トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 モータ制御装置
【発明者】 【氏名】杉山 哲

【氏名】多々良 裕介

【氏名】青木 滋

【氏名】矢野 亨

【氏名】玉川 裕

【氏名】田嶋 茂

【要約】 【課題】ハイブリッド車のエンジンを始動する際に、無駄な電力が消費されることを防止することができるモータ制御装置を提供する。

【解決手段】エンジン1とエンジン1の出力を補助するDCブラシレスモータ2とを走行駆動源として具備するハイブリッド車に搭載され、モータ2の電機子に第1所定時間、所定の位置決めトルクに応じた直流電流を供給して、モータ2のロータを所定の電気角位置に移動させる位置決め処理を行った後に、モータ2を回転作動させて、エンジン1を始動する始動処理を行うモータ制御装置において、エンジン1の温度を検出する温度検出手段12を備え、前記位置決めトルクを温度検出手段12により検出されたエンジン1の温度に応じて決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジンと該エンジンの出力を補助するDCブラシレスモータとを走行駆動源として具備するハイブリッド車に搭載され、前記モータの電機子に第1所定時間、所定の位置決めトルクに応じた直流電流を供給して、前記モータのロータを所定の電気角位置に移動させる位置決め処理を行った後に、該モータを回転作動させて前記エンジンを始動する始動処理を行うモータ制御装置において、 前記エンジンの温度を検出する温度検出手段を備え、前記位置決めトルクを該温度検出手段により検出された前記エンジンの温度に応じて決定することを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】前記始動処理において前記モータを起動する際に該モータに生じさせる起動トルクを、前記温度センサにより検出された前記エンジンの温度に応じて決定する起動トルク決定手段を備え、該起動トルク決定手段により決定された起動トルクに応じた交流電流を前記モータの電機子に供給することで、前記始動処理における前記モータの起動を行うことを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】前記第1所定時間を、前記温度検出手段により検出される前記エンジンの温度に応じて決定することを特徴とする請求項1又は2記載のモータ制御装置。
【請求項4】前記モータの回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、前記始動処理を開始してから、第2所定時間が経過するまでの間に、該回転速度検出手段により検出される前記モータの回転速度が所定の起動判定速度に達しなかったときは、再度前記位置決め処理と前記始動処理とを行うことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載のモータ制御装置。
【請求項5】エンジンと該エンジンの出力を補助するDCブラシレスモータとを走行駆動源として具備するハイブリッド車に搭載され、前記モータを回転作動させて前記エンジンを始動する始動処理を行うモータ制御装置において、前記エンジンの温度を検出する温度検出手段と、前記始動処理において前記モータを起動する際に該モータに生じさせる起動トルクを、前記温度センサにより検出された前記エンジンの温度に応じて決定する起動トルク決定手段とを備え、該起動トルク決定手段により決定された目標トルクに応じた交流電流を前記モータの電機子に供給することで、前記始動制御における前記モータの起動を行うことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項6】前記始動処理における前記モータの回転速度を、前記エンジンの始動に必要な所定速度に保つ速度制御を行う速度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術の分野】本発明は、エンジンの出力を補助するDCブラシレスモータを備えたハイブリッド車両に搭載され、該モータによりエンジンの始動を行うモータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】エンジンと該エンジンの出力を補助するモータとを車両の走行駆動源として具備したハイブリッド車においては、例えば車両の加速走行時にはエンジンの駆動力と共に、モータの駆動力も車両の駆動輪に付与される。これにより、必要な加速性能を確保しつつ、エンジンの出力を抑制し、エンジンの燃料消費の低減や排気性能の向上を図っている。
