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【発明の名称】 ハイブリッド車両の制御装置
【発明者】 【氏名】出口 欣高

【氏名】糸山 浩之

【氏名】北島 康彦

【要約】 【課題】エンジンとモーターの機械出力をクラッチで切り換える時のショックをなくす。

【解決手段】クラッチ解放時にモーターAによりエンジンのトルクを吸収した時の、モーターAのトルクを検出するとともにエンジンのトルクを推定し、クラッチを締結してモーターBによる走行モードからエンジンによる走行モードへ移行する時に、エンジントルク推定値とモーターAのトルク検出値との差に基づいてモーターBの目標トルクを補正する。これにより、エンジントルク推定値に誤差がある場合でも、クラッチ締結後の駆動力の段差を抑制することができる。また、エンジントルクの推定精度を落とすことが可能になり、エンジントルクを検出するためのセンサー類の数を減らしたり、検出精度の低いものを用いることができ、装置のコストを低減できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジンに機械的に連結されたモーターAと、前記エンジンにクラッチを介して機械的に連結されたモーターBとを備え、前記モーターBから変速機を介して駆動輪に動力を伝達するハイブリッド車両の制御装置において、前記クラッチの解放時に前記モーターAにより前記エンジンのトルクを吸収した時の、前記モーターAのトルクを検出するモータートルク検出手段と、前記クラッチの解放時に前記モーターAにより前記エンジンのトルクを吸収した時の、前記エンジンのトルクを推定するエンジントルク推定手段と、前記クラッチを締結して前記モーターBによる走行モードから前記エンジンによる走行モードへ移行する時に、前記エンジントルク推定値と前記モーターAのトルク検出値との差に基づいて前記モーターBの目標トルクを補正する補正手段とを備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記モータートルク検出手段による前記モーターAのトルク検出と、前記エンジントルク推定手段による前記エンジンのトルク推定を、前記クラッチの締結前に行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】請求項1または請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記補正手段は、前記クラッチの締結後に前記モーターBの補正量を徐々に0に低減することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記補正手段は、前記モーターBの補正量の低減率を車両の駆動軸に換算して設定することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、前記クラッチを締結して前記モーターBによる走行モードから前記エンジンによる走行モードへ移行する時の、前記エンジンのトルクを推定してその変化率を検出するエンジントルク変化率検出手段と、前記クラッチを締結して前記モーターBによる走行モードから前記エンジンによる走行モードへ移行する時に、前記モーターAの目標トルクの変化率が前記エンジントルク推定値の変化率と一致するように前記モーターAをトルク制御する制御手段とを備えることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関および/または電動機を車両の推進源とするハイブリッド車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術とその問題点】エンジンの機械出力および/またはモーターの機械出力を車両の推進源とするハイブリッド車両が知られている。
【0003】この種のハイブリッド車両において、エンジンの機械出力とモーターの機械出力とをクラッチで切り換える場合に、エンジンとモーターの回転数と出力によっては切り換え時にショックが発生し、乗り心地が悪くなるという問題がある。例えば、車両の加速時にモーターの駆動力からエンジンの駆動力に切り換える場合に、モーターの回転数とエンジンの回転数とに差があると、切り換え時にショックが発生する。
