| 【発明の名称】 |
局所樹脂含浸処理方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】上原 正人
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、焼結金属の素材の加工部分のみを局所的に樹脂含浸させる方法を提供するものである。
【解決手段】液状の熱硬化性樹脂が浸透保持された部材を、含浸深さに応じた時間だけ焼結金属材料の所望箇所に当接し、しかる後加熱して硬化させることにより局所樹脂含浸処理方法を実現するものである。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】液状の熱硬化性樹脂が浸透保持された部材を、含浸深さに応じた時間だけ焼結金属材料の所望箇所に当接し、しかる後加熱して硬化させることを特徴とする局所樹脂含浸処理方法。 【請求項2】前記焼結金属の所望箇所が切削加工部分である請求項1に記載の局所樹脂含浸処理方法。 【請求項3】前記液状の熱硬化性樹脂が浸透保持された部材がフェルトである請求項1又は2に記載の局所樹脂含浸処理方法。 【請求項4】前記焼結金属材料がベアリングキャップである請求項1乃至3に記載の局所樹脂含浸処理方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、焼結金属の所望部分のみを樹脂含浸させる方法に関し、特に焼結金属に切削加工を施す際に加工部分のみを含浸処理する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】焼結金属素材について、最近はより複雑な形状要求や寸法精度の要求が高まり、仕上げ加工として切削加工が求められるようになってきた。ところが、焼結金属は粉末金属を圧粉して成形したものを溶融温度以下で焼結したものであるため、気孔率は高く表面材質は不均一である上に、硬度は高いものである。従って、その素材に切削加工を施そうとすると切削工具の刃は焼結金属との接触によってガリガリと振動し、きれいに切削できないばかりか工具の刃を摩耗させてしまうという問題を抱えていた。この問題を解決する技術手段として、焼結金属の内部空孔に樹脂を含浸させて切削加工を行うことが知られている。この方法によると、加工は軟質材料を扱うようにスムーズに実施できる。この切削加工性向上の解明は十分ではないが、内部空孔は樹脂により充填され、固体材質としては均質に近くなって切削工具の振動が押さえられると共に、樹脂が一種の潤滑作用をし、切削加工性が向上するためと解される。 【0003】樹脂含浸させた金属焼結体が切削加工性に優れていることを、本出願人と日本ロックタイト株式会社の共同実験結果を例にして紹介する。含浸しないステンレス系のSUS304粉末焼結体と同材質の溶製材そして樹脂含浸したSUS304粉末焼結体を試料として、ドリル穴空け加工の比較試験を実施した。結果は図4のグラフから明らかなように、グラフA:切削速度8m/minの低速加工ではドリルのトルクは樹脂含浸していない焼結体は溶製材の約1割り増しの値で、両者は加工穴が増えるに従って増大傾向を示すのに対し、樹脂含浸した焼結体は半分以下の値で加工穴が増えてもほぼ一定の値を示している。スラスト力は樹脂含浸していない焼結体は溶製材の約1.4割り増しの値で、両者は加工穴が増えるに従って顕著な増大傾向を示すのに対し、樹脂含浸した焼結体は1/3程度の値で加工穴が増えてもほぼ一定の値をしめしている。 グラフB:14.4m/minの加工速度においては、トルクにおいて含浸していない焼結金属は当初は溶製材の約9割程度であったが加工穴数が多くなるにつれて急増傾向を示し、10個を越えたところで破損してしまった。溶製材は加工穴数が増えるに従い増加するが、10を越えると一定となる傾向を示した。樹脂含浸した焼結体は当初の溶製材の約1/3程度で加工数が増えても一定である。スラスト力においては含浸していない焼結金属は当初溶製材とほぼ同一であるが、加工穴が増えるに従い急激に増加し10を越えたところで破損するが、その前の切削抵抗は前駆症状として急激に増加する。樹脂含浸した焼結体は当初の溶製材の1/3以下で加工数が増えても一定である。 グラフC:26.2m/minの高速加工でのトルクは、含浸していない焼結金属は1つ目の加工途中で破損、溶製材は2つ目の加工途中で破損してしまったが、樹脂含浸した焼結体はトルクも、スラスト力も加工速度に関係なくほぼ一定の値を示している。なお、この試験では含浸剤はロックタイト社のレジノール90C(商品名)、工具としてφ5mmHSSのドリルを用い、切削条件として送り量0.1mm/rev.で実施したものである。以上のように樹脂含浸した焼結体は、トルクにおいてもスラスト力においても格段に低い値を示し、加工穴数が増えても加工速度が速くなっても格別の変化はみられない。切削加工に適さないとされていた金属焼結体が樹脂含浸を施すことによって溶製材にも増して加工性に富んだ素材となることが確認できた。 【0004】次に鉄系の試料に対する旋盤加工における切削抵抗試験の結果を図5A,Bに例示する。切削抵抗としては工具の受ける力、主分力(回転方向)、送り分力(送り方向)、背分力(回転半径方向)の三種をデータとした。