トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 電気自動車の制動装置
【発明者】 【氏名】太地 利夫

【氏名】吉川 智之

【氏名】吐合 求

【要約】 【課題】電気自動車の制動装置において、配管系統を複雑にすることなく、液圧制御のためのアクチュエータの個数を削減する。

【解決手段】コントロール液圧発生部CVにて、回生制動力に応じた所定値ΔPをマスタシリンダ液圧Pmに付加したコントロール液圧Pcを発生させ、このコントロール液圧Pcを制御圧として複数の液圧制御弁FCV及びRCVに供給する。液圧制御弁FCV及びRCVは、内部に弁(弁体334及び弁座335)を備え、閉弁時には液圧制御を行い、開弁により入力側と出力側とを連通させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ブレーキ操作により、駆動輪に設けられた駆動モータの回生制動力を発生させるとともに、必要な制動力に対する不足分を、駆動輪又は従動輪に設けられた液圧制動装置により液圧制動力として発生させる電気自動車の制動装置において、前記回生制動力に対応した所定値△Pを増減されるコントロール液圧を発生するコントロール液圧発生部と、マスタシリンダと液圧制動装置との間に設けられ、このマスタシリンダからの入力液圧を開弁付勢力として受ける入力室と、この入力室と通路を介して連通されるとともに、前記液圧制動装置への出力液圧を閉弁付勢力として受ける出力室と、前記入力室及び前記出力室に対して隔離されるとともに、前記コントロール液圧を受けて閉弁付勢力を発生させる制御室と、前記開弁付勢力及び前記閉弁付勢力に基づいて前記通路を開閉する弁部とを有し、前記コントロール液圧を受けて前記通路を閉じるとともに、前記所定値△Pをパラメータとした液圧制御特性に基づいて出力液圧を発生させる液圧制御弁とを備えたことを特徴とする電気自動車の制動装置。
【請求項2】前記液圧制御弁は、開弁方向に付勢するばねを有することを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項3】前記液圧制御弁は、前記液圧制動装置から前記マスタシリンダ側への液流を許容する逆止弁体を有することを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項4】前記液圧制御弁は、駆動輪に対応して設けられ、液圧制御時に入力液圧と同じ割合で出力液圧が昇圧することを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項5】前記液圧制御弁は、駆動輪及び従動輪に対応して設けられ、従動輪に対応する液圧制御弁は、液圧制御時に入力液圧より高い割合で出力液圧が昇圧することを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項6】前記液圧制御弁は、1つの前記コントロール液圧発生部に対して2以上設けられることを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項7】前記液圧制御弁は、閉弁すると入力液圧と同じ割合で出力液圧が昇圧する駆動輪用の液圧制御弁と、閉弁すると入力液圧より高い割合で出力液圧が昇圧する従動輪用の液圧制御弁とが、1つの前記コントロール液圧発生部に対して設けられたものであることを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項8】従動輪用の液圧制御弁は、駆動輪用の液圧制御弁より、入力液圧の上昇に対して早期に開弁することを特徴とする請求項7記載の電気自動車の制動装置。
【請求項9】前記液圧制御弁と並列に設けられ、出力液圧が前記液圧制動装置の無効圧に達すると、入力液圧を所定割合に減圧して出力する液圧比例弁を備えたことを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項10】前記コントロール液圧発生部は、回生制動力に応じた駆動力を発生する駆動手段と、この駆動力を受けてコントロール液圧を発生する制御ピストンとを有することを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項11】前記駆動手段は、前記制御ピストンに駆動力を伝達する直流モータであることを特徴とする請求項10記載の電気自動車の制動装置。
【請求項12】前記コントロール液圧発生部は、前記駆動手段の摺動抵抗より大きい付勢力を有する制御ピストン戻し機構を有することを特徴とする請求項10記載の電気自動車の制動装置。
【請求項13】前記コントロール液圧発生部には、コントロール液圧を検出するための液圧センサが設けられていることを特徴とする請求項10記載の電気自動車の制動装置。
【請求項14】前記コントロール液圧発生部は、ブレーキ操作が行われると、前記所定値ΔPを、そのとき最大限出力可能な回生制限値に対応する値として、コントロール液圧を発生させることを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項15】前記コントロール液圧発生部は、ブレーキ操作が行われると、前記所定値ΔPが、そのとき最大限出力可能な回生制限値に対応する値に達するまで、前記入力液圧の上昇割合以上の勾配で当該所定値ΔPを増加させることにより、コントロール液圧を発生させることを特徴とする請求項1記載の電気自動車の制動装置。
【請求項16】ブレーキ操作により、駆動輪に設けられた駆動モータの回生制動力を発生させるとともに、必要な制動力に対する不足分を、駆動輪又は従動輪に設けられた液圧制動装置により液圧制動力として発生させる電気自動車の制動装置において、前記回生制動力に対応した駆動力を発生する駆動手段と、一方側でこの駆動力及びマスタシリンダからの入力液圧Pmを受けて、他方側で前記入力液圧に、前記駆動力に対応する所定値△Pを付加したコントロール液圧(Pm+ΔP)を発生する制御ピストンとを有するコントロール液圧発生部と、前記制御ピストンの他方側に接続され、前記回生制動力を液圧制動力として発生させる際に必要となる液量及び液圧を消費するストローク補償ピストンと、前記マスタシリンダと液圧制動装置との間に設けられ、前記コントロール液圧を受けて前記マスタシリンダと前記液圧制動装置との間の通路を閉じるとともに、前記所定値△Pをパラメータとした液圧制御特性に基づいて出力液圧を発生させる液圧制御弁とを備えたことを特徴とする電気自動車の制動装置。
【請求項17】前記ストローク補償ピストンは、最大回生制動力相当の液量を消費すると、フルストロークに達することを特徴とする請求項16記載の電気自動車の制動装置。
【請求項18】前記ストローク補償ピストンは、液量調節機構を有することを特徴とする請求項16記載の電気自動車の制動装置。
【請求項19】前記ストローク補償ピストンは、前記液圧制御弁によって制御される液圧制動装置の数、及び、その液量消費特性に基づいて補償量を決定されることを特徴とする請求項18記載の電気自動車の制動装置。
【請求項20】前記ストローク補償ピストンは、前記コントロール液圧(Pm+ΔP)を受けるとともに、マスタシリンダからの入力液圧Pmを受けて、その差圧ΔPを出力する差圧ピストンを有し、この差圧ピストンの出力側に、当該差圧ΔPに基づいて前記回生制動力を液圧制動力として発生させる際に必要となる液量及び液圧を消費すべく作動する補償ピストンを有することを特徴とする請求項16記載の電気自動車の制動装置。
【請求項21】前記コントロール液圧発生部の前記駆動手段は、直流モータであることを特徴とする請求項16記載の電気自動車の制動装置。
【請求項22】前記コントロール液圧発生部の前記制御ピストンは、一方側と他方側とを連通させる貫通路と、この貫通路を作動時に閉じる弁体とを有することを特徴とする請求項16記載の電気自動車の制動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気自動車の制動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ハイブリッド車両を含む電気自動車用の制動装置としては、例えば特開平5−161211号公報(以下、公報1という。)又は特開平7−264710号公報(以下、公報2という。)に示されるように、マスタシリンダからホイールシリンダに至る配管系統に液圧の伝達を制限する液圧制御弁(差圧弁)を設けるとともに、この液圧制御弁と一体に、回生制動力に対応して弁付勢力を付与するアクチュエータ(リニアソレノイド)が設けられている。このような構成により、回生制動力の分だけ液圧制動力を制限して、回生制動力を有効に利用することができる。
【0003】また、特開平8−080838号公報(以下、公報3という。)、特開平9−303433号公報(以下、公報4という。)、又は特開平9−303434号公報(以下、公報5という。)には、液圧制御弁とアクチュエータとを互いに別体とし、アクチュエータによって発生させたコントロール圧に基づいて液圧制御弁の閉弁付勢力を制御する電気自動車の制動装置が示されている。このような制動装置においては、1つのアクチュエータによって発生させたコントロール圧を用いて、複数の液圧制御弁を制御することが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記公報1及び2の制動装置は、アクチュエータの付勢力によって直接に液圧制御弁の閉弁付勢力を変化させるものであるため、配管系統は比較的簡素である。しかし、例えばX配管車両において、前後輪それぞれに液圧制御弁が配設されている場合には、その数に対応してアクチュエータを設ける必要があり、アクチュエータの数を削減することができない。これに対して、上記公報3〜5の制動装置は、全体としてアクチュエータの数を低減させることが可能である。しかしながら、公報3の制動装置は、マスタシリンダからホイールシリンダに至る配管系統とは別に、液圧制御弁の圧力室にパイロット圧としてのマスタシリンダ液圧を導入する配管が必要になるとともに、通常時にマスタシリンダとホイールシリンダとの間を遮断するため、別途リザーバに接続する配管が必要になる等の理由により、配管系統が複雑になる。また、公報4及び5の制動装置は、液圧制御弁として、常閉型の減圧弁を用いるために、マスタシリンダとホイールシリンダとを連通させるバイパス通路が別途必要となる。従って、公報3〜5の制動装置においては、アクチュエータの数は削減できるが、その代わりに、配管系統が複雑になる。
