トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金




【発明の名称】 焼結ソフトフェライト材料の製造方法
【発明者】 【氏名】山下 治

【氏名】槇田 顕

【氏名】西郷 恒和

【氏名】関戸 正勝

【氏名】石井 康史

【氏名】野呂 良久

【要約】 【課題】成形性を著しく向上させて成形圧力を下げると同時に、脱バインダー時のヒビ、割れが発生するのを防止し、低コストでしかも非常に優れた磁気特性を有する大型の焼結ソフトフェライト材料の製造方法の提供。

【解決手段】Mn‐Zn系、Ni‐Zn系などの大型ソフトフェライトの製造において、寒天バインダーを添加して混練、圧縮成形、真空中又は不活性ガス中での脱バインダー、焼結、HIP処理することにより、割れなどの損傷が無く、大型で高密度で磁気特性の優れたソフトフェライトが効率よく生産できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ソフトフェライト粉末に所定温度によりゾル‐ゲル変態を起こす寒天と水を添加し、加熱混練した後、圧縮成形し、得られた成形体を真空中又は不活性ガス雰囲気中で脱バインダーし、その後、焼結及び熱間静水圧プレスして磁気特性の高い大型焼結体を得る焼結ソフトフェライト材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、Mn‐Zn系、Ni‐Zn系の大型ソフトフェライト材料の作製を可能にする方法に係り、ソフトフェライト粉末に寒天と水を添加し、加熱混練して成形性を向上させると同時に、真空中又は不活性ガス雰囲気中で脱バインダーすることにより、成形乾燥後の成形体強度を著しく向上させて、割れなどの不良を防止して大型ソフトフェライトの製造を可能にした焼結ソフトフェライト材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、ソフトフェライト材料は粉末自体が固くて脆く塑性変形しないために、粉末にバインダーを添加して造粒した造粒粉末をプレス成形することによって作製されている。
【0003】また、複雑形状品は熱可塑性のバインダーと混練した後、射出成形によって製作されている。さらにヨーク材、トランス、磁気ヘッドを初めとする電子部品材料の多くがこれらの方法によって製造されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】一般に、ソフトフェライト材料を造粒後にプレス成形して製作する場合、成形体を大型化すればするほど、成形圧力は圧縮面積に比例して大きくなるために非常に大きなプレス機が必要となる。
【0005】また、造粒時に多量のバインダーを添加して造粒するために、脱バインダー時にヒビ、割れが発生しやすく、特に成形体が大きくなればなるほど脱バインダーし難くなるので、割れがより顕著に発生し易くなり、射出成形の場合にも、成形体が大きくなれば、脱バインダー時に最も割れが発生し易い問題があった。
【0006】この発明は、ソフトフェライト材料の製造方法における前記の問題を解消し、成形性を著しく向上させて成形圧力を下げると同時に、脱バインダーを容易にして、低コストでしかも非常に優れた磁気特性を有する大型の焼結ソフトフェライト材料の製造方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者らは、大型ソフトフェライトの製造方法、特に、脱バインダー時の割れの発生について種々検討した結果、成形し易く且つ脱バインダーし易いバインダーとして寒天バインダーに着目した。寒天バインダーを用いると極めて低い成形圧力で成形できるとともに従来のスプレー造粒粉による圧縮成形体もしくは熱可塑性バインダーとの混練物による射出成形体に比べて脱バインダー時にヒビ、割れが発生し難くなることを知見した。
【0008】さらに発明者らは、脱バインダー時の割れ発生について種々検討した結果、従来、大気中で行われていた脱バインダー処理時の雰囲気を真空中又は不活性ガス中とすることで、割れの発生がほぼ解消でき、大型の焼結ソフトフェライト材料を低コストでしかも非常に優れた磁気特性を有する材料として製造できることを知見し、この発明を完成した。
【0009】すなわち、この発明は、ソフトフェライト粉末に所定温度によりゾル‐ゲル変態を起こす寒天と水を添加し、加熱混練した後、圧縮成形し、得られた成形体を真空中又は不活性ガス雰囲気中で脱バインダーし、その後焼結及び熱間静水圧プレスして磁気特性の高い大型焼結体を得る焼結ソフトフェライト材料の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】この発明による焼結体の製造方法を説明すると、所定の組成を有するMn‐Zn系あるいはNi‐Zn系フェライト粉末に所定温度によりゾル‐ゲル変態を起こす寒天と水を主成分とするバインダー(以下寒天バインダーという)を添加し、加熱混練する。該混練物は、一般に非常に流動性に優れるために10kg/cm2以下の低圧力で圧縮成形でき、しかもバインダー中の90vol%以上が水であるために成形体を乾操した後には脱水した細孔跡が残り、これが脱バインダー時のバインダーの通り道となるので、例えば100×200×50mm程度の大型成形品でもヒビ、割れが発生し難くなる。