【0003】また、前記モータは、通常、発電機としても動作可能なものとされ、例えば車両の減速走行時に、車両の運動エネルギーを駆動輪側からモータに付与することで、該モータを発電機として動作させ(回生発電動作)、その発電エネルギーをモータの電源(バッテリや電気二重層コンデンサ等)側に回収するようにしている。
【0004】この種のハイブリッド車では、前記モータとして一般にDCブラシレスモータが採用され、エンジンの始動は該モータをスタータモータとして動作させることで行われる。そして、このエンジンの始動に際しては、エンジンのフリクションに打ち勝って該エンジンの回転を円滑に開始するため、特に、前記モータの起動時(エンジンの始動開始時)には比較的大きなトルクを該モータに生じさせる必要がある。
【0005】このため、前記モータを起動させる前に、該モータの電機子に直流電流を通電して、該モータのロータを、該モータの起動時により大きなトルクを効率良く発生することができる所定の電気角位置に移動させる位置決め処理が行われる。この位置決め処理において、前記モータの電機子に通電する直流電流の大きさは、該モータのロータを移動し得るように設定された位置決めトルクに応じて決定される。そして、前記位置決め処理を行った後に、前記モータの電機子に、該モータを起動し得るように設定された起動トルクに応じた交流電流を通電することで、該モータを起動してエンジンの始動処理を開始するようにしている。
【0006】ここで、従来は、前記位置決めトルクは、エンジンのフリクションが予め想定した最大フリクションとなったときにも、前記モータのロータを前記電気角位置に移動することができるような固定値に設定されていた。しかし、エンジンのフリクションはエンジンの温度に応じて変化する。即ち、エンジンの温度が低い程エンジンのフリクションが大きくなる。そのため、エンジンの温度が高く、エンジンのフリクションが前記最大フリクションよりも小さいときに、前記位置決めトルクに応じた直流電流を前記モータの電機子に通電したときには、実際に位置決めを行うのに必要なトルクよりも大きなトルクを発生させる電力が前記モータに供給されることとなって、無駄な電力が消費されていた。
【0007】また、前記起動トルクも、エンジンのフリクションが前記最大フリクションとなったときにも、前記モータを起動することができるような固定値に設定されていた。そのため、エンジンの温度が高く、エンジンのフリクションが前記最大フリクションよりも小さいときに、前記起動トルクに応じた交流電流を前記モータの電機子に通電したときには、実際に前記モータを起動するのに必要なトルクよりも大きなトルクを発生させるための電力が前記モータに供給されることとなって、無駄な電力が消費されていた。
【0008】しかし、このようにエンジンを始動する際に無駄な電力が消費され、モータの電源の残充電量が大きく減少してしまうと、車両の走行中に前記モータによって必要な駆動力を発生させることが困難になるという不都合があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる背景に鑑み、ハイブリッド車のエンジンを始動する際に、無駄な電力が消費されることを防止することができるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の第1の実施の態様は、エンジンと該エンジンの出力を補助するDCブラシレスモータとを走行駆動源として具備するハイブリッド車に搭載され、前記モータの電機子に第1所定時間、所定の位置決めトルクに応じた直流電流を供給して、前記モータのロータを所定の電気角位置に移動させる位置決め処理を行った後に、該モータを回転作動させて、前記エンジンを始動する始動処理を行うモータ制御装置の改良に関する。
【0011】そして、前記エンジンの温度を検出する温度検出手段を備え、前記位置決めトルクを該温度検出手段により検出された前記エンジンの温度に応じて決定することを特徴とする。
【0012】DCブラシレスモータを起動する場合、起動時に該モータが発生するトルクを大きくするため、該モータを起動する前に該モータのロータを所定の電気角位置に移動させる前記位置決め処理が行われる。そして、前記位置決め処理は、前記モータの電機子に所定の位置決めトルクに応じた直流電流を供給することで行われるが、前記エンジンのフリクションは前記エンジンの温度によって変化する(エンジンの温度が低い程フリクションが大きくなる)。そのため、前記モータのロータを前記所定の電気角位置に移動させるために、前記モータに生じさせる必要があるトルクの大きさも前記エンジンの温度が低い程大きくなる。