【0005】このように、従来の電気自動車の制動装置では、アクチュエータの数の削減と、配管系統の複雑化防止とを両立させることができない。上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、配管系統を複雑にすることなく、液圧制御のためのアクチュエータの個数を削減することのできる電気自動車の制動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、ブレーキ操作により、駆動輪に設けられた駆動モータの回生制動力を発生させるとともに、必要な制動力に対する不足分を、駆動輪又は従動輪に設けられた液圧制動装置により液圧制動力として発生させる電気自動車の制動装置において、前記回生制動力に対応した所定値△Pを増減されるコントロール液圧を発生するコントロール液圧発生部と、マスタシリンダと液圧制動装置との間に設けられ、このマスタシリンダからの入力液圧を開弁付勢力として受ける入力室と、この入力室と通路を介して連通されるとともに、前記液圧制動装置への出力液圧を閉弁付勢力として受ける出力室と、前記入力室及び前記出力室に対して隔離されるとともに、前記コントロール液圧を受けて閉弁付勢力を発生させる制御室と、前記開弁付勢力及び前記閉弁付勢力に基づいて前記通路を開閉する弁部とを有し、前記コントロール液圧を受けて前記通路を閉じるとともに、前記所定値△Pをパラメータとした液圧制御特性に基づいて出力液圧を発生させる液圧制御弁とを備えたことを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】このように構成された電気自動車の制動装置において、液圧制御弁は、アクチュエータ等によって直接駆動されるものではなく、回生制動力に対応して発生したコントロール液圧を制御室に受けて制御され、所定値△Pをパラメータとした液圧制御特性に基づいて出力液圧を発生させるものである。また、液圧制御弁は、入力室と出力室とを連通する通路を有する構成となっている。
【0008】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、液圧制御弁は、開弁方向に付勢するばねを有するものであってもよい(請求項2)。この場合、液圧制御弁は、ばねの付勢に抗する力がない場合には、常に開弁状態を維持する。また、開弁状態の液圧制御弁は、液圧制動装置内の液圧を逃がすバイパス通路の役目を果たす。
【0009】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、液圧制御弁は、液圧制動装置からマスタシリンダ側への液流を許容する逆止弁体を有していてもよい(請求項3)
この場合、マスタシリンダからの入力液圧が低下して、入出力間の圧力差が大きくなると、逆止弁体の作用により、液圧制動装置からマスタシリンダ側へ液の戻りが生じる。
【0010】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、液圧制御弁は、駆動輪に対応して設けられ、液圧制御時に入力液圧と同じ割合で出力液圧が昇圧するものであってもよい(請求項4)。この場合、液圧制御弁の出力液圧により、全制動力のうち回生制動力の負担分を除く、残りの所要制動力が液圧によって負担される。
【0011】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、液圧制御弁は、駆動輪及び従動輪に対応して設けられ、従動輪に対応する液圧制御弁は、液圧制御時に入力液圧より高い割合で出力液圧が昇圧するものであってもよい(請求項5)。この場合、回生制動力が付与されない従動輪に対して、入力液圧より高い割合での昇圧により、回生制動力を考慮して抑制された液圧制動力が、入力液圧の増加とともに回生制動力を考慮しないレベルに追いつく。
【0012】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、液圧制御弁は、1つのコントロール液圧発生部に対して2以上設けられてもよい(請求項6)。この場合、2以上の液圧制御弁が、1つのコントロール液圧発生部により制御される。
【0013】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、液圧制御弁は、閉弁すると入力液圧と同じ割合で出力液圧が昇圧する駆動輪用の液圧制御弁と、閉弁すると入力液圧より高い割合で出力液圧が昇圧する従動輪用の液圧制御弁とが、1つのコントロール液圧発生部に対して設けられたものであってもよい(請求項7)。この場合、駆動輪に関しては、液圧制御弁の出力液圧により、全制動力のうち所定の割合の制動力が液圧によって負担される。回生制動力が付与されない従動輪に対しては、入力液圧より高い割合での昇圧により、回生制動力を考慮して抑制された液圧制動力が、入力液圧の増加とともに回生制動力を考慮しないレベルに追いつく。
【0014】上記電気自動車の制動装置(請求項7)において、従動輪用の液圧制御弁は、駆動輪用の液圧制御弁より、入力液圧の上昇に対して早期に開弁するものであってもよい(請求項8)。この場合、従動輪の液圧が駆動輪の液圧より早期に立ち上がる。
【0015】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、液圧制御弁と並列に設けられ、出力液圧が前記液圧制動装置の無効圧に達すると、入力液圧を所定割合に減圧して出力する液圧比例弁を備えてもよい(請求項9)。この場合、出力液圧が無効圧に達するまでは、液圧比例弁による減圧が行われることなく、液圧制動装置の無効ストロークが詰められる。
【0016】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、コントロール液圧発生部は、回生制動力に応じた駆動力を発生する駆動手段と、この駆動力を受けてコントロール液圧を発生する制御ピストンとを有するものであってもよい(請求項10)。この場合、駆動手段と制御ピストンとによって、所要のコントロール液圧が発生する。
【0017】上記電気自動車の制動装置(請求項10)において、駆動手段は、制御ピストンに駆動力を伝達する直流モータであってもよい(請求項11)。この場合、回生制動力に応じた入力を供給することによって、モータの駆動力は変化する。従って、駆動力の制御が容易である。
【0018】上記電気自動車の制動装置(請求項10)において、コントロール液圧発生部は、駆動手段の摺動抵抗より大きい付勢力を有する制御ピストン戻し機構を有するものであってもよい(請求項12)。この場合、駆動手段の故障等が発生した場合、制御ピストン戻し機構により、駆動手段の摺動抵抗に打ち勝って制御ピストンが戻される。
【0019】上記電気自動車の制動装置(請求項10)において、コントロール液圧発生部には、コントロール液圧を検出するための液圧センサが設けられていてもよい(請求項13)。この場合、液圧センサによって、コントロール液圧が直接検出される。また、コントロール液圧の異常検出により駆動手段の作動を停止させることができる。
【0020】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、コントロール液圧発生部は、ブレーキ操作が行われると、所定値ΔPを、そのとき最大限出力可能な回生制限値に対応する値として、コントロール液圧を発生させるものであってもよい(請求項14)。この場合、液圧制御弁は、所定値ΔPに基づいて、入力液圧の上昇初期段階から回生制動力に応じた液圧制御を行う状態となる。
【0021】上記電気自動車の制動装置(請求項1)において、コントロール液圧発生部は、ブレーキ操作が行われると、所定値ΔPが、そのとき最大限出力可能な回生制限値に対応する値に達するまで、入力液圧の上昇割合以上の勾配で当該所定値ΔPを増加させることにより、コントロール液圧を発生させるものであってもよい(請求項15)。この場合、液圧制御弁は、入力液圧の上昇初期段階において増加するΔPに基づいて、液圧制御特性をシフトさせることにより、液圧制御に応答の遅れをもたせる。その間に、閉弁が遅延した液圧制御弁を通じて、液圧制動装置の無効ストロークが詰められる。
【0022】また、本発明は、ブレーキ操作により、駆動輪に設けられた駆動モータの回生制動力を発生させるとともに、必要な制動力に対する不足分を、駆動輪又は従動輪に設けられた液圧制動装置により液圧制動力として発生させる電気自動車の制動装置において、前記回生制動力に対応した駆動力を発生する駆動手段と、一方側でこの駆動力及びマスタシリンダからの入力液圧Pmを受けて、他方側で前記入力液圧に、前記駆動力に対応する所定値△Pを付加したコントロール液圧(Pm+ΔP)を発生する制御ピストンとを有するコントロール液圧発生部と、前記制御ピストンの他方側に接続され、前記回生制動力を液圧制動力として発生させる際に必要となる液量及び液圧を消費するストローク補償ピストンと、前記マスタシリンダと液圧制動装置との間に設けられ、前記コントロール液圧を受けて前記マスタシリンダと前記液圧制動装置との間の通路を閉じるとともに、前記所定値△Pをパラメータとした液圧制御特性に基づいて出力液圧を発生させる液圧制御弁とを備えたことを特徴とするものであってもよい(請求項16)。
【0023】このように構成された電気自動車の制動装置において、液圧制御弁は、アクチュエータ等によって直接駆動されるものではなく、回生制動力に対応して発生したコントロール液圧を制御室に受けて制御され、所定値△Pをパラメータとした液圧制御特性に基づいて出力液圧を制御するものである。また、液圧制御弁は、入力室と出力室とを連通する通路を有する構成となっている。一方、ストローク補償ピストンは、回生制動時のブレーキストロークを消費する。回生制動力が失効する(故障を含む)に伴って前記駆動力が低減されると、制御ピストンが他側のコントロール液圧(Pm+ΔP)により戻される。制御ピストンが戻されると、ストローク補償ピストンもこれに追従して、制御ピストン側の液量がマスタシリンダ側に戻され、この液量が液圧制動装置に供給される。
【0024】上記電気自動車の制動装置(請求項16)において、ストローク補償ピストンは、最大回生制動力相当の液量を消費すると、フルストロークに達するものであってもよい(請求項17)。この場合、回生制動力が最大の場合にストローク補償ピストンがフルストロークとなって、ボトミング圧に達する。
【0025】上記電気自動車の制動装置(請求項16)において、ストローク補償ピストンは、液量調節機構を有するものであってもよい(請求項18)。この場合、液量調節機構により任意の液量を設定することが可能になる。
【0026】上記電気自動車の制動装置(請求項18)において、ストローク補償ピストンは、液圧制御弁によって制御される液圧制動装置の数、及び、その液量消費特性に基づいて補償量を決定されるものであってもよい(請求項19)。この場合、液圧制動装置の数や液量消費特性に応じた補償液量で、適切な補償がなされる。
