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【発明の名称】 酸洗性および表面性状に優れた熱延鋼板の製造方法
【発明者】 【氏名】藤田 毅

【氏名】稲積 透

【氏名】船川 義正

【氏名】山本 雅明

【氏名】本屋敷 洋一

【要約】 【課題】低コストで、かつ酸洗性および表面性状に優れた熱延鋼板の製造方法を提供する。

【解決手段】重量%で、Ni:0.005〜0.1%を含有する鋳片を連続鋳造し、連続鋳造から粗圧延終了までの間の温度が1170℃を越えないようにして圧延し、粗圧延終了後に酸素濃度3%以上の雰囲気で保熱温度:T(℃)、保熱時間:t(秒)およびNi含有量:Ni%が下記(1)式を満足するように誘導加熱により保熱処理を行い、その後、高圧水ジェットの圧力:P(kg/cm2)が下記(2)式を満足する条件でデスケーリングを行うことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量%で、Ni:0.005〜0.1%を含有する鋳片を連続鋳造し、連続鋳造から粗圧延終了までの間の温度が1170℃を越えないようにして圧延し、粗圧延終了後に酸素濃度3%以上の雰囲気で保熱温度:T(℃)、保熱時間:t(秒)およびNi含有量:Ni%が下記(1)式を満足するように誘導加熱により保熱処理を行い、その後、高圧水ジェットの圧力:P(kg/cm2 )が下記(2)式を満足する条件でデスケーリングを行うことを特徴とする、酸洗性および表面性状に優れた熱延鋼板の製造方法。
30≧t≧(3.4×105 )/{(Ni%+0.016)T2 } …(1)
160≧P≧2.2×105 ×(Ni%+0.5)/(log60t+T) …(2)
但し、T:950〜1170℃
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に自動車部材、建材あるいは、冷延素材等に用いられる酸洗性および表面性状に優れた熱延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】薄鋼板の製造コストを低減するためには、生産効率を高め、かつ歩留低下につながる表面欠陥の発生を最低限に抑える必要がある。なかでも酸洗脱スケール工程の高速化は、生産効率向上の鍵を握る重要な技術で、種々の方法が検討されてきた。主な方法としては、1)スケール厚を低減する方法、2)スケールを溶解しやすい組成にする方法、3)スケールに亀裂を生じさせて酸洗時にスケールの溶解剥離を容易にする方法等がある。
【0003】スケール厚を低減する方法としては、例えば、特開平4−228204号公報あるいは特開平4−266401号公報において、仕上圧延機出側から巻取機に至る間でローラーにより熱延鋼板をシールする、あるいは不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で冷却することにより、スケールの生成を抑制する方法が提案されている。しかしながら、この方法は多大な設備投資および多量の不活性ガス、還元性ガスを必要とし、コストが莫大となる。また、特開平9−295028号公報、特開平9−295029号公報では、粗圧延後にバーナー加熱により保熱酸化処理を行い、Niを濃化させるとともにスケールを生成させた後、仕上圧延前にデスケーリングを行うことにより、その後のスケール生成を抑制し酸洗性を向上させている。しかし、バーナー加熱では、燃料を燃焼することにより加熱を行っていることから、加熱時には一酸化炭素および窒素酸化物を生成する。これは、燃料+空気の混合物中の酸素とバーナー火炎部周辺からの酸素との反応により生じている。そのため、バーナーからの火炎先端近傍である鋼板表面では、酸素が一酸化炭素あるいは窒素酸化物として消費され、保熱炉内雰囲気の酸素濃度より低くなり、スケール生成としての酸素が減少するため、スケール生成・成長に5〜30分と長時間を必要とし、生産性の点で問題がある。
