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【発明の名称】 筆記具
【発明者】 【氏名】外山 松平

【要約】 【課題】誤って筆記具を落下した際、インキがペン体の周りから外部へ噴出することやインキ吸蔵体の中綿がずれるズッコケ現象を確実に防止すると共に、部品点数及び組立て工数を軽減して安価な筆記具を提供する。

【解決手段】軸筒3内のインキ吸蔵体4に含浸されたインキをペン体1に供給する筆記具Aに於いて、ペン体取付部11,11’内に、インキ吸蔵体4から吐出した過剰インキを毛細管現象により貯溜するインキ貯溜部12,12’を構成し、落下衝撃等でインキ吸蔵体4のペン体1側から多量に吐出したインキが、毛細管現象によりインキ貯溜部12,12’に一時的に貯溜され、筆記によりインキ貯溜部12,12’から徐々にペン体1に流入されてゆくため、ペン体1の周りからインキが外部に噴出するのを防止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキをペン体に供給する筆記具に於いて、ペン体取付部内に、インキ吸蔵体から吐出した過剰インキを毛細管現象により貯溜するインキ貯溜部を構成したことを特徴とする筆記具。
【請求項2】 前記インキ貯溜部が、軸方向に延びる複数本のインキ溜め縦溝で構成されていることを特徴とする請求項1記載の筆記具。
【請求項3】前記インキ吸蔵体の端部が、前記インキ貯溜部の端面に当接した状態で軸筒内に保持されていることを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インキを含浸したインキ吸蔵体を軸筒内に装填し、該インキ吸蔵体からペン体にインキが供給されるサインペン等の筆記具の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、サインペンのような筆記具は、筒状の被覆体に詰込まれた中綿にインキを含浸して構成したインキ吸蔵体が軸筒内に装填され、このインキ吸蔵体の先端部に先口内に保持されるフェルト状のペン体の後端部を差し込んで接続させ、インキ吸蔵体からペン体にインキを供給し、先口より突出したペン体のペン先からインキを滲出するように構成されている。ところで、上記構成の筆記具は、誤ってペン先側を下方にして落下したときに、落下時の衝撃により多量のインキがインキ吸蔵体からペン体側に吐出し、ペン体の周りからインキが外部に噴出したり、インキ吸蔵体の中綿がペン体側にずれるズッコケ現象が生じる。そこで、その改良としてインキ吸蔵体のペン先側にリング状の緩衝材を設け、この緩衝材により落下時の衝撃を吸収してインキの噴出並びにズッコケ現象を防止しようとしたものが提案されている(特開平8−39985号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来の筆記具は、リング状の緩衝材を内装しなければならないため、部品点数の増加を招き、ひいては緩衝材の加工費や材料費等がかかるばかりか、組立てが面倒で工数が増加する等のコスト高になる要因が多々ある。また、落下時の衝撃により、インキ吸蔵体の端部から緩衝材の中心孔とペン体との隙間に吐出したインキがペン体の周りから外部へ噴出したり、インキ吸蔵体の中綿がずれて前記中心孔とペン体との隙間に入り込んだりすることが懸念される。
【0004】本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、誤って筆記具を落下した際、インキがペン体の周りから外部へ噴出することやインキ吸蔵体の中綿がずれるズッコケ現象を確実に防止すると共に、部品点数及び組立て工数を軽減して安価な筆記具を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明の技術的手段として、請求項1は、軸筒内のインキ吸蔵体に含浸されたインキをペン体に供給する筆記具に於いて、ペン体取付部内に、インキ吸蔵体から吐出した過剰インキを毛細管現象により貯溜するインキ貯溜部を構成したことを要旨とする。尚、インキ貯溜部とは、インキ吸蔵体から吐出した過剰インキを毛細管現象により貯溜可能に形成したもののすべてを示し、具体的には、請求項2に記載したように、軸方向に延びる複数本のインキ溜め縦溝で構成されていることが好ましい。また、請求項3は、前記インキ吸蔵体の端部が、前記インキ貯溜部の端面に当接した状態で軸筒内に保持されていることを要旨とする。
