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【発明の名称】 マンドレルミル圧延方法
【発明者】 【氏名】稲毛 孝光
【氏名】中西 哲也
【課題】先端部及び圧延中のスリップや焼付きの発生を可及的に防止するマンドレルミル圧延方法を提供する。

【解決手段】カリバーロールとして、ロール表面のショアー硬さが60以上の鋳鉄ロール又は鋳鋼ロール又は鍛造ロールを使用し、当該カリバーロールが組込まれたスタンドにおける、カリバーロールの溝底部での圧下率が50%以下となるようにして、潤滑剤を使用することなく圧延する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カリバーロールとして、ロール表面のショアー硬さが60以上の鋳鉄ロール又は鋳鋼ロール又は鍛造ロールを使用し、当該カリバーロールが組込まれたスタンドにおける、カリバーロールの溝底部での圧下率が50%以下となるようにして、潤滑剤を使用することなく圧延することを特徴とするマンドレルミル圧延方法。
【請求項2】 潤滑剤は、被圧延材の先端部或いは後端の非定常圧延部の少なくともどちらか一方にのみ、断続的に使用することを特徴とする請求項1記載のマンドレルミル圧延方法。
【請求項3】 成形スタンドを除く全てのスタンドについて、1.0超〜1.4の楕円度を有する孔型形状のカリバーロールを使用することを特徴とする請求項1又は2記載のマンドレルミル圧延方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、継目無管製造時における延伸圧延工程であるマンドレルミルでの圧延方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来よりマンドレルミルに使用されているカリバーロールは、ロール表面のショアー硬さが60程度であるから、延伸圧延した場合に、ロールの表面が欠損したりして、ロール自体の摩耗や肌荒れが大きくなる。ロール自体の摩耗や肌荒れは、製品の品質を悪くするので、ショアー硬さが60以上の摩耗や肌荒れの少ないカリバーロールを使用することが望ましい。
【0003】ところで、マンドレルミルのように、カリバーロールを使用する孔型圧延では、ロールの溝底部はロール径が小さいので、被圧延材の圧延速度に対してロール回転速度が遅く、反対に、ロールのフランジ部ではロール径が大きいので、被圧延材の圧延速度に対してロール回転速度が速い。従って、被圧延材とロールとの相対速度差が大きいロールの溝底部とフランジ部で、スリップが発生し、焼付き易くなる。
【0004】加えて、マンドレルミルでは、各スタンドでの圧延中や圧延後における被圧延材は、ロールのフランジ部からギャップ部に至る部分が膨らんではみ出した形状となり易い。すると、圧延中、フランジ部で被圧延材が強く接触し、より焼付き易くなる。さらに、前スタンドでの圧延後にフランジ部ではみ出した部分が次スタンドの溝底部に局部的に強く噛み込まれ、溝底部に焼付きが発生し易くなる。
【0005】このようなカリバーロール特有の焼付きは、ロールの表面が硬い高硬度ロールの場合、表面が摩耗し難いことから、より発生し易くなる。従って、従来は、カリバーロールとしては、ロール表面のショアー硬さが60以上の高硬度ロールは使用されていなかった。
【0006】一方、カリバーロールの摩耗等及び焼付きの対策として、潤滑剤を使用することが特開平2−30312号等で提案されている。しかしながら、特開平2−30312号等で提案されている方法では、ロールの焼付きを軽減することはできても、ロールの表面硬さに起因する摩耗等を改善することはできない。
【0007】そこで、マンドレルミルにおけるカリバーロールとして、特定鋼種で、ロール表面のショアー硬さが60以上の高硬度ロールを使用し、かつ、圧延中は、冷却水と共にロール潤滑剤を連続的に散布することで、カリバーロールの摩耗等や焼付きを防止するものが、特公平7−73727号で提案されている。また、特公平7−73722号では、最適な潤滑剤の供給領域を提案している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記した特公平7−73727号で提案されている方法では、ショアー硬さが60以上の高硬度ロールを使用することで、カリバーロールの摩耗や肌荒れを防止し、焼付きについては、特定鋼種のロールに潤滑剤を散布することで対処しているが、潤滑剤の散布には、潤滑剤供給設備が必要となる他、潤滑剤コストや設備の補修費等が必要になって、製造コストが高くなってしまう。
