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【発明の名称】 車両用電動機の軸受の荷重付与方法及びその装置
【発明者】 【氏名】松岡 孝一

【氏名】角野 和義

【要約】 【課題】反車輪側軸受にも常に荷重をかけることができ、軸受の焼損を防ぐことができるとともに、製作コストの上昇を抑えることができる、車両用電動機の軸受の荷重付与方法及びその装置を提供する。

【解決手段】固定子7と回転子4とこの回転子4を支えるために左右に軸受を設けた多極の永久磁石式車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する装置であって、一部の弱い磁気量を有する極5Aの永久磁石によって生じる磁気量を他の極5の永久磁石によって発生する磁束量と異ならせて前記電動機の反車輪側軸受へ常時荷重を付与するように配置する磁気装置を設ける。この前記磁気装置は、磁気量を弱めた所定の極5Aの永久磁石と、通常の磁気量を有する他の極5の永久磁石とを配置する回転子4からなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定子と回転子と該回転子を支えるために左右に軸受を設けた車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する方法であって、一部の極の空隙磁束分布を他の大半の極の空隙磁束分布と異ならせることにより、前記車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与することを特徴とする車両用電動機の軸受の荷重付与方法。
【請求項2】 固定子と回転子と該回転子を支えるために左右に軸受を設けた車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する方法であって、一部の極の空隙磁束分布を他の大半の極の空隙磁束分布と異ならせることにより、前記車両用電動機の反車輪側軸受へ常時荷重を付与することを特徴とする車両用電動機の軸受の荷重付与方法。
【請求項3】 固定子と回転子と該回転子を支えるために左右に軸受を設けた車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する装置であって、一部の極の空隙磁束分布を他の大半の極の空隙磁束分布と異ならせて前記車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与するように配置する磁気装置を設けることを特徴とする車両用電動機の軸受の荷重付与装置。
【請求項4】 固定子と回転子と該回転子を支えるために左右に軸受を設けた車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する装置であって、一部の極の空隙磁束分布を他の大半の極の空隙磁束分布と異ならせて前記車両用電動機の反車輪側軸受へ常時荷重を付与するように配置する磁気装置を設けることを特徴とする車両用電動機の軸受の荷重付与装置。
【請求項5】 固定子と回転子と該回転子を支えるために左右に軸受を設けた多極の永久磁石式車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する装置であって、一部の極の永久磁石によって生じる磁気量を他の大半の極の永久磁石によって発生する磁気量と異ならせて前記車両用電動機の反車輪側軸受へ常時荷重を付与するように配置する磁気装置を設けることを特徴とする車両用電動機の軸受の荷重付与装置。
【請求項6】 請求項5記載の車両用電動機の軸受の荷重付与装置において、前記磁気装置は、磁気量を弱めた所定の極の永久磁石と、通常の磁気量を有する他の極の永久磁石とを配置する回転子を有することを特徴とする車両用電動機の軸受の荷重付与装置。
【請求項7】 請求項5記載の車両用電動機の軸受の荷重付与装置において、前記磁気装置は、高さを低くした磁極と、通常の高さの磁極とを配置した固定子を有することを特徴とする車両用電動機の軸受の荷重付与装置。
【請求項8】 請求項5記載の車両用電動機の軸受の荷重付与装置において、前記磁気装置は、コイルの巻数を部分的に減らすように構成したことを特徴とする車両用電動機の軸受の荷重付与装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用電動機の軸受への荷重の付与方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、アウターロータ型各輪駆動方式の車両用電動機において、車体が曲線部を走行する場合、横力がかかるため、電動機の両端に軸受を設けるようにしている。左右2箇所の軸受で支える回転機の場合には、通常、片側は円錐ころ(または玉)軸受、もう片側には円筒ころ軸受を採用する。これは軸方向の荷重を受けることのできる円錐ころ軸受によって回転子の位置決めを行い、軸方向の動きを許容する円筒ころ軸受によって、左右の軸受間隔の組み立て誤差および熱による収縮等を許容するためである。
【0003】独立車輪方式の車輪一体型主電動機の場合、車輪直下に位置する軸受(以下、車輪側軸受という)には、車両の荷重を支えるとともに、車輪の左右方向の移動を抑えるために、円錐ころ軸受が採用される。従って、主電動機側に用いる軸受としては、軸方向の動きを許容できる円筒ころ軸受を用いる必要がある。この場合、主電動機側の軸受(以下、輪軸中心側軸受という)は、車輪に横圧が加わって車輪が倒れようとするのを支える役目を果たすので、それなりの強度を有するものでなくてはならない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、車輪に加わる横圧は車両の運動に依存するものであり、間欠的である。従って横圧が加わらない時は、主電動機側軸受の負担荷重はその容量に比べて極めて小さなものとなり(殆ど0となる)、ころの不回転が生じることになる。軸受に荷重がかからない場合、ころと車軸の間にすべりが生じて発熱し、軸受を焼損する恐れがある。
