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【発明の名称】 脆性薄板の平面研磨における保持装置
【発明者】 【氏名】岸田 信一

【要約】 【課題】脆性薄板をワーク9とする平面研磨において、キャリヤ板7の内側開口部8内にワーク9を収容する際、双方の間に、着脱交換操作が比較的容易でありながら、装着時におけるキャリヤ板7への密着性が強大であって遊星運動を確実に伝えることができ、しかも、離脱するおそれのない係合手段を備えた緩衝材10を提供する。

【解決手段】基端部の幅よりも先端部の幅の方が広いクサビ形突部71とクサビ形凹部72とをキャリヤ板7の内側開口部8に沿って交互に配設する一方、クサビ形凹部72の両側縁間長さLよりも僅かに幅広の両側縁間長さL1 を有するクサビ形突部101とクサビ形突部71の両側縁間長さMよりも僅かに幅狭の両側縁間長さM1 を有するクサビ形凹部102とを緩衝帯10の外側縁に沿って交互に配設し、クサビ形突部101の両側縁間長さL1 を対向方向に圧縮して両側縁間長さLに短縮させた状態でクサビ形凹部72に圧入して係合させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の定盤の間における中心部に駆動用のサンギヤを、その周辺部にそのサンギヤと同芯のインターナルギヤを対設し、それら双方のギヤに噛合する遊星ギヤを周面に備えたキャリヤ板を介装し、そのキャリヤ板の内側開口部にワークを収容して、そのワークの表裏両面を遊星ギヤ運動によって研磨する平面ラップ盤において、基端部の幅よりも先端部の幅が広いクサビ形突部とクサビ形凹部を交互に配した第1のクサビ形凹突を前記キャリヤ板の内側開口部に沿って設ける一方、前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形凹部の両側縁間長さよりも僅かに幅広の両側縁間長さを有するクサビ形突部と、前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形突部の両側縁間長さよりも僅かに幅狭の両側縁間長さを有するクサビ形凹部を交互に配した第2のクサビ形凹突を緩衝帯の外側縁に沿って設け、前記第2のクサビ形凹突におけるクサビ形突部の両側縁部を、順次対向方向に圧縮させた状態で、前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形凹部に順次圧入して、前記第2のクサビ形凹突を前記第1のクサビ形凹突と係合させ、前記緩衝帯の内側に前記ワークを収容する、ことを特徴とする脆性薄板の平面研磨における保持装置。
【請求項2】 前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形凹部の両側における上端縁及びまたは下端縁に沿って拡開斜面を設けた請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】 前記緩衝帯の材質をエポキシガラス積層版とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項4】 前記緩衝帯の材質をエポキシアラミドガラス積層版とする請求項1に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば液晶基板や半導体基板のような比較的脆性の薄板をワークとし、それらのワークの上下両面を平坦に研磨する際に、良好な保持を可能にする脆性薄板の平面研磨における保持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】脆性薄板の平面研磨は、従来から、図5でその概略を示すように、上下方向に並設した上定盤1及び下定盤2と、その下定盤2の中心部を下から上へ貫通する駆動軸3と、その駆動軸と一体であり、かつ、前記上下定盤の間に設けたサンギヤ4と、そのサンギヤと同芯であり、かつ、下定盤2の上面周縁に設けたインターナルギヤ5とを備えた平面ラップ盤において、サンギヤ4とインターナルギヤ5の双方に噛合する遊星ギヤ6を周面に刻設した複数のキャリヤ板7を配置し、それらのキャリヤ板7の内側にそれぞれ開口部8を設け、その開口部8に、研磨されるべきワーク9を収容し、双方の定盤間に所定の研磨液を供給しつつ、前記駆動軸3を回転させると、それと一体のサンギヤ4が公転し、そのサンギヤ4とインターナルギヤ5に噛合する遊星ギヤ6を有するキャリヤ板7が自転しつつ公転する遊星運動をし、従って、キャリヤ板7の開口部8に収容されたワーク9には、回転(自転)と旋回(公転)との複合運動が強制され、そのような運動を負荷されているうちに、ワーク9の表裏両面が、上下から圧接された上定盤1と下定盤2の対向面によって研磨されていく。
