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【発明の名称】 電気ブレーキの制御方法及びその装置
【発明者】 【氏名】小笠 正道

【氏名】渡邉 朝紀

【要約】 【課題】摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両を停止し、かつその停止状態を維持することができる電気ブレーキの制御装置を提供する。

【解決手段】本発明の電気ブレーキの制御装置は、同装置10の各構成部分を制御する制御部11と、車両の走行データなどを記憶するメモリ12と、トルク発生装置16にトルク分電流を発生するトルク分電流発生回路13と、駆動部17に接続され車両の走行速度を測定する速度測定部15と、速度測定部15で測定した速度変化に基づいて車両の加速度を測定するディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14と、未知量を算出する算出部19を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御方法であって;
(a)勾配区間における第1の制動トルクF0での車両の減速度αu0を測定し、(b)勾配区間における第2の制動トルクF1 での停止直前の車両の減速度αu1を測定し、(c)第1の制動トルクF0での減速度αu0と第2の制動トルクF1での減速度αu1とから、車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、(d)第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1と、車両重量Mから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=M・g・sinθを算出し、(e)算出した停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより、勾配のある線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。
【請求項2】 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御方法であって;
(a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度を測定し、(b)勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度を測定し、(c)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、(d)算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。
【請求項3】 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御方法であって;
(a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、第2の制動トルクでの車両の減速度を測定し、(b)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、(c)算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする電気ブレーキの制御方法。
【請求項4】 前記第1の制動トルクは、電気ブレーキの第1のノッチで発生し、前記第2の制動トルクは、電気ブレーキの第2のノッチでを発生する、ことを特徴とする請求項1乃至3記載の電気ブレーキの制御方法。
【請求項5】 前記第1の制動トルクは、前記第2の制動トルクよりも大であることを特徴とする請求項1乃至4記載の電気ブレーキの制御方法。
【請求項6】 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキを制御する電気ブレーキの制御装置において;電気ブレーキから制動トルクFが車軸に与えられたときに、該制動トルクFでの車両の減速度αを測定する減速度測定手段と、前記制動トルクFと前記減速度αとを関連付けて記憶する記憶手段と、前記車両の車両重量Mを算出する車両重量算出手段と、前記車両が停止する勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFuを算出する停止トルク算出手段と、前記停止トルク算出手段で算出した前記停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを前記電気ブレーキに与える手段と、を備え、前記減速度測定手段は、前記勾配区間における第1の制動トルクF0での前記車両の減速度αu0と、該勾配区間における第2の制動トルクF1での停止直前の前記車両の減速度αu1とを測定し、前記記憶手段は、前記第1の制動トルクF0での前記減速度αu0と、前記第2の制動トルクF1での前記減速度αu1とを記憶し、前記車両重量算出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1の制動トルクF0での前記減速度αu0と、前記第2の制動トルクF1での前記減速度αu1とから、前記車両の車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、前記停止トルク算出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1の制動トルクF0での前記減速度αu0と、前記第2の制動トルクF1での前記減速度αu1と、前記車両重量算出手段で算出された前記車両重量Mから、前記勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う前記停止トルクFu=M・g・sinθを算出する、ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。