【0013】そこで、前記モータ制御装置は、前記温度検出手段により検出された前記エンジンの温度に応じて、前記位置決めトルクを決定する。具体的には、前記エンジンの温度が低い程、前記位置決めトルクを大きな値に設定する。これにより、前記位置決め処理において、エンジンのフリクションに応じた必要最低限のトルクを前記モータに発生させることができる。そのため、前記位置決め処理において、必要以上に大きなトルクを生じさせる直流電流が前記モータの電機子に供給されて、無駄な電力が消費されることを防止することができる。
【0014】また、前記始動処理において前記モータを起動する際に該モータに生じさせる起動トルクを、前記温度センサにより検出された前記エンジンの温度に応じて決定する起動トルク決定手段を備え、該起動トルク決定手段により決定された起動トルクに応じた交流電流を前記モータの電機子に供給することで、前記始動処理における前記モータの起動を行うことを特徴とする。
【0015】上述した位置決め処理と同様に、前記始動処理において前記モータを起動させるために必要なトルクも、前記エンジンの温度に応じて変化する該エンジンのフリクションに従って変動する(エンジンの温度が低い程、モータの起動させるために必要なトルクが大きくなる)。そこで、前記起動トルク決定手段は、前記エンジンの検出温度に応じて前記起動トルクを決定する。具体的には、前記エンジンの検出温度が低いほど、前記起動トルクを大きい値に決定する。そして、前記モータ制御装置は、前記始動処理において、前記起動トルク決定手段により決定された起動トルクに応じた交流電流を前記モータの電機子に供給することで該モータの起動を行う。これにより、前記モータを起動する際に、エンジンのフリクションに応じた必要最低限のトルクを前記モータに発生させることができる。そのため、前記モータを起動する際に、必要以上に大きな起動トルクを生じさせる交流電流が前記モータの電機子に供給されて、無駄な電力が消費されることを防止することができる。
【0016】また、前記第1所定時間を、前記温度検出手段により検出される前記エンジンの温度に応じて決定することを特徴とする。
【0017】前記位置決め処理において、前記モータの電機子への直流電流の供給を開始してから、前記モータのロータが前記所定の電気角位置に移動するまでに要する時間は、前記エンジンの温度に応じて変化する該エンジンのフリクションに従って変動する。即ち、エンジンの温度が低い程、該エンジンのフリクションが大きくなるため、前記モータのロータが前記電気角位置に移動するまでの時間が長くなり易い。そこで、本発明のモータ制御装置は、前記エンジンの検出温度に応じて前記第1所定時間を決定する。具体的には、前記エンジンの検出温度が低い程、前記第1所定時間を長く設定する。これにより、前記モータをのロータを前記所定の電気角位置に移動させるときに、必要最低限の時間だけ前記モータに直流電流を供給することができる。そのため、前記モータのロータが前記所定の電気角位置に移動した後も、前記モータの電機子に直流電流が継続して供給され、無駄な電力が消費されることを防止することができる。
【0018】また、前記モータの回転速度を検出する回転速度検出手段を備え、前記始動処理を開始してから、第2所定時間が経過するまでの間に、該回転速度検出手段により検出される前記モータの回転速度が所定の起動判定速度に達しなかったときは、再度前記位置決め処理と前記始動処理とを行うことを特徴とする。
【0019】前記位置決め処理を行ったときに、エンジンのフリクションとモータのトルクとの関係や、前記モータのロータにより回転作動される部分に生じた慣性力等の影響により、該ロータが前記所定の電気角位置に正確に位置決めされない場合が生じ得る。この場合には、前記モータの起動時に該モータに発生するトルクが不足して、該モータが正常に起動できないことが考えられる。そこで、本発明においては、前記始動処理を開始してから前記第2所定時間が経過するまでの間に、前記回転速度検出手段により検出された前記モータの回転速度が前記起動判定速度に達しなかったときは、前記モータが正常に起動しなかったと判断して再度前記位置決め処理と前記始動処理とを行う。これにより、前記モータのロータを前記所定の電気角位置に、より正確に移動させた状態から、前記モータを再起動することができる。