【0011】また、成形性に優れているので成形密度も向上し易く、混練物も均一密度で成形できるので、焼結後の焼結体も緻密になると同時に、変形も非常に少ない特長を有する。
【0012】このように寒天バインダーは、脱バインダーの困難な大型成形品の成形には最適であるが、脱バインダー時のヒビ、割れの発生を全て解消することはできない。元来、ソフトフェライト材料は酸化物であることから、脱バインダーや焼結などの熱処理工程は大気中雰囲気で行われていたが、この発明では、かかる雰囲気を真空中又は不活性ガス雰囲気中の非酸化性雰囲気とすることにより、脱バインダー時のヒビ、割れの発生をほぼ解消可能となった。
【0013】この発明のヒビ、割れの発生の解消機構の詳細は不明であるが、寒天バインダーを用いた成形と大気中の脱バインダー、従来バインダーを用いた成形と真空中の脱バインダーなどのいずれの工程も、成形体のヒビ、割れの発生を解消するすることはできない。ところが、この発明による寒天バインダーを用いた成形と真空中又は不活性ガス雰囲気中の脱バインダー処理の組合せのみが、その相乗効果で脱バインダー時のヒビ、割れの発生をほぼ解消できる。
【0014】使用原料Mn‐Znフェライトの成分としては、Fe2O3は主原料であり、51モル%未満、56モル%を超えると透磁率が15000以上及び保磁力が0.03Oe以下が得られないので51〜56モル%が好ましい。MnOは21モル%未満、38モル%を超えると透磁率15000以上及び保磁力が0.03Oe以下が得られず、21〜38モル%が好ましい。ZnOは6モル%未満、25モル%を超えるとMnOと同様に、透磁率が15000以上、保磁力が0.03Oe以下が得られないので、6〜25モル%が好ましい。
【0015】また、透磁率15000以上が望ましい理由は、トランス、ヨーク材さらには磁気ヘッド等の電子部品にも適用できることを目的としたためであり、透磁率を15000以上にするためには、保磁力を0.03Oe以下とする必要がある。
【0016】次にNi‐Znフェライトの成分としては、Fe2O3は49モル%未満ではZnOが析出して組織が2相となり50モル%を超えると電気抵抗率が102Ωm以下となるので、49〜50モル%が好ましい。NiOは15モル%未満ではキュリー温度が室温以下となり、25モル%を超えると透磁率2000以下となるので、15〜25モル%が好ましい。ZnOは25モル%未満では透磁率2000以下となり、35モル%を超えるとキェリー温度が室温以下となるので、25〜35モル%が好ましい。また透磁率、電気抵抗率の下限設定値は、Mn‐Znフェライトの場合と同様に、トランス、ヨーク材さらには磁気ヘッド等の電子部品にも適用できるようにすることが好ましい。
【0017】混練・圧縮成形ソフトフェライト粉末に添加するバインダーとしての寒天の添加量は、0.6〜4.0wt%が好ましい。その添加量が下限値未満になると圧縮成形時の強度が著しく低下するとともに、圧縮圧力が高くなり好ましくなく、また添加量が上限値を超えると焼結後の焼結密度が低下するので好ましくない。
【0018】また、寒天と混合して用いる水の添加量は、ソフトフェライト粉末に対して7〜25wt%が好ましく、7wt%未満では成形時の流動性が悪くなり、ウエルドが発生しやすくなり、25wt%を超えると圧縮成形密度が低下して結果的に焼結密度の低下に繋がる。より好ましくは18〜22wt%である。
【0019】混練温度は、寒天がゾル化する80〜95℃の温度が適している。圧縮成形時の金型温度は、70〜90℃が好ましく、70℃未満では流動性が不十分となりウエルドが発生し易くなり、また90℃を超えると圧縮成形体中に水の蒸発による気泡が発生し、焼結後の焼結体中にボイドが発生する原因になるため好ましくない。
【0020】圧縮成形後の取り出しは室温まで冷却して寒天が完全にゲル化した後に取り出せばよい。圧縮成形圧力は50kg/cm2未満ではウエルドが発生し成形密度が不均一となり、焼結後に曲がりやうねりが発生するが、100kg/cm2を超えると金型のダイスとパンチの間に混練物が浸入してバリが発生しやすくなるので、50〜100kg/cm2が好ましい。
【0021】脱バインダー処理得られた成形体は、乾燥の後、脱バインダー処理を行なう。脱バインダー処理は、上述のように、真空中またはArやN2などの不活性ガス雰囲気中で処理する。例えば、真空中又は不活性ガス中で、室温から500℃まで100℃/hrで昇温し、500℃で2時間保持するなどの方法が適用できる。昇温速度や保持温度などは、成形体の原料種、寸法などに応じて適宜選定することができる。処理雰囲気は、不活性ガスによる加圧下あるいは真空減圧下などいずれでもよく、不活性ガスを導入しながら真空減圧する方法なども適用できる。
