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【発明の名称】 高強度で成形性に優れたアルミニウム合金硬質板の製造方法
【発明者】 【氏名】崔 ▲祺▼

【氏名】大堀 紘一

【要約】 【課題】飲料缶の缶蓋材等に用いられる硬質板を低コストで薄肉軽量化する。

【解決手段】Mg:2.0〜5.5%を必須成分として含み、必要に応じて、Cu:0.05〜0.3%、Mn:0.2〜0.9%、Cr:0.05〜0.25%の1種又は2種以上を含むAl合金材を用いて、上下ロールの回転速度比が1.2〜1.8である異周速圧延機で、60〜85%の圧下率で製品板厚までに冷間圧延する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量%で(以下、同じ)、Mg:2.0〜5.5%を必須成分として含み、さらに必要に応じて、Cu:0.05〜0.3%、Mn:0.2〜0.9%、Cr:0.05〜0.25%の1種又は2種以上を含み、残部がAl及び不可避不純物からなるAl合金材を用いてアルミニウム合金硬質板を製造する際に、上下ロールの回転速度比が1.2〜1.8である異周速圧延機にて、60〜85%の圧下率で製品板厚までに冷間圧延することを特徴とする高強度で成形性に優れたアルミニウム合金硬質板の製造方法
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、飲料缶の缶蓋等に用いられるアルミニウム合金硬質板材の製造方法に関し、特に高強度と成形性の両立が要求される高強度で成形性に優れたアルミニウム合金硬質板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム合金製飲料缶の缶蓋材としては、コーヒー、果汁用などには成形性の観点によりJIS5052合金板、JIS5082合金板が用いられ、ビール、炭酸飲料のような内圧がかかるものには、耐圧強度の観点により高強度のJIS5182合金板が用いられている。これらのアルミニウム合金板材の製造方法は、アルミニウム合金鋳塊を均質化処理した後、(1)熱間圧延により4〜7mm厚さとし、冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延を行い、0.3mm厚さ程度とする方法、または、(2)熱間圧延により約2mm程度の板厚とし、中間焼鈍、最終冷間圧延を行い、板厚を0.3mm程度とする方法が一般的である。いずれの方法においても上下ロールの回転速度比が1の冷間圧延機が用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、最近、アルミニウム合金飲料缶の製造コストを低減させるために、薄肉軽量化が進められているが、そのためには、薄くても従来同等以上の缶蓋の耐圧強度が確保できるように従来以上に高強度である缶蓋用板材が必要になる。これに対しては、冷間圧延率の増大やMg量の増大などの加工硬化を利用した対策がとられることが一般的である。しかし、この対策によれば、コストアップ、成形性や耐応力腐食割れ性が劣るなどの欠点が生じる。したがって、強度と成形性の両立ができる缶蓋用高強度アルミニウム合金板材の製造方法の開発が強く望まれている。
【0004】本発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、通常の冷間圧延工程、またはその最後の一部を、せん断変形の付加できる異周速圧延機による異周速圧延工程に変更することにより、高強度で成形性に優れたアルミニウム合金硬質板の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、種々の検討を行った結果、せん断応力を付与できる異周速圧延を用いることにより、圧下率を増やさなくても缶蓋用高強度アルミニウム合金板を製造できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明の高強度で成形性に優れたアルミニウム合金硬質板の製造方法は、重量%で、Mg:2.0〜5.5%を必須成分として含み、さらに必要に応じて、Cu:0.05〜0.3%、Mn:0.2〜0.9%、Cr:0.05〜0.25%の1種又は2種以上を含み、残部がAl及び不可避不純物からなるAl合金材を用いてアルミニウム合金硬質板を製造する際に、上下ロールの回転速度比が1.2〜1.8である異周速圧延機にて、60〜85%の圧下率で製品板厚までに冷間圧延することを特徴とする。
