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【発明の名称】 砥石車及び研削装置並びに研削加工法
【発明者】 【氏名】石川 憲一

【氏名】山田 弘文

【要約】 【課題】研削加工において、研削点での酸化物の生成を抑制し、砥粒切れ刃の摩耗を防止し、工作物の加工精度及び仕上面性状を向上させ、熱損傷の少ない工作物を得る。

【解決手段】砥石の気孔を通して砥石内部から砥石作業面にアルゴンガスや窒素ガスなどの非酸化性ガスを供給しながら研削を行う。砥石車は、気孔2を残して砥粒3を結合剤4で固めてなる円板状の砥石1と、この砥石の取付孔6に装着されたハブ5とを備え、ハブの砥石1との接触部分に気孔2に連通する通気孔15が設けられている。研削装置のスピンドルには砥石車のハブに設けた通気孔15に非酸化性ガスを供給するガス供給手段19を設け、非酸化性ガスを砥石内部から研削点に供給する。砥石回転により発生する遠心力により、非酸化性ガスは円滑に砥石作業面へ供給される。砥石作業面を除く部分に非通気性皮膜7を設けて、非酸化性ガスの漏出を防止できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 気孔(2)を残して砥粒(3)を結合剤(4)で固めてなる円板状の砥石(1)と、この砥石の取付孔(6)に装着されたハブ(5)とを備え、ハブの砥石(1)との接触部分に気孔(2)に連通する通気孔(15)が設けられていることを特徴とする、砥石車。
【請求項2】 砥石(1)の砥石作業面(35)を除く部分の砥石表面に非通気性皮膜(7)を備えていることを特徴とする、請求項1記載の砥石車。
【請求項3】 高速回転するスピンドル(16)に請求項1又は2記載の砥石車が装着されており、スピンドルには砥石車のハブに設けた通気孔(15)に非酸化性ガスを供給するガス供給手段(19)が設けられていることを特徴とする、研削装置。
【請求項4】 ガス供給手段が、スピンドル(16)の先端に装着されてその通気孔を砥石車のハブ(5)に直接連通させた回転継手(19)と、この回転継手に連結されたガスパイプ(33)とを備えていることを特徴とする、請求項3記載の研削装置。
【請求項5】 砥石車を高速で回転しつつ工作物(34)に押し付けて工作物の表面を研削する研削加工法において、研削装置のスピンドル(16)に請求項1又は2記載の砥石車を装着し、この砥石車の気孔(2)に非酸化性ガスを供給しながらスピンドルを高速回転して工作物を研削することを特徴とする、研削加工法。
【請求項6】 非酸化性ガスが断熱膨張により摂氏マイナス40度以下に冷却されていることを特徴とする、請求項5記載の研削加工法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、砥石車を高速で回転しつつ工作物に押し付けて工作物の表面を削る研削加工法ならびにこの加工法の実施に好適な砥石車及び研削装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】砥石車は、微細な空隙(気孔)を適当量残して砥粒を結合剤で固めることによって形成された円筒状砥石と、その中心孔に装着されたハブとで形成されており、ハブの中心には軸方向のテーパ孔が設けられている。研削装置は、高速回転するスピンドルを備えており、スピンドルのテーパ軸にハブのテーパ孔を嵌合して、砥石車を高速回転可能に支持している。研削方法は、砥石車を高速回転しつつ工作物に押し付けて砥石車に研削送りを与え、砥石作業面(円筒面又は側面)の多数の砥粒の切れ刃によって工作物の表面を削り、削り屑を一旦砥粒切れ刃のポケットに収容したあと排出することにより、工作物に所定の加工面形状を作り出すものである。研削時には、研削部に研削液を供給して工作物の熱損傷を防止している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】αAl23を主成分とするA系砥石を用いて鉄鋼材料を研削した場合、砥粒切れ刃が工作物と接触を開始する点では、工作物が弾性変形をするため上滑りをし、逃げ面と工作物表面との間で激しく摩擦され発熱する。