【0027】上記電気自動車の制動装置(請求項16)において、ストローク補償ピストンは、コントロール液圧(Pm+ΔP)を受けるとともに、マスタシリンダからの入力液圧Pmを受けて、その差圧ΔPを出力する差圧ピストンを有し、この差圧ピストンの出力側に、当該差圧ΔPに基づいて回生制動力を液圧制動力として発生させる際に必要となる液量及び液圧を消費すべく作動する補償ピストンを有するものであってもよい(請求項20)。この場合、差圧ピストンは、コントロール液圧Pcからマスタシリンダ液圧Pmを除去した差圧ΔPを出力する。一方、補償ピストンは、このΔPのみによって駆動され、回生制動力を液圧制動力として発生させる際に必要となる液量及び液圧を消費すべく作動する。こうして、補償ピストンはマスタシリンダ液圧Pmの影響を直接受けることなく、ΔPのみによって作動するので、回生制動力が使用されない場合に補償ピストンが動作することによる不要なストローク補償動作が防止される。
【0028】上記電気自動車の制動装置(請求項16)において、コントロール液圧発生部の前記駆動手段は、直流モータであってもよい(請求項21)。この場合、回生制動力に応じた入力を供給することによって、モータの駆動力を容易に、かつ、自在に変化させることができる。
【0029】上記電気自動車の制動装置(請求項16)において、コントロール液圧発生部の制御ピストンは、一方側と他方側とを連通させる貫通路と、この貫通路を作動時に閉じる弁体とを有するものであってもよい(請求項22)。この場合、貫通路を通って所定の液量が制御ピストンの他方側に供給される。
【0030】
【発明の実施の形態】図17は、本発明の一実施形態による電気自動車の制動装置の構成を示す図である。図において、ブレーキペダル1にはマスタシリンダ2が接続されており、このマスタシリンダ2は、一対の液圧制御弁ユニット3と接続されている。図の左側の液圧制御弁ユニット3は、コントロール液圧発生部CV、前輪用の液圧弁装置FV、後輪用の液圧弁装置RV、及び、液圧センサCSを備えている。液圧弁装置FV及びRVは、それぞれ、前輪左側車輪用の液圧制動装置4FL及び後輪右側用の液圧制動装置4RRと接続されている。図の右側の液圧制御弁ユニット3も同様に構成され、液圧弁装置FV及びRVは、それぞれ、前輪右側車輪用の液圧制動装置4FR及び後輪左側用の液圧制動装置4RLと接続されている。すなわち、このブレーキ配管形態は、X配管である。マスタシリンダ2から図17の右側の液圧制御弁ユニット3に至る経路上には液圧センサMSが設けられている。この電気自動車は、前輪5FL及び5FRを駆動輪、後輪5RL及び5RRを従動輪とする前輪駆動車であり、前輪5FL及び5FRには駆動モータ6が接続されている。
【0031】ブレーキコントローラ7は、上述の各液圧センサMS、CS(一対)、並びに、ブレーキペダル2が踏まれたことを検知するブレーキスイッチ8からの信号を受け取り、各コントロール液圧発生部CVに対して駆動信号を出力する。ブレーキコントローラ7と接続されたシステムコントローラ9は、インバータ10を制御し、駆動モータ6はこのインバータ10によって、任意の速度で駆動される。また、駆動モータ6は、電力の回生により回生制動力を前輪5FL及び5FRに作用させる。なお、上記のようなX配管構成を有する制動装置においては、一系統の配管の故障時に他系統の配管により、前輪の一方及び後輪の一方が制動され、バランスを崩すことなく、車両を停止させることができる。
【0032】次に、上記液圧制御弁ユニット3の構成について詳細に説明する。図1及び図2は、液圧制御弁ユニット3の横断面図であり、図1は最大回生制動時の状態を、図2は回生制動がオフの状態を、それぞれ示している。図2に示す回生制動がオフの状態とは、例えば、充分な回生制動力が得られない場合や、回生制動系統に何らかの故障が発生した場合の状態であり、このときは、ブレーキコントローラ7(図17)からコントロール液圧発生部CVには駆動信号が与えられていない。
【0033】図2において、液圧制御弁ユニット3は、中心部に存在するコントロール液圧発生部CVと、その上方及び下方にそれぞれ設けられている前輪の液圧弁装置FV及び後輪の液圧弁装置RVとによって構成されている。前輪の液圧弁装置FVは、外側に配置された液圧比例弁FPVと内側に配置された液圧制御弁FCVとによって構成されている。液圧制御弁FCVと液圧比例弁FPVとは、互いに並列に接続されており、入力及び出力は共通である。同様に、後輪の液圧弁装置RVは、外側に配置された液圧比例弁RPVと内側に配置された液圧制御弁RCVとによって構成されている。液圧制御弁RCVと液圧比例弁RPVとは、互いに並列に接続されており、入力及び出力は共通である。
【0034】図4は、図2からコントロール液圧発生部CVのみを抜き出して示した図である。図2を参照した図4において、コントロール液圧発生部CVは、シリンダ301の内部に制御ピストン302を有する。この制御ピストン302は、軸方向(図の左右方向)に移動可能に支持され、かつ、機械的駆動手段によって駆動される。当該コントロール液圧発生部CVは、回生制動力をパラメータとして、入力ポート301aに供給されるマスタシリンダ液圧Pmに応じた制御圧Pcを、出力ポート301bに提供する装置である。
【0035】上記制御ピストン302の左端部には、中央部に孔303aが形成されたばね受け座303が装着されている。制御ピストン302は、このばね受け座303と、シリンダ301に螺着された取付蓋304との間に保持されたリターンスプリング305によって右方向に付勢される。リターンスプリング305を収容するシリンダ301内の液室Q1は、出力ポート301bと連通している。制御ピストン302の内部には、入力ポート301aに連通し、ピン306が遊挿された孔302aと、この孔302aから軸方向に穿設された軸孔302bと、この軸孔302bを介して孔302aと連通した弁室302cと、右端側に穿設された嵌合穴302dとが設けられている。
【0036】上記弁室302cには、ばね307により図の右方向に付勢された弁体308が設けられ、この弁体308の支軸であるロッド309が軸孔302bに挿通されている。図示の状態では、ロッド309の右端がピン306に当接して左方向に押されていることにより、弁体308はばね307に抗して、制御ピストン302に対して左方向に移動している。この結果、弁体308は弁室302cの右端側壁面から離反している。すなわち、弁体308と弁室302cの右端側壁面を弁座とする弁は開弁状態である。取付蓋304は、その中心部に液圧センサCSが埋設されている。この液圧センサCSは、取付蓋304の中心軸方向に形成された孔304aを通じて液室Q1と連通している。従って、液圧センサCSは出力ポート301bの液圧すなわち、コントロール液圧Pcを検出する。なお、このようにコントロール液圧Pcを直接検出することは、正確にコントロール液圧Pcを把握できるとともに、圧力の異常が検出された場合は、制御ピストン302の作動を停止させることにより、フェールセーフを確保することができる点で好ましい。
【0037】コントロール液圧発生部CVの右側には、モータ(DCモータ)310と、このモータ310の回転軸に、スラスト軸受311を介して接続された主軸312と、この主軸312とボールねじを構成し、円柱状部313aと縦長の鍔部313bとを有するナット部材313と、ナット部材313の回転を防ぐため鍔部313bと係合した回り止め部材314とが設けられている。ナット部材313の円柱状部313aは、制御ピストン302の嵌合穴302dに摺動自在に嵌合している。モータ310は、供給された電流に応じた回転トルクで主軸312を回転させ、これによりナット部材313は図の左方向に前進する。前述のように、図2及び図4に示す状態においては、モータ310に駆動信号が与えられていないため、ナット部材313は右端位置にある。従って、制御ピストン302には、モータ310の回転トルクによる左方向への力が付与されていない。なお、ナット部材313は、モータ310の回転トルクによる前進方向への力と、これに対抗するリターンスプリング305のばね力等とのバランスにより、回転トルクに応じた位置まで制御ピストン302を押し込む。一方、回転トルクが失われると、ナット部材313は、リターンスプリング305のばね力を受けて迅速に元の位置に戻る。
【0038】一方、図3に示すように、制御ピストン302の摺動方向と直交するシリンダ301の上部側に、ストローク補償ピストンを構成する補償ピストン315が図の上下方向に所定範囲で摺動自在に設けられている。補償ピストン315の下端部は液室Q1に面しており、液室Q1の液圧を受ける。補償ピストン315は、ばね316を介して取付蓋317を螺着することにより、シリンダ301内に封止されている。取付蓋317はロックナット318により固定されており、従って、上下方向に任意の位置で固定される。取付蓋317の固定位置により、補償ピストン315の端部との隙間Gが変化する。この隙間Gは、補償ピストン315のストロークを決定するため、取付蓋317の固定位置に応じて補償液量を調整することが可能である。補償液量は、液圧制動装置の種類や数に対応して調整される。なお、補償液量は回生制動力に相当するものであるため、上記のような可調整の構成は、どのような回生制動力にも対応することができる点で好適である。
【0039】図5は、図2から前輪側の液圧比例弁FPVのみを抜き出して示した図である。なお、後輪側の液圧比例弁RPVも構造は同様である。図2を参照した図5において、シリンダ301内に設けられたピストン穴301cには、ピストン321が軸方向に摺動自在に嵌挿され、栓部材322によって封止されている。ピストン321の外周には凹部321aが形成され、ピストン穴301cとの間に液室Q2を形成している。また、ピストン321の左端側内部には、ばね受け部321b及び連絡孔321cが形成されている。このばね受け部321b内の液室Q3は、連絡孔321cを通じて液室Q2と連通している。ばね受け部321bには、ばね323が装填され、弁体(逆止弁体)324は栓部材322に当接した状態で、ばね323によって左方向に付勢されている。ピストン321の左端部には略円筒状の弁座325が取り付けられ、この弁座325を弁体324の円柱部324bが貫通している。
【0040】上記弁座325の右端面に弁体324のテーパ部324aが押しつけられた状態が閉弁状態であり、これらが互いに離反した状態が開弁状態である。弁体324の円柱部324bの外周面と弁座325の内周面との間には隙間があり、液の流通が可能である。また、弁座325の側面には通孔325aが形成されている。開弁状態では、液室Q3は、上記隙間と通孔325aを介してピストン321の左端側に形成された液室Q4と連通する。