【0006】上記技術的手段によれば本発明は、下記の作用を奏する。
(請求項1)落下衝撃等でインキ吸蔵体からペン体側に吐出したインキが、毛細管現象によりインキ貯溜部に一時的に貯溜され、筆記によるペン体のペン先側からのインキの消費に準じて行われる空気交換によりインキ貯溜部から徐々にペン体に流入される。
(請求項2)インキ貯溜部を軸方向に延びる複数本のインキ溜め縦溝とすることにより、インキ貯溜部がペン体取付部内に容易に形成される。つまり、ペン体取付部を有する先口と同時成形にてインキ貯溜部を形成することができる。
(請求項3)インキ吸蔵体の端部がインキ貯溜部の端面に当接した状態で軸筒内に保持されているので、落下衝撃でインキ吸蔵体の中綿がずれるのを防止する。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至2は、本発明の一実施の形態である筆記具Aを示す。筆記具Aは、図1に示すように、一端側に細書き用のペン体1を有し、他端側に太書き用のペン体2を有する両頭式のサインペンである。この筆記具Aは、一端側に細書き側先口7を一体に有する軸筒3と、細書き側先口7に保持される細書き用ペン体1と、軸筒3の他端側に嵌合又はネジ式により装着される太書き側先口8と、この太書き側先口8に保持される太書き用ペン体2と、軸筒3内に装填され両ペン体1,2にインキを供給するインキ吸蔵体4とを備えており、筆記時以外は両先口7,8にキャップ9,10が被される。
【0008】軸筒3は、一端側に細書き側先口7を一体に有すると共に他端側に太書き側先口8を装着するための装着部3aを有する円筒状を呈し、一端側の内部に、後述するペン体取付部11に連設されると共にインキ吸蔵体4を外面から保持する複数の突起を有する保持部17を形成してなる。
【0009】細書き側並びに太書き側先口7,8は、先端に向かって外周面を漸次先細状に形成され、内部にペン体取付部11,11’が形成されている。又、太書き側先口8は、筒部の外周面に、軸筒3の装着部3aに圧入により装着されるリング状の嵌合部8aが形成され、内部には、前述した軸筒3内の構成と同様にして保持部17’が形成されてなる。
【0010】ペン体取付部11,11’は、ペン体1を抜け外れしないように保持し得る程度の内径を有する貫通孔であり、その内面にインキ貯溜部12,12’が形成されている。
【0011】尚、前記ペン体取付部11,11’と前記保持部17,17’との連設箇所の段状部分は、インキ貯溜部12,12’の端面15,15’であり、この端面15,15’にインキ吸蔵体4の端部14,14’を当接させることにより、落下衝撃等でインキ吸蔵体4の中綿6がずれるズッコケ現象を確実に防止し得るように構成されている。
【0012】インキ貯溜部12,12’は、軸方向に延びる複数本のインキ溜め縦溝(以後、符号12,12’を付けて説明する)であり、細書き側先口7を有する軸筒3並びに太書き側先口8の夫々の型成形と同時成形によりペン体取付部11,11’に形成されるものである。
【0013】そして、これら複数のインキ溜め縦溝12,12’は、図2(a)乃至(d)に示すように、周方向に対して等間隔に形成された横断面放射状に配設されており、その溝底が細書き側並びに太書き側先口7,8の外周面形状に略倣って形成されて、後端側部分では図2(b),(c)のように深溝で、先端側にゆくにしたがって図2(a),(d)のように浅溝になっている。尚、インキ溜め縦溝12,12’の幅は、落下衝撃等でインキ吸蔵体4から吐出した過剰インキを毛細管現象により確実に保持し得るインキ保持性能が得られる程度に設定されている。
【0014】ペン体1,2は、インキを毛細管現象により後部からペン先(筆記部)へと誘導する繊維部材や多孔質部材等の所望部材によりなる軸状を呈し、後部側がインキ吸蔵体4内に差し込まれるように一回り程細く形成され、細書き側並びに太書き側先口7,8から突出するペン先の根元部分がペン体取付部11,11’先端の掛止段部16,16’に掛止される段付き状に形成されてなる。