【0003】初期の表面研磨工程では、ワーク9の板厚が比較的に厚いから、前記遊星運動を充分に活用し得るように、キャリヤ板7は単板式(図5参照)が使用される。
【0004】仕上げ時における表面研磨工程では、ワーク9の板厚が研磨により薄くなっているため、研磨時に付加される定盤からの圧力を弱く柔らかくするべく定盤面に鹿皮等を使用する一方、互いに同芯円で接する内外複数のキャリヤ板を組み合わせた複板式を使用し(図示省略)、ワーク9への遊星運動のうち回転(自転)の速度が減速され、主としてサンギヤ4からの公転旋回運動によって表面研磨の仕上げが行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、キャリヤ板7は研磨に強い硬質材料、例えば、ステンレス鋼で形成されている反面、その中に収容されるワーク9は耐衝撃性の低い脆性な材質、例えば、液晶表示用ガラス基板やシリコンウエハー等で形成されている。
【0006】それ故、強靱なキャリヤ板7の内側開口部8に、直接、脆性なワーク9を収容して、それに高速遊星運動を伝えたとすれば、ワーク9の端面が開口部8に衝突してクラックや破損を生じ、破片がワーク面や定盤の研磨面を傷つけてしまうので、修理・交換に追われることになる。従って、そのように脆性なワーク9にクラックや破損を生じることなく、円滑に高速遊星運動を伝達して研磨の成果を上げるには、キャリア板7の内側開口部8とワーク9の周面との間に何らかの衝撃緩和材を介装させることを要する。
【0007】この点を解決するために、キャリア板7の内側開口部8の内縁に沿ってゴム等からなる弾性枠を接着剤で貼着する方法が容易に考えられる。しかしながら、この弾性枠貼着方式は、研磨時における摩耗が激しくて長期に亘る使用が不可能で煩雑な交換を要するが、着脱交換作業に手間と時間がかかる。
【0008】特開平9−155729号は、軟質の緩衝材をキャリヤ板よりも薄肉に形成し、または、その軟質緩衝材をキャリヤ板の表裏両面よりも内側に保持する保持機構を設けて、研磨時における摩耗を回避して長期の使用に耐えられるように提案する。しかしながら、研磨の対象となるワーク自体の初期板厚が既に1mm以下であり、キャリヤ板の板厚はそれより更に薄く形成されている状況下において、それらよりも更に薄肉に軟質緩衝材を設けること自体、機能的に難点があり、しかも、その位置を保持しつつ、高速遊星運動を的確にワークへ伝達させることに対する信頼性を確保し得ない。
【0009】この発明の目的は、脆性薄板の平面研磨において、キャリヤ板の内側開口部内にワークを収容するに当って、双方の間に次の機能を備えた緩衝材、すなわち、着脱交換の操作が比較的容易でありながら、装着時におけるキャリヤ板開口部への密着性が物理的に強大であって、自転と公転の複合動作をキャリヤ板からワークへ確実に伝達することができ、しかも、それ自体がキャリヤ板から離脱するおそれのない係合手段を備えた緩衝材を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の目的を達するために、緩衝材の材質を帯摩耗性に富むエポキシガラス積層版又はエポキシアラミドガラス積層版とし、この材質を有する緩衝帯をステンレス鋼からなるキャリヤ板の内側開口部に沿って取り付ける。
