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【発明の名称】 溶融金属の連続鋳造方法
【発明者】 【氏名】吉田 直嗣

【氏名】田中 努

【要約】 【課題】良好な表面品質を有する鋳片を、高速で、かつ安定して鋳造できる溶融金属の連続鋳造方法の提供。

【解決手段】通電コイル3を鋳造方向に振動させるとともに、通電コイルの振動周期と同期して実効値変調された高周波電流を通電コイルに通電させ、実効値変調された高周波電流の特定の位相時での共振周波数を測定し、かつ通電コイルの振動範囲の上端位置で検出した共振周波数が予め定められた値になるように、溶融金属供給制御装置18により溶融金属の供給速度を調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】鋳型壁を貫通した複数のスリットを有する内部が水冷された鋳型と、その外周部に配置された通電コイルと、その通電コイルを鋳造方向に振動させるための振動装置と、タンディッシュから上記鋳型に溶融金属を供給するための溶融金属供給口と、溶融金属の供給量を調整する溶融金属供給制御装置とで構成された装置による連続鋳造方法であって、上記通電コイルを鋳造方向に振動させるとともに、上記通電コイルの振動周期と同期して実効値変調された高周波電流を、その通電コイルに通電させ、上記通電コイルの振動範囲の上端位置で検出した共振周波数が予め定められた値になるように、上記溶融金属供給制御装置により溶融金属の供給速度を調整することを特徴とする溶融金属の連続鋳造方法。
【請求項2】通電コイルの振動周期およびその通電コイルに通電する実効値変調された高周波電流の変調周期を鋳型の鋳造方向の振動周期と同期させ、かつ、鋳型の上昇期または鋳型の下降期に、その通電コイルを上昇させるとともに、高周波電流を高出力発振することを特徴とする請求項1に記載の溶融金属の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶融金属の連続鋳造方法に関し、さらに詳しくは、鋳型の外周に設けた通電コイルを用いて鋳型内の初期凝固殻近傍に電磁気力を作用させる溶融金属の連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、溶融金属の連続鋳造方法では、鋳型にオシレーションと呼ばれる微小振動を付与することにより、鋳型と凝固殻との隙間に溶融パウダを流入させて、鋳型と凝固殻との焼き付きの防止を図っている。また、溶融パウダの流入状況は、鋳片表面品質の向上や鋳造速度の高速化や鋳造の安定化などに影響を与える。そのため、近年、鋳型内の溶融金属の初期凝固殻近傍に電磁気力を作用させて、溶融パウダの流入を促進する方法が採られている。
【0003】特開平8―206799号公報では、鋳型の外周に配置した通電コイルを鋳造方向に沿って振動させるとともに、通電する高周波電流の実効値を矩形波に変調させながら鋳造する方法が提案されている。電磁気力の作用により、溶融金属を鋳型の中心方向に絞り、鋳型と凝固殻との隙間を広げ、溶融パウダの流入を促進する。
【0004】この方法でも、鋳型内における溶融金属の湯面レベルを一定に保つことは重要である。すなわち、一定の湯面レベルを保持して鋳造を行うことにより、鋳型内の溶融金属へのパウダの巻き込みや湯面レベルの波立ちによる鋳片表面の湯じわなどの発生を防止することができる。一定の湯面レベルを保持して鋳造を行うためには、湯面レベルの検知が必要であり、湯面レベルの検出手段として、測定精度、使いやすさ等から、現状では渦流センサと呼ばれる電磁気の作用を利用したセンサが広く用いられている。
【0005】しかし、上述した特開平8―206799号公報で提案された方法では、鋳型内の溶融金属に高周波電流による電磁気力を作用させるために、検出コイルの起電力を測定するという測定の原理上、この渦流センサを使用することができないという問題がある。