【0006】本発明の製造方法によれば、冷間加工に供される板材は、回転速度の異なる上下ロールによって異周速圧延されるので、上下方向の圧下だけでなく、水平方向にもせん断変形が生じて大きな加工力を受ける。この結果、得られた板は、適量のMg等を含有していることもあって十分に加工硬化する。これにより、成形性を損なうことなく、強度が向上したアルミニウム合金硬質板が得られる。
【0007】
【発明の実施形態】本発明では、冷間圧延に供する合金材の組成を限定しており、先ずその限定理由を以下に説明する。
【0008】Mgは固溶硬化および加工硬化を高める元素であり、板材の強度を高めるために必ず含有させるものである。その含有量は2.0%未満では所望の強度が得られず、一方、5.5%を超えると、熱間圧延時に割れが生じやすい上に、成形性、耐応力腐食割れ性も悪くなる。したがって、Mgの含有量を2.0〜5.5%に限定する。なお、同様の理由で下限を2.5%、上限を5.0%とするのが望ましい。
【0009】Cuは、固溶硬化および加工硬化を高める元素であり、強度の向上に効果を示すものであり、所望により含有させる。その効果を得るために少なくとも0.05%以上の添加が必要である。しかし、0.3%を超えて添加すると、成形性、耐食性の低下を招くので、Cu含有量を0.05〜0.3%に限定する。なお、同様の理由で下限を0.15%、上限を0.25%とするのが望ましい。
【0010】Mnは、上記Mgと同様に強度の向上および結晶粒微細化に大きな効果を示すものであり、所望により含有させる。その添加量は0.2%未満では十分の効果が得られず、0.9%を超えると前記の効果が飽和する上に、粗大な晶出物の数が多くなり成形性が劣るので、Mnの含有量を0.2〜0.9%に限定する。なお、同様の理由で下限を0.25%、上限を0.5%とするのが望ましい。
【0011】Crは、強度の向上に寄与し、結晶粒を微細化させる元素であり所望により含有させる。その添加量が0.05%未満では、前記の効果が得られず、一方、0.25%を超えると粗大な晶出物が形成され、成形性が低下するので、Cr含有量を0.05〜0.25%に限定する。なお、同様の理由で下限を0.08%、上限を0.20%とするのが望ましい。
【0012】さらに、上記成分に加えて結晶粒を微細化させるためにTiを添加することも可能であり、その場合、Tiを0.001〜0.1%の範囲で含有させても良い。
【0013】上記のアルミニウム合金は、常法により溶製することができ、半連続鋳造、連続鋳造法等により鋳塊または板材として得ることができる。鋳塊はその後、常法により均質化処理を行うのが望ましい。これら鋳塊または板材は、さらに常法により熱間圧延をして所定の厚さの板材を得ることができる。なお、本発明では、合金の鋳造工程、均質化処理工程、熱間圧延工程の制御に関しては、従来と同様な条件で制御すればよく、特に限定されるものではない。上記の板材は、本発明法に従って冷間圧延に供される。
【0014】次に、冷間圧延工程に関する製造条件を限定する理由を述べる。本発明のように、上下ロール回転速度が1である従来の冷間圧延機に代えて、回転速度の異なる異周速圧延機によって冷間圧延を行うと、板にせん断応力が付加されることにより、板の変形状態が変化し、加工組織の変化をもたらす。このため、通常の冷間圧延機と同じ圧下率でも、板の強度が高くなる。ただし、異周速圧延による冷延時に、上下ロールの回転速度比が、1.2より小さくなると、十分な付加せん断応力が得られず、一方、上記速度比が1.8より大きくなると、強度向上の効果が飽和する上に、操業が困難になる恐れが生じるので、上下ロールの回転速度比は1.2〜1.8の範囲内とする。なお、同様の理由で下限速度比を1.3、上限速度比を1.6とするのが望ましい。
【0015】なお、上記異周速冷間圧延では、通常は所望の回数の複数パスにより圧延を行っており、その圧下率が60%より小さいと、前記強度向上の効果が小さく、一方、85%を超えると強度の増加が多すぎて成形性の低下を招くので、圧下率は60〜85%の範囲内とする。なお、この圧下率は合計圧下率を意味するので、1パスの圧下率については、本発明では特に限定しないが、強度増加の効果を高めたい場合は、1パスの圧下率を大きくとることが好ましい。