【0004】また、特開平6−39417号公報には、熱延仕上げ温度、巻取温度および仕上げ圧延終了から巻取までの時間を特定範囲に制御し、酸洗性を向上させる技術が提案されている。この技術においては、スケールを溶解しやすい組成にする方法として、巻取温度を350〜550℃の範囲に制御し、脱スケール性に優れたFeOを残留させることにより、酸洗性の改善を図っている。しかしながら、巻取温度が550℃以下の場合、AlNの析出が十分でなく冷却後も固溶Nが残留するため、時効により材質が著しく劣化するという問題がある。これを防ぐには、高純度鋼を使用する必要があるためコスト高となる。これに対して、特開平2−11720号公報には、粗圧延後の被圧延材に1000℃以下Ar3 点以上の温度域で曲げ加工を施し、AlNを十分に析出させて時効による材質劣化を防ぎ、さらに600℃以下で巻き取ることによりFeOを残留させて酸洗性を向上させる方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平2−11720号公報の方法では、シートバーをコイルで巻き取るため、コイルの外周部ほど曲げ半径が大きく、歪み量が減少する。その結果、AlNの析出形態はコイル外周部ほど粗大、内周部ほど微細となり粒成長性に差異が生じるため、コイル長手方向に材質変動が生じるという問題がある。
【0006】また、スケールに亀裂を生じさせ酸洗時にスケールの溶解剥離を容易にする方法としては、特開平4−72083号公報には、スケールブレーカー、スキンパス等の亀裂発生機構にてスケールに亀裂を発生させ、次いで固体粒子を圧力気体により鋼帯表面に衝突させ、酸洗ラインにてスケールを除去する方法が提案されている。しかしながら、この場合も固体粒子を圧力気体で衝突させる装置、およびその後のスケール処理、固体粒子を循環させるための設備等のコストが多大となる。
【0007】一方、表面欠陥の発生低減については、最も発生頻度の高いスケール性欠陥について種々の方法が提案されている。例えば、特開平2−59108号公報には仕上げ圧延中に発生する2次スケールの生成量を予測し、予測値が所定の基準値より大きい際には、仕上げ圧延機入り側において、圧延材にスケール発生防止剤を塗布することにより、熱間圧延中に発生するスケールきずを防止している。しかしながら、スケール発生防止剤は高価なことからコストが多大となると同時に、酸洗脱スケール工程において酸液にスケール発生防止剤が混入し、酸洗処理が困難となる。また、特開平7−132306号公報には、圧延機入り側における鋼板のスケール厚さの推定およびロール表面粗度の測定もしくは推定を行い、予め求めておいたスケールきずが発生する条件との比較によりロールの表面粗度および/またはスケール厚さを制御し、圧延を行っている。ロールの表面粗度の制御においては、砥石・砥粒入り高圧水、あるいは軟質厚物を圧延するなどしてロール肌荒れの抑制を行っている。しかしながら、このような抑制は、設備投資が高額になるだけでなく、コストも莫大となる。本発明の目的は、かかる状況に鑑み、低コストで、かつ酸洗性および表面性状に優れた熱延鋼板の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決し目的を達成するために、本発明は以下に示す手段を用いている。
(1)本発明の製造方法は、重量%で、Ni:0.005〜0.1%を含有する鋳片を連続鋳造し、連続鋳造から粗圧延終了までの間の温度が1170℃を越えないようにして圧延し、粗圧延終了後に酸素濃度3%以上の雰囲気で保熱温度:T(℃)、保熱時間:t(秒)およびNi含有量:Ni%が下記(1)式を満足するように誘導加熱により保熱処理を行い、その後、高圧水ジェットの圧力:P(kg/cm2 )が下記(2)式を満足する条件でデスケーリングを行うことを特徴とする、酸洗性および表面性状に優れた熱延鋼板の製造方法である。
【0009】
30≧t≧(3.4×105 )/{(Ni%+0.016)T2 } …(1)
160≧P≧2.2×105 ×(Ni%+0.5)/(log60t+T) …(2)
但し、T:950〜1170℃【0010】
【発明の実施の形態】本発明者らは、微量のNiを添加し、連続鋳造から粗圧延終了までの間の温度を1170℃以下として表面酸化を抑制するとともに、粗圧延終了後に誘導加熱により適正条件(雰囲気の酸素濃度、保熱温度、保熱時間)の保熱処理を施して酸化を抑制し、その後、圧力を適切に制御した高圧水ジェットによる仕上げ圧延前デスケーリングを行うことにより、生産性を落とさずに、生成するスケール厚さが薄くなり、酸洗性を大幅に向上できること、また、同時に、スケール性欠陥の発生を防ぐことができるため優れた表面性状が得られることを見出した。
