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【発明の名称】 高強度アルミニウム又はアルミニウム合金棒の製造方法
【発明者】 【氏名】穴田 博

【氏名】佐治 重興

【氏名】田中 巌

【要約】 【課題】引抜きダイスを使用することなく、所望の強度・硬度のアルミニウム又はアルミニウム合金棒を容易に製造する方法を提供する。

【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金の棒を一方向にねじり加工した後、逆方向にねじり戻す。一方向にねじったものを逆方向にねじり戻すと、表面粗さと外観がねじり前の状態に復元し、しかも棒表面の硬度、棒の強度が向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミニウム又はアルミニウム合金の棒を一方向にねじり加工した後、逆方向にねじり戻すことを特徴とする高強度アルミニウム又はアルミニウム合金棒の製造方法【請求項2】 アルミニウム合金がAl−Mg系合金であることを特徴とする請求項1記載の高強度アルミニウム合金棒の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度のアルミニウム又はアルミニウム合金棒の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム又はアルミニウム合金の棒は、軽量、高比強度、高耐食性などの利点を活かして、電気部品、機械部品、二輪車の構造部品、自動車部品、船舶・車両・航空機の構造部材、土木・建築部材などに広く使用されている。また、その断面形状は、丸形をはじめとして、長方形、正方形、正六角形、正八角形などがJISに規定されている。
【0003】アルミニウム合金の棒としては、非熱処理型合金の場合、■アルミニウム合金の鋳造ビレットを加熱後、熱間押出により所定の径に押出加工した押出棒と、■連続鋳造後、直ちにロール圧延により所定の径に熱間圧延加工した連続鋳造圧延棒と、■押出棒または連続鋳造圧延棒にさらに断面積を減ずるための冷間引抜き加工を施した引抜き棒の三種類がある。押出棒と連続鋳造圧延棒は熱間加工上がりのため強度・硬度が低いが、引抜き棒は冷間加工が施されているため強度・硬度が高いという特徴がある。アルミニウム棒の場合も同様である。また熱処理型合金の場合は、上記のようにして製造した棒を溶体化処理した後、自然または人工時効処理により強度・硬度を向上させることが行われている。
【0004】また上記のようにして製造した棒に、必要に応じ、矯正(引張またはロール矯正など)、最終焼鈍、安定化処理加熱が施される場合もある。
【0005】棒用のアルミニウム又は非熱処理型アルミニウム合金としては、1070、1050、1100などの純アルミニウム、3003などのAl−Mn系合金、5052、5056、5083などのAl−Mg系合金がJISに規定されている。また熱処理型のアルミニウム合金としては、2011、2014、2024、2117などのAl−Cu−(Mg)系合金、6061、6063などのAl−Mg−Si系合金、7003、7N01、7075などのAl−Zn−Mg系合金がJISに規定されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】アルミニウム又は非熱処理型アルミニウム合金の高強度棒を得るためには前述のように、断面積を減ずる冷間引抜き加工を施す必要がある。ところが冷間引抜き加工の場合、得ようとする強度・硬度は引抜き加工の減面率の大小で調整することになるため、多水準の強度・硬度の棒を得るためには、穴径の異なる多数の引抜きダイスを用意するか、または穴径の異なる多数の押出ダイスを用意する必要があり、不経済である。特に引抜きダイスは超硬合金で作製されるのが一般的であり、高価であるため、多数のダイスを用意するのは経済的負担が大きい。
【0007】さらに、Mg添加量の多いAl−Mg系合金の場合は加工硬化性が高いため、一定限度以上の減面率の引抜き加工を行うと、引抜き加工中に割れが発生したり、引抜きに要する力が過大となって加工できなくなるという問題が生じる。この点はJIS規格でも、Mg添加量が2.2 〜2.8 %と少ない5052合金についてはH14、H18の硬質棒が規定されているが、Mg添加量が4.5 〜5.6 %と多い5056合金についてはより加工度(減面率)の小さいH12のみしか規定されていない。これは、Mg添加量の増加にともない、硬質引抜き棒の製造が困難になることを反映したものである。
