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【発明の名称】 粉末冶金用粉末の圧縮成形法
【発明者】 【氏名】土田 武広

【氏名】家口 浩

【氏名】関 義和

【氏名】佐藤 正昭

【氏名】赤城 宣明

【氏名】澤山 哲也

【要約】 【課題】例えば鉄粉や鉄基合金粉末の如き粉末冶金用粉末を圧粉成形する際に、成形体密度を効率よく高めることができ、最終成形体の機械的特性や磁気的特性などを一段と高めることのできる圧縮成形法を確立すること。

【解決手段】内壁面に潤滑剤が塗布された成形型内に、潤滑剤が配合された粉末冶金用粉末を充填して圧縮成形する方法において、成形温度を、前記粉末に配合された潤滑剤の融点(Tm)以上、より好ましくはTm以上で且つ[Tm×3]以下に制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内壁面に潤滑剤が塗布された成形型内に、潤滑剤が配合された粉末冶金用粉末を充填して圧縮成形するに当たり、成形温度を、前記粉末に配合された潤滑剤の融点以上とすることを特徴とする粉末冶金用粉末の圧縮成形法。
【請求項2】 成形温度を、上記粉末に配合された潤滑剤の融点(Tm)以上で且つ[Tm×3]以下に制御する請求項1に記載の圧縮成形法。
【請求項3】 前記粉末に配合される潤滑剤の配合量を0.01〜0.20重量%とする請求項1または2に記載の圧縮成形法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば鉄粉や鉄基合金粉末の如き粉末冶金用粉末を圧縮成形する際に、成形体密度を効率よく高めることができ、最終成形体の機械的特性や磁気的特性などを高めることのできる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば鉄粉や鉄基合金粉末の如き粉末冶金用粉末を圧縮成形するに当たっては、圧縮成形の原料粉末に予め潤滑剤を配合しておくことにより粉末の流動性を高め、成形型との摩擦を低減する方法が採用されている。潤滑剤の配合量は、焼結しようとする粉末に対し0.2〜10重量%の範囲が一般的であり(たとえば特開平2−156002号など)、Metal powder report、Vol.42.No.11,p781〜786(1987)でも、潤滑剤の配合量は0.5%のときに最大の圧縮密度が得られると報告されており、現在の実用化例でも、殆どは0.5〜1.0重量%の範囲である。
【0003】その場合、成形体密度を高めるべく成形圧力を高くしても、潤滑剤が原料粉末間の空隙に充満されて密度の向上を阻害するので、高密度成形には自ずと限界があった。かといって潤滑剤の配合量を減らすと、粉末と成形型との摩擦が大きくなるため高圧密化ができず、しかも成形型の寿命を低下させるという問題も生じてくる。
【0004】一方、成形型の内壁面に潤滑剤を塗布しておくと、粉末と成形型との摩擦が低減されることも周知である。しかしながら、原料粉末に潤滑剤が配合されていないため紛末の流動性や充填性が悪く、高圧力で圧縮成形しても高密度の成形体は得られ難い。
【0005】また圧縮成形体の密度を高めるため、原料粉末や成形型を潤滑剤の融点以下(通常は70℃〜120℃程度)に加熱して加圧成形することが米国特許No.4,9555,798号に開示されている。また、特開平5−271709号公報には、潤滑剤が完全に溶融する温度よりも低い温度(具体的には370℃程度以下)に加熱して加圧成形することが示されている。これらの方法は、いずれも潤滑剤が溶融すると粉末の流動性が著しく低下するという知見に基づいている。
【0006】しかしこの場合も、通常の潤滑剤配合量では潤滑剤が成形体内に残存するので、根本的な高密度化対策にはならない。
【0007】そこで、特開平9−272901号公報には、潤滑剤を含まない粉末を使用し、成形型の内壁面に潤滑剤を塗布してから該成形型を150〜400℃に加熱して加圧成形することにより、成形体密度を高める方法を提案している。しかしこの方法では、原料粉末内に潤滑剤が全く配合されていないため紛末の流動性が悪く、結果的に十分な高密度を達成できない。しかもこの方法では、成形体内部の密度バラツキが大きくなるという問題も生じてくる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の様な従来技術の問題点、特に圧縮成形時における粉末の流動性不足の問題や、圧縮型との摩擦の問題を解決し、高密度の圧縮成形体を確実に得ることのできる技術を確立することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手投】上記課題を解決することのできた本発明にかかる圧縮成形法とは、内壁面に潤滑剤が塗布された成形型内に、潤滑剤が配合された粉末冶金用粉末を充填して圧縮成形するに当たり、成形温度を、前記粉末に配合された潤滑剤の融点に設定するところ要旨がある。