【0005】その対策として、主電動機側軸受に玉軸受を用いることも考えられるが、取り付けの誤差が許容されないので、極めて精密に製作する必要があり、コストアップとなる。また、温度上昇による熱収縮も許容されないので、主電動機の出力を大きくとることができない。そのため、玉軸受の取り付け構造を工夫し、軸受自体が軸方向の動きを許容するように取り付ける案も考えられるが、それにともなってガタが生じるため、長期の使用にはフレッティング等の問題が生じ耐えることができない。
【0006】更に、取り付け構造自体が複雑となるため、製作コストが上昇するとともに、分解・組み立てにも手間がかかることになる。本発明は、上記問題点を除去し、反車輪側軸受にも常に荷重をかけることができ、軸受の焼損を防ぐことができるとともに、製作コストの上昇を抑えることができる、車両用電動機の軸受の荷重付与方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、〔1〕固定子と回転子とこの回転子を支えるために左右に軸受を設けた車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する方法であって、一部の極の空隙磁束分布を他の大半の極の空隙磁束分布と異ならせることにより、前記車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与するようにしたものである。
【0008】〔2〕固定子と回転子とこの回転子を支えるために左右に軸受を設けた車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する装置であって、一部の極の空隙磁束分布を他の大半の極の空隙磁束分布と異ならせて前記車両用電動機の反車輪側軸受へ常時荷重を付与するように配置する磁気装置を設けるようにしたものである。
〔3〕固定子と回転子と該回転子を支えるために左右に軸受を設けた車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する装置であって、一部の極の空隙磁束分布を他の大半の極の空隙磁束分布と異ならせて前記車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与するように配置する磁気装置を設けるようにしたものである。
【0009】〔4〕固定子と回転子と該回転子を支えるために左右に軸受を設けた車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する装置であって、一部の極の空隙磁束分布を他の大半の極の空隙磁束分布と異ならせて前記車両用電動機の反車輪側軸受へ常時荷重を付与するように配置する磁気装置を設けるようにしたものである。
〔5〕固定子と回転子と該回転子を支えるために左右に軸受を設けた多極の永久磁石式車両用電動機の軸受へ常時荷重を付与する装置であって、一部の極の永久磁石によって生じる磁気量を他の大半の極の永久磁石によって発生する磁気量と異ならせて前記車両用電動機の反車輪側軸受へ常時荷重を付与するように配置する磁気装置を設けるようにしたものである。
【0010】〔6〕上記〔5〕記載の車両用電動機の軸受の荷重付与装置において、前記磁気装置は、磁気量を弱めた所定の極の永久磁石と、通常の磁気量を有する他の極の永久磁石とを配置する回転子を設けるようにしたものである。
〔7〕上記〔5〕記載の車両用電動機の軸受の荷重付与装置において、前記磁気装置は、高さを低くした磁極と、通常の高さの磁極とを配置した固定子を設けるようにしたものである。
【0011】〔8〕上記〔5〕記載の車両用電動機の軸受の荷重付与装置において、前記磁気装置は、コイルの巻数を部分的に減らすように構成したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明に係る車両用電動機の一部断面図、図2はその車両用電動機の反車輪側軸受部の拡大図である。これらの図において、1は車軸、2は軸受〔円錐ころ(または玉)軸受〕3を介して回転自在に設けられる車輪、4は回転子であり、車輪2の側面に一体に固定されている。5はその回転子4のヨーク6の内周面であって、後述する固定子に対向するように配置される回転子側の永久磁石からなる磁極、7は固定子であり、固定子コイル8によって磁化される固定子の歯(ティース)9を有している。
【0013】車両用電動機の反車輪側軸受部10は、軸受内輪12と軸受外輪13間に配置されるコロ11を備え、車軸と直角方向の荷重を受け、車軸方向の荷重に対しては、フリーとなるように構成されている。図3は本発明の第1実施例の要部を示す模式図であり、車両用電動機の軸受の荷重付与装置の断面を模式的に示している。
【0014】図3に示すように、車軸1には固定子7が固定されており、その外周部には固定子の歯9が形成されている。一方、回転子4は、ヨーク6の内周面に、永久磁石からなる磁極群が形成されている。その磁極群は、通常の磁気量を有する大半の磁極5と、その通常の磁気量よりは弱い磁気量を有する、一部(ここでは、1磁極)に配置される磁極5Aを設け、電動機の磁気回路を不平衡にすることにより、回転子に偏心力をかけることができる。つまり、反車輪側軸受に常に荷重をかけるように構成する。
【0015】このように、1部のみの永久磁石の磁力を弱くすることにより、全体として、機械的な回転バランスを維持するため磁石の厚さを変えないようするのが望ましい。つまり、回転バランスを維持しながら、全体として磁気量を不平衡にして、常に、反車輪側軸受にも荷重がかかるように構成している。上記実施例では、一部の磁極の磁気量を異ならせるようにしたが、一部に配置される磁極5Aの高さが低くなるように構成して、全体として磁気量(空隙磁束分布)を不平衡にするようにしてもよい。