【請求項7】 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキを制御する電気ブレーキの制御装置において;電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、前記車両の車両重量を算出する車両重量算出手段と、前記車両が停止する勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する停止トルク算出手段と、前記停止トルク算出手段で算出した前記停止トルクを生じさせるための電気入力を前記電気ブレーキに与える手段と、を備え、前記減速度測定手段は、前記勾配区間における第1の制動トルクでの前記車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の前記車両の減速度とを測定し、前記車両重量算出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1の制動トルクでの前記減速度と、前記第2の制動トルクでの前記減速度とから、前記車両の車両重量を算出し、前記停止トルク算出手段は、前記記憶手段に記憶されている前記第1の制動トルクでの前記減速度と、前記第2の制動トルクでの前記減速度と、前記車両重量算出手段で算出された前記車両重量から、前記勾配と前記停止トルクを算出する、ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。
【請求項8】 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキを制御する電気ブレーキの制御装置であって;電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、前記車両の車両重量と、前記車両が停止する勾配区間の勾配と、該勾配に釣り合う停止トルクとを算出する算出手段と、算出した前記停止トルクを生じさせるための電気入力を前記電気ブレーキに与える手段と、を備えることを特徴とする電気ブレーキの制御装置。
【請求項9】 前記減速度測定手段は、前記勾配区間における第1の制動トルクでの前記車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の前記車両の減速度とを測定し、前記算出手段は、前記第1の制動トルクでの前記減速度と、前記第2の制動トルクでの前記減速度とから、前記車両重量と、前記勾配と、前記停止トルクとを算出する、ことを特徴とする電気ブレーキの制御装置。
【請求項10】 前記第1の制動トルクは、前記電気ブレーキの第1のノッチで発生し、前記第2の制動トルクは、前記電気ブレーキの第2のノッチで発生する、ことを特徴とする請求項6乃至9記載の電気ブレーキの制御装置。
【請求項11】 前記第1の制動トルクは、前記第2の制動トルクよりも大であることを特徴とする請求項6乃至10記載の電気ブレーキの制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、直流モータ等の電気ブレーキを用いて車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御方法及びその装置に関する。特には、摩擦ブレーキを使用することなく電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両を減速及び停止させることのできる電気ブレーキの制御方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、鉄道車両用のブレーキとして、電気ブレーキ、摩擦ブレーキ、流体ブレーキなどが用いられている。このうち電気ブレーキの代表的なものは、駆動電動機を発電機として電流を発生して車軸に制動トルクを与え車両を減速及び停止させるものである。また、摩擦ブレーキは、圧縮空気や油圧などによって機械的に制輪子を車軸やブレーキディスクなどに押し付けて摩擦力を発生させ車両を減速及び停止させるものである。また、流体ブレーキは、油などの流体を回転翼などで攪拌し、その際の抵抗力をブレーキ力として車両を減速及び停止させるものである。
【0003】ここで、走行中の電気車などの鉄道車両を停止させる場合、まず電気ブレーキによって徐々に減速し、最後に摩擦ブレーキによって物理的に車軸などを固定して停止させている。特に、車両の停止場所が勾配のある線路上の場合には、最終的に摩擦ブレーキを使用して確実に車両の停止及び停止状態の保持を行っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】つまり、従来の車両の停止においては、電気ブレーキのみによって勾配のある線路上で車両を停止し、その停止状態を維持することができなかった。そのため、摩擦ブレーキを併用することとなり、摩擦ブレーキの摩耗による摩耗粉塵や摩擦ブレーキの摩擦熱による各部位の熱疲労などが生じていた。また、制輪子やブレーキディスク等の摩耗部品の取り替え作業も必要であった。