【0015】インキ吸蔵体4は、筒状の被覆体5内に充填された中綿6にインキを含浸して構成されており、一端側が軸筒3内の保持部17に装着されると共に他端側が太書き側先口8内の保持部17’に装着され、更に、両端部14,14’をインキ溜め縦溝12,12’を構成している縦凸条13,13’の端面15,15’に当接させて、軸筒3内で固定されている。そして、両端部14,14’にペン体1とペン体2のそれぞれの後部を中綿6に差し込まれるように接続することにより、両ペン体1,2にインキが供給される。
【0016】尚、太書き側先口8の内部の形状及び構造は、ペン体2がペン体1よりも太い分相似的に各部の寸法を変更すると共に、インキ溜め縦溝12’がインキ溜め縦溝12よりも数を増加したものとなっている。
【0017】次に、上記実施の形態の筆記具Aについて、その作用効果を説明する。通常の筆記状態において、インキ吸蔵体4の中綿6に含浸されているインキはペン体1及びペン体2のそれぞれの後部側に供給される。そして、ペン体1,2の毛細管現象によりインキが各ペン体1,2のペン先部分から滲出される。
【0018】誤って筆記具Aを落下させた場合、インキ吸蔵体4の端部14,14’から多量のインキが吐出され、この吐出されたインキが複数のインキ溜め縦溝12,12’内に流入する。そして、インキ溜め縦溝12,12’内に流入したインキは、インキ溜め縦溝12,12’の毛細管現象により一時的に貯溜されるため、インキがペン体1,2の周りから外部に噴出することがない。また、上記作用により一時的に貯溜されたインキは、筆記によるペン体1,2のペン先側からのインキの消費に準じて行われる空気交換により、ペン体1,2内のインキがペン先から滲出されてゆくと、徐々にペン体1,2に流入されてゆくので、落下後も通常の筆記状態を得ることができる。また、インキ吸蔵体4の端部14,14’がインキ溜め縦溝12,12’を構成している縦凸条13,13’の端面15,15’に当接しているので、落下衝撃でインキ吸蔵体4の中綿6がずれることがない。
【0019】尚、上記実施の形態の筆記具Aは、両頭式のサインペンとしたが、単頭式の構成としてもよく、この場合の作用効果も上記同様に得ることができるのは勿論である。
【0020】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成されているので、以下の効果を奏する。
(請求項1)誤って筆記具を落下した際に、インキ吸蔵体から多量に吐出したインキが毛細管現象によりインキ貯溜部に貯溜され、筆記によるペン体のペン先側からのインキの消費に準じて行われる空気交換によりインキ貯溜部に貯溜されたインキが徐々にペン体に流入されるため、誤って落下してしまった際の落下衝撃によりペン体の周りからインキが外部に噴出するのを防止できる。しかも、インキ貯溜部がペン体取付部内に構成されて他に付加する部品等がないため、従来構造に比べて大幅に簡素化された構造になると共に組み立てをも容易にし、且つ部品点数及び組み立て工数を軽減した安価な筆記具を提供できる。
(請求項2)更に、インキ貯溜部を軸方向に延びる複数本のインキ溜め縦溝にすることで、毛細管現象により強いインキ貯溜作用を奏するインキ貯溜部を先口の成形と同時成形にてペン体取付部に容易に形成することができ、これにより加工コストを削減できる。
(請求項3)更に、インキ吸蔵体の端部がインキ貯溜部の端面に当接した状態で軸筒内に保持されているので、落下衝撃でインキ吸蔵体の中綿がずれるズッコケ現象を確実に防止でき、耐衝撃性に秀でた筆記具を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
【出願日】 平成10年9月4日(1998.9.4)
【代理人】 【識別番号】100068607
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 政名 (外2名)
【公開番号】 特開2000−79787(P2000−79787A)
【公開日】 平成12年3月21日(2000.3.21)
【出願番号】 特願平10−251111