【0004】本発明の目的は、エンジンとモーターの機械出力をクラッチで切り換える時のショックをなくすことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】(1) 請求項1の発明は、エンジンに機械的に連結されたモーターAと、エンジンにクラッチを介して機械的に連結されたモーターBとを備え、モーターBから変速機を介して駆動輪に動力を伝達するハイブリッド車両の制御装置に適用される。そして、クラッチ解放時にモーターAによりエンジンのトルクを吸収した時の、モーターAのトルクを検出するモータートルク検出手段と、クラッチ解放時にモーターAによりエンジンのトルクを吸収した時の、エンジンのトルクを推定するエンジントルク推定手段と、クラッチを締結してモーターBによる走行モードからエンジンによる走行モードへ移行する時に、エンジントルク推定値とモーターAのトルク検出値との差に基づいてモーターBの目標トルクを補正する補正手段とを備える。
(2) 請求項2のハイブリッド車両の制御装置は、モータートルク検出手段によるモーターAのトルク検出と、エンジントルク推定手段によるエンジンのトルク推定を、クラッチの締結前に行うようにしたものである。
(3) 請求項3のハイブリッド車両の制御装置は、補正手段によって、クラッチの締結後にモーターBの補正量を徐々に0に低減するようにしたものである。
(4) 請求項4のハイブリッド車両の制御装置は、補正手段によって、モーターBの補正量の低減率を車両の駆動軸に換算して設定するようにしたものである。
(5) 請求項5のハイブリッド車両の制御装置は、クラッチを締結してモーターBによる走行モードからエンジンによる走行モードへ移行する時の、エンジンのトルクを推定してその変化率を検出するエンジントルク変化率検出手段と、クラッチを締結してモーターBによる走行モードからエンジンによる走行モードへ移行する時に、モーターAの目標トルクの変化率がエンジントルク推定値の変化率と一致するようにモーターAをトルク制御する制御手段とを備える。
【0006】
【発明の効果】(1) 請求項1の発明によれば、クラッチ解放時にモーターAによりエンジンのトルクを吸収した時の、モーターAのトルクを検出するとともにエンジンのトルクを推定し、クラッチを締結してモーターBによる走行モードからエンジンによる走行モードへ移行する時に、エンジントルク推定値とモーターAのトルク検出値との差に基づいてモーターBの目標トルクを補正するようにしたので、エンジントルク推定値に誤差がある場合でも、クラッチ締結後の駆動力の段差を抑制することができる。また、エンジントルクの推定精度を落とすことが可能になり、エンジントルクを検出するためのセンサー類の数を減らしたり、検出精度の低いものを用いることができ、装置のコストを低減できる。
(2) 請求項2の発明によれば、モーターAのトルク検出とエンジントルクの推定をクラッチ締結前に行うようにしたので、クラッチ締結直後のエンジンとモーターBの回転数が低い時に行う補正を、クラッチ締結前のエンジンとモーターBの回転数が低い時に検出したモータートルクとエンジントルクに基づいて行うことができ、エンジントルクの推定誤差を正確に検出することができる。
(3) 請求項3の発明によれば、クラッチ締結後にモーターBの補正量を徐々に0に低減するようにしたので、クラッチ締結直後のエンジンとモーターの回転数が低い時に求めた補正量により、エンジンとモーターの回転数が高くなった時に補正が行われるのを避けることができる。また、補正量を連続的に変化させることで車両の駆動力段差を抑えることができる。
(4) 請求項4の発明によれば、モーターBの補正量の低減率を車両の駆動軸に換算して設定するようにしたので、変速機の変速比によらず、車両の駆動力の段差をなくすことができる。
(5) 請求項5の発明によれば、エンジントルク推定誤差がある場合でも、クラッチ締結過程でのエンジン回転数を安定化させ、クラッチ締結時の運転性を良くできる。また、クラッチ入出力軸の回転数差も抑制できるため、締結ショックによるクラッチ摩耗も抑えられる。
【0007】
【発明の実施の形態】図1は一実施の形態の構成を示す図である。図において、太い実線は機械力の伝達経路を示し、太い破線は電力線を示す。また、細い実線は制御線を示し、二重線は油圧系統を示す。この車両のパワートレインは、モーター1、エンジン2、クラッチ3、モーター4、無段変速機5、減速装置6、差動装置7および駆動輪8から構成される。モーター1の出力軸、エンジン2の出力軸およびクラッチ3の入力軸は互いに連結されており、また、クラッチ3の出力軸、モーター4の出力軸および無段変速機5の入力軸は互いに連結されている。