【0020】また、前記第1の実施の態様においては、前記位置決め処理において、或いは前記位置決め処理と前記始動処理の双方において、前記モータの消費電力を低減させる処理を行ったが、場合によっては前記始動処理においてのみ前記モータの消費電力を低減させる処理を行うようにしてもよい。
【0021】本発明の第2の実施の形態は、前記始動処理においてのみ前記モータの消費電力を低減させる処理を行う場合にも対応するためのものであり、前記始動処理エンジンと該エンジンの出力を補助するDCブラシレスモータとを走行駆動源として具備するハイブリッド車に搭載され、前記モータを回転作動させて前記エンジンを始動する始動処理を行うモータ制御装置において、前記エンジンの温度を検出する温度検出手段と、前記始動処理において前記モータを起動する際に該モータに生じさせる起動トルクを、前記温度センサにより検出された前記エンジンの温度に応じて決定する起動トルク決定手段とを備え、該起動トルク決定手段により決定された目標トルクに応じた交流電流を前記モータの電機子に供給することで、前記始動制御における前記モータの起動を行うことを特徴とする。
【0022】かかる本発明によれば、前記位置決め処理において前記モータの消費電力を低減させる処理を行うか否かに拘わらず、前記始動処理において、前記起動トルク決定手段により、前記エンジンの検出温度に応じて決定された前記起動トルクに応じた交流電流を前記モータの電機子に供給することで該モータの起動を行う。これにより、前記第1の実施の態様と同様、前記モータを起動する際に、必要以上に大きなトルクを生じさせる交流電流が前記モータの電機子に供給されて、無駄な電力が消費されることを防止することができる。
【0023】また、前記第1、第2の実施の態様において、前記始動処理における前記モータの回転速度を、前記エンジンの始動に必要な所定速度に保つ速度制御を行う速度制御手段を備えたことを特徴とする。
【0024】前記始動処理においては、前記モータを起動させた後に、該モータをエンジンの始動に必要な前記所定速度以上で作動させる必要がある。そして、前記モータの回転数は、該モータで発生するトルクが一定であれば、エンジンのフリクションが小さい程速くなる。そのため、前記モータの起動後に、前記モータに発生するトルクを一定に保つトルク制御を行うと、エンジンのフリクションが小さいときには、前記モータが前記所定速度を越える速度で回転作動し、無駄な電力が消費されてしまう。そこで、前記速度制御手段は、前記始動処理における前記モータの起動後の制御を、トルク制御ではなく、該モータの回転速度を前記エンジンの始動に必要な前記所定速度に保つ速度制御により行う。これにより、前記始動処理において、前記モータの起動後に必要最低限の電力消費で前記モータを回転作動させることができ、無駄な電力が消費されることを防止することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の一例について、図1〜図3を参照して説明する。図1は本発明のモータ制御装置を備えたハイブリッド車の要部のシステム構成図、図2は図1に示したモータ制御手段に備えたデータデーブルの説明図、図3は図1に示したモータ制御手段の動作を説明するためのフローチャートである。
【0026】図1を参照して、本実施の形態のハイブリッド車は、エンジン1とモータ2とを車両の走行駆動源として具備すると共に、モータ2の電源エネルギーを貯蔵したバッテリ3と、エンジン1やモータ2の作動制御等を担うコントロールユニット4とを備える。尚、バッテリ3は、これに代えて例えば電気二重層コンデンサ等の大容量コンデンサを用いてもよい。
【0027】エンジン1は、その出力軸(図示しない)がモータ2のロータ(図示しない)と同軸に連接され、さらにそのロータを介して変速装置5の入力側に接続されている。そして、変速装置5の出力側のドライブシャフト6は車両の駆動輪 (図示しない)に連接されている。このように構成することで、エンジン1とモータ2が生成する駆動力(回転駆動力)が変速装置5を介して駆動輪に伝達され、車両の走行がなされる。
【0028】モータ2は、DCブラシレスモータであり、駆動回路7を介してバッテリ3と電気的に接続され、駆動回路7によりバッテリ3からモータ2への電力供給を制御することで、車両の走行駆動源として駆動力を生成する本来のモータとしての動作(以下、電動機動作という)の他、バッテリ3を充電する電力の発電(回生発電)を行う発電機としての動作(以下、発電機動作という)も可能とされている。