その後、掬い面で研削が始まり、工作物の剪断熱も加わって接触界面は高温高圧の雰囲気になる。このため、砥粒切れ刃が通過した後の工作物表面はほとんど瞬時に酸化されて酸化膜(FeO)で覆われる。後続の砥粒切れ刃の逃げ面は、この酸化膜の上を上滑りする結果、摩擦によって砥粒切れ刃と酸化膜とが反応し、砥粒切れ刃の表面に反応生成物FeAl24が生ずると考えられる。反応生成物FeAl24の引張り強度及びねじり強度はαAl23の約1/3であるので、砥粒切れ刃の表面に生成された反応生成物は摩擦力で破壊、除去され、砥粒切れ刃のポケットや工作物表面に残留することになる。従って、砥粒切れ刃と工作物の間に生起する界面固相反応によって生成されたFeAl24(ブスタイト)が、砥粒切れ刃と工作物との摩擦に伴い脱落することによって砥石が摩耗すると考えられる。
【0004】また、刃物をSiO2系天然砥石で砥ぐ場合はファイヤライト(Fe2SiO4)が生成し、鉄をCr23で研磨する場合はスピネル(FeCr24)等の複酸化物が生成し、これらの酸化物が摩擦によって脱落することにより砥石が磨耗する。更に、工作物の材質にかかわらず、C系砥石では研削時にSiC+O2→SiO2+CO2となり反応よりSiO2が生じ、ダイヤモンド砥石では研削時にC+O2→CO2となり反応によりCO2が生じて摩耗する。ダイヤモンド砥石で工作物が鉄系材料の場合は、ダイヤモンド砥石の炭素が鉄に溶けて摩耗する場合もある。
【0005】本発明は、研削点での酸化物の生成を抑制することにより、工作物の加工精度及び仕上面性状を向上させること、熱損傷の少ない工作物を得ること及び砥石車の砥粒切れ刃の摩耗を防止することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明では、砥石の気孔を通して砥石内部から砥石作業面にアルゴンガスや窒素ガスなどの非酸化性ガスを供給しながら研削を行うことにより、上記課題を解決している。この方法を実施するためのこの発明の砥石車は、気孔2を残して砥粒3を結合剤4で固めてなる円板状の砥石1と、この砥石の取付孔6に装着されたハブ5とを備え、ハブの砥石1との接触部分に気孔2に連通する通気孔15が設けられているものである(請求項1)。好ましくは、特に砥石の径が大きいときは、砥石作業面35を除く部分の砥石表面に非通気性皮膜7を設けて、砥石表面からの非酸化性ガスの無駄な漏出を防止する(請求項2)。
【0007】上記の砥石車を用いたこの発明の研削装置は、高速回転するスピンドル16にこの発明の砥石車が装着されており、スピンドルには砥石車のハブに設けた通気孔15に非酸化性ガスを供給するガス供給手段19が設けられていることを特徴とするものである(請求項3)。ガス供給手段は、ガスボンベ等から回転継手を介してスピンドルに設けた軸孔にガスを供給し、当該軸孔からハブを貫通して砥石の気孔内にガスを流入させる構造を、一般的な手段として挙げることができる(図4)。一方、ガス供給手段を、スピンドル16の先端に装着されてその通気孔を砥石車のハブ5に直接連通させた回転継手19と、この回転継手に連結されたガスパイプ33とを備えた構造とすれば、スピンドルに軸孔を設ける必要がなくなる(請求項4)。
【0008】またこの発明の研削加工法は、砥石車を高速で回転しつつ工作物34に押し付けて工作物の表面を研削する研削加工法において、研削装置のスピンドル16に上記構造の砥石車を装着し、この砥石車の気孔2に非酸化性ガスを供給しながらスピンドルを高速回転して工作物を研削するというものである(請求項5)。高圧ボンベから非酸化性ガスを供給するときは、断熱膨張により非酸化性ガスの温度が低下するので、これを利用して非酸化性ガスの温度を摂氏マイナス40度以下に冷却して供給すれば、研削部の温度上昇も有効に防止できる(請求項6)。
【0009】