【0011】この発明による脆性薄板の平面研磨における保持装置は、一対の定盤の間における中心部に駆動用のサンギヤを、その周辺部にそのサンギヤと同芯のインターナルギヤを対設し、それら双方のギヤに噛合する遊星ギヤを周面に備えたキャリヤ板を介装し、そのキャリヤ板の内側開口部にワークを収容して、そのワークの表裏両面を遊星ギヤ運動によって研磨する平面ラップ盤において、基端部の幅よりも先端部の幅が広いクサビ形突部とクサビ形凹部を交互に配した第1のクサビ形凹突を前記キャリヤ板の内側開口部に沿って設ける一方、前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形凹部の両側縁間長さよりも僅かに幅広の両側縁間長さを有するクサビ形突部と、前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形突部の両側縁間長さよりも僅かに幅狭の両側縁間長さを有するクサビ形凹部を交互に配した第2のクサビ形凹突を緩衝帯の外側縁に沿って設け、前記第2のクサビ形凹突におけるクサビ形突部の両側縁部を、順次対向方向に圧縮させた状態で、前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形凹部に順次圧入して、前記第2のクサビ形凹突を前記第1のクサビ形凹突と係合させ、前記緩衝帯の内側に前記ワークを収容する、ことを特徴とするものである。
【0012】前記第2のクサビ形凹突を前記第1のクサビ形凹突と係合させた後、対向方向への圧縮が解除されると、緩衝帯側におけるクサビ形突部の両側縁部には、互いに反対方向に反発復帰しようとする反力が陽動化し、しかも、その反力が生じる両側縁部の部位がクサビ形の基端部から先端部に向けて徐々に幅広となる斜面を形成しているために、前記両側縁部に生じた反力の総和が結集されて、緩衝帯側のクサビ形突起の先端面をキャリヤ板側のクサビ形凹部の底面に押し付ける押圧力に変化し、そして、その押圧力は緩衝帯側に設けた各クサビ形突部の先端面のすべてに生じる。従って、それらの押圧力の総和が緩衝帯をキャリヤ板の内側開口部に強力に密着させ、その密着力が、強大な摩擦力から生じる水平方向の離反を阻止する。
【0013】更に、この発明による脆性薄板の平面研磨における保持装置は、前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形凹部の両側上端縁及びまたは下端縁に沿って拡開斜面部を設ける。
【0014】前述した緩衝帯側のクサビ形突部の両側縁部が対向方向に圧縮された状態でキャリヤ板側のクサビ形凹部に圧入された後、その押圧力が解除されると、当該両側端部が、互いに反対方向に反発復帰しようとする反力によって、キャリヤ板側のクサビ形凹部の両側縁面に密着することは前々項記載と同じであるが、それと同時に、キャリヤ板側のクサビ形凹部の両側上端縁及びまたは下端縁に沿った拡開斜面部に、前記緩衝帯側のクサビ形突部の両側における上端縁及びまたは下端縁が変形してそれらを埋め込み、その変形部がキャリヤ板の内側開口部に対する緩衝帯の上下方向の係合離脱を阻止する。
【0015】
【発明の実施の形態】この発明の実施の形態について、以下、図によって詳述する。この発明は、従来周知の平面ラップ盤におけるキャリヤ板7の内側開口部8とワーク9との間に緩衝帯10を介装してワーク9を保持する装置に関し、平面ラップ盤の要部の概略構成は(0002)項で説明した。
【0016】ワークを保持するための緩衝帯10の第1実施例を図1〜2、6〜9で示し、第2実施例を図3及び10で示す。
【0017】第1及び第2の実施例において、キャリヤ板7の内側開口部8に沿って設けたクサビ形凹突を第1のクサビ形凹突と称し、緩衝帯10の外側縁に沿って設けたクサビ形凹突を第2のクサビ形凹突と称して以下に説明する。
【0018】第1のクサビ形凹突は、図6及び7で示すように、基端部の幅よりも先端部の幅の方が広いクサビ形突部71とクサビ形凹部72とをキャリヤ板7の内側開口部8に沿って交互に配設したものからなる。
【0019】第2のクサビ形凹突は、図6及び7で示すように、前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形凹部72の両側縁間長さLよりも僅かに幅広の両側縁間長さL1を有するクサビ形突部101と、前記第1のクサビ形凹突におけるクサビ形突部71の両側縁間長さMよりも僅かに幅狭の両側縁間長さM1 を有するクサビ形凹部102とを、緩衝帯10の外側縁に沿って交互に配設したものからなる。