【0011】すなわち、本発明者らは、鋼の酸化挙動あるいはデスケーリング性におよぼす微量元素と酸化条件の影響、さらには高圧水ジェットのデスケーリング圧力の影響を詳しく調査した結果、微量Niを添加し、連続鋳造から粗圧延終了までの間の温度を適正に制御し、粗圧延終了後仕上げ圧延前または仕上げ圧延間の段階での誘導加熱により適切な保熱酸化処理、およびその後の適正圧力に制御された高圧水ジェットのデスケーリングを行うようにして、短時間に鋼板表面にはNi濃化層が形成され、その後の圧延中およびランナウトテーブル上でのスケールの生成・成長が著しく抑制されることから、生産性を落とさずに、生成するスケール厚さが薄くなり、酸洗性を大幅に向上でき、かつスケール性欠陥の発生を防ぐことができ、優れた表面性状が得られる熱延鋼板の製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0012】すなわち、本発明は、鋼組成及び製造条件を下記範囲に特定することにより、低コストで、かつ酸洗性および表面性状に優れた熱延鋼板の製造方法を提供することができる。
【0013】以下に、本発明の成分添加理由、成分限定理由、及び製造条件の限定理由について、説明する。
(1)成分組成範囲Ni:0.005〜0.1%Niは、鋼中においてFeよりも酸化し難い元素であり、高温酸化時にはスケールと地鉄との界面に濃化してスケールの密着性を向上させることがこれまでにも明らかにされていた。例えば、特開昭51−40322号公報、特開昭60−63319号公報、特開平4−157134号公報では、微量のNi添加によりスケールと地鉄の間にNiを富化させスケールの密着性を向上させている。本発明者らは、このような密着性向上効果に加えて、Niにはさらにスケール生成・成長を抑制して酸洗性を向上させる効果があることを見出した。ただし、スケール生成・成長抑制効果を得るためには、後述するように誘導加熱および仕上げ圧延前デスケーリング条件を適正化してスケール除去後の鋼表面にNi濃化層を残留させる必要があることがわかった。しかし、Ni含有量が0.005%未満では濃化するのに極めて長時間を要し、一方、0.1%を越えると強度が上昇し延性が低下すると同時にコスト高となるため上限は0.1%である。
【0014】なお、本発明では、その他の成分については特に限定されない。すなわち、本発明の効果を阻害しない範囲での添加は許容される。以上の成分組成範囲に調整することにより、低コストで、かつ酸洗性および表面性状に優れた熱延鋼板を得ることが可能となる。
【0015】このような特性の鋼板は以下の製造方法により製造することができる。
(2)熱延鋼板製造工程(製造方法)上記の成分組成範囲に調整した鋼を転炉で溶製し、鋳片を連続鋳造し、連続鋳造から粗圧延終了までの間の温度が1170℃を越えないようにして圧延し、粗圧延終了後に酸素濃度3%以上の雰囲気で保熱温度:T(℃)、保熱時間:t(秒)およびNi含有量:Ni%が下記(1)式を満足するように誘導加熱により保熱処理を行い、その後、高圧水ジェットの圧力:P(kg/cm2 )が下記(2)式を満足する条件でデスケーリングを行うことを特徴とする。
【0016】
30≧t≧(3.4×105 )/{(Ni%+0.016)T2 } …(1)
160≧P≧2.2×105 ×(Ni%+0.5)/(log60t+T) …(2)
但し、T:950〜1170℃a.再加熱温度、または復熱温度:1170℃以下連続鋳造後、鋳片を再加熱する場合には、鋳片の再加熱温度を1170℃以下の低温加熱とする必要がある。この場合、常温まで冷却した鋳片を再加熱しても、常温まで冷却することなく再加熱してもかまわない。あるいは、連続鋳造ままの鋳片を直送圧延する場合には、復熱温度を1170℃以下として、粗圧延工程でも1170℃を越えることなく圧延する必要がある。温度が1170℃を越えるとNi濃化層の分布が不均一となり、スケール/地鉄界面が複雑に入り組んだ構造となるため粗圧延入り側および仕上げ圧延前のデスケーリング性が悪く、完全にスケールを除去することができない。そのため、局部的にスケールが残留し、スケール性欠陥になってしまうので上限は1170℃である。このように鋳片の再加熱温度、または復熱温度を1170℃以下とすることにより、デスケーリング性の悪いスケールが生成しないので、粗圧延工程におけるデスケーリングは通常の方法で良い。
【0017】b.誘導加熱による保熱誘導加熱では、燃焼による加熱方式でないことから燃焼排出物の生成は無いため、地鉄側に取り残されたNiも短時間に濃化が進行する。また、鋼板の最表面において保熱炉内設定温度よりも急速かつ高温に加熱されることから、Niの拡散が促進されより短時間にNi濃化層が形成される。
【0018】c.保熱温度:950〜1170℃保熱温度が1170℃を越えると、スケール/地鉄界面におけるNiの濃化が促進されるが、再加熱温度・復熱温度の場合と同様にNi濃化層の分布が不均一となり、仕上げ圧延前のデスケーリング性が悪く、スケール性欠陥となってしまうので上限は1170℃である。また、950℃よりも保熱温度が低下すると、スケールの成長が遅くスケール厚さが不十分なため仕上げ圧延前のデスケーリング性が劣化し、かつNiの濃化に長時間を要し現実的でなくなる。よって、保熱温度の下限は950℃である。