【0016】このように、第1実施例によれば、常に、反車輪側軸受にも荷重をかけることができるように構成したので、当該軸受の焼損を防ぐことができる。次に、本発明の第2実施例について説明する。図4は本発明の第2実施例の要部を示す模式図であり、車両用電動機の軸受の荷重付与装置の断面を模式的に示している。
【0017】図4に示すように、車軸21には固定子22が固定されており、その外周部には固定子の歯群が形成されている。その固定子の歯群は、通常の高さの歯23と、その通常の高さの歯23よりは高さの低い歯23Aを一部に配置するようにしている。一方、回転子24は、ヨーク26の内周面に、永久磁石からなる磁極群が形成されている。その磁極群は、均一な磁気量を有する磁極25として配置されている。したがって、全体として空隙磁束分布を不平衡にして、常に、反車輪側軸受にも荷重をかけることができるように構成している。
【0018】上記実施例によれば、一部の固定子の歯が低くなるようにしたが、これに代えて、図示しないが、一部の歯に巻回される固定子コイルの巻数を減らすことにより、磁気量(空隙磁束分布)を不平衡にするようにしてもよい。このように、第2実施例によれば、第1実施例に比べて、より簡単な構成により、常に、反車輪側軸受にも荷重をかけることができ、当該軸受の焼損を防ぐことができる。
【0019】また、回転子側の構造は変えることはないので、良好な回転バランスを維持することができる。なお、上記実施例では、車輪2の片側にのみ、車両用電動機が配置された場合について、説明したが、図5に示すように、車輪を挟んで両側に車両用電動機が配置される場合の車両用電動機に対しても同様に適用することができる。
【0020】すなわち、図5に示すように、車軸31に回転可能に配置される左右の車輪32の両側には車両用電動機が配置される。その車両用電動機は、車軸側の軸受33、回転子34、回転子側磁極35、ヨーク36、固定子37、固定子コイル38、固定子側の磁極39、車両用電動機の反車輪側軸受部40からなっている。なお、50は台枠、Aはレールである。
【0021】このような車輪を挟んで両側に車両用電動機が配置される場合の車両用電動機の反車輪側軸受部40にも、上記した実施例の軸受の荷重付与方法及びその装置を適用することができる。図6は本発明の第4実施例の車両用直流電動機の軸受に荷重をかけるための要部を示す模式図であり、車両用アウターロータ型直流電動機の断面を模式的に示している。
【0022】この図において、51は回転子、52はその回転子のヨーク、53はその回転子のヨークに装着された電機子コイル、54は固定子、55は界磁鉄心、56は界磁コイル、57はギャップ、58は広げられたギャップであり、界磁鉄心55の一部のギャップを広げて、その部分の回転子51の吸引力を弱める。このように、固定子54と回転子51との間のギャップの一部分を広げて、全体として空隙磁束分布を不平衡にして、車両用直流電動機の軸受に荷重がかかるように構成している。
【0023】なお、1部の磁界を弱めるために、1極分の界磁巻線の巻数を他の巻数より少なくして1極分の吸引力を弱めるようにしてもよい。図7は本発明の第5実施例の車両用誘導電動機の軸受に荷重をかけるための要部を示す模式図であり、車両用アウターロータ型かご形誘導電動機の断面を模式的に示している。
【0024】この図において、61は回転子、62はその回転子のヨーク、63はその回転子のヨークに装着されたロータバー、64は固定子、65は固定子の歯、66は固定子コイル、67はギャップ、68は広げられたギャップであり、固定子の歯65の一部のギャップを広げ、その部分の吸引力を弱める。なお、1部の磁界を弱めるために、1極分の固定子コイルの巻数を他の巻数より少なくして1極分の吸引力を弱めるようにしてもよい。
【0025】このように、種々の電動機について適用することができる。更に、上記実施例においては、部分的に吸引力を弱める場合について述べたが、相対的な問題であり、大部分を強めるようにしてもよいことは言うまでもない。また、磁気的特性を部分的に変える手段として、磁極形状、磁極材質、永久磁石の形状、永久磁石の材質、コイルの巻数を変更するようにしてもよい。
【0026】なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0027】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
(A)車両用電動機の軸受に常に荷重をかけることができる。特に、その車両用電動機の反車輪側軸受に常に荷重をかけることができ、軸受の回転部材(例えば、ころ)と車軸の間のすべりをなくすことができる。すべりがなくなることにより、軸受の焼損を防止することができる。また、磁気回路のみの工夫でよいので、製作コストの上昇を抑えることができる。
【0028】(B)車両用電動機の回転子側の磁極の一部変更により、常に、反車輪側軸受にも荷重をかけることができ、当該軸受の焼損を防ぐことができる。
(C)車両用電動機の固定子の歯の一部変更により、常に、反車輪側軸受にも荷重をかけることができ、当該軸受の焼損を防ぐことができる。
【出願人】 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【出願日】 平成10年8月18日(1998.8.18)
【代理人】 【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守 (外1名)
【公開番号】 特開2000−59909(P2000−59909A)
【公開日】 平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願番号】 特願平10−231360