【0020】かかる構成において、図7で示すように、第2のクサビ形凹突におけるクサビ形突部101の両側縁間長さL1 に対して、矢印で示すように、対向方向から、圧力を加えて、その長さL1 を、第1のクサビ形凹凸におけるクサビ形凹部72の両側縁間長さLまで圧縮させた状態で、当該クサビ形突部101をクサビ形凹部72に圧入する(図8参照)。この圧入係合作業を、順次隣接するクサビ形突部101とクサビ形凹部72の間で繰り返すうちに、緩衝帯10のクサビ形突部101の全部が、それぞれキャリヤ板7のクサビ形凹部72に係合して、図1で示すように、キャリヤ板7の内側開口部全体に緩衝帯10の外側縁が取り付けられる。
【0021】このようにして第2のクサビ形凹突を第1のクサビ形凹突と係合させた後、対向方向への圧縮を解除すると、図8及び9で示すように、緩衝帯10側におけるクサビ形突部101の両側縁部には、矢印で示すように、互いに反対方向に反発復帰しようとする反力が陽動化し、しかも、その反力が生じる両側縁部の部位がクサビ形の基端部から先端部に向けて徐々に幅広となる斜面を形成しているために、前記両側縁部に生じた反力の総和が結集されて、緩衝帯10側のクサビ形突起101の先端面をキャリヤ板7側のクサビ形凹部72の底面に押し付ける押圧力(矢印参照)に変化し、そして、その押圧力は緩衝帯10側に設けた各クサビ形突部101の先端面のすべてに生じる。従って、それらの押圧力の総和が緩衝帯10をキャリヤ板7の内側開口部8に強力に密着させ、その密着力が、強大な摩擦力から生じる水平方向の離反を阻止する。
【0022】更に、この発明による脆性薄板の平面研磨における保持装置は、図7及び図8で示すように、第1のクサビ形凹突におけるクサビ形凹部72の両側上端縁及びまたは下端縁に沿って拡開斜面部73を設けることが望ましい。何故ならば、拡開斜面部73に、前記緩衝帯10側のクサビ形突起101の両側における上端縁及びまたは下端縁が変形してそれらを埋め込むので、その変形部がキャリヤ板7の内側開口部8に対する緩衝帯10の上下方向の係合離脱を防止するのに効果的である。
【0023】第2のクサビ形凹突におけるクサビ形突部101を第1のクサビ形凹突におけるクサビ形凹部72から取り外すには、それに隣接するステンレス鋼から成る一対のクサビ形突部71の下面に下敷きをした後、当該クサビ形突部101に、前記密着力に勝る衝撃力を上方から下方へ加えると、離脱する。
【0024】図3及び10で示す第2実施例は、図2及び9で示す第1実施例と対比すれば明らかなように、双方のクサビ形凹突において生じる鋭角部分をなるべく円曲状に改変して、破壊が生じる原因となる応力集中を回避した形状を有せしめたクサビ形凹凸による係合を示す。
【0025】
【発明の効果】以上詳述したように、本願発明によるワークの保持手段は、キャリヤ板側と緩衝帯側の双方に互いに嵌め込み可能なクサビ形凹突を対設し、更に、緩衝帯側のクサビ形突部の両側縁間長さをキャリヤ側のクサビ形凹部の両側縁間長さよりも僅かに幅広に作成して、それを圧縮しながら係合させたので、係合後における双方の密着力が強く、水平方向の離反を阻止して、ワークの端部を緩衝的に保持しつつ平面研磨の成果を達成することが出来るようになった。
【0026】更に、本願発明によるワークの保持手段は、キャリヤ板側のクサビ形凹部の両側の上端縁及びまたは下端縁に沿って拡開斜面部を設けて、緩衝帯側のクサビ形突部の両側における上端縁及びまたは下端縁をその拡開斜面部に変形して埋め込む係合としたので、それによって、キャリヤ板の内側開口部に対する緩衝帯の上下方向への離脱もまた阻止され、円滑な研磨が遂行される。
【0027】更に、本願発明による緩衝帯のキャリヤ板への係合が、接着剤等による貼着方式によらず、緩衝帯自体から生じる圧縮の反発力を利用したので、交換時には上下方向への剪断力によって容易に離脱させ得るから、摩耗が生じても交換の手間や時間がかからず、容易に取り換えることも可能になった。
【出願人】 【識別番号】598074416
【氏名又は名称】有限会社岸田製作所
【出願日】 平成10年7月10日(1998.7.10)
【代理人】 【識別番号】100064366
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 守
【公開番号】 特開2000−24912(P2000−24912A)
【公開日】 平成12年1月25日(2000.1.25)
【出願番号】 特願平10−211743