータ・ジェネレータ2をキャリヤ8に連結する。この状態の共線図を図17に示してある。モータ・ジェネレータ2によってキャリヤ8を逆回転させると、サンギヤ4にエンジン1の負荷が掛かっているので、リングギヤ5が逆回転しようとする。このリングギヤ5に連結してある一方向クラッチF1 は逆回転方向のトルクが回転側の部材(例えばインナーレース)に作用した際に係合するように構成されているので、モータ・ジェネレータ2を逆回転することによってリングギヤ5が固定され、その結果、サンギヤ4およびこれに連結してあるエンジン1が正回転する。したがってその状態でエンジン1に燃料を供給し、また必要に応じて点火することによりエンジン1を始動することができる。なお、このエンジン始動モードでは、第2出力クラッチC4 を係合させて、出力軸10の回転を止めてもよい。 【0092】また、前進走行の際のETCモードは、第2入力クラッチC2 と第2出力クラッチC4 とを係合させて設定する。すなわちモータ・ジェネレータ2をキャリヤ8に連結し、かつ出力軸10をリングギヤ5に連結する。これは、図1に示すハイブリッド駆動装置での前進走行の際のETCモードと同じ連結状態および動力の入出力状態となる。したがって、図18に示す共線図からも明らかなように、エンジン1の出力するトルクをモータ・ジェネレータ2によって増幅して出力軸10に出力することができ、またエンジン1を回転させたまま、出力軸10の回転を止めることができる。 【0093】またモータ走行モードは、第2入力クラッチC2 と第1出力クラッチC3 とを係合させて設定する。すなわちモータ・ジェネレータ2をキャリヤ8に連結するとともに、出力軸10をキャリヤ8に連結することにより、モータ・ジェネレータ2と出力軸10とをキャリヤ8を介して直結する。したがってモータ・ジェネレータ2の動力によって前進走行することができる。 【0094】エンジン・モータモードでは、前記4つのクラッチのうちいずれか3つを係合させる。例えば図16に示すように、各入力クラッチC1 ,C2 と第1出力クラッチC3 とを係合させる。したがってモータ・ジェネレータ2が遊星歯車機構3に連結されるとともに、遊星歯車機構3の全体が一体化され、その一体化された遊星歯車機構3のキャリヤ8に出力軸10が連結される。そのため、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動力が遊星歯車機構3を介して出力軸10に伝達され、エンジン1の動力とモータ・ジェネレータ2の動力とによって前進走行することができる。 【0095】後進走行のためのモードとしてエンジンモードとモータモードとが可能である。エンジンモードでは、第1入力クラッチC1 と第1出力クラッチC3 とを係合させる。すなわちモータ・ジェネレータ2をリングギヤ5に連結するとともに、出力軸10をキャリヤ8に連結する。この状態の共線図を図19に示してある。エンジン1を駆動してサンギヤ5に正回転方向のトルクを伝達すると、キャリヤ8に出力軸10からの負荷が掛かっているので、リングギヤ5に正回転方向のトルクが生じる。これに打ち勝つトルクをモータ・ジェネレータ2によってリングギヤ5に与えると、リングギヤ5の回転数が抑制され、それに伴ってキャリヤ8およびこれに連結してある出力軸10が逆回転する。なお、リングギヤ5には一方向クラッチF1 が連結してあるので、一方向クラッチF1 によって回転が止められるまでリングギヤ5の正回転方向の回転を低下させることが可能である。すなわちこの後進走行の際のエンジンモードは、モータ・ジェネレータ2によって後進走行状態を設定することになり、またその駆動トルクをモータ・ジェネレータ2によって制御することになる。 【0096】一方、後進走行のためのモータモードは、モータ・ジェネレータ2を出力軸10に直結するモードであり、したがって前進走行の際のモータモードと同様に、第2入力クラッチC2 と第1出力クラッチC3 とを係合させる。この状態では、モータ・ジェネレータ2と出力軸10とが直結状態であるから、モータ・ジェネレータ2を逆回転させることにより出力軸10が逆回転し、後進走行する。 【0097】なお、上記の図15に示す例は、図1に示す構成のうち、キャリヤ8とモータ・ジェネレータ2との間、およびリングギヤ5とモータ・ジェネレータ2との間にクラッチ機構を追加設置し、かつブレーキを一方向クラッチに変更した例であるが、これと同様な変更を図9に示す構成についておこなうことができる。すなわちモータ・ジェネレータ2を遊星歯車機構3から切り離す手段を設けることになるので、エンジン1の動力で走行し、かつ発電の必要がない場合には、モータ・ジェネレータ2を切り離して動力の損失を防止することができる。 【0098】つぎに前記ダブルピニオン型遊星歯車機構に替えてシングルピニオン型遊星歯車機構を使用した例を説明する。図20はその一例を示しており、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動力を出力軸10に個別にもしくは合成して伝達するシングルピニオン型遊星歯車機構80は、外歯歯車であるサンギヤ81と、そのサンギヤ81に対して同心円上に配置した内歯歯車であるリングギヤ82と、これらサンギヤ81とリングギヤ82とに噛合したピニオンギヤ83を自転かつ公転自在に保持したキャリヤ84とを回転要素とした歯車機構である。 【0099】そのサンギヤ81にモータ・ジェネレータ2が連結されるとともに、第1クラッチC1 を介して出力軸10が連結されている。またリングギヤ82にエンジン1が連結されている。さらに、キャリヤ84を選択的に固定するブレーキB1 が設けられるとともに、このキャリヤ84と出力軸10との間に第2クラッチC2が設けられている。すなわちこの図20に示す構成は、前述した図9に示す構成におけるダブルピニオン型遊星歯車機構をシングルピニオン型遊星歯車機構に変更し、それに伴ってキャリヤとリングギヤとに対する動力装置や摩擦係合装置の連結関係を入れ替えたものである。 【0100】したがって図20に示す構成のハイブリッド駆動装置においても、図9に示す構成の装置と同様の走行モードを設定することができ、また各モードでのクラッチC1 ,C2 およびブレーキB1 の係合・解放状態は、図9に示す装置と同一である。図21に各走行モードを設定するための係合作動表を示してある。なお、図21では、前進走行および後進走行の際のモータモードで第2クラッチC2 を解放することとしてあるが、モータモードでは遊星歯車機構80の全体が一体化するので、図9に示す装置による場合と同様に第2クラッチC2 を係合させることとしてもよい。 