【0029】コントロールユニット4は、マイクロコンピュータを用いて構成され、エンジン1の動作制御を行うエンジン制御手段8と、モータ2の動作制御を行うモータ制御手段9と、エンジン1の始動判別を行う始動判別手段10とを備えている。尚、モータ制御手段9はモータ2の起動トルクSTrを決定する起動トルク決定手段11を有し、本発明の速度制御手段の機能を含む。
【0030】また、本実施の形態では、エンジン1の温度TW(より具体的にはエンジン1の冷却水の温度)を検出する温度センサ12 (本発明の温度検出手段に相当する)、エンジン1の回転速度SNE(本実施の形態では、モータ2の回転速度に等しい)を検出する回転速度センサ13(本発明の回転速度検出手段に相当する)、モータ2の通電電流IMを検出する電流センサ14等の各種のセンサが備えられており、これらのセンサの出力がコントロールユニット4に入力される。尚、モータ制御手段9と温度センサ12とにより、本発明のモータ制御装置が構成される。
【0031】そして、コントロールユニット4に備えられたエンジン制御手段8は、温度センサ12、回転速度センサ13、及び電流センサ14の検出データ等に基づいて、エンジン1の所要の動作状態(エンジン1の目標トルク等)を決定し、決定した動作状態に基づいて、エンジン1への燃料供給量や、吸入空気量、点火時期を制御する。この場合、燃料供給量や、吸入空気量、点火時期の制御は、それぞれ図示しない燃料噴射装置、スロットル弁のアクチュエータ、点火装置を介して行われる。
【0032】また、モータ制御手段9は、温度センサ12、回転速度センサ13、及び電流センサ14による検出データ等に基づいて、モータ2の所要の動作状態(電動機動作と発電機動作の切替、電動機動作における目標トルク、発電機動作における目標発電量等)を決定し、その決定した動作状態に基づいてモータ2の動作制御を駆動回路7を介して行う。この場合、モータ2が電動機動作を行うときはバッテリ3からモータ2に電力供給され、発電機動作を行うときには発電電力によりバッテリ3が充電される。
【0033】また、始動判別手段10は、モータ2をスタータモータとして動作させてエンジン1を始動させる際に、回転速度センサ13によるエンジン1の回転速度の検出値SNEを、所定の始動判別速度と比較することで、エンジン1が始動したか否か(より正確にはエンジン1の燃焼状態が完爆状態となったか否か)の判別を行う。尚、電流センサ14によるモータ2の通電電流の検出値IMを、回転速度センサ13によるエンジン1の回転速度の検出値SNEに応じて設定された所定の判別値と比較することで、エンジン1が始動したか否かを判別するようにしてもよい。
【0034】次に、エンジン1の始動を行う際の、モータ制御手段9の動作について説明する。使用者(車両の運転者)が図示しないスタータスイッチを操作すると、モータ制御手段9は、モータ2によりエンジン1を回転作動させてエンジン1を始動する(このとき、エンジン制御手段8により、エンジン1への燃料供給量、吸入空気量、及び点火時期の制御処理が行われる)。ここで、モータ2によりエンジン1の回転作動を開始させるためには、エンジン1のフリクションに打ち勝ってモータ2を起動できるトルクをモータ2に発生させる必要がある。
【0035】そこで、モータ制御手段9は、モータ2を起動させる前に、先ず、モータ2の電機子(図示しない)に第1所定時間PTimeの間、所定の位置決めトルクPTrに応じた直流電流を供給して、モータ2のロータを所定の電気角位置に移動させる位置決め処理を実行する。この電気角位置は、モータ2の起動時に、モータ2の電機子への交流電流の供給を開始したときに、モータ2の界磁極(図示しない)と電機子に生じる磁束により、モータ2のロータに加わるトルクを極力大きくすることができるような位置に設定される。
【0036】そして、モータ制御手段9は、前記位置決め処理により、モータ2のロータを前記所定の電気角位置に移動させた後に、該電気角位置からモータ2の電機子に所定の起動トルクSTrに応じた交流電流を供給してエンジン1の始動処理を開始することで、モータ2の起動時に、エンジン1の回転作動を開始するために十分なトルクを効率的に発生させるようにしている。
【0037】ここで、エンジン1のフリクションは常に一定なわけではなく、エンジン1の温度に応じて変化する。特に、低温時にはエンジンオイルの硬化等のため、エンジン1のフリクションが増大する。そのため、前記位置決め処理においてモータ2のロータを移動させるためにモータ2に発生させる必要があるトルク(位置決めトルク)と、前記始動処理においてモータ2を起動させるためにモータ2に発生させる必要があるトルク(起動トルク)は、エンジン1の温度が低いほど大きくなる。