【0008】クラッチ3締結時はエンジン2とモーター4が車両の推進源となり、クラッチ3解放時はモーター4のみが車両の推進源となる。エンジン2および/またはモーター4の駆動力は、無段変速機5、減速装置6および差動装置7を介して駆動輪8へ伝達される。無段変速機5には油圧装置9から圧油が供給され、ベルトのクランプと潤滑がなされる。油圧装置9のオイルポンプ(不図示)はモーター10により駆動される。
【0009】モータ1,4,10は三相同期電動機または三相誘導電動機などの交流機であり、モーター1は主としてエンジン始動と発電に用いられ、モーター4は主として車両の推進と制動に用いられる。また、モーター10は油圧装置9のオイルポンプ駆動用である。なお、モーター1,4,10には交流機に限らず直流電動機を用いることもできる。また、クラッチ3締結時に、モーター1を車両の推進と制動に用いることもでき、モーター4をエンジン始動や発電に用いることもできる。
【0010】クラッチ3はパウダークラッチであり、伝達トルクがほぼ励磁電流に比例するので伝達トルクを調節することができる。無段変速機5はベルト式やトロイダル式などの無段変速機であり、変速比を無段階に調節することができる。
【0011】モーター1,4,10はそれぞれ、インバーター11,12,13により駆動される。なお、モーター1,4,10に直流電動機を用いる場合には、インバーターの代わりにDC/DCコンバーターを用いる。インバーター11〜13は共通のDCリンク14を介してメインバッテリー15に接続されており、メインバッテリー15の直流充電電力を交流電力に変換してモーター1,4,10へ供給するとともに、モーター1,4の交流発電電力を直流電力に変換してメインバッテリー15を充電する。なお、インバーター11〜13は互いにDCリンク14を介して接続されているので、回生運転中のモーターにより発電された電力をメインバッテリー15を介さずに直接、力行運転中のモーターへ供給することができる。メインバッテリー15には、リチウム・イオン電池、ニッケル・水素電池、鉛電池などの各種電池や、電機二重層キャパシターいわゆるパワーキャパシターを用いることができる。
【0012】コントローラー16は、マイクロコンピューターとその周辺部品や各種アクチュエータなどを備え、エンジン2の回転速度や出力トルク、クラッチ3の伝達トルク、モーター1,4,10の回転速度や出力トルク、無段変速機5の変速比などを制御する。
【0013】コントローラー16には、図2に示すように、キースイッチ20、セレクトレバースイッチ21、アクセルセンサー22、ブレーキスイッチ23、車速センサー24、バッテリー温度センサー25、バッテリーSOC検出装置26、エンジン回転センサー27、スロットル開度センサー28が接続される。キースイッチ20は、車両のキーがON位置またはSTART位置に設定されると閉路する(以下、スイッチの閉路をオンまたはON、開路をオフまたはOFFと呼ぶ)。セレクトレバースイッチ21は、パーキングP、ニュートラルN、リバースRおよびドライブDを切り換えるセレクトレバー(不図示)の設定位置に応じて、P、N、R、Dのいずれかのスイッチがオンする。
【0014】アクセルセンサー22はアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)θを検出し、ブレーキスイッチ23はブレーキペダルの踏み込み状態(この時、スイッチ オン)を検出する。車速センサー24は車両の走行速度Vを検出し、バッテリー温度センサー25はメインバッテリー15の温度Tbを検出する。また、バッテリーSOC検出装置26はメインバッテリー15の充電状態(以下、SOC(State Of Charge)と呼ぶ)を検出する。さらに、エンジン回転センサー27はエンジン2の回転速度Neを検出し、スロットル開度センサー28はエンジン2のスロットルバルブ開度θthを検出する。
【0015】コントローラー16にはまた、エンジン2の燃料噴射装置30、点火装置31、バルブタイミング調節装置32などが接続される。コントローラー16は、燃料噴射装置30を制御してエンジン2への燃料の供給と停止および燃料噴射量を調節するとともに、点火装置31を制御してエンジン2の点火を行う。また、コントローラー16はバルブタイミング調節装置32を制御してエンジン2の吸気バルブの閉時期を調節する。なお、コントローラー16には低圧の補助バッテリー33から電源が供給される。
