トップ :: B 処理操作 運輸 :: B22 鋳造;粉末冶金




【発明の名称】 鋳造用金型構造
【発明者】 【氏名】満尾 太一

【氏名】市原 敏朗

【氏名】櫨川 英雄

【氏名】山田 英司

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】キャビテイ空間を形成する一対の分割されたキャビテイ型を備えるとともに、金型分割面と直交方向へ突出する取付壁部の先端が他部品との合わせ面をなすように構成された鋳造品を得るための鋳造用金型構造において、上記一方のキャビテイ型は、平坦な型表面をなすキャビテイベースと、その上へ着脱自在に取付けられる入れ子とを備え、上記キャビテイベースの型表面は金型分割面と同じ高さであって、その一部が上記合わせ面を成形するための合わせ面成形部をなすとともに、上記入れ子はその周囲にて上記取付壁部を成形することを特徴とする鋳造用金型構造。
【請求項2】上記入れ子を貫通して押し出しピンを設けたことを特徴とする請求項1に記載した鋳造用金型構造。
【請求項3】上記入れ子又は入れ子と他方のキャビテイ型との間に湯口乃至オーバーフローを設けたことを特徴とする請求項1に記載した鋳造用金型構造。
【請求項4】上記一方のキャビテイ型が可動側であり、他方のキャビテイ型が固定側であるとともに、固定側である上記他方のキャビテイ型に押し出しピンを設けたことを特徴とする請求項1に記載した鋳造用金型構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アルミダイカスト成形に好適な鋳造用金型構造に関する。
【0002】
【従来の技術】図4は、従来のアルミダイカスト成形に使用される金型構造の全断面であり、図5はその一部を異なる断面位置で示す。この金型1は分割された一対のキャビテイ型から構成され、2は可動キャビテイ型、3は固定キャビテイ型、4はキャビテイ空間である。
【0003】可動キャビテイ型2側には、肉抜き部7、環状深溝8及び外周段部9がそれぞれ可動キャビテイ型2を彫り込んで形成され、環状深溝8は鋳造品を他部品に取付けるための環状の取付壁部を形成するためのものであり、金型分割面10に対して直交方向へ最も深く彫り込まれ、その底部11は全周に同一高さをなし、前記環状の取付壁部における他部品との合わせ面を成形する。
【0004】図4に示すように、この底部11には押し出しピン12が臨んでいる。また、外周段部9には固定キャビテイ型3側から鋳抜きピン13が突き当てられる。さらに図5に示すように、一部の金型分割面10を底部11と一致させ、この可動キャビテイ型2側の金型分割面10に湯口乃至オーバーフロー14が形成されている。なお、この金型1によって成形される鋳造品は後述する図3に示すものと同様形状になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで上記従来の金型構造では、底部11に押し出しピン12や湯口乃至オーバーフロー14が臨んでいるため、これらの成形跡が底部11により成形される鋳造品の合わせ面に残り、その後の機械加工で削除しなければならない。離型時に鋳造品の合わせ面が変形した場合にも同様の問題が生じる。
【0006】さらに、鋳造を多数回反復させることによる疲労によってヒートチェックが発生することがある。このヒートチェックは金型表面に微少クラックが入る現象であり、これが底部11の表面に発生すると鋳造品の合わせ面に突部が生じるので、これもその後の機械加工で削除しなければならない。
【0007】したがって、これらの機械加工を考慮し、予め加工代を設けて鋳造するのが実状であるが、それだけ材料の無駄並びに後加工工数の増大を招くので、このような加工代並びに鋳造後の機械加工を不要にすることが望まれている。
【0008】そのうえ、上記ヒートチェックが発生したときにおける金型側の改修は、対象が環状深溝8の底部11であるから、予め形状データを作成し、これに基づいて放電加工等をすることになり、著しく工数が多くなるので、このような金型改修を容易かつ迅速に行えるようにすることも望まれている。そこで本願発明は係る問題点の解決を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本願の鋳造用金型構造に係る第1の発明は、キャビテイ空間を形成する一対の分割されたキャビテイ型を備えるとともに、金型分割面と直交方向へ突出する取付壁部の先端が他部品との合わせ面をなすように構成された鋳造品を得るための鋳造用金型構造において、上記一方のキャビテイ型は、平坦な型表面をなすキャビテイベースと、その上へ着脱自在に取付けられる入れ子とを備え、上記キャビテイベースの型表面は金型分割面と同じ高さであって、その一部が上記合わせ面を成形するための合わせ面成形部をなすとともに、上記入れ子はその周囲にて上記取付壁部を成形することを特徴とする。
【0010】第2の発明は、上記第1の発明において、入れ子を貫通して押し出しピンを設けたことを特徴とする。
【0011】第3の発明は、上記第1の発明において、上記入れ子又は入れ子と他方のキャビテイ型との間に湯口乃至オーバーフローを設けたことを特徴とする。このときオーバーフローは必要により設けられる。
