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【発明の名称】 ステンレス鋼と炭素鋼のクラッド材製造方法
【発明者】 【氏名】佐藤 有一

【氏名】尾崎 茂克

【要約】 【課題】安定して十分な接合強度を有し、汎用設備により製造可能で、労力、時間、製造コストを軽減可能なステンレス鋼と炭素鋼のクラッド材製造方法を提供する。

【解決手段】ステンレス鋼と炭素鋼との間に、B:6〜15at%、Si:6〜12at%、V:1〜10at%、残部FeとNiの少なくとも一方と不可避的不純物からなるアモルファス合金を介在させて積層し、該積層材を、該アモルファス合金の融点以上、かつ、該ステンレス鋼及び炭素鋼の融点のうち低い方の融点以下の温度で、5分以上3時間以下の範囲内の時間加熱することを特徴とするステンレス鋼と炭素鋼のクラッド材製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ステンレス鋼と炭素鋼との間に、B:6〜15at%、Si:6〜12at%、V:1〜10at%、残部FeとNiの少なくとも一方と不可避的不純物からなるアモルファス合金を介在させて積層し、該積層材を、該アモルファス合金の融点以上、かつ、該ステンレス鋼及び炭素鋼の融点のうち低い方の融点以下の温度で、5分以上3時間以下の範囲内の時間加熱することを特徴とするステンレス鋼と炭素鋼のクラッド材製造方法。
【請求項2】 ステンレス鋼と炭素鋼との間に、P:10〜24at%、V:1〜10at%、残部FeとNiの少なくとも一方と不可避的不純物からなるアモルファス合金を介在させて積層し、該積層材を、該アモルファス合金の融点以上、かつ、該ステンレス鋼及び炭素鋼の融点のうち低い方の融点以下の温度で、5分以上3時間以下の範囲内の時間加熱することを特徴とするステンレス鋼と炭素鋼のクラッド材製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素鋼を母材とし、ステンレス鋼を合わせ材として接合したステンレス鋼と炭素鋼とのクラッド鋼板製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼と炭素鋼のクラッド鋼板(以下単に、クラッド鋼板と称す)は、母材の炭素鋼スラブと合わせ材のステンレス鋼スラブとを重ね合わせて組み立てスラブとし、これを熱間圧延することにより製造されていた。組立スラブは、爆者法により両スラブを接合し、あるいは重ね合わせた両スラブを周囲溶接して接合面を脱気した後加熱し、熱間圧延して製造されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術において、まず組立スラブを製造するために、爆着設備や排気設備など特有の設備を必要とし、かつ過大な労力、時間及びコストを要していた。そして、得られるクラッド鋼板の製品は、必ずしも十分な接合強度を有するものではなかった。本発明は、炭素鋼を母材とし、ステンレス鋼を合わせ材として接合したクラッド鋼板の製造方法であり、安定して十分な接合強度を有し、汎用設備により製造可能で、労力、時間、製造コストを軽減することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を解決するためのものであって、その要旨とするところは以下の通りである。
(1) ステンレス鋼と炭素鋼との間に、B:6〜15at%、Si:6〜12at%、V:1〜10at%、残部FeとNiの少なくとも一方と不可避的不純物からなるアモルファス合金を介在させて積層し、該積層材を、該アモルファス合金の融点以上、かつ、該ステンレス鋼及び炭素鋼の融点のうち低い方の融点以下の温度で、5分以上3時間以下の範囲内の時間加熱することを特徴とするステンレス鋼と炭素鋼のクラッド材製造方法。
(2) ステンレス鋼と炭素鋼との間に、P:10〜24at%、V:1〜10at%、残部FeとNiの少なくとも一方と不可避的不純物からなるアモルファス合金を介在させて積層し、該積層材を、該アモルファス合金の融点以上、かつ、該ステンレス鋼及び炭素鋼の融点のうち低い方の融点以下の温度で、5分以上3時間以下の範囲内の時間加熱することを特徴とするステンレス鋼と炭素鋼のクラッド材製造方法。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は、中間材として所定のアモルファス合金をステンレス鋼内炭素鋼の間に介在させて積層し、この積層材を加熱してアモルファス合金だけを溶融させて液相拡散接合させることにより、クラッド鋼板を得る方法である。
【0006】アモルファス合金による液相拡散接合を実現するためには、ステンレス鋼と炭素鋼の積層材を加熱し、アモルファス合金が溶ける温度以上に加熱する必要がある。但し、加熱温度はステンレス鋼と炭素鋼のいずれもが溶解しないようにするために、両者の融点の低い方の温度を加熱温度の上限とする。
【0007】さらに、十分な強度を有する液相拡散接合を得るためには、上記加熱温度の領域においてある程度保持する必要がある。アモルファス合金による液相拡散接合はアモルファス合金中の溶質元素が被接合材中に拡散し、アモルファス合金自体の融点が上昇して凝固を起こすことにより接合が発現するため、溶質元素の拡散にある程度の時間を要するからである。
【0008】本発明においては、この時間を5分以上3時間以下とする。この保持時間限定の理由について説明すると、保持温度が高いほど保持時間を短くできるが、安定した接合強度を得るには最低でも5分は必要である。逆に、保持時間は長くする程良いが、過度の保持時間は時間、製造コストの点から不利で、本発明で用いるアモルファス合金の場合、融点直上の温度で保持したとしても3時間保持すれば充分である。