【0016】図3〜図7は、一実施の形態のクラッチ締結制御を示すフローチャートである。これらのフローチャートにより、一実施の形態の動作を説明する。車両コントローラー16は、所定の時間間隔でこのクラッチ締結制御プログラムを実行する。ステップ1において、アクセルセンサー22によりアクセル開度apsを検出し、車速センサー24により車速Vspを検出する。ステップ2で、アクセル開度apsと車速Vspに基づいて予め設定したクラッチ締結判定マップを参照し、クラッチ3を締結するか否かを判定する。
【0017】図8は、アクセル開度apsと車速Vspに基づくクラッチ締結判定マップ例を示す。この実施の形態では、アクセル開度apsを乗員の要求駆動力、すなわち、エンジン2およびモーター4の出力軸における車両の目標駆動トルクtTdとし、判定マップ上の車速Vspおよび目標駆動トルクtTdに対応する点が非締結領域から締結領域へ移動したら、クラッチ3の締結を決定する。
【0018】クラッチ締結の判定がなされたらステップ3以降のクラッチ締結処理を行い、クラッチ3を締結しない場合は処理を終了する。ステップ3〜5において、目標駆動トルクtTd(アクセル開度aps)を所定値T1、モーター4の最大トルクmaxTaおよび最大エンジントルクmaxTeと比較し、それぞれのケースに応じてクラッチ締結制御を行う。なお、モーター4の最大トルクmaxTaは、モーター4の仕様、メインバッテリー15の出力可能電力、モーター4とインバーター12の温度などから演算により求める。
【0019】ここで、クラッチ3を締結するまではモーター4の駆動力により走行しているおり、エンジン2を始動して単純にクラッチ3を締結すると、エンジン2のトルクがモーター4のトルクに加算され、車両の駆動トルクが急に変化してショックが発生する。また、クラッチ締結時にクラッチ3の入出力軸回転数が一致していない場合も、同様に車両の駆動トルクが急に変化してショックが発生する。このようなクラッチ締結時のショックを抑制するために、クラッチ締結に際しては、エンジントルクをモーター1により吸収しながら、クラッチ入力軸の回転数(エンジン回転数)をクラッチ出力軸の回転数(モーター4の回転数)と一致させ、クラッチ3を締結する。
【0020】クラッチ締結時にモーター1によりエンジントルクを吸収する場合、モーター1の最大吸収トルクmaxTbまでエンジントルクを吸収すると、モーター1のトルク余裕がなくなってエンジン2の回転数制御(クラッチ入力軸の回転数制御)を行うためのトルクを出せなくなってしまう。そこで、この実施の形態では、クラッチ締結時にモーター1の最大吸収トルクmaxTbまでエンジントルクを吸収せず、エンジン2の回転数制御に必要なトルクを残した所定値T1までエンジントルクを吸収することにする。つまり、モーター1の最大吸収トルクmaxTbにプーリー比Gbを乗じた値maxTb×Gbから、モーター1によりエンジン2の回転数制御を行うために必要なトルクを減じた値を所定値T1とする。なお、モーター1の最大吸収トルクmaxTbは、モーター1の仕様、メインバッテリー15の出力可能電力、モーター1とインバーター11の温度などから演算により求める。
【0021】ステップ3で、目標駆動トルクtTdが所定値T1以下の場合は図4に示すクラッチ締結制御を実行する。ステップ4で、目標駆動トルクtTdが所定値T1を超え、且つモーター4の最大トルクmaxTa以下の場合は、図5に示すクラッチ締結制御を実行する。ステップ5で、目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTaを超え、且つエンジン2の最大トルクmaxTe以下の場合は、図6に示すクラッチ締結制御を実行する。目標駆動トルクtTdがエンジン2の最大トルクmaxTeを超える場合は、図7に示すクラッチ締結制御を実行する。
【0022】図4は、目標駆動トルクtTdが所定値T1以下の場合のクラッチ締結制御を示すフローチャートである。また、図9は、目標駆動トルクtTdが所定値T1以下の場合の、クラッチ締結時におけるエンジン2、モーター1,4およびクラッチ3の挙動、すなわち、目標駆動トルクtTd、エンジン2のトルクTe、エンジン2のトルク推定値estTe、モーター4の目標トルクtTa、モーター1の目標トルクtTb、モーター4の回転数Na[rpm]、エンジン2の回転数Ne[rpm]、クラッチ3の励磁電流指令値tIclおよびクラッチ3の伝達トルク容量Tclの変化を示すタイムチャートである。ここで、クラッチ3の伝達トルク容量Tclは、クラッチ3で伝達可能なトルクであり、実際の伝達トルクとは異なる。