無含浸焼結体では溶製材と比較してそれぞれが約50〜100N大きい値を示し、このため従来から焼結金属は切削加工の必要な素材としては不向きとされてきたところである。ところが、樹脂含浸を施した焼結金属の場合には溶製材でさえ250〜300N程度の値をとっている主分力については90から100N程度、送り分力は溶製材が150から200N程度であるものが40N程度、背分力では溶製材80〜100N程度であるものが20N程度と驚異的に低い値で、しかも切削速度に関係なくほぼ一定の値を示す。なお、この試験には工具として超硬P10のチップを、ホルダとしてWIDI社製のWIDAX80HBP2020Rを、刃部形状は(0,6,11,7,30,0,0,4)のものを用い、切削条件としては切り込み量1.0mm、送り量0.1mm/rev.として実施した。以上の結果から明らかなように従来切削加工性に劣るものとされてきた焼結金属体も、樹脂含浸処理を施すことにより、極めて切削加工性に優れた素材に変身することが理解されよう。 【0005】ところがこの樹脂含浸処理は、焼結金属の素材を真空に引いた状態で液状の熱硬化性樹脂中にどぶ漬けし、素材全体を樹脂含浸させるものであった。切削加工部分は局所であっても、素材全体を樹脂含浸させねばならず、使用する樹脂の量も加工も大がかりとなり、加工後は残留する樹脂を除去する必要のある場合もあって、処理のコストが高くつき採算が採れないため、この処理方法は限られた部材にしか適用できなかった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、焼結金属の素材の加工部分のみを局所的に樹脂含浸させる方法を提供するものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】液状の熱硬化性樹脂が浸透保持された部材を、含浸深さに応じた時間だけ焼結金属材料の所望箇所に当接し、しかる後加熱して硬化させることにより局所樹脂含浸処理方法を実現するものである。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明の局所樹脂含浸処理方法を実施するためには、まず焼結金属の素材の加工部分に樹脂を含浸させるための治具を用意する必要がある。すなわち、液状の熱硬化性樹脂が浸透保持された部材が素材の加工面の形状に合うように形成すると共に、その部材が加工面と当接されるように治具を形成しなければならない。治具は形状を保持する基体と、その表面に貼着されるなどして配設されるシート部材とからなる。このシート部材はフェルトやスポンジのような液状の熱硬化性樹脂を滲み込ませ、浸透保持させる多孔性や繊維物質のようなものである。基体の材料は基本的に変形し難いものであればよく、プラスチック、金属、木製等であってよいが、治具を乗せる場合には適度の液状樹脂の滲み出しを促すためそれに応じた重さが必要である。基体は被加工品である焼結金属体の加工部分形状と面接触できるように形状が作られる。 【0009】シート部材に十分な量の液状の熱硬化性樹脂を滲み込ませておき、治具に被加工品である焼結金属の素材を嵌合させたり、係合させたり、載置させたりの形態で配置し、加工部分の面がシート部材に接触するようにさせる。加工面とシート部材の接触は被加工部材である焼結金属に治具が嵌合されたり、係合されたり、載置されたりといった逆の形態であってもよい。この接触によってシート部材に滲み込まれていた液状の熱硬化性樹脂が加工面に滲み込んで含浸してゆく。樹脂含浸が加工深さの層に達するまでの間この接触状態は保たれる。所望の深さまで樹脂含浸が進んだ時点でシート部材の接触を解き、加熱処理して樹脂を硬化させる。この状態で、焼結金属素材は加工部分についての樹脂含浸が施された状態となっているので、これに対して切削等の加工処理を施すことができる。加工部分は樹脂含浸が施されているので、加工性は前述したように抜群に優れている。場合によって、加工処理後に残留樹脂を除去する処理を要するが、そのケースにおいても局所の含浸であるため、残留樹脂の量は極めて僅かな量であり、熱処理飛散させても発煙量は少なくて済む。使用する樹脂量も、熱処理による発煙も少ないということは省資源、環境にも優しいということであり、本発明の技術的効果、経済的効果に加え環境的効果も顕著である。 【0010】 【実施例1】本発明を自動車の車輪の軸受けであるベアリングキャップ1の部材に適用した例を示す。図2に示されるように、ベアリングキャップ1はダイキャストで作られたアルミニュウム部材3に挟まれた状態で焼結金属の芯部材10が配置され、形成されている。焼結金属は仕上がり面が均質滑らかではないという欠点を有しており、仕上がり精度が厳しく要求されるベアリングと接触する軸受け面は加工の必要性が生じるが、その加工は大きな技術的課題であった。加工性を良くするために樹脂含浸を施せばよいのであるが、部材そのものがかさのある物であるため、従来の技術で部材全体に樹脂含浸を施すには大きな設備と大量の樹脂を要し、とても採算が合わない。そこで、本発明の局所樹脂含浸処理方法によって、ベアリングキャップの部材に焼結金属の採用し、その加工を可能にするものである。 【0011】焼結金属によって形成されたベアリングキャップ芯部材10は図示していないベアリングを介して軸を受ける半円筒状に凹部となったベアリング受け面11が形成されている。