【0005】本発明はこのような背景の中でなされたものであって、勾配区間であっても摩擦ブレーキを使用せずに車両を減速及び停止し、その停止状態を維持することができる電気ブレーキの制御方法及びその装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、 本発明の第1の態様の電気ブレーキの制御方法は、 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキの制御方法であって; (a)勾配区間における第1の制動トルクF0での車両の減速度αu0を測定し、 (b)勾配区間における第2の制動トルクF1での停止直前の車両の減速度αu1を測定し、 (c)第1の制動トルクF0での減速度αu0と第2の制動トルクF1での減速度αu1とから、車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、 (d)第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1と、車両重量Mから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFu=M・g・sinθを算出し、 (e)算出した停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクFuを発生することにより、勾配のある線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする。
【0007】また、上記課題を解決するため、 本発明の第2の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度を測定し、 (b)勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度を測定し、 (c)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (d)算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする。
【0008】また、上記課題を解決するため、 本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御方法は、 (a)勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、第2の制動トルクでの車両の減速度を測定し、 (b)第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とから、勾配区間の勾配に釣り合う停止トルクを算出し、 (c)算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を電気ブレーキに与えて車軸に停止トルクを発生することにより、勾配のある線路上で車両を停止させる、ことを特徴とする。
【0009】上述の本発明の第1乃至第3の態様の電気ブレーキの制御方法においては、第1の制動トルクは、電気ブレーキの第1のノッチで発生し、第2の制動トルクは、電気ブレーキの第2のノッチでを発生するようにするとよい。また、第1の制動トルクは、第2の制動トルクよりも大きくするとよい。
【0010】また、上記課題を解決するため、 本発明の第1の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気入力を受けて該入力に対応した制動トルクを車軸に与え車両を減速及び停止させる電気ブレーキを制御する電気ブレーキの制御装置において;電気ブレーキから制動トルクFが車軸に与えられたときに、該制動トルクFでの車両の減速度αを測定する減速度測定手段と、 制動トルクFと減速度αとを関連付けて記憶する記憶手段と、 車両の車両重量Mを算出する車両重量算出手段と、 車両が停止する勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う停止トルクFuを算出する停止トルク算出手段と、 停止トルク算出手段で算出した停止トルクFuを生じさせるための電気入力Iqsを電気ブレーキに与える手段と、 を備え、 減速度測定手段は、勾配区間における第1の制動トルクF0での車両の減速度αu0と、該勾配区間における第2の制動トルクF1での停止直前の車両の減速度αu1とを測定し、 記憶手段は、第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1とを記憶し、 車両重量算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1とから、車両の車両重量M=(F0−F1)/(αu0−αu1)を算出し、 停止トルク算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクF0での減速度αu0と、第2の制動トルクF1での減速度αu1と、車両重量算出手段で算出された車両重量Mから、勾配区間の勾配θと該勾配θに釣り合う前記停止トルクFu=M・g・sinθを算出する、ことを特徴とする。