【0009】また、カリバーロールの溝底部での圧下率が50%を超える従来のマンドレルミル圧延において、摩耗や肌荒れ対策としてショアー硬さが60以上の高硬度ロールを使用した場合、ロールと被圧延材間でスリップが起こり難いので、被圧延材の先端部でのスリップで噛み込み不良が発生し易く、また、圧延中スリップにてスタンド間での張力に異常をきたす場合が多い。スタンド間の張力に異常をきたすと、所定の形状や寸法に圧延することができなくなる。この噛み込み不良及び圧延中スリップは、被圧延材が合金鋼やステンレス鋼の場合のみならず、普通鋼でも薄肉材の場合には発生し易い。
【0010】同様に、焼付き現象も、被圧延材が合金鋼やステンレス鋼のみならず、普通鋼でも薄肉材の場合には発生し易い。この焼付きは、被圧延材の噛み込む先端部位や後端の非定常圧延部で発生し易い。先端部は、前工程のピアサーなどで最初にロールやプラグに接触し、また、マンドレルミル圧延中でも各スタンドで最初にロールと接触するので、温度が低く、変形抵抗が高いからである。また、後端の非定常圧延部は、温度が低いのに加えて圧延中の被圧延材に対する張力が発生しないので、フランジ部の膨らみ形状がより大きくなり易く、ロールに強く接触するからである。これらの部位では、潤滑剤を散布しても、焼付きを完全に防止することはできない。
【0011】本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ロール表面のショアー硬さが60以上のカリバーロールを備えたマンドレルミルで圧延するに際し、先端部及び圧延中のスリップや焼付きの発生を可及的に防止することができる圧延方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明のマンドレルミル圧延方法は、ロール表面のショアー硬さが60以上の鋳鉄又は鋳鋼又は鍛造のカリバーロールが組込まれたスタンドにおける、カリバーロールの溝底部での圧下率が50%以下となるようにして、潤滑剤を使用することなく圧延することとしている。そして、このようにすることで、ロール表面のショアー硬さが60以上のカリバーロールを備えたマンドレルミルで圧延するに際し、噛み込み不良や焼付きの発生を可及的に防止することができるようになる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明者は、ロール表面のショアー硬さが60以上のカリバーロールを備えたマンドレルミルを用いて、被圧延材の先端部及び圧延中のスリップ防止対策と、焼付き対策について、各種の実験を繰り返した結果、カリバーロールの溝底部での圧下率が50%以下となるようにして圧延した場合には、原則として潤滑剤を使用しなくても、先端部及び圧延中のスリップ防止や焼付きの発生を可及的に防止することができることを知見し、以下の本発明を成立させた。
【0014】すなわち、本発明のマンドレルミル圧延方法は、カリバーロールとして、ロール表面のショアー硬さが60以上の鋳鉄ロール又は鋳鋼ロール又は鍛造ロールを使用し、当該カリバーロールが組込まれたスタンドにおける、カリバーロールの溝底部での圧下率が50%以下となるようにして、潤滑剤を使用することなく圧延したり、また、潤滑剤は、被圧延材の先端部或いは後端の非定常圧延部の少なくともどちらか一方にのみ、断続的に使用したりし、必要に応じて、成形スタンドを除く全てのスタンドについて、1.0超〜1.4の楕円度を有する孔型形状のカリバーロールを使用するものである。本発明方法における楕円度とは、図1に示すように、逃がしのための逆R部1を除いた、最もフランジ側の円弧2の延長線とパスセンター3との交点4,4間の長さをA(長径)、溝底部5間の長さをB(短径)とした場合、A/Bをいう。また、各スタンドの溝底部での圧下率とは、(入口肉厚−出口肉厚)/(入口肉厚)×100%、さらに、非定常圧延部とは、端部の2m(圧延時間で0.5秒)の範囲を言う。
【0015】本発明のマンドレルミル圧延方法は、常温でのロール表面のショアー硬さが60以上の、例えばクロム含有量が8〜20重量%の高クロム鋼や高速度鋼などの鋳鉄又は鋳鋼又は鍛造のカリバーロールを使用する場合が対象となる。ロールの摩耗や肌荒れを防止するためである。
【0016】また、本発明のマンドレルミル圧延方法では、原則として、潤滑剤を使用せず、やむを得ず潤滑剤を使用する場合でも、被圧延材が焼付きを発生し易い材質の場合のみ、焼付きの発生し易い部位、すなわち、被圧延材の先端部或いは後端の非定常圧延部のみに限定する。ロール表面のショアー硬さが60以上の高硬度ロールの表面には、炭化物が多く分散されているので、金属同士の接触が起こり難く、焼き付きそのものが発生し難いからである。また、潤滑剤を使用した場合には、ランニングコストが高くなって製造コストが上昇し、また、これらの部位では、潤滑剤を使用しても、焼付きを完全に防止することはできないからでもある。