【0006】また、特開平7−223060号公報では、鋳型の外周に配置された通電コイルに通電する高周波電流の共振周波数が、予め定められた値になるように溶融金属の鋳型内への供給量を調整する方法が提案されている。その測定の原理は、鋳型内の湯面レベルが変化すると、鋳型と溶融金属とを含めた自己インダクタンスが変化し、その結果、回路のインダクタンスが変化することから、最終的には、通電コイルに通電する高周波電流の共振周波数が変化するという電磁気学の原理に基づいている。すなわち、この方法は、高周波電流の共振周波数と湯面レベルとの間に相関関係があるので、高周波電流の共振周波数を予め定められた値にして、湯面レベルを一定にする方法である。
【0007】この特開平7−223060号公報で提案された湯面レベルの測定方法を、上述した特開平8―206799号公報で提案された電磁気力による鋳型と凝固殻との隙間への溶融パウダの流入促進方法に適用する場合に、精度良く湯面レベル測定ができないという問題がある。すなわち、この特開平8―206799号公報で提案された方法では、通電する高周波電流の実効値を変調するので、変調された実効値に応じて、その回路のインダクタンスや共振周波数が変化する。そのため、湯面レベル信号が高周波電源の変調周期と同周期で変動するのである。
【0008】さらに、この特開平8―206799号公報で提案された方法のように、パウダの流入を促進させるため通電コイルを鋳造方向に振動させる場合には、溶融金属の湯面レベルと通電コイルの相対位置が変化するため、インダクタンスや共振周波数が変化する。そのため湯面レベル信号に通電コイルの振動周期と同周期で外乱信号が重畳して現れ、安定した湯面レベル検知信号となり得ないという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、鋳片表面品質の向上や鋳造速度の高速化や鋳造の安定化などを図るために、鋳型内の溶融金属の初期凝固殻近傍に電磁気力を作用させて、溶融パウダの流入を促進する従来の方法には、次のような問題がある。すなわち、鋳型の外周に配置された通電コイルに高周波電流を通電し、電磁気力を鋳型内の溶融金属の凝固殻近傍に作用させ、鋳造する方法(以下、単に電磁界鋳造法と記す場合がある)と、さらに、この通電コイルを鋳造方向に沿って振動させるとともに、通電する高周波電流の実効値を矩形波に変調させながら鋳造する方法(以下、単に出力変調法と記す場合がある)では、湯面レベルを正確に検知する方法がなく、目視等で湯面レベルを観察しながら操業するのが現状である。そのため、安定した連続鋳造作業が困難なばかりか、湯面レベル変動によって電磁気力の作用が十分に得られない。また、不安定な湯面レベル変動は、パウダの巻き込みの発生など、鋳片品質に悪影響を及ぼす。
【0010】本発明は、鋳型内の初期凝固殻近傍に高周波電流による電磁気力を作用させる溶融金属の連続鋳造方法であって、通電コイルを鋳造方向に振動させ、かつ印加する高周波電流の実効値を変調させる場合であっても、良好な表面品質の鋳片を、高速で、かつ安定して鋳造できる連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記(1)および(2)に示す連続鋳造方法にある。
(1)鋳型壁を貫通した複数のスリットを有する内部が水冷された鋳型と、その外周部に配置された通電コイルと、その通電コイルを鋳造方向に振動させるための振動装置と、タンディッシュから上記鋳型に溶融金属を供給するための溶融金属供給口と、溶融金属の供給量を調整する溶融金属供給制御装置とで構成された装置による連続鋳造方法であって、上記通電コイルを鋳造方向に振動させるとともに、上記通電コイルの振動周期と同期して実効値変調された高周波電流を、その通電コイルに通電させ、上記通電コイルの振動範囲の上端位置で検出した共振周波数が予め定められた値になるように、上記溶融金属供給制御装置により溶融金属の供給速度を調整する溶融金属の連続鋳造方法。
【0012】(2)通電コイルの振動周期およびその通電コイルに通電する実効値変調された高周波電流の変調周期を鋳型の鋳造方向の振動周期と同期させ、かつ、鋳型の上昇期または鋳型の下降期に、その通電コイルを上昇させるとともに、高周波電流を高出力発振する上記(1)に記載の溶融金属の連続鋳造方法。