【0023】図4および図9により、tTd≦T1の場合のクラッチ締結動作を説明する。クラッチ3の締結が完了するまでは、モーター4の目標トルクtTaに目標駆動トルクtTdを設定し、モーター4をトルク制御する。図9の時刻t1でクラッチ3の締結が決定されると、図4のステップ11で、エンジン2の回転数Neがモーター4の回転数Naと等しくなるように、モーター1の回転数制御を行う。続くステップ12でエンジン2が発火運転中か否かを確認し、発火運転中でなければステップ13へ進み、発火運転中の場合はステップ15へ進む。
【0024】ステップ13において、燃料噴射装置30と点火装置31によりエンジン2へ燃料を噴射して発火運転を起動する。続くステップ14でエンジン2が完爆したかどうかを確認し、完爆したらステップ15へ進む。なお、エンジン2の発火運転起動後も、モーター1の上記回転数制御を継続する。ステップ15では、エンジン2の目標トルクtTeに目標駆動トルクtTdを設定し、エンジン2のトルク制御を行う。この時、モーター1による回転数制御が継続されているので、エンジン2の発生トルクTeはモーター1により吸収される。なお、エンジンのトルク制御は、例えば、エンジン回転数とスロットル開度に対するエンジントルクのマップから、現在のエンジン回転数と目標エンジントルクに対応する目標スロットル開度を表引き演算し、その目標スロットル開度となるようにスロットルバルブを駆動制御する。
【0025】ステップ16で、エンジン回転数Neが目標回転数(モーター4の回転数Na)に到達したか、すなわちクラッチ3の入出力軸回転数が一致したかどうかを確認する。クラッチ3の入出力軸回転数が一致したら、ステップ17でクラッチ3の励磁電流指令値tIclを最大値まで立ち上げ(図9の時刻t2)、クラッチ3を締結する。クラッチ3の励磁回路には遅れがあり、クラッチ3の実際の伝達トルク容量Tclは図9に示すように徐々に増加する。
【0026】クラッチ締結開始(図9の時刻t2)後のステップ18において、モーター1の目標トルクtTb×Gbがエンジントルク推定値の符号を反転させた値(−estTe)となるように、モーター1のトルク制御を行う。なお、エンジントルクの推定方法には、■エンジン回転数とスロットル開度に対するエンジントルクのマップから推定する方法、■エンジンの筒内圧(燃焼圧)を検出してリアルタイムにエンジントルクを推定する方法、■エンジンの吸入空気量とエンジン回転数とに基づいてエンジントルクを推定する方法などがある。
【0027】ステップ19で、クラッチ伝達トルク容量Tclが目標駆動トルクtTdに達したら(図9の時刻t3)、クラッチ3の締結が完了したと判断してステップ20へ進む。ステップ20では、モーター1の目標トルクtTb×Gbとモーター4の目標トルクtTaとが互いに相殺されるように、両者を徐々に減らして0にする。つまり、【数1】estTe+tTa+tTb×Gb=tTdの関係を満たすように、モーター1と4の目標トルクを徐々に0にする。この時のトルク低減率は、クラッチ3の共振周波数とダンピング係数を考慮して設定する。以後、エンジントルクTeが目標駆動トルクtTdとなるように、エンジン2のトルク制御を続ける。
【0028】図5は、目標駆動トルクtTdが所定値T1を超えモーター4の最大トルクmaxTa以下の場合のクラッチ締結制御を示すフローチャートである。なお、図4に示すフローチャートと同様な処理を行うステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。図10は、目標駆動トルクtTdが所定値T1を超えモーター4の最大トルクmaxTa以下の場合の、クラッチ締結時におけるエンジン2、モーター1,4およびクラッチ3の挙動を示すタイムチャートである。なお、図中の符号は図9と同様である。
【0029】図5および図10により、T1<tTd≦maxTaの場合のクラッチ締結動作説明する。ステップ15Aにおいて、目標エンジントルクtTeに所定値T1を設定してエンジン2のトルク制御を行う。この時、モーター1では回転数制御が継続されているので、エンジン2の発生トルクTe(=T1)はモーター1により吸収される。上述したように、所定値T1は、モーター1の最大吸収トルクmaxTbにプーリー比Gbを乗じた値maxTb×Gbから、モーター1によりエンジン2の回転数制御を行うために必要なトルクを減じた値であり、モーター1でエンジントルクTe(=T1)を吸収しても、モーター1にはまだエンジン2の回転数制御を行うだけのトルク余裕がある。