【作用】請求項1記載の砥石車は、ハブの砥石接触部分に砥石の気孔2に連通する通気孔15を設けたので、非酸化性ガスを砥石内部から研削点に供給することができ、研削部に外部から非酸化性ガスを供給して研削を行う場合のように、カバー等により研削部を密閉する必要がなくなる。ガスの送圧及び砥石回転により発生する遠心力により、非酸化性ガスは砥石の外側へと追いやられ、円滑に砥石作業面へ供給される。砥石の半径が大きくなると砥石表面からのガス漏れが多くなるので、請求項2記載の砥石車のように、砥石の砥石作業面を除く部分に非通気性皮膜7を設けて、非酸化性ガスが効率よく研削点に供給されるようにするのがよい。
【0010】請求項3記載の研削装置は、スピンドルに請求項1又は2記載の砥石車を装着し、ガス供給手段19で砥石車の内部に非酸化性ガスを供給することができるので、研削部を遮蔽板で覆う必要がなくなり、装置を小型化できる。ガス供給手段として、スピンドル16の中心にガス供給用の軸孔を設ける構造や、請求項4記載のように、砥石車のハブに直接連通する通気孔を備えた回転継手を設ける構造などを採用できる。後者の構造によれば、従来の研削装置を改造せずにそのまま利用することができる。
【0011】請求項5記載の研削加工法は、砥石車の気孔に非酸化性ガスを供給しながら研削するので、研削点を非酸化性ガス雰囲気下にすることができ、酸化膜の発生を防止して砥石切れ刃の摩耗を防止することができ、砥粒切れ刃のポケットに収容された削り屑を確実に排出することができる。更に非酸化性ガスの温度をジュールトムソン効果により−40℃以下にしてやれば、工作物の加工精度を高めることができ、熱損傷を防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】図1は本発明の砥石車の断面図である。砥石1は気孔2を適当量残してαAl23(砥粒)3を結合剤4で円板状に固めたものであり、中心にハブ5を装着する取付孔6を有している。この砥石の両側の端面は熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂の薄膜7で被われている。薄膜は気孔2に供給される非酸化性ガスが端面から拡散するのを防止している。ドレッシングの際に薄膜7の外周縁は容易に破砕される。なお、砥石の端面が砥石作業面となるときは、砥石の円筒面及び他の端を薄膜で被っておく。
【0013】砥石の取付孔6には鍔部8を有するハブ5が装着されており、取付孔から突出したハブの先端外周に止めナット9が螺着されており、止めナット9と鍔部8で砥石1を挟持している。ハブの軸心にはテーパ孔11が設けられており、ハブの止めナット側にこのテーパ孔より大径の円筒孔12が同軸に設けられている。円筒孔とテーパ孔との連結段部には円筒孔側に突出する短円筒部13が形成されており、この短円筒部の外周面と円筒孔の底面及び内周面とにより断面コ字形のリング状の凹所14が形成されている。ハブの外周面には、砥石の取付孔の内周面に向いて開口する複数の通気孔15が設けられている。複数の通気孔の基端は適宜連結した後凹所14に開口している。
【0014】図2は図1の砥石車10を装着して示した研削装置の要部である。高速回転するスピンドル16の先端のテーパ面17に砥石車10のハブのテーパ孔11が嵌合している。ハブのテーパ孔11から突出しているスピンドルのねじ杆18に回転継手19が螺着されている。回転継手19はキャップ20と外筒31とで形成されており、キャップ20は小径の軸部21とその奥端にある大径の嵌合部22とを一体に備えており、スピンドルのねじ杆には軸部に設けたねじ孔23が螺合している。嵌合部22はハブの円筒孔12に内挿されており、嵌合部22の外周に設けた円周溝にシール材25が装着されている。軸部のねじ孔23にスピンドルのねじ杆18を螺合すると、嵌合部22が円筒孔12に嵌り込み、凹所14と嵌合部22との間にリング状のガス通路26が形成される。
【0015】キャップの軸部21の外周面中央には円周溝27が設けられており、この円周溝はその底面の一箇所でねじ孔23と平行に延びる透孔28に連通しており、透孔の他端は前記ガス通路26に開口している。軸部21には、ベアリング29、29を介して、外筒31が回転自在に装着されている。外筒にはキャップの軸部の円周溝27に連通する半径方向のポート32が設けられており、低温高圧のアルゴンガスを供給するガスパイプ33がポート32に連結されている。