【0038】また、前記位置決め処理において、モータ2の電機子に直流電流の通電が開始されてから、モータ2のロータが前記所定の電気角位置まで移動するのに要する時間も、エンジン1のフリクションの影響を受けて、エンジン1の温度が低い程長くなり易い。
【0039】そこで、モータ制御手段9は、図2(a)に示した、エンジン1の検出温度TW(エンジン1の冷却水の温度)に応じて、前記位置決めトルクPTrと前記起動トルクSTrとを必要最低限の値に決定するためのデータテーブルと、図2(b)に示した、エンジン1の検出温度TWに応じて、前記第1所定時間PTime(モータ2の電機子に直流電流を通電する時間)を必要最低限の値に決定するためのデータテーブルとを有する。図2(a)に示したデータテーブルによれば、エンジン1の検出温度TWが低い程、前記位置決めトルクPTrと前記起動トルクSTrが大きい値に設定される。また、図2(b)に示したデータテーブルによれば、エンジン1の検出温度TWが低い程、前記第1所定時間PTimeが長い時間に設定される。
【0040】以下、図3に示したフローチャートを参照して、エンジン1の始動を行う際の、モータ制御手段9の動作について説明する。図3のSTEP1〜STEP5は初期設定を行う部分であり、STEP6〜STEP9は上述した位置決め処理に対応し、STEP10〜STEP19は上述した始動処理に対応する。
【0041】モータ制御手段9は、STEP1で図2(a)に示したデータデーブルにより、温度センサ12によるエンジン1の検出温度TWに応じて、前記位置決め処理における位置決めトルクPTrを決定し、STEP2で図2(b)に示したデータテーブルにより、エンジン1の検出温度TWに応じて、前記位置決め処理における第1所定時間PTimeを決定する。ここで、図2(a)及び図2(b)に示したデータテーブルは、上述したように設定されているので、位置決めトルクPTrと第1設定時間PTimeは必要最低限の値に設定される。
【0042】そして、モータ制御手段9は、STEP3で図2(a)に示したデータテーブルにより、エンジン1の検出温度TWに応じて、前記始動処理における起動トルクSTrを決定する。ここで、図2(a)に示したデータテーブルは、上述したように設定されているので、起動トルクSTrは必要最低限の値に設定される。尚、STEP3の処理は、モータ制御手段9に備えられた起動トルク決定手段11(図1参照)を介して実行される。
【0043】そして、モータ制御手段9は、STEP4で、位置決め処理の実行時にモータ2の電機子に直流電流を通電する時間を計時するためのカウンタ変数PCNT と、モータ2の起動を確認するためのカウンタ変数SCNT とをクリアし、STEP5でモータ2が正常に起動したか否かの確認結果を保持するためのフラグOKFをリセット(OKF=0)して初期設定を終了する。
【0044】続いて、モータ制御手段9はSTEP6〜STEP9により位置決め処理を実行する。STEP6で、モータ制御手段9は、駆動回路7を介して、STEP1で算出した位置決めトルクPTrに応じた直流電流(位置決めトルクPTrをモータ2に発生させる大きさの直流電流)を、駆動回路7を介してモータ2の電機子に通電開始する。STEP7,8は、STEP2で算出した第1所定時間PTimeの経過を待つためのループであり、STEP8でカウンタ変数PCNT のカウント値が第1所定時間PTimeに達したとき、即ちSTEP6でモータ2の電機子への直流電流の通電を開始してから、第1所定時間PTimeが経過したときに、STEP8からSTEP9に進んで、モータ制御手段9はモータ2の電機子への直流電流の通電を停止して、位置決め処理を終了する。
【0045】続いて、モータ制御手段9は、STEP10〜STEP19により始動処理を実行する。モータ制御手段9は、STEP10で、STEP3で起動トルク決定手段11により決定された起動トルクSTrに応じた交流電流(モータ2に起動トルクSTrを発生させる大きさの交流電流)を、駆動回路7を介してモータ2の電機子に供給し、モータ2を起動する。
【0046】そして、モータ制御手段9は、STEP14で、エンジン1を始動するために最低限必要な回転数に設定された目標回転速度ANE(本発明の所定速度に相当する)と、回転速度センサ13により検出されたモータ2の実回転速度SNEとの偏差ΔNEを算出し、STEP12で該偏差ΔNEを解消するように、駆動回路7に指示するトルク指令をPI制御(フィードバック制御)する。