【0019】d.保熱雰囲気:酸素濃度3%以上酸素濃度が3%未満であると、スケールが十分に成長する前にNi濃化層が形成され、スケールの成長が著しく遅延して仕上げ圧延前のデスケーリング性が低下する。このため、仕上げ圧延前のデスケーリング時の高圧水ジェットの圧力を高めても局所的にスケールが残留し、スケール性欠陥の発生率増大につながる。
【0020】e.保熱時間t(秒):30≧t≧(3.4×105 )/{(Ni%+0.016)T2 } …(1)、但しT:950〜1170℃Ni含有量および保熱温度によりスケールの成長およびNi濃化状態が変化するため保熱時間は上記(1)式を満足しなければならない。(1)式で規定する保熱時間の下限を下回る場合は、保熱温度が低い場合と同様に、Niの濃化が不十分でありかつスケール厚さも不十分なため仕上げ圧延前のデスケーリング性が劣化してスケール性欠陥の発生につながる。一方、保熱時間が30秒を越えると生産効率が著しく低下する。なお、保熱は必ずしも一定温度に保持する必要はなく、本発明の定める温度範囲であれば、昇温あるいは降温過程によらず同様の効果が得られるが、その場合は、(1)式中のT(℃)は平均温度で代用することができる。
【0021】f.保熱後デスケーリング条件:高圧水ジェットの圧力P(kgf/cm2 ),160≧P≧2.2×105 ×(Ni%+0.5)/(log60t+T)…(2)、但し、T:950〜1170℃スケールのデスケーリング性はスケール厚さが大きいほど向上する。このため、スケール厚さに影響をおよぼす保熱温度、保熱時間およびNi含有量に従って上記(2)式を満足するように高圧水ジェットの圧力を変化させなければならない。(2)式で定める値を下回る圧力ではデスケーリング不良を生じてスケール性欠陥が発生し、表面品質は著しく劣化する。この様な観点からデスケーリングの高圧水ジェットの圧力は高いほうが望ましいが、160kgf/cm2 を越えると保熱条件によらずNi濃化層まで破壊あるいは除去してしまい、その後のスケール生成・成長抑制効果が失われてしまうため160kgf/cm2 以下である。なお、デスケーリング性およびNi濃化層の残留し易さはデスケーリング時の鋼板温度の影響を受けるが、通常のデスケーリングが実施される温度の範囲内であれば大きく変化はせず本発明の効果を得ることができる。
【0022】なお、Ni濃化層は再加熱および復熱時にも生じ、後の保熱条件に影響を及ぼすことが考えられる。そこで、保熱時間に及ぼす連続鋳造鋳片の再加熱時間の影響を調査した。合金成分(0.03C−0.01Si−0.2Mn−0.01P−0.01S−0.040Al−0.0035N−0.02Ni)の鋼を連続鋳造にて鋳片とし、再加熱温度1150℃において1hr,3hr,5hrの保持を行い、酸洗工程でスケール残りを生じない保熱時間を調査した結果を図1に示す。なお、他の製造条件としては、保熱温度:1050℃、誘導加熱内部雰囲気の酸素濃度:15%、保熱後の仕上げ圧延前デスケーリングにおける高圧水ジェットの圧力:120kgf/cm2 とした。図1より、鋳片の再加熱時間が長くなるに従い、スケール残りが無い良好なデスケーリング結果を得られる保熱時間が短くなるが、本発明条件と比べるとその差は僅かであり、大差はない。このことは、次のように説明される。鋳片の再加熱または復熱時でもスケールおよびNi濃化層は形成されるが、粗圧延工程の入り側デスケーリングによりスケールのみが除去され、残ったNi濃化層およびその後の粗圧延中に生成するスケールは最終粗圧延機出側までの圧延中に延ばされる。その結果として、粗圧延後の段階で形成されているスケールおよびNi濃化層は、保熱工程にて生成するものと比べて、その厚さが極めて薄い。すなわち、本発明で定める保熱の条件に対して、鋳片の再加熱および復熱時に形成されるスケールおよびNi濃化層は影響しない。
【0023】また、本発明の効果は上記以外の製造条件の影響は受けず、巻取温度については材質上最も適当な温度領域で巻き取ることができる。すなわち、640℃程度の普通巻取はもちろん、材質の軟質化高延性化のために例えば680℃程度の高温巻取をおこなってもかまわない。以下に本発明の実施例を挙げ、本発明の効果を立証する。
【0024】