【0013】本発明者らは、前述の本発明の課題を、次のようにして解決した。すなわち、(a)本発明の方法では、通電コイルの振動範囲の上端位置に相当する位相時での、実効値変調された高周波電流の共振周波数を測定する。その理由は、次のとおりである。すなわち、通電コイルに対する湯面レベルの相対位置が高くなるほど、湯面レベルの変動に対する共振周波数の変化率が小さくなり、共振周波数の検出精度が悪くなる。したがって、通電コイルに対する湯面レベルの相対位置が最も低くなるような通電コイルの振動範囲の上端位置が、最も共振周波数の検出精度がよい。また、通電コイルの振動範囲の上端位置では、通電コイルの移動速度がほぼ零であり、通電コイルの高さ変動に伴う共振周波数信号の時間変化が最も小さくなり、検出精度がよい。さらに、共振周波数信号の検出時間を十分に確保できる。このようにして、検出精度のよい共振周波数を求めることができ、予め判明している湯面レベルと共振周波数との相関関係を示す検量線に基づいて、正確に湯面レベルを求めることができる。
【0014】(b)また、通電コイルの振動範囲の上端位置で検出した共振周波数が予め定められた値になるように、周波数信号処理装置は溶融金属供給制御装置に溶融金属供給口の開度を指示する。これにより、湯面レベルを一定に保持することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の方法が対象とする溶融金属は、普通鋼、合金鋼、ステンレス鋼などの鋼、アルミニウムとその合金、銅とその合金などである。連続鋳造できるその他の金属またはその合金についても本発明の方法を適用できる。
【0016】図1は、本発明の方法を適用する場合の装置構成の一例を示す図である。溶融金属5は、タンディッシュ20から溶融金属供給口19、浸漬ノズル4を経て鋳型2内に供給される。鋳型内の溶融金属の湯面上には、モールドパウダ6を添加する。溶融金属の熱により溶融した溶融パウダ8は、鋳型と凝固殻7との隙間に流入する。
【0017】鋳型2には、鋳型壁を貫通した複数のスリット1を設け、また、鋳型振動装置9および鋳型変位検出器10を配置する。鋳型振動装置は、モータと偏心カムによる構造や、ステッピングシリンダなど、通常の正弦波などの振動を与えられる装置であればよい。鋳型変位検出器は、接触式変位計やレーザー光線を利用した非接触変位計等、鋳型振動に追従できる応答速度を持つ検出器であればよい。
【0018】鋳型の外周に備える通電コイル3は、内部が水冷された銅製でよく、通電コイル駆動装置14によって、鋳造方向に数mm〜数十mm程度の振幅で、鋳型の振動周期に同期する振動が付与される。振動する通電コイルの位置は、通電コイル位置検出器21により検出される。
【0019】図2は、信号処理の流れを示すブロック図である。鋳型変位検出器10により検出された鋳型の変位信号は、トリガーパルス発生器11に入力される。トリガーパルス発生器では、入力された鋳型の位置の情報に基づいて、鋳型振動の1周期毎の特定の位相を検出し、トリガーパルス信号を出力する。出力されたトリガーパルス信号は、波形発生器12に入力される。波形発生器は、出力変調用、振動制御用および周波数測定用のそれぞれのパルス信号を、それぞれ高周波電流実効値変調装置15、通電コイル振動制御装置13および周波数信号処理装置17に出力する。
【0020】出力変調用のパルス信号は高周波電流実効値変調装置15に入力され、この高周波電流実効値変調装置は、そのパルス信号に基づき、高周波電源装置から出力する高周波電流の実効値を変調する。
【0021】通電コイル振動制御用のパルス信号は通電コイル振動制御装置13に入力される。この通電コイル振動制御装置は、そのパルス信号および通電コイル位置検出器21により検出された通電コイル位置信号に基づき、通電コイルの振動周期を鋳型の鋳造方向の振動周期と同期させ、かつ、鋳型の上昇期に通電コイルを上昇させるか、または、鋳型の下降期に通電コイルを上昇させるように制御する。
【0022】周波数測定用のパルス信号は、実効値変調された高周波電源16からの周波数信号とともに、周波数信号処理装置17に入力される。この周波数信号処理装置は、実効値変調された高周波電流の特定の位相時での共振周波数を測定し、かつ、通電コイルの振動範囲の上端位置で検出した共振周波数が予め定められた値になるように、溶融金属供給制御装置18に、溶融金属供給口の開度を指示するための湯面レベル信号を出力する。