【0016】また、上記異周速冷間圧延においては、本発明法ではとくに必須としないが、冷間圧延設備の都合により1回以上の中間焼鈍を行ってもよい。但し、この場合には、最後の中間焼鈍以後の圧下率を60〜85%にしなければならない。従って、本発明法では、最後の中間焼鈍前の冷間圧延を含めて圧下率が60〜85%であるだけでは、構成条件を充足せず、上記条件を満たすことが必要である。すなわち、本発明にいう冷間圧延とは、冷間圧延中に中間焼鈍を行わない場合には、冷間圧延全体を意味し、冷間圧延中に中間焼鈍を行う場合には、最後の中間焼鈍以後の冷間圧延を意味している。上記の冷間圧延後は、常法により最終焼鈍を行うことができ、その後は、所望の製品形状を得るべく、所定の成形加工を施す。これらの中間焼鈍や最終焼鈍、成形加工の条件については本発明としては特に限定されるものではなく、従来と同内容で行うことができる。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例について、比較例と対比して説明する。重量%で、Mg:4.6%、Mn:0.36%、Cu:0.18%、Fe:0.20%、Si:0.08%、Ti:0.01%を含有し、残部がAlおよび他の不可避不純物からなるアルミニウム合金を半連続鋳造(DC)法にて鋳造し、520℃で8時間均質化処理した後、熱間圧延により厚さ7.4mmの板とした。続いてこの板をさらに通常圧延機により1.95mm、1.55mm、0.89mmまでに冷間圧延した後、450℃で20秒の中間焼鈍をした。その後、表1に示す製造条件で異周速圧延機または通常圧延機にて0.31mmまで冷間圧延し、本発明材および比較材を作製した。
【0018】
【表1】

【0019】得られた発明材および比較材について機械的性質および成形性に関する材料特性の評価を行った。機械的性質はJIS13B号試験片を用い、引張速度5mm/minの引張試験によって測定した。その結果は、発明材について、同一圧下率の比較材に対する比で示した。また、成形性は、リベット成形した缶蓋(エンド)を1000個作製し、リベット部の割れの有無を観察し、割れたエンドの個数が比較材と同じまたは少なかった発明材について○と評価した。これらの評価結果を表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】表1および表2から分かるように、異周速圧延を施した本発明材は、合金成分、中間焼鈍までの各工程、さらに最終冷延時の圧下率が通常圧延法で作製した比較材と同じであっても、引張強さおよび耐力は比較材より高く、成形性も比較材と同等レベルにあった。なお、本発明は上記の実施例によって制約を受けるものではなく、適合しうる範囲で適切に変更実施することが勿論可能である。例えば、表1と表2の結果から、圧下率が高くなることにつれて、発明材と比較材の強度比が増大することが分かる。したがって、本発明の高強度で成形性に優れたアルミニウム合金硬質板の製造方法は、缶蓋材よりさらに高強度が要求される分野にも適用できる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の高強度で成形性に優れたアルミニウム合金硬質板の製造方法は、Mg:2.0〜5.5%を必須成分として含み、さらに必要に応じて、Cu:0.05〜0.3%、Mn:0.2〜0.9%、Cr:0.05〜0.25%の1種又は2種以上を含み、残部がAl及び不可避不純物からなるAl合金材を用いてアルミニウム合金硬質板を製造する際に、上下ロールの回転速度比が1.2〜1.8である異周速圧延機にて、60〜85%の圧下率で製品板厚までに冷間圧延するので、成形性を損なうことなく強度を向上させることができ、したがって製品の薄肉化、軽量化がコストを上昇させることなく可能になるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
【出願日】 平成10年9月3日(1998.9.3)
【代理人】 【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
【公開番号】 特開2000−79404(P2000−79404A)
【公開日】 平成12年3月21日(2000.3.21)
【出願番号】 特願平10−249440