【0101】以下、各走行モードについて説明する。エンジン始動モードでは、第2クラッチC2 とブレーキB1 とを係合させる。したがってキャリヤ84を固定した状態でサンギヤ81をモータ・ジェネレータ2によって回転させることになるから、リングギヤ82がサンギヤ81とは反対方向に回転する。この状態を図22に共線図によって示してあり、モータ・ジェネレータ2を逆回転させることにより、リングギヤ82およびこれに連結してあるエンジン1が正回転する。したがってこの状態でエンジン1に燃料を供給し、また必要に応じて点火することにより、エンジン1を始動することができる。 【0102】前進走行の際のETCモードは、第2クラッチC2 のみを係合させることによって設定する。すなわち、エンジン1あるいはモータ・ジェネレータ2が連結されていない回転要素を出力軸10に連結する。この状態では、出力軸10に連結されているキャリヤ84を固定した場合に互いに反力要素となるサンギヤ81とリングギヤ82とにモータ・ジェネレータ2およびエンジン1が連結されているので、エンジン1を例えば最も効率の良い状態で運転し、その状態でモータ・ジェネレータ2の出力を制御することにより、キャリヤ84およびこれに連結してある出力軸10の回転が止まり、またその出力軸10にエンジン1の出力トルクを増幅したトルクが生じ、遊星歯車機構80がトルクコンバータと同様に機能する。このモードでの共線図を図23に示してある。 【0103】モータ走行モードは、第1クラッチC1 を係合させて設定する。すなわち、モータ・ジェネレータ2を出力軸10に連結する。したがってモータ・ジェネレータ2の動力によって走行することができる。 【0104】エンジン1およびモータ・ジェネレータ2による走行モード(Eng+モータモード)は、遊星歯車機構80の全体を一体化させてエンジン1およびモータ・ジェネレータ2を出力軸10に直結するモードであり、これは、第1クラッチC1 および第2クラッチC2 を係合させて設定する。図1あるいは図9に示す装置でのエンジン・モータモードと同様である。 【0105】後進時には、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2のいずれか一方あるいは両方によって走行することができる。すなわちエンジン1の動力で後進走行する場合、第1クラッチC1 およびブレーキB1 を係合させ、キャリヤ84を固定するとともにサンギヤ81を出力軸10に連結した状態でリングギヤ82をエンジン1によって正回転させる。その結果、図24に共線図を示してあるように、サンギヤ81およびこれに連結してある出力軸10が逆回転するので、後進走行することになる。 【0106】またモータ・ジェネレータ2によって後進走行する場合、モータ・ジェネレータ2を出力軸10に直結すればよいのであるから、第1クラッチC1 を係合させる。またその場合、第2クラッチC2 も同時に係合させて遊星歯車機構80における回転要素同士の相対回転を生じないようにしてもよい。 【0107】エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の両方の動力で後進走行する場合には、第1クラッチC1 とブレーキB1 とを係合させる。これは、後進走行時のエンジンモードと同様であって、キャリヤ84を固定した状態でリングギヤ82をエンジン1によって回転させるので、サンギヤ81およびこれに連結してある出力軸10が逆回転し、後進走行状態となる。その場合、モータ・ジェネレータ2を逆回転させてサンギヤ81に逆回転方向のトルクを付加することにより、エンジン1とモータ・ジェネレータ2との動力によって後進走行することができる。 【0108】このように図20に示すように構成したハイブリッド駆動装置においても、エンジン1の動力によって後進走行することができるので、バッテリ(図示せず)の充電容量が低下している場合であっても後進走行の際の駆動力が不足することはない。また、いわゆるETCモードが可能であって、エンジン1の出力するトルクをモータ・ジェネレータ2によって増幅して出力軸10から出力することができるので、エンジン1を最適運転状態に維持しつつ発進時などに必要十分な駆動トルクを得ることができる。 【0109】図20に示す構成にオイルポンプOp を付加した構成を図25に示してある。リングギヤ82とエンジン1のと間にクラッチC0 が配置され、そのエンジン1の出力軸にオイルポンプOp が連結されている。また、ブレーキB1 と並列に一方向クラッチF1 が配置されている。他の構成は、図20に示す構成と同様である。 【0110】なお、図20に示す例では、モータ・ジェネレータ2を軸線方向での中央部に配置し、その両側に遊星歯車機構3とクラッチC1 ,C2 とを配置した構成としたが、モータ・ジェネレータ2を変速機11に隣接して配置し、クラッチC1 ,C2 を遊星歯車機構3よりもエンジン1側に配置する構成としてもよい。 【0111】以上説明した各具体例は、出力軸10を連結する回転要素をクラッチによって変更することにより、エンジン1の動力によって後進走行することが可能なように構成したものであるが、遊星歯車機構に対する動力の入力の仕方を変更することによってエンジン1での後進走行が可能なように構成することもできる。その例を以下に説明する。 【0112】図26は、ラビニヨ型遊星歯車機構90を使用した例であり、このラビニヨ型遊星歯車機構90は、外歯歯車である第1サンギヤ91と、この第1サンギヤ91に対して同心円上に配置した内歯歯車であるリングギヤ92と、これらのサンギヤ91とリングギヤ92との間に配置された第1サンギヤ91に噛合するショートピニオンギヤ93およびこのショートピニオンギヤ93とリングギヤ92とに噛合したロングピニオンギヤ94を自転および公転自在に保持したキャリヤ95と、そのロングピニオンギヤ94に噛合した第2サンギヤ96とを備えた公知の遊星歯車機構である。その第2サンギヤ96にモータ・ジェネレータ2が連結されるとともに、エンジン1を第1サンギヤ91に選択的に連結する第1クラッチC1 と、エンジン1を第2サンギヤ96に選択的に連結する第2クラッチC2とが設けられている。さらにキャリヤ95とケーシング9との間にブレーキB1が設けられ、このブレーキB1 によってキャリヤ95を選択的に固定するように構成されている。さらにリングギヤ92に出力軸10が連結されている。 