【0041】ピストン321は、右端側でばね326によって左方向に付勢され、上記ばね323によって右方向に付勢されている。液圧が付与されない状態では、ピストン321は、2つのばね326及び323の力のバランスがとれた位置にあり、開弁している。マスタシリンダ液圧Pmが供給されるシリンダ301の入力ポート301dは、上記液室Q2に連通し、液室Q2は後述する液圧制御弁FCVの入力ポート301fと連通している。また、ホイールシリンダ圧Pwを出力する出力ポート301eは、上記液室Q4と連通し、液室Q4は後述する液圧制御弁FCVの出力ポート301gと連通している。
【0042】図6は、図2から前輪側の液圧制御弁FCVのみを抜き出して示した図である。なお、後輪側の液圧制御弁RCVも構造は同様である。図2を参照した図6において、シリンダ301内に設けられたピストン穴301hには、ピストン331が軸方向に摺動自在に嵌挿され、栓部材332によって封止されている。ピストン331の右端部とシリンダ301との間には液室Q5(入力室)が、また、ピストン331の左端部とシリンダ301との間には液室Q6(出力室)が、それぞれ形成されている。液室Q5は、入力ポート301f及び、コントロール液圧発生部CVの入力ポート301aと連通している。液室Q6は、出力ポート301gと連通している。また、ピストン331の外周の一部とシリンダ301との間には、上記液室Q5及びQ6とは隔離された液室Q7(制御室)が形成され、この液室Q7はコントロール液圧発生部CVの出力ポート301bと連通している。
【0043】ピストン331の内部には、連絡孔331aと、これに連通したばね受け部331bとによって、中心軸部分を貫通した通路が形成されている。ばね受け部331bには、ばね333が装着され、弁体334(逆止弁体)はシリンダ301に当接した状態で、ばね333によって左方向に付勢されている。ピストン331の左端部には略円筒状の弁座335が取り付けられ、この弁座335を弁体334の円柱部334bが貫通している。
【0044】上記弁座335の右端面に弁体334のテーパ部334aが押しつけられた状態が閉弁状態であり、これらが互いに離反した状態が開弁状態である。弁体334の円柱部334bの外周面と弁座335の内周面との間には隙間があり、液の流通が可能である。また、弁座335の側面には通孔335aが形成されている。開弁状態では、上記液室Q5及びQ6は、上記連絡孔331a、ばね受け部331b、上記隙間及び通孔335aを介して互いに連通している。
【0045】ピストン331は、右端側でばね336によって左方向に付勢され、上記ばね333によって右方向に付勢されている。液圧が付与されない状態では、ピストン331は、2つのばね336及び333の力のバランスがとれた図示の位置にあり、開弁している。このように、いわゆるノーマルオープンの弁であることは、異常時に液圧制動力の発生を妨げないため、フェイルセーフの点から好ましい。また、液圧制動装置4RR、4FL、4FR及び4RLからマスタシリンダ2側への液の戻りを許容するバイパス通路の役目をも果たすため、別途バイパス通路を設ける必要がない。上記液室Q7は、コントロール液圧発生部CVの出力ポート301bと連通しており、コントロール液圧Pcを受ける。
【0046】次に、上記のように構成されたコントロール液圧発生部CV、液圧比例弁FPV(RPV)及び液圧制御弁FCV(RCV)における、それぞれのピストンにかかる力の釣り合いに基づく液圧制御(ミータリング)動作について説明する。図1は、最大回生制動時の液圧制御弁ユニット3の状態を示す断面図である。まず、コントロール液圧発生部CVの動作について説明する。図7は、図1からコントロール液圧発生部CVのみを抜き出して示した図である。図1を参照した図7において、モータ310の回転によりナット部材313が左方向に前進する。従って、ナット部材313の鍔部313bにより制御ピストン302は左に押され、所定距離移動している。この結果、ロッド309がピン306から離れ、弁体308はばね307の付勢を受けて弁室302cの右端側壁面に当接している。すなわち、コントロール液圧発生部CVは閉弁状態にある。
【0047】上記の状態のコントロール液圧発生部CVにおいて、ばね受け部303の外径をDc1、ばね受け部303の内径をDs、入力ポート301a側における制御ピストン302の受圧最大径をDm、制御ピストン302のマスタシリンダ液圧受入部での直径をDpとすると(図7中の各記号参照。)、コントロール液圧Pcにかかわる制御ピストン302の左端部側の受圧面積Sc1は、 Sc1=(π/4)・(Dc1−Ds) ...(1)
で表される。また、マスタシリンダ液圧Pmに対する制御ピストン302の右端部側の受圧面積Smは、 Sm=(π/4)・(Dm−Dp−Ds) ...(2)
で表される。
【0048】ここで、Sc1=Smとなるように、Dc1、Ds、Dm及びDpの各値を設定しておく。すなわち、式(1)及び(2)より、(Dc1−Ds)=(Dm−Dp−Ds
とおいて、これをDmについて解くと、Dm=(Dc1+Dp1/2 ...(3)
となるので、この式(3)の関係を保つことにより、Sc1=Smの関係が得られる。
【0049】一方、リターンスプリング305のばね力をFs、制御ピストン302の摺動抵抗をf(<Fs)、モータ310による制御ピストン302を左方向に押す力をFとすると、制御ピストン302にかかる力の釣り合いの関係により、 Sc1・Pc+Fs+f=Sm・Pm+F ...(4)
が成り立つ。これにより、 Pc=(Sm/Sc1)・Pm+{(F−Fs−f)/Sc1} ..(5)
となる。ここで、上記Sc1=Smの関係より、(Sm/Sc1)=1であるから、ΔP={(F−Fs−f)/Sc1}とおくと、Pc=Pm+ΔP ...(6)
と表される。ここで、ΔPを決定する要素のうち、Fs、f及びSc1は定数若しくは略一定数であり、残るFは、ブレーキコントローラ7(図17)から与えられるモータ310の駆動信号に依存する。すなわち、その時点で発生可能な回生制動力に応じてΔPが変化し、コントロール液圧Pcが変化する。このコントロール液圧Pcは、出力ポート301bを通じて、前輪側の液圧制御弁FCV及び後輪側の液圧制御弁RCVに供給され、マスタシリンダ液圧Pmとの関係で、これらの弁を制御する。こうして、単一のコントロール液圧発生部CVから生じたコントロール液圧Pcは、2つの液圧制御弁FCV及びRCVに対して、いわば共通の「アクチュエータ」として作用する。なお、上記リターンスプリング305のばね力Fsと、制御ピストン302の摺動抵抗をfとが、f<Fsの関係にあることは、制御ピストン302の駆動機構に故障が発生した場合に、摺動抵抗が原因となってコントロール液圧Pcの残圧が生じることを防止する効果がある。
【0050】ブレーキコントローラ7は、マスタシリンダ液圧Pmに応じて、発生させるべき回生制動力を決定し、決定した回生制動力に応じた駆動信号をモータ310に与える。この駆動信号により、ΔPが決まる。図14は、ΔPが終始一定の、コントロール液圧発生パターンの例である。すなわち、ブレーキ操作が行われると、マスタシリンダ液圧Pmが立ち上がる前から一定のΔPが与えられ、コントロール液圧Pcは、常にマスタシリンダ液圧Pmより所定値ΔP大きい。このΔPは、そのとき最大限出力可能な回生制限値に対応する値である。
【0051】次に、液圧比例弁FPVの閉弁状態における液圧制御動作について説明する。図8は、図1から前輪側の液圧比例弁FPVのみを抜き出して示した図であり、当該状態は閉弁状態(厳密には閉弁と開弁とを高速に繰り返す臨界的状態である。)である。図8において、ピストン321におけるホイールシリンダ液圧Pwの受圧最大径をDw、弁座325の内径をDs、ピストン321の凹部321aの外径をDmとすると、ホイールシリンダ液圧Pwにかかわるピストン321の左端部側の受圧面積Swは、 Sw=(π/4)・(Dw−Ds) ...(7)
で表される。また、マスタシリンダ液圧Pmに対するピストン321の右端部側の受圧面積Smは、 Sm=(π/4)・(Dw−Dm−Ds) ...(8)
で表される。
【0052】一方、ばね326のばね力をFs、ピストン321の摺動抵抗をfとすると、ピストン321にかかる力の釣り合いの関係により、Sw・Pw=Sm・Pm+Fs+f ...(9)
が成り立つ。ここで、左辺は閉弁付勢力を表し、右辺は開弁付勢力を表す。これにより、 Pw=(Sm/Sw)・Pm +{(Fs+f)/Sw} ...(10)
となる。ここで、Sm/Sw=K1(定数)とおくと、 Pw=K1・Pm +{(Fs+f)/Sw} ...(11)
と表される。すなわち、式(11)は、マスタシリンダ液圧Pmに対するホイールシリンダ液圧Pwが1次方程式の形で表され、(Fs+f)/Swを切片とする勾配K1の直線で表されることを示している。ここで、切片の値及び勾配K1の値は、いずれも正の一定値である。K1として設定される値は、例えば0.1であり、直線の勾配は小さい。
【0053】次に、液圧制御弁FCVの閉弁状態における液圧制御動作について説明する。図9は、図1から前輪側の液圧制御弁FCVのみを抜き出すとともに、これを閉弁状態(厳密には閉弁と開弁とを高速に繰り返す臨界的状態である。)とした図である(なお、図1は開弁状態である。)。図9において、ホイールシリンダ液圧Pwに対するピストン331の受圧最大径をDw、コントロール液圧Pcの受圧にかかわるピストン331の最小径をDc、最大径をDm(マスタシリンダ液圧Pmの受圧にかかわる最大径と同一)、弁座335の内径をDsとすると、ホイールシリンダ液圧Pwにかかわるピストン331の左端部側の受圧面積Swは、 Sw=(π/4)・(Dw−Ds) ...(12)
で表される。また、コントロール液圧Pcに対するピストン331の受圧面積Scは、 Sc=(π/4)・(Dm−Dc) ...(13)
で表される。また、マスタシリンダ液圧Pmに対するピストン331の右端部側の受圧面積Smは、 Sm=(π/4)・(Dm−Ds) ...(14)
で表される。
【0054】一方、ばね336のばね力をFs、ピストン331の摺動抵抗をfとすると、ピストン331にかかる力の釣り合いの関係により、 Sw・Pw+Sc・Pc=Sm・Pm+Fs−f ...(15)
が成り立つ。ここで、左辺は閉弁付勢力を表し、右辺は開弁付勢力を表す。これに、式(6)のPcを代入すると、 Pw={(Sm−Sc)/Sw}・Pm+{(Fs−f−Sc・ΔP)/Sw} ...(16)
となる。ここで、(Sm−Sc)/Sw=K2(定数)とおくと、 Pw=K2・Pm+{(Fs−f−Sc・ΔP)/Sw} ...(17)