【0023】さらに、本発明の方法を、以下に具体的に説明する。なお、本発明の方法では、実効値変調された高周波電流の特定の位相時での共振周波数を測定し、かつ、通電コイルの振動範囲の上端位置で検出した共振周波数が予め定められた値になるように溶融金属供給口の開度を制御するが、共振周波数ではなく、インダクタンス検出器によってインダクタンスを信号値として測定しても同様の結果が得られる。以下には、測定対象を共振周波数として説明する。
【0024】鋳型変位検出器により検出された鋳型の変位信号は、トリガーパルス発生器を経由して波形発生器に入力される。波形発生器では、出力変調用、振動制御用および周波数測定用のそれぞれのパルス信号を出力する。
【0025】図3は、トリガーパルス発生器および波形発生器で入出力される信号の例を示す図である。図3(a)は、トリガーパルス発生器に入力された鋳型の変位信号、図3(b)は、トリガーパルス発生器から出力されたトリガーパルス信号、図3(c)は、波形発生器から出力された通電コイル振動制御用パルス信号、図3(d)は、高周波電流出力変調用パルス信号、図3(e)は、共振周波数測定用パルス信号を、それぞれ示す図である。これら変調用、制御用および測定用のパルス信号は、鋳型振動の特定の位相で出力されたトリガーパルス信号に対して、所定の時間差(位相差)を付与して出力される。
【0026】図4は、鋳型の上昇期に通電コイルを上昇させるとともに、高周波電流を高出力発振する場合の共振周波数を示す図である。図5は、鋳型の下降期に通電コイルを上昇させるとともに、高周波電流を高出力発振する場合の共振周波数を示す図である。図4と図5は、鋳型と通電コイルとの変位の関係が相違するだけなので、図4の場合を代表例にして、以下に説明する。
【0027】図4(a)は、鋳型の変位信号の波形を示し、鋳型が2Hzの周期で正弦波波形で鋳造方向に振動する場合の例を示す。鋳型の上昇期で振幅の中心点を、正弦波波形の位相0度および360度とする。図4には示していないが、図3に示すように、位相0度および360度が、トリガーパルス発生器からトリガーパルス信号が出力される位相である。以下には、位相0〜360度の間での現象を説明する。
【0028】図4(b)は、通電コイルの変位信号の波形を示す。通電コイルの変位信号の位相は、鋳型の変位信号の波形の位相と同じである。図4(c)は、高周波電流実効値の波形を示す。高周波電流実効値の位相は、鋳型の上昇期に相当する0〜90度および270〜360度が高出力、90〜270度が低出力である。
【0029】図4(d)は、高周波電源から周波数信号処理装置に入力したままの共振周波数信号の波形を示す。通電コイルの振動に起因する変動成分が重畳するために、共振周波数が時間(位相)とともに変化する挙動を示す。このように時間と共に変化する共振周波数では、正確な湯面レベルの検知を行えない。
【0030】図4(e)は、波形発生器から出力した共振周波数測定用パルス信号を示す。共振周波数測定のためのパルス信号は、85〜95度で検知し、0〜85度および95〜360度でホールド処理するための矩形のパルス信号であり、周波数信号処理装置に入力される。周波数信号処理装置のホールド処理回路(図2に示す)では、位相85〜95度において、共振周波数信号を検出し、それ以外の位相では、位相95度のときに検出した共振周波数信号をそのまま保持する処理を行う。
【0031】図4(f)には、このように処理された共振周波数信号の波形を示す。その後、この処理された共振周波数信号は、周波数信号処理装置の信号変換回路(図2に示す)により、予め判明している湯面レベルと共振周波数との相関関係を示す検量線に基づいて湯面レベル信号に変換され、変換された湯面レベル信号は、周波数信号処理装置から溶融金属供給制御装置に入力される。溶融金属供給制御装置では、入力された湯面レベル信号に基づいて溶融金属供給口の開度を調整して、検知した湯面レベル信号が、予め定められた値となるように溶融金属の流量を制御する。
【0032】このようにして、正確に湯面レベルを求めることができ、また、湯面レベルを一定に保持することができる。