【0017】また、本発明のマンドレルミル圧延方法では、カリバーロールの溝底部での圧下率が50%以下となるようにして圧延する。その理由は、ロール表面のショアー硬さが60以上のカリバーロールの溝底部での圧下率が50%を超えると、ロールと被圧延材間で被圧延材の押込み力が上がる反面、被圧延材の先端部スリップにより噛み込み不良が発生し易く、また、圧延中スリップによりスタンド間での張力に異常をきたす場合が多いからである。加えて、ロールのフランジ部からギャップ部に至る部分でのはみ出し量が多くなり、焼付き易くなるからでもある。
【0018】また、本発明のマンドレルミル圧延方法において、成形スタンドを除くスタンドで、1.0超〜1.4の楕円度を有する孔型形状のカリバーロールを使用するのが望ましいのは、楕円度が1.4を超えると、当該カリバーロールでの圧延時にフランジ部で焼付きが生じ易くなり、かつ、次スタンドのカリバーロールでの圧延時に溝底部で焼付きが生じ易くなるからである。なお、楕円度が1.0以下では、安定した圧延は不可能である。
【0019】本発明のマンドレルミル圧延方法において、1.0超〜1.4の楕円度を有する孔型形状のカリバーロールの使用を、成形スタンドのみ除くのは、成形スタンドにおけるカリバーロールが楕円であると、次工程のサイザ・レデューサ圧延の際にカリバーロールへの噛み込み不良が発生し易くなるからである。
【0020】本発明のマンドレルミル圧延方法において、やむを得ず使用する潤滑剤としては、特に限定されないが、一般の熱間圧延で用いられている鉱物油系や合成エステル系の圧延油、或いは、これらに極圧添加剤や固体潤滑剤を含有させて、耐焼付き性を強化した圧延油、或いは、黒鉛、マイカ含有系の水溶性潤滑剤や、特開平10−30097号で提案されているような酸化鉄−硼酸系などの酸化物系水溶性潤滑剤などを使用すれば良い。
【0021】また、やむを得ず使用する潤滑剤は、焼付きの発生し易いカリバーロールのフランジ部や溝底部に集中して供給することが望ましい。潤滑剤の供給方法は、直接ノズルから供給するいわゆるニート式や、水と混合してエマルション状態にした後、エアーなどの圧力でノズルを通して供給するいわゆるウオーターインジェクション式などを採用する。
【0022】冷却水は、少なくとも圧延中は連続的に使用するのが一般的であるが、本発明のマンドレルミル圧延方法においては、潤滑剤を使用する際には、潤滑剤が冷却水で薄められたり、飛ばされたりするのを防止するために、潤滑剤を供給する間のみ冷却水の使用を停止したり、また、水切り装置で冷却水が潤滑剤供給部位に回り込み難くしても良い。
【0023】
【実施例】以下、本発明のマンドレルミル圧延方法の効果を確認するために行った実験結果について説明する。(実施例1)下記表1に示す諸元の小径サイズのマンネスマン−マンドレルミル製管ラインにて、JIS規格のSTKM13Aの機械構造用鋼管、並びに、API規格の13%クロム油井用鋼管を下記の条件で製造した。
【0024】製管は、7スタンド式マンドレルミルの成形スタンド(#7スタンド)を除く#1〜#6スタンド全てに、ロール表面のショアー硬さが70〜85の高速度鋼製のカリバーロールを使用した。
【0025】〔製管条件〕
1.被圧延材ビレット径:外径φ187mmピアサー後の寸法:外径φ191mm×肉厚17.0mm×長さ10.5mマンドレルミル後の寸法:外径φ151mm×肉厚6.0mm×長さ35.7mストレッチレデューサー後の寸法:外径φ63.5mm×肉厚5.51mm×長さ97.2mビレット加熱温度:1230℃マンドレルミル後再加熱温度:1000℃【0026】2.潤滑剤13%クロム油井用鋼管の製管時のみ、酸化鉄(Fe23 )が20%、硼酸アミンが15%、分散剤が2%で、残りが水からなる酸化鉄−硼酸系の水溶液を、ノズルからロール入り側のフランジ部と、溝底部に供給。
3.潤滑剤の供給パターンパターンA:全スタンド潤滑せず(請求項1、3に対応)。
パターンB:#2スタンドのみ、圧延中、被圧延材の全長に連続供給(比較例)。
パターンC:#5、#6スタンドで、被圧延材の先端部と後端の非定常圧延部にのみ(圧延開始、終了直前0.5秒)供給(請求項2、3に対応)。
【0027】4.冷却水潤滑剤を使用するスタンドでは、圧延中は使用せず、潤滑剤を使用しないスタンドでは、圧延中も使用した。圧延後は全スタンドで冷却水を使用した。