となる。すなわち、式(17)は、マスタシリンダ液圧Pmに対するホイールシリンダ液圧Pwが、1次方程式で表され、(Fs−f−Sc・ΔP)/Swを切片とする勾配K2の直線で表されることを示している。この勾配K2は正の一定値であり、通常1.0以上の値に設定される。一方、切片の値は、ΔP(=Pc−Pm)により変動し、一定値ではない。このようにして切片にΔPが含まれることにより、マスタシリンダ液圧Pmに対するホイールシリンダ液圧Pwの液圧制御特性にΔPがパラメータとして関与し、ホイールシリンダ液圧Pwは回生制動力の影響を受ける。
【0055】なお、上記の液圧比例弁及び液圧制御弁に関する説明は、前輪側のものについて行ったが、後輪側の液圧比例弁RPV及び液圧制御弁RCVについても、同様である。但し、式(11)及び(17)におけるK1及びK2の各値、並びに、当該式における切片の値は、駆動輪であるか否かや液圧制動装置の種類を考慮して、前輪側と後輪側とで互いに独立して設計される。
【0056】図12は、上記の液圧制御弁ユニット3における、マスタシリンダ液圧Pmに対する前輪側のホイールシリンダ液圧Pwの特性を示すグラフである。図において、原点(0,0)を通過する勾配1の直線(破線で示す。)は、マスタシリンダ液圧Pmとホイールシリンダ液圧Pwとが等しい特性を示しており、回生制動がオフ又は故障のときは、この特性に従ってホイールシリンダ液圧Pwが発生する。これに対して、実線で示す折れ線グラフ部分が本実施形態の液圧制御弁ユニット3によって提供される前輪(駆動輪)の液圧特性である。
【0057】上記折れ線グラフによる特性は、式(11)によって表される勾配K1(この場合、0.1)の直線と、式(17)によって表される勾配K2(この場合1.0)の直線とをグラフ上で重ね、Pmに対してのPwが大きい方の特性(すなわち、グラフ上で上方にある方)をとり、かつ、出力であるPwは入力であるPmを越えないという関係から描かれている。具体的には、原点から折れ点P1までは、Pw=Pmの関係でホイールシリンダ液圧Pwが増加する。続いて、折れ点P1から折れ点P2までは、前述の式(11)に従って勾配K1で、ホイールシリンダ液圧Pwが微増する。折れ点P2以降は、前述の式(17)に従って勾配K2で、ホイールシリンダ液圧Pwが増加する。
【0058】次に、図12に示した特性を、制動装置の各部の動作に対応させて具体的に説明する。まず、図12に示す前輪側の特性に関して図1〜図9及び図17を参照して説明する。なお、回生制動力は最大値を提供可能であり、コントロール液圧発生パターンは図14に示すパターンであるとする。このとき、ブレーキ操作が行われる前の液圧制御弁ユニット3は、図2に示す状態にあり、コントロール液圧発生部CV、液圧制御弁FCV、及び、液圧比例弁FPVの各弁はすべて開弁状態にある。
【0059】ここで、ブレーキ操作が行われると、図17におけるブレーキスイッチ8が動作して検出信号がブレーキコントローラ7に送られる。また、ブレーキペダル1の踏み込みに応じてマスタシリンダ2からマスタシリンダ液圧Pmが出力され、液圧制御弁ユニット3に供給される。マスタシリンダ液圧Pmは、液圧センサMSによって検出され、検出信号がブレーキコントローラ7に送られる。ブレーキコントローラ7及びシステムコントローラ9は、受け取った検出信号に応じて回生制動を開始する。また、ブレーキコントローラ7は、回生制動指令量に基づいて、モータ電流をコントロール液圧発生部CVのモータ310(図2)に供給する。これによりモータ310が駆動され、ナット部材313が前進して制御ピストン302を押すことにより、コントロール液圧発生部CVは閉弁状態となる。
【0060】閉弁により、コントロール液圧発生部CVは、前述の式(6)に基づいて、コントロール液圧Pcを発生させる。ここで、モータ電流は、式(6)におけるΔPが、その時点における最大限出力可能な回生制限値RBmaxに対応する値となるように、最初から一定の値で与えられる(図14参照)。従って、モータ310により駆動されたナット部材313は、回生制限値RBmaxに対応する力Fで制御ピストン302を押し込む。この力Fに応じて、所定値ΔP(={(F−Fs−f)/Sc1})が決まり、コントロール液圧Pcが式(6)に基づいて発生する。なお、コントロール液圧Pcにより、補償ピストン315が押し込まれる。補償ピストン315(図3)は、最大回生制動力発生時にボトミングして、ギャップGが0となる。補償ピストン315がボトミングすると、制御ピストン302もそれ以上押し込まれることはなく、その位置で停止する。これは、最大回生制動力を液圧制動力として発生させたならば消費されるであろう液量及び液圧を模擬的に吸収した状態である。
【0061】液圧比例弁FPVの液圧制御特性は式(11)に示すように、回生制動力には無関係であり、勾配K1の直線は最初から決まっている。また、マスタシリンダ液圧Pmが0のときは、開弁状態である。従って、ブレーキ操作によってマスタシリンダ液圧Pmが立ち上がると、ホイールシリンダ液圧(出力液圧)Pwも同値で立ち上がる。液圧比例弁FPVにおいて、閉弁付勢力と開弁付勢力とが互いに釣り合っている状態は、勾配K1の直線の左方への延長線(図示せず)上にある(Pm,Pw)について得られるが、原点から折れ点P1までの間においては、このK1勾配の直線の延長線より、Pw=Pmの直線が下方にある。これは、閉弁付勢力と開弁付勢力とが互いに釣り合っているK1勾配直線上の状態に比べて、ホイールシリンダ液圧Pwが相対的に低いことを示す。従って、このときの液圧比例弁FPVにおいては、閉弁付勢力が開弁付勢力より小さく、開弁状態が維持される。この動作は、図12に示す特性の原点から折れ点P1までに相当する。
【0062】一方、液圧制御弁FCVは、上記所定値ΔPが決まることにより、式(17)が確定するので、図12の勾配K2の直線が決まる。従って、マスタシリンダ液圧Pmが上昇する前から、折れ点P2の位置(回生制動力最大のときは、Pm=30kgf/cmとなる位置)が確定している。このことは、液圧制御弁FCVを早期に液圧制御状態にする意義がある。従って、液圧制御弁FCVは、当初は開弁状態にあるが、コントロール液圧Pcを受けて、すぐに閉弁状態となる。
【0063】マスタシリンダ液圧Pmが、折れ点P1に相当する値を越えると、勾配K1の直線とPw=Pmの直線との上下関係が逆転する。従って、これ以降は、液圧比例弁FPVの閉弁付勢力と開弁付勢力とがつりあった状態に比べて、ホイールシリンダ液圧Pwが相対的に高い状態となろうとする。従って、このときの液圧比例弁FPVにおいては、閉弁付勢力が開弁付勢力より大きくなり、閉弁状態になる。閉弁により、液圧比例弁FPVは、式(11)に基づいて、入力に対して出力を制御する液圧制御状態となる。従って、ホイールシリンダ液圧Pwは、勾配K1の直線に沿って、液圧がほとんど上昇しない状態となる。こうして、液圧制動は抑制される。この状態の間に、液圧制動装置4FL及び4FRの無効ストローク(実際にブレーキが効き始めるまでの遊び)が詰められる。このことは、後の液圧制動開始時にブレーキストロークの違和感を防止する効果がある。一方、閉弁状態にある液圧制御弁FCVは、マスタシリンダ液圧Pmが約26kgf/cmあたりからホイールシリンダ液圧Pwを出力可能な状態となるが、折れ点P1からP2までは、K1勾配直線すなわち液圧比例弁FPVの出力の方が大きいため、液圧制御弁FCVの出力はホイールシリンダ液圧Pwに影響を与えない。
【0064】マスタシリンダ液圧Pmが折れ点P2に相当する値(本例では30kgf/cm)以上になると、液圧制御弁FCVの出力が液圧比例弁FPVの出力を上回るため、液圧制御弁FCVの出力がホイールシリンダ液圧Pwとなる。以後、マスタシリンダ液圧Pmの増加に伴って、勾配K2(=1)でホイールシリンダ液圧Pwが上昇する。勾配が1であることにより、その後も引き続いて回生制動力が有効に利用される。勾配K2は設計上の値から決まる一定値であるが、式(17)における切片は回生制動力に応じて変動する。回生制動力が大きくなるほど勾配K2の直線が図の矢印方向にシフトする。回生制動力が小さくなるほど、直線は左方にシフトして、折れ点P2は折れ点P1に接近する。すなわち、Pw=Pmの直線と、実線の折れ線グラフとによって挟まれる領域の面積は、回生制動力によるブレーキ負担を表している。
【0065】次に、図13は、上記の液圧制御弁ユニット3における、マスタシリンダ液圧Pmに対する後輪(従動輪)側のホイールシリンダ液圧Pwの特性を示すグラフである。図において、原点(0,0)を通過する勾配1の直線は、マスタシリンダ液圧Pcとホイールシリンダ液圧Pwとが等しい特性を示しており、回生制動がオフ又は故障のときは、この特性に従ってホイールシリンダ液圧Pwが発生する。これに対して、実線で示す折れ線グラフ部分が本実施形態の液圧制御弁ユニットによって提供される後輪の液圧特性である。
【0066】上記図13の折れ線グラフによる特性は、式(11)によって表される勾配K1(この場合0.1)の直線と、式(17)によって表される勾配K2(この場合1.5)の直線とをグラフ上で重ね、Pmに対してのPwが大きい方の特性(すなわち、グラフ上で上方にある方)をとり、かつ、出力であるPwは入力であるPmを越えないという関係から描かれている。具体的には、原点から折れ点P1までは、Pw=Pmの関係でホイールシリンダ液圧Pwが増加する。続いて、折れ点P1から折れ点P2までは、前述の式(11)に従って勾配K1で、ホイールシリンダ液圧Pwが微増する。折れ点P2以降は、前述の式(17)に従って勾配K2で、ホイールシリンダ液圧Pwが増加する。さらに、折れ点P3以降は、Pw=Pmの関係でホイールシリンダ液圧Pwが増加する。
【0067】次に、図13に示す後輪側の特性に関して図1〜図9及び図17を参照して説明する。前輪側の場合と同様に、回生制動力は最大値を提供可能であり、コントロール液圧発生パターンは図14に示すパターンであるとする。このとき、ブレーキ操作が行われる前の液圧制御弁ユニット3は、図1に示す状態にあり、コントロール液圧発生部CV、液圧制御弁RCV、及び、液圧比例弁RPVの各弁はすべて開弁状態にある。ブレーキ操作が行われると、前輪側の場合と同様に、コントロール液圧発生部CVの動作が行われ、補償ピストン315が押し込まれる。
【0068】液圧比例弁RPVにおいては、最初は開弁状態にあるため、ブレーキ操作によってマスタシリンダ液圧Pmが立ち上がると、ホイールシリンダ液圧(出力液圧)Pwも同値で立ち上がる。ここで、K1勾配の直線の延長線より、Pw=Pmの直線の方が下方にある。これは、閉弁付勢力と開弁付勢力とが互いに釣り合っている状態に比べて、ホイールシリンダ液圧Pwが相対的に低いことを示す。従って、このときの液圧比例弁RPVにおいては、閉弁付勢力が開弁付勢力より小さく、開弁状態が維持される。この動作は、図13に示す特性の原点から折れ点P1までに相当する。