【0016】以下、図3の模式図に基づいて、この発明の研削加工法を実施した試験について説明する。寸法5.5×7×45mmの焼き入れされた工具鋼(SK−3)からなる工作物34を研削台にセットし、前記構造の砥石車をスピンドルに装着し、研削速度819m/min、押し付け荷重6.47Nで、大気中及びアルゴンガスを流して研削を行う。ガスパイプに連結されたボンベから15MPa/cm2のアルゴンガスを回転継手19を介して砥石車のハブ5に供給する。砥石車の回転数は簡易インバータで制御し、研削速度を一定に保つようにする。砥石車の円筒面を工作物34に押し付けて、研削加工を開始する。研削加工時に高圧で注入されたアルゴンガスはガス通路で断熱膨張して−40℃になり、ハブの通気孔15を介して砥石1の気孔2に供給される。−40℃のアルゴンガスは気孔中を拡散して砥石作業面25に到り、研削点をアルゴンガス雰囲気にする。
【0017】−40℃のアルゴンガスを供給して研削を行ったときと、アルゴンガスを供給せずに研削を行ったときの火花の発生の違いをみると、アルゴンガスを供給して研削を行ったときの方が、明らかに火花の量が少ない。これにより砥石車から出たアルゴンガスが確実に研削に影響を及ぼしているということがわかる。研削点での酸化物の生成が抑制され、砥粒切れ刃の摩耗が少なく、切れ味の良好な切れ刃で研削し、加工変質層の少ない仕上面を得ることができる。またアルゴンガスを供給して研削を行ったときと、アルゴンガスを供給せずに研削を行ったときの研削面の研削焼けの違いをみると、アルゴンガスを供給したときの方が研削焼けが少ない。これは、アルゴンガスを供給した場合に比べ、大気中で研削を行った場合の方が、前記理由により砥粒切れ刃の摩耗が大きく、更に逃げ面も拡大されて切れ味が低下したためである。したがって、大気中の方が局部的な発熱が多く起こることにより、研削焼けが見られると思われる。
【0018】アルゴンガスを供給して研削を行ったときと、大気中で行ったときの工作物表面粗さを計測した結果を見てみると、アルゴンガスを供給して研削を行った工作物の中心線平均粗さRaは0.18μm、一方大気中で研削を行った工作物のRaは0.56μmであった。アルゴンガスを供給して研削を行ったときの工作物の表面は凹凸が激しく、大気中で研削を行ったときの工作物の表面は平坦化されている。これはアルゴンガスを供給した方は、鋭い切れ刃で研削が行われているため、工作物の表面の形状は凹凸が激しくなったためである。一方、大気中の方は、界面固相反応により、切れ刃の逃げ面摩耗が大きい切れ刃で研削されているためである。
【0019】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、研削時の状況は下記のようになる。
1.切れ込みがよく研削抵抗が高い2.鉄系研削時は火花が出ない3.流れ形の切屑である。
4.研削音が変化する5.切屑の凝着が少ない6.微小から大切込みが可能である。
【0020】従って、下記のような効果がある。
(1) 冷却効果(2) 熱損傷防止効果、加工精度向上効果(3) 仕上面性状向上(4) 切れ味の持続(5) 微小切込みの可能化(切れ味が向上した切れ刃で無公害化)
(6) 研削液の無公害化(7) 加工能率が向上(砥石が減耗しない)
【出願人】 【識別番号】390023467
【氏名又は名称】石川 憲一
【識別番号】598044866
【氏名又は名称】株式会社村谷機械製作所
【識別番号】598044855
【氏名又は名称】山田 弘文
【出願日】 平成10年10月12日(1998.10.12)
【代理人】 【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
【公開番号】 特開2000−117644(P2000−117644A)
【公開日】 平成12年4月25日(2000.4.25)
【出願番号】 特願平10−289518