【0009】本発明において中間材として用いるアモルファス合金は、B:6〜15at%、Si:6〜12at%、V:1〜10at%、残部がFeとNiの少なくとも一方と不可避的不純物からなる合金、あるいは、P:10〜24at%、V:1〜10at%、残部がFeとNiの少なくとも一方と不可避的不純物からなる合金である。これらのアモルファス合金を用いることにとり、安定して充分な接合強度が得られる。
【0010】これらの合金において、それぞれの構成元素の含有量を限定した理由は、以下の通りである。基本的に液相拡散接合に用いる中間材は、融点が低く、均一な組成であることが望ましいから、本発明においてはアモルファス合金を用いることが好ましい。よって、上記構成元素中、B,Si,Pに関しては良好なアモルファス合金となる成分範囲とするために、これらの構成元素の含有量に下限を設けた。但し、これらの元素を過度に含有すると、クラッド材の機械的性質に劣化を招く恐れが生じるため前記の通りの上限とした。
【0011】一方、Vはむしろアモルファス相形成には不利となるが、Vを添加することにより、大気中での液相拡散接合に有利に働くために添加する。すなわち、大気中で加熱すると接合界面に酸化物が形成し、これがアモルファス合金の溶質元素(B,P,Si)の拡散を阻害するが、Vを1%以上添加することにより、アモルファス合金が溶けた際に、この酸化物がVを含有する低融点の複合酸化物となり、加熱保持中に酸化物が溶け溶質元素の拡散を容易にする。但し、含有量が10%を超えるとアモルファス相が形成しにくくなるため上限を設けた。
【0012】また、ステンレス鋼と炭素鋼からなる積層材を本発明の加熱条件範囲で保持する際は、10kPa程度以上の加圧をすることが好ましい。もちろん、この程度の加圧は母材の自重によっても実現できる。アモルファス合金中の溶質元素が拡散するためには、被接合材同士が接触していなければならず、これを実現するためにはある程度の加圧が必要なためである。
【0013】なお、本発明の方法によれば、母材および合わせ材は板形状の他、管や任意の形状とすることができ、その表面形状に合わせた合わせ材を、アモルファス合金を介在させて液相拡散できる。しかも、得られたクラッド材は強固な接合強度を有し、そのままの形状で製品とすることができる。
【0014】本発明の方法において加熱は大気中で行うことができ、従来のような真空排気装置や非酸化性雰囲気とするための雰囲気調整装置を有しない汎用の各種加熱装置を使用できる。大気中での加熱は、具体的には大気開放型の電気抵抗加熱炉や誘導加熱炉、さらには、バーナーをもうけた各種燃焼炉等が対象となる。
【0015】さらに、本発明の方法で用いる合わせ材のステンレス鋼はその成分等に制限はなく、オーステナイト系、フェライト系、さらにはマルテンサイト系のいずれでもよい。一方、母材となる炭素鋼に関しても特に制限はなく、ここでは極低炭材から高炭材、さらには鋳鉄や低合金鋼も含む。
【0016】
【実施例】[実施例−1]母材をJIS G 3101に規定されるSS400の厚さ10mmの炭素鋼板とし、合わせ材はJIS G 4303に規定されるオーステナイト系鋼SUS304の厚さ6mmのステンレス鋼板とし、中間材として表1中のNo.1〜7に示すアモルファス合金箔を介在させて、図1のように重ね、上部に耐火レンガを乗せて所定の圧力で加圧しつつ、大気開放型の電気抵抗加熱炉に挿入し、約5℃/秒の昇温速度で所産の温度まで昇温し、該温度で所定の時間保持した後、大気中で放冷してクラッド材とした。
【0017】得られたクラッド鋼板について母材と合わせ材の間の接合強度を求めた結果、JIS G 3601によるせん断強度が表1に示すように、すべてのサンプルで280MPa以上と高い接合強度を示した。なお、せん断強度は、図2に示す試験片を作製し、矢印のように加圧し破断応力を測定して求めた。本発明の方法により、高い接合強度を示すクラッド鋼材が得られることがわかった。
【0018】[実施例−2]母材をJIS G 3101規定されるSS400の厚さ40mmの炭素鋼板とし、合わせ材はJIS G 4303に規定されるフェライト系鋼SUS430の厚さ6mmのステンレス鋼板とし、中間材として表1中のNo.8〜11に示すアモルファス合金箔を介在させて、図1のように重ね、バーナー型大気中加熱炉に挿入し、約20℃/分の昇温速度で所定の温度まで昇温し、該温度で所定の時間保持した後、大気中で放冷してクラッド材とした。
【0019】得られたクラッド鋼板について母材と合わせ材の間の接合強度を求めた結果、JIS G 3601によるせん断強度が表1に示すように、すべてのサンプルで300MPa以上と高い接合強度を示した。なお、せん断強度は、図2に示す試験片を作製し、矢印のように加圧し破断応力を測定して求めた。本発明の方法により、高い接合強度を示出クラッド鋼材が碍られることがわかった。
【0020】
【表1】

【0021】
【発明の効果】本発明の方法によれば、従来のような爆着設備、真空排気設備など特定の設備を必要とせず、汎用設備により、安定した接合強度を有するステンレス鋼と炭素鋼のクラッド鋼材が製造可能で、労力、時間、製造コストが軽減できる。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成11年5月28日(1999.5.28)
【代理人】 【識別番号】100062421
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弘明 (外1名)
【公開番号】 特開2000−343241(P2000−343241A)
【公開日】 平成12年12月12日(2000.12.12)
【出願番号】 特願平11−149594