【0010】上記方法を実施するに当たり、前記粉末に配合される潤滑剤の配合量は0.01〜0.20重量%の範囲がよく、またより好ましい成形温度は、上記粉末に配合される潤滑剤の融点(Tm)以上で且つ[Tm×3]以下の範囲である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは、圧縮成形体の高密度化を増進すべく、様々の角度から検討を重ねた結果、上記の様に成形型の内壁面に潤滑剤を塗布しておき、これに比較的少量の潤滑剤を配合した紛末冶金用粉末を充填して圧縮成形する際に、加圧成形時の温度を、潤滑剤の融点以上にコントロールしてやれば、上記の目的が見事に達成されることをつきとめた。
【0012】以下、本発明の構成と好ましい実施形態を詳細に説明していく。本発明において粉末冶金用紛末とは、粉末を加圧成形して所定の形状を付与し、場合によってはその後で焼結などの工程を経て任意の形状の成形体を製造するために用いられる粉末を総称する。また本明細書では、成形型と粉末との摩擦や、粉末同志の摩擦を低減するために潤滑剤等が配合されたものも含めて、粉末冶金用粉末ということがある。
【0013】その具体例としては、金属粉末やセラミックス粉末があり、特に成形時に塑性変形を伴う金属粉末に対して本発明は極めて有効に適用されるが、最も代表的なのは、純鉄紛(不純物として少量のC、Mn、Si、P、S、Cr、O、Nなどを含むものを包含する)や、焼結後の強度向上を期してNi、Mo、Mn、Cr、Si、その他の元素を意図的に添加した合金粉(プレアロイ型、拡散型、それらのハイブリッド型など)などである。
【0014】但し合金元素の添加量が過ぎると、鉄粉が硬質化して圧縮性が低下し、粉末冶金用製品としての高密度化を阻害する要因になることがあるので注意すべきである。
【0015】また、焼結後の特性を高めるため種々の合金化元素、たとえばグラファイト、Cu、Ni、Mo等を単独若しくは2種以上配合したものであっても良く、更には少量のバインダーを用いて鉄粉の表面にグラファイト等を付着させた複合粉末であってもよい。
【0016】本発明において極めて重要なのは、圧縮成形時の温度を規定した点にあるので、以下、成形温度を主体にして説明を進める。
【0017】本発明では、原料粉末中に配合される潤滑剤の融点(Tm)を基準にして、成形温度をTm以上、より好ましくはTm以上で且つ[Tm×3]以下の温度に制御するところに特徴を有しており、この様な成形温度を採用することによって、圧縮成形体を著しく高密度化することが可能となる。その理由は次の通りである。
【0018】即ち、上記範囲の成形温度を採用すると、圧縮成形時に潤滑剤が溶融することによって潤滑剤が成形体表面に滲み出し、原料粉末間の空隙から自然に除かれると共に、滲み出した潤滑剤は成形型と粉末との摩擦低減に有効に作用し、圧縮成形体を高密度化できるのである。
【0019】前述した通り従来技術では、粉末の流動性向上の観点から成形温度は潤滑剤の融点以下が好ましいとされていたが、本発明では、潤滑剤の配合量を少な目に抑えることでその様な問題を回避できる。但し、成形温度が高くなり過ぎると、潤滑剤の熱劣化が激しくなって成形型との焼き付きなどの問題が生じてくるので、潤滑剤の融点(Tm)に対し[Tm×3]を超えない様に調整すべきである。
【0020】また成形温度は、粉末の変形抵抗を下げて高密度化を増進するうえでも重要で、使用する原料粉末の種類に応じて、上記好適温度範囲の中から最適の温度条件を選定することが望まれる。
【0021】加熱手段は特に制限されず、粉末自体を適当な温度に予熱しておくか、成形型に充填した後成形型からの伝熱を利用して加熱する方法、等を採用できるが、成形型の温度が低いと加圧成形中に粉末の温度が低下して圧縮性が低下するので、成形時の温度を適正に維持できる様な加熱法を採用することが必須となる。
【0022】粉末として鉄粉を使用する場合を例に挙げると、成形時の温度が80℃未満の低温では、鉄粉の変形抵抗が高いため塑性変形能が不十分となって高密度化が達成され難く、一方、成形温度を高めることによる密度上昇は約500℃で飽和し、それ以上に成形温度を高めることは経済的に無駄であるばかりでなく、却って成形型の寿命短縮などの障害が現れてくる。上記の理由を加味して、より好ましい成形温度の下限は100℃、より好ましい上限温度は250℃である。
【0023】潤滑剤の添加量については、全く添加しない(0%)と加圧中の潤滑効果が得られないので成形体密度が向上せず、しかも成形体内部の密度バラツキが大きくなり、焼結時の収縮が部分的に不均一になって寸法バラツキを生じる原因になる。潤滑剤を少量配合すると成形体密度のバラツキは解消されるが、配合量が多くなり過ぎると、成形体内に潤滑剤が取り残されて高密度化が却って阻害される。