【0022】焼結・熱間静水圧プレス脱バインダー処理後は、引き続き焼結及び熱間静水圧プレス(HIP)を行なう。工程としては、脱バインダー処理と連続して行なってもよいし、別工程としてもよい。同様に焼結とHIPについても、焼結後連続してHIPを行なってもよいし、別工程としてもよい。
【0023】焼結雰囲気は特に問わないが、通常は大気中で行なう。脱バインダー後引き続き焼結を行なう場合は、脱バインダー時の真空または不活性ガスの雰囲気から大気に戻したのち焼結すればよく、脱バインダー時の雰囲気のまま焼結することも可能である。焼結温度、焼結時間は成形体の原料種、寸法などに応じて、焼結後の焼結体の密度が理論密度の95%以上になるように適宜選定することが望ましい。焼結温度は、1050℃未満では焼結密度が理論密度の95%以上とならず、1200℃を超えると後工程のHIP処理において結晶粒の成長が不十分となり、透磁率が上記の設定値未満になるため、通常は1050℃〜1200℃が好ましい。
【0024】また、HIPは、通常Arガス加圧下において、焼結温度より100℃以上高い1200℃〜1400℃程度で行なうが、HIP後の最終製品の密度が理論密度の99%以上となるようにその条件を適宜選定することが望ましい。
【0025】HIP処理温度は、1200℃未満では結晶粒の成長が不十分となり、1400℃を超えると、媒体であるArガスによるフェライトの還元が顕著になり品質が劣化するので、1200〜1400℃が好ましい。HIP処理温度に加熱する際の昇温速度は、150℃/hrを超えると大きな結晶粒は得られるものの結晶粒内に気孔を含んだものになるため、150℃/hr以下で昇温することが好ましい。HIP処理圧力は、500kg/cm2未満では該処理による高密度化が十分行えず残留気孔が生じ、逆に2000kg/cm2を超え高圧化しても作用、効果上意味がないので、500〜2000kg/cm2が好ましい。
【0026】例えば、脱バインダー処理、焼結、HIP処理を連続して行なう場合であれば、真空中または不活性ガス中で室温から500℃まで100℃/hrで昇温し、500℃で2時間保持する脱バインダー処理後、雰囲気を大気に戻し、200℃/hr以下の昇温速度で昇温し、1050℃〜1200℃に加熱して焼結し、焼結密度を理論密度の95%以上とした後、さらに昇温速度150℃/hr以下で昇温し、Arガス加圧下において、焼結温度より100℃以上高い、1200℃〜1400℃に加熱保持してHIP処理を行い、最終密度を理論密度の99%以上とするなどの方法が採用できる。
【0027】
【実施例】実施例1ソフトフェライト原料粉末として、表1に示すような配合値で秤量し、ボールミルで十分混合した後、空気中で900℃の仮焼結を行い、さらにボールミルで粉砕して表1に示すような粒径のソフトフェライト原料粉末を作製した。
【0028】この原料粉末に表2に示すような添加量で寒天と水を添加し、攪拌しながら90℃まで加熱した。該混練物を圧縮成形機で金型温度80℃に設定し、成形圧力100kg/cm2で100×200×50mmの大型成形体と30φ×20φ×5のリングを作製した。
【0029】室温で乾燥した後、表3に示すような脱バインダー、焼結温度で焼結を行って表4に示す寸法の焼結体を得た。表3に示すようにこの発明による焼結体にはヒビ、割れの発生はなかったが、大気中で脱バインダー処理した比較例の焼結体にはヒビ、割れの発生が見られた。次にヒビ、割れが発生した比較例No.7,8を除いて、表4に示すHIP条件でHIP処理した後、磁気特性、平均結晶粒径、焼結密度を測定した。その結果を表5に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
【発明の効果】この発明は実施例に示す如く、Mn‐Zn系、Ni‐Zn系などの大型ソフトフェライトの製造において、寒天バインダーを添加して混練、圧縮成形、真空中又は不活性ガス中での脱バインダー、焼結、HIP処理条件を組み合わせることにより、ヒビ、割れなどの損傷が無く、大型で高密度で磁気特性の優れたソフトフェライトが効率よく生産できる。
【出願人】 【識別番号】000183417
【氏名又は名称】住友特殊金属株式会社
【識別番号】591135059
【氏名又は名称】清水食品株式会社
【出願日】 平成10年11月13日(1998.11.13)
【代理人】 【識別番号】100073900
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良久
【公開番号】 特開2000−144204(P2000−144204A)
【公開日】 平成12年5月26日(2000.5.26)
【出願番号】 特願平10−323057