【0113】一方、従動プーリ13とケーシング9との間には一方向クラッチF1 と第2ブレーキB2 とが直列に配列されている。この一方向クラッチF1 は、従動プーリ13に連結してある部材(例えばインナーレース)が従動プーリ13と共に第2ブレーキB2 側の部材(例えばアウターレース)に対して後進走行方向に回転(逆回転)した場合に係合するように構成されており、したがって第2ブレーキB2 を係合させることにより、従動プーリ13および駆動プーリ12ならびに出力軸10の後進走行方向への回転を阻止するように構成されている。他の構成は、図1に示す構成と同様であるから、図26に図1と同一の符号を付してその説明を省略する。 【0114】この図26に示す構成のハイブリッド駆動装置においても図27に示す各走行モード(運転モード)が可能である。以下、これらの各モードについて説明する。 【0115】エンジン始動モードでは、第1クラッチC1 を係合させてエンジン1を第1サンギヤ91に連結するとともに、第2ブレーキB2 を係合させて出力軸10すなわちリングギヤ92の逆回転を阻止した状態とする。この状態の共線図を図28に示してある。なお、以下の共線図においてρ1 は、第1サンギヤとリングギヤとの歯数の比、ρ2 は、第2サンギヤとリングギヤとの歯数の比をそれぞれ示し、またS1 は第1サンギヤ、S2 は第2サンギヤをそれぞれ示す。モータ・ジェネレータ2を逆回転させると、リングギヤ92を固定した状態で第2サンギヤ96を逆回転させることになるから、この第2サンギヤ96に対して第1サンギヤ91が反対方向に回転する。すなわち第1サンギヤ91に連結されたエンジン1がモータ・ジェネレータ2によって正回転させられるので、エンジン1に燃料を供給し、また必要に応じて点火をおこなうことによりエンジン1を始動することができる。 【0116】前進走行の際には遊星歯車機構90をトルクコンバータと同様に機能させるETCモードが可能である。これは、第1クラッチC1 のみを係合させてエンジン1を第1サンギヤ91に連結する。この状態は、出力軸10およびこれに連結した出力要素であるリングギヤ92を固定した場合に、互いに反対方向に回転する回転要素すなわち第1サンギヤ91と第2サンギヤ96とにエンジン1およびモータ・ジェネレータ2を連結した構成となる。この場合の共線図を図29に示してある。エンジン1を例えば最も効率の良い状態で運転してその動力を第1サンギヤ91に伝達している状態でモータ・ジェネレータ2を逆回転方向に駆動して第2サンギヤ96を逆回転させると、そのモータ・ジェネレータ2の回転数に応じてリングギヤ92およびこれと一体の出力軸10の回転が止まる。図29には、その状態を実線で示してある。 【0117】この状態からモータ・ジェネレータ2の正回転方向の出力トルクを増大させると、それに応じて第2サンギヤ96の回転数(正回転方向の回転数)が次第に増大し(すなわち逆回転方向の回転数が次第に低下し)、それに伴ってリングギヤ92およびこれに連結されている出力軸10の正回転方向への回転数が次第に増大する。その出力軸10の回転数はエンジン1の回転数に比較して小さいので、その出力トルクはエンジン1の出力トルクをモータ・ジェネレータ2によって増幅したトルクとなる。このように図26に示す構成のハイブリッド駆動装置においても、遊星歯車機構90をトルクコンバータとして機能させることができる。 【0118】前進走行でのモータモードは、第1ブレーキB1 を係合させてキャリヤ95を固定することにより設定する。この状態では、第2サンギヤ96とリングギヤ92とが互いに反対方向に回転する関係となるから、モータ・ジェネレータ2を逆回転させると、リングギヤ92および連結した出力軸10が正回転する。すなわちモータ・ジェネレータ2の動力によって出力軸10を回転させ、前進走行することができる。なお、この場合、従動プーリ13が前進走行方向に回転するから、一方向クラッチF1 が係合することがなく、したがって第2ブレーキB2 を係合させておいてもよい。 【0119】エンジン・モータモードは、エンジン1の動力モータ・ジェネレータ2の動力とを出力軸10に伝達するモードであり、したがってこの場合は、第1クラッチC1 と第2クラッチC2 とを係合させる。2つの回転要素である第1サンギヤ91と第2サンギヤ96とがクラッチC1 ,C2 とによって連結されるので、遊星歯車機構90の全体が一体化される。その結果、エンジン1の動力とモータ・ジェネレータ2の動力とがそのままリングギヤ92から出力軸10に出力される。 【0120】後進走行をおこなう際の3つのモードが可能であって、先ず、エンジンモードについて説明すると、エンジン1の動力によって後進走行する場合には、第2クラッチC2 を係合させてエンジン1を第2サンギヤ96に連結する一方、ブレーキB1 を係合させてキャリヤ95を固定する。この状態の共線図を図30に示してあり、エンジン1と出力軸10とは、シングルピニオン型遊星歯車機構を介して連結された状態になり、したがってキャリヤ95を固定して第2サンギヤ96をエンジン1によって回転させることになるから、リングギヤ92およびこれに連結してある出力軸10が逆回転し、後進走行する。なお、この場合、図30に示すように、リングギヤ92が逆回転するので、従動プーリ13に連結してある一方向クラッチF1 が係合する。しかしながら、この一方向クラッチF1 と直列の関係にある第2ブレーキB2 が解放しているので、装置がロックすることはない。 【0121】後進走行の際のモータモードは、第1ブレーキB1 のみを係合させて設定する。すなわち、第2サンギヤ96とこれに噛合しているロングピニオンギヤ94とキャリヤ95とリングギヤ92とによって遊星歯車機構90を、シングルピニオン型遊星歯車機構として機能させる。そのキャリヤ95がブレーキB1 によって固定されているために、モータ・ジェネレータ2を正回転させれば、これに連結されている第2サンギヤ96が正回転することにより、リングギヤ92が逆回転する。したがってモータ・ジェネレータ2の動力によって出力軸10が逆回転するので、後進走行をおこなうことができる。なお、その場合、従動プーリ13が後進走行方向に回転することにより、一方向クラッチF1 が係合するが、第2ブレーキB2 が解放されているので、装置がロックすることはない。 【0122】後進走行の際のエンジン・モータモードは、第2クラッチC2 を係合させてエンジン1を第2サンギヤ96に連結するとともに、ブレーキB1 を係合させてキャリヤ95を固定することによって設定する。