【0030】クラッチ締結完了後のステップ20Aにおいて、目標エンジントルクtTeに目標駆動トルクtTdを設定してエンジン2のトルク制御を行う。そして、ステップ20Bで、エンジントルクTe(実際には推定値estTe)の増加に応じてモーター1の目標トルクtTb×Gbとモーター4の目標トルクtTaを徐々に0にする。つまり、上記数式1の関係を満たすように、モーター1と4のトルクを低減する。
【0031】図6は、目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTaを超えエンジン2の最大トルクmaxTe以下の場合の、クラッチ締結制御を示すフローチャートである。また、図11は、目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTaを超えた場合の、クラッチ締結時におけるエンジン2、モーター1,4およびクラッチ3の挙動を示すタイムチャートである。なお、図中の符号は図9と同様である。
【0032】図6および図11により、maxTa<tTd≦maxTeの場合のクラッチ締結動作を説明する。目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTaを超えているので、図11の時刻t1でクラッチ締結が決定されてから、時刻t2’でクラッチ3の伝達トルク容量Tclが立ち上がるまでは、モーター4を最大トルクmaxTaでトルク制御する。
【0033】目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTaを超えている場合は、クラッチ締結決定後にモーター1の回転数制御を行わず、直ちにエンジン2を始動する。すなわち、ステップ21でエンジン2が発火運転中か否かを確認し、発火運転が行われていない場合はステップ22へ進み、モーター1の最大吸収トルクmaxTb×Gbでエンジン2を駆動して始動する。ステップ23で、エンジン2が完爆したらステップ24へ進み、モーター1の目標トルクtTb×Gbを0にする(図11の時刻t2)。
【0034】ステップ25で、目標エンジントルクtTeに目標駆動トルクtTdを設定してエンジン2のトルク制御を行う。ステップ26において、エンジン回転数Neとモーター4の回転数Naとを比較し、エンジン回転数Neがモーター回転数Naを超えたらステップ27へ進み、クラッチ3の励磁電流指令値tIclを立ち上げてクラッチ3の締結を開始する(図11の時刻t2’)。この時、モーター1によるエンジン2の回転数制御を行っていないので、エンジン回転数Neが吹け上がる。そこで、ステップ28で、エンジン回転数Neの吹き上がりを抑制してモーター回転数Naに収束させるように、クラッチ励磁電流指令値tIclを制御する。
【0035】目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTa以下の場合には、上述したように、励磁電流指令値tIclを瞬時に最大値まで立ち上げてクラッチ3を”即”締結した。しかし、目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTaを超える場合には、クラッチ伝達トルク容量Tclが目標駆動トルクtTdに達するまでは、エンジン回転数Neの吹き上がりを抑制してモーター回転数Naに収束させるように励磁電流指令値tIclを調節し、”半”締結状態とする。
【0036】ステップ28ではまた、モーター4の目標トルクtTaを次のように制御する。
【数2】Ne>Naの時、tTa=tTd−Tcl,Ne<Naの時、tTa=tTd+Tcl,Ne=Naの時、tTa=tTd−estTeこれにより、図11に示すように、クラッチ伝達トルク容量Tclの立ち上がりに応じてモーター4の目標トルクtTaが減少する。
【0037】ステップ29において、クラッチ伝達トルク容量Tclが目標駆動トルクtTdに達したら(図11の時刻t3)、クラッチ締結が完了したと判断してステップ30へ進み、クラッチ励磁電流指令tIclを最大にするとともに、モーター4の目標トルクtTaを(tTd−estTe)とする。