【0012】第4の発明は、上記第1の発明において、上記一方のキャビテイ型が可動側であり、他方のキャビテイ型が固定側であるとともに、固定側である上記他方のキャビテイ型に押し出しピンを設けたことを特徴とする。
【0013】
【発明の効果】第1の発明によれば、一方のキャビテイ型をキャビテイベースと入れ子で構成し、入れ子をキャビテイベース上へ取付けてから、他方のキャビテイ型との間で鋳造すると、入れ子周囲に金型分割面から直交する方向へ突出する取付壁部を形成し、同時にこの取付壁部の端面は、キャビテイベース表面のうち入れ子周囲の平坦面である合わせ面成形部により成形されて合わせ面となる。
【0014】この合わせ面は金型分割面と同じ高さで、かつ入れ子の周囲に形成される平面部であるから、合わせ面成形部を避けて湯口乃至オーバーフローを設けたり押し出しピンを設けることが可能にり、これらの成形跡を合わせ面に生じさせないようにできる。その結果、このための加工代や鋳造後の機械加工を不要にでき、材料の無駄を省き加工工数を削減できる。
【0015】そのうえ、ヒートチェックが発生したときは、入れ子を取り除くと、キャビテイベースの型面がほぼ平坦状になるため、クラックを溶接等した後、フライス加工等によって平面に加工すれば容易に復元する。したがって、ヒートチェックに伴う金型改修を容易かつ迅速に行うことができる。
【0016】第2の発明によれば、入れ子を貫通して押し出しピンを設けたので、入れ子を有効に利用して押し出しピンを組み込むことができる。
【0017】第3の発明によれば、入れ子を利用して、入れ子自体又は入れ子と他方のキャビテイ型との間に湯口乃至オーバーフローを設けることができ、湯口乃至オーバーフローをその成形跡が合わせ面に残らないように設けることが可能になる。
【0018】第4の発明によれば、一対のキャビテイ型のうち固定側に押し出しピンを設けたので、鋳造品の離型をスムーズにでき、離型に伴う合わせ面の変形を極力防止できる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本願発明の一実施例を説明する。図1はアルミダイカスト成形に使用するダイカスト金型の全断面であり、図2はその断面位置を変えた部分断面図、図3はこの金型によって得られる鋳造品の断面形状を図1に対応した断面位置にて示す図である。なお、図1は図4と、図2は図5とそれぞれ対応している。そこで以下の説明において図4及び図5と共通する機能部分には同一符号を用いる。
【0020】まず、図3により本実施例の金型によって成形される鋳造品5の概略を説明する。この鋳造品5は外観面6を備え、その裏側中央部には肉抜き凹部15とこれを囲む環状の取付壁部16がそれぞれ形成され、この環状の取付壁部16の先端部端面は全周で同一高さであり、他部品へ取付ける際における合わせ面17になっている。また、外周部18には鋳抜き穴19が形成されている。
【0021】次に、この鋳造品5を成形するための金型構造を図1及び図2により説明する。このダイカスト金型1は、一対のキャビテイ型から構成され、一方の可動キャビテイ型2と他方の固定キャビテイ型3との間にキャビテイ空間4が形成され、固定キャビテイ型3の成形面は鋳造品5の外観面6をなす。
【0022】可動キャビテイ型2は主として鋳造品5の裏側となる部分を成形し、全体として略平板状のキャビテイベース20と複数の入れ子30,31,32等で構成されている。なお、入れ子の数は任意であり、本実施例の図1における断面位置では上記3個が示されている。
【0023】キャビテイベース20は、固定キャビテイ型3との間に形成される金型分割面10と同じ高さで平坦な型表面21を有し、その一部に入れ子取付用凹部22,23,24が形成され、中央の入れ子取付用凹部23の周囲は合わせ面成形部25なしている。この合わせ面成形部25は型表面21の一部である。
【0024】入れ子取付用凹部22,23,24は、合わせ面成形部25に囲まれかつこれより一段低い凹部として形成されている。また、左右の入れ子取付用凹部22,24の位置に押し出しピン12のためのピン挿通穴26がキャビテイベース20の表裏を貫通して形成されている。
【0025】各入れ子30,31及び32はそれぞれ入れ子取付用凹部22,23及び24に対応する嵌合凸部33,34及び35を備え、対応する入れ子取付用凹部へ嵌合して図示しないボルト等の締結具によりキャビテイベース20へ着脱自在に取付けられる。
【0026】中央の入れ子31とその左右の入れ子30及び32との間は環状空間4aをなし、中央の入れ子31の周囲を囲んでキャビテイ空間4と連通するとともに、キャビテイベース20側は合わせ面成形部25で閉じられている。
【0027】入れ子30及び32はそれぞれ他側の入れ子40(図2)等と一体になって鋳造品の外周部を形成するためのものであり、鋳造品の周囲端面を形成するための延出部37,38がそれぞれ一体に形成され、その先端部が固定キャビテイ型3へ密接されるとともに、各入れ子30,32の本体部にはピン挿通穴26と対応する位置に入れ子側のピン挿通穴39が貫通してキャビテイ空間4へ通じるように形成されている。