この状態は上述した後進走行でのモータモードにおいて、第2サンギヤ96にモータ・ジェネレータ2の動力に加えてエンジン1の動力を入力するモードとなり、したがったこれらエンジン1とモータ・ジェネレータ2との動力によって第2サンギヤ96が正回転させられ、それに応じたトルクでリングギヤ92が逆回転させられ、その結果、出力軸10が逆回転して後進走行状態となる。なお、この場合においても一方向クラッチF1 が係合する。 【0123】このように後進走行する場合、モータ・ジェネレータ2とエンジン1とを連結することができるので、モータ・ジェネレータ2によって後進走行を開始した後、エンジン1を連結してエンジン1を始動し、あるいは後進走行を開始する以前にいずれかの摩擦係合装置をスリップさせて停車状態を維持しつつモータ・ジェネレータ2によってエンジン1を始動し、その後に摩擦係合装置を完全に係合させて後進走行を開始する。 【0124】図26には示すハイブリッド駆動装置においても、前進走行の際に遊星歯車機構90をトルクコンバータと同様に機能させて、出力トルクの増幅を図ることができるとともに、エンジン1を運転したまま出力軸10の回転を止めて停車することができる。また、遊星歯車機構90に対するエンジン1からの入力の仕方を変えることにより、エンジン1の動力により後進走行することができ、そのためバッテリ(図示せず)の充電容量が低下している場合であっても必要十分な駆動力で後進走行することができる。さらに図26に示す構成のハイブリッド駆動装置では、各クラッチC1 ,C2 がエンジン1の動力をサンギヤ91,96に伝達するためのものであるから、そのクラッチC1 ,C2 に要求される伝達トルク容量はエンジン1が出力するトルクを上回ることがなく、したがってこれらのC1,C2 を小容量のものとして装置全体を小型化することができる。 【0125】つぎにロングピニオンの形状を変えたラビニヨ型遊星歯車機構を使用した例について説明する。図31はその例を示しており、ここに示すラビニヨ型遊星歯車機構100におけるロングピニオンの歯数が第2サンギヤに噛合する部分で多くなっている。すなわちこのラビニヨ型遊星歯車機構100は、前述した図26に示すものと同様に,第1サンギヤ101と、リングギヤ102と、第1サンギヤ101に噛合するショートピニオンギヤ103およびこのショートピニオンギヤ103とリングギヤ102とに噛合するロングピニオンギヤ104とを自転かつ公転自在に保持したキャリヤ105と、そのロングピニオンギヤ104に噛合した第2サンギヤ106とを備えている。そして、ロングピニオンギヤ104のうち第2サンギヤ106が噛合している箇所の外径が、リングギヤ102と噛合している部分の外径よりも大きく、この部分の歯数が多くなっている。 【0126】そして第1サンギヤ101に対してエンジン1を選択的に連結する第1クラッチC1 が設けられるとともに、第2サンギヤ106にモータ・ジェネレータ2が連結され、かつこの第2サンギヤ106とキャリヤ105との間に第2クラッチC2 が配置されている。さらにキャリヤ105に出力軸10が連結されており、このキャリヤ105を選択的に固定する第1ブレーキB1 とリングギヤ102を選択的に固定する第2ブレーキB2 とが設けられている。他の構成は図1に示す構成と同様であるから、図31に図1と同一の符号を付してその説明を省略する。 【0127】この図31に示すハイブリッド駆動装置で設定可能な走行モード(運転モード)は、図32に示すとおりである。先ず、エンジン始動モードについて説明すると、エンジン1を始動する場合には、第1クラッチC1 を係合させてエンジン1を第1サンギヤ101に連結するとともに、第1ブレーキB1 を係合させてキャリヤ105を固定する。この状態の共線図は図33に示すとおりである。なお、以下の共線図でρ3 は、前記第2ピニオンギヤ104の前記第1ピニオンギヤ103に噛合している部分の歯数と、前記第2サンギヤ106に噛合している部分の歯数との比である。キャリヤ105を固定した状態でモータ・ジェネレータ2によって第2サンギヤ106を逆回転させると、エンジン1を連結してある第1サンギヤ101が正回転する。すなわちエンジン1が正回転させられるので、この状態でエンジン1に燃料を供給し、また必要に応じて点火することによりエンジン1を始動することができる。 【0128】前進走行する際には、前述した図26に示す装置と同様に、3つの走行モードが可能である。先ず、遊星歯車機構100をトルクコンバータと同様に機能させるETCモードについて説明すると、この場合は、第1クラッチC1 のみを係合させる。その状態の共線図を図34に示してある。すなわち、出力軸10と一体のキャリヤ105を固定した場合に互いに反対方向に回転する関係となる第1サンギヤ101と第2サンギヤ106とにエンジン1とモータ・ジェネレータ2とが連結された状態となり、したがってエンジン1を例えば最も効率の良い状態で運転し、その状態でモータ・ジェネレータ2を所定の回転数で逆回転させれば、図34に実線で示すように出力軸10の回転が止まり、エンジン1を運転したまま停車状態を維持することができる。この状態からモータ・ジェネレータ2の回転数を正回転方向に変化させれば、すなわち逆回転方向の回転数を減少させて次第に正回転させれば、出力軸10に正回転方向のトルクが生じてその回転数が次第に増大する。その場合、出力軸10のトルクは、エンジン1の出力トルクよりも増幅されたトルクとなる。すなわちエンジン1を駆動しつつモータ・ジェネレータ2の出力する動力によって駆動トルクを増幅させる。したがってモータアシストモードとなる。 【0129】前進走行時のモータモードは、第2クラッチC2 を係合させてモータ・ジェネレータ2をキャリヤ105を介して出力軸10に直結した状態として設定する。したがってモータ・ジェネレータ2の動力がそのまま出力軸10に伝達されるので、モータ・ジェネレータ2の動力によって走行することができる。 【0130】前進走行の際のエンジン・モータモードは、第1クラッチC1 と第2クラッチC2 とを係合させて設定する。すなわち、第2クラッチC2 を係合させることにより、第2サンギヤ106とキャリヤ105とが連結されるので、遊星歯車機構100の全体が一体化される。さらに第1クラッチC1 が係合していてエンジン1が、一体化されて遊星歯車機構100の第1サンギヤ101に連結されているから、エンジン1とモータ・ジェネレータ2とが出力軸10に直結された状態となる。したがってエンジン1とモータ・ジェネレータ2との動力を、そのまま出力軸10に伝達して前進走行することができる。 