【実施例】(実施例1)表1に示す化学組成の鋼(A〜C,E〜G,I〜K,M〜O:本発明例、D,H,L,P:比較例)を連続鋳造にて鋳片とし、1150℃で粗圧延工程に直送した後、本発明の範囲内で誘導加熱により1050〜1100℃の温度域で30秒間保熱した。ここで、誘導加熱の内部雰囲気は、不活性ガスを挿入することにより酸素濃度を15%に調節した。なお、誘導加熱内部雰囲気の酸素濃度の測定は、誘導加熱長手方向中心部において行った。保熱後の鋼板について、高圧水ジェットの圧力:150kgf/cm2 で仕上げ圧延前デスケーリングを行った後、引き続き仕上げ圧延機により板厚2.8mmまで圧延し、コイルに巻き取った。次いで、得られたコイルについて、塩酸酸洗ラインにおいて脱スケール試験を行った。塩酸酸洗ラインの酸洗液は10%HClで、液温85℃とした。
【0025】表2に、各鋼の巻取温度(CT)、熱延板のスケール厚さおよび酸洗ライン速度を示す(A〜C,E〜G,I〜K,M〜O:本発明例、D,H,L,P:比較例)。スケール厚さは断面ミクロ写真を用いて測定したものである。また、酸洗ライン速度は、スケール残りが発生しない限界のライン速度(最大300mpm)である。表2の中で本発明を満足する成分の鋼(A〜C,E〜G,I〜K,M〜O)はスケールが薄く、酸洗ライン最大速度である300mpmまで、スケール残りは発生しなかった。
【0026】これに対して、本発明の範囲から外れる成分の鋼(D,H,L,P)はスケールが厚く酸洗性に劣るため、スケール残りを避けるためには酸洗ライン速度を下げる必要があった。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】(実施例2)表1に示すNo.A、F、Kの鋼(本発明例)を用いて、表3、表4、表5に示す条件で、連続鋳造〜粗圧延を行った後、誘導加熱により種々の温度あるいは温度域にてシートバーを種々の時間保持し、また同時に、不活性ガスの挿入量を変えて酸素濃度も変化させた。比較のためバーナー加熱による保熱も行った。次いで、高圧水ジェットの圧力を種々に変化させて仕上げ圧延前デスケーリングを行い、引き続き仕上げ圧延機により板厚2.8mmまで圧延し、コイルに巻き取った。得られたコイルについて、塩酸酸洗ラインにおいて脱スケール試験を行った。塩酸酸洗ラインの酸洗液は10%HClで、液温85℃とした。
【0030】表6に表3、表4、表5の各製造条件における熱延板のスケール厚さ、酸洗ライン速度および表面性状を示す(No.1〜3,11〜14,22〜25:本発明例、No.4〜10,15〜21,26〜31:比較例)。スケール厚さは断面のミクロ写真を用いて測定した。また、酸洗ライン速度は、スケール残りの発生しない限界のライン速度(最大300mpm)である。
【0031】表6の中で本発明の製造条件を満足するもの(本発明例No.1〜3,11〜14,22〜25)は、スケールが薄く優れた酸洗性を示すと同時に、表面性状が良好である。
【0032】これに対して、本発明の範囲から製造条件が外れるもの(No.4〜10,15〜21,26〜31:比較例)は、仕上げ圧延前デスケーリング後の酸化が抑制されずスケールが著しく成長して酸洗性に劣るか、あるいは、仕上げ圧延前デスケーリングが不十分なためにスケール性欠陥が発生して表面性状が不良となった。なお、バーナー加熱では、誘導加熱と同条件の場合、スケールが厚くなり酸洗性に劣り、保熱を長時間としても、十分な酸洗性が得られない。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、鋼組成及び製造条件を特定することにより、生成するスケール厚さを薄くすることができるので、酸洗性を高めることで酸洗時間を大幅に短縮し、生産性の向上が期待できる。また同時に、スケール性欠陥の発生を防ぐことができるので、表面性状に優れた熱延鋼板の製造が可能である。酸洗脱スケール工程の高速化・生産効率向上、およびスケール性表面欠陥の発生を防止して歩留を向上できるので、酸洗性および表面性状に優れる熱延鋼板を低コストに製造することが可能となり、産業上極めて有用な発明である。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成10年9月25日(1998.9.25)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外4名)
【公開番号】 特開2000−102813(P2000−102813A)
【公開日】 平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願番号】 特願平10−271323