【0008】本発明の目的は、かかる問題点に鑑み、引抜きダイスを使用することなく、所望の強度・硬度のアルミニウム又はアルミニウム合金棒を容易に製造できる方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は従来の引抜き加工法以外の棒の加工硬化方法について種々検討した結果、単なるねじり加工では表面荒れが大きく外観上の問題があるが、一方向にねじったものを逆方向にねじり戻すと、表面粗さと外観がねじり前の状態に復元し、しかも表面の硬度、棒の強度が向上することを新たに見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】すなわち本発明に係る高強度アルミニウム又はアルミニウム合金棒の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金の棒を一方向にねじり加工した後、逆方向にねじり戻すことを特徴とするものである(請求項1)。本発明の製造方法において、一方向にねじる回数と逆方向にねじり戻す回数は実質的に同じにすることが好ましい。また本発明の製造方法は、アルミニウム合金がAl−Mg系合金である場合に特に効果的である(請求項2)。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。まず素材としてアルミニウム又はアルミニウム合金の棒を用意する。この棒は、押出棒、連続鋳造圧延棒、引抜き棒、およびこれらの棒に焼鈍または安定化処理加熱を施したもののいずれでもよい。アルミニウムとしてはJISに規定されている工業用純アルミニウム、例えば1060(Al純度99.60 %以上)、1050(Al純度99.50 %以上)、1100(Al純度99.00 %以上)などを用いることができる。
【0012】また、より高い強度が要求される場合は、アルミニウム合金のうちAl−Mg系合金を使用することが好ましい。これは、MgがAlの加工硬化性を向上させる添加元素であり、ねじり戻し後の強度・硬度がより向上するからである。Al−Mg系合金としては、例えばJISに規定されている5005合金(Al−0.50〜1.0 %Mg合金)、5052合金(Al−2.2 〜2.8 %Mg合金)、5454合金(Al−2.4 〜3.0 %Mg合金)、5154合金(Al−3.1 〜3.9 %Mg合金)、5182合金(Al−4.0 〜5.0 %Mg合金)、5083合金(Al−4.0 〜4.9 %Mg合金)、5056合金(Al−4.5 〜5.6 %Mg合金)などがあるが、いずれも本発明に好適な合金である。強度をなるべく向上させたい場合には、5056合金、5083合金、5182合金など、Mg添加量が4%以上と多い合金を使用することが本発明の実施形態としてさらに好ましい。
【0013】このアルミニウム又はアルミニウム合金の棒に、まず一方向のねじり加工を施す。この一方向ねじり加工は棒の両端をチャックで把持し、一端のチャックを固定し他端のチャックを回転させるか、両端のチャックを互いに逆方向に回転させることにより、棒をねじる装置により実施すればよい。この一方向のねじりを加えただけでも強度向上効果はみられるが、表面粗さが大きくなり、また外観もねじりによるメタルフローが目立ち、実用上好ましくない。
【0014】上記のようにして一方向にねじられたアルミニウム又はアルミニウム合金の棒を、次に前記一方向のねじり回転数と同じ回転数だけ逆方向にねじり戻すことにより、表面粗さとメタルフローはねじり前の状態にほぼ復元し、外観上はねじり加工を受けたことが全く判別できないほどの状態に戻すことができる。ねじり回転数が多いほどねじり戻した後の強度向上が大きいが、ある限度以上になると効果は飽和し、逆に表面の硬さは低下する。また、さらにねじり回転数を多くすると棒が破断してしまう。最適なねじり回転数は棒の材質、径、長さにより変わるので一概にはいえないが、例えば純アルミニウムの22mmφの丸棒で長さが200 mmの場合、7回程度のねじり・ねじり戻しで表面の硬さは最大となり、13回になると破断する。また破断に至らないまでも6回以上のねじりを加えると、ねじりを戻してもメタルフローが完全には復元しなくなる。したがって本発明の実施に際しては、硬さや表面状態を勘案し、使用目的に合った、ねじり・ねじり戻し回転数を設定すればよい。
【0015】また上記のねじり・ねじり戻し加工を行った棒に、必要に応じ、矯正(引張またはロール矯正、あるいは軽度の引抜き加工など)、最終焼鈍、安定化処理加熱を常法により施してもよい。
【0016】このように本発明の製造方法によれば、引抜きダイスを使用することなく所望の強度・硬度のアルミニウム又はアルミニウム合金棒を容易に製造することが可能である。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