【0069】一方、液圧制御弁RCVは、上記所定値ΔPが決まることにより、式(17)が確定するので、図13の勾配K2の直線が決まる。従って、マスタシリンダ液圧Pmが上昇する前から、折れ点P2の位置(回生制動力最大のときは、Pm=15kgf/cmとなる位置)が確定している。液圧制御弁FCVは、当初は開弁状態にあるが、マスタシリンダ液圧Pmの上昇とともに、すぐに閉弁状態となる。
【0070】マスタシリンダ液圧Pmが、折れ点P1に相当する値を越えると、勾配K1の直線とPw=Pmの直線との上下関係が逆転する。従って、これ以降は、液圧比例弁RPVの閉弁付勢力と開弁付勢力とがつりあった状態に比べて、ホイールシリンダ液圧Pwが相対的に高い状態となる。すなわち、このときの液圧比例弁RPVにおいては、閉弁付勢力が開弁付勢力より大きくなり、閉弁状態になる。閉弁により、液圧比例弁RPVは、式(17)に基づいて、入力に対して出力を制御する液圧制御状態となる。従って、ホイールシリンダ液圧Pwは、勾配K1の直線に沿って、液圧がほとんど上昇しない状態となる。こうして、液圧制動は抑制される。一方、閉弁状態にある液圧制御弁RCVは、マスタシリンダ液圧Pmが約12kgf/cmあたりからホイールシリンダ液圧Pwを出力可能な状態となるが、折れ点P1からP2までは、K1勾配直線すなわち液圧比例弁RPVの出力の方が大きいため、液圧制御弁RCVの出力はホイールシリンダ液圧Pwに影響を与えない。
【0071】マスタシリンダ液圧Pmが折れ点P2に相当する値(本例では15kgf/cm)以上になると、液圧制御弁RCVの出力が液圧比例弁RPVの出力を上回るため、液圧制御弁RCVの出力がホイールシリンダ液圧Pwとなる。以後、マスタシリンダ液圧Pmの増加に伴って、マスタシリンダ液圧Pmの上昇割合を越える割合の勾配K2(=1.5)でホイールシリンダ液圧Pwが上昇する。勾配K2は設計上の値から決まる一定値であるが、式(17)における切片は回生制動力に応じて変動する。回生制動力が大きくなるほど勾配K2の直線が図の矢印方向にシフトする。回生制動力が小さくなるほど、直線は左方にシフトして、折れ点P2は折れ点P1に接近する。
【0072】勾配K2は1.5であるため、この直線はPw=Pmの直線と折れ点P3で交差する。マスタシリンダ液圧Pmが、この折れ点P3に相当する値に達すると、出力は入力を越えられないため、ホイールシリンダ液圧Pwは上昇が止まり、その結果、勾配K2の直線とPw=Pmの直線との上下関係が逆転する。従って、これ以降は、液圧制御弁RCVの閉弁付勢力と開弁付勢力とがつりあった勾配K2直線上の状態に比べて、ホイールシリンダ液圧Pwが相対的に低い状態となる。従って、このときの液圧制御弁RCVにおいては、閉弁付勢力が開弁付勢力より小さくなり、開弁状態になっている。すなわち、折れ点P3以降のマスタシリンダ液圧Pmは、そのままホイールシリンダ液圧Pwとなって出力される。なお、折れ点P1、P2及びP3によって囲まれる領域は、回生制動力の負担を表している。
【0073】図12と図13との比較により明らかなように、前輪のホイールシリンダ液圧Pwは、後輪のホイールシリンダ圧力Pwより低いレベルにある。これは、車両の前輪が駆動輪であることから、回生制動力を有効利用するためには、前輪の液圧制動を抑制する必要があるからである。
【0074】図11は、マスタシリンダ液圧に対する車両減速度の構成を示すグラフである。図に示すように、マスタシリンダ液圧PmがPr(図13の折れ点P2に相当するマスタシリンダ液圧)までは、回生制動力のみによって全制動力がまかなわれる。マスタシリンダ液圧PmがPr以上になると後輪の液圧制動力が生じて、回生制動力に加算される。さらに、マスタシリンダ液圧PmがPf(図12の折れ点P2に相当するマスタシリンダ液圧)以上になると、前輪の液圧制動力が生じて、回生制動力及び後輪の液圧制動力に加算されるとともに、後輪は液圧制動力の負担率が100%となり、所望の理想的なブレーキ力配分が得られる。こうして、回生制動力を有効に利用しつつ、車両減速度は全体として、マスタシリンダ液圧Pmの増加に応じてほぼ一定の勾配で増加する。
【0075】ブレーキ操作中に、ブレーキ踏力が変化して、Pm≦Pc−ΔPとなった場合は、コントロール液圧Pcによって制御ピストン302が押し戻され、これに補償ピストン315が追従して戻り、ΔPに相当する全液量がマスタシリンダ2側へ戻される。これにより、ブレーキストロークに違和感を生じることが防止される。一方、ブレーキ操作中に回生制動力が失効した場合は、液圧制御弁FCV及びRCVが開弁してマスタシリンダ液圧Pmがそのままホイールシリンダ液圧Pwとして液圧制動装置に供給される。また、制御ピストン302の戻りによってコントロール液圧発生部CVが開弁するため、補償ピストン315に吸収されていた液量及び液圧がマスタシリンダ側に戻り、回生制動力相当の液量を補填する。従って、このときも、ブレーキストロークに違和感を生じることが防止される。
【0076】なお、ブレーキペダル1(図17)が戻されると、ブレーキスイッチ8の信号がオフとなり、回生制動が終了するとともに、ブレーキコントローラ7から液圧制御弁ユニット3に送られていたモータの駆動信号が失われる。従って、ナット部材313は後退し、制御ピストン302は元の位置(図2)に戻る。この結果、コントロール液圧発生部CVは開弁する。また、液圧制御弁FCV及びRCV並びに液圧比例弁FPV及びRPVは、閉弁付勢力が開弁付勢力より大きくなって閉弁する。ところが、液圧制御弁FCV及びRCV並びに液圧比例弁FPV及びRPVの各弁体324及び334は、それぞれテーパ部324a及び334aを有する逆止弁体であるため、ホイールシリンダ液圧Pwがマスタシリンダ液圧Pmに対して一定値以上の差圧を有する場合には、弁体324及び334がそれぞればね323及び333に抗して押され、開弁する。従って、液圧制動装置4RR、4FL、4FR及び4RLの液圧及び液量は、マスタシリンダ2に戻される。すなわち、別途戻り用のバイパス管路等を設けなくとも、液圧制御弁FCV及びRCV並びに液圧比例弁FPV及びRPVがその作用をする。また、補償ピストン315に吸収されていた液圧及び液量は、開弁状態のコントロール液圧発生部CVを通って、マスタシリンダ2に戻される。
【0077】一方、回生制動がオフのとき(回生制動の故障の場合を含む。)は、コントロール液圧発生部CV、液圧制御弁FCV及びRCV、並びに液圧比例弁FPV及びRPVがすべて開弁状態にある。従って、マスタシリンダ液圧Pmが上昇すると、Pw=Pmの関係で、ホイールシリンダ液圧Pwが上昇することにより、全制動力が液圧制動力によってまかなわれる。従って、フェールセーフが確保される。
【0078】図15は、図14とは異なるコントロール液圧発生パターンを示したグラフである。このようなコントロール液圧発生パターンによれば、モータ電流は、式(6)におけるΔPが、その時点における最大限出力可能な回生制限値RBmaxに対応する値に達するまで、マスタシリンダ液圧Pmの上昇に伴い、マスタシリンダ液圧Pmの上昇勾配以上の勾配で増加するように供給される(図15参照)。そして、マスタシリンダ液圧Pmが所定値PR2(約15kgf/cm)に達した時点で、モータ電流が一定値となり、ΔPも一定値となる。このようなコントロール液圧発生パターンは例えば後輪用として用いることができる。
【0079】このようにマスタシリンダ液圧Pcを発生させることにより、ΔPは最初0であり、マスタシリンダ液圧の上昇とともに徐々に増加して最終的に一定値となる。このような特性を採用すると、K2勾配の直線の切片が、マスタシリンダ液圧Pmの上昇初期の所定期間において変動する。すなわち、図12及び図13におけるK2勾配の直線はマスタシリンダ液圧の上昇とともに右方向へ連続的にスライドし、最終的にはその時点の回生制動力の最大値に相当する位置まで移動する。この結果、液圧制御弁FCV(RCV)は、最初から所定の特性で待ち構えているのではなく、ΔPの増加に追随する形で、特性自体を変動させる。従って、初期の時点では、開弁状態にあり、その後の液圧制御の状態に入るのが遅れる。また、液圧制御状態に入ると、ホイールシリンダ液圧Pwは、K2勾配直線に沿って出力されようとするため、過渡的に移動するK2勾配直線上の出力点の軌跡によってK1勾配直線に近似した特性が描かれる。従って、K1勾配を出力する液圧比例弁FPV(RPV)を省略することも可能である。
【0080】次に、上記実施形態の液圧制御弁ユニット3と類似した他の実施形態による液圧制御弁ユニットを、図18に示すような、異なる配管構成の制動装置に適用した場合について説明する。図18において、ブレーキペダル1にはマスタシリンダ2が接続されており、このマスタシリンダ2からの2系統の配管が、それぞれ一対の液圧制御弁ユニット3と接続されている。図の左側の液圧制御弁ユニット3Fは、コントロール液圧発生部CV、前輪の両輪用の液圧弁装置FVを備えている。一対の液圧弁装置FVはそれぞれ、前輪左側車輪用の液圧制動装置4FL及び前輪右側用の液圧制動装置4FRと接続されている。一方、図の右側の液圧制御弁ユニット3Rは、コントロール液圧発生部CV、後輪の両輪用の液圧弁装置RVを備えている。一対の液圧弁装置RVはそれぞれ、後輪左側車輪用の液圧制動装置4RL及び後輪右側用の液圧制動装置4RRと接続されている。すなわち、このブレーキ配管形態も、X配管である。マスタシリンダ2からの一系統の配管には、液圧センサMSが設けられている。当該車両は、前輪5FL及び5FRを駆動輪、後輪5RL及び5RRを従動輪とする前輪駆動車であり、前輪5FL及び5FRには駆動モータ6が接続されている。
【0081】ブレーキコントローラ7は、上述の液圧センサMS及びブレーキペダル2が踏まれたことを検知するブレーキスイッチ8からの信号を受け取り、各液圧制御弁ユニット3F及び3Rのコントロール液圧発生部CVに対して駆動信号を出力する。ブレーキコントローラ7と接続されたシステムコントローラ9は、インバータ10を制御し、駆動モータ6はこのインバータ10によって、任意の速度で駆動される。また、駆動モータ6は、電力の回生により回生制動力を前輪5FL及び5FRに作用させる。
【0082】液圧制御弁ユニット3F及び3Rの基本的な構成は図2に示した液圧制御弁ユニット3と同様であるが、1つの液圧制御弁ユニット3F(3R)内に一対の液圧弁装置FV(RV)を備えていることが特徴である。図10は、前輪側の液圧制御弁ユニット3Fの構造を示した断面図である。図において、一対の液圧弁FVは、それぞれ液圧制御弁FCV及び液圧比例弁FPVによって構成されている。また、液圧制御弁FCV及び液圧比例弁FPVの出力は、前輪側の左右両輪のホイールシリンダ液圧Pwとして供給される。後輪側の液圧制御弁ユニット3Rも同様に構成されており(図示略)、一対の液圧弁RVは、それぞれ液圧制御弁RCV及び液圧比例弁RPVによって構成されている。また、液圧制御弁RCV及び液圧比例弁RPVの出力は、後輪側の左右両輪のホイールシリンダ液圧Pwとして供給される。