【0011】また、上記課題を解決するため、 本発明の第2の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、 車両の車両重量を算出する車両重量算出手段と、 車両が停止する勾配区間の勾配と該勾配に釣り合う停止トルクを算出する停止トルク算出手段と、 停止トルク算出手段で算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を前記電気ブレーキに与える手段と、を備え、 減速度測定手段は、勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度とを測定し、 車両重量算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクでの減速度と、第2の制動トルクでの減速度とから、車両の車両重量を算出し、 停止トルク算出手段は、記憶手段に記憶されている第1の制動トルクでの減速度と、第2の制動トルクでの減速度と、車両重量算出手段で算出された車両重量から、勾配と停止トルクを算出する、ことを特徴とする。
【0012】また、上記課題を解決するため、 本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御装置は、 電気ブレーキから制動トルクが車軸に与えられたときに、該制動トルクでの車両の減速度を測定する減速度測定手段と、 車両の車両重量と、車両が停止する勾配区間の勾配と、該勾配に釣り合う停止トルクとを算出する算出手段と、 算出した停止トルクを生じさせるための電気入力を電気ブレーキに与える手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】上述の本発明の第3の態様の電気ブレーキの制御装置においては、減速度測定手段で、勾配区間における第1の制動トルクでの車両の減速度と、該勾配区間における第2の制動トルクでの停止直前の車両の減速度とを測定し、算出手段で、第1の制動トルクでの減速度と、第2の制動トルクでの減速度とから、車両重量と、勾配と、停止トルクとを算出するようにすることができる。
【0014】また、上述の本発明の電気ブレーキの制御装置においては、第1の制動トルクは、電気ブレーキの第1のノッチで発生し、第2の制動トルクは、電気ブレーキの第2のノッチで発生するようにしてもよい。さらに、第1の制動トルクは、第2の制動トルクよりも大きくなるようにするとよい。
【0015】上述の本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置においては、第1の制動トルクでの減速度と第2の制動トルクでの減速度とを測定し、これらから、車両重量と、車両の停止する線路の勾配と、その勾配に釣り合う停止トルクとを算出して、その停止トルクに応じた電気入力を電気ブレーキに与えるため、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両を停止し、かつその停止状態を維持することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下本発明の電気ブレーキの制御方法及び電気ブレーキの制御装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、鉄道車両(以下、単に「車両」とも言う)の車両重量、及び該車両が停止する場所での線路の勾配(勾配角度θ)が未知の状況である。
【0017】図1は、本発明の電気ブレーキの制御装置(以下、単に「制御装置」ともいう)を用いた電気ブレーキ・システムの実施の形態の一例を示すブロック図である。この電気ブレーキ・システムは、制御装置10と制動トルク発生装置16を備え、制動トルク発生装置16は、車両の駆動部17に接続されている。なお、通常は、制動トルク発生装置16は、駆動モータを発電機としている。
【0018】ここで、制御装置10は、同装置10の各構成部分を制御する制御部11と、車両の走行データなどを記憶するメモリ12と、トルク発生装置16にトルク分電流を発生するトルク分電流発生回路13と、駆動部17に接続され車両の走行速度を測定する速度測定部15と、速度測定部15で測定した速度変化に基づいて車両の加速度を測定するディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14と、未知量を算出する算出部19とを備えている。
【0019】図2は、本発明による制動トルクに対する車両の減速度及びトルク分電流の基本的な求め方を示す概略図である。なお、図2においては、線路の勾配が0である平坦区間での車両の減速度(加速度)の求め方を説明する。ここで、線路の平坦区間としては、例えば、車両の製造工場等に勾配が0で敷設された線路の区間を使用する。以下で説明するようにして、この平坦区間で車両重量がノミナル重量(乗客等が乗車していない車両重量)M0における複数の制動トルクに対する車両1の減速度及びトルク分電流を求めておくようにする。ここで、車両1のノミナル重量M0は、予めメモリ12(図1)に記憶されている。