【0028】固定キャビテイ型3側には、鋳抜きピン13及び押し出しピン42が設けられている。鋳抜きピン13は固定キャビテイ型3と一体であっても又は別体に構成されたものでもよく、入れ子30の本体部表面へ突き当てられるように固定キャビテイ型3から突出している。押し出しピン42は固定キャビテイ型側のものであり、固定キャビテイ型3に設けられたピン挿通穴43からキャビテイ空間4へ突き出されるようになっている。
【0029】図2に示す他側の入れ子40は、入れ子30,31,32と同様にキャビテイベース20側の入れ子取付用凹部41に嵌合して取付けられるが、上記延出部37,38を備えず、固定キャビテイ型3との間に金型1の外周部へ達する型合せ部を形成し、この型合せ部の一部に湯口乃至オーバーフロー14が形成されている。なお、オーバーフローは必要により設けられる。
【0030】次に、本実施例の作用を説明する。この金型1を用いて鋳造品5を成形するには、まず、キャビテイベース20に入れ子30,31,32及び40等を取付けて可動キャビテイ型2を組立てる。続いてこの可動キャビテイ型2を固定キャビテイ型3と合わせて、キャビテイ空間4内へアルミ溶融材料を射出する。
【0031】キャビテイ空間4内へ射出されたアルミ溶融材料は、入れ子30,31,32及び40等とキャビテイベース20及び固定キャビテイ型3の間へ充填され、鋳造品5の本体部とともに各入れ子30,31,32により肉抜き凹部15及び外周部18が形成される。このとき外周部18には鋳抜きピン13による鋳抜き穴19が形成される。
【0032】同時にアルミ溶融材料の一部は、環状空間4aへ充填されて肉抜き凹部15をを囲む環状の取付壁部16をなし、その先端部端面には合わせ面成形部25によって合わせ面17が形成される。
【0033】その後、固定キャビテイ型3側の押し出しピン42を突き出しながら型開きし、さらに、可動キャビテイ型2側の押し出しピン12を突き出す。各押し出しピン12は、ピン挿通穴26及び39を通って、外周部18の裏面を押すため、鋳造品5が速やかに可動キャビテイ型2から脱型する。
【0034】このとき、射出されたアルミ溶融材料の一部が入れ子30,31,32等とキャビテイベース20の間へ侵入して鋳バリを発生していても、この鋳バリは型開き方向と直交する方向へ広がる横バリとなるため、型開きによって切断されるから、鋳造品5側に鋳バリを残さないようにすることができる。
【0035】このように、本実施例の可動キャビテイ型2は、入れ子30,31,32及び40等とキャビテイベース20で構成し、キャビテイベース20の型表面21を金型分割面10と同じ高さの平坦面として、その一部で、かつ入れ子取付用凹部22,23,24等の周囲部分に合わせ面成形部25を設けたので、この合わせ面成形部25を避けて押し出しピン12や湯口乃至オーバーフロー14を設けることが可能になる。
【0036】このため、これら押し出しピン12や湯口乃至オーバーフロー14の成形跡を鋳造品5の合わせ面17に生じないようにできる。その結果、この成形跡を除去するための加工代や鋳造後の機械加工を不要にでき、材料の無駄を省き加工工数を削減できる。
【0037】特に、入れ子30,32を貫通して押し出しピン12を設けることにより、入れ子30,32を有効に利用して押し出しピン42を組み込むことができる。また、固定キャビテイ型3側にも押し出しピン42を設けた特殊な構造を採用することにより、鋳造品5の離型をスムーズにして、合わせ面17の離型時における変形を少なくできる。
【0038】そのうえ、ヒートチェックが発生したときは、入れ子30,31,32及び40等を取り除くと、キャビテイベース20の型表面21がほぼ平坦状になり、合わせ面成形部25は入れ子取付用凹部22,23,24等の周囲でこれよりも高い位置に形成されているため、クラックを溶接等した後、フライス加工等によって容易に平面化加工ができ、合わせ面成形部25の表面をクラックの無い状態へ容易に復元できる。したがって、ヒートチェックに伴う金型改修を容易かつ迅速に行うことができる。
【0039】なお、本願発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々な変形や応用が可能であり、例えば、図2において湯口乃至オーバーフロー14は入れ子40自体へトンネル状に形成することもできる。また、固定キャビテイ型3側を入れ子とキャビテイベースで構成してもよい。さらに、この金型の用途は、アルミダイカスト成形に限らず、他金属に対する鋳造にも適用できる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年2月3日(1999.2.3)
【代理人】 【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
【公開番号】 特開2000−225452(P2000−225452A)
【公開日】 平成12年8月15日(2000.8.15)
【出願番号】 特願平11−26510