【0024】従って、潤滑効果を有効に発揮させつつ過剰配合による上記難点を回避するには、潤滑剤配合量を0.01重量%以上、より好ましくは0.02重量%以上で、0.8重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下、更に好ましくは0.10%以下の範囲から選定するのがよい。
【0025】潤滑剤の種類には特に制限がなく、要は成形可能な温度域で溶融するものであれば全ての潤滑剤を使用できるが、最も一般的なのはステアリン酸等の高級脂肪酸の金属塩あるいはやワックス系潤滑剤などである。
【0026】成形型の内壁面に塗布される潤滑剤の種類も特に制限されず、例えばステアリン酸金属等の高級脂肪酸金属塩、ワックス系、二硫化モリアデン系、BN系、グラファイト系など、粉末冶金用として知られた全ての潤滑剤を使用できる。上記潤滑剤は、単独で使用し得る他、2種以上を併用することも可能である。また原料粉末の種類や成形時の加熱温度なども考慮して、最適の潤滑剤を選択して使用するのがよい。
【0027】潤滑剤を成形型の内壁面に塗布する方法としては、固体状態で付着させる方法、溶媒に溶解もしくは分散させ刷毛塗りや噴霧付着させる方法、潤滑剤を加熱溶融させて塗布する方法などを採用すればよい。
【0028】また成形型の加熱法としては、外部からヒーター加熱、通電によるジュール加熱、高周波加熱、赤外線加熱など任意の方法を採用できる。なお、成形型に充填された粉末が加熱された成形型によって温められるまでに多少の時間がかかるので、より短時間で圧縮成形を完了させるには、成形型内へ充填する前に粉末を適当な温度に予熱しておくことも有効である。但し、予熱温度が高すぎると、鉄粉が酸化されたり焼結することがあるので、注意すべきである。
【0029】圧縮成形時の好ましい圧力は5トン/cm2 以上、15トン/cm2 以下範囲であり、成形圧力が上記範囲未満では例えば鉄粉主体の原料粉末を使用したときに加圧による塑性変形が十分に進まず、圧密化不足になる嫌いがあり、また上記上限圧力で高圧密化は飽和するので、15トン/cm2 を超えて過度に成形圧を高めることは経済的にも又設備面からも無駄である。
【0030】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】実施例V型混合器を用いて、表1に示す配合組成で原料粉末を30分間混合する。得られた各混合粉末を約20gづつ秤量し、所定の温度に加熱した金型(直径31.5mm×深さ12.5mm)に充填し、表1,2に示す条件で加圧成形した。得られた成形体について下記の方法で成形体密度を測定し、表2に示す結果を得た。なお成形体の密度は、成形体の体積と重量から算出した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】表1,2より次の様に考えることができる。No.1〜8は、型内潤滑剤および粉末配合潤滑剤のいずれにもステアリン酸Liを使用し、加圧成形時の温度を種々変更した場合の成形体密度に与える影響を調べたもので、成形温度を潤滑剤の融点よりも高くしたNo.5〜8では、成形温度が潤滑剤の融点よりも低いNo.1〜4に比べて高い成形体密度が得られている(図1参照)。
【0035】No.9〜16は、型内潤滑剤としてグラファイト系潤滑剤、粉末配合潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を使用し、加圧成形時の温度を種々変更した場合の成形体密度に与える影響を調べたもので、成形温度を粉末配合潤滑剤の融点よりも高くしたNo.12〜16では、成形温度が潤滑剤の融点よりも低いNo.9〜11に比べて高い成形体密度が得られている(図2参照)。
【0036】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、冶金用粉末内に配合する潤滑剤の融点を基準にして、加圧成形時の温度を該潤滑剤の融点以上に設定することにより、高密度の圧縮成形体を簡単且つ確実に得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成10年11月5日(1998.11.5)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司 (外1名)
【公開番号】 特開2000−144206(P2000−144206A)
【公開日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願番号】 特願平10−315031