【0020】図2において、この車両1は、最初一定速度V0で走行している。この状態から、所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ5ノッチで、平坦区間で速度0になるまで減速する。図1において、まず、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18からブレーキ5ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、ブレーキ5ノッチの信号に応じて、トルク分電流発生回路13を制御する。トルク分電流発生回路13は、制御部11からの制御信号に応じてトルク分電流Iq0を制動トルク発生装置16に対して発生する。制動トルク発生装置16は、このトルク分電流Iq0に応じて、駆動部17を駆動する。車両1の走行速度は、駆動部17に接続されている速度測定部15によって測定され、制御部11に通知している。また、このときの減速度α0は、加速度測定部14で測定して求めることができる。以下の数式1は、制動トルクF0と、減速度α0と、トルク分電流Iq0との関係を示す。
【0021】数式1M0・α0=F0=k・φ・Iq0ここで、kは比例定数、φは磁束、M0は車両のノミナル重量を示す。この数式1によって、算出部19は、減速度α0、トルク分電流Iq0から、ブレーキ5ノッチに対応する制動トルクF0を求めることができる。
【0022】ここで、トルク分電流発生回路13で発生するトルク分電流Iqは、車両1を進行方向(図2においては右方向)に進めるように発生する場合を正の値とするので、図2のように車両1を減速する場合に発生するトルク電流Iq0は、負の値となる。したがって、加速度測定部14で求められる減速度α0も負の値となる(数式1参照)。
【0023】図3は、平坦区間及びノミナル重量での車両のトルク分電流Iqと車両速度Vtを示す図である。この図においては、ブレーキ入力部18(図1参照)からの車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、図1に示した電気ブレーキ・システムによる平坦区間における車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下になった場合、徐々にトルク分電流Iqを0に近づけていくようにブレーキ入力部18を操作している。このようにして、平坦区間では、車両1の停止動作開始から所定の時間t1経過後に車両1が停止する。
【0024】上述のようにして求められた、ブレーキ5ノッチに対応する制動トルクF0、減速度α0、及びトルク分電流Iq0は、車両1の制御装置10(図1)に設けられているメモリ12(図1)に記憶される。
【0025】次に、上述と同様にして、一定速度V0で走行している車両1を所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ4ノッチで平坦区間で速度0になるまで減速する。図1において、まず、車両運転席に設けられているブレーキ入力部18からブレーキ4ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、ブレーキ4ノッチの信号に応じて、トルク分電流発生回路13を制御する。トルク分電流発生回路13は、制御部11からの制御信号に応じてトルク分電流Iq1を制動トルク発生装置16に対して発生する。制動トルク発生装置16は、このトルク分電流Iq1に応じて、駆動部17を駆動する。車両1の走行速度は、駆動部17に接続されている速度測定部15によって測定され、制御部11に通知している。また、このときの減速度α1は、加速度測定部14で測定して求めることができる。また、制動トルクF1、減速度α1、及びトルク分電流Iq1は、上述の数式1の関係を満たし、制動トルクF1は、算出部19で上述と同様にして求められる。
【0026】上述のようにして求められた、ブレーキ4ノッチに対応する制動トルクF1、減速度α1、及びトルク分電流Iq1は、車両1の制御装置10(図1)に設けられているメモリ12(図1)に記憶される。また、このとき、算出部19でブレーキノッチの出力比(制動トルクの比)δ=F1/F0=Iq1/Iq0を求めておき、メモリ12(図1)に記憶しておく。
【0027】図4は、線路の勾配が0でない勾配区間で車両を停止するためのトルク分電流Iqs(停止トルク分電流)の求め方を示す概略図である。図4(a)は、上述の例で示したブレーキ5ノッチ(制動トルクF0)のときの状態を示し、図4(b)は、上述の例で示したブレーキ4ノッチ(制動トルクF1)のときの状態を示す。
【0028】また、図5は、勾配区間で車両の減速度を求める際の車両のトルク分電流と車両速度を示す図である。図5においては、車両の停止動作の開始時刻を時間軸上0として示す。また、電気ブレーキ・システム(図1)による車両の停止動作では、速度測定部15での測定速度が所定の速度V1以下、例えば、5km/h以下まで減速した場合に、徐々にトルク分電流Iqを停止トルク分電流Iqsに近づけていくようにする。
【0029】この車両1は、最初一定速度V0’で走行しているものとする。まず、この状態から、ブレーキ入力部18を操作して、所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ5ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、このブレーキ5ノッチの信号に応じてトルク分電流回路13を制御し、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間(勾配角度θ:θは未知数)での減速度αu0をディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14で測定する(図5参照)。この勾配区間で測定された減速度αu0は、メモリ12に記憶される。