このベアリングキャップ芯部材10を図1に示されるように前記凹部11が連続するように複数個並べて配列した時、その連続する凹部にぴったりと嵌合するような円筒状の治具2を準備する。この治具2はプラスチック製の基体であるドラム21と円筒軸のような把持シャフト22、それにフェルトで作られた円筒面を被覆するシート部材23とからなる。このフェルト製のシート部材23には十分な量の液状の熱硬化性樹脂を予め含ませておく。この円筒状の治具2を破線矢印で示したように前記ベアリングの受け面11の凹部列に係合載置する。場合によっては反対に治具2の上に焼結金属素材を乗せる形態でも良い。そうすることで治具2の円筒面に被覆されているフェルトが被加工品である焼結金属のベアリング受け面11と面接触されることになる。フェルトには液状の熱硬化性樹脂が予め含ませてあるので、その接触によって液状の樹脂が加工面であるベアリング受け面11に徐々に含浸されてゆく。加工深さを勘案し、2mmの層まで含浸が進んだとき、治具を外し、熱処理工程に廻す。この処理によって、焼結金属の素材は加工する部分に限定された局部樹脂含浸が実現されている。 【0012】加工する部分に局部樹脂含浸が実現されたベアリングキャップ芯部材10は、図2に示されるとおりアルミニュウム製のダイキャストの軸受け端部材3にサンドイッチ状に挟持された状態で嵌合される。ベアリング受け面はこの軸受け端部材3にも31として形成されており、図示の形態でベアリングキャップは軸受けを構成し使用されるものである。この一体とされた形態でベアリング受け面11,31の切削加工が施される。このベアリング受け面11,31は軸受けとしての機能から、その寸法精度は厳しい要求がなされるが、ベアリングキャップ芯部材10の加工面であるベアリング受け面11は樹脂含浸が2mmの深さまで実現されているので切削加工はスムーズである上、一体に接合されている軸受け端部材3のベアリング受け面31も同時に切削加工が施されるため、連続した精度の良いベアリング受け面が加工実現できる。なお、含浸層の厚さが薄く加工途中で樹脂含浸されていない焼結金属層に達してしまうと急に工具がガリガリと音を発し、加工が困難となる。 【0013】 【実施例2】次に、本発明をボルトに適用した例を示す。図3に示すように板状の治具5にボルト4を嵌合する穴51をマトリックス状に配列して設けておく。この穴の周面には2mm程度のスポンジの層52を形成する。スポンジ層52には予め液状の熱硬化性樹脂を含ませておき、その穴にボルト4を差し込んでゆく。穴の深さはネジ切り加工部41の寸法に、穴の径はボルトの径12mmにスポンジ層の厚さ2mm+2mmを加えた寸法よりやや小さめの15mm程度に形成する。ボルトを差し込み嵌合した際、ボルトを確実に保持すると共にスポンジに含ませた液状の樹脂を潤沢に滲み出させるためである。ネジ加工の深さ2mm程度まで含浸が進んだところでボルト4を治具5から外し、熱処理して樹脂を硬化させる。ネジ切り加工する部分に局部樹脂含浸が実現されたボルト4は工作機械によりネジ切り加工が行われる。加工性は良く残留樹脂も少ないのは実施例1と同様である。 【0014】上記の実施例では液状の熱硬化性樹脂が浸透保持されるシート部材として、フェルトとスポンジを例示したが、液体を滲み込み含有保持するとともに接触によって滲み出させるものであれば、適宜の材料が使用できる。治具基体を構成する材質としてはプラスチック、金属、木質に限らず、シート部材を保持し被加工面と面接触できるものであればよく、有る程度の弾性を有する材料でもよい。 【0015】 【発明の効果】本発明は、液状の熱硬化性樹脂が浸透保持された部材を、含浸深さに応じた時間だけ焼結金属材料の所望箇所に当接し、しかる後加熱して硬化させることにより局所樹脂含浸処理方法を実現するものであるため、切削加工を施す部分には樹脂含浸がなされており、その機械加工性は極めて良い上、使用する熱硬化性樹脂の量は少なくて済み、従来のどぶ漬け処理するもののように大規模な設備を要せず、残留樹脂の量も少なくなるので後処理時の発煙量も少ない。すなわち、技術的効果、経済的効果、環境上の効果と数々の効果を有するものである。この発明は、従来、高硬度で潤滑剤の補充の必要がない等の利点から、素材として焼結金属を使用したいが機械加工性の悪さから使用できなかった部材に広く用途の道を開くものである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】598136013 【氏名又は名称】グローバル・コーティング株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年10月5日(1998.10.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100110515 【弁理士】 【氏名又は名称】山田 益男 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−109906(P2000−109906A) |
| 【公開日】 |
平成12年4月18日(2000.4.18) |
| 【出願番号】 |
特願平10−282786 |
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