【0047】STEP13〜STEP17は、モータ2を起動してから第2所定時間JTimeが経過したときに、回転速度センサ13で検出されるモータ2の実回転速度SNEが、所定の起動判定速度KNE(≦目標回転速度ANE)に到達したか否かを判定することで、モータ2の起動を確認するための処理である。モータ制御手段9は、モータ2が正常に起動した場合に、モータ2の実回転速度SNEが起動判定速度KNEに到達するまでに要すると想定した時間である第2所定時間JTimeを予め保持する。そして、STEP14で計時用の始動カウンタSCNT をインクリメントし、STEP15でSCNT のカウント値が第2所定時間JTimeに達したとき、即ち、始動処理を開始してから第2所定時間JTimeが経過したときに、STEP16に進み、STEP16でモータ2の実回転速度SNEが起動判定速度KNEに達しているか否かを判定する。
【0048】STEP16で、モータ2の実回転速度SNEが起動判定速度KNEに達していなかったときには、モータ制御手段9は、モータ2の起動が正常に行われなかったと判断し、STEP16からSTEP30に分岐してモータ2への電流供給を停止し、STEP1に進んで再度位置決め処理と始動処理を実行する。これにより、モータ2を確実に起動するようにしている。
【0049】即ち、位置決め処理を行ったときに、モータ2のロータが前記所定の電気角位置に正確に位置決めされなかったときには、モータ2の起動時に起動トルクSTrが発生せず、モータ2の起動が正常に行われないおそれがあるが、位置決め処理を繰り返すことで、モータ2のロータを前記所定の電気角位置に正確に位置決めすることができる。そして、前記所定の電気角位置からモータ2を起動することで、モータ2を確実に起動することができる。
【0050】一方、STEP16で、実回転速度SNEが起動判定速度KNEに達していたときには、モータ制御手段9は、モータ2の起動が正常に行われたと判断して、STEP17でOKFをセット(OKF=1)する。これにより、以後はSTEP14〜STEP17のモータ2の起動を確認するための処理は行われない。
【0051】そして、モータ制御手段9は、STEP18で始動判定手段10(図1参照)によりエンジン1の始動が検知されたときは、STEP19に進み、駆動回路7を介してモータ2への電流供給を停止して始動処理を終了する。
【0052】以上説明したように、モータ制御手段9は、図2に示したデータテーブルにより、エンジン1の検出温度TWに応じて、位置決めトルクPTr,第1所定時間PTime,及び起動トルクSTrを必要最低限の値に決定して前記位置決め処理と前記始動処理におけるモータ2の起動を行う。そのため、モータ2を起動する際に、モータ2に必要以上の電流供給がなされることを防止して、無駄な電力が消費されることを防止することができる。
【0053】さらに、前記始動処理においては、モータ2がエンジン1を始動させるために必要な目標回転速度ANEで回転するように、速度制御が行なわれる。そのため、モータ2が該目標回転速度ANEを越える速度で回転し、無駄な電力が消費されることを防止することができる。
【0054】そして、このようにエンジン1を始動する際に無駄な電力が消費されることを防止することで、バッテリ3の消耗を抑制し、バッテリ3の蓄電エネルギーをモータ2による車両の走行駆動に有効に活用することができる。
【0055】尚、本実施の形態では、前記位置決め処理における位置決めトルクPTrと、前記始動処理における起動トルクSTrの双方を、エンジン1の検出温度に応じて決定し、また、前記始動処理においてモータ2の速度制御を行うことで、本発明の最良の効果を得ているが、位置決めトルクPTrと起動トルクSTrのいずれか一方のみをエンジン1の検出温度に応じて決定することによっても、本発明の効果を得ることができる。また、前記始動処理におけるモータ2の速度制御を行わない場合にも、本発明の効果を得ることができる。
【0056】また、本実施の形態では、エンジン1の冷却水の温度からエンジン1の温度を検出したが、エンジン1の油温等からエンジン1の温度を検出するようにしてもよい。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成10年7月29日(1998.7.29)
【代理人】 【識別番号】100077805
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 辰彦 (外1名)
【公開番号】 特開2000−50414(P2000−50414A)
【公開日】 平成12年2月18日(2000.2.18)
【出願番号】 特願平10−214252