【0131】後進走行する場合にも3つの走行モード(運転モード)が可能である。先ず、エンジンモードについて説明すると、後進走行をエンジン1の動力でおこなう場合には、第1クラッチC1 と第2ブレーキB2 とを係合させる。すなわちエンジン1を第1サンギヤ101に連結するとともに、リングギヤ102を固定する。この状態の共線図を図35に示してあり、リングギヤ102を固定した状態で第1サンギヤ101をエンジン1によって正回転させると、キャリヤ105およびこれに連結してある出力軸10が逆回転し、したがってエンジン1の動力によって後進走行することができる。 【0132】後進走行の際のモータモードは、第2ブレーキB2 のみを係合させて設定する。このモードでは第2サンギヤ106にのみモータ・ジェネレータ2から動力が入力され、かつその状態でリングギヤ102が固定されているから、キャリヤ105およびこれに連結されている出力軸10が逆回転する。その場合、第2サンギヤ106とリングギヤ102との歯数の比(すなわちギヤ比)ρ2 に応じてキャリヤ105の回転数が減少させられるから、出力軸10に生じる出力トルクがそのギヤ比に応じて増大させられ、したがってモータモードでの後進時の変速比を大きい値に設定することができる。 【0133】エンジン1およびモータ・ジェネレータ2とで後進走行するエンジン・モータモードは、第1クラッチC1 と第2ブレーキB2 とを係合させて設定する。すなわちエンジン1を第1サンギヤ101に連結するとともに、リングギヤ102を固定する。この状態では、第1サンギヤ101に入力された動力によってキャリヤ105に逆回転方向のトルクが作用し、これと同様に第2サンギヤ106に正回転方向の動力を入力するとキャリヤ105が逆回転するので、エンジン1とモータ・ジェネレータ2との動力を遊星歯車機構100によって合成して出力軸10に伝達することができる。すなわち、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動力によって出力軸10を逆回転させて後進走行することができる。 【0134】上述したように図31に示すハイブリット駆動装置においても、エンジン1の出力トルクを増幅させて出力軸10に出力するいわゆるトルクコンバータとしての機能を達成することができると同時に、エンジン1によって後進走行することができ、したがってバッテリ(図示せず)の充電容量が低下している場合であっても、必要十分な駆動力によって後進走行することが可能である。 【0135】さらに、この図31に示す構成のハイブリッド駆動装置においても、各クラッチC1 ,C2 は、エンジン1あるいはモータ・ジェネレータ2が出力する動力を伝達するように配置されていて、歯車機構などによって増幅されたトルクを伝達するものではないから、その伝達トルク容量が小さくてよく、その結果、装置の全体を小型軽量化することができる。 【0136】以上説明した各具体例は1組の遊星歯車機構を使用した例であるが、この発明の装置では、複数組の遊星歯車機構を使用することができる。以下、その例について説明する。 【0137】図36に示すハイブリッド駆動装置は、2つの回転要素を互いに連結した2組のシングルピニオン型遊星歯車機構110,111を使用した例であり、これらの遊星歯車機構110,111は、それぞれサンギヤ112,113と、サンギヤ112,113に対して同心円上に配置したリングギヤ114,115と、サンギヤ112,113およびリングギヤ114,115に噛合したピニオンギヤを自転および公転自在に保持したキャリヤ116,117とを回転要素とするものである。そして第1遊星歯車機構110のキャリヤ116と第2遊星歯車機構111のリングギヤ115とが一体的に連結され、また第1遊星歯車機構110のリングギヤ114と第2遊星歯車機構111のキャリヤ117とが一体的に連結されている。 【0138】その第2遊星歯車機構111のサンギヤ112にモータ・ジェネレータ2が連結されるとともに、このサンギヤ113と第1遊星歯車機構110のサンギヤ112との間には、第2遊星歯車機構111側から第1遊星歯車機構110側に正回転方向にトルクを伝達する際に係合する第1一方向クラッチF1 と、多板式の第1クラッチC1 とが直列に配置されている。また、エンジン1と第1クラッチC1 との間には、エンジン1からトルクを伝達する場合に係合する第2一方向クラッチF2 が配置されている。したがってエンジン1から第1遊星歯車機構のサンギヤ112には、第2一方向クラッチF2 と第1クラッチC1 とを介してトルクが伝達されるようになっている。さらにエンジン1と第2遊星歯車機構111のサンギヤ113との間には多板式の第2クラッチC2 が配置されている。 【0139】互いに連結されている第1遊星歯車機構110のリングギヤ114と第2遊星歯車機構111のキャリヤ117とを選択的に固定する第1ブレーキB1 が設けられている。また、第1遊星歯車機構110のキャリヤ116が出力軸10に連結されている。 【0140】また一方、変速機11における従動プーリ13とケーシング9との間には、第3一方向クラッチF3 と多板式の第2ブレーキB2 とが、その順序に配置されている。この一方向クラッチF3 は従動プーリ13が逆回転しようとする場合、すなわ後進走行する方向にトルクを受けた場合に係合するように構成されている。さらに、この従動プーリ13とカウンタギヤ15との間には、両者を選択的に連結する第3クラッチC3 が設けられている。 【0141】なお、駆動プーリ12の中心軸線に沿ってポンプ軸118が貫通して配置されている。このポンプ軸118の一方の端部は、エンジン1もしくはエンジン1に連結された軸に一体回転するように連結され、また他方の端部は、チェーン機構119を介してオイルポンプOp に連結されている。なお、符号120はドライブプレート、121はダンパー機構をそれぞれ示す。 【0142】上述した図36に示すハイブリッド駆動装置においても前述した各具体例と同様に各種の走行モード(運転モード)を設定することができる。すなわち車両が停止している状態でエンジン1を始動する始動モードでは、第2クラッチC2 のみを係合させる。第2クラッチC2 が係合することによってエンジン1が第2遊星歯車機構111のサンギヤ113に連結され、またこのサンギヤ113にはモータ・ジェネレータ2が常時連結されているので、モータ・ジェネレータ2とエンジン1とが直結状態となる。