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【発明の名称】 金属粉末の製造方法及び装置
【発明者】 【氏名】宇波 繁

【氏名】小倉 邦明

【要約】 【課題】この発明の目的は、酸素含有量の低い金属粉末を少量の有機物質を噴霧して低コストで製造する方法を提供することにある。

【解決手段】溶融金属を噴霧された水で粉化する金属粉末の製造方法において、流出する溶融金属に向けて水を噴霧し、且つ前記水とは別に熱分解して還元性ガスを発生する有機物質を前記溶融金属に向けて噴霧することを特徴とする金属粉末の製造方法である。また、流出口を有する溶融金属収容容器と、該溶融金属収容容器から流出する溶融金属を粉化するための水を噴霧するノズルと、熱分解して還元性ガスを発生する有機物質を溶融金属に向けて噴霧するノズルと、粉化した金属と水とを収容する噴霧槽とを備えたことを特徴とする金属粉末の製造装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶融金属を噴霧された水で粉化する金属粉末の製造方法において、流出する溶融金属に向けて水を噴霧し、且つ前記水とは別に熱分解して還元性ガスを発生する有機物質を前記溶融金属に向けて噴霧することを特徴とする金属粉末の製造方法。
【請求項2】 請求項1において、前記有機物質の噴霧方向は溶融金属を粉化する水の交差点に向けてられていることを特徴とする金属粉末の製造方法。
【請求項3】 流出口を有する溶融金属収容容器と、該溶融金属収容容器から流出する溶融金属を粉化するための水を噴霧するノズルと、熱分解して還元性ガスを発生する有機物質を溶融金属に向けて噴霧するノズルと、粉化した金属と水とを収容する噴霧槽とを備えたことを特徴とする金属粉末の製造装置。
【請求項4】 請求項3において、前記有機物質を噴霧するノズルは溶融金属を粉化する水の交差点に向けてられていることを特徴とする金属粉末の製造装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、水アトマイズ法によって溶融金属から金属粉末を製造する方法及び装置に係り、特に金属粉末の酸化を防止し、酸素含有量の低い金属粉末を製造する方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】噴霧媒を用いて溶融金属を粉化する金属粉末の製造方法は、大別して噴霧媒として気体を用いるガスアトマイズ法と、噴霧媒として水を用いる水アトマイズ法がある。前者のガスアトマイズ法は、噴霧媒として不活性ガスを用いることによって、酸化の少ない金属粉を製造できるが、ガスの冷却能力が小さいために粉化された金属粉末の冷却が遅く、冷却途中で表面張力の作用によって球状化した金属粉末となる。このため、金属粉末の焼結性が悪く粉末冶金用の金属粉末の製造には適していない。
【0003】一方、水アトマイズ法は、噴霧媒として水を用いるので冷却速度が大きく、粉化された金属の粒子は焼結性の良い不規則形状となるが、粉化された金属が噴霧雰囲気中の酸素あるいは噴霧媒である水の分解によって発生する酸素により酸化されるため、粉末冶金用の金属粉末として使用するためには、水アトマイズ後に還元処理を必要とする問題があった。
【0004】そこで、水アトマイズ法における酸化防止方法として、特開昭58−141306号公報では、噴霧媒にアルコールを添加した水を用いる方法が、特開平5−195024号公報では噴霧媒にアミノ酸を添加した水を用いる方法が、特開平7−138619号公報では噴霧媒にアミン系の酸化抑制剤を添加した水を用いる方法が開示されている。これらの方法は、溶融金属の熱で分解し還元性ガスを発生する有機物質を水に添加し、溶融金属を粉化する噴霧媒として噴霧するものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記有機物質を噴霧媒である水に添加する方法では、高価な有機物質を大量に使用するために、コスト上昇の要因となる問題があった。この発明の目的は、上記の問題の解決を図るものであり、酸素含有量の低い金属粉末を少量の有機物質を噴霧して低コストで製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】さて、本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水とは別に、溶融金属に向けて有機物質を噴霧することが、少量の有機物質で金属粉末の酸化を抑制することに極めて有効であるとの知見を得た。すなわち、この発明は、溶融金属を噴霧された水で粉化する金属粉末の製造方法において、流出する溶融金属に向けて水を噴霧し、且つ前記水とは別に熱分解して還元性ガスを発生する有機物質を前記溶融金属に向けて噴霧することを特徴とする金属粉末の製造方法である。前記有機物質の噴霧方向は溶融金属を粉化する水の交差点に向けるのがよい。前記有機物質の噴霧量は、粉化する金属の単位重量当たり5〜30ml/kgとするのが好ましい。