【0030】次に、ブレーキ入力部18を操作して、所定のブレーキノッチ、例えば、ブレーキ4ノッチの信号を制御部11に送る。制御部11は、このブレーキ4ノッチの信号に応じてトルク分電流回路13を制御し、トルク分電流回路13からトルク分電流を制動トルク発生装置16に発生する。このとき速度測定部15で測定された速度を基に、制御部11は、勾配区間での減速度αu1をディジタル・フィルタ回路(D/F)等のフィルタ回路で構成される加速度測定部14で測定する(図5参照)。この勾配区間で測定された減速度αu1は、メモリ12に記憶される。
【0031】次に、メモリ12に記憶されているブレーキ5ノッチの制動トルクF0と減速度αu0、及びブレーキ4ノッチの制動トルクF1と減速度αu1とを使用して、算出部19は、以下の数式2により未知数である車両1の実際の車両量重Mを算出する(図4参照)。
【0032】数式2M・αu0=F0−M・g・sinθ (ブレーキ5ノッチ)
M・αu1=F1−M・g・sinθ (ブレーキ4ノッチ)
∴ M=(F0−F1)/(αu0−αu1)
ここで、θは勾配角度、gは重力加速度を示す。
【0034】上述のようにして、未知数であった車両1の実際の車両量重Mを求めることができる。この車両1の実際の車両量重Mは、メモリ12に記憶される。この数式2の結果(車両量重M)を基にして、算出部19は、勾配区間で車両1の釣り合い状態(停止状態)を維持するために必要な停止トルク分電流Iqsを算出する。この停止トルク分電流Iqsは、以下の数式によって求めることができる(図3参照)。
【0035】
数式3 0=Fu―M・g・sinθ ∴ Fu=M・g・sinθ =F0−M・αu0 =(F1・αu0−F0・αu1)/(αu0−αu1)
=k・φ・(δαu0−αu1)Iq0/(αu0−αu1)
=k・φ・Iqs ∴ Iqs=Iq0・(δαu0−αu1)/(αu0−αu1)
ここで、Fuは停止トルク、δは制動トルク比(F1/F0)、θは勾配角度、gは重力加速度、kは比例定数、φは磁束、Iq0は平坦区間でのトルク分電流、Iqsは勾配区間での停止トルク分電流を示す。
【0036】算出部19で算出された停止トルク分電流Iqsは、メモリ12に記憶される。制御部11は、この停止トルク分電流Iqsに応じた制御信号をトルク分発生回路13に送る。トルク分発生回路13は、制御部11からの制御信号に応じて、停止トルク分電流Iqs=Iq0・(δαu0−αu1)/(αu0−αu1)を生じることによって、トルク発生装置16を電気ブレーキとして作動させることができる。したがって、この勾配区間において、トルク分発生回路13から停止トルク分電流Iqs=Iq0・(δαu0−αu1)/(αu0−αu1)を発生し続けることによって、トルク発生装置16からのトルクによって車両1を勾配区間で停止し、その停止状態を維持することができる。
【0037】以上、本発明の電気ブレーキの制御装置の形態例を示たが、制御装置10に重量センサや勾配情報を得るための信号受信機を接続してもよい。この場合、線路区間などの状況に応じて重量センサや信号受信機を使用して、実際の車両重量Mや勾配θを求めることができる。この場合には、これらのセンサを使用して停止トルク分電流Iqs’を求め、この停止トルク分電流Iqs’を補正値として使用して、又は、算出部19で求めた停止トルク分電流Iqsと停止トルク分電流Iqs’との平均値でより精度よく車両を停止して、その停止状態を維持するようにすることもできる。
【0038】また、上述においては、ブレーキ入力部18から入力される所定のブレーキノッチをブレーキ5ノッチとブレーキ4ノッチで説明したが、本発明においては、異なる任意のブレーキノッチの組み合わせ、例えば、ブレーキ5ノッチとブレーキ3ノッチ、ブレーキ4ノッチとブレーキ2ノッチ等にすることができる。
【0039】
【発明の効果】以上述べた通り、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、実際の車両重量や勾配が未知数であっても、車両の停止する線路の勾配と釣り合う停止トルクを算出することができ、この停止トルクによって車両を停止するため、摩擦ブレーキを用いずに電気ブレーキのみで勾配のある線路上で車両を停止し、かつその停止状態を維持することができるようになった。
【0040】また、本発明の電気ブレーキの制御方法及びその装置によれば、車両の減速や停止状態を維持するときに摩擦ブレーキを使用しないため、摩擦ブレーキの摩耗による摩耗粉塵の発生や摩擦ブレーキの摩擦熱による各部位の熱疲労等の発生を防ぐことができ、また、制輪子やブレーキディスク等の摩耗部品の取り替え作業も必要なくなった。
【出願人】 【識別番号】000173784
【氏名又は名称】財団法人鉄道総合技術研究所
【出願日】 平成10年8月4日(1998.8.4)
【代理人】 【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
【公開番号】 特開2000−59902(P2000−59902A)
【公開日】 平成12年2月25日(2000.2.25)
【出願番号】 特願平10−231149