したがってモータ・ジェネレータ2を正回転方向に駆動すれば、エンジン1が回転させられ、その状態で燃料を供給し、また必要に応じて点火することにより、エンジン1を始動することができる。 【0143】また、前進走行時にエンジン1の出力トルクをモータ・ジェネレータ2によって増幅して出力軸10に出力することのできるETCモードは、第1クラッチC1 および第3クラッチC3 を係合させて設定する。すなわち出力軸10に連結されている第1遊星歯車機構110のキャリヤ116と第2遊星歯車機構111のリングギヤ115とを固定した場合に、第1遊星歯車機構110のサンギヤ112と第2遊星歯車機構111のサンギヤ113とが互いに反対方向に回転する関係となり、これら互いに反対方向に回転する回転要素にエンジン1とモータ・ジェネレータ2とが連結されることになる。 【0144】この状態を図37に共線図で示してある。すなわちエンジン1を例えば最も効率の良い状態で運転し、その状態でモータ・ジェネレータ2を所定の回転数で逆回転させれば、図37に実線で示すように、出力軸10の回転が止まり、停車状態を維持することができる。この状態からモータ・ジェネレータ2の正回転方向のトルクを増大させると、その回転数が増大し(逆回転方向の回転数が減少し)、それに伴って出力要素である第1遊星歯車機構110のキャリヤ116および第2遊星歯車機構111のリングギヤ115ならびにこれらに連結されている出力軸10が、図37に破線で示すように、正回転する。そしてその出力軸10に生じるトルクは、エンジン1の出力トルクより大きくなる。したがってトルクコンバータと同様にトルクの増幅作用が生じる。なお、エンジン1から第1サンギヤ112へのトルクの伝達は一方向クラッチF2 を介しておこなわれるから、パワーオフ状態ではこの一方向クラッチF1 が解放する。したがってパワーオフ状態では、エンジン1を停止することができる。 【0145】前進走行時のモータモードは、モータ・ジェネレータ2を出力軸10にいわゆる直結した状態とするモードであるから、第1ないし第3の各クラッチC1 ,C2 ,C3 を係合させる。第2クラッチC2 を係合させることにより第2一方向クラッチF2 にはエンジン1側から正回転方向のトルクが入力することになるので、この一方向クラッチF1 が係合する。またこの第2一方向クラッチF2 と直列の関係にある第1クラッチC1 が係合することにより、第1一方向クラッチF2が第1クラッチC1 を介して第1遊星歯車機構110のサンギヤ112に連結される。その結果、モータ・ジェネレータ2が第1遊星歯車機構110のサンギヤ112に連結される。またこのモータ・ジェネレータ2は第2遊星歯車機構111のサンギヤ113に常時連結されているから、結局、各サンギヤ112,113が一体的に連結されることになる。そのために第1遊星歯車機構110と第2遊星歯車機構111との全体が一体化され、モータ・ジェネレータ2の動力がそのまま出力軸10に伝達され、モータ・ジェネレータ2の動力によって前進走行することができる。 【0146】なおこの場合、第2一方向クラッチF2 と第1クラッチC1 とが係合することにより、エンジン1が第1遊星歯車機構110のサンギヤ112に連結され、モータ・ジェネレータ2の動力によって回転させられることになる。いわゆるエンジン1を引きずる状態になる。したがってエンジン1のスロットルバルブ(図示せず)を全開にしたり、あるいは吸気バルブと排気バルブとを共に開いておくなどのことによりエンジン1を空転させることに伴う抵抗を可及的に低減することが好ましい。また、走行中にエンジン1を回転させ続けることになるので、走行中におけるエンジン1の始動が容易になる。 【0147】上述したように第1ないし第3の各クラッチC1 ,C2 ,C3 を係合させると、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2が出力軸10に対して直結された状態となるので、モータ・ジェネレータ2のみならず、エンジン1からも出力すれば、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動力によって前進走行することができる。すなわち、エンジン・モータモードとなる。 【0148】つぎに後進走行時のモードについて説明すると、エンジン1の動力によって後進走行するエンジンモードは、第2クラッチC2 と第3クラッチC3 と第1ブレーキB1 とを係合させる。すなわちエンジン1を第2遊星歯車機構111のサンギヤ113に連結するとともに、そのキャリヤ117を固定する。したがってエンジン1によってサンギヤ113を正回転させれば、リングギヤ115およびこれに連結されている出力軸10が逆回転し、その動力が変速機11および第3クラッチC3 を介して出力されて後進状態となる。この状態を図38に共線図として示してある。 【0149】また、この場合、第2遊星歯車機構111のサンギヤ113にはモータ・ジェネレータ2が常時連結されているので、エンジン1のみならずモータ・ジェネレータ2からも出力すれば、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動力が出力軸10に伝達されるので、後進走行でのエンジン・モータモードとなる。 【0150】さらに、第1ブレーキB1 を係合させて第2遊星歯車機構111のサンギヤ113に正回転方向のトルクを入力すると、リングギヤ115およびこれに連結した出力軸10が逆回転して後進走行状態となるので、第2クラッチC2 を解放してエンジン1を第2遊星歯車機構111のサンギヤ113から遮断し、その状態でモータ・ジェネレータ2を正回転方向に駆動すれば、モータ・ジェネレータ2の動力によって後進走行することができる。すなわち後進走行時のモータモードとなる。 【0151】上述のように、第1ブレーキB1 によって第2遊星歯車機構111のキャリヤ117を固定した状態でそのサンギヤ113を正回転させれば、出力軸10に連結してあるリングギヤ115が逆回転するから、これとは反対にリングギヤ115を正回転させれば、サンギヤ113が逆回転する。これを利用して前進走行時の回生制動をおこなうことができる。例えば前述したETCモードで前進走行している際の制動要求により、第1クラッチC1 に替えて第1ブレーキB1 を係合させると、図39に共線図を示してあるように、第2遊星歯車機構111のキャリヤ117を固定した状態でそのリングギヤ115が、出力軸10から入力されるトルクによって正回転し、その結果、サンギヤ113が逆回転する。