【0033】本発明の方法では、実効値変調された高周波電流の特定の位相時での共振周波数を測定するとき、通電コイルの振動範囲の上端位置で検出した共振周波数を測定する。振動範囲の上端位置とは、通電コイル位置が極大を示す正弦波の90度位相、またはその位相付近で通電コイル位置の変動(通電コイルの移動速度)が零、またはほぼ零に近くなる通電コイル位置を意味し、この位置において、振動周期の1%(3.6度)〜10%(36度)に相当する時間に、周波数信号の検出時間を設ける。図4および図5の例では、振動周期の2.8%(10度)の検出時間を設けている。したがって、図4では、位相85〜95度に、図5では、位相265〜275度に設けている。
【0034】また、本発明の方法では、通電コイルの振動周期および通電コイルに通電する高周波電流の実効値変調周期を鋳型の振動周期と同期させ、かつ、鋳型の上昇期または下降期に、通電コイルを上昇させるとともに、高周波電流を高出力発振するのが望ましい。高出力発振とは、特定の時間にのみ電磁気力の作用を高めるよう一時的に高周波による電流を高位側に出力変調することである。なお、低出力発振は、一時的に高周波による電流を低位側に出力変調することであるが、低出力発振時には、高出力発振時の電流値の1〜25%程度の電流を通電コイルに通電する。このように、高出力側への実効値変調を行い、通電コイルの上昇を行うことにより、凝固殻に電磁気力を徐々に強く作用させる時期を、鋳型の上昇期または鋳型の下降期のいずれかの時期と合わせるのが望ましい。以下に、その理由を説明する。
【0035】鋳型の上昇期には、鋳型と鋳片の相対速度が最も大きくなる。この時期には、凝固殻と鋳型との隙間に、溶融パウダが流入しにくい。溶融パウダの流入が鋳型の上昇により、抑制されるためである。また、鋳型の下降期には、鋳型の下降速度が鋳片の引き抜き速度よりも速くなる、いわゆる、ネガティブストリップ時期が存在する。この時期には、凝固殻と鋳型との隙間に、溶融パウダが流入しにくい。溶融パウダの流入速度よりも、鋳型の下降速度が速いためである。
【0036】したがって、鋳型の上昇期または鋳型の下降期に、周期を同期させて、通電コイルに通電する高周波電流の実効値の変調および通電コイルの上昇を行うことにより、凝固殻に作用する電磁気力が徐々に増加し、凝固殻と鋳型との隙間を広げて、溶融パウダの流入を促進することができる。
【0037】また、通電コイルが下降する時には、通電コイルに通電する高周波電流の実効値を低出力側へ変調し、凝固殻に作用する電磁気力を実質的に無効とすることにより、凝固殻と鋳型との隙間に流入した溶融パウダが逆流するのを防止することができる。
【0038】本発明の方法では、振動範囲の中心における通電コイルの上端位置より0〜50mm高い位置に、湯面レベルを制御することが望ましい。初期凝固殻に最も効果的に電磁気力を作用させることができるためである。
【0039】なお、図1では、溶融金属の流量調整手段としてスライディングゲートの溶融金属供給口を用いているが、その方式については、とくにこだわらない。たとえば、ロッドストッパーなどの流量調整手段を用いてもよい。また、これらの流量制御は、いわゆるPI(2動作調節計)、PID(3動作調節計)などの既存のプロセス制御装置で十分である。
【0040】
【実施例】図1に示す装置構成の連続鋳造装置を用いて溶鋼の連続鋳造実験を行った。表1に、試験した中炭素鋼の化学組成を示す。実施例および比較例の試験ともに、連続鋳造を行った。
【0041】
【表1】

【0042】(実施例1)表2に、試験の鋳造条件を示す。表3には、用いたモールドパウダの化学組成を示す。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】直径が266mmの円形鋳片を、速度2m/分で鋳造した。鋳型の上部には、鋳型壁を貫通する幅0.25mmのスリット30本を鋳造方向に設けている。スリットの位置は、鋳型壁の上端から下方に20mmの位置から、高さ220mmの位置とした。鋳型内の溶鋼の湯面レベルは、鋳型の上部端より約100mm下方の位置に設定した。鋳型の振動条件は、振動周波数2Hz、振幅±3mmの正弦波波形とした。