【0083】このようなX配管構成を有する制動装置においては、一系統の配管の故障時に他系統の配管により、前輪の一方及び後輪の一方が制動され、バランスを崩すことなく、車両を停止させることができる。また、図18の配管構成は、前輪側の液圧制御弁ユニット3Fと後輪側の液圧制御弁ユニット3Rとで、互いに別々のコントロール液圧を発生させることができるという特徴を有している。
【0084】図18の構成においては、前輪用、すなわち液圧制御弁ユニット3Fのコントロール液圧発生部CVに与えるコントロール液圧発生パターンとして、図16に示す特性を与えても良い。これは、マスタシリンダ液圧Pmが所定値PF2(30kgf/cm)に達するまで、マスタシリンダ液圧Pmの上昇割合より大きい割合でコントロール液圧Pcが上昇するように、ΔPをマスタシリンダPmの上昇初期の所定期間に増加させ、その後一定値としたものである。この場合、前述の図15の場合と同様に、液圧比例弁FPVを省略することも可能となる。
【0085】次に、上記実施形態の液圧制御弁ユニット3と類似したさらに他の実施形態による液圧制御弁ユニット3FRを、図19に示すような配管構成の制動装置に適用した場合について説明する。図19において、ブレーキペダル1にはマスタシリンダ2が接続されており、このマスタシリンダ2からの2系統の配管が、液圧制御弁ユニット3FRと接続されている。この液圧制御弁ユニット3FRは、コントロール液圧発生部CVと、一対の液圧弁装置FVと、液圧センサCSとを備えている。図の左側の液圧弁装置FVは、前輪左側車輪用の液圧制動装置4FLと接続されているとともに、プロポーショニングバルブ(Pバルブ)PVを介して後輪右側用の液圧制動装置4RRと接続されている。また、図の右側の液圧弁装置FVは、前輪右側車輪用の液圧制動装置4FRと接続されているとともに、プロポーショニングバルブPVを介して後輪左側用の液圧制動装置4RLと接続されている。すなわち、このブレーキ配管形態も、X配管である。なお、マスタシリンダ2からの一系統の配管には、液圧センサMSが設けられている。当該車両は、前輪5FL及び5FRを駆動輪、後輪5RL及び5RRを従動輪とする前輪駆動車であり、前輪5FL及び5FRには駆動モータ6が接続されている。
【0086】上記液圧制御弁ユニット3FRは、図10に示す液圧制御弁ユニット3Fから、一対の液圧比例弁FPVを省略した構成(図示略)であり、液圧制御弁FCVの出力をホイールシリンダ液圧Pwとするものである。従って、図19における液圧弁装置FVとは、液圧制御弁FCVに他ならない。一方、プロポーショニングバルブPVは、入力液圧が所定値以上になると、後輪側の液圧制動装置4RL及び4RRの液圧上昇勾配を抑える作用をする。
【0087】ブレーキコントローラ7は、上述の液圧センサMS及びブレーキペダル2が踏まれたことを検知するブレーキスイッチ8からの信号を受け取り、液圧制御弁ユニット3FRのコントロール液圧発生部CVに対して駆動信号を出力する。ブレーキコントローラ7と接続されたシステムコントローラ9は、インバータ10を制御し、駆動モータ6はこのインバータ10によって、任意の速度で駆動される。また、駆動モータ6は、電力の回生により回生制動力を前輪5FL及び5FRに作用させる。
【0088】図19の構成においては、図17及び図18の構成と異なり、液圧制御弁ユニット3FRは1個しか設けられておらず、駆動輪用の液圧制動装置4FL及び4FR並びに従動輪用の液圧制動装置4RL及び4RRが共に共通の液圧弁装置FV(液圧制御弁FCV)によって制御される。また、コントロール液圧発生部CVに与えるコントロール液圧発生パターンとしては、図16に示す特性が与えられる。当該特性は前述のように、マスタシリンダ液圧Pmが所定液圧PF2(30kgf/cm)に達するまでに、ΔPを0から所定値にまで増加させるものである。
【0089】図20は、上記液圧制御弁ユニット3FRによる、マスタシリンダ液圧Pmに対するホイールシリンダ液圧Pwの関係を示すグラフである。マスタシリンダ液圧Pmが0から上昇し始めると、開弁状態の液圧制御弁FCVを通じてホイールシリンダ液圧Pwはマスタシリンダ液圧Pmと同値で上昇する。マスタシリンダ液圧Pmの上昇と共にΔPも0から増加し始め、折れ点P1に相当するマスタシリンダ液圧に達したとき、液圧制御弁FCVは液圧制御の状態となる。この折れ点P1に到達するまでに、ホイールシリンダ液圧Pwが上昇しており、これにより、液圧制動装置4FL、4FR、4RL及び4RRの無効ストロークを詰める無効圧を提供することができる。続いて、折れ点P1からP2までは、漸次増加するΔPの値に従って、勾配K2の直線が右方向にスライドする。これに伴って出力点も折れ点P2までスライドする。折れ点P2に相当するマスタシリンダ液圧Pmに達したとき、ΔPは一定値となり、これ以降は勾配K2で、マスタシリンダ液圧Pmの上昇に伴ってホイールシリンダ液圧Pwが上昇する。
【0090】図19に示す制動装置においては、前後輪に対して共通の液圧制御特性が適用されることから、前後輪のブレーキ力配分は理想配分に比べて若干損なわれる。しかし、液圧制御弁ユニット3FRが1個であるとともに、図10における液圧比例弁FPVが不要であり、構成が簡素である点で実用性に優れている。
【0091】なお、上記各実施形態においては、式(6)に示すように、マスタシリンダ液圧Pmに所定値ΔPを加えたものがコントロール液圧Pcであるとしたが、マスタシリンダ液圧Pmから所定値ΔPを減じることによってコントロール液圧Pcを得てもよい。また、上記各実施形態において、コントロール液圧発生部CVの駆動手段はモータ310等によって構成されたものであるが、他の駆動手段を採用することもできる。例えば、比例ソレノイドや、マスタシリンダに接続されるものと同様の構成としたバキュームブースタ若しくはハイドロブースタ(油圧ブースタ)を用いることができる。
【0092】次に、図3に示した補償ピストン315等を有する構成とは異なるストローク補償に関する構成について説明する。図21は、当該構成に係るストローク補償ピストンを構成するバルブ組立体(以下、単にストローク補償ピストンという。)SVの断面図である。このストローク補償ピストンSVは、図3に示した補償ピストン315、ばね316、取付蓋317及びロックナット318の代わりに用いられる独立したバルブ組立体である。図21において、ストローク補償ピストンSVは、シリンダ401の内部に補償ピストン402と、差圧ピストン403と、ポペット弁体404とを備えている。
【0093】上記補償ピストン402は軸方向に(図示の位置から右方向に)摺動可能であり、ばね座405を介してセットスプリング406により図の左方へ付勢されている。セットスプリング406の右端側は、シリンダ401に螺着された取付蓋407によって封止されており、この取付蓋407はロックナット408によって固定されている。補償ピストン402がセットスプリング406に抗して右方向に摺動し、その右端部が取付蓋407に当接したときが、フルストロークすなわちストローク補償動作のボトミング状態である。従って、取付蓋407の固定位置を変えることにより、図3に示した構成の場合と同様に、補償液量を調整することができる。
【0094】一方、差圧ピストン403も所定範囲で軸方向に摺動可能に取り付けられており、リターンスプリング409によって図の左方に付勢されている。図22は、図21における差圧ピストン403の周辺のみを取り出して拡大した断面図である。図21及び図22を参照して、リターンスプリング409の収められた液室Q8は、マスタシリンダ液圧Pmが導入される入力ポート401aと連通している。差圧ピストン403は、その内部を軸方向に貫通する通路403pを有している。この通路403pは、差圧ピストン403の右端側の、補償ピストン402の左端面に接する液室Q9と連通している。また、差圧ピストン403の左端側は、スリーブ410の凹部410aに摺動自在に挿入されている。この凹部410aの底面(図の左端面)と、これに面する差圧ピストン403の左端部403aとの間には液室Q10が形成されている。スリーブ410は、シリンダ401に螺着されたプラグ411によって固定されている。プラグ411の左端部にはコントロール液圧Pcの入力ポート411aが形成され、プラグの内部を貫通して設けられた通路411bと連通している。
【0095】上記通路411bの右端にはポペット弁体404があり、このポペット弁体404はバルブスプリング412によって右方に付勢されている。従って、図示の状態において、ポペット弁体404は、差圧ピストン403の左端部に形成された弁座403vに圧接している。すなわち、ポペット弁体404と弁座403vとによる弁は、閉弁状態となっている。差圧ピストン403の通路403p内の液圧がバルブスプリング412の付勢力を上回った場合は、ポペット弁体404が押されて弁座403vから離れ、当該弁は開弁状態となる。プラグ411と接するポペット弁体404の外周部の一部には切欠部404aがあり、ここを通った油液が、スリーブ410と差圧ピストン403との隙間を介して、液室Q10に達する。
【0096】図23は、上記のように構成されたストローク補償ピストンSVを有する電気自動車の制動装置の一実施形態を示す接続図である。当該構成は、図19に示した構成と類似したものであり、共通の部分についての説明は省略する。図において、ストローク補償ピストンSVには、マスタシリンダ2の一系統からマスタシリンダ液圧Pmと、コントロール液圧発生部CVにおいて発生させたコントロール液圧Pcとが供給される。
【0097】次に、上記のように構成されたストローク補償ピストンSVの動作について図21及び図22を参照して説明する。図22において、差圧ピストン403にかかる力は、液室Q10に面した左端部403aにかかるコントロール液圧Pc、液室Q8に面した鍔部403bにかかるマスタシリンダ液圧Pm及びリターンスプリング409のばね力Fs、並びに、液室Q9に面した右端部403cにかかる液圧Px(未知数)である。従って、上記左端部403a、鍔部403b及び右端部403cの有効受圧面積をそれぞれ、Sa、Sb及びScとすれば、ミータリング状態の差圧ピストン403にかかる力の釣り合いの関係により、以下の式が成り立つ。
【0098】
Sa・Pc=Sb・Pm+Fs+Sc・Px ...(18)