このサンギヤ113に作用するトルクがモータ・ジェネレータ2に伝達されてモータ・ジェネレータ2が強制的に逆回転させられるので、モータ・ジェネレータ2で起電力が生じる。すなわち、出力軸10から入力される動力が電気エネルギに変換されて消費されるので、その際の抵抗力が制動力として作用する。 【0152】また上記の図36に示すハイブリッド駆動装置では、ヒルホールドモードを設定することができる。ヒルホールドモードとは、登坂路での発進時に車両が後退しないように保持するモードであり、これは、前述した第2ブレーキB2 およびこれと直列の第3一方向クラッチによって達成される。すなわち第3一方向クラッチF3 は従動プーリ13が後進走行方向に回転しようとする際に係合するから、第2ブレーキB2 および第3クラッチC3 を係合させた状態で登坂路に停止し、かつ制動作用を解除すると、車両にはその自重により後退移動する荷重が作用する。すなわち従動プーリ13には、これを逆回転させるトルクが作用するので、第3一方向クラッチF3 が係合し、その回転が阻止される。すなわち登坂路で発進する際に制動操作を解除して発進操作をおこなっても車両の後退移動が阻止され、停止状態からのスムースな発進をおこなうことができる。 【0153】このように図36に示す構成のハイブリッド駆動装置であっても、前進走行時にエンジントルクを増幅して出力することにより、発進時などの大きい駆動力を必要とする走行を円滑におこなうことができるとともに、エンジン1の動力によって後進走行することができる。また、図36に示す構成であっても、第1クラッチC1 および第2クラッチC2 はエンジン1の出力トルクをそのまま伝達するから、その伝達トルク容量が特に大きい必要はなく、したがってこれらのクラッチC1 ,C2 を小型化してハイブリッド駆動装置を全体として小型軽量化することができる。 【0154】2組の遊星歯車機構を使用した他の例を次に説明する。図40に示す例は、前述した図36に示す例と同様に、2組のシングルピニオン型遊星歯車機構を使用し、その回転要素の連結状態およびエンジン1や摩擦係合装置の連結状態を図36の構成とは異ならせたものである。すなわち第1遊星歯車機構110のキャリヤ116が第2遊星歯車機構111のリングギヤ115に一体的に連結され、また第1遊星歯車機構110のサンギヤ112が第2遊星歯車機構111のキャリヤ117に一体的に連結されている。 【0155】また、第1遊星歯車機構110のリングギヤ114とエンジン1との間に第1クラッチC1 が配置され、また第2遊星歯車機構111のサンギヤ113とエンジン1との間に第2クラッチC2 が配置されている。さらに、第1遊星歯車機構110のサンギヤ112の回転を選択的に固定するように第1ブレーキB1 が配置されている。他の構成は、図36に示す構成と同様であるから、図40に図36と同一の符号を付してその説明を省略する。 【0156】このハイブリッド駆動装置で設定可能な走行モード(運転モード)について説明すると、エンジン始動モードは、第1クラッチC1 と第2ブレーキB2 とを係合させて設定する。この状態の共線図を図41に示してある。第2ブレーキB2を係合させると、従動プーリ13すなわち出力軸10の逆回転が、第3一方向クラッチF3 によって阻止される。したがってモータ・ジェネレータ2を逆回転させて第1遊星歯車機構110のサンギヤ112に逆回転方向のトルクを与えると、出力軸10と一体の第1遊星歯車機構110のキャリヤ116が固定されるので、リングギヤ114が正回転する。エンジン1はこのリングギヤ114に連結されているので、結局、エンジン1がモータ・ジェネレータ2の動力によって正回転させられ、その状態で燃料を供給し、また必要に応じて点火することによりエンジン1を始動することができる。 【0157】その場合、固定要素となっている第1遊星歯車機構110のキャリヤ116は、前記第3一方向クラッチF3 によって逆回転しないように保持されているのであって、正回転することは可能である。したがってエンジン1を始動した後、エンジン1を例えば最も効率の良い状態で運転し、その状態でモータ・ジェネレータ2の正回転方向の出力トルクを次第に増大させると、キャリヤ116およびこれと一体の出力軸10が正回転し始める。すなわち第3一方向クラッチF3 の係合が解除される。そしてその場合の駆動トルクは、エンジン1の出力トルクをモータ・ジェネレータ2によって増幅したトルクとなる。これは、トルクコンバータによるトルクの増幅機能と同様であり、したがって図40に示す構成のハイブリッド駆動装置では、第1クラッチC1 および第3クラッチC3 を係合させることにより、いわゆるETCモードを設定することができる。言い換えれば、このモードは、出力軸10と一体の回転要素を固定した場合に、互いに反対方向に回転する関係となる2つの回転要素にエンジン1とモータ・ジェネレータ2とを連結して設定されるモードである。 【0158】このようにして車両を発進させる場合、第2ブレーキB2 および第3一方向クラッチF3 が係合していて車両の後退移動が阻止されているので、前述したヒルホールド機能を得ることができる。 【0159】つぎに、先進走行時のモータモードについて説明する。このモータモードは、モータ・ジェネレータ2を出力軸10に直結してモータ・ジェネレータ2の動力で走行するモードであり、したがって第1ないし第3のクラッチC1 ,C2 ,C3 を係合させる。第1および第2のクラッチC1 ,C2 を係合させると、第1遊星歯車機構110のリングギヤ114と第2遊星歯車機構111のサンギヤ113とが一体的に連結されるので、各遊星歯車機構110,111の全体が一体化される。したがってモータ・ジェネレータ2が出力軸10に直結され、モータ・ジェネレータ2の動力がそのまま出力される。その場合、エンジン1も遊星歯車機構110,111を介して出力軸10に直結されるので、エンジン1を空転させることになる。このようにエンジン1を空転させるための動力の損失を防止するためには、エンジン1を一体化された遊星歯車機構110,111から切り離すための適宜のクラッチ機構を設けることが好ましい。またエンジン1を空転させるとすれば、走行中でのエンジン1の始動やエアコンなどの補機類の運転が容易になる。 【0160】モータモードでは、上記のようにエンジン1も出力軸10に直結されるので、モータ・ジェネレータ2のみならず、エンジン1も駆動すれば、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動力によって前進走行することができる。