【0046】通電コイルは、鋳型の周りを3周巻きとし、コイル高さは鋳造方向に40mmとし、静止状態の通電コイルの上端を、鋳型の上部端より約125mm下方の位置に配置した。通電コイルの振動条件は、振動周波数2Hz、振幅±16mmである。通電コイルには、20kHzの高周波で4500Aの電流を通電した。
【0047】出力変調は、高出力時において出力100%、低出力時において出力15%、デューティー比(1周期における高信号レベル時間比)50%で、周波数は鋳型や通電コイルと同じ2Hzで変調させた。
【0048】共振周波数の測定は、鋳型の正弦波波形の振動の位相を基準に85〜95度の位相の期間に、通電コイルの振動範囲の上端で行い、それ以外の期間は、95度の位相で検出した共振周波数信号をホールド処理した。
【0049】鋳型の上昇期に、高周波電流を高出力側へ変調するような出力制御、かつ、通電コイルが上昇移動となるような通電コイル振動操作を行った。
【0050】得られた鋳片の表面性状は良好で、割れ、焼き付きなどのパウダー流入不足に起因すると考えられる欠陥は認められなかった。鋳造中の湯面レベルは安定しており、安定操業を阻害する湯面レベルの変動などは認められなかった。また、鋳型直下で回収したパウダーフィルムの厚さを測定したところ、平均で1.35mmであり、十分なパウダー流入が行われていることを確認できた。
【0051】本発明の方法を適用することにより、通電コイル振動と、通電コイルに通電する高周波電流の実効値変調を行った連続鋳造法でも、安定した湯面レベル制御が可能であることが分かった。
【0052】(実施例2)実施例2では、振動する鋳型の下降期に、高周波電流を高出力側へ変調するような出力制御、かつ、通電コイルが上昇移動となるような通電コイル振動操作を行った。共振周波数の測定は、鋳型の正弦波波形の振動の位相を基準に、265〜275度の位相の期間に、通電コイルの振動範囲の上端で行い、それ以外の期間は、275度の位相で検出した共振周波数信号をホールド処理した。また、高周波電流の高出力時の位相は、80〜260度である。その他の試験条件は、実施例1と同じように行った。
【0053】得られた鋳片の表面性状は良好で、割れ、焼き付きなどのパウダー流入不足に起因すると考えられる欠陥は認められなかった。鋳造中の湯面レベルは安定していた。また、鋳型直下で回収したパウダーフィルムの厚さは、平均で1.26mmであり、十分なパウダー流入が行われていることを確認できた。
【0054】(比較例1)比較例1では、検出した共振周波数信号をホールド処理回路においてホールド処理を行わずに試験した。その他の試験条件は実施例1と同じように行った。
【0055】鋳込み開始直後に、共振周波数信号の変動によって、湯面レベル信号が鋳型振動周期と同期して30mm以上変動した。この湯面レベル信号の変動に対応するように、溶融金属供給制御装置がゲートの開度調整を行っため、溶鋼の鋳型内への流入量が周期的に変化した。そのため、その後の鋳型内の溶鋼の湯面レベルは大きく変動し、湯面レベルの自動制御が困難となり、途中で鋳造作業を中止した。鋳造作業を中止する前に鋳造した鋳片の表面には、湯面レベルの変動に対応した周期的な湯皺が観察された。また、鋳片表層部には、ピンホール性欠陥や巻き込んだパウダーによるパウダー性欠陥が観察された。また、鋳型直下で回収したパウダーフィルムの厚さは、平均で0.65mmであり、十分なパウダー流入が行われていないことが分かった。
【0056】
【発明の効果】本発明の方法の適用により、通電コイルを鋳造方向に振動させ、かつ印加する高周波電流を実効値変調する場合であっても、良好な表面品質を有する鋳片を、高速で、かつ安定して鋳造することができる。
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成11年6月9日(1999.6.9)
【代理人】 【識別番号】100083585
【弁理士】
【氏名又は名称】穂上 照忠 (外1名)
【公開番号】 特開2000−351053(P2000−351053A)
【公開日】 平成12年12月19日(2000.12.19)
【出願番号】 特願平11−162926