【0038】図7は、目標駆動トルクtTdがエンジン2の最大トルクmaxTeを超える場合のクラッチ締結制御を示すフローチャートである。なお、図6に示す処理と同様な処理を行うステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。また、この場合のクラッチ締結時のエンジン2、モーター1,4およびクラッチ3の挙動は図11に示すものと同様であり、図示を省略する。エンジン完爆後のステップ25Aにおいて、目標エンジントルクtTeにエンジントルクの最大値maxTeを設定してエンジン2のトルク制御を行う。また、クラッチ締結開始後のステップ29Aで、クラッチ伝達トルク容量Tclがエンジン最大トルクmaxTeに達したらステップ30へ進み、クラッチ励磁電流指令tIclを最大にする。また、目標駆動トルクtTdがエンジン2の最大トルクmaxTeを超えているので、上記数式2によりモーター4の目標トルクtTaを求め、モーター4をトルク制御してエンジン2のトルク不足分を補う。
【0039】上述した実施の形態では、目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTa以下の場合には、クラッチ締結開始(図9、図10の時刻t2)後に、モーター1の目標トルクtTb×Gbがエンジントルク推定値の符号を反転させた値(−estTe)となるように、モーター1のトルク制御を行うようにした(図4、図5のステップ18)。そして、クラッチ締結完了後に上記数式1の関係を満たすようにモーター1と4の目標トルクを徐々に0にした(図4のステップ20、図5のステップ20A、20B)。
【0040】図12、図13は、エンジントルクの推定値estTeに誤差がある場合のエンジン2、モーター1,4およびクラッチ3の挙動を示すタイムチャートであり、図12は目標駆動トルクtTdが所定値T1以下の場合を示し、図13は目標駆動トルクtTdが所定値T1を超え且つモーター4の最大トルクtTa以下の場合を示す。エンジントルク推定値estTeに誤差があると、クラッチ締結完了後の時刻t3に、モーター4の目標トルクtTaが誤差分だけ瞬時に増加または減少する。この結果、モーター4の実際のトルクTaが急に増加または減少し、実際の駆動トルクrTdに段差が生じてクラッチ締結時にショックが発生する。そこで、このようなエンジントルク推定値estTeの誤差に起因した駆動トルクrTdの段差をなくすために、次のようなクラッチ締結制御を行う。
【0041】図14は、目標駆動トルクtTdが所定値T1以下の場合の、エンジントルク推定値estTeの誤差を考慮したクラッチ締結制御を示すフローチャートである。なお、図4に示す処理と同様な処理を行うステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。また、図16は、目標駆動トルクtTdが所定値T1以下の場合の、クラッチ締結時におけるエンジン2、モーター1,4およびクラッチ3の挙動を示すタイムチャートである。なお、図16に示す符号は図9に示す符号と同様であり、説明を省略する。ステップ11〜15において、上述したように、クラッチ締結決定後に、エンジン2の回転数Neがモーター4の回転数Naと一致するようにモーター1を回転数制御するとともに、エンジン2の目標トルクtTeに目標駆動トルクtTdを設定してエンジン2をトルク制御する。
【0042】ステップ151において、エンジントルク推定値estTeの誤差ΔTeを推定する。今、モーター1により回転数制御を行いながらエンジン2のトルク制御を行っているので、モーター1によりエンジン2の実トルクrTeを吸収することになり、モーター1のトルクTaはエンジン2の実トルクrTeにほぼ等しい。モーター1のトルクはインバーター11から供給されるトルク分電流iaと界磁分電流ifとの積に比例するから、モーター1のトルクTaを算出することができ、それをエンジン2の実トルクrTeとする。また、上述した方法でエンジントルクを推定し、推定値estTeを求めることができる。そして、モーター1のトルクTaから求めた実エンジントルクrTeと推定値estTeとの差をエンジントルクの推定誤差ΔTeとする。
【0043】ステップ16〜18において、エンジン回転数Neがモーター4の回転数Naに略一致したらクラッチ3を締結し、クラッチ3の締結制御中にモーター1の目標トルクtTb×Gbの変化率が−estTeの変化率と一致するようにモーター1をトルク制御する。
【0044】ステップ19で、クラッチ伝達トルクTclが目標駆動トルクtTdを超えたらクラッチ3の締結が完了したと判断し、ステップ201へ進む。ステップ201では、先に求めたエンジントルクの推定誤差ΔTeに基づいて次式によりモーター4の目標トルクtTaを求めるとともに、モーター1の目標トルクtTb×Gbを徐々に0にし、モーター1,4をトルク制御する。