すなわちエンジン・モータモードとなる。 【0161】上記の図40に示す構成においてもエンジン1の出力で後進走行することができる。このエンジンモードは、第2クラッチC2 と第3クラッチC3 と第1ブレーキB1 とを係合させて設定する。この状態を図42に共線図として示してある。第1ブレーキB1 によって第1遊星歯車機構110のサンギヤ112および第2遊星歯車機構111のキャリヤ117を固定した状態で、エンジン1から第2クラッチC2 を介して第2遊星歯車機構111のサンギヤ113に正回転方向のトルクを伝達すると、そのリングギヤ115およびこれに連結してある出力軸10が逆回転し、エンジン1の動力が逆回転方向の動力として出力される。すなわち後進走行する。 【0162】このモードでは、後進走行のための反力を第1ブレーキB1 によって与えているが、第1ブレーキB1 が連結されている第1遊星歯車機構110のサンギヤ112にはモータ・ジェネレータ2が連結されているので、モータ・ジェネレータ2によって反力を与えることができる。このようにした場合、モータ・ジェネレータ2による反力を次第に小さくすれば、第1遊星歯車機構110のサンギヤ112およびこれと一体の第2遊星歯車機構111のキャリヤ117が次第に正回転し始め、これと同時にリングギヤ115およびこれと一体の出力軸10の回転数が低下する。そしてついには、出力軸10の回転が止まる。また、これとは反対にモータ・ジェネレータ2による反力(逆回転方向のトルク)を増大させれば、出力軸10の逆回転方向の回転数が増大する。すなわち、モータ・ジェネレータ2の出力によって後進走行のための駆動トルクを制御でき、しかもその駆動トルクはエンジントルクをモータ・ジェネレータ2によって増幅したトルクとなる。これは、前進走行時のETCモードと同様に、トルクの増幅機能であり、図40に示す構成では、後進走行時にもETCモードを設定することができる。 【0163】なお、前述したように、モータ・ジェネレータ2を出力軸10に直結したモータモードでは、エンジン1も出力軸10に直結されるので、図40に示す構成のままでは、後進走行のためのモータモードを設定することができないが、前述したように、一体化した遊星歯車機構110,111からエンジン1を切り離す適宜のクラッチ手段を設けた場合には、モータ・ジェネレータ2の動力のみによって後進走行することができる。 【0164】このように、図40に示す構成のハイブリッド駆動装置においても、エンジントルクを増幅して出力するトルクコンバータとしての機能を得ることができるとともに、エンジン1の動力によって後進走行できるので、バッテリ(図示せず)の充電容量が低下している場合であっても、後進走行のための充分な駆動力を得ることができる。また、遊星歯車機構110,111に隣接して配置されるクラッチC1 ,C2 には、エンジン1の出力トルクが増幅されないまま伝達されるから、これらのクラッチC1 ,C2 に要求される伝達トルク容量が小さく、したがって装置の小型軽量化を図ることできる。さらに図40に示すように、モータ・ジェネレータ2に隣接して遊星歯車機構110,111を配置することができるので、このような構成とすることにより、モータ・ジェネレータ2のロータの内周側に遊星歯車機構110,111の一部を入り込ませることが可能になり、その結果、装置の全体としての軸長を短くして小型軽量化を図ることができる。 【0165】ここで、この発明と上述した各具体例との関係を説明すると、図1および図6ないし図8に示す例が請求項1および請求項2の発明の具体例であり、また図9に示す例が、請求項1および請求項3の発明の具体例である。さらに図15に示す例が、請求項5および請求項6の発明の具体例であり、図20に示す例が、請求項1および請求項4の発明の具体例である。図26に示す例が、請求項7ないし9の発明の具体例であり、図31に示す例が、請求項7および請求庫10の発明の具体例である。図36に示す例が請求項11および請求項12ならびに請求項14の発明の具体例である。そして図40に示す例が、請求項11および請求項13ならびに請求項14の発明の具体例である。 【0166】なお、上記の具体例では、変速機としてベルト式の無段変速機を示したが、この発明では、これに替えてトロイダル式の無段変速機を使用してもよく、また有段式の変速機を使用してもよい。さらに、クラッチ手段やブレーキ手段は、湿式多板式の摩擦係合装置以外にベルト式や噛み合い式など、適宜の構成のものを使用することができる。 【0167】 【発明の効果】以上説明したように、この発明によるハイブリッド駆動装置によれば、内燃機関の出力する動力によって後進走行することができるので、電動機の動力源であるバッテリの充電量が低下している場合であっても、内燃機関による大きい駆動力で後進走行することができる。また、前進走行の際には、内燃機関の出力するトルクを電動機の出力する動力で増幅して出力部材に出力できるので、発進時などの大きいトルクを要求される際にも円滑な走行をおこなうことができる。さらに内燃機関を一定状態で運転している状態で電動機の出力によって出力部材の回転数および出力トルクを制御できるので、発進時の制御が容易になる。そしてまた、電動機によって内燃機関を回転させて内燃機関を始動することできるので、従来一般の車両に搭載されていたスタータモータを廃止して小型軽量化を図ることができる。 【0168】そして特に請求項5の発明によれば、内燃機関の動力で後進走行する際にも、内燃機関の出力するトルクを電動機の出力で増幅することができ、後進走行する際の発進制御が容易になる。 【0169】また請求項10の発明によれば、後進走行するための変速比を大きくし、要求に即した駆動力を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年9月7日(1998.9.7) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083998 【弁理士】 【氏名又は名称】渡辺 丈夫
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| 【公開番号】 |
特開2000−92612(P2000−92612A) |
| 【公開日】 |
平成12年3月31日(2000.3.31) |
| 【出願番号】 |
特願平10−253121 |
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