【0007】また、流出口を有する溶融金属収容容器と、該溶融金属収容容器から流出する溶融金属を粉化するための水を噴霧するノズルと、熱分解して還元性ガスを発生する有機物質を溶融金属に向けて噴霧するノズルと、粉化した金属と水とを収容する噴霧槽とを備えたことを特徴とする金属粉末の製造装置である。前記有機物質の噴霧するノズルは溶融金属を粉化する水の交差点に向けるのがよい。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で製造する金属粉末は、水アトマイズできる金属であって、Mg、Al、Fe、Ni、Cu、Zn、Ag、Cd、Sn、Pb、Co、Cr、Mn、Mo、Si、B、V、Nb等の金属及びこれらの金属の2種以上の合金、さらにこれらの金属に他の金属あるいは非金属を混合したものである。
【0009】本発明に用いる有機物質は、溶融金属の熱により分解し、CH4,COガスなどの還元性ガスを発生するものであればよく、例えば、エタノールなどのアルコール類、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、アセトンなどのケトン類、酢酸などのカルボン酸類、酢酸メチルなどのエステル類、エチルエーテルなどのエーテル類、ジエタノールアミンなどのアミン類の内から選ばれる1種または2種以上を用いてもよい。特に、エタノールなどのアルコール類、アセトアルデヒド、アセトンが酸化を防止する効果が大きく、安価であるので好ましい。
【0010】本発明において、流出する溶融金属に向けて水を噴霧し、且つ前記水とは別に前記溶融金属に向けて有機物質を噴霧するするのは次の理由による。噴霧媒である水は高速で噴霧されるので、エジェクタ作用の発生によって周囲の雰囲気を巻き込むとともに、噴霧された水は高温の溶融金属と接触する。このため、溶融金属に向けて有機物質を噴霧しない場合には、噴霧雰囲気に不活性ガスを用いて置換を十分に施しても不活性ガス中に残る微量の酸素、水に含まれる酸素および水の分解によって発生する酸素によって金属粉末が酸化されることになる。
【0011】一方、従来方法では、溶融金属を粉化する水に有機物質を添加しているために、大量に噴霧された水の一部が溶融金属の熱で分解するのであるから、有機物質が効率よく分解していなかった。このため、有機物質の使用量が多かった。また、有機物質の一部しか分解していなかったので水に添加された有機物は、噴霧槽の水中に残留することになり、噴霧槽の揮発制御及び排水中の有機物質の濃度管理や廃液処理などの問題もあった。
【0012】これに対し、本発明では、溶融金属を粉化する水とは別に、溶融金属に向けて有機物質を噴霧するので、有機物質のほぼ全量が溶融金属の高熱で分解し、効率よくCH4,COガスなどの還元性ガスを発生できる。発生した還元性ガスはエジェクタ作用により噴霧した水に巻き込まれ、水と還元性ガスとの混合流体が粉化した溶融金属と接触することとなるので、酸素の存在下であっても金属粉末の酸化が抑制されるのである。このため酸素含有量の少ない金属粉末を得るために必要な有機物質の使用量を少なくできるという顕著な効果を奏することとなる。
【0013】また、有機物質のほぼ全量が溶融金属の高熱で分解するために、噴霧槽の揮発制御が不必要になり、排水中の有機物質の濃度管理や廃液処理も必要がなくなるという効果もある。有機物質を噴霧する位置は、溶融金属が粉化される水の交差点、即ち噴霧された水の焦点とするのが好ましい。この理由は、有機物質が溶融金属の熱で分解し、分解した還元性ガスが効率よく水に巻き込まれるので、金属粉末の酸化を抑制できるからである。
【0014】噴霧する有機物質の噴霧量を、粉化する金属の単位重量当たり5.0 〜30ml/kgとするのが好ましいのは、次の理由による。図2は、溶融金属を粉化する水とは別に、溶融金属に向けて噴霧する有機物質の噴霧量を変化させて、次のようにして得た金属粉末中の酸素含有量を調べた結果である。
【0015】アルゴンガスでシールした高周波誘導炉で溶解された、表1に示す化学成分の溶鋼20kgを、1チャージ毎に1680℃の温度でタンディッシュからノズルを通して40kg/minで流下し、この溶鋼に水を圧力170kg/cm2 、流量230l/minで噴霧して粉化するとともに、前記水とは別に溶融金属が粉化される水の交差点に向けてエタノールの噴霧量を変化させたものである。噴霧雰囲気は窒素ガスである。
【0016】
【表1】