【数3】tTa=tTd−(estTe+tTb×Gb)+ΔTeこれにより、図16に示すように、時刻t3のクラッチ締結完了時の実駆動トルクrTdの段差が解消される。
【0045】この時、推定誤差ΔTeも徐々に0にする。エンジントルクの推定誤差ΔTeはエンジン回転数に応じて変化するため、クラッチ締結時の低い回転数の時に求めた推定誤差ΔTeは、回転数が高い時には適用できない。したがって、推定誤差ΔTeを用いてクラッチ締結完了時点(時刻t3)のモーター4の目標トルクtTaを補正した後は、推定誤差ΔTeを徐々に0にする。その結果、図16に示すように、モーター4の目標トルクtTaは、クラッチ締結完了後いったん減少し、最終的にはエンジントルク推定誤差のレベルに収束する。
【0046】図15は、目標駆動トルクtTdが所定値T1を超え且つモーター4の最大トルクmaxTa以下の場合の、エンジントルク推定値estTeの誤差を考慮したクラッチ締結制御を示すフローチャートである。なお、図5に示す処理と同様な処理を行うステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。また、図17は、目標駆動トルクtTdが所定値T1を超え且つモーター4の最大トルクmaxTa以下の場合の、クラッチ締結時におけるエンジン2、モーター1,4およびクラッチ3の挙動を示すタイムチャートである。なお、図17に示す符号は図9に示す符号と同様であり、説明を省略する。ステップ11〜15Aにおいて、上述したように、クラッチ締結決定後に、エンジン2の回転数Neがモーター4の回転数Naと一致するようにモーター1を回転数制御するとともに、エンジン2の目標トルクtTeに所定値T1を設定してエンジン2をトルク制御する。
【0047】ステップ151において、上述したようにエンジントルク推定値estTeの誤差ΔTeを推定する。ステップ16〜20Aにおいて、エンジン回転数Neがモーター4の回転数Naに略一致したらクラッチ3を締結し、クラッチ3の締結制御中にモーター1の目標トルクtTb×Gbの変化率が−estTeの変化率と一致するようにモーター1をトルク制御する。そして、クラッチ3の締結が完了したら、目標エンジントルクtTeに目標駆動トルクtTdを設定してエンジン2をトルク制御する。
【0048】ステップ201では、先に求めたエンジントルクの推定誤差ΔTeに基づいて上記数式3によりモーター4の目標トルクtTaを求めるとともに、モーター1の目標トルクtTb×Gbを徐々に0にし、モーター1,4をトルク制御する。この時、推定誤差ΔTeも徐々に0にする。これにより、図17に示すように、時刻t3のクラッチ締結完了時の実駆動トルクrTdの段差が解消される。また、モーター4の目標トルクtTaは、クラッチ締結完了後に減少し、最終的にはエンジントルク推定誤差のレベルに収束する。
【0049】なお、クラッチ締結完了後にエンジントルク推定誤差ΔTeを0にする時に、その変化率に対して、車両の駆動軸における駆動トルクの変化率に換算して変化が急激になり過ぎないように制限を設けるようにしてもよい。これにより、変速機の変速比によらず、車両に発生するG段差を抑制することができる。
【0050】また、目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTaを超える場合には、上述したようにクラッチを”即”締結せずに、いったん”半”締結状態にする。このような場合には、モーター1でエンジントルクの推定誤差を精度よく学習することはできないので、目標駆動トルクtTdがモーター4の最大トルクmaxTaを超える場合にはエンジントルクの推定値誤差の検出と、その補正を行わない。
【0051】以上の一実施の形態の構成において、モーター1がモーターAを、モーター4がモーターBを、エンジン2がエンジンを、クラッチ3がクラッチを、無段変速機5が変速機を、コントローラー16がモータートルク検出手段、エンジントルク推定手段および補正手段をそれぞれ構成する。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成10年7月3日(1998.7.3)
【代理人】 【識別番号】100084412
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 冬紀
【公開番号】 特開2000−23312(P2000−23312A)
【公開日】 平成12年1月21日(2000.1.21)
【出願番号】 特願平10−189395