5.圧延本数パターンA:STKM13Aを200本、13クロム鋼を50本。
パターンB:STKM13Aを20本。
パターンC:STKM13Aを50本、13クロム鋼を10本。
【0028】
【表1】

【0029】請求項1及び3に対応するパターンAでは、得られた製品を検査したところ、STKM13A、13クロム鋼共に外面疵は発生していなかった。なお、圧延状況、荷重などの諸元は、ロール表面のショアー硬さが50のアダマイトロールを使用して、潤滑せずに圧延した時と同様であった。
【0030】請求項2及び3の比較例であるパターンBでは、#2スタンドで被圧延材の全長に連続的に潤滑剤を供給したので、溝底部での圧下率を50%以下にしたことと相俟って、#2スタンドでスリップが発生し、#3スタンドへの噛み込みが不安定となった。また、局部的に肉厚が薄いところが発生し、製品検査で5本が不良と判定された。
【0031】請求項2及び3に対応するパターンCでは、#5、#6スタンドで、被圧延材の先端部と後端の非定常圧延部にのみ潤滑剤を供給したが、圧延状態は安定していた。また、得られた製品を検査したところ、STKM13A、13クロム鋼共に外面疵は発生していなかった。
【0032】(実施例2)#2スタンドにおける溝底部での圧下率を55%とした以外は実施例1と同じ条件でパターンAの実験を行ったところ、#2スタンドでロール焼付きが発生した。そして、得られた製品を検査したところ、STKM13Aでは200本の内の10本に、13クロム鋼では45本(6本目以降は全て)に焼き付き疵が発生した。
【0033】(実施例3)下記表2に示す諸元の小径サイズのマンネスマン−マンドレルミル製管ラインにて、JIS規格の機械構造用鋼管の例えばSTKM13Aなどの低炭素鋼、Cr−Mo鋼鋼管、並びに、DIN 17175−10−3規格の2%クロム鋼管を下記の条件で製造した。
【0034】製管は、7スタンド式マンドレルミルの成形スタンド(#7スタンド)を除く#1〜#6スタンド全てに、ロール表面のショアー硬さが65〜85の高速度鋼製のカリバーロールを使用した。
【0035】〔製管条件〕
1.被圧延材ビレット径:外径φ187mmピアサー後の寸法:外径φ181mm×肉厚15〜21mm×長さ7〜11mマンドレルミル後の寸法:外径φ151mm×肉厚4.0〜10.0mm×長さ16〜47mストレッチレデューサー後の寸法:外径φ60〜85mm×肉厚3.5〜11.00mmビレット加熱温度:1230℃マンドレルミル後再加熱温度:1000℃【0036】2.潤滑剤2%クロム鋼管の製管時のみ、実施例1と同じ潤滑剤をノズルからロール入り側のフランジ部と、溝底部に供給。
3.潤滑剤の供給パターン及び冷却水実施例1と同じ。
4.圧延本数夫々の鋼管について、1500本。
【0037】
【表2】

【0038】請求項3にも対応する実験No.1〜3及びNo.5では、孔型の楕円度を1.4以下としているので、潤滑せずに圧延した場合にも噛み込み不良や焼き付き疵の発生は全くなかった。但し、楕円度が1.4を超えていて、かつ、潤滑剤を供給しない請求項1にのみ対応する実験No.4では、噛み込み不良は発生しなかったものの、手入れにて出荷可能な程度の焼き付き疵が発生した。
【0039】一方、楕円度が1.4を超えているが、潤滑剤を供給した請求項2にのみ対応する実験No.6でも、実験No.4の場合と同様の結果であったが、発生した焼き付き疵は実験No.4の場合よりも小さかった。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、ロール表面のショアー硬さが60以上の鋳鉄又は鋳鋼又は鍛造のカリバーロールを使用することで、摩耗や肌荒れを防止しつつ、カリバーロールの溝底部での圧下率を50%以下となるようにして圧延することで、潤滑剤を使用することなく先端部及び圧延中のスリップや焼付きの発生を可及的に防止することができる。そして、この際、成形スタンドを除く全てのスタンドについて、1.0〜1.4の楕円度を有する孔型形状のカリバーロールを使用すれば、焼付きをより効果的に抑制できる。
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成10年9月24日(1998.9.24)
【代理人】 【識別番号】100060829
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 満好 (外1名)
【公開番号】 特開2000−94014(P2000−94014A)
【公開日】 平成12年4月4日(2000.4.4)
【出願番号】 特願平10−270055