〔実施例1〕工業用純アルミニウムの棒(JIS−1060軟化焼鈍材、外径22mmφ、長さ300 mm)を片側回転式捻回試験機(富山住友電工株式会社製)により、チャック間距離200 mm、回転速度25 rpmで、所定の回転数だけ一方向にねじり加工した後、逆方向に同じ回転数だけねじり戻した。その後、表面硬さ、表面粗さの測定と、断面硬さ分布の測定を行った。またねじり戻し棒の強度を測定するため、長さ30mmの円柱を切り出し、圧縮試験を行った。
【0018】図1は加工前の棒1を示す。棒1には長さ方向に標識線2を付してある。図2(a)は棒1を一方向(+方向)に3回転ねじり加工した状態、同図(b)はその後逆方向(−方向)に3回転ねじり戻した状態を示す。図3(a)は棒1を一方向に6回転ねじり加工した状態、同図(b)はその後逆方向に6回転ねじり戻した状態を示す。図4は棒1を一方向に12回転ねじり加工した後、逆方向に12回転ねじり戻した状態を示す。
【0019】図2(a)、図3(a)によれば、一方向のねじりでは標識線2が一定ピッチのらせん状に見える。またこの状態ではメタルフローの筋3が見え、この筋3もらせん状になっているのが分かる。これをねじり戻すと、±3回転では図2(b)のように標識線2がほぼ直線に戻る。また±6回転では図3(b)のように標識線2が若干波打つようになるが、全体としては長さ方向に向いている。ところが±12回転になると、図4のように標識線Mが大きく不規則にねじれてしまい、元には戻らないことがわかる。
【0020】図5は、ねじり加工前焼鈍材と、一方向ねじり加工材と、一方向ねじり後ねじり戻し加工材の表面粗さを示す。■の一方向ねじり加工材では表面粗さがかなり大きくなっているが、■、■のねじり戻し加工材では表面粗さが加工前の状態近くに復元している。ただし■のようにねじり回転数が±12回転と過大になると、表面粗さはねじり戻しをしても復元しなくなる。
【0021】図6は一方向ねじり後ねじり戻しした棒の断面の硬さ分布を測定した結果を示す。棒の中心部の硬さは焼鈍材と大差ないが、表面に近づくに従い次第に硬さが増大し、またねじり回転数の増加とともに硬さが増大していることがわかる。
【0022】図7は棒から30mmの長さに切り出した円柱試料の圧縮試験結果を示す。加工前焼鈍材(C)は0.2 %耐力が23.58 MPaであるのに対し、ねじり回転数が±6回転のねじり加工材は0.2 %耐力が125.9 MPaと顕著に増加していることがわかる。これは引抜き加工棒のH18の強度に相当する。
【0023】〔実施例2〕次にAl−Mg系合金についての実施例を説明する。JIS−5056合金の棒(焼鈍材、外径22mmφ、長さ300 mm)に対し、実施例1と同様に片側回転式捻回試験機により、チャック間距離200 mm、回転速度25 rpmで、±3回転のねじり・ねじり戻し加工を施した。その後、試料を切断して断面の硬さ分布の測定を行った。その結果、表面近傍のビッカース硬さは123 に達した。加工前焼鈍材のビッカース硬さは73であったので、大幅な強度の向上がみられた。Al−Mg系合金は引抜き加工法では高強度材を製造することが困難なため、棒材としてのJIS規格は存在しないが、この硬さを参考までに板材のJIS規格と比較すると、H18(またはH38)硬質材に相当するものである。また外観上のメタルフロー、表面粗さも加工前と同等であり、全く問題のないものであった。
【0024】以上説明したように本発明の製造方法によれば、高価な引抜きダイスを使用することなく、高強度・高硬度のアルミニウム又はアルミニウム合金を容易に製造することができ、特に多品種少量生産において経済的効果が大きい。さらに従来の引抜き加工では製造そのものが困難であったMg添加量の多いAl−Mg系合金硬質棒を容易に製造することができる。
【出願人】 【識別番号】598131889
【氏名又は名称】穴田 博
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
【識別番号】593183414
【氏名又は名称】和伸工業株式会社
【識別番号】591174368
【氏名又は名称】富山住友電工株式会社
【出願日】 平成10年9月28日(1998.9.28)
【代理人】 【識別番号】100078329
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 広志
【公開番号】 特開2000−102818(P2000−102818A)
【公開日】 平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願番号】 特願平10−273559