【0017】図2の結果から、金属粉末の酸素含有量を粉末冶金用の金属粉末として要求されている0.2mass%未満とするためには、有機物質の噴霧量を200ml/min 以上としなければならないことがわかった。この有機物質の噴霧量は、粉化される金属粉末の重量にほぼ比例する関係があることから単位重量当たりに換算して、流下する溶融金属の重量に応じて5.0 ml/kg以上にしなければならない。
【0018】一方、有機物質の噴霧量が30ml/kg を超えると、分解せずに水中に残る量が多くなり、揮発制御などの問題が生じる。また、コストも高くなって好ましくないので、30ml/kg 以下とするのが好ましい。一方、溶融金属を粉化する噴霧媒として水または5%エタノール溶液を噴霧し、それ以外には噴霧しないとした噴霧条件以外は前記図2と同じにして粉末を製造し、得られた金属粉末の酸素含有量を調べた。
【0019】その結果を、図2に示した結果と合わせて表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】表2に示した結果から、有機物質を使用しない場合は、金属粉末の酸素含有量は0.78mass%であるが、噴霧媒とは別に有機物質を噴霧することにより、酸素含有量を低減できる効果があることがわかる。また、噴霧媒とは別に有機物質を5.0ml/kg以上噴霧すると、噴霧媒に5%エタノール溶液を用いた比較例2に比べ、有機物質の使用量が顕著に減少しているにもかかわらず、酸素含有量を低くできることがわかる。
【0022】有機物質として、エタノールを用いて説明したが、他のアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、エーテル類、アミン類についても同様の結果が得られた。次に本発明に係わる製造装置について説明する。図1は本発明に係わる金属粉末製造装置の一例を示す概略図である。本発明に係わる金属粉末製造装置は、流出口を有し、溶解された溶融金属1を収容する溶融金属収容容器(タンディッシュ)2と、水6を噴霧するノズル3と、有機物質7を噴霧するノズル4と、粉化された金属粉末及び冷却剤(通常は水)を収容する噴霧槽5とを備えている。
【0023】本発明の金属粉末製造装置の動作を説明する。電気炉にて溶解された溶融金属1は、溶融金属収容容器(タンディッシュ)2の流出口から流出する。流出した溶融金属はノズル3から噴霧された水6によって、水6の交差点で粉化される。一方、ノズル4から噴霧された有機物質7は、水6の交差点に向けて噴霧され、交差点近傍で溶融金属1の熱で分解されて還元性のガスを発生する。還元性のガスはエジェクタ作用により噴霧した水6に巻き込まれ、粉化された金属粉末の酸化を抑制する。粉化された金属粉末は噴霧槽5内の冷却剤で冷却され、噴霧槽5内に収容される。噴霧槽5の図示しない取出口から取り出された金属粉末は次の工程に送られる。
【0024】本発明に用いる有機物質7を噴霧するノズル4は、その個数、ノズル一個当たりの噴霧量および噴霧形状は制限しないが、微量の有機物質7でも有効に作用することから、有機物質7の酸化抑制能力に応じて決まる噴霧量を満足するように個数、ノズル一個当たりの噴霧量および噴霧形状等は決定すればよい。また、本発明に用いる水を噴霧するノズル3は、その型式には限定されず、環帯状等のスリット式ノズルにも適用できる。
【0025】
【実施例】図1に示した金属粉末製造装置を用いて、アルゴンガスでシールした高周波誘導炉で溶解された、表3に示す化学成分の溶鋼20kgを、1チャージ毎に1680℃の温度でタンディッシュからノズルを通して40kg/minで流下し、この溶融金属に水を圧力170kg/cm2 、流量230l/minで噴霧して粉化するとともに、水を噴霧するノズルとは別のノズルから、表4に示した有機物を噴霧して金属粉末を製造し、発明例とした。噴霧雰囲気は窒素ガスで行った。
【0026】比較例として、噴霧媒として5%の有機物質水溶液を圧力170kg/cm2 、流量230l/minで噴射(それ以外には有機物質は噴霧していない。)し、それ以外は発明例と同じとした。また、従来例として、噴霧媒として水を噴霧した以外は比較例と同じとした。得られた金属粉末の酸素含有量を使用した有機物質と合わせて表4に示す。
【0027】
【表3】

【0028】
【表4】

【0029】この結果から、本発明例は比較例に比して少ない有機物質の使用量で、酸素含有量の低い金属粉末が製造できることがわかる。また、有機物質はいずれのものでも効果が認められたが、特にエタノール、アセトン、アセトアルデヒドなどの低分子量のものが効果的であった。
【0030】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、少量の有機物質を噴霧し、金属粉末の酸化を抑制しうるので、少ない有機物質の使用量で低酸素含有量の金属粉末を安価に製造することができる。また、本発明の製造装置により、少量の有機物質を噴霧し、金属粉末の酸化を抑制しうるので、少ない有機物質の使用量で低酸素含有量の金属粉末を安価に製造できる。
【0031】さらに、噴霧槽の揮発制御が不必要になり、排水中の有機物質の濃度管理や廃液処理も必要がなくなるという効果もある。また、水アトマイズ後、還元処理が必要なくなるのでコスト低減も可能となる。
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】川崎製鉄株式会社
【出願日】 平成10年9月29日(1998.9.29)
【代理人】 【識別番号】100099531
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英一
【公開番号】 特開2000−104103(P2000−104103A)
【公開日】 平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願番号】 特願平10−274687