ここで、Sa、Sb及びScは互いに等しくなるように設計されている。従って、Sb=Sa、Sc=Saとすれば、上記式(18)は、 Sa・Pc=Sa(Pm+Px)+Fs ...(19)
となる。また、ばね力Fsは液圧に比べて相対的に小さいため無視することができる。従って、Sa・Pc=Sa(Pm+Px)
となり、両辺をSaで割ると、 Pc=Pm+Px、すなわち、Px=Pc−Pm ...(20)
の関係が得られる。ここで、前述の式(6)より、Pc−Pm=ΔPであるから、結局、Px=ΔPとなる。すなわち、液室Q9に生じる液圧Pxは、コントロール液圧Pcからマスタシリンダ液圧Pmを取り除いたΔPである。従って、補償ピストン402は、ΔPのみに応じて駆動され、駆動量に応じた液量及び液圧が消費される。
【0099】こうして、回生制動力に応じて変化するΔPのみにより補償ピストン402が駆動され、回生制動力を液圧制動力として発生させたならば消費されるであろう液量及び液圧が模擬的に吸収される。一方、ブレーキペダル1(図23)が戻されると、コントロール液圧Pcが低下するため、吸収された液量及び液圧によりポペット弁体404が弁座403vから離反して開弁状態となり、通路411bを通って油液が戻される。
【0100】上記のようなストローク補償ピストンSVの構成によれば、補償ピストン402の動作にマスタシリンダ液圧Pmが最終的に関与していないので、所定のΔPが発生していないとき、例えばブレーキ操作初期から液圧制動力のみで制動する場合に、補償ピストン402は実質的に作動しない。これにより、このような液圧制動のみの場合に、いわゆるブレーキペダルの踏み抜け感が生じない。また、液圧制動のみの場合と、回生制動を併用する場合とで、ペダルストロークの差が生じない。従って、ペダルストロークの差に基づくブレーキ操作の違和感がない。
【0101】
【発明の効果】以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。請求項1の電気自動車の制動装置によれば、液圧制御弁は、アクチュエータ等によって直接駆動されるものではなく、回生制動力に対応して発生したコントロール液圧を制御室に受けて制御され、所定値△Pをパラメータとした液圧制御特性に基づいて出力液圧を発生させるものである。従って、回生制動力に応じた液圧制御が行われ、回生制動力を有効に活用することができるとともに、コントロール液圧を複数の液圧制御弁に供給すれば、1つのコントロール液圧発生部によって複数の液圧制御弁を制御することができる。特に、X配管車両において、左右前輪の液圧制動装置を液圧制御する場合には、1つのコントロール液圧発生部によって各液圧制御弁を制御することができる。また、液圧制御弁は、入力室と出力室とを連通する通路を有する構成となっているので、入力液圧と出力液圧との関係によって開弁する。従って、別途パイロット室や、バイパス通路を設ける必要がなく、そのための配管等を不要として、構成を簡略化することができる。
【0102】請求項2の電気自動車の制動装置によれば、液圧制御弁は、ばねの付勢に抗する力がない場合には、常に開弁状態を維持するので、何らかの異常が発生しても、入力液圧がそのまま液圧制動装置に供給される。従って、フェイルセーフが確保される。また、開弁状態の液圧制御弁は、液圧制動装置内の液圧を逃がすバイパス通路の役目を果たすので、別途バイパス通路を設ける必要がない。
【0103】請求項3の電気自動車の制動装置によれば、マスタシリンダからの入力液圧が低下して、入出力間の圧力差が大きくなると、逆止弁体の作用により、液圧制動装置からマスタシリンダ側へ液の戻りが生じる。従って、液の戻りのために別途バイパス通路を設ける必要がない。
【0104】請求項4の電気自動車の制動装置によれば、液圧制御弁の出力液圧により、全制動力のうち回生制動力の負担分を除く、残りの所要制動力が液圧によって負担されるので、入力液圧の上昇後も回生制動力を有効に活用することができる。
【0105】請求項5の電気自動車の制動装置によれば、回生制動力が付与されない従動輪に対して、入力液圧より高い割合での昇圧により、回生制動力を考慮して抑制された液圧制動力が、入力液圧の増加とともに回生制動力を考慮しないレベルに追いつく。従って、理想的なブレーキ力配分を容易に得ることができる。
【0106】請求項6の電気自動車の制動装置によれば、2以上の液圧制御弁が、1つのコントロール液圧発生部により制御されるので、いわゆるアクチュエータの数を低減することができる。
【0107】請求項7の電気自動車の制動装置によれば、駆動輪に関しては、液圧制御弁の出力液圧により、全制動力のうち所定の割合の制動力が液圧によって負担される。回生制動力が付与されない従動輪に対しては、入力液圧より高い割合での昇圧により、回生制動力を考慮して抑制された液圧制動力が、入力液圧の増加とともに回生制動力を考慮しないレベルに追いつく。従って、回生制動力を有効に活用することができるとともに、理想的なブレーキ力配分を容易に得ることができる。
【0108】請求項8の電気自動車の制動装置によれば、従動輪の液圧が駆動輪の液圧より早期に立ち上がるので、回生制動力が直接作用しない従動輪の液圧制動力を早期に立ち上げて、理想的なブレーキ力配分を得ることができる。
【0109】請求項9の電気自動車の制動装置によれば、出力液圧が無効圧に達するまでは、液圧比例弁による減圧が行われることなく、液圧制動装置の無効ストロークが詰められるので、液圧制動開始時のブレーキストロークの違和感を解消することができる。
【0110】請求項10の電気自動車の制動装置によれば、駆動手段と制御ピストンとによって、所要のコントロール液圧が発生するので、液圧ポンプが搭載されていない車両においても、コントロール液圧を発生させることができる。
【0111】請求項11の電気自動車の制動装置によれば、回生制動力に応じた入力を供給することによって、モータの駆動力は変化するので、駆動力の制御が容易である。
【0112】請求項12の電気自動車の制動装置によれば、駆動手段の故障等が発生した場合、制御ピストン戻し機構により、駆動手段の摺動抵抗に打ち勝って制御ピストンが戻されるので、コントロール液圧の残圧が生じることを防止することができる。
【0113】請求項13の電気自動車の制動装置によれば、液圧センサによって、コントロール液圧が直接検出されるので、コントロール液圧の検出精度を高めることができる。また、コントロール液圧の異常検出により駆動手段の作動を停止させることができるため、フェールセーフを確保することができる。
【0114】請求項14の電気自動車の制動装置によれば、液圧制御弁は、コントロール液圧を受けて早期に液圧制御を行うので、制御遅れを防止して、迅速な制御を行うことができる。
【0115】請求項15の電気自動車の制動装置によれば、液圧制御弁は、コントロール液圧を受けて徐々に閉弁状態となり、その間に液圧制動装置の無効ストロークが詰められるので、液圧制動開始時にブレーキストロークの違和感が生じるのを防止することができる。この結果、液圧制御弁に、いわゆる液圧比例弁の機能を持たせ、液圧比例弁を省略することができる。
【0116】請求項16の電気自動車の制動装置によれば、液圧制御弁は、アクチュエータ等によって直接駆動されるものではなく、回生制動力に対応して発生したコントロール液圧を制御室に受けて制御され、所定値△Pをパラメータとした液圧制御特性に基づいて出力液圧を制御するものである。従って、回生制動力に応じた液圧制御が行われ、回生制動力を有効に活用することができるとともに、コントロール液圧を複数の液圧制御弁に供給すれば、1つのコントロール液圧発生部によって複数の液圧制御弁を制御することができる。特に、X配管車両において、左右前輪の液圧制動装置を液圧制御する場合には、1つのコントロール液圧発生部によって各液圧制御弁を制御することができる。また、液圧制御弁は、入力室と出力室とを連通する通路を有する構成となっているので、入力液圧と出力液圧との関係によって開弁する。従って、別途パイロット室や、バイパス通路を設ける必要がなく、そのための配管等を不要として、構成を簡略化することができる。また、ストローク補償ピストンは、回生制動時のブレーキストロークを消費するので、回生制動時のブレーキストロークの違和感を解消することができる。回生制動力が失効する(故障を含む)に伴って前記駆動力が低減されると、制御ピストンが他側のコントロール液圧(Pm+ΔP)により戻される。制御ピストンが戻されると、ストローク補償ピストンもこれに追従して、制御ピストン側の液量がマスタシリンダ側に戻され、この液量が液圧制動装置に供給される。従って、回生制動から液圧制動への移行時においてもブレーキストロークの違和感を解消することができる。
【0117】請求項17の電気自動車の制動装置によれば、回生制動力が最大の場合にストローク補償ピストンがフルストロークとなって、ボトミング圧に達するので、任意の回生制動力に対して、相応のストロークで液量を消費することができる。
【0118】請求項18の電気自動車の制動装置によれば、液量調節機構により任意の液量を設定することが可能になるので、液圧制動装置の種類や数量に応じて補償液量を適正に調節することができる。
【0119】請求項19の電気自動車の制動装置によれば、液圧制動装置の数や液量消費特性に応じた補償液量で、適切な補償がなされるので、ブレーキストロークの違和感を解消することができる。
【0120】請求項20の電気自動車の制動装置によれば、補償ピストンはマスタシリンダ液圧Pmの影響を直接受けることなく、ΔPのみによって作動するので、回生制動力が使用されない場合に補償ピストンが動作することによる不要なストローク補償動作が防止される。従って、液圧制動のみの場合と、回生制動を併用する場合とで、ペダルストロークの差が生じず、ペダルストロークの差に基づくブレーキ操作の違和感がない。
【0121】請求項21の電気自動車の制動装置によれば、回生制動力に応じた入力を供給することによって、モータの駆動力を容易に、かつ、自在に変化させることができる。
【0122】請求項22の電気自動車の制動装置によれば、貫通路を通って所定の液量が制御ピストンの他方側に供給されるので、制御ピストンの他方側の液量を確保するための配管やポートを省略することができる。
【出願人】 【識別番号】000004019
【氏名又は名称】株式会社ナブコ
【出願日】 平成11年1月22日(1999.1.22)
【代理人】 【識別番号】100092705
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆文
【公開番号】 特開2000−59907(P2000